(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】セグメントの継手構造と継手方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/04 20060101AFI20240425BHJP
E21D 11/14 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
E21D11/04 A
E21D11/14
(21)【出願番号】P 2020149369
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520185546
【氏名又は名称】ユニタイトシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】尾関 孝人
(72)【発明者】
【氏名】服部 佳文
(72)【発明者】
【氏名】真柴 浩
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敦
(72)【発明者】
【氏名】志田 智之
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆良
(72)【発明者】
【氏名】日高 拳
(72)【発明者】
【氏名】徳田 裕至
(72)【発明者】
【氏名】井上 富美久
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勝治
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-293172(JP,A)
【文献】特開2005-090179(JP,A)
【文献】特開2001-098895(JP,A)
【文献】特開2003-343196(JP,A)
【文献】特開平09-060489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一セグメントの第一継手板に設けられている雄継手と、第二セグメントの第二継手板に設けられている雌継手とが接続されている、セグメントの継手構造であって、
前記雄継手は、
前記第一セグメントの内部に設けられているボックスを有し、
前記ボックスの内部において、回転自在に取り付けられているウォームギアと、該ウォームギアによってその回転中心軸回りに回転されるウォームホイールと、該ウォームホイールの回転中心に開設されているボルト溝に対して螺合され、該回転中心軸に沿って摺動し、前記第一継手板に開設されている挿通孔を挿通して第二継手板側に突設し、前記ボルト溝に螺合する軸体と該軸体の端部にある係合頭部とを備えている継手ボルトと、を有しており、
前記雌継手は、前記第二継手板に開設されている切り欠きであり、
前記継手ボルトが前記切り欠きに挿通され、前記係合頭部の背面が前記第二継手板の内側面における該切り欠きの周囲に係合していることを特徴とする、セグメントの継手構造。
【請求項2】
前記第二セグメントは、前記第二継手板に直交する主桁を備えており、
前記主桁には、前記切り欠きに連通して前記係合頭部が挿通される頭部挿通孔が開設されていることを特徴とする、請求項1に記載のセグメントの継手構造。
【請求項3】
前記継手ボルトの前記軸体には係止部が設けられており、
前記挿通孔もしくは前記切り欠きに対して前記係止部が係止されることにより、供回り防止機構が形成され、
前記供回り防止機構は、前記継手ボルトの締め付けに当たり、前記ウォームホイールが回転され、該継手ボルトが前記ボルト溝に螺合した状態で摺動する際に該ウォームホイールと該継手ボルトの供回りを防止する機構であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセグメントの継手構造。
【請求項4】
前記係止部は、以下のいずれか一種の形態であり、
(1)前記軸体に連続し、該軸体の直径よりも一辺もしくは対角線の長さが長い多角形断面を有する多角形柱体、
(2)前記軸体の側面から側方に張り出す張り出し片、
前記(1)の形態では、前記挿通孔が、挿通される前記多角形柱体が回転を抑止された状態で係止される断面形状及び断面寸法を有しており、
前記(2)の形態では、前記挿通孔もしくは前記切り欠きが、挿通される前記張り出し片が回転を抑止された状態で係止される断面形状及び断面寸法を有していることを特徴とする、請求項3に記載のセグメントの継手構造。
【請求項5】
前記係合頭部は多角形体であり、
前記第二継手板の内側面における前記切り欠きの一部の周囲には、前記多角形体が収容される収容体が設けられており、
前記収容体に前記多角形体が収容されることにより、供回り防止機構が形成され、
前記供回り防止機構は、前記継手ボルトの締め付けに当たり、前記ウォームホイールが回転され、該継手ボルトが前記ボルト溝に螺合した状態で摺動する際に該ウォームホイールと該継手ボルトの供回りを防止する機構であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセグメントの継手構造。
【請求項6】
前記ボックスには、前記ウォームギアが収容されるウォームギア収容溝と、前記ウォームホイールが収容されるウォームホイール収容溝が設けられ、該ウォームギア収容溝が該ボックスの一側面に臨む端部には座ぐり溝が設けられており、
前記ウォームギアの一端には、係合溝が設けられており、
前記係合溝にトルク導入具の一端が係合され、トルク導入具の回転により前記ウォームギアが回転されるようになっており、
前記継手ボルトにより前記第一継手板と前記第二継手板が締め付けられている状態において、前記
座ぐり溝には、頭付き軸体材の頭部の背面に止水リングが取り付けられている止水軸体材が係合し、前記頭部と前記座ぐり溝の底面との間で該止水リングが押圧されてなる止水機構が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセグメントの継手構造。
【請求項7】
第一セグメントの第一継手板に設けられている雄継手と、第二セグメントの第二継手板に設けられている雌継手とを接続する、セグメントの継手方法であって、
前記雄継手は、
前記第一セグメントの内部に設けられているボックスを有し、
