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特許7478394生物医学的用途のための光重合生分解性コポリマー配合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】生物医学的用途のための光重合生分解性コポリマー配合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/04 20060101AFI20240425BHJP
   A61L 15/00 20060101ALI20240425BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240425BHJP
   A61L 27/44 20060101ALI20240425BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240425BHJP
   A61L 27/60 20060101ALI20240425BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20240425BHJP
   A61L 29/12 20060101ALI20240425BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20240425BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20240425BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240425BHJP
   C08J 9/02 20060101ALI20240425BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
C08F299/04
A61L15/00
A61L27/20
A61L27/44
A61L27/58
A61L27/60
A61L29/06
A61L29/12 100
A61L31/04 120
A61L31/12 100
C08F2/44 A
C08F2/44 C
C08J9/02 CEP
C08J9/02 CFD
C08L101/16 ZBP
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020567747
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 IB2019054735
(87)【国際公開番号】W WO2019239266
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】110781
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】511102309
【氏名又は名称】ウニベルシダージ デ コインブラ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DE COIMBRA
(73)【特許権者】
【識別番号】511002467
【氏名又は名称】ウニベルシダージ ド ポルト
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョルドン コエーリョ,ジョルジ フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】アマラル ロウレイロ ダ フォンセカ,アナ クロティルダ
(72)【発明者】
【氏名】コインブラ セラ,アルメーニョ
(72)【発明者】
【氏名】ダ シルヴァ ピーニョ,アナ カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゴス サントス,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ デ カストロ オソーリオ マウリシオ,アナ コレット
(72)【発明者】
【氏名】カゼイロ サントス,アナ リタ
(72)【発明者】
【氏名】アルメイダ サントス ペドロサ,シルヴィア マリーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエラ ブランキーノ,マリアナ エステベス
(72)【発明者】
【氏名】ダマシオ アルヴィテス,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】フェラズ アモリン クルス,イリナ
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-508663(JP,A)
【文献】特表2002-503524(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102634033(CN,A)
【文献】国際公開第2016/203495(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
C08L
C08K
C08F
C08J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25%~50%(w/w)の、グリシジルメタクリレートで修飾されたデキストランと、50%~75%(w/w)の、2-イソシアナトエチルメタクリレートで修飾されたポリε-カプロラクトンとを含む、光重合生分解性コポリマー配合物。
【請求項2】
前記配合物が、水溶性の糖型または塩型の既知の多孔質剤をさらに含む、請求項に記載のコポリマー配合物。
【請求項3】
前記多孔質剤が、スクロース、塩化ナトリウム、および炭酸ナトリウムを含むリストから選択される、請求項に記載のコポリマー配合物。
【請求項4】
前記多孔質剤がD-マンニトールである、請求項に記載のコポリマー配合物。
【請求項5】
D-マンニトールの含有量が、前記コポリマー配合物の20~80%(w/w)の範囲である、請求項に記載のコポリマー配合物。
【請求項6】
前記コポリマー配合物が、フィルム、シート、チューブ、ロッド、プラグ、マイクロスフェア、3-Dスキャフォールド(scaffolds)、またはメッシュに成形される、請求項1~のいずれか1項に記載のコポリマー配合物。
【請求項7】
前記コポリマー配合物が固体である、請求項1~のいずれか1項に記載のコポリマー配合物。
【請求項8】
以下の工程を含む、請求項1に記載のコポリマー配合物から固体材料を調製するための光重合の方法:
グリシジルメタクリレートで修飾されたデキストランを、室温でDMSOに溶解する;
2-イソシアナトエチルメタクリレートで修飾されたポリε-カプロラクトンを、先の溶液に添加する;
先のコマクロモノマーを完全に溶解し、光開始剤を添加する;
280nmの波長を有するUV光下で前記配合物を光架橋させるために放置する;
最終コポリマーを水で7日間以下の期間洗浄し、次いで真空下で乾燥させる。
【請求項9】
200000g/mol以下の範囲のデキストランを使用する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
70000g/molのデキストランを使用する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
600g/mol以下の範囲のポリε-カプロラクトンを使用する、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記最終コポリマーを40℃で乾燥させる、請求項8~11のいずれか1項に記載の製法。
【請求項13】
前記光開始剤を0.02~2%(w/v)の濃度で使用する、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記コマクロモノマーを完全に溶解した後、水溶性の糖型または塩型の既知の多孔質剤を前記溶液に添加し、可溶化および光架橋のために放置して、これによりコポリマーを形成する、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質剤を含む前記コポリマーを蒸留水に浸漬し、37℃で3日間炉中に放置した後、前記最終コポリマーを水で洗浄し、減圧下で乾燥させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生物医学的用途に使用するための、請求項1に記載の光重合生分解性コポリマー配合物。
【請求項17】
再生医療に使用するための、請求項1に記載の光重合生分解性コポリマー配合物。
【請求項18】
神経ガイドとして使用するための、請求項1に記載の光重合生分解性コポリマー配合物。
【請求項19】
生物医学的ドレーン、ステント目的のための生物医学的チューブ、抗接着シートなどの体内用途のための生物医学的シート、一時的創傷ケア被覆などの局所使用のためのまたは瘢痕を防ぐための生物医学的シート、創傷ケアフォーム、身体に導入される針およびチューブのための保護シース、ドラッグデリバリーのための(マイクロ)スフェア、塞栓目的のための(マイクロ)スフェア、粒子、およびプラグ、皮膚増強、しわおよび皮膚輪郭の欠損の治療などの美容手術目的のための(マイクロ)スフェア、人工血管、組織工学の足場、半月板修復のための人工皮膚または足場プラグとして使用するための、請求項1に記載の光重合生分解性コポリマー配合物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本出願は、コポリマー、それらの製造およびそれらの医療用途に関する。
【0002】
〔背景技術〕
損傷後の神経再生を増強するための良好な代替法として、管形成技術が提唱されている。この技術の範囲は、新たに形成された軸索を遠位断端から近位断端までガイドするために両神経端に縫合される中空管の使用に依拠する。生体適合性コポリマー材料は、それらの物理化学的および生物学的特性のために、この特定の種類の医療デバイスの調製のために使用されてきた。この意味で、生体適合性である細菌由来の多糖類であるデキストランは、組織再生関連用途に適したデバイスの調製のための良好な候補として現れる(Radiat Phys Chem 142 (2018) 115-120およびInzynieria i Aparatura Chemiczna (2014) 251-252)。
【0003】
