(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】覚醒制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
G08G1/16 F
(21)【出願番号】P 2020056546
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 元貴
(72)【発明者】
【氏名】式井 愼一
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-021154(JP,A)
【文献】特開2017-207859(JP,A)
【文献】特開2005-210361(JP,A)
【文献】特開2012-113477(JP,A)
【文献】特開2019-168814(JP,A)
【文献】特開2018-094940(JP,A)
【文献】特開2019-127138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転状態と手動運転状態とを切り替え可能な移動体に用いられる覚醒制御装置であって、
前記手動運転状態から前記自動運転状態に切り替わる運転支援制御の指示を取得する第1取得部と、
前記手動運転状態の手動運転期間を示す期間情報を取得する第2取得部と、
移動体を運転する運転者の覚醒を誘発する覚醒誘発部と、
前記運転者を覚醒させるための複数の覚醒モードを記憶する記憶部と、
前記手動運転期間の長さに依存して前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する制御部とを備え、
前記制御部は、さらに、前記手動運転期間での前記移動体の走行経路の複雑度、及び、前記手動運転期間での走行速度の変化度合いに基づいて、前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行
し、
前記制御部は、前記手動運転期間に前記運転者が休息した場合、
休息終了時点から前記自動運転状態に切り替わる時点までの前記手動運転期間が第1所定期間以上であるとき、前記複数の覚醒モードのうちから第1覚醒モードを選択し、選択した前記第1覚醒モードを実行し、
前記手動運転期間に前記運転者が休息した場合、休息終了時点から前記自動運転状態に切り替わる時点までの前記手動運転期間が前記第1所定期間未満であるとき、前記複数の覚醒モードのうちから前記第1覚醒モードよりも覚醒効果の低い第2覚醒モードを選択し、選択した前記第2覚醒モードを実行する
覚醒制御装置。
【請求項2】
自動運転状態と手動運転状態とを切り替え可能な移動体に用いられる覚醒制御装置であって、
前記手動運転状態から前記自動運転状態に切り替わる運転支援制御の指示を取得する第1取得部と、
前記手動運転状態の手動運転期間を示す期間情報を取得する第2取得部と、
移動体を運転する運転者の覚醒を誘発する覚醒誘発部と、
前記運転者を覚醒させるための複数の覚醒モードを記憶する記憶部と、
前記手動運転期間の長さに依存して前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する制御部とを備え、
前記制御部は、前記手動運転状態から前記自動運転状態に切り替わったときに、
前記自動運転状態
が第3所定期間以上の場合、前記運転者に休息を与えるためのリラックスモードと、前記リラックスモードを実行後に前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードとを実行する場合と、
前記自動運転期間
が第3所定期間未満の場合、前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する場合とがある
覚醒制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記手動運転期間が第1所定期間以上であれば、前記複数の覚醒モードのうちから第1覚醒モードを実行し、
前記手動運転期間が第1所定期間未満であれば、前記複数の覚醒モードのうちから前記第1覚醒モードよりも覚醒効果の低い第2覚醒モードを実行する
請求項1又は2に記載の覚醒制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記手動運転期間が第1所定期間以上であり、かつ、走行経路の複雑度が第1閾値以上、及び、走行速度の変化度合いが第2閾値以上の少なくとも一方を満たす場合、前記複数の覚醒モードのうちから第3覚醒モードを実行する
請求項1~3のいずれか1項に記載の覚醒制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、
前記手動運転期間における、前記移動体の走行経路の明るさ、ステアリングの操作回数、前記移動体の加減速の回数に基づいて、
前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する
請求項1又は2に記載の覚醒制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記走行経路の明るさが所定値未満、ステアリングの操作回数が所定数以上、及び、加減速の回数が所定回数以上の少なくとも一方を満たす場合、前記複数の覚醒モードのうちから第4覚醒モードを実行する
請求項5に記載の覚醒制御装置。
【請求項7】
さらに、前記運転支援制御を終了する時間を含む時間情報を取得する第3取得部を備え、
前記制御部は、前記運転支援制御を終了する時間に応じて、前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する
請求項1~
6のいずれか1項に記載の覚醒制御装置。
【請求項8】
前記記憶部は、前記複数の覚醒モードのそれぞれに設定されているモード実行時間を記憶し、
前記制御部は、前記自動運転状態の自動運転期間において、前記運転支援制御を終了する時間及び前記モード実行時間に応じて前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する
請求項
7に記載の覚醒制御装置。
【請求項9】
前記移動体が前記手動運転状態から前記自動運転状態に切り替わる際に、前記運転者に対して案内を出力する出力部を備える
請求項1~
8のいずれか1項に記載の覚醒制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記手動運転期間が第2所定期間よりも短い場合、覚醒モードを実行しない
請求項1~