前記ボックスの内部において、回転自在に取り付けられているウォームギアと、該ウォームギアによってその回転中心軸回りに回転されるウォームホイールと、該ウォームホイールの回転中心に開設されているボルト溝に対して螺合され、該回転中心軸に沿って摺動し、前記第一継手板に開設されている挿通孔を挿通して第二継手板側に突設し、前記ボルト溝に螺合する軸体と該軸体の端部にある係合頭部とを備えている継手ボルトと、を有しており、
前記雌継手は、前記第二継手板に開設されている切り欠きであり、
前記継手ボルトを前記切り欠きに沿ってスライドさせることにより、前記第一継手板と前記第二継手板を継手位置において当接させ、前記ウォームギアを回転させることにより、前記ウォームホイールの回転によって前記継手ボルトを摺動させ、前記係合頭部の背面を前記第二継手板の内側面における前記切り欠きの周囲に係合することを特徴とする、セグメントの継手方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの継手構造と継手方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下河川用トンネル(雨水幹線トンネル)は、鋼製セグメントやRC(Reinforced Concrete)セグメント、鋼製セグメントとコンクリートが合成された合成セグメント等を用いて、シールド工法により施工されることが多い。昨今、記録的な大雨による河川の氾濫が大きな社会問題となる中で、河川の氾濫前にその一部の水を地下河川用トンネルに流すことにより、あるいは雨水の一部を地下河川用トンネルに導くことにより、河川の氾濫を抑制できることから、地下河川用トンネルのニーズは高まる傾向にある。
上記する地下河川用トンネルでは、トンネルの外側から作用する地下水圧に比べて、トンネルの内側からの内水圧の方が大きくなる場合があり、この内水圧に対する様々な対策が必要になる。例えば、周方向に配設される複数のセグメントの端部同士が接続されるセグメント継手においては、十分な締結力を導入することによって止水材を確実に封入する施工が行われている。
このセグメント継手方法には様々な形態が存在する。その一つの形態として、一方のセグメントのセグメント継手面に案内溝を設けるとともにC型金物(雌金物)を埋設しておき、他方のセグメントのセグメント継手面からH型金物やT型金物(雄金物)を突設させておき、案内溝に雄金物を収容し、雄金物(を備える他方のセグメント)をスライドさせることにより、雄金物と雌金物を接続する、所謂ワンパス方式のセグメント継手が挙げられる。双方の金物の係合部にはテーパーを設けておき、金物同士を係合させた際の楔効果により締結力を得る構造を有している。しかしながら、このセグメント継手構造では、係合される雄金物と雌金物の噛み合わせの程度によって締結力にばらつきが生じ、締結力の管理が難しいといった課題がある。また、このセグメント継手構造では、締結部の楔効果に依存することから、大きな締結力の導入が難しいといった課題もある。
一方、他の形態のセグメント継手として、双方のセグメント継手面にボルトボックスを設け、ボルトボックスを介して継手ボルトにて双方のボルト継手板が直接締め付けられるセグメント継手構造が挙げられる。この形態では、継手ボルトにより直接締め付けが行われることから、大きな締結力を導入することができ、締結力の管理も容易に行うことができる。ところで、上記する内水圧が作用する地下河川用トンネルでは、ボルトボックスが穴埋めされない状態で残っていると、地下河川の流れがボルトボックスにて阻害され、当該ボルトボックスの近傍において不測の乱流の発生が懸念される。そこで、継手ボルトを締め付けた後、ボルトボックスを穴埋めして面内平滑性を確保する必要があることから、このボルトボックスの穴埋めに起因して工費の増大と工期の長期化が避けられない。また、ボルトボックスを用いた継手ボルトの締め付けでは、この締め付け箇所(ボルトボックスの配設箇所)がトンネル内側に限定されることになり、継手構造の強度としては不利と言わざるを得ない。
【0003】
ここで、接合すべき一方のセグメントに設けた雄継手の接合用ボルトの係止部を、接合すべき他方のセグメントに設けた雌継手に係止するとともに、接合用ボルトをウォーム伝動装置にて移動させて両セグメントを引き寄せ、互いの接合面を当接させることによって接合する、セグメントの継手構造が提案されている。
より具体的には、雄継手は、接合用ボルトのネジ部がウォームホイールにその回転軸として螺合しているウォーム伝動装置と、セグメントの接合面に開口を有する収納部が形成された収納ケースとを備えている。また、接合用ボルトは、係止部とウォームホイールに螺合しているネジ部との間に前蓋部を備えるとともに、収納ケースの収納部は、セグメントの接合面側に前蓋部を螺合して開口を塞ぐことができるように構成されている。前蓋部を収納ケースの収納部に螺合した際に、ウォーム伝動装置が収納部内に納まるとともに、接合用ボルトが前蓋部を貫通し、係止部が収納部外となるように構成されている、セグメントの継手構造である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のセグメントの継手構造によれば、大きな締結力を導入することができ、締結力の管理を容易に行えることに加えて、ボルトボックスが存在しないことからその穴埋め施工を不要にできる。ところで、特許文献1に記載の継手構造が対象とするセグメントはRCセグメントであるため、一方のコンクリート内に雄継手を構成するウォームとウォームホイールを備えた収納ケースが埋設された構造とし、他方のコンクリート内に雌継手が埋設された構造を適用しており、複雑な構造のセグメント継手となっている。従って、可及的にシンプルな構成で、かつ、大きな締結力の導入と容易な締結力導入管理を可能としたセグメントの継手構造の開発が望まれる。
【0006】
本発明は、可及的にシンプルな構成で、かつ、大きな締結力の導入と容易な締結力導入管理を可能とした、セグメントの継手構造と継手方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明によるセグメントの継手構造の一態様は、
第一セグメントの第一継手板に設けられている雄継手と、第二セグメントの第二継手板に設けられている雌継手とが接続されている、セグメントの継手構造であって、
前記雄継手は、
前記第一セグメントの内部に設けられているボックスを有し、
前記ボックスの内部において、回転自在に取り付けられているウォームギアと、該ウォームギアによってその回転中心軸回りに回転されるウォームホイールと、該ウォームホイールの回転中心に開設されているボルト溝に対して螺合され、該回転中心軸に沿って摺動し、前記第一継手板に開設されている挿通孔を挿通して第二継手板側に突設し、前記ボルト溝に螺合する軸体と該軸体の端部にある係合頭部とを備えている継手ボルトと、を有しており、