さらに、この天然ポリマーは、外科用接着剤(Acta Biomaterialia 53 (2017) 343-354)および組織再生目的のためのヒドロゲル(Radiat Phys Chem 142 (2018) 115-120)のコア材料として、生物医学分野において広く使用されている。さらに、デキストランは、生理的環境下で分解し、その分解産物は無毒であると考えられる。分解は、肝臓、脾臓、腎臓、および結腸などの器官におけるデキストラナーゼ酵素の作用を介して生じる(Biol Pharm Bull 20 (1997) 181-187)。しかしながら、その興味深い利点はあるもの、デキストランは低い機械的特性を示し(J. Mater. Chem. B 2 (2014) 8346-8360およびAdv Healthc Mater. 5 (2016) 2732-2744)、したがってその修飾がしばしば必要とされる(Carbohydr Polym 82 (2010) 412-418 and Carbohydr Polym 114 (2014) 467-475)。
【0004】
ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)は、生体吸収性、疎水性、および半結晶性ポリエステルである(Biomaterials 26 (2005) 4817-4827)。その調整可能な分解および機械的特性は、その良好な適合性と共に、このポリマーを1970年代から生物医学分野に非常に魅力的なものにしてきた。この間、それは種々のドラッグデリバリーシステムにおいて使用されたが、その分解速度が遅いので、PGAおよびポリ(D,L-ラクチド)(PDLA)などの他の吸収性ポリマーが好ましかった。しかしながら、2000年代以降、組織工学技術の発達に伴い、PCLはインビトロおよびインビボの両方で広範囲に試験され、生体適合性の点で良好な結果を示している。具体的には、末梢神経再生のために、このポリマーは、他の生体吸収性ポリマーと同様に、他のポリマーと混合され、細胞および神経成長因子の両方を播種された神経ガイド(nerve guides)単独で試験されてきた。PCL-PVA(J Mater Sci Mater Med 24 (2013) 1639-1647)、グリア細胞由来のカプセル化神経栄養因子(GDNF)を有するPCL(ACS Biomater Sci Eng. 1 (2015) 504-512)、RGDとしてペプチドで官能化されたPCL表面(N. Biotechnol 31 (2014) 203-213)で調製された神経ガイドは、いくつかの例である。残念ながら、遅い分解速度に関連する問題は、依然として言及されている。
【0005】
本技術の特性を調整する可能性のために、記載された実施形態は、分解率が重要な役割を果たす他の生物医学的用途にも適用することができる。このような用途は、ステント目的のための生物医学的チューブ;体内用途のための生物医学的シート;身体に導入される針およびチューブのための生物医学的シース;塞栓目的のための粒子およびプラグ;人口血管;組織工学の足場;ドラッグデリバリーを標的とするための人工皮膚および(マイクロ)スフェアを含む。具体的には、最後の例では薬物の投与のための非侵襲的かつ無痛の投与経路を作り出す努力が増加している。この意味で、種々の幾何学的形状およびサイズを有するドラッグデリバリーシステムが、経口経路の主要な欠点を克服するために提案されている(Prog Polym Sci 39 (2014) 2030-2075)。本研究は、新たな投与経路の探索、および特定の標的に対する各薬物の要件に適合し得る新たなポリマー材料の開発に基づいて行われた。
【0006】
〔概要〕
本出願は、グリシジルメタクリレートで修飾されたデキストランと、2-イソシアナトエチルメタクリレートで修飾されたポリε-カプロラクトンとを含む、光重合生分解性コポリマー配合物に関する。
【0007】
一実施形態では、修飾されたデキストランの割合が、25%~50%(w/w)の範囲である。
【0008】
別の実施形態では、修飾ポリε-カプロラクトンの割合が、50%~75%(w/w)の範囲である。
【0009】
さらに別の実施形態では、配合物が、水溶性の糖型または塩型の既知の多孔質剤(porogenic agents)をさらに含む。
【0010】
一実施形態では、多孔質剤が、スクロース、塩化ナトリウム、および炭酸ナトリウムを含むリストから選択される。
【0011】
別の実施形態では、多孔質剤がD-マンニトールである。
【0012】
一実施形態では、D-マンニトールの含有量が、コポリマー配合物の20~80%(w/w)の範囲である。
【0013】
一実施形態では、コポリマー配合物が、フィルム、シート、チューブ、ロッド、プラグ、マイクロスフェア、またはメッシュに成形される。
【0014】
一実施形態では、コポリマー配合物が固体である。
【0015】
本出願はまた、以下の工程を含む、コポリマー配合物から固体材料を調製するための光重合の方法に関する:
グリシジルメタクリレートで修飾されたデキストランを、室温でDMSOに溶解する;
2-イソシアナトエチルメタクリレートで修飾されたポリε-カプロラクトンを、先の溶液に添加する;
先のコマクロモノマーを完全に溶解し、光開始剤を添加する;
280nmの波長を有するUV光下で配合物を光架橋させるために放置する;
最終コポリマーを水で7日間以下の期間洗浄し、次いで真空下で乾燥させる。
【0016】
一実施形態では、デキストランを200000g/mol以下の範囲で使用する。
【0017】
別の実施形態では、デキストラン70000g/molを使用する。
【0018】
一実施形態では、ポリε-カプロラクトンを600g/mol以下の範囲で使用する。
【0019】
一実施形態では、最終コポリマー配合物を40℃で乾燥させる。
【0020】
一実施形態では、光開始剤を0.02~2%(w/v)の濃度で使用する。
【0021】
別の実施形態では、コマクロモノマーを完全に溶解した後、水溶性の糖型または塩型の既知の多孔質剤を溶液に添加し、可溶化のために放置する。
【0022】
さらに別の実施形態において、多孔質剤を含む光重合コポリマーを蒸留水に浸漬し、37℃で3日間炉中に放置した後、最終コポリマーを水で洗浄し、減圧下で乾燥させる。
【0023】
さらに、本出願はまた、生物医学的用途に使用するための光重合生分解性コポリマー配合物に関する。
【0024】
一実施形態では、光重合生分解性コポリマー配合物が、再生医療に使用するためのものである。
【0025】
別の実施形態では、光重合生分解性コポリマー配合物が、神経ガイドとして使用するためのものである。
【0026】
さらに別の実施形態では、光重合生分解性コポリマー配合物が、生物医学的ドレーン、ステント目的のための生物医学的チューブ、抗接着シートなどの体内用途のための生物医学的シート、一時的創傷ケア被覆などの局所使用のためのまたは瘢痕化を防止するための生物医学的シート、創傷ケアフォーム、身体に導入される針およびチューブのための保護シース、ドラッグデリバリーのための(マイクロ)スフェア、塞栓目的のための(マイクロ)スフェア、粒子、およびプラグ、皮膚増強、しわおよび皮膚輪郭の欠損の治療などの美容手術目的のための(マイクロ)スフェア、人工血管、組織工学の足場、半月板修復のための人工皮膚または足場プラグとして使用するためのものである。
【0027】
〔概略の説明〕
今日まで、再生医療に使用される必要な特性を有する適切なポリマーはまだ不足している。
【0028】
したがって、本技術の目的は、主に末端間縫合が不可能な神経断裂損傷における、末梢神経再生を含む、再生医療におけるその使用の要件を包含するデキストランベースの材料を提供することである。この目的のために、デキストランを、グリシジルメタクリレート(GMA)との反応によって二重結合を組み込むことによって修飾した。一実施形態では、この反応がデキストラン修飾の量を調節するために少ない反応時間を必要とする(Macromolecules 28 (1995) 6317-6322)。この反応の生成物はデキストラン-GMAである。
【0029】
所望の材料の特性を微調整するために、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)ジメタクリレートコ-マクロモノマーを、デキストラン-GMAを含む配合物に添加する。
【0030】
一実施形態では、PCLジメタクリレートコマクロモノマーがヒドロキシル末端基を有するPCLのIEMAとの反応から得られ、その結果、PCL-IEMAが得られる(Int. J. Pharm 352 (2008) 172-181))。
【0031】
最終コポリマー特性におけるコマクロモノマー含有量の影響に対処することも、本技術の目的であった。
【0032】
PCL-IEMAおよびデキストラン-GMAを有する配合物は、医療用途に使用されるユニークな特性を有する、最終材料であるコポリマーを創出するUV光照射によって架橋される。
【0033】
グリシジルメタクリレートでのデキストランの修飾は、DO中のデキストラン-GMAのH NMRスペクトルにより証明された。デキストランポリマーの典型的なピークは別として、二重結合のプロトンに起因するさらなるレゾナンス(ressonances)、およびメタクリレート基に属する-CH基のプロトンが観察された。デキストランの修飾の割合は、デキストランおよびGMAの二重結合に対応するシグナルの積分値の間の関係から計算した。得られた値は、31~34%の範囲である(Macromolecules 28 (1995) 6317-6322)。
【0034】
PCLの修飾反応の場合、添加されたIEMAはすべて反応で消費された。これは、イソシアネート基の強いバンド特性が見えないFT-IRによって確認された。
【0035】
上述した2つの材料、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAの組み合わせ、ならびに光架橋反応によるそれらの共重合は、再生医療において使用されるべき最終材料に必要な特性を有する新しい生成物を与え得ることが見出された。
【0036】
さらに、最終材料であるコポリマーの多孔性を増加させるために、光重合反応およびコポリマーの完全性を損なうことなく、D-マンニトールを添加することが可能である。
【0037】
製造されたコポリマーの機械的および化学的特性にアクセスするために、膨潤能力および分解試験を行った。末梢神経の再構築および再生を含む、医療用途におけるコポリマーの性能にアクセスするために、インビトロおよびインビボ試験も実施した。
【0038】
〔図面の簡単な説明〕
本出願の理解を容易にするために、添付の図面は好ましい実施形態を表すが、それにもかかわらず、本明細書に開示される技術を限定することを意図しない。
【0039】