9のいずれか1項に記載の覚醒制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば移動体を運転する運転者を覚醒させるための覚醒制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両を自動的に走行させる自動走行制御を行う車両制御部と、車両の運転者の覚醒度を取得する覚醒度取得部とを備える車両運転制御装置が開示されている。自動運転制御部は、自動走行制御を行う自動運転モードの際の覚醒度が予め定めた閾値未満になると、自動走行制御を解除して自動運転モードから手動運転モードに切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、車両運転制御装置としての従来の覚醒制御装置では、自動運転モードとしての自動運転状態から手動運転モードとしての手動運転状態に切り替えることで、眠気を覚えたユーザに対して覚醒を促すことができる。しかしながら、従来の覚醒制御装置では、単に自動運転モードとしての自動運転状態から手動運転状態に切り替わるだけであり、運転者を覚醒させる制御が一定となりがちである。このため、運転者を効果的に覚醒させることは困難であるという課題がある。
【0005】
そこで、本開示では、運転者を効果的に覚醒させることができる覚醒制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る覚醒制御装置は、自動運転状態と手動運転状態とを切り替え可能な移動体に用いられる覚醒制御装置であって、前記手動運転状態から前記自動運転状態に切り替わる運転支援制御の指示を取得する第1取得部と、前記手動運転状態の手動運転期間を示す期間情報を取得する第2取得部と、移動体を運転する運転者の覚醒を誘発する覚醒誘発部と、前記運転者を覚醒させるための複数の覚醒モードを記憶する記憶部と、前記手動運転期間の長さに依存して前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する制御部とを備え、前記制御部は、さらに、前記手動運転期間での前記移動体の走行経路の複雑度、及び、前記手動運転期間での走行速度の変化度合いに基づいて、前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行し、前記制御部は、前記手動運転期間に前記運転者が休息した場合、休息終了時点から前記自動運転状態に切り替わる時点までの前記手動運転期間が第1所定期間以上であるとき、前記複数の覚醒モードのうちから第1覚醒モードを選択し、選択した前記第1覚醒モードを実行し、前記手動運転期間に前記運転者が休息した場合、休息終了時点から前記自動運転状態に切り替わる時点までの前記手動運転期間が前記第1所定期間未満であるとき、前記複数の覚醒モードのうちから前記第1覚醒モードよりも覚醒効果の低い第2覚醒モードを選択し、選択した前記第2覚醒モードを実行する。
また、本開示の一態様に係る覚醒制御装置は、自動運転状態と手動運転状態とを切り替え可能な移動体に用いられる覚醒制御装置であって、前記手動運転状態から前記自動運転状態に切り替わる運転支援制御の指示を取得する第1取得部と、前記手動運転状態の手動運転期間を示す期間情報を取得する第2取得部と、移動体を運転する運転者の覚醒を誘発する覚醒誘発部と、前記運転者を覚醒させるための複数の覚醒モードを記憶する記憶部と、前記手動運転期間の長さに依存して前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する制御部とを備え、前記制御部は、前記手動運転状態から前記自動運転状態に切り替わったときに、前記自動運転状態が第3所定期間以上の場合、前記運転者に休息を与えるためのリラックスモードと、前記リラックスモードを実行後に前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードとを実行する場合と、前記自動運転期間が第3所定期間未満の場合、前記複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する場合とがある。
【0007】
なお、これらのうちの一部の具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体を用いて実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせを用いて実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の覚醒制御装置は、運転者を効果的に覚醒させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る覚醒制御装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、車両の車室内に配置される覚醒制御装置等を示す模式図である。
【
図3】
図3は、複数の覚醒モードを例示する図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る覚醒制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、手動運転状態から自動運転状態に切り替わったときの運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5とは別の動作例であり、実施の形態1に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る覚醒制御装置を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の、自動運転期間で複数の覚醒モードを実行した運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る覚醒制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の運転者の覚醒度と時間との関係を示す別の図である。
【
図13】
図13は、
図11及び
図12とは別の動作例であり、実施の形態2の動作例に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
<構成:覚醒制御装置10>
図1は、実施の形態1に係る覚醒制御装置10を示すブロック図である。