前記雌継手は、前記第二継手板に開設されている切り欠きであり、
前記継手ボルトが前記切り欠きに挿通され、前記係合頭部の背面が前記第二継手板の内側面における該切り欠きの周囲に係合していることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、一方のセグメント(第一セグメント)の第一継手板に設けられている雄継手の内側にウォームギアとウォームホイールを備えたボックスが配設され、ウォームホイールに対して摺動自在に螺合された継手ボルトが、他方のセグメント(第二セグメント)の第二継手板に開設されている切り欠きに挿通され、継手ボルトが締め付けられてその係合頭部が切り欠きの周囲に係合していることにより、可及的にシンプルな構成で、かつ、大きな締結力の導入と容易な締結力導入管理を可能としたセグメントの継手構造となる。
ここで、セグメントには、継手板を有する鋼製セグメントや合成セグメントが適用できる。また、本態様では、第一セグメントの第一継手板に雄継手と雌継手が設けられ、第二セグメントの第二継手板においても、第一継手板の雄継手と雌継手に対応する位置に雌継手と雄継手が設けられている形態も含まれる。また、例えば、第一継手板に複数の雄継手が設けられ、第二継手板における各雄継手に対応する位置に雌継手が設けられている(従って複数の雌継手を備えている)形態や、第一継手板に複数の雌継手が設けられ、第二継手板における各雌継手に対応する位置に雄継手が設けられている形態も含まれる。より安定的かつ接続強度の高いセグメント継手としては、第一継手板と第二継手板の双方が雄継手と雌継手をともに備え、対応する雄継手と雌継手同士が係合される形態が挙げられる。
【0009】
雄継手を構成するボックスのうち、第一継手板の側面には開口が設けられており、この開口と第一継手板に開設されている挿通孔が連通し、ウォームホイールのボルト溝に対して螺合されている継手ボルトがこれらの開口と挿通孔に挿通されてその一部が第二継手板側に突設している。より具体的には、継手ボルトの軸体の一部とその端部にある係合頭部が第二継手板側に突設している。
また、第二継手板に設けられている切り欠きの形態としては、例えば、継手ボルトの係合頭部が挿通される係合頭部挿通部と、この係合頭部挿通部に連通して継手ボルトの軸体がスライドする軸体挿通部とを有する形態が挙げられる。また、その他の形態として、第二継手板の端部からその途中位置まで延設する形態の切り欠きであってもよい。この形態の切り欠きに対しては、継手ボルトの軸体を第二継手板の端部から挿通させ、切り欠きに沿って軸体をスライドさせ、所定の位置において双方のセグメントの継手板同士を当接させ、継手ボルトの締め付けにてセグメント同士が引き寄せられることにより、セグメントの継手構造が形成される。
尚、本態様のセグメントの継手構造は、BセグメントとKセグメントのセグメント継手、BセグメントとAセグメントのセグメント継手、Aセグメント同士のセグメント継手等に対して適用することができる。
【0010】
また、本発明によるセグメントの継手構造の他の態様において、前記第二セグメントは、前記第二継手板に直交する主桁を備えており、
前記主桁には、前記切り欠きに連通して前記係合頭部が挿通される頭部挿通孔が開設されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第二継手板が、その端部からその途中位置まで延設する切り欠きを備えている形態において、継手ボルトの係合頭部が挿通される頭部挿通孔を第二セグメントの端部に配設される主桁が備えていることにより、係合頭部が主桁の頭部挿通孔に挿通され、継手ボルトの軸体が第二継手板の切り欠きに挿通された状態で、継手ボルトが切り欠きの所定位置までスライドすることができる。継手ボルトが所定位置に位置決めされた後、継手ボルトが締め付けられることにより、双方のセグメントが引き寄せられてセグメント継手における継手構造が形成される。
ここで、セグメントは地盤側に湾曲したスキンプレートを有し、スキンプレートの内側面(トンネル内空側面)のリング継手側の両端部において、トンネルの周方向に延設する主桁を備えている。また、この二本の主桁の内側において、一つもしくは複数の別途の主桁を有する形態もある。本態様では、端部にある少なくとも一方の主桁に上記する頭部挿通孔が開設されているが、内側にさらに主桁を有する形態においては、必要に応じて当該内側にある主桁にも頭部挿通孔が開設される。
また、上記するように第一継手板と第二継手板の双方が、相互に対応する雄継手と雌継手を備えている形態においては、第一セグメントと第二セグメントの双方において、双方の備える少なくとも一方の端部の主桁に頭部挿通孔が開設されており、この形態も本態様に含まれるものとする。
【0012】
また、本発明によるセグメントの継手構造の他の態様において、前記継手ボルトの前記軸体には係止部が設けられており、
前記挿通孔もしくは前記切り欠きに対して前記係止部が係止されることにより、供回り防止機構が形成され、
前記供回り防止機構は、前記継手ボルトの締め付けに当たり、前記ウォームホイールが回転され、該継手ボルトが前記ボルト溝に螺合した状態で摺動する際に該ウォームホイールと該継手ボルトの供回りを防止する機構であることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、継手ボルトの締め付けに当たり、ウォームギアの回転に応じてウォームホイールを回転させることによって継手ボルトを摺動させる際に、ウォームホイールと継手ボルトの供回りが供回り防止機構にて防止されることにより、継手ボルトのスムーズな摺動とこれに基づく速やかなセグメント継手の形成を実現することができる。
ここで、継手ボルトの軸体に設けられている係止部は、第一継手板に開設されている挿通孔と、第二継手板に開設されている切り欠きのいずれか一方に係止される。係止部には様々な形態があり、係止部が第一継手板の挿通孔に係止される形態と第二継手板の切り欠きに係止される形態のいずれであっても、必須の構成である挿通孔もしくは切り欠きに対して継手ボルト(に設けられている係止部)が係止されることにより供回り防止機構が形成されることから、合理的な構造の供回り防止機構と言える。
【0014】
また、本発明によるセグメントの継手構造の他の態様において、前記係止部は、以下のいずれか一種の形態であり、