添付の図面は、本技術の様々な実施形態を示し、本明細書の一部である。図示された実施形態は、本発明の単なる例であり、本技術の範囲を限定するものではない。
【0040】
図1は、デキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、およびPCL-IEMAのFTIRスペクトルを示す。FTIRスペクトルは、室温で、ATRモードを有するJasco FT/IR-4200分光計を使用して得た。データは、4cm-1のスペクトル分解能および64回の蓄積で4000~500cm-1の範囲で収集した。
【0041】
図2は、デキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、およびPCL-IEMAのH-NMRスペクトルを示す。
【0042】
H NMRスペクトルは、三重検出TIX5mmプローブを使用して、Bruker Avance III 400MH分光計で、25℃で得た。H NMRスペクトルは、三重検出TIX5mmプローブを使用して、Bruker Avance III 400MH分光計で、25℃で得た。デキストランおよびデキストラン-GMAについては、使用した溶剤はDOであり、他に記載されているように(Macromolecules 28 (1995) 6317-6322)、特異的な条件下を使用した。簡単に述べると、30sの緩和遅延(relaxation delay)で87.7°のパルス角度を用いた。4.8ppmの水シグナルを、デカップリングによる溶媒抑制によって除去した。デカップリングパワーを、アノメリックプロトンシグナルの強度が影響を受けないレベルに調整した。PCL-ジオールおよびPCL-IEMAについては、使用した溶媒はDMSO-d6であった。TMSを内部標準として使用した。
【0043】
図3は、デキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、およびPCL-IEMAの熱重量曲線を示す。
【0044】
材料の熱安定性を、TA Instruments Q500装置を用いた熱重量分析(TGA)によって評価した。25℃~600℃の温度を使用した。10℃.min-1の昇温速度および分析は、窒素雰囲気下で行った。
【0045】
図4は、デキストラン、デキストラン-GMA、PCL、およびPCL-IEMAの熱流量曲線を示す。
【0046】
分解前の材料の熱挙動を示差走査熱量測定(DSC)によって評価した。使用した装置は、RSC90冷却ユニットを有するTA Instruments Q100である。
【0047】
デキストランおよびデキストラン-GMAを最初に25℃から250℃まで加熱し、続いてそれらの熱履歴を除去するために250℃から-80℃までの冷却サイクルを行った。次いで、サンプルを-80℃から250℃までの2回目の昇温サイクルに供した。
【0048】
PCL-ジオールおよびPCL-IEMAの場合、25℃から150℃まで最初の昇温サイクルを行い、その後-80℃まで冷却サイクルを行った。2回目の昇温サイクルは、-80℃から150℃まで行った。
【0049】
昇温速度は10℃.min-1であり、N2雰囲気(50mL.min-1)下で分析を行った。使用したサンプルの重量は7mg~9mgであった。
【0050】
図5は、異なるコマクロモノマー含有割合比を有するデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAのコポリマーの熱重量曲線を示す(表記[デキストラン-GMA/PCL-IEMA]を使用)
100/0
50/50
25/75
また、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAについて得られた曲線を比較のために含めた。
【0051】
材料の熱安定性を、TA Instruments Q500装置を用いた熱重量分析(TGA)によって評価した。25℃~600℃の温度の範囲を使用した。10℃.min-1の昇温速度および分析は、窒素雰囲気下で行った。
【0052】
図6は、動的機械熱分析(DMTA)により得られたデキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、PCL-IEMA、およびデキストラン-GMA:PCL-IEMAコポリマーのTを示す。サンプルのDMTAは、Tritec2000DMA中で行った。サンプルをステンレス鋼材ポケットに入れ、シングルカンチレバーモードで分析した。試験は-150℃から300℃までの温度範囲で、10℃.min-1の昇温速度で、多周波モードで行った。Tは1Hzにおけるtanδ曲線のピークから決定した。
【0053】
図7は、異なるコマクロモノマー含有割合比を有するデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAのコポリマーの膨潤能力を示す(表記[デキストラン-GMA/PCL-IEMA]を使用)
100/0
50/50
25/75
1cmの直径を有する円形膜の膨潤能力をPBS(pH=7.4、0.01M)中で測定した。既知の乾燥重量を有する乾燥サンプルを、膨潤平衡が達成されるまで、37℃で、5mLのPBS中に浸漬した。所定の時間に、サンプルをPBSから取り出し、表面の水を濾紙によって穏やかに吸い取った。
【0054】
膨潤能力の割合は、以下の式を用いて計算した:膨潤能力(%)=(W_s-W_d)/W_d×100
ここで、W_sは膨潤したサンプルの重量であり、W_dはPBSに浸漬する前の乾燥サンプルの重量である。測定は3回行った。
【0055】
図8は、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAのコポリマーのインビトロ加水分解を示す。以下の表記を、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比を示すために使用する([デキストラン-GMA/PCL-IEMA])。試験はPBS(pH=7.4、0.01M)中で行った。1cmの直径を有し、既知の重量を有する乾燥円形膜を、37℃で、30日間、PBSに浸漬した。所定の時間に、膜をPBSから取り出し、蒸留水ですすぎ、それらの重量が安定するまで乾燥させた。
【0056】
分解の程度の推定は、以下の式に従って、インキュベーション後の重量損失を計算することによって行った:重量損失(%)=(W_0-W_t)/W_0×100
ここで、W_0は浸漬する前の乾燥サンプルの初期重量であり、W_tは、PBSに浸漬し、乾燥させた後の乾燥サンプルの重量である。測定は3回行った。
【0057】
図9は、コポリマー中に播種したヒト歯髄幹細胞(hDPSCs)のPresto Blue(登録商標)生存率アッセイによって評価された吸光度を示す。使用した表記は、材料の最終組成物中のコマクロモノマーの割合を指す([デキストラン-GMA/PCL-IEMA])。
【0058】
コポリマーを、24ウェル細胞培養プレート中の各ウェルに固定し、関連する対照を、細胞を有さない、固定剤単独(SG)およびコポリマーを用いて調製した。次いで、材料を4×10細胞/ウェル濃度で播種した。細胞を、0.5mLの完全培養培地中に一晩接着させたままにした。各時点[24時間(1日)、72時間(3日)、120時間(5日)、および168時間(7日)]で、培養培地を各ウェルから除去し、10%(v/v)の10×Presto Blue(登録商標)細胞生存率試薬と共に、新鮮な完全培地を各ウェルに添加した。細胞を、37℃、5%COで1時間インキュベートし、細胞生存率の変化を、Thermo Scientific Multiskan FCにおける吸光分光法によって検出した。上清を収集し、96ウェルプレートに移し、吸光度を570nmおよび595nmで読み取った。その後、細胞をPBSで洗浄して、Presto Blue(登録商標)の残渣を除去し、新鮮な培養培地を各ウェルにリセットした。Presto Blue(登録商標)の励起波長は570nmであり、発光は595nmである。各ウェルについて、595nmでの吸光度(正規化波長)を570nmでの吸光度(実験結果)に差し引いた。補正された吸光度を、各実験ウェルに対する対照ウェルの平均を差し引くことによって得る。
【0059】
図10は、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAコポリマーの皮下移植から得られた組織学的スコアを示す。使用した表記は、材料の最終組成物におけるコマクロモノマー比を指す。スコアは、ISO 10998-6スコアシステムに従って得た。
【0060】
「SHAM」は、対照-移植なしの切開を指す。
【0061】
図11は、多孔質剤D-マンニトールと共にデキストラン-GMA/PCL-IEMAコポリマー(25/75)を用いて調製された神経ガイド導管の膨潤能力の割合を示す。使用した表記は、デキストラン-GMA:PCL-IEMAの割合含有量および添加したD-マンニトールの含有量(割合)を指す:([デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール))
25/75(0)
25/75(50)
膨潤能力の割合は、上記と同じ式を用いて計算した。
【0062】
図12は、チューブ形状コンフォメーションを有するデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAのコポリマーのインビトロ加水分解を示す。以下の表記は、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比、およびD-マンニトールの含有量を示すために使用する:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)。
【0063】
インビトロ加水分解は、図2の説明で述べた同じ方法を用いて計算した。
【0064】
図13は、ラットの坐骨神経がコポリマー神経ガイドによって架橋された期間中の後の運動障害の割合を示す。以下の表記は、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比、およびD-マンニトールの含有量を示すために使用する:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)。
【0065】
図14は、痛刺激を用いることによって得られた引込め反射を示す。以下の表記は、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比、およびD-マンニトールの含有量を示すために使用される:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)。