図2は、車両の車室内に配置される覚醒制御装置10等を示す模式図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、覚醒制御装置10は、移動体1に搭載され、自動運転状態の移動体1内で休息している運転者を覚醒させるために、移動体1に設けられる機器を制御する。覚醒制御装置10は、移動体1に搭載される中央制御装置11(ECU:Electronic Control Unit)等から、移動体1の状態を示す情報を取得する。移動体1は、例えば、車両、電車、航空機等である。本実施の形態では、移動体1の一例として自動運転車を用いる。移動体1は、自動運転状態と手動運転状態とを切り替え可能である。自動運転状態とは、運転者の操作に依存せずに自動的に走行することが可能な状態である。具体的には、自動運転状態は、無人の車両が完全に自動手運転される完全自動運転(レベル5)だけでなく、高度自動運転(レベル4)、条件付自動運転(レベル3)、部分自動運転(レベル2)及び運転者をサポートする運転支援(レベル1)を意味する。手動運転状態とは、移動体1の運転者が、自らの直接的な操作によって、移動体1を運転することが可能な状態である。移動体1の状態は、自動運転状態、手動運転状態、移動速度、現在位置等である。運転者は、手動運転状態のときに、移動体1を運転する人である。
【0015】
覚醒制御装置10は、第1取得部21と、第2取得部22と、制御部24と、記憶部25と、覚醒誘発部26と、出力部27とを備える。
【0016】
[第1取得部21]
第1取得部21は、移動体1が手動運転状態から自動運転状態に切り替わるための運転支援制御の指示を取得する。また、第1取得部21は、移動体1が自動運転状態から手動運転状態に切り替わるための運転支援制御の解除指示を取得する。第1取得部21は、運転支援制御の指示及び運転支援制御の解除指示を、移動体1の中央制御装置11等から取得する。運転支援制御は、運転者が移動体1を手動運転することなく、移動体1が自動で走行するための制御である。第1取得部21は、例えば通信インターフェイス、検知部等である。
【0017】
また、第1取得部21は、自動運転状態の移動体1が移動する予定の移動ルートを示すルート情報、移動体1の現在位置を示す位置情報、移動体1が移動ルートに応じて移動するための地図情報、移動ルートの出発地点を示す情報及び目的地点を示す情報等を取得する。第1取得部21は、ルート情報、位置情報、地図情報、出発地点を示す情報、目的地点を示す情報、運転支援制御の指示、及び、運転支援制御の解除指示をそれぞれ制御部24に出力する。
【0018】
[第2取得部22]
第2取得部22は、手動運転状態の手動運転期間を示す期間情報を取得する。手動運転期間は、手動運転を開始した時点(運転支援制御の解除指示を取得した時点)から、継続して手動運転を終了した時点(運転支援制御の指示を取得した時点)までの期間である。第2取得部22は、取得した期間情報を制御部24に出力する。第2取得部22は、例えば通信インターフェイス、検知部等である。
【0019】
[制御部24]
制御部24は、自動運転状態の移動体1で休息を取得した運転者に対して覚醒させる制御を行う。具体的には、制御部24は、移動体1を手動運転状態から自動運転状態に切り替えた後の自動運転状態において、手動運転期間の長さに依存して複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する。覚醒モードは、運転者を覚醒させるためのモードであり、制御部24が覚醒誘発部26を制御することで実行される。
【0020】
なお、制御部24は覚醒モードの実行を所定のタイミングで行うため、覚醒モードの実行のタイミングは本実施の形態では限定されない。なお、休息を取得したか否かは、移動体1が規定期間以上停止した場合、移動体1のエンジンが停止した場合等によって制御部24が判定してもよい。
【0021】
例えば、手動運転期間が長いほど運転者は運転に疲れている(疲労度が高い)ため、制御部24は、運転者を覚醒させる効果(覚醒効果)の高い覚醒モードを複数の覚醒モードから選択する。また、手動運転期間が短いほど運転者はさほど運転に疲れていないため、制御部24は、運転者を覚醒させる効果の低い覚醒モードを複数の覚醒モードから選択する。例えば、制御部24は、手動運転期間が第1所定期間以上であれば、運転者を覚醒させる効果の高い第1覚醒モードを選択し、手動運転期間が第1所定期間未満であれば、運転者を覚醒させる効果の低い第2覚醒モードを選択する。なお、本実施の形態では、1つの閾値を用いて「覚醒度が高い」及び「覚醒度が低い」の2段階に分類しているがこれに限定されず、複数の閾値を用いることで3段階以上に分類されてもよい。
【0022】
なお、制御部24は、手動運転期間が第2所定期間よりも短い場合、覚醒モードを実行しなくてもよい。第2所定期間は、第1所定期間よりも短い。つまり、手動運転期間が短すぎれば運転者はさほど疲れないため、覚醒モードを実行しても効果が見込めないと考えられる。
【0023】
【0024】
「覚醒効果の高い」は、運転者に与える刺激の程度が強いことを意味し、「覚醒効果の低い」は、運転者に与える刺激の程度が弱いことを意味する。例えば、
図1及び
図3に示すように、覚醒効果の高い第1覚醒モードでは、空調装置26aが常温よりも低く風量の強い冷風を吹き出し、シート温度調節装置26cが温度を急激に下げ(急冷)、音響装置26bがロックンロール系の音を出力する。また、覚醒効果の低い第2覚醒モードでは、空調装置26aが常温よりも低く風量の弱い冷風を吹き出し、シート温度調節装置26cを弱冷することで出力温度を強めたり弱めたりし、音響装置26bがクラッシック等のリラックス系の音を出力する。
【0025】
制御部24は、手動運転期間内に運転者が休息した場合に当該休息に基づいて、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する。つまり、手動運転状態で運転者がパーキングで休息したり、駐車場で停車して休息したりした場合、運転者の疲れは改善されていると考えられる。制御部24は、手動運転期間内に運転者が休息した場合、手動運転期間が第1所定期間以上でも、覚醒効果の低い第2覚醒モードを実行する。つまり、制御部24は、休息期間終了から自動運転開始までの期間を参照して、当該期間が第1所定期間以上であれば、第1覚醒モードを実行してもよい。
【0026】
制御部24は、選択された覚醒モードを実行するために、覚醒誘発部26を制御する。つまり、制御部24は、覚醒モードに応じて覚醒誘発部26を構成する機器をそれぞれ制御する。制御部24は、覚醒誘発部26のそれぞれの機器を覚醒モードで制御する場合、一定の出力で制御してもよいが、三角波制御等のように出力を変化させるように制御してもよい。
【0027】
[記憶部25]
記憶部25は、
図3に示すように、運転者を覚醒させるための複数の覚醒モードを記憶する。記憶部25では、制御部24の要求に応じて、選択された覚醒モードが実行される。
【0028】
記憶部25は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などである。