(1)前記軸体に連続し、該軸体の直径よりも一辺もしくは対角線の長さが長い多角形断面を有する多角形柱体、
(2)前記軸体の側面から側方に張り出す張り出し片、
前記(1)の形態では、前記挿通孔が、挿通される前記多角形柱体が回転を抑止された状態で係止される断面形状及び断面寸法を有しており、
前記(2)の形態では、前記挿通孔もしくは前記切り欠きが、挿通される前記張り出し片が回転を抑止された状態で係止される断面形状及び断面寸法を有していることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、二種の形態の供回り防止機構により、ウォームホイールと継手ボルトの供回りを効果的に抑止することができる。ここで、係止部の第一形態である多角形柱体は、断面形状が正方形を含む矩形、三角形、五角形等の多角形の柱体である。この多角形柱体は、ウォームホイールと螺合するネジ溝を備えた軸体の途中位置から延設し、多角形柱体の端部に係合頭部が設けられている形態であってもよいし、軸体の途中位置に多角形柱体が設けられ、軸体の端部に係合頭部が設けられている形態であってもよい。いずれの形態であっても、多角形柱体からなる係止部が第一継手板の挿通孔に係止される。尚、上記するように、第一継手板と第二継手板の双方が挿通孔を有している場合は、第二継手板の挿通孔にも別途の多角形柱体からなる係止部が係止され、この形態も本態様に含まれるものである。
【0016】
ここで、第一形態の多角形柱体が挿通される挿通孔に関し、「挿通孔が、挿通される前記多角形柱体が回転を抑止された状態で係止される断面形状及び断面寸法を有している」とは、挿通孔に多角形柱体が挿通された際に、多角形柱体のいずれかの箇所が挿通孔の内面に係止され、多角形柱体(を含む継手ボルト)が回転しない断面形状及び断面寸法を有している多様な形態を含む意味である。一例としては、例えば多角形柱体が正方形からなる場合に、挿通孔も多角形柱体と同様に正方形であり、多角形柱体と同一の断面寸法、もしくは多角形柱体よりも若干大きな断面寸法を有する挿通孔が挙げられる。
【0017】
一方、第二形態の張り出し片が挿通される挿通孔もしくは切り欠きに関し、「挿通される前記張り出し片が回転を抑止された状態で係止される断面形状及び断面寸法を有している」とは、挿通孔に張り出し片を備えた軸体が挿通された際に、張り出し片が挿通孔の内面に係止され、張り出し片(を含む継手ボルト)が回転しない断面形状及び断面寸法を有している多様な形態を含む意味である。一例としては、張り出し片が第二継手板の切り欠きに係止される場合において、軸体の幅(軸体の平面形状が円形の場合はその直径)と、張り出し片の突出長との合計長さが、切り欠きの幅よりも長く設定されることにより、張り出し片が切り欠きの内面に係止した際に継手ボルトの回転が抑止される。
【0018】
また、本発明によるセグメントの継手構造の他の態様において、前記係合頭部は多角形体であり、
前記第二継手板の内側面における前記切り欠きの一部の周囲には、前記多角形体が収容される収容体が設けられており、
前記収容体に前記多角形体が収容されることにより、供回り防止機構が形成され、
前記供回り防止機構は、前記継手ボルトの締め付けに当たり、前記ウォームホイールが回転され、該継手ボルトが前記ボルト溝に螺合した状態で摺動する際に該ウォームホイールと該継手ボルトの供回りを防止する機構であることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、継手ボルトの係合頭部が多角形体であること、第二継手板の内側面における切り欠きの一部の周囲において、この多角形体が収容される収容体が設けられていていること、切り欠きに沿って継手ボルトの軸体がスライドし、収容体にて係合頭部が収容される。ウォームホイールの回転によって継手ボルトが回転した際に、多角形体である係合頭部が、例えばこの多角形体と相補的な形状の内面を備えた収容体に収容される(もしくは嵌まり込む)ことにより、係合頭部の回転が収容体にて抑止され、継手ボルトは回転することなく摺動することが可能になる。本態様は、第二実施形態の供回り防止機構を備えた継手構造となる。
【0020】
また、本発明によるセグメントの継手構造の他の態様において、前記ボックスには、前記ウォームギアが収容されるウォームギア収容溝と、前記ウォームホイールが収容されるウォームホイール収容溝が設けられ、該ウォームギア収容溝が該ボックスの一側面に臨む端部には座ぐり溝が設けられており、
前記ウォームギアの一端には、係合溝が設けられており、
前記係合溝にトルク導入具の一端が係合され、トルク導入具の回転により前記ウォームギアが回転されるようになっており、
前記継手ボルトにより前記第一継手板と前記第二継手板が締め付けられている状態において、前記係合溝には、頭付き軸体材の頭部の背面に止水リングが取り付けられている止水軸体材が係合し、前記頭部と前記座ぐり溝の底面との間で該止水リングが押圧されてなる止水機構が形成されていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、ウォームギア収容溝のうち、ボックスの一側面に臨む端部に座ぐり溝が設けられ、ウォームギアの一端にある係合溝に対して、止水リングを備えた止水軸体材が係合し、止水軸体材の頭部と座ぐり溝の底面との間で止水リングが押圧されて止水機構が形成されていることにより、高い止水性を奏する止水機構にてウォームギア収容溝が止水されたセグメントの継手構造が形成される。
ここで、継手ボルトを摺動させる際には、ウォームギアの一端に設けられている係合溝に対してトルク導入具の一端が係合され、トルク導入具を回転させることにより、ウォームギアが回転され、ウォームホイールが回転されて継手ボルトが摺動される。一方、継手ボルトが摺動して第一セグメントと第二セグメントが引き寄せられ、セグメント継手が形成された際には、係合溝からトルク導入具が取り外され、代わりに係合溝に対して止水軸体材が挿通されて係合されることにより、止水機構が形成される。このように、ウォームギアの係合溝は、継手ボルトの摺動と止水機構の形成の際に適用される。
頭付き軸体材には、係合キーを備えた頭付き軸体材や六角ボルト等が適用されてよい。頭付き軸体材が係合キーを備えている形態では、ウォームギアの係合溝にキー係合孔が設けられ、係合溝に頭付き軸体材が挿通され、頭付き軸体材を回転させて係合キーをキー係合孔に係合させることにより、係合溝に止水軸体材を係合させることができる。また、頭付き軸体材が六角ボルトからなる形態では、係合溝がネジ溝であり、係合溝に六角ボルトをねじ込むことにより、係合溝に止水軸体材を係合(螺合)させることができる。
