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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】タッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240425BHJP
   G06F 3/045 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G06F3/041 400
G06F3/045 G
G06F3/041 450
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049154
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021149554
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000230722
【氏名又は名称】NKKスイッチズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】中村 成弥
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-242909(JP,A)
【文献】特開2017-041153(JP,A)
【文献】特開2012-238215(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0649913(KR,B1)
【文献】特開2015-036897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜を有する上部電極の第1部と下部電極の第1部とを接触させるタッチ操作を受け付け可能とする矩形の第1領域と、前記上部電極の残りの第2部と前記下部電極の残りの第2部とで構成される、前記第1領域を囲繞するように配置された第2領域とを有し、前記接触による導電の電圧値から前記タッチ操作が行われた前記第1領域上の位置を検出可能とする抵抗膜方式のタッチパネルにおいて、
前記透明導電膜は、
前記第1領域及び前記第2領域に重畳して配置されており、前記第1領域と重畳する領域のうち前記第1領域の対向する辺の近傍にエッチング部が夫々形成されており、
前記上部電極の前記第2部における前記透明導電膜の下に加飾層が設けられることで、前記第2領域は加飾領域として機能する、
タッチパネル。
【請求項2】
前記加飾層は、導電性の有色インクで構成されている、
請求項1に記載のタッチパネル
【請求項3】
前記エッチング部は、
前記第1領域における、前記対向する辺のいずれか一対の近傍に夫々形成されている、
請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記透明導電膜のうち前記第2領域と重畳する領域には、有色の導電体が複数の領域に分かれて塗布されており、隣接する前記導電体同士の間隔が0.1mm以上1mm以下である、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜をスイッチ電極として使用した抵抗膜方式のタッチパネルは幅広く利用されている。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電膜の持つ電気的抵抗を利用して、ユーザによりタッチ操作が行われた位置を検出する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-146138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抵抗膜方式のタッチパネルの縁部には、配線パターンが配置される。ただし、配線パターンは透明導電膜の上から視認できる。このため、ユーザの美観を確保する見地から、従来より配線パターンが視認されないようにするための措置が講じられている。例えばタッチパネルの縁部に目隠しとなる筐体を配置したり、図3(A)に示すような有色の加飾領域を設けたりするなどの措置が講じられている。
しかしながら、目隠しとなる筐体を用いた場合、それだけ使用する部材が多くなるため、重量やコストが増えることになる。また、図3(A)に示すように、透明導電膜は、導通するリスクを低減化させるためにエッチングによって必要最低限となる部分を残してカットされる。このため、有色の加飾領域を設けた場合には、透明導電膜の端部の境界線Lを挟んで色の差異が生じてしまい、美観上好ましくない。これに対して、タッチパネルの全面に透明導電膜を配置した場合には、電圧分布が安定せず、リニアリティが確保できなくなる。
このようなことから、タッチパネルの分野では、配線パターンが視認されないようにすることでユーザの美観が確保され、かつ、リニアリティが確保されたタッチパネルの開発が望まれている状況にあった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、配線パターンが視認されないようにすることでユーザの美観が確保され、かつ、リニアリティが確保されたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るタッチパネルは、
透明導電膜を有する上部電極と下部電極とを接触させるタッチ操作を受け付け可能とする矩形の第1領域と、前記第1領域を囲繞するように配置された第2領域とを有し、前記接触による導電の電圧値から前記タッチ操作が行われた前記第1領域上の位置を検出可能とする抵抗膜方式のタッチパネルにおいて、