【0029】
[覚醒誘発部26]
覚醒誘発部26は、例えば、空調装置26a、音響装置26b、シート温度調節装置26c等の機器である。覚醒誘発部26では、制御部24が実行する覚醒モードに応じて、移動体1を運転する運転者の覚醒を誘発するために、それぞれの機器が駆動する。空調装置26aは、移動体1内の室温を調節するエアコンディショナである。空調装置26aは、制御部24に制御されることで、温風、冷風及び送風を出すことが可能である。音響装置26bは、音を出力するスピーカ等のオーディオ機器である。空調装置26aは、制御部24に制御されることで、例えば、音としての音楽(ロック、クラッシック等)を出力する。シート温度調節装置26cは、運転席に搭載され、運転者の臀部、背部等を温めたり、冷ましたりすることが可能である。シート温度調節装置26cは、制御部24に制御されることで、運転者の臀部、背部等を選択的に温めたり、冷ましたりする。
【0030】
[出力部27]
出力部27は、第1取得部21及び制御部24を介して取得した運転支援制御の指示に基づいて、移動体1が手動運転状態から自動運転状態に切り替わる際に、運転者に対して案内を出力する。案内とは、音声又は文字によって、運転者に対する通知である。例えば、案内は、「長時間手動お疲れ様でした。自動運転状態は〇〇時間と長いため、覚醒モードを終了します。」、又は、「長時間手動お疲れ様でした。自動運転状態は〇〇時間と短いため覚醒モードを維持します。」である。出力部27は、例えば、モニタ等の表示部、音声による音を出力する音響部である。音響部は、上述の音響装置26bと同一であってもよく、別の装置であってもよい。
【0031】
<処理>
本実施の形態の覚醒制御装置10の処理について説明する。
【0032】
図4は、実施の形態1に係る覚醒制御装置10の処理を示すフローチャートである。
【0033】
まず、
図4に示すように、覚醒制御装置10の第1取得部21は、移動体1の中央制御装置11から、手動運転状態から自動運転状態に切り替わる自動運転制御の指示を取得する(S11)。第1取得部21は、取得した自動運転制御の指示を制御部24に出力する。
【0034】
また、覚醒制御装置10の第2取得部22は、手動運転状態から自動運転状態に切り替わる場合、移動体1の中央制御装置11から、手動運転状態の開始から終了するまでの手動運転状態の手動運転期間を示す期間情報を取得する(S12)。第2取得部22は、取得した期間情報を制御部24に出力する。なお、ステップS11の処理とステップS12の処理とは逆であってもよく、同時であってもよい。
【0035】
制御部24は、自動運転制御の指示及び期間情報を取得する。制御部24は、期間情報に示される手動運転期間内に、運転者が休息を取得したか否かを判定する(S13)。
【0036】
制御部24は、期間情報に示される手動運転期間内に運転者が休息を取得した場合(S13でYES)、休息後(休息終了時点)から自動運転状態に切り替わる時点までの手動運転期間が第1所定期間以上であるか否かを判定する(S14)。
【0037】
図5は、手動運転状態から自動運転状態に切り替わったときの運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
図5のaは、手動運転状態の手動運転期間が第1所定期間以上である場合の覚醒度を示し、
図5のbは、手動運転状態の手動運転期間が第1所定期間未満である場合の覚醒度を示す。破線は、覚醒モードを実行していないとき(非実行時)の運転者の覚醒度であり、二点鎖線は、覚醒モードを実行したときの運転者の覚醒度である。
【0038】
図4及び
図5のaに示すように、休息後(休息終了時点)から自動運転状態に切り替わる時点までの手動運転期間が第1所定期間以上である場合(S14でYES)、運転者は疲れている状態にある。このため、制御部24は、覚醒効果の高い第1覚醒モードを記憶部25から選択して実行する(S15)。そして、制御部24は、処理を終了する。
【0039】
また、
図4及び
図5のbに示すように、休息後(休息終了時点)から自動運転状態に切り替わる時点までの手動運転期間が第1所定期間未満である場合(S14でNO)、運転者はさほど疲れていない状態にある。このため、制御部24は、覚醒効果の低い第2覚醒モードを記憶部25から選択して実行する(S17)。そして、制御部24は、処理を終了する。
【0040】
制御部24は、期間情報に示される手動運転期間内に運転者が休息を取得していない場合(S13でNO)、手動運転状態の開始時点から自動運転状態に切り替わる時点までの手動運転期間が第1所定期間以上であるか否かを判定する(S16)。
【0041】
制御部24は、手動運転期間が第1所定期間以上である場合(S16でYES)、ステップS15の処理を実行する。
【0042】
また、制御部24は、手動運転期間が第1所定期間未満である場合(S16でNO)、ステップS17の処理を実行する。
【0043】
そして、制御部24は、処理を終了する。
【0044】
なお、本実施の形態のフローチャートでは、ステップS13、S14を省略してもよい。
【0045】
<動作例>
図6は、
図5とは別の動作例であり、実施の形態1に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
図6のaは、手動運転状態の手動運転期間が第1所定期間以上である場合の覚醒度を示し、
図6のbは、手動運転状態の手動運転期間が第1所定期間未満である場合の覚醒度を示す。破線は、覚醒モードを実行していないとき(非実行時)の運転者の覚醒度であり、二点鎖線は、覚醒モードを実行したときの運転者の覚醒度である。
【0046】
図4及び
図6のaに示すように、休息後(休息終了時点)から自動運転状態に切り替わる時点までの手動運転期間が第1所定期間以上である場合(S14でYES)、運転者は疲れている状態にある。このため、制御部24は、第1覚醒モードとは別の第3覚醒モードとして、覚醒誘発部26のそれぞれの機器を三角波制御することで、それぞれの機器の出力を強めたり弱めたりする。第3覚醒モードでは、それぞれの機器の出力の強弱の差異が大きい。
【0047】
また、
図4及び
図6のbに示すように、休息後(休息終了時点)から自動運転状態に切り替わる時点までの手動運転期間が第1所定期間未満である場合(S14でNO)、運転者はさほど疲れていない状態にある。このため、制御部24は、第2覚醒モードとは別の第4覚醒モードとして、覚醒誘発部26のそれぞれの機器を三角波制御することで、それぞれの機器の出力を強めたり弱めたりする。第4覚醒モードでは、それぞれの機器の出力の強弱の差異が小さく、第3覚醒モードよりも運転者の覚醒効果が低い。
【0048】
<実施例1>