止水機構を形成する止水リングには、水膨張性素材によるリングやOリング等、多様な形態の止水リングが適用できる。また、止水軸体材と座ぐり溝との間に隙間がある場合は、この隙間に対してコーキング処理等が講じられてよい。
【0022】
また、本発明によるセグメントの継手方法の一態様は、
第一セグメントの第一継手板に設けられている雄継手と、第二セグメントの第二継手板に設けられている雌継手とを接続する、セグメントの継手方法であって、
前記雄継手は、
前記第一セグメントの内部に設けられているボックスを有し、
前記ボックスの内部において、回転自在に取り付けられているウォームギアと、該ウォームギアによってその回転中心軸回りに回転されるウォームホイールと、該ウォームホイールの回転中心に開設されているボルト溝に対して螺合され、該回転中心軸に沿って摺動し、前記第一継手板に開設されている挿通孔を挿通して第二継手板側に突設し、前記ボルト溝に螺合する軸体と該軸体の端部にある係合頭部とを備えている継手ボルトと、を有しており、
前記第二継手板には切り欠きが開設されており、
前記継手ボルトを前記切り欠きに沿ってスライドさせることにより、前記第一継手板と前記第二継手板を継手位置において当接させ、前記ウォームギアを回転させることにより、前記ウォームホイールの回転によって前記継手ボルトを摺動させ、前記係合頭部の背面を前記第二継手板の内側面における前記切り欠きの周囲に係合することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、一方のセグメント(第一セグメント)の第一継手板に設けられている雄継手の内側にウォームギアとウォームホイールを備えたボックスが配設され、ウォームホイールに対して摺動自在に螺合された継手ボルトが、他方のセグメント(第二セグメント)の第二継手板に開設されている切り欠きに挿通され、継手ボルトが締め付けられてその係合頭部が切り欠きの周囲に係合していることにより、セグメント継手に対して大きな締結力を導入することができ、締結力の導入管理を容易に行うことができ、さらには、効率的かつスムーズにセグメント継手を形成することができる。
尚、上記するように、第一セグメントと第二セグメントがいずれも、相互に対応する雄継手と雌継手をそれぞれの第一継手板と第二継手板に備えている場合は、例えば、第二セグメントの第二継手板の切り欠きに対して、第一セグメントの第一継手板から突設する継手ボルトをスライドさせる際に、第一セグメントの第一継手板の切り欠きに対して、第二セグメントの第二継手板から突設する継手ボルトを同様にスライドさせることができる。そして、双方の継手ボルトを締め付けることにより、第一継手板と第二継手板を引き寄せ、二本の継手ボルトを介してセグメント継手を施工することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のセグメントの継手構造と継手方法によれば、可及的にシンプルな構成で、かつ、大きな締結力の導入と容易な締結力導入管理を可能とした、セグメントの継手構造と継手方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】シールドトンネルにより構成される地下河川用トンネルの一例を示す斜視図である。
【
図1B】地下河川用トンネルの内部の雨水により、内水圧が作用している状態を説明する図である。
【
図2A】実施形態に係るセグメントの継手方法の一例を説明する工程図である。
【
図3】雄継手の一例を斜め上方から見た斜視図である。
【
図5A】
図2Aに続いて、実施形態に係るセグメントの継手方法の一例を説明する工程図である。
【
図6A】
図5Aに続いて、実施形態に係るセグメントの継手方法の一例を説明する工程図である。
【
図7A】
図6Aに続いて、実施形態に係るセグメントの継手方法の一例を説明する工程図であって、実施形態に係るセグメントの継手構造の一例をともに示す図である。
【
図8A】実施形態に係るセグメントの継手構造を構成する、供回り防止機構の一例を示す図である。
【
図8B】実施形態に係るセグメントの継手構造を構成する、供回り防止機構の他例を示す図である。
【
図8C】実施形態に係るセグメントの継手構造を構成する、供回り防止機構のさらに他例を示す図である。
【
図9】実施形態に係るセグメントの継手構造を構成する、止水機構の一例を示す図である。
【
図10】雄継手の引張試験の概要を説明する図である。
【
図11】セグメント継手に導入可能な締結力確認試験の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係るセグメントの継手構造と継手方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0027】
[実施形態に係るセグメントの継手構造と継手方法]
はじめに、
図1A及び
図1Bを参照して、実施形態に係るセグメントの継手構造を備えるシールドトンネルの一例について説明する。ここで、
図1Aは、シールドトンネルにより構成される地下河川用トンネルの一例を示す斜視図であり、
図1Bは、地下河川用トンネルの内部の雨水により、内水圧が作用している状態を説明する図である。
【0028】
図1Aに示すシールドトンネル60は、地盤G内において、地下道(自動車道、鉄道等)や地下共同溝等の他、地下河川用トンネルとして適用される。周方向に複数(図示例は四つ)のAセグメント30がセグメント継手50を介して接続され、Aセグメント30とBセグメント20が同様にセグメント継手50を介して接続され、左右にある二つBセグメント20の間にKセグメント10が嵌め込まれ、Kセグメント10とBセグメント20が同様にセグメント継手50を介して接続されることにより、セグメントリング40が形成される。そして、複数のセグメントリング40がトンネルの軸方向にリング継手55を介して接続されることにより、所定延長に亘るシールドトンネル60が形成される。
【0029】
シールドトンネル60が地下河川用トンネルとして適用される場合は、
図1Bに示すように、シールドトンネル60の内部に雨水Wが貯留されるが、この貯留された雨水Wにより、径方向外側の内水圧がシールドトンネル60に作用することになる。従って、地下河川用トンネル60においては、セグメント継手50に十分な締結力が導入されるとともに、締結力の導入管理が十分に行われる必要がある。
