(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】いちご、バラ又はにんにくの栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240425BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20240425BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G22/05 A
(21)【出願番号】P 2022561198
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2022028260
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521360515
【氏名又は名称】TSUBU株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522392689
【氏名又は名称】佐藤 江利子
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江利子
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-115788(JP,A)
【文献】特開2006-280364(JP,A)
【文献】特開2013-121331(JP,A)
【文献】特開2015-119732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 22/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いちご、バラ又はにんにくが育つ過程である子葉が開いてから花房が発生するまでの第2工程にて、
波長域400nm以上700nm以下の可視光領域での光量子束密度(PPFD-VL)が
31.3(μmol/m
2・s)以上113.1(μmol/m
2・s)以下からなる可視光を含む照射光を前記いちご、バラ又はにんにくに照射し、
前記可視光のうち、波長域400nm以上500nm未満の青色光領域での光量子束密度(PPFD-B)が5.6(μmol/m
2・s)以上19.5(μmol/m
2・s)以下であり、
前記可視光のうち、波長域500nm以上600nm未満の緑色光領域での光量子束密度(PPFD-G)が11.6(μmol/m
2・s)以上45.3(μmol/m
2・s)以下であり、
前記可視光のうち、波長域600nm以上700nm未満の赤色光領域での光量子束密度(PPFD-R)が14.1(μmol/m
2・s)以上48.3(μmol/m
2・s)以下であり、
前記照射光の色温度を3000K以上4800K以下とすることを特徴とするいちご、バラ又はにんにくの栽培方法。
【請求項2】
前記第2工程の前に行われていちご、バラ又はにんにくが育つ過程である播種から発芽までの第1工程にて、
波長域400nm以上700nm以下の可視光領域での光量子束密度(PPFD-VL)が59(μmol/m
2・s)以上135(μmol/m
2・s)以下からなる可視光を含む照射光を前記いちご、バラ又はにんにくに照射し、
前記可視光のうち、波長域400nm以上500nm未満の青色光領域での光量子束密度(PPFD-B)が11(μmol/m
2・s)以上25(μmol/m
2・s)以下であり、
前記可視光のうち、波長域500nm以上600nm未満の緑色光領域での光量子束密度(PPFD-G)が20(μmol/m
2・s)以上50(μmol/m
2・s)以下であり、
前記可視光のうち、波長域600nm以上700nm未満の赤色光領域での光量子束密度(PPFD-R)が28(μmol/m
2・s)以上60(μmol/m
2・s)以下とすることを特徴とする請求項1に記載のいちご、バラ又はにんにくの栽培方法。
【請求項3】
前記第1工程及び前記第2工程にて、9℃以上28℃以下の温度環境下で前記照射光を前記いちご、バラ又はにんにくに照射することを特徴とする請求項2に記載のいちご、バラ又はにんにくの栽培方法。
【請求項4】
前記第1工程及び前記第2工程にて、前記照射光の波長が最も大きいピーク値である第1ピーク値が400nm以上500nm以下であり、
前記第1ピーク値の次に大きいピーク値である第2ピーク値が550nm以上700nm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載のいちご、バラ又はにんにくの栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、年間を通じて良好に植物を栽培するための植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、花や実、あるいは根や茎や葉が育つものである。この植物が育つためには様々な要因があるが、その一つとして光合成が挙げられる。光合成には光が必要であり、通常は日光が利用されている。しかしながら季節の変動等により、日光が植物に当たる光質や時間は年間を通じて異なっている。このため、自然環境下では年間を通じて同品質の植物を育てることが困難である。
【0003】
一方で日光の代わりに人工的に光源を準備して、その光により植物を育成する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。特に特許文献1では、光量子束密度(PPFD)に着目し、植物を育成するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では赤色と緑色の光からなるPPFDにのみ着目し、青色のPPFDについては着目していない。また、植物を育成するためには、青緑赤のPPFDのトータル量と、そのうちに含まれる青緑赤のそれぞれのPPFDの量を適正にする必要があると考えられる。