制御部24は、手動運転期間の長さの他に、さらに、手動運転期間での移動体1の走行経路の複雑度及び走行速度の変化度合いに基づいて、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行してもよい。具体的には、制御部24は、手動運転期間が第1所定期間以上であり、かつ、走行経路の複雑度が第1閾値以上、及び、走行速度の変化度合いが第2閾値以上の少なくとも一方を満たす場合、複数の覚醒モードのうちから第3覚醒モードを実行してもよい。制御部24は、上述した、手動運転期間の長さだけでなく、さらに手動運転期間での移動体1の走行経路、及び、手動運転期間での走行速度の変化度合いを用いて、自動運転状態時に複数の覚醒モードから所定の覚醒モードを選択して実行してもよい。なお、第3覚醒モードは、第1覚醒モードと同様の覚醒効果であってもよく、第1覚醒モードよりも高い覚醒効果であってもよい。
【0049】
例えばこの場合、移動体1の走行経路の複雑度が高ければ(第1閾値以上であれば)、運転者が注意深く運転するため、手動運転状態の移動体1を運転することは困難であり、運転者は疲れやすくなる。「走行経路の複雑度が高い」とは、走行経路上において、狭い個所が所定個所以上(狭い個所が多い場合の場合)、障害物が所定数以上の場合(障害物が多い場合)、及び、曲がった回数が所定回数以上の場合(曲がった回数が多い場合)等を意味する。「走行経路の複雑度が低い」とは、この逆であり、走行経路の複雑度が第1閾値未満を意味する。移動体1の走行経路の複雑度が低ければ、運転者は疲れ難くなる。
【0050】
また、例えば、走行速度の変化度合いが高い(第2閾値以上)場合とは、最高速度から最低速度までの幅が大きい場合、走行速度の変化の回数が多い場合等である。このため、運転者は疲れやすくなる。走行速度の変化度合いが低い(第2閾値未満)場合とは、加速及び減速する場合がさほど無く、運転者は疲れ難くなる。
【0051】
なお、フローチャートは省略するが、例えば、
図4のステップS14及びS16の後に、制御部24は、走行経路の複雑度が第1閾値以上、及び、走行速度の変化度合いが第2閾値以上の少なくとも一方を満たすか否かを判定してもよい。
【0052】
<実施例2>
制御部24は、さらに、手動運転期間における、移動体1の走行経路の明るさ、
図2のステアリング3eの操作回数、移動体1の加減速の回数に基づいて、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行してもよい。具体的には、制御部24は、走行経路の明るさが所定値未満、ステアリング3eの操作回数が所定数以上、及び、加減速の回数が所定回数以上の少なくとも1つを満たす場合、運転者は疲れやすい。このため、制御部24は、複数の覚醒モードのうちから第4覚醒モードを実行してもよい。なお、第4覚醒モードは、第1覚醒モード及び/又は第3覚醒モードと同様の覚醒効果であってもよく、第1覚醒モード又は第3覚醒モードよりも高い覚醒効果であってもよい。
【0053】
例えばこの場合、走行経路の明るさが暗ければ(明るさが所定値未満であれば)、運転者が目を凝らしたりして注意深く運転するため、手動運転状態の移動体1を運転することは困難であり、運転者は疲れやすくなる。移動体1の走行経路の明るさが明るければ(明るさが所定値以上であれば)、運転者は疲れ難くなる。なお、制御部24は、走行経路が暗い個所の距離が所定距離以上であれば運転者は疲れやすいため、適切な覚醒モードを実行してもよく、所定距離未満であれば運転者は疲れ難いため、適切な覚醒モードを実行してもよい。
【0054】
例えばこの場合、ステアリング3eの操作回数が多い場合は、運転者によるステアリング3eの操作回数が所定回数以上の場合であり、運転者は疲れやすくなる。「ステアリング3eの操作回数」は、運転者がステアリング3eを操作することで右折及び左折した回数であってもよい。移動体1の走行経路の明るさが明るければ、運転者は疲れ難くなる。ステアリング3eの操作回数が少ない場合(所定回数未満の場合)は、運転者は疲れ難くなる。
【0055】
例えばこの場合、移動体1の加減速の回数が多い場合は、急加速及び急減速をする回数が所定回数以上の場合であり、運転者は疲れやすくなる。移動体1の加減速の回数が少ない場合は、急加速及び急減速をする回数が所定回数未満の場合であり、運転者は疲れ難くなる。
【0056】
なお、フローチャートは省略するが、例えば、
図4のステップS14及びS16の後に、制御部24は、走行経路の明るさが所定値未満、ステアリング3eの操作回数が所定数以上、及び、加減速の回数が所定回数以上の少なくとも一方を満たすか否かを判定してもよい。
【0057】
<作用効果>
次に、本実施の形態における覚醒制御装置10の作用効果について説明する。
【0058】
上述したように、本実施の形態の覚醒制御装置10は、自動運転状態と手動運転状態とを切り替え可能な移動体1に用いられる覚醒制御装置10であって、手動運転状態から自動運転状態に切り替わる運転支援制御の指示を取得する第1取得部21と、手動運転状態の手動運転期間を示す期間情報を取得する第2取得部22と、移動体1を運転する運転者の覚醒を誘発する覚醒誘発部26と、運転者を覚醒させるための複数の覚醒モードを記憶する記憶部25と、移動体1を手動運転状態から自動運転状態に切り替える際に、手動運転期間の長さに依存して複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する制御部24とを備える。
【0059】
これによれば、自動運転状態に切り替わると、手動運転状態時での運転による疲れが運転者に現れるため、運転者の覚醒度は低下しがちになる。制御部24は、手動運転期間に依存して自動運転状態時に運転者に対して、低下しがちの覚醒度を回復させるように、覚醒誘発部26を制御することで覚醒モードを実行することができる。
【0060】
したがって、覚醒制御装置10では、運転者を効果的に覚醒させることができる。
【0061】
また、本実施の形態の覚醒制御装置10において、制御部24は、手動運転期間が第1所定期間以上であれば、複数の覚醒モードのうちから第1覚醒モードを実行し、手動運転期間が第1所定期間未満であれば、複数の覚醒モードのうちから第1覚醒モードよりも覚醒効果の低い第2覚醒モードを実行する。
【0062】
これによれば、手動運転期間が長ければ、疲れた運転者に応じて覚醒効果の高い第1覚醒モードを実行することができる。また、手動運転期間が短ければ、さほど疲れていない運転者に応じて覚醒効果の低い第2覚醒モードを実行することができる。このため、運転者により適した覚醒モードを実行することができる。
【0063】