【0030】
次に、
図2乃至
図9を参照して、地下河川用トンネルとして適用されるシールドトンネル60を構成する、セグメント継手50の構造(実施形態に係るセグメントの継手構造)とその施工方法(実施形態に係るセグメントの継手方法)の一例について詳説する。ここで、
図2A,
図5A,
図6A及び
図7Aは順に、実施形態に係るセグメントの継手方法の一例を説明する工程図であり、
図7Aはさらに、実施形態に係るセグメントの継手構造の一例をともに示す図である。尚、ここでは、左右のBセグメント20に対してKセグメント10を嵌め込む(スライド嵌合させる)ことによりセグメント継手を施工する、セグメントの継手方法を説明するが、実施形態に係るセグメントの継手方法は、Aセグメント30同士の継手方法、Aセグメント30とBセグメント20の継手方法のいずれにも適用できる。
【0031】
以下、Kセグメント10を第一セグメント、左右のBセグメント20を第二セグメントとして説明する。
図2Aに示すように、Bセグメント20とKセグメント10は、鋼製セグメントにより形成されており、いずれも、地盤側に凸の湾曲したスキンプレート11,21と、スキンプレート11,21のトンネル内空側の面におけるリング継手側の端部に溶接接合されている主桁12,13,22,23と、セグメント継手側の端部においてスキンプレート11,21及び主桁12,13,22,23と溶接接合されている継手板14,15,24,25とを備えている。以下、第一セグメント10の備える継手板14,15を第一継手板、第二セグメント20の備える継手板24,25を第二継手板として説明する。また、図示例の鋼製セグメントは、スキンプレート11,21の内側において、各主桁12,13,22,23と継手板14,15,24,25とを繋いで補強する補強リブ16,26をさらに備えている。
【0032】
第一セグメント10の備える第一継手板14,15のうち、一方の主桁12側の端部近傍には雄継手70が取り付けられている。また、第一継手板14,15のうち、他方の主桁13側の端部には、第一継手板14,15の途中位置まで延設する切り欠き17が開設されている。
【0033】
一方、第二セグメント20の備える第二継手板24,25のうち、一方の主桁23側の端部近傍には雄継手70が取り付けられている。また、第二継手板24,25のうち、他方の主桁22側の端部には、第二継手板24,25の途中位置まで延設する切り欠き27が開設されている。
【0034】
図2AのIIB部の拡大図である
図2Bに明瞭に示すように、第二継手板25の端部からその途中位置まで切り欠き27(雌継手の一例)が延設しており、この切り欠き27には、以下で詳説する継手ボルト74の備える軸体75(より詳細には、軸体75に連続する多角形柱体からなる係止部76)が挿通される。また、主桁22のうち、切り欠き27に対応する位置には、継手ボルト74の係止部76の一端に設けられている係合頭部77が挿通される、頭部挿通孔28が開設されている。尚、この構成は、他方の第二セグメント20の第二継手板24と主桁22にも同様に設けられている。また、第一セグメント10の左右の第一継手板14,15と主桁13にも同様に設けられている。図示例では、補強リブ26においても、切り欠き27に対応する位置に頭部挿通孔29が開設されている。
【0035】
図2Bに示すように、第一継手板14には挿通孔14aが開設されており、第一継手板14の内側に取り付けられている雄継手70の構成要素である継手ボルト74が、挿通孔14aを介して第二セグメント20側に突設している。以下で詳説するように、挿通孔14aは、多角形柱体からなる係止部76が挿通されるとともに係止部76が係止される断面寸法及び断面形状を有している。
【0036】
雄継手70を構成するボックス71を第一継手板14の内側に取り付けた後、挿通孔14aを介してボックス71内のウォームホイール73のボルト溝73b(
図3参照)に対して、継手ボルト74の先端を螺合させることにより、
図2Bに示す雄継手70が形成される。尚、他方の第一継手板15,第二継手板24,25に取り付けられている雄継手70においても、
図2Bに示す雄継手70と同様の構成が適用される。
【0037】
図2A及び
図2Bに示すように、左右の第二セグメント20に対して第一セグメント10がX1方向にスライドされることにより、左右の第一継手板14,15から側方に突設する継手ボルト74の係止部76と係合頭部77がそれぞれ、対応する第二継手板25,24の切り欠き27と頭部挿通孔28に挿通される。また、この際に、左右の第二継手板24,25から側方に突設している継手ボルト74が、第一継手板15,14に開設されている切り欠き17に挿通される。すなわち、第一継手板14,15と第二継手板24,25では、それらの主桁12,22側と主桁13,23側において雄継手70と雌継手27,17が交互に設けられ、対応する雌継手27,17に対して継手ボルト74が挿通される。
【0038】
図示例は、雌継手27,17である切り欠きが第一継手板14,15と第二継手板24,25の端部からそれらの途中位置まで延設している形態であるが、切り欠きが継手板の途中位置に設けられている形態(端部から延設していない形態)であってもよく、この形態では、主桁に頭部挿通孔は設けられず、切り欠きの一部に頭部挿通孔が設けられることになる。また、セグメントは鋼製セグメント以外にも合成セグメントであってもよく、合成セグメントの場合は、鋼製セグメントの内部に鉄筋が配筋され、コンクリートが充填されることになるが、継手板の内側において、継手ボルトが挿通される空間を確保する(コンクリートから分離する)ためのボックスが取り付けられるのが好ましい。
【0039】
ここで、
図3及び
図4を参照して、雄継手70の構成について詳説する。雄継手70はボックス71を備えており、ボックス71は、相互に連通しているウォームホイール収容溝71aとウォームギア収容溝71bを備えている。ウォームホイール収容溝71aにはウォームホイール73が回転自在に収容され、ウォームギア収容溝71bにはウォームギア72が回転自在に収容され、ウォームギア72のギア72aとウォームホイール73のギア73aが相互に噛み合っており、ウォームギア72の回転をウォームホイール73に伝達できるようになっている。
【0040】
ウォームホイール73は、その回転中心軸Lの回りを回転し、その回転中心にはボルト溝73bが開設されている。そして、ボックス71のうち、ボルト溝73bに対応する位置には開口71dが開設されている。