【0066】
図15は、ラット坐骨神経をポリマー神経ガイドによって架橋した期間中のラットの足跡によって与えられた静的機能指標を示す。以下の表記は、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比、およびD-マンニトールの含有量を示すために使用する:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)。
【0067】
〔実施形態の説明〕
以下、本出願の好ましい実施の形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。しかしながら、それらは、本出願の範囲を限定することを意図していない。
【0068】
本技術の目的は、生体適合性、生分解性、適切な透過性、適切な生体力学的特性、表面特性、およびカスタマイズされた寸法などの要件を包含する、再生医療におけるその使用のためのデキストランベースの材料を提供することである。
【0069】
最終材料を得るために、最初に、デキストランを、グリシジルメタクリレート(GMA)との反応によって二重結合を組み込んで修飾した。最初に、2.5g(1.54×10-2mol)のデキストランを、30℃の水浴中に浸漬した丸底フラスコ中の22.5mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。デキストランを完全に溶解した後、0.5g(4.09×10-3mol)のジメチルアミノピリジン(DMAP)を溶液中に溶解し、2.05mL(1.54×10-2mol)のGMAを添加した。反応は窒素雰囲気下で8時間進行した。この時間後、溶液を中和するために、0.33mLのHCl37%(w/w)を添加した。次いで、反応の生成物を水に対して透析した。生成物を凍結乾燥させ、スポンジ様の生成物を得た。この反応により、デキストラン-GMAの配合物が得られる。
【0070】
本技術では、デキストランを用いることが好ましい。好ましい実施形態では、デキストラン70000g/molを使用した。そうは言うものの、このパラメータは変更することができ、他の分子量を200000g/molまでの範囲で使用することができる。
【0071】
さらに、天然ポリマーの修飾のためにという事実にもかかわらず、好ましい実施形態においてGMAが選択された。
【0072】
デキストラン-GMAを得るための予備反応に続いて、PCLジメタクリレートコマクロモノマーを合成した。
【0073】
好ましい実施形態では、PCLジメタクリレートがヒドロキシル末端基を含むPCLのIEMAとの反応から得られた(PCL-IEMA)。40℃の水浴中に置いた丸底フラスコ中で、2.2g(4mmol)のPCL-ジオールを30mLのテトラヒドロフラン(THF)に、窒素雰囲気下で溶解した。PCL-ジオール可溶化後、1.27g(8.2mmol)のIEMAおよび150mgのジブチルスズジラウレート(約3滴)を反応混合物に添加した。反応を24時間進行させた。生成物を、n-ヘキサン中での沈殿によって回収し、真空下で、恒量になるまで、室温で乾燥させた。
【0074】
本技術では、ヒドロキシル末端基を含むPCLを用いることが好ましい。本出願において、ポリε-カプロラクトンは、600g/mol以下の範囲で使用される。
【0075】
同様に、好ましい実施形態では、PCLを修飾するためにIEMAが使用される。
【0076】
デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAの調製後、25:50~50:75[デキストラン-GMA:PCL-IEMA]の範囲で、異なる量の両方の材料を含む配合物を調製した。コポリマーを2mLのDMSOに完全に可溶化するまで溶解した。
【0077】
最終材料は、PCLジメタクリレート(PCL-IEMA)およびデキストラン-GMAを含む配合物にUV光(波長=280nm)を、室温で、2時間照射し、2つのコポリマー間の光架橋反応を促進することによって得られる。
【0078】
本出願の文脈において、室温は、15℃~25℃の温度として定義される。
【0079】
本技術では、UV光による照射が好ましいが、最終材料は最終形状の複雑さを増加させることを可能にし、生物医学的デバイスの調製のために報告されている(Biofabrication 10 (2018) 1-20およびJ. Neural Eng. 15 (2018) 1-12)、UV放射線を使用する3D印刷などの付加的な製造技術によっても得ることができる。
【0080】
光架橋反応は、UV光と光開始剤とを0.02~2% w/vの濃度で組み合わせて行う。一実施形態では、光開始剤濃度は0.1% w/vである。
【0081】
一実施形態では、光開始剤はIrgacure(登録商標)2959である。
【0082】
異なる相対量のデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAを用いて作られたこの反応の得られたコポリマーは透明材料であり、それらの熱機械的特性は、コマクロモノマー含有量に依存することが見出された。
【0083】
材料の形状は、金型に応じて変えることができる。好ましい実施形態では、膜形状および中空チューブ形状を調製した。しかしながら、本発明の方法では、これらの材料を球形に調製することも可能であり、これはドラッグデリバリーシステム用途のために一般に使用される。
【0084】
PCL-IEMA含有量の高いコポリマーは、より高い熱安定性(約8%高い)およびより低いガラス転移温度(64~93%低い)を示し、より柔軟な材料に変換する。
【0085】
医療用途では、これらの材料の多孔性が考慮すべき重要なパラメータである(Tissue Eng Part C Methods 19 (2013) 233-243)。
【0086】
透過性チューブは栄養素および酸素の交換を可能にし、チューブのドレナージを可能にし、また、チューブ内部の血管新生を可能にすることが報告されている。これらの因子は全て、神経再生の増強に重要な役割を有することが示されている(Tissue Eng Part C Methods 19 (2013) 233-243)。
【0087】
一実施形態では、スクロース、塩化ナトリウム、および炭酸ナトリウムなどの水溶性の糖型または塩型の既知の多孔質剤を添加することによって、多孔性を調製された材料に提供することができる。
【0088】
記載された多孔質剤(PLoS One 7 (2012) e48824)を用いたいくつかの試験から、D-マンニトールは、光重合反応およびコポリマーの完全性を損なうことなく、材料に多孔性を与えることができる。
【0089】
コポリマー配合物の20~80%(w/w)の含有量のD‐マンニトールの存在は、光架橋反応を妨害しない。
【0090】
一実施形態では、デキストラン-GMA:PCL-IEMAの配合物に添加されるD-マンニトールの量は、0%(w/w)である。別の実施形態では、添加されるD-マンニトールの量は、80%(w/w)であった。D-マンニトールを有する配合物では、DMSO中でデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAを完全に可溶化した後に添加する。D-マンニトールの完全な可溶化が達成されると、Irgacure(登録商標)2959も添加され、可溶化される。次いで、配合物をUV光下で光架橋させる。重合後、材料を蒸留水中に浸漬し、3日間37℃で炉中に放置し、D-マンニトールを除去する。次いで、最終材料をMilli-Q水で7日間洗浄し、減圧下、40℃で乾燥させる。
【0091】
要約すると、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAの固体コポリマーを調製するための光重合の方法は、以下の工程に従う:
-デキストラン-GMAを、室温でDMSOに溶解する;
-PCL-IEMAを先の溶液に添加する;
-先のコマクロモノマーを完全に溶解し、光開始剤を添加する;
-280nmの波長を有するUV光下で配合物を光架橋させるために放置する;
-最終コポリマーを水で7日間洗浄し、次いで真空下で乾燥させる。
【0092】
使用するデキストラン-GMAの量は25~50%(w/w)である。
【0093】
使用するPCL-IEMAの量は50~75%(w/w)である。
【0094】
好ましい実施形態では、最終材料をミリQ水で洗浄する。
【0095】
好ましい実施形態では、最終材料を40℃で減圧乾燥させる。
【0096】
一実施形態では、デキストラン-GMAを2mLのDMSOに溶解する。
【0097】
一実施形態では、配合物を1時間光架橋させるために放置する。
【0098】
一実施形態では、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAの完全な溶解の後、水溶性の糖型または塩型の既知の多孔質剤を溶液に添加し、可溶化するために放置する。光架橋工程の後、次いで得られたコポリマーをdestilled水に浸漬し、炉中に37℃で3日間放置して多孔質剤を除去した後、最終コポリマーを洗浄し、減圧乾燥させる。
【0099】
デキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、およびPCL-IEMAのFTIRスペクトル:
デキストランスペクトルでは、この多糖類に見られる典型的なバンド、すなわち3300cm-1で観察できる-OH基(a)の伸縮振動を同定することができる。2910cm-1では、CH基およびCH2基(それぞれ、bとc)の両方の伸縮振動に対応するバンドを観察することができる。1000~1100cm-1には、エーテル結合(d)の伸縮振動に対応するバンドがあり、914cm1ではα-グリコシド結合(e)の振動に起因するバンドである。44 1636cm-1では、結合水(f)の曲げに対応するバンドを観察することができる。
【0100】
デキストラン-GMAのスペクトルに関しては、本来のデキストランのスペクトルとの関係においていくつかの違いを観察することができる。約1710cm-1(g)の新しいバンドは、エステル結合のカルボニル基(GMA中に存在する)の伸縮振動に対応する。メタクリレート基の変角振動は、813cm-1(h)の両方のスペクトルで見ることができる。二重結合の伸縮振動は、1650cm-1で見ることができる。
【0101】
PCL-ジオールスペクトルでは、(a)-OH基の振動に対応する3340cm-1、(b)CHの非対称および対称伸縮に対応する2940cm-1および2865cm-1のバンドをそれぞれ同定することができる。(c)1730cm-1のピークは、エステル結合の-C=O基の伸縮振動に起因する。