また、本実施の形態の実施例1の覚醒制御装置10において、制御部24は、さらに、手動運転期間での移動体1の走行経路の複雑度、及び、手動運転期間での走行速度の変化度合いに基づいて、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する。
【0064】
これによれば、制御部24は、手動運転期間の長さだけでなく、走行経路の複雑度及び走行速度の変化度合いに基づいて、運転者の覚醒度としての疲れ度合いを精度よく推定することができる。このため、運転者に適した覚醒モードを実行することができるようになる。その結果、覚醒制御装置10では、運転者をより効果的に覚醒させることができる。
【0065】
また、本実施の形態の覚醒制御装置10において、制御部24は、手動運転期間が第1所定期間以上であり、かつ、走行経路の複雑度が第1閾値以上、及び、走行速度の変化度合いが第2閾値以上の少なくとも一方を満たす場合、複数の覚醒モードのうちから第3覚醒モードを実行する。
【0066】
これによれば、走行経路の複雑度又は走行速度の変化度合いが高ければ、疲れた運転者に応じて覚醒効果の高い第3覚醒モードを実行することができる。このため、運転者により適した覚醒モードを実行することができる。
【0067】
また、本実施の形態の覚醒制御装置10において、制御部24は、さらに、手動運転期間における、移動体1の走行経路の明るさ、ステアリング3eの操作回数、移動体1の加減速の回数に基づいて、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する。
【0068】
これによれば、制御部24は、手動運転期間の長さだけでなく、走行経路の明るさ、ステアリング3eの操作回数、及び、加減速の回数に基づいて、運転者の覚醒度としての疲れ度合いを精度よく推定することができる。このため、運転者に適した覚醒モードを実行することができるようになる。その結果、覚醒制御装置10では、運転者をより効果的に覚醒させることができる。
【0069】
また、本実施の形態の覚醒制御装置10において、制御部24は、走行経路の明るさが所定値未満、ステアリング3eの操作回数が所定数以上、及び、加減速の回数が所定回数以上の少なくとも一方を満たす場合、複数の覚醒モードのうちから第4覚醒モードを実行する。
【0070】
これによれば、走行経路の明るさ、ステアリング3eの操作回数又は移動体1の加減速の回数が高ければ、疲れた運転者に応じて覚醒効果の高い第4覚醒モードを実行することができる。このため、運転者により適した覚醒モードを実行することができる。
【0071】
また、本実施の形態の覚醒制御装置10において、制御部24は、手動運転期間に運転者が休息した場合に当該休息に基づいて、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する。
【0072】
これによれば、手動運転期間内での休息を考慮することで、制御部24は、運転者の覚醒度としての疲れ度合いを精度よく推定することができる。このため、運転者に適した覚醒モードを実行することができるようになる。その結果、覚醒制御装置10では、運転者をより効果的に覚醒させることができる。
【0073】
また、本実施の形態の覚醒制御装置10は、移動体1が手動運転状態から自動運転状態に切り替わる際に、運転者に対して案内を出力する出力部27を備える。
【0074】
これによれば、運転者に対して案内を提示することで、運転者は移動体1の状態(実行されているモード等)を認識することができる。
【0075】
また、本実施の形態の覚醒制御装置10において、制御部24は、手動運転期間が第2所定期間よりも短い場合、覚醒モードを実行しない。
【0076】
この場合、手動運転期間が短く、運転者はさほど疲れていないと考えられるため、何ら処理を実行しなくてもよい。このため、制御部24の処理負担の増大を抑制することができる。
【0077】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る覚醒制御装置10aを示すブロック図である。
【0078】
本実施の形態では、
図7に示すように、さらに第3取得部23を有する点で、実施の形態1の覚醒制御装置と相違する。本実施の形態おける他の構成は、特に明記しない場合は、実施の形態2と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0079】
覚醒制御装置10aは、第1取得部21、第2取得部22、制御部24、記憶部25、覚醒誘発部26、及び、出力部27の他に、第3取得部23を備える。
【0080】
[第3取得部23]
第3取得部23は、運転支援制御を終了する時間を含む時間情報を取得する。例えば、第3取得部23は、自動運転状態の開始から終了までの時間としての時間情報を取得する。第3取得部23は、時間情報を、移動体1の中央制御装置11等から取得する。時間情報は、予め設定された走行ルートに基づいて自動運転状態の開始から終了までの時間が、中央制御装置11によって算出される。第3取得部23は、取得した時間情報を制御部24に出力する。
【0081】
[制御部24]
本実施の形態では、時間情報を取得することで、自動運転状態の自動運転期間が判る。このため、自動運転期間が長ければ、第2所定期間だけ運転者をリラックスさせるために覚醒モードを実行せず、リラックスモードを実行する。終了時間に近づけば、制御部24は、リラックスモードから、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードに切り替えて、切り替えた覚醒モードの実行を開始する。
【0082】
【0083】
リラックスモードは、自動運転中に運転者を休息させるためのモードであり、制御部24が覚醒誘発部26を制御することで実行される。例えば、
図7及び
図8に示すように、リラックスモードでは、モード実行時間がA分間であり、空調装置26aがX°温度を上昇させ、シート温度調節装置26cがY°温度を上昇させ、音響装置26bがリラックスするためのクラシック系の音を出力する。また、第1覚醒モードではモード実行時間がB分間であり、第2覚醒モードではモード実行時間がC分間である。
【0084】
制御部24は、時間情報運転支援制御を終了する終了時間(時点)に応じて、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する。つまり、制御部24は、時間情報に示される終了時間に合わせたタイミングで、覚醒モードを実行する。例えば、制御部24は、
図8の例では、第1覚醒モードを実行する場合、終了時間よりも所定時間のB分前から、運転支援制御を終了する時間まで覚醒モードを実行する。なお、制御部24は、自動運転期間が第3所定期間よりも短い場合、覚醒モードを実行しなくてもよい。第3所定期間は、第1所定期間よりも短い期間であってもよく、第2所定期間と同一であってもよく異なっていてもよい。