【0006】
また、赤・青・緑のそれぞれの単色光の組み合わせで植物を成育した場合でも、光のトータルの色バランスが異なると、植物が良好に育たないという課題があった。そこで、光源から発された光の色を定量的な数値で表す色温度も植物の育成に重要なパラメータとして考えることができ、これがPPFDを組み合わされて良好な植物の栽培ができることについては知られていない。
【0007】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、適正なPPFD量及び色温度を考慮して年間を通じて良好に植物を栽培することができる植物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、植物が育つ過程である子葉が開いてから花房が発生するまでの第2工程にて、波長域400nm以上700nm以下の可視光領域での光量子束密度(PPFD-VL)が29(μmol/m2・s)以上120(μmol/m2・s)以下からなる可視光を含む照射光を前記植物に照射し、前記可視光のうち、波長域400nm以上500nm未満の青色光領域での光量子束密度(PPFD-B)が5(μmol/m2・s)以上20(μmol/m2・s)以下であり、前記可視光のうち、波長域500nm以上600nm未満の緑色光領域での光量子束密度(PPFD-G)が10(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下であり、前記可視光のうち、波長域600nm以上700nm未満の赤色光領域での光量子束密度(PPFD-R)が14(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下であり、前記照射光の色温度を3000K以上4800K以下とすることを特徴とする植物の栽培方法を提供する。
【0009】
好ましくは、前記第2工程の前に行われて植物が育つ過程である播種から発芽までの第1工程にて、波長域400nm以上700nm以下の可視光領域での光量子束密度(PPFD-VL)が59(μmol/m2・s)以上135(μmol/m2・s)以下からなる可視光を含む照射光を前記植物に照射し、前記可視光のうち、波長域400nm以上500nm未満の青色光領域での光量子束密度(PPFD-B)が11(μmol/m2・s)以上25(μmol/m2・s)以下であり、前記可視光のうち、波長域500nm以上600nm未満の緑色光領域での光量子束密度(PPFD-G)が20(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下であり、前記可視光のうち、波長域600nm以上700nm未満の赤色光領域での光量子束密度(PPFD-R)が28(μmol/m2・s)以上60(μmol/m2・s)以下とする。
【0010】
好ましくは、前記植物はバラ科であり、前記第2工程にて、波長域400nm以上700nm以下の可視光領域での光量子束密度(PPFD-VL)が90(μmol/m2・s)以上120(μmol/m2・s)以下からなる可視光を含む照射光を前記植物に照射し、前記可視光のうち、波長域400nm以上500nm未満の青色光領域での光量子束密度(PPFD-B)が10(μmol/m2・s)以上20(μmol/m2・s)以下であり、前記可視光のうち、波長域500nm以上600nm未満の緑色光領域での光量子束密度(PPFD-G)が30(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下であり、前記可視光のうち、波長域600nm以上700nm未満の赤色光領域での光量子束密度(PPFD-R)が30(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下であり、前記第2工程での前記照射光の色温度を4000K以上4500K以下とする。
【0011】
好ましくは、前記植物はいちごである。
【0012】
好ましくは、前記第1工程及び前記第2工程にて、9℃以上28℃以下の温度環境下で前記照射光を前記植物に照射する。
【0013】
好ましくは、前記第1工程及び前記第2工程にて、前記照射光の波長が最も大きいピーク値である第1ピーク値が400nm以上500nm以下であり、前記第1ピーク値の次に大きいピーク値である第2ピーク値が550nm以上700nm以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、適正なPPFD量及び色温度を考慮して年間を通じて良好に植物を栽培することができる。また、植物がバラ科である場合にはさらに最適なPPFD量及び色温度を考慮して年間を通じて良好に植物を栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る植物の栽培方法を実施した際の栽培形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
植物の生長過程は、種子繁殖型については、播種よりまかれた種子が発芽し、その後に子葉が開き、親株へと成長する。このような植物については本発明では播種から発芽までを第1工程とした。また、種子繁殖型の植物が子葉から親株へ成長する過程、またはそれ以外にランナーや地下茎、挿し芽や胞子を通して繁殖する植物や、球根から発芽する植物については、新株の子葉が開いた時点からを第2工程とし、花や実を形成する植物については、花房の発生、実の生る工程も第2工程に含むものとする。なお、植物には好光性種子のものと嫌光性種子のものがあり、第1工程の条件ついては好光性種子やランナーや挿し芽、球根、胞子で増える植物に適用される。第2工程は、ほとんどの植物に適用可能な条件である。