【0102】
PCL-IEMAのスペクトルでは、ウレタン結合の特徴的なバンドを同定することが可能であり、PCL-ジオール構造の成功した修飾を確認する。これらのバンドの最初は(d)1720cm-1であり、これはウレタン結合に属するカルボニル基と重なるPCL-ジオール由来のエステルのカルボニル基の伸縮振動に対応する。次いで、(e)では、1630cm-1はC=C基の伸縮振動に起因する。さらに、(f)1566cm-1では、N-Hの変角振動およびC-N基の伸縮振動に対応するバンドも観察できた。さらに、-OH基に対応するブロードなバンドの消失、および-NH基の伸縮振動のよりシャープなバンド特性の出現が注目される。(g)817cm-1にはメタクリレート基の二重結合の変角振動に対応するバンドが現れる。イソシアネート基(2270cm-1)の強いバンド特性は見えない。これは、全てのイソシアネート基が修飾の間に消費されたことを示す。
【0103】
デキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、およびPCL-IEMAのH NMRスペクトル:
O中のP_LMWの1H NMRスペクトルでは、4.0ppm~3.3ppmの範囲の多重項ピークおよび5.3ppm(a’)付近に見られるアノメリックプロトンピークであるデキストランポリマーの典型的なピークを観察することができる。
【0104】
デキストラン-GMAのスペクトルは、二重結合のプロトンに起因する、約6.1および5.7ppm(k)で、およびメタクリレート基に属する-CH3基のプロトンに対応する、約1.9ppm(j)で、さらなるレゾナンス(ressonances)を示す。デキストランの修飾の割合は、デキストランおよびGMAの二重結合に対応するシグナルの積分値の間の関係から計算した。
【0105】
PCL-ジオールのH NMRスペクトルは、PCLの典型的なレゾナンスを示す。PCL-IEMAの1H NMRスペクトルの場合、7.2~7.4ppmにおいて、ウレタン結合の-NH基(m)に対応するレゾナンスが明確に示される。5.6および6.1ppmにおける二重結合(l)のプロトンに対応するピーク、および1.8ppmにおける-CH3基(k)のプロトンのピークを同定することも可能である。さらに、PCL-ジオール(j)中の末端基のプロトンに対応するレゾナンスが、PCL-IEMAのスペクトルにおいて消失したことが分かる。
【0106】
デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAの熱重量分析:
デキストランの熱分析曲線は、2段階の重量損失を示す。デキストラン-GMA GMAについては、3段階の重量損失を同定することができる。25~150℃の重量損失の第1段階は、両方のサンプルに共通であり、残留水分の損失に起因し得る。270~370℃の間の分解の第2段階は、多糖類デキストラン鎖の分解を指す。重量損失のこの段階は、両方の曲線にも存在する。デキストラン-GMAについて観察された重量損失のさらなる段階は、デキストランの修飾部分の分解に起因し得る。これらのデータは、デキストランの熱安定性がGMAによる修飾によって影響されないことを示唆する。
【0107】
PCL-ジオールの分解は2段階で起こる。これは、PCL-ジオールマトリックス内に存在するより小さい鎖の早期の分解によるものであり得る。PCL_IEMAに関するものでは、重量損失の2つの主要な段階も示す。第1段階(345~350℃)はウレタン結合の分解に起因し、続いて第2段階(378~443℃)はエステル結合の分解に起因し得る。また、沸点211℃付近にピークがないことから、サンプルに未反応のIEMAがないことを確認することができる(Int. J. Pharm 352 (2008) 172-181)。
【0108】
デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAの示差走査熱量測定:
デキストランおよびデキストラン-GMAの熱流量曲線では、同定できる唯一の熱事象はTgであり、これらの物質は、予想通り、完全にアモルファスであることを示している。一方、PCL-ジオールの熱流量曲線は-41.0℃で1つの熱事象を示し、それはガラスTgに対応する。さらに、材料の融解(Tm)(-9.0℃および7.5℃)に対応し、冷却サイクルにおいて結晶化(Tc)(-28.6℃)に対応する2つの他の熱事象が存在する。この事実は、PCL-ジオールが半結晶性ポリマーであることを確認する。IEMAで修飾すると、PCL-ジオールはその構造秩序を失い、アモルファス材料をもたらす。さらに、Tg値のわずかな低下が観察される(-42.9℃)。PCL-ジオール構造にIEMAが含まれることは、主鎖ポリマー鎖間の自由体積の増加に寄与し、観察されたTgの減少の正当性を示す。
【0109】
コポリマーの熱重量分析:
デキストラン-GMAのみ(100/0)を用いて調製されたコポリマーは、対応する前駆体と比較してより高い熱安定性を示し(デキストラン-GMA)、これは、それらの架橋構造によって説明される(Biomaterials 24 (2003) 759-767)。異なるコマクロモノマー含有割合比を有するコポリマーデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAの熱重量曲線は、それらの異なる組成にもかかわらず、明らかに2段階の重量損失を示す。結果は、PCL-IEMAがコポリマーの熱安定性を増加させ、PCL-IEMAがコポリマーの熱安定性にプラスの影響を及ぼすことを示す。また、PCL-IEMAの含有量がより高い(25/75)コポリマーは、含有量がより低い(50/50)コポリマーと比較して、一貫してより安定である。この挙動は、最終材料の架橋の増加に起因し得る。全ての膜は、約300℃の温度まで熱的に安定であることが見出された。
【0110】
動的機械熱分析(DMTA):
DMTA分析は、全ての材料がTgに対応するピークを有することを示す。デキストランは、全てのサンプルのより高いTg値を示す。それをGMAで修飾すると、Tg値は予想通りわずかに減少する。しかしながら、PCL-ジオールとPCL-IEMAとの間では、IEMAの包含が主鎖ポリマー鎖間の自由体積の増加に寄与するようなTg値の有意な減少はない。コポリマーデキストラン-GMA:PCL-IEMAに関して、100/0配合物(PCL-IEMAなし)は架橋ネットワークの確立のために、予想されるように、デキストラン-GMAよりも高いTgを有する。コポリマー50/50および25/75のDMTA分析は、PCL-IEMAの含有量の増加に伴ってそれらのTgの低下を明らかにする。
【0111】
膨潤試験:
デキストラン-GMAに対するPCL-IEMAの含有量の増加(0~75%から)に伴い、PCLの吸水性特性のため、予想通り、最終コポリマーの膨潤能力は200%から約100%([デキストラン-GMA:PCL-IEMA]50:50])および50%([デキストラン-GMA:PCL-IEMA]25:75])へと減少した。それゆえ、材料の膨潤能力を調節することが可能であり、これは医療用途にとって非常に重要な特性である。
【0112】
分解試験:
インビトロ加水分解試験は、30日間の間に、コポリマーがそれらの全重量の8~12%の間で失われたことを示した。さらに、コポリマーはその構造的完全性を維持することができ、この期間中に分解の兆候またはコンフォメーションの喪失を示さなかったため、その構造および機能を損なわなかった。
【0113】
膨潤試験および分解試験から得られた有望な結果に加えて、コポリマーを細胞インビトロ試験で試験した。
【0114】
したがって、材料の加水分解による分解性を調節することが可能であり、これは医療用途にとって非常に重要な特性である。
【0115】
細胞生存率および細胞適合性:
コポリマーの細胞生存率および細胞適合性を7日間試験した。この時間の後、材料と接触した細胞の生存率および増殖を分析した。すべての材料は、材料のない対照と比較して、類似の細胞生存率および代謝速度を示した。これは調製された材料の生体適合性を証明する。
【0116】
したがって、材料の表面と接触する細胞生存率を調節することが可能であり、これは医療用途において非常に重要な特性である。
【0117】
予備的なインビトロ試験(ラットにおける皮下移植):
これらのコポリマーから得られた優れた細胞生体適合性指標のために、予備的なインビボ試験を行った。
【0118】
調製したコポリマーのサンプルをラットに皮下移植し、15日間分析し、3、7および15日後に細胞数および生物学的反応を評価した。試験終了時に、デキストラン-GMAのみで構成されるコポリマーは「軽度刺激性」と分類され、配合物中のPCL-IEMAとのコポリマーは「非刺激性」の分類に対応するスコアを得た。
【0119】
インビボ試験(マウスの坐骨神経間隙を架橋する)-神経管ガイドとして試験されたチューブ:
膨潤能力、分解速度、インビトロおよびインビボ評価に関して本出願のコポリマー対象物で達成された良好な特性に関して、コポリマーを、神経ガイドとして試験されるチューブ形態に成形した。
【0120】
膨潤能力に関するものでは多孔質チューブおよび非多孔質チューブの両方が60%未満の値を示し、非多孔質チューブであるのは40%のみであり、これはチューブが移植されたときの、チューブ上の挙動に関する重要な特性である。調製したチューブの分解速度に関して、加水分解研究は、180日後、それらがそれらの構造的完全性を維持し、それらの初期重量の12~16%の間でしか失わないことを明らかにした。
【0121】
本明細書に記載されるコポリマーを用いて調製される神経ガイドチューブは、分解または破損なしの縫合に対するそれらの耐性に関して、十分な機械的特性を有し、これは、移植プロセスにとって重要な特性である。さらに、それらは、神経自体(1~2N)よりも、破損することなくより高い負荷(2.2~2.4N)に耐えることができる。
【0122】
これらのコポリマーで作られた神経チューブ-ガイドのインビボでの性能を、神経断裂損傷後のラットの坐骨神経を架橋することにより評価した。手術のために、体重300~350gの成体の雄Sasco Sprague Dawleyラットを、それぞれ6匹ずつの2群に分けた。すべての動物を、12-12時間の明/暗サイクルで、ケージあたり2匹の動物で、温度および湿度を制御した室内で飼育した。標準的な実験室条件下で、通常のケージ活動を可能にした。動物には、標準的な固形飼料および水を自由に与えた。動物の苦しみおよび苦痛に対するヒトのエンドポイントを考慮して適切な措置を講じることにより、痛みおよび不快感を最小限にした。実験に入る前に、動物を2週間飼育した。