【0085】
図9は、実施の形態2に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の、自動運転期間で複数の覚醒モードを実行した運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。破線は、覚醒モードを実行していないとき(非実行時)の運転者の覚醒度であり、二点鎖線は、覚醒モードを実行したときの運転者の覚醒度である。
【0086】
図9に示すように制御部24は、自動運転状態の自動運転期間において、運転支援制御を終了する時間及びモード実行時間に応じて複数の覚醒モードを実行する。例えば、制御部24は、自動運転期間において、リラックスモードを実行する第1期間と、覚醒モードを実行する第2期間と、別の覚醒モードを実行する第3期間とに分けて、モードを実行してもよい。第1期間は自動運転期間の開始時点からの所定の期間(最初の期間)であり、制御部24がリラックスモードを実行して運転者に休息しやすい環境を提供する。なお、第1期間では、最も覚醒効果の低い覚醒モードを実行してもよい。第2期間は第1期間経過時点からの所定の期間であり、制御部24が第2覚醒モードを実行して運転者を徐々に覚醒させる。第3期間は第2期間経過時点からの所定の期間であり、制御部24が第1覚醒モードを実行して運転者を強く覚醒させる。つまり、最後の第3期間では、第2期間よりも覚醒効果の高い覚醒モードを実行する。
図9では、自動運転期間の終了に近づくにつれて、次第に覚醒効果の高い覚醒モードが実行される。
【0087】
[記憶部25]
記憶部25は、
図8に示すように、複数の覚醒モードのそれぞれに設定されているモード実行時間を記憶する。記憶部25は、制御部24によって、モード実行時間が読みだされる。
【0088】
<処理>
本実施の形態の覚醒制御装置10aの処理について説明する。
【0089】
図10は、実施の形態2に係る覚醒制御装置10aの処理を示すフローチャートである。
【0090】
本実施の形態では、
図4と同様の処理については、同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
【0091】
まず、
図10に示すように、ステップS11及びS12を経て、覚醒制御装置10aの第3取得部23は、手動運転状態から自動運転状態に切り替わる場合、移動体1の中央制御装置11から、自動運転状態の開始から終了までの時間としての時間情報を取得する(S21)。なお、ステップS12及びS21は、ステップS21がS12よりも先に行われてもよく、同時に行われてもよい。
【0092】
ステップS13、S14の処理を経てステップS14でYESの場合、又は、ステップS13、S16の処理を経てステップS16でYESの場合、制御部24は、自動運転期間が第3所定期間以上であるか否かを判定する(S22)。
【0093】
制御部24は、自動運転期間が第3所定期間以上である場合(S22でYES)、リラックスモードを実行後、第1覚醒モードを実行する。
【0094】
図11は、実施の形態2に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
図11のaは、手動運転状態の手動運転期間が長く(手動運転期間が第1所定期間以上)かつ自動運転期間も長い(自動運転期間が第3所定期間以上)場合の覚醒度を示し、
図11のbは、手動運転状態の手動運転期間が長くかつ自動運転期間が短い(自動運転期間が第3所定期間未満)場合の覚醒度を示す。破線は、覚醒モードを実行していないとき(非実行時)の運転者の覚醒度であり、二点鎖線は、覚醒モードを実行したときの運転者の覚醒度である。
【0095】
具体的には、ステップS22でYESの場合、手動運転期間が長いために運転者が運転に疲れている状態であり、かつ、自動運転期間が長い場合である。このため、
図11のaに示すように、手動運転状態から自動運転状態に切り替わったときに、制御部24は、自動運転期間に基づいて、運転者に休息を与えるリラックスモード及び第1覚醒モードを実行する。具体的には、制御部24は、時間情報によって自動運転期間の終了時間(自動運転状態の終了の時間)を把握することができるため、終了時間から第1覚醒モードを実行するために必要なモード実行時間を差し引くことで、リラックスモードを実行する時間を算出する。なお、移動体1の移動状況によって、自動運転期間が長引く場合、制御部24は、適宜、リラックスモードを実行する時間を算出し直してもよい。そして、制御部24は、処理を終了する。
【0096】
また、制御部24は、自動運転期間が第3所定期間未満である場合(S22でNO)、第2覚醒モードを実行する。
【0097】
具体的には、ステップS22でNOの場合、手動運転期間が長いために運転者が運転に疲れている状態であり、かつ、自動運転期間が短い場合である。この場合、運転者は疲れているが、自動運転期間が短いため、運転者は十分に休息をとる時間がないと考えられる。このため、
図11のbに示すように、手動運転状態から自動運転状態に切り替わったときに、制御部24は、自動運転期間に基づいて、運転者に対して第2覚醒モードを実行する。具体的には、制御部24は、手動運転状態から自動運転状態に切り替わってから第2覚醒モードを実行する。そして、制御部24は、処理を終了する。
【0098】
ステップS13、S14の処理を経てステップS14でNOの場合、又は、ステップS13、S16の処理を経てステップS16でNOの場合、制御部24は、自動運転期間が第3所定期間以上であるか否かを判定する(S24)。
【0099】
制御部24は、自動運転期間が第3所定期間以上である場合(S24でYES)、リラックスモードを実行後、第2覚醒モードを実行する。
【0100】
図12は、実施の形態2に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の運転者の覚醒度と時間との関係を示す別の図である。
図12のaは、手動運転状態の手動運転期間が短く(手動運転期間が第1所定期間未満)かつ自動運転期間が長い(自動運転期間が第3所定期間以上)場合の覚醒度を示し、
図12のbは、手動運転状態の手動運転期間が短くかつ自動運転期間も短い場合の覚醒度を示す。破線は、覚醒モードを実行していないとき(非実行時)の運転者の覚醒度であり、二点鎖線は、覚醒モードを実行したときの運転者の覚醒度である。
【0101】
具体的には、ステップS24でYESの場合、手動運転期間が短いために運転者がさほど疲れていない状態であり、かつ、自動運転期間が長い場合である。このため、