【0017】
一方で、植物を育てるために、植物に対して照射される光には、PPFDという概念がある。このPPFDは光量子束密度(単位時間に単位面積を通過する光量子)と称されている。PPFDには、光の波長領域に応じて以下の種類がある。
PPFD-UV(UV:UltraViolet):波長域380nm以上400nm未満(紫外光領域)
PPFD-VL(VL:Visible Light):波長域400nm以上700nm未満(可視光領域)
PPFD-FR(FR:Far-red Light):波長域700nm以上800nm未満(遠赤色光領域)
PPFD-IR(IR:Infrared Light):波長域701nm以上780nm未満(赤外光領域)
【0018】
上記のうち、PPFD-VLはさらに以下の領域に分けられて表記できる。
PPFD-B:波長域400nm以上500nm未満(青色光領域)
PPFD-G:波長域500nm以上600nm未満(緑色光領域)
PPFD-R:波長域600nm以上700nm未満(赤色光領域)
【0019】
本発明では、第1工程にて植物に照射する光(照射光)の条件として、以下の可視光を含む照射光を採用した。
PPFD-VL:59(μmol/m2・s)以上135(μmol/m2・s)以下
PPFD-B:11(μmol/m2・s)以上25(μmol/m2・s)以下
PPFD-G:20(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下
PPFD-R:28(μmol/m2・s)以上60(μmol/m2・s)以下
【0020】
また、本発明では第2工程にて植物に照射する光の条件として、以下の可視光を含む照射光を採用した。
PPFD-VL:29(μmol/m2・s)以上120(μmol/m2・s)以下
PPFD-B:5(μmol/m2・s)以上20(μmol/m2・s)以下
PPFD-G:10(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下
PPFD-R:14(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下
【0021】
さらに、少なくとも第2工程にて、以下の色温度を有する照射光を採用した。なお、この色温度は照射光を発する例えばLEDライトのチップや、ライト自体を着色することで実現可能である。
色温度(CCT):3000K以上4800K以下
【0022】
以上のような条件にて、実際に植物を栽培した。植物としては、種子繁殖型いちごを使用した。栽培形態としては、
図1に示すように、鉄パイプ等で枠体1を形成し、ここに例えばプラスチック製のプランター2を配設した。プランター2の上部には光源3を配設し、ここから照射光が植物に向けて照射されるようにした。なお、枠体1、プランター2、光源3は全て遮光状態のビニールハウス内に配設している。なお、PPFD及び色温度の測定は、Hangzhou Hopoo Light&Color Technology社製HPCS-300Pの装置を用いて行った。また、本発明に係る植物の栽培方法は、ビニールハウス内に限らず、通常の室内でも可能である。
【0023】
第1工程を各種条件で行った場合の結果を表1に示す。なお、以下の全ての例において、播種された種子の数は揃えている。
【0024】
【0025】
表1を参照すれば明らかなように、上記条件の範囲内にて行った実施例1及び2については、発芽数がいずれも良好であった。比較例1及び2については、PPFD-VL、PPFD-B、PPFD-G、PPFD-Rの値が上記条件の範囲外であったため、発芽数が好ましくなかった。
【0026】
次に、第2工程を各種条件で行った場合の結果を表2に示す。なお、第2工程での全ての例は、実施例1で発芽したものを用いている。
【0027】
【0028】
表2を参照すれば明らかなように、上記条件の範囲内にて行った実施例3~6については、花房の発生数がいずれも良好であった。比較例3~5、7~9については、色温度は上記条件の範囲内であるが、PPFD-VL、PPFD-B、PPFD-G、PPFD-Rの値が上記条件の範囲外であったため、花房発生数が好ましくなかった。比較例6については、PPFD-VL、PPFD-B、PPFD-G、PPFD-Rの値が上記条件の範囲内であるが、色温度が上記条件の範囲外であったため、花房発生数が好ましくなかった。比較例10については、PPFD-VL、PPFD-B、PPFD-Gが上記条件の範囲内であるが、PPFD-R及び色温度が上記条件の範囲外であったため、花房発生数が好ましくなかった。
【0029】
なお、表2の実験で用いた植物は、上述したようにバラ科のいちごである。実施例3~6のうち、さらに花房発生数が良好な実施例3及び4に着目すれば、バラ科の植物については第2工程にて以下の条件がより好適であるといえる。特に、実際に実験したいちごについてはこの条件は最適条件として使用できる。
【0030】
PPFD-VL:90(μmol/m2・s)以上120(μmol/m2・s)以下
PPFD-B:10(μmol/m2・s)以上20(μmol/m2・s)以下
PPFD-G:30(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下
PPFD-R:30(μmol/m2・s)以上50(μmol/m2・s)以下
色温度:4000K以上4500K以下
【0031】
また、表1及び表2に記載された実施例及び比較例では、照射光のピーク値についても検討している。照射光の波長が最も大きいピーク値を第1ピーク値とし、その次に大きいピーク値を第2ピーク値とした。照射光が有する第1ピーク値及び第2ピーク値については、以下を条件とした。