【0123】
手術のために、ラットを無菌状態下でうつ伏せに置いた。切り取られた外側右大腿部の皮膚を、ルーチンの方法で、消毒溶液で擦った。手術は、M-650手術顕微鏡(Leica Microsystems、Wetzlar、Germany)下で行った。使用した麻酔はケタミン9mg/100g;キシラジン1.25mg/100g;アトロピン0.025mg/100体重で構成し、筋肉内に適用した。麻酔の効果の下で、大転子から遠位の半分まで延在する皮膚切開を行った。次いで、筋肉分割切開を行い、動物の坐骨神経を露出させた。固定化後、真っ直ぐな顕微手術用はさみの助けを借りて、切断(神経断裂)を誘導した。神経は末端神経分枝直上ですぐに損傷していた。両方の群において、近位および遠位断端をコポリマーDおよびE神経ガイドに3mm挿入し、7/0モノフィラメントナイロンを使用して2つの神経弓突起縫合糸で所定の位置に保持した。2つの断端間の神経間隙は10mmと測定された。両群とも反対側の脚および坐骨神経は無傷のままとし、通常の神経のコントロールと考えられた。自己切断を防ぐため、動物の右足に抑止物質を適用した。全ての手順は、1986年11月のEuropean Communities Council Directive(86/609/EEC)に従って、ポルトガルの獣医局の承認を得て行われた。
【0124】
先述した神経断裂損傷および本発明の神経チューブ-ガイドによる修復後の神経の運動能力は、姿勢正伸筋突伸反応(EPT)の伝導によって評価された。EPT試験結果の登録のために、後肢を除いて、ラットの身体を手術タオルに包む。次いで、動物は、デジタル天秤の台に向かって操作者によって支持され、下げられる。台に近づけることにより、動物は台との視覚的接触を確立することができる。次いで、動物は、後肢を伸ばすことによって台との接触を予想し得る。この接触は、遠位中足および指によって行われる。デジタル台天秤(モデルTM560;Gibertini、Milan、Italy)に適用した重量(力)を、グラムで、実験(EEPT)メンバーおよび正常(NEPT)メンバーの両方について記録した。測定を3回繰り返し、考慮した値はそれらの間の平均である。Kokaらによって報告されているように(Exp. Neurol 168 (2001) 192-195)、EEPTおよびNEPTを以下の式で積分して、機能的欠損の割合を得た。移植の20週間後、数週間にわたる運動回復の割合の改善が観察される。
【0125】
侵害受容性機能を、Mastersら(Anesthesiology 79 (1993) 340-346)によって記載されるように改変されたホットプレート試験による引込め反射潜在性(WRL)の評価によって評価した。通常のラットは、4.3秒以内にホットプレートから足を引っ込める。12秒後に足の引込めが起こらなかった場合は熱刺激を除去し、組織損傷を防ぐために試験を中断した。これらの場合において、動物は、12秒の最大WRLを割り当てられた。時間経過とともに、WRLの低下の傾向が確認される。
【0126】
静的坐骨神経指数(SSI)測定は、動物の立位により行った。全ての足跡は、少なくとも4回の時折の休息期間中に得られた。測定は、通常(N)側と実験(E)側の両方から行った。動物あたり4つの工程を分析し、それらの明確さに基づいてそれらの跡を選択した。得られた3つの異なる測定値の平均距離を使用して、以下の因子を計算した:足指拡がり因子(Toe spread factor)(TSF)、中間足指拡がり因子(Intermediate toe spread factor)(ITSF)。このパラメータの計算は、Bainによって記載された式(Plast Reconstr Surg 83 (1989) 129-136)を用いて行った。これらの動物試験の結果を図7~9にまとめる。
【0127】
上記で開示された結果によって証明されるように、これらのコポリマーを用いて調製された神経チューブ-ガイドは、動物が通常により近い足跡を生成することができたので、実験的な後足の機能回復を増強することが証明された。デキストラン-GMA:PCL-IEMAのコポリマーを用いて調製された材料は、特に再生医療のための神経ガイドとして、医療目的のための使用に適した、優れた生物学的性質、ならびに熱機械的性質(引張強度、縫合強度、ガラス転移温度)および膨潤性を示した。
【0128】
本明細書に記載のコポリマーは、フィルム、シート、チューブ、ロッド、プラグ、マイクロスフェア、またはメッシュ(固体または多孔質のいずれか)に加工することができる。
【0129】
これらのコポリマーから作ることができる他の製品の例は、生物医学的ドレーン;ステント目的のための生物医学的チューブ;抗接着シートなどの体内用途のための生物医学的シート;一時的創傷ケア被覆などの局所使用のためのまたは瘢痕を防ぐための生物医学的シート;創傷ケアフォーム;身体に導入される針およびチューブのための保護シース;ドラッグデリバリーのための(マイクロ)スフェア;塞栓目的のための(マイクロ)スフェア、粒子、およびプラグ;皮膚増強、しわおよび皮膚輪郭欠損の治療などの美容手術目的のための(マイクロ)スフェア;人口血管;半月板修復のための人工皮膚または足場プラグなどの組織工学の足場である。
【0130】
実施例:
使用される以下の表記は、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAによって構成されるコポリマーの最終組成物中のコマクロモノマーの割合を指す([デキストラン-GMA/PCL-IEMA])。
【0131】
実施例I:デキストランの修飾
2.5g(1.54×10-2mol)の量のデキストラン(70.000g/mol)(Sigma Aldrich、USA)を、丸底フラスコ中の22.5mLのジメチルスルホキシド(DMSO)(Fisher Scientific、EUA)に溶解した。フラスコを30℃の水浴に浸漬した。デキストランの完全な可溶化後、0.5g(4.09×10-3mol)の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(TCI Europe、ベルギー)を溶液に溶解し、2.05mL(1.54×10-2mol)のグリシジルメタクリレート(GMA)(Acros Organics、ベルギー)を添加した。反応は窒素雰囲気下で8時間進行した。この後、0.33mLの塩酸(HCl)(Fisher Scientific、EUA)37%(w/w)を加えて溶液を中和した。次いで、反応の生成物を水に対して透析した。生成物を凍結乾燥させ、スポンジ様の生成物を得た。本生成物の参照に使用した表記は[デキストラン-GMA]であった。デキストランの修飾の割合は、デキストランおよびGMAの二重結合に対応するシグナルの積分値(1H NMRスペクトル)の間の関係によって得られた。得られた値は、平均して31~34%であった。
【0132】
実施例II:ポリ(ε-カプロラクトン)ジオールの修飾
40℃の水浴中に置いた丸底フラスコ中で、2.2g(4mmol)のポリ(ε-カプロラクトン)プロパンジオール(PCL-プロパンジオール)(Perstorp、UK)を、30mLのテトラヒドロフラン(THF)(VWR、EUA)中に窒素雰囲気下で溶解した。PCL-ジオール可溶化後、1.27g(8.2mmol)の2-イソシアナトエチルメタクリレート(IEMA)(TCI Europe、ベルギー)および150mgのジブチルスズジラウレート(3滴)(Fluka、USA)を反応混合物に添加した。反応を24時間進行させた。生成物をn-ヘキサン(JMGS、ポルトガル)中で沈殿させることによって回収し、真空下、恒量になるまで室温で乾燥させた。本手順から得られた生成物について使用した表記は[PCL-IEMA]であった。最終生成物のFT-IRスペクトルでは、イソシアネート基(2270cm-1)の強いバンド特性は見られない。これは、全てのイソシアネート基が修飾の間に消費されたことを示す。
【0133】
実施例III:コポリマーA
デキストラン-GMA(0.5g)を2mLのDMSOに溶解した。溶解後、生体適合性光開始剤Irgacure 2959(登録商標)(Ciba Specialty Chemicals、スイス)を0.1/w/v(1.11×10-2mmol)の濃度で添加した。次いで、溶液をペトリ皿に入れ、UVチャンバー(Dr.Grobel、UV-Electronik GmbHのモデルBS-02)中で280nmの波長の光で2時間光架橋のために放置して、透明な膜を得た。次いで、膜を蒸留水で7日間洗浄した。洗浄工程の後、膜を直径1cmの円形に切断し、デシケーター中で真空下、室温で乾燥させた。上述の通り、このコポリマーの表記は100/0である。
【0134】
実施例IV:コポリマーB
デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAを50:50(w/w)の割合で2mLのDMSOに溶解した。溶解後、光開始剤Irgacure 2959(登録商標)(Ciba Specialty Chemicals、スイス)を0.1/w/v(1.11×10-2mmol)の濃度で添加した。次いで、溶液をペトリ皿に入れ、UVチャンバー(Dr.Grobel、UV-Electronik GmbHのモデルBS-02)中で280nmの波長の光で2時間光架橋のために放置して、透明な膜を得た。次いで、膜を蒸留水で7日間洗浄した。洗浄工程の後、膜を直径1cmの円形に切断し、デシケーター中で真空下、室温で乾燥させた。上述の通り、このコポリマーの表記は50/50である。
【0135】
実施例V:コポリマーC
デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAは、25:75(w/w)の割合で2mLのDMSOに溶解した。溶解後、光開始剤Irgacure 2959(登録商標)(Ciba Specialty Chemicals、スイス)を0.1/w/v(1.11×10-2mmol)の濃度で添加した。次いで、溶液をペトリ皿に入れ、UVチャンバー(Dr.Grobel、UV-Electronik GmbHのモデルBS-02)中で280nmの波長の光で2時間光架橋のために放置して、透明な膜を得た。次いで、膜を蒸留水で7日間洗浄した。洗浄工程の後、膜を直径1cmの円形に切断し、デシケーター中で真空下、室温で乾燥させた。上述の通り、このコポリマーの表記は25/75である。コポリマーA~Cの組成を表1にまとめる。
【0136】
【表1】
【0137】
実施例VI:コポリマーD
デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAは、25:75(w/w)の割合で2mLのDMSOに溶解した。溶解後、光開始剤Irgacure 2959(登録商標)(Ciba Specialty Chemicals、スイス)を0.1/w/v(1.11×10-2mmol)の濃度で添加した。このコポリマーの表記は、コマクロモノマーの割合および添加したD-マンニトールの重量における割合を参照する:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA(D-マンニトール)](D)25/75(0)。
【0138】
実施例VII:コポリマーE
デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAは、25:75(w/w)の割合で2mLのDMSOに溶解した。溶解後、多孔質剤D-マンニトール(Sigma Aldrich、USA)を混合物に添加した(50%w/w)。次いで、光開始剤Irgacure 2959(登録商標)(Ciba Specialty Chemicals、スイス)を0.1/w/v(1.11x10-2mmol)の濃度で添加した。このコポリマーの表記は、コマクロモノマーの割合および添加したD-マンニトールの重量における割合を参照する:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA(D-マンニトール)](E)25/75(50)
実施例VII:神経ガイド導管の調製
コポリマーDおよびEから神経ガイド導管を調製した。コポリマーを、内部にステンレス鋼ロッドを有する石英チューブから構成される型に入れて、中空チューブ形状を実現した。コポリマーを有する型を、UVチャンバー(280nmの波長を有するUV-Electronik GmbHのDr.GrobelのモデルBS-02)中で20分間光架橋のために放置した。その後、神経ガイドを型から取り出し、2日間吸収紙中に放置して過剰のDMSOを除去した。次いで、神経ガイドをMilli-Q水で洗浄した。コポリマーEの場合、D-マンニトールを除去するために、重合後、得られた材料を蒸留水中に浸漬し、3日間、37℃の炉中に放置した。次いで、コポリマーEをMilli-Q水で7日間洗浄した。
【0139】
神経ガイドを40℃で減圧乾燥させた。乾燥工程の後、特性決定のために、1cmのチューブのセグメントを切断した。
【0140】
図1は、コポリマーA~Cの膨潤能力を示す。3つのコポリマーは、約2~3時間後にそれらの膨潤能力を安定化させた。
【0141】
デキストランは水とのその高い親和性について周知されており、これは、コポリマーA(100/0)によって示されるより高い膨潤能力を説明する。次に、コポリマーBおよびCの配合物中の疎水性PCL-IEMAの含有量が増加するにつれて、膨潤能力が減少する(約200%から約100~50%に)ことが確認された。
【0142】
図2は、シミュレートされた生理学的条件下(PBS、pH=7.4、37℃)でのコポリマーA~Cのインビトロ加水分解を示す。
【0143】
コポリマーAはコポリマーBおよびコポリマーCに比べてより高い分解速度を示す。上述のように、デキストランは水との高い親和性を有し、高い膨潤能力をもたらし、分解率に有利である。PCL-IEMAを組み込むと重量損失の減少が観察される。PCL-IEMAの疎水性は、分解媒体が架橋ネットワーク内に容易に浸透することを可能にせず、重量損失の値の低下をもたらす。
【0144】
図3は、コポリマーA~Cに播種されたヒト歯髄幹細胞(hDPSC)のPresto Blue(登録商標)生存率アッセイによって評価された吸光度をプロットしたものである。結果は、膜を細胞培養プレートに固定化するために使用される固定化剤が任意の時点での対照と比較して、細胞接着および細胞代謝に有意に影響しないことを示す。これは、対照(Ct)について得られた吸光度値の、固定化剤を有する対照(Ct SG)について得られた値との類似性によって観察することができる。
【0145】
播種時の膜への細胞接着が、対照および固定化剤対照よりも有意に劣っているという事実は注目に値する。
【0146】
後のインキュベーション時間(5日目および7日目)において、コポリマーCは、対照と比較して改善された細胞生存率および代謝活性を示す。
【0147】
5日間のインキュベーションで、最大吸光度および細胞代謝活性測定値に達した。これは、細胞が5~7日間の期間にコンフルエンスに達し、利用可能な表面空間の欠如による細胞代謝活性の停止をもたらすという事実による。
【0148】
図4は、ISO 10993-6:2016 Part 6:移植後の局所効果の試験に従って得られたコポリマーA~Cの組織学的スコアを示す。
【0149】
安楽死させると、露出した皮下組織は平滑で、出血または炎症の目に見える徴候は認められなかった。すべてのグループにおいて、コポリマーは、皮下組織の薄い透明なカプセルに含まれていた。
【0150】
顕微鏡では、移植後3日目に、混合した細胞に侵入が全ての群で観察された。しかしながら、この時点では、マクロファージおよびリンパ球などの単核炎症細胞の優勢がShamおよびコポリマーの両方に存在していた。最小の壊死事象は、全ての群において観察可能であった(sham:0,139;コポリマーA:0,563;コポリマーB:0,389;およびコポリマーC:0,045;最大4つのスコアのうちの平均スコア)。線維症に関しては、shamを含む全群が4つの平均スコアのうち1.4未満のスコアであった。
【0151】
移植7日目では、急性炎症反応は依然として単核細胞の優性が継続して検出可能である。壊死所見は4つの平均スコアのうち、値が0.450に達するコポリマーCを除いて、ほとんど全てのサンプルおよびshamにおいて有意に減少する。線維症に関しては、すべてのサンプルおよびshamは、3日間群解析のスコアを維持している。
【0152】
移植15日後、多形核白血球の予想される減少がコポリマーAを除くほとんどすべての群で観察された。さらに、主にリンパ球凝集体によって構成される中度の慢性応答が、試験したすべての群で依然として検出可能であった。この時点で、コポリマーAおよびコポリマーCサンプルでは壊死は観察されなかった(0.00平均スコア)が、コポリマーBは、shamで観察された残留壊死スコア値(0.091)よりも低い残留壊死スコア値(0.059)を示す。
【0153】
線維症は全群で1.9未満のままであった。コポリマーCでは血管新生のわずかな増加が観察され、コポリマーAではわずかな減少が記録された。
【0154】
標準ガイドラインに従って、3日目および15日目にコポリマーAを「軽度刺激性」と、7日目にコポリマーAおよびコポリマーCを「軽度刺激性」とスコア化した。その他のすべての試料を「非刺激性」とスコア化した。計算したスコアはコポリマーBおよびコポリマーCが「非刺激性」とみなされることを示す。この図から、本明細書に記載のコポリマーは、身体拒絶に関して改善された特性を有する非常に低い免疫応答を示したことが推測される。
【0155】
図5は、37℃でPBS(pH=7.4)中で評価したコポリマーDおよびEの膨潤能をプロットしたものである。結果は、神経ガイドの膨潤能力が浸漬の約4~5時間後に安定化することを示す。コポリマーDは約40%の膨潤能力を示し、一方コポリマーEについて得られた値は約60%である。ダークライト画像では、(a)乾燥状態の神経ガイド、および(b)湿潤状態の神経ガイドを示す。膨潤(b)平衡が達成された後、チューブの内径の寸法が妥協されないことは明らかである。同様に、内径が増加し、これは移植目的に有用である。
【0156】
図6は、シミュレートされた生理学的条件下(PBS、pH=7.4、37℃)で、コポリマーDおよびEで調製された神経ガイドのインビトロ加水分解を示す。
【0157】
180日後、コポリマーDはその重量の約16%を失い、コポリマーEは約13%を失ったことが分かる。両方のプロファイルは、両方の神経ガイドが100日まで分解速度に有意な変化を伴わずに連続的に分解し得ることを示す。この図から、本発明のコポリマーを用いて調製された神経ガイドは材料について観察されたものと適合し、移植プロセスについて良好な値を有する分解パターンを示したことがわかる。
【0158】
図7は、EPT測定から得られた、運動障害の割合をプロットしたものである。四肢延伸中の動物の等しい運動を確実にすることが困難であることに起因する振動値にもかかわらず、線形回帰トレースは、両方の群における運動障害値の割合の低下の一般的な傾向を示す。したがって、数週間にわたる運動回復の割合の改善が観察される。この図から、本発明のコポリマーを用いて調製された神経ガイドは、Tの有意な増強、すなわち運動機能の回復に寄与することがわかる。
【0159】
図8は、痛刺激の使用によって得られたWRL値を示す。線形回帰直線は、時間の経過とともにWRLが減少する傾向を示す。これは、感覚機能の向上が観察されたことを意味する。振動値にもかかわらず、20週目では、最初の時点と比較して、すべての動物が刺激に反応するまでの時間が少なかった。この図から、本発明のコポリマーを用いて調製された神経ガイドは、ラットに移植された場合、WRL値において発現された感受性機能を、健康なものに近いレベルまで回復させることに寄与することがわかる。
【0160】
図9は、立っているラットの足跡の分析によって得られたSSI値を示す。線形回帰トレースは、両方のコポリマーについて、SSIの平均値が時間の経過とともに増加する傾向があることを示す。これは、機能的な回復が一貫して達成されたことを意味する。また、両方の神経ガイドを受けた動物は、手術後1週目と比較して、実験終了時に優れたSSIを示す。この図から、本発明のコポリマーを用いて調製された神経ガイドは、ラットに移植された場合、それらの実験の足跡において発現された感受性機能の回復に寄与し、通常の足跡により類似するようになったがわかる。
【0161】
本出願の好ましい実施形態を例示の目的で開示してきたが、当業者は本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正、追加、および置換が可能であることを理解するのであろう。したがって、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は以下の特許請求の範囲によって、それらの均等物の範囲とともに定義される。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1図1は、デキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、およびPCL-IEMAのFTIRスペクトルを示す。FTIRスペクトルは、室温で、ATRモードを有するJasco FT/IR-4200分光計を使用して得た。データは、4cm-1のスペクトル分解能および64回の蓄積で4000~500cm-1の範囲で収集した。