【0041】
継手ボルト74は、ネジ溝75aを備えている軸体75と、軸体75に連続する多角形柱体からなる係止部76と、係止部76の一端に設けられている係合頭部77とを備えている。図示例の係合頭部77は略半球状を呈しているが、六角柱状等の多角柱状の形態であってもよい。また、図示例の多角形柱体76の断面形状は正方形であるが、正方形以外にも、長方形、五角形等の他の多角形であってもよい。
【0042】
軸体75に設けられているネジ溝75aは、ボックス71の開口71dを介して開口71dの内部に挿通され、ウォームホイール73のボルト溝73bが螺合するようになっている。すなわち、既述するように、ボックス71が例えば第一継手板14の内側に取り付けられた後、第一継手板14の挿通孔14aを介し、ボックス71の開口71dを介して軸体75が挿通され、ウォームホイール73のボルト溝73bに対して軸体75のネジ溝75aが螺合されることにより、雄継手70が形成される。
【0043】
図3に示すように、ウォームギア収容溝71bがボックス71の一側面に臨む端部には、座ぐり溝71cが設けられている。また、
図4に示すように、ウォームギア72の一端には、係合溝72bが設けられており、係合溝72bはボックス71の外部に臨んでいる。
【0044】
係合溝72bにはキー係合溝72cが設けられており、不図示のトルク導入具の一端が係合溝72bに挿通され、トルク導入具の一端にある係合キーがキー係合溝72cに係合されるようになっており、トルク導入具の回転によりウォームギア72が回転され、ウォームギア72の回転によりウォームホイール73がその回転中心軸Lを中心に回転される。以下で詳説するように、継手ボルト74は、その多角形柱体からなる係止部76を構成要素とする供回り防止機構にてウォームホイール73との供回りが防止されるようになっている。従って、ウォームホイール73が回転した際に、継手ボルト74は回転が抑止され、ウォームホイール73の回転中心軸Lに沿って摺動することになる。
【0045】
図5AとそのVB部の拡大図である
図5Bに示すように、第一セグメント10をさらにX2方向にスライドさせることにより、継手ボルト74の係止部76が切り欠き27の内部をスライドし、係合頭部77が主桁22と補強リブ26の各頭部挿通孔28,29を順にスライドしていく。
【0046】
そして、
図6AとそのVIB部の拡大図である
図6Bに示すように、第一セグメント10をさらにX3方向にスライドさせることにより、第一セグメント10の第一継手板14,15と第二セグメント20の第二継手板25,24の双方の全面が対向し、左右の第二セグメント20に対する第一セグメント10のスライドが完了する。
【0047】
次に、
図7AとそのVIIB部の拡大図である
図7Bに示すように、不図示のトルク導入具の一端を係合溝72bに挿通して係合させ、トルク導入具の回転によってウォームギア72をY1方向に回転させることにより、ウォームホイール73をその回転中心軸Lを中心にY2方向に回転させる。そして、ウォームホイール73の回転の際に、ウォームホイール73と供回りすることなく継手ボルト74をボックス71側へY3方向に摺動させることにより、第二継手板25の内側面における切り欠き27の周囲に、継手ボルト74の係合頭部77の背面が係合する。
【0048】
図示例では、第一セグメント10の第一継手板14と第二セグメント20の第二継手板25のセグメント継手に関し、二組の雄継手70と雌継手27が係合することにより、セグメントの継手構造50が形成される。セグメントの継手方法では、第一セグメント10とその左右の第二セグメント20の間の二つのセグメント継手の施工に際し、計四組の雄継手70と雌継手27,17の係合を、同時に、もしくは順次行うことにより、二つの継手構造50が形成される。
【0049】
ここで、
図8A乃至
図8Cを参照して、継手ボルトとウォームホイールの供回り防止機構の例について説明する。
図8Aに示す供回り防止機構90は、継手ボルト74の有する多角形柱体76が、第一継手板14の挿通孔14aに対して回転不可に挿通されることにより形成される。
【0050】
図3及び
図4を参照して既に説明したように、継手ボルト74は、軸体75の一端に多角形柱体76(係止部の一例)を備え、多角形柱体76の一端に係合頭部77を備えている。図示例において、切り欠き27の幅はt1であり、断面形状が正方形の挿通孔14aの一辺の長さもt1である。また、係合頭部77の幅(平面視における直径)はt2であり、断面形状が正方形の多角形柱体76の一辺の長さはt3であり、これらの各寸法は、t3<t1<t2の関係を有している。尚、ネジ溝75aを備える軸体75の直径t4は、多角形柱体76の一辺の長さt3よりも小さくなっており(t4<t3)、多角形柱体76がウォームホイール73のボルト溝73bに入り込まないようになっている。
【0051】
この寸法関係により、第一継手板14から多角形柱体76の一部と係合頭部77が突出した状態で係合頭部77が第二継手板25の切り欠き27に挿通された後、ウォームホイール73の回転によって切り欠き27の内部を多角形柱体76がスライドし、係合頭部77の背面77aを切り欠き27の周囲に係合させることができる。この係合までの過程において、ウォームホイール73の回転に応じて継手ボルト74がY4方向に回転した際に、多角形柱体76は挿通孔14aの内面に係止し、継手ボルト74のそれ以上の回転が抑止される。この状態でウォームホイール73が回転を続けると、継手ボルト74はウォームホイール73との供回りが抑止された状態で、ウォームホイール73側へY3方向に摺動することになる。そして、この継手ボルト74の摺動により、第一継手板14,15と第二継手板25,24が相互に引き寄せられ、第一セグメント10と第二セグメント20のセグメント継手50がスムーズに形成される。
【0052】
図示するセグメントの継手方法によれば、不図示のトルク導入具を使用し、継手ボルト74を介してセグメント継手50に対して大きな締結力を導入できるとともに、締結力の管理を容易に行うことができる。また、セグメント継手50を構成する雌継手は、継手板14,15,24,25に開設されている切り欠きであることから、可及的にシンプルな構成の継手となる。
【0053】