【0032】
第1ピーク値:400nm以上500nm以下
第2ピーク値:550nm以上700nm以下
【0033】
実施例1~5については、上記ピーク値の条件の範囲内であったため、良好な結果が得られている。実施例6については、第1ピーク値及び第2ピーク値の双方とも上記条件の範囲外であったため、他の実施例に比べて少し劣る結果となっている。以上より、上記ピーク値の条件を遵守すればよりよい結果を得られることができることが分かる。比較例1~9については、上記ピーク値の条件の範囲内であるが、PPFDに関する値が範囲外であったため、こちらが要因となり好ましい結果とはなっていない。ピーク値の条件を上記条件の範囲外とした比較例10では、やはり結果は好ましくない。したがって、第1ピーク値及び第2ピーク値が上記条件の範囲内であれば、さらに良好な栽培結果を得ることができることが分かった。
【0034】
ここでさらに、植物の成長に関して温度の条件も考慮して検討した。植物には栽培に適した温度範囲があり、自然環境では栽培可能な時期や地域が限定されてしまう。そこで、植物工場などで、人工的に環境を制御する方法で栽培を行う方法もあるが、例えば20~25℃といった狭い温度範囲内に常に制御するには膨大なエネルギーを要するとともに、温度制御を精巧に行うための高額な設備導入が必要となってしまう。近年は地球温暖化抑制のため、CO2の削減が課題となっている。これに伴い、植物栽培についても消費エネルギーを削減する技術が求められている。温度制御に多量の燃料を使用してしまうと、燃料価格の変動が収穫物の価格変動に大きく影響してしまうおそれもある。一方で、少ないエネルギーで温度を常に一定の条件にすることは困難である。そうすると、外気温に応じた温度環境にて植物を栽培することになるが、例えば最高気温が30℃以上に上がる、あるいは最低気温が10℃以下に下がるような環境下では植物の生長不良や実や花を収穫するための花房の発生状態が悪くなり、年間を通じて生産することが難しくなると考えられる。
【0035】
したがってどれくらいの温度環境下であれば植物の成長にそれほど影響が及ぼされないのか、実際に植物を栽培した結果を表3に示す。
【0036】
【0037】
実施例7~9についてはいずれも、実施例1の条件で第1工程及び第2工程を行い、その温度環境を変化させた。いずれも、いちごの結実が確認された。その温度条件は、第1工程及び第2工程を通して、9℃以上28℃以下の温度環境下で照射光を植物に照射すればよいということになる。一方で、比較例11及び12については、上記温度条件の範囲外で栽培を行ったが、いずれについても花房が発生せず、結実も見られなかった。なお、葉の状態としては、実施例7~9については、全ての葉が黄緑~緑色であったが、比較例11については1枚以上の葉が赤色に変色してしまっていた。これは、いちごがいわゆる冬眠状態になったと考えられる。なお、比較例12については全ての葉が黄緑~緑色であった。なお、表3での各例の栽培期間は2ヶ月である。
【0038】
以上より、本発明では、光合成に必要とされる400nm~700nmの波長領域のうち、400nm~500nmのPPFD-B、500nm~600nmのPPFD-G、600nm~700nmのPPFD-Rについてある特定の割合の波長の光を、特定の範囲のPPFDと色温度となるよう植物に照射する光を制御することにより、植物の生育や花房の形成に必要な最適状態とすることができる。さらに、少ないエネルギーで温度変動がある環境下でも、年間を通じて植物の生育を良好な状態に維持することが可能となり、収穫を可能とできる。本発明により、これまで、半年程度で実が生らなくなって終了していたいちごを、同一株を使用して通年で連続的に収穫・栽培することができる。
【0039】
ここで、本発明に係る植物の栽培方法を種々の植物に適用してみた。実施例10及び比較例13はバラであり、品種はフューチャーパフュームを用いた。実施例11及び比較例14もバラであり、品種はオドゥールダムールを用いた。また、実施例12はにんにく(福地ホワイト種)を用いた。にんにくの場合、1片ずつ15cmの間隔で皮をむいた状態で培地に植え付けた。これらの例では、照射光は植物に対して真上(90度方向)からではなく、斜め上(45度方向)から照射した。その他の条件は実施例1と同様とした。なお、表においては、植え付けからの日数をカウントしたものを示している。
【0040】
【0041】
表4を参照すれば明らかなように、実施例1で示した各種PPFD及び色温度の値であり、且つ上記温度環境下であれば、バラであってもにんにくであっても良好な結果が得られている(実施例10~12)。しかし、比較例13及び14が示すように、温度条件が上記条件の範囲外となることで、やはり植物は育たない。なお、実施例10及び11に関しては、開花後(59日後以降)は開花数のカウントは行わなかった。これにより、いちごのみでなくバラなどの花卉をオフシーズンに開花させることを少ないエネルギーで実現することができる。にんにくについても同様であり、本発明は他に、わさびや葡萄等の農作物についても有効である。
【符号の説明】
【0042】
1:枠体、2:プランター、3:光源
【要約】
本発明の植物の栽培方法では、子葉が開いてから花房が発生するまでの第2工程において、可視光領域での光量子密度(PPFD-VL)を29μmol/m2・s以上120μmol/m2・s以下とし、青色光領域での光量子密度(PPFD-B)を5μmol/m2・s以上20μmol/m2・s以下とし、緑色光領域での光量子密度(PPFD-G)を10μmol/m2・s以上50μmol/m2・s以下とし、赤色光領域での光量子密度(PPFD-R)を14μmol/m2・s以上50μmol/m2・s以下とし、照射光の色温度を3000K以上4800K以下とする。