図2図2は、デキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、およびPCL-IEMAのH-NMRスペクトルを示す。
【0163】
H NMRスペクトルは、三重検出TIX5mmプローブを使用して、Bruker Avance III 400MH分光計で、25℃で得た。H NMRスペクトルは、三重検出TIX5mmプローブを使用して、Bruker Avance III 400MH分光計で、25℃で得た。デキストランおよびデキストラン-GMAについては、使用した溶剤はDOであり、他に記載されているように(Macromolecules 28 (1995) 6317-6322)、特異的な条件下を使用した。簡単に述べると、30sの緩和遅延(relaxation delay)で87.7°のパルス角度を用いた。4.8ppmの水シグナルを、デカップリングによる溶媒抑制によって除去した。デカップリングパワーを、アノメリックプロトンシグナルの強度が影響を受けないレベルに調整した。PCL-ジオールおよびPCL-IEMAについては、使用した溶媒はDMSO-d6であった。TMSを内部標準として使用した。
図3図3は、デキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、およびPCL-IEMAの熱重量曲線を示す。
【0164】
材料の熱安定性を、TA Instruments Q500装置を用いた熱重量分析(TGA)によって評価した。25℃~600℃の温度を使用した。10℃.min-1の昇温速度および分析は、窒素雰囲気下で行った。
図4図4は、デキストラン、デキストラン-GMA、PCL、およびPCL-IEMAの熱流量曲線を示す。
【0165】
分解前の材料の熱挙動を示差走査熱量測定(DSC)によって評価した。使用した装置は、RSC90冷却ユニットを有するTA Instruments Q100である。
【0166】
デキストランおよびデキストラン-GMAを最初に25℃から250℃まで加熱し、続いてそれらの熱履歴を除去するために250℃から-80℃までの冷却サイクルを行った。次いで、サンプルを-80℃から250℃までの2回目の昇温サイクルに供した。
【0167】
PCL-ジオールおよびPCL-IEMAの場合、25℃から150℃まで最初の昇温サイクルを行い、その後-80℃まで冷却サイクルを行った。2回目の昇温サイクルは、-80℃から150℃まで行った。
【0168】
昇温速度は10℃.min-1であり、N2雰囲気(50mL.min-1)下で分析を行った。使用したサンプルの重量は7mg~9mgであった。
図5図5は、異なるコマクロモノマー含有割合比を有するデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAのコポリマーの熱重量曲線を示す(表記[デキストラン-GMA/PCL-IEMA]を使用) 100/0 50/50 25/75 また、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAについて得られた曲線を比較のために含めた。
【0169】
材料の熱安定性を、TA Instruments Q500装置を用いた熱重量分析(TGA)によって評価した。25℃~600℃の温度の範囲を使用した。10℃.min-1の昇温速度および分析は、窒素雰囲気下で行った。
図6図6は、動的機械熱分析(DMTA)により得られたデキストラン、デキストラン-GMA、PCL-ジオール、PCL-IEMA、およびデキストラン-GMA:PCL-IEMAコポリマーのTを示す。サンプルのDMTAは、Tritec2000DMA中で行った。サンプルをステンレス鋼材ポケットに入れ、シングルカンチレバーモードで分析した。試験は-150℃から300℃までの温度範囲で、10℃.min-1の昇温速度で、多周波モードで行った。Tは1Hzにおけるtanδ曲線のピークから決定した。
図7図7は、異なるコマクロモノマー含有割合比を有するデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAのコポリマーの膨潤能力を示す(表記[デキストラン-GMA/PCL-IEMA]を使用) 100/0 50/50 25/75 1cmの直径を有する円形膜の膨潤能力をPBS(pH=7.4、0.01M)中で測定した。既知の乾燥重量を有する乾燥サンプルを、膨潤平衡が達成されるまで、37℃で、5mLのPBS中に浸漬した。所定の時間に、サンプルをPBSから取り出し、表面の水を濾紙によって穏やかに吸い取った。
【0170】
膨潤能力の割合は、以下の式を用いて計算した:膨潤能力(%)=(W_s-W_d)/W_d×100
ここで、W_sは膨潤したサンプルの重量であり、W_dはPBSに浸漬する前の乾燥サンプルの重量である。測定は3回行った。
図8図8は、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAのコポリマーのインビトロ加水分解を示す。以下の表記を、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比を示すために使用する([デキストラン-GMA/PCL-IEMA])。試験はPBS(pH=7.4、0.01M)中で行った。1cmの直径を有し、既知の重量を有する乾燥円形膜を、37℃で、30日間、PBSに浸漬した。所定の時間に、膜をPBSから取り出し、蒸留水ですすぎ、それらの重量が安定するまで乾燥させた。
【0171】
分解の程度の推定は、以下の式に従って、インキュベーション後の重量損失を計算することによって行った:重量損失(%)=(W_0-W_t)/W_0×100
ここで、W_0は浸漬する前の乾燥サンプルの初期重量であり、W_tは、PBSに浸漬し、乾燥させた後の乾燥サンプルの重量である。測定は3回行った。
図9図9は、コポリマー中に播種したヒト歯髄幹細胞(hDPSCs)のPresto Blue(登録商標)生存率アッセイによって評価された吸光度を示す。使用した表記は、材料の最終組成物中のコマクロモノマーの割合を指す([デキストラン-GMA/PCL-IEMA])。
【0172】
コポリマーを、24ウェル細胞培養プレート中の各ウェルに固定し、関連する対照を、細胞を有さない、固定剤単独(SG)およびコポリマーを用いて調製した。次いで、材料を4×10細胞/ウェル濃度で播種した。細胞を、0.5mLの完全培養培地中に一晩接着させたままにした。各時点[24時間(1日)、72時間(3日)、120時間(5日)、および168時間(7日)]で、培養培地を各ウェルから除去し、10%(v/v)の10×Presto Blue(登録商標)細胞生存率試薬と共に、新鮮な完全培地を各ウェルに添加した。細胞を、37℃、5%COで1時間インキュベートし、細胞生存率の変化を、Thermo Scientific Multiskan FCにおける吸光分光法によって検出した。上清を収集し、96ウェルプレートに移し、吸光度を570nmおよび595nmで読み取った。その後、細胞をPBSで洗浄して、Presto Blue(登録商標)の残渣を除去し、新鮮な培養培地を各ウェルにリセットした。Presto Blue(登録商標)の励起波長は570nmであり、発光は595nmである。各ウェルについて、595nmでの吸光度(正規化波長)を570nmでの吸光度(実験結果)に差し引いた。補正された吸光度を、各実験ウェルに対する対照ウェルの平均を差し引くことによって得る。
図10図10は、デキストラン-GMAおよびPCL-IEMAコポリマーの皮下移植から得られた組織学的スコアを示す。使用した表記は、材料の最終組成物におけるコマクロモノマー比を指す。スコアは、ISO 10998-6スコアシステムに従って得た。
【0173】
「SHAM」は、対照-移植なしの切開を指す。
図11図11は、多孔質剤D-マンニトールと共にデキストラン-GMA/PCL-IEMAコポリマー(25/75)を用いて調製された神経ガイド導管の膨潤能力の割合を示す。使用した表記は、デキストラン-GMA:PCL-IEMAの割合含有量および添加したD-マンニトールの含有量(割合)を指す:([デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)) 25/75(0) 25/75(50) 膨潤能力の割合は、上記と同じ式を用いて計算した。
図12図12は、チューブ形状コンフォメーションを有するデキストラン-GMAおよびPCL-IEMAのコポリマーのインビトロ加水分解を示す。以下の表記は、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比、およびD-マンニトールの含有量を示すために使用する:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)。
【0174】
インビトロ加水分解は、図2の説明で述べた同じ方法を用いて計算した。
図13図13は、ラットの坐骨神経がコポリマー神経ガイドによって架橋された期間中の後の運動障害の割合を示す。以下の表記は、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比、およびD-マンニトールの含有量を示すために使用する:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)。
図14図14は、痛刺激を用いることによって得られた引込め反射を示す。以下の表記は、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比、およびD-マンニトールの含有量を示すために使用される:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)。
図15図15は、ラット坐骨神経をポリマー神経ガイドによって架橋した期間中のラットの足跡によって与えられた静的機能指標を示す。以下の表記は、コポリマーの最終組成物におけるコマクロモノマー含有割合比、およびD-マンニトールの含有量を示すために使用する:[デキストラン-GMA/PCL-IEMA](D-マンニトール)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15