尚、図示を省略するが、多角形柱体76は挿通孔14aの内面と係止されればよいことから、継手ボルトは、挿通孔14aに対応する位置にのみ多角形柱体を備え(切り欠きに対応する位置に多角形柱体がない)、この多角形柱体の左右端に軸体を備え、一方の軸体の端部に係合頭部を備えた形態であってもよい。また、多角形柱体は図示例以外の多様な断面形状であってよく、少なくとも、多角形柱体の断面の一辺もしくは対角線の長さが挿通孔の短辺(最も短い辺)よりも大きく設定されていることにより、多角形柱体を挿通孔の内面に係止させることができる。
【0054】
一方、
図8Bに示す供回り防止機構90Aは、継手ボルト74Aの係合頭部77の背面において、軸体75の側方から張り出し片76A(係止部の他例)が張り出し、この張り出し片76Aが切り欠き27に係止されることにより形成される。図示例において、切り欠き27の幅はt1であり、係合頭部77の幅(平面視における直径)はt2であり、軸体75と張り出し片76Aの合計幅はt5であり、これらの各寸法は、t1<t5<t2の関係を有している。
【0055】
この寸法関係により、係合頭部77を切り欠き27の周囲に係合させることができる。さらに、ウォームホイール73の回転に応じて軸体75がY4方向に回転した際に、張り出し片76Aは切り欠き27の内面に係止し、軸体75のそれ以上の回転が抑止される。この状態でウォームホイール73が回転を続けると、継手ボルト74はウォームホイール73との供回りが抑止された状態で、ウォームホイール73側へY3方向に摺動することになる。そして、この継手ボルト74の摺動により、第一継手板14,15と第二継手板25,24が相互に引き寄せられ、第一セグメント10と第二セグメント20のセグメント継手50がスムーズに形成される。
【0056】
尚、張り出し片の形態は図示例以外にも様々なものがあり、軸体75を挟んで二方向に張り出し片が突設する形態であってもよいし、係合頭部77の背面77aから離れた位置の軸体75に張り出し片が設けられている形態であってもよい。
【0057】
一方、
図8Cに示す供回り防止機構90Bは、第二継手板25の内側面における切り欠き27の一部の周囲に、六角ボルトの頭部の一部が収容される収容体91が取り付けられている。そして、継手ボルト74Bは軸体75の一端に六角柱状の係合頭部77A(多角形体の一例で、その幅はt2'で、t1<t3<t2')を備えており、係合頭部77Aが下方へX3方向にスライドして収容体91に収容され際に、係合頭部77Aと収容体91が係合するようになっている。収容体91に係合頭部77Aが係合した継手ボルト74Aは、ウォームホイール73との供回りが抑止された状態で、ウォームホイール73側へY3方向に摺動することになる。
【0058】
次に、
図9を参照して、ウォームギア収容溝の止水機構の一例について説明する。既述するように、雄継手70を構成するボックス71において、ウォームギア収容溝71bがボックス71の一側面に臨む端部には座ぐり溝71cが設けられている。尚、ウォームギア収容溝71bの内部には、鞘管が埋設されていてもよい。ウォームギア72の一端に設けられている係合溝72b(
図4参照)にはトルク導入具の一端が係合され、トルク導入具の回転によりウォームギア72が回転され、ウォームホイール73を介して継手ボルト74が締め付けられることにより、セグメント継手50が形成される。セグメント継手50が形成され、係合溝72bからトルク導入具が取り外された後、さらに
座ぐり溝71cからウォームギア72が取り外される。ウォームギア72が取り外された
座ぐり溝71cに対して止水軸体材80(止水キャップ)が挿通され、係合もしくは螺合されることにより、止水機構85が形成されてウォームギア収容溝71bの止水が図られる。
【0059】
ここで、止水軸体材80は、頭部82を備えた頭付き軸体材81と、水膨張性素材の止水リング83とを備えている。頭部82と座ぐり溝71cの底面との間で止水リング83が押圧されることにより、止水機構85が形成される。図示例の止水機構85では、頭部82と座ぐり溝71cの内面の間の隙間において、コーキング処理部84がさらに設けられている。
【0060】
[雄継手の引張試験]
次に、本発明者等により実施された、雄継手の引張試験の概要と試験結果について説明する。ここで、
図10は、雄継手の引張試験の概要を説明する図である。
図10において、特殊ボルトは継手ボルトを模擬しており、歯車ナットはウォームホイールを模擬している。双方を螺合させ、引張試験機にて継手ボルトが破断するまでの荷重-変位関係を計測した。
【0061】
引張試験を実施することにより、雄継手が継手ボルトの降伏強度以上の強度を有することが分かり、高い引張強度の雄継手が形成されることが実証されている。
【0062】
[セグメント継手に導入可能な締結力確認試験]
次に、本発明者等により実施された、セグメント継手に導入可能sな締結力確認試験の概要と試験結果について説明する。ここで、
図11は、セグメント継手に導入可能な締結力確認試験の概要を説明する図である。
図11において、ウォームホイールを模擬した歯車ナットを、トルクレンチにて回転させ、継手ボルトを模擬した特殊ボルトを段階的に締め付けた。
【0063】
締結力確認試験を実施することにより、継手ボルトの降伏強度の90%程度の締付軸力を導入できることが分かり、高い締付軸力にて継手板同士の締め付けが可能であることが実証されている。
【0064】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0065】
10:第一セグメント(Kセグメント)
20:第二セグメント(Bセグメント)
11:スキンプレート
12,13,22,23:主桁
14,15:第一継手板
14a:挿通孔
24,25:第二継手板
25a:内側面
16,26:補強リブ
17,27:切り欠き(雌継手)
28、29:頭部挿通孔
30:Aセグメント
40:セグメントリング
50:セグメント継手(セグメントの継手構造、継手構造)
55:リング継手
60:シールドトンネル
70:雄継手
71:ボックス
71a:ウォームホイール収容溝
71b:ウォームギア収容溝
71c:座ぐり溝
71d:開口
72:ウォームギア
72a:ギア
72b:係合溝
72c:キー係合溝
73:ウォームホイール
73a:ギア
73b:ボルト溝
74,74A,74B:継手ボルト
75:軸体
75a:ネジ溝
76:係止部(多角形柱体)
76A:係止部(張り出し片)
77,77A:係合頭部
77a:背面
80:止水軸体材
81:頭付き軸体材
82:頭部
83:止水リング
84:コーキング処理部
85:止水機構
90,90A,90B:供回り防止機構
91:収容体
G:地盤
W:雨水
L:回転中心軸