前記透明導電膜は、
前記第1領域及び前記第2領域に重畳して配置されており、前記第1領域と重畳する領域のうち前記第1領域の対向する辺の近傍にエッチング部が夫々形成されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、配線パターンが視認されないようにすることでユーザの美観が確保され、かつ、リニアリティが確保されたタッチパネルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るタッチパネルの外観図である。図1(A)は、タッチパネルの正面図である。図1(B)は、図1(A)のA-A線に沿ったタッチパネルの断面のうち、加飾領域の部分を示す図である。
図2図1のタッチパネルの加飾領域に形成された切れ目を示す図である。
図3】従来のタッチパネルの外観図である。図3(A)は、従来のタッチパネルの正面図である。図3(B)は、図3(A)のB-B線に沿った従来のタッチパネルの断面のうち、加飾領域の部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るタッチパネルについて、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
また、本明細書における、「下側」、「下方向」といったような「下」を示す表現は、図面上の下方向を示す表現である。また、「上側」、「上方向」といったような「上」を示す表現は、図面上の上方向を示す表現である。
【0010】
[基本構成]
本発明の一実施形態に係るタッチパネル1は、抵抗膜方式のタッチパネルである。タッチパネル1は、可撓性を有する透明導電膜(ITO(Indium Tin Oxide)膜)112が上部電極フィルム111とともに上部電極を構成する。上部電極と下部電極(図示せず)との間には、絶縁体であるドットスペーサ(図示せず)が複数配置されている。タッチパネル1がタッチ操作を受けると、その部分の上部電極が撓み、絶縁体(ドットスペーサ)が存在しない部分で上部電極と下部電極とが接触して導電する。すると、その電圧値によって、タッチされた位置の座標が検出される。
【0011】
以下、各構成要素について詳しく説明する。
【0012】
タッチパネル1は、図1(A)に示すように、タッチパネル1に対するユーザの操作を受け付ける領域である操作受付領域11と、操作受付領域11の周囲に配置される領域であってタッチパネル1の縁部を構成する加飾領域12とで構成されている。
【0013】
(操作受付領域)
操作受付領域11は、上部電極フィルム111と、透明導電膜(ITO膜)112とを含むように構成されている。透明導電膜(ITO膜)112は、上述したように上部電極フィルム111ともに上部電極を構成する。なお、図示はしないが、下部電極も透明導電膜(ITO膜)で構成されている。そして、上部電極側の透明導電膜(ITO膜)112にはX座標回路が形成され、下部電極側の透明導電膜(ITO膜)にはY座標回路が形成されている。このX座標回路及びY座標回路は、それぞれ異なった電圧勾配をもっているので、タッチされた位置の電圧が計測されると、その位置の座標が検出される。
【0014】
(加飾領域)
加飾領域12は、図1(B)に示すように、上部電極フィルム111と、上述した透明導電膜(ITO膜)112と、加飾層113と、配線パターン114を含むように構成されている。
【0015】
加飾層113は、配線パターン114がユーザに視認されないようにするための「目隠し」として、配線パターン114の上部に配置される層である。加飾層113は、透明導電膜(ITO膜)112の底面に印刷される導電性の有色インクで構成される。目隠しとなるインクを印刷することで、従来のように筐体を用いて配線パターン114を隠す必要がなくなる。なお、配線パターンを目隠しするという趣旨から、有色インクは濃い色であることが好ましい。このため、本実施形態では、加飾層113としてカーボンインクが採用されている。
本実施形態では、配線パターン114の上部に「目隠し」として配置された導電性のカーボンインクによってユーザの美観の確保が図られ、また、それとともに、透明導電膜(ITO膜)112と配線パターン114との導通が図られている。
このように、加飾層113が設けられることで、配線パターンが視認されないようになり、ユーザの美観を確保することができる。
【0016】
(エッチング部)
ここで、透明導電膜(ITO膜)112は、図1(A)に示すように、操作受付領域11と加飾領域12とを含むタッチパネル1の全領域を覆うように配置された1枚の膜で構成されている。これにより、従来のエッチングの手法により生じていた上述の色の差異の問題が解消する。ただし、何らの措置を講じることなくタッチパネル1の全面に透明導電膜(ITO膜)配置した場合、上述したように、電圧分布が安定せず、リニアリティが確保できなくなる。
【0017】
そこで、本実施形態では、タッチパネル1の全領域を覆う透明導電膜(ITO膜)112のうち、操作受付領域11の上端部と下端部との夫々に、エッチング部E1及びE2の夫々を設ける。