図12のaに示すように、手動運転状態から自動運転状態に切り替わったときに、制御部24は、自動運転期間に基づいて、運転者に休息を与えるリラックスモード及び第2覚醒モードを実行する。具体的には、制御部24は、時間情報によって自動運転期間の終了時間(自動運転状態の終了の時間)を把握することができるため、終了時間から第2覚醒モードを実行するために必要なモード実行時間を差し引くことで、リラックスモードを実行する時間を算出する。なお、移動体1の移動状況によって、自動運転期間が長引く場合、制御部24は、適宜、リラックスモードを実行する時間を算出し直してもよい。そして、制御部24は、処理を終了する。
【0102】
また、制御部24は、自動運転期間が第3所定期間未満である場合(S24でNO)、処理を終了する。
【0103】
具体的には、ステップS24でNOの場合、手動運転期間が短いために運転者がさほど疲れていない状態であり、かつ、自動運転期間が短い場合である。この場合、運転者はさほど疲れておらず、自動運転期間も短いため、運転者は休息をとる時間がないと考えられる。このため、
図12のbに示すように、手動運転状態から自動運転状態に切り替わったときに、制御部24は、覚醒モードを実行せずに、処理を終了する。
【0104】
なお、本実施の形態のフローチャートでは、ステップS13、S14を省略してもよい。
【0105】
<動作例>
図13は、
図11及び
図12とは別の動作例であり、実施の形態2の動作例に係る移動体の手動運転状態及び自動運転状態の運転者の覚醒度と時間との関係を示す図である。
図13のaは、手動運転状態の手動運転期間が長く(手動運転期間が第1所定期間以上)かつ自動運転期間も長い(自動運転期間が第3所定期間以上)場合の覚醒度を示す。
図13のbは、手動運転状態の手動運転期間が長くかつ自動運転期間が短い(自動運転期間が第3所定期間未満)場合の覚醒度を示す。
図13のcは、手動運転状態の手動運転期間が短く(手動運転期間が第1所定期間未満)かつ自動運転期間が長い場合の覚醒度を示す。破線は、覚醒モードを実行していないとき(非実行時)の運転者の覚醒度であり、二点鎖線は、覚醒モードを実行したときの運転者の覚醒度である。
【0106】
図10及び
図13のaに示すように、手動運転期間が第3所定期間以上であり、かつ、自動運転期間が第3所定期間以上である場合(S22でYES)、運転者は疲れている状態にある。このため、制御部24は、リラックスモードを実行した後、第1覚醒モードとは別の第3覚醒モードとして、覚醒誘発部26のそれぞれの機器を三角波制御することで、それぞれの機器の出力を強めたり弱めたりする。
【0107】
また、
図10及び
図13のbに示すように、手動運転期間が第3所定期間以上であり、かつ、自動運転期間が第3所定期間未満である場合(S22でNO)、運転者は疲れている状態にある。このため、制御部24は、第2覚醒モードとは別の第4覚醒モードとして、覚醒誘発部26のそれぞれの機器を三角波制御することで、それぞれの機器の出力を強めたり弱めたりする。
【0108】
また、
図10及び
図13のcに示すように、手動運転期間が第3所定期間未満であり、かつ、自動運転期間が第3所定期間以上である場合(S24でYES)、運転者はさほど疲れていない状態にある。このため、制御部24は、リラックスモードを実行した後、第2覚醒モードとは別の第4覚醒モードとして、覚醒誘発部26のそれぞれの機器を三角波制御することで、それぞれの機器の出力を強めたり弱めたりする。
【0109】
<作用効果>
次に、本実施の形態における覚醒制御装置10aの作用効果について説明する。
【0110】
上述したように、本実施の形態の覚醒制御装置10aは、さらに、運転支援制御を終了する時間を含む時間情報を取得する第3取得部23を備える。そして、制御部24は、運転支援制御を終了する時間に応じて、複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する。
【0111】
これによれば、運転支援制御を終了する前から覚醒モードを実行することで、運転支援制御を終了する時間に合わせて、運転者を覚醒することができる。このため、運転者は、快適に手動運転状態の移動体1を運転することができる。
【0112】
また、本実施の形態の覚醒制御装置10aにおいて、記憶部25は、複数の覚醒モードのそれぞれに設定されているモード実行時間を記憶する。そして、制御部24は、自動運転状態の自動運転期間において、運転支援制御を終了する時間及びモード実行時間に応じて複数の覚醒モードのうちの少なくともいずれかの覚醒モードを実行する。
【0113】
これによれば、運転支援制御を終了する前から覚醒モードを実行することで、運転支援制御を終了する時間に合わせて覚醒モードの実行も完了することができる。運転者は、確実に覚醒することができるため、より快適に手動運転状態の移動体1を運転することができる。
【0114】
(その他変形例等)
以上、本開示について、実施の形態1、2に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態1、2等に限定されるものではない。
【0115】
例えば、上記各実施の形態1、2に係る覚醒制御装置に含まれる各処理部は、典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0116】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0117】
なお、上記各実施の形態1、2において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0118】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態1、2は例示された数字に制限されない。
【0119】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0120】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0121】
その他、実施の形態1、2に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態1、2における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本開示は、例えば、車両、航空機、船舶等の移動体等に利用可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 移動体
3e ステアリング
10、10a 覚醒制御装置
21 第1取得部
22 第2取得部
23 第3取得部
24 制御部
25 記憶部
26 覚醒誘発部
27 出力部