エッチング部E1及びE2は、図1(A)に示すように、いずれも透明導電膜(ITO膜)112が矩形にカットされることで形成される部位である。具体的には、エッチング部E1及びE2は、幅が1.5mm程度、長さが操作受付領域11の幅と同一又はそれよりも数mm程度短くなるように透明導電膜(ITO膜)112をくり抜くことで形成される。ただし、エッチング部E1及びE2の幅は1.5mmに限定されるものではなく、タッチパネル1の構成に合わせて、1.5mm未満の幅とすることもできるし、1.5mmを超えた幅とすることもできる。また、エッチング部E1及びE2の長さも、タッチパネル1の構成に合わせた長さとすることができる。
このように、透明導電膜(ITO膜)112にエッチング部E1及びE2が形成されることで電圧分布が安定する。このため、従来、タッチパネル1の全面に透明導電膜(ITO膜)を配置することで生じていた、電圧分布が安定せずリニアリティが確保できないという不具合が解消される。
【0018】
(加飾層の印刷手法)
上述したように、加飾層113は、導電性の有色インクにより構成される。このため、加飾層113が加飾領域12の形状(「口」の字形状)になるように印刷した場合、加飾領域12全体が導通することとなる。この場合、電圧の分布に影響を及ぼすリスクが生じる。
そこで、図2に示すように、加飾層113に切れ目Cが形成されるように導電性のインクを印刷する。これにより、加飾領域12の導通が分断されるため、タッチパネル1の電圧分布をより安定化させることができる。
【0019】
なお、本実施形態において、切れ目Cは、図2に示すようにタッチパネルの角部付近に合計2箇所形成されているが、2箇所に限定されず、1箇所であってもよいし、3箇所以上形成されていてもよい。例えば、タッチパネルの4つの角部付近の夫々に切れ目Cを合計4箇所形成させた場合には、2箇所形成させた場合よりも導通の分断の確実性を上げることができる。
【0020】
また、本実施形態において、切れ目Cの幅dの値は、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。ただし、幅dの値は特に限定されず、1mmを超えてもよいし、0.1mm未満であってもよい。ただし、切れ目Cの幅dの値を0.1mm未満とした場合、導通するリスクが高くなる。これに対して、切れ目Cの幅dの値が1mmを超えて広くなると、導通するリスクは低くなるが、加飾層113が存在する部分と切れ目Cの部分との間に生じる色の差が視認し易くなり、美観上好ましくない。以上の理由から、切れ目Cは、視認され難いように幅を0.1mm以上1mm以下とするとともに、導通のリスクを低減化させるために複数(本実施形態では2箇所)形成させるのが好ましい。
【0021】
また、本実施形態において、切れ目Cの位置は、図2に示すようにタッチパネル1の角部付近に形成させているが、特に限定されず、加飾領域12のどの位置に設けられていてもよい。
【0022】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、本発明に係る要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を施してもよい。
【0023】
以上まとめると、本発明に係るタッチパネルは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
すなわち、本発明が適用されるタッチパネルは、
透明導電膜(例えば図1の透明導電膜(ITO膜)112)を有する上部電極と下部電極とを接触させるタッチ操作を受け付け可能とする矩形の第1領域(例えば図1の操作受付領域11)と、前記第1領域を囲繞するように配置された第2領域(例えば図1の加飾領域12)とを有し、前記接触による導電の電圧値から前記タッチ操作が行われた前記第1領域上の位置を検出可能とする抵抗膜方式のタッチパネル(例えば図1のタッチパネル1)において、
前記透明導電膜は、
前記第1領域及び前記第2領域に重畳して配置されており、前記第1領域と重畳する領域のうち前記第1領域の対向する辺の近傍にエッチング部(例えば図1のエッチング部E1及びE2)が形成されている、
タッチパネル。
【0024】
これにより、透明導電膜が、第1領域と第2領域とを含む、タッチパネルの全領域を覆うように配置された1枚の膜で構成される。その結果、従来のエッチングの手法により生じていた上述の色の差異の問題が解消する。
さらに、透明導電膜の一部に矩形のエッチング部が形成されることで電圧分布が安定する。その結果、従来、タッチパネルの全面に透明導電膜を配置することで生じていた、電圧分布が安定せずリニアリティが確保できないという不具合が解消される。
【0025】
また、前記エッチング部は、
前記第1領域における、前記対向する辺のいずれか一対の近傍の夫々に形成させることができる。
【0026】
これにより、電圧分布がさらに安定するため、リニアリティがより好適に確保される。
【0027】
また、前記透明導電膜のうち前記第2領域と重畳する領域には、有色の導電体(例えば図2の加飾層113)が複数の領域に分かれて塗布されており、隣接する前記導電体同士の間隔(例えば図2の幅d)が0.1mm以上1mm以下とすることができる。
【0028】
これにより、透明導電膜に複数の領域に分かれて塗布された導電体同士の導通が分断される。その結果、タッチパネルの電圧分布をより安定化させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1・・・タッチパネル、2・・・電極範囲、11・・・操作受付領域、12・・・加飾領域、111・・・上部電極フィルム、112・・・透明導電膜(ITO膜)、113・・・加飾層、114・・・配線パターン、L・・・境界線、E1,E2・・・エッチング部、C・・・切れ目
図1
図2
図3