(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】フロートカバー
(51)【国際特許分類】
B63B 21/00 20060101AFI20240425BHJP
A01K 61/60 20170101ALI20240425BHJP
A01K 75/04 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B63B21/00 A
A01K61/60 323
A01K75/04 Z
(21)【出願番号】P 2020081669
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302048681
【氏名又は名称】有限会社広谷商店
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】高畠 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 伸次
(72)【発明者】
【氏名】広谷 康春
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-025757(JP,U)
【文献】実開昭52-003285(JP,U)
【文献】登録実用新案第3189860(JP,U)
【文献】特開2002-294651(JP,A)
【文献】特開平07-079660(JP,A)
【文献】実開昭60-017676(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/00
A01K 61/60
A01K 75/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂製のフロートバールを保護するためのフロートカバーであって、
フロートバールの外周面に巻き付け可能なシート材によって形成され、
前記シート材の巻付始端部に、フロートバールの外周面に固定するための始端側固定部α
1が設けられ、
前記シート材の巻付終端部に、フロートバールの外周面に固定するための終端側固定部α
2が設けられるとともに、
始端側固定部α
1及び終端側固定部α
2が、固定ピン挿通孔とされ、
始端側固定部α
1を形成する固定ピン挿通孔と、終端側固定部α
2を形成する固定ピン挿通孔とが、前記シート材の幅方向においてずれた位置に設けられた
ことを特徴とするフロートカバー。
【請求項2】
前記シート材の巻付始端部における外面側に、始端側仮止部β
1が設けられ、
前記シート材の巻付終端部における内面側に、始端側仮止部β
1に仮止めするための終端側仮止部β
2が設けられた
請求項1記載のフロートカバー。
【請求項3】
終端側仮止部β
2が、前記シート材の巻付方向に沿って帯状に設けられた請求項2記載のフロートカバー。
【請求項4】
発泡樹脂製のフロートバールを保護するためのフロートカバーであって、
フロートバールの外周面に巻き付け可能なシート材によって形成され、
前記シート材の巻付始端部に、フロートバールの外周面に固定するための始端側固定部α
1が設けられ、
前記シート材の巻付終端部に、フロートバールの外周面に固定するための終端側固定部α
2が設けられるとともに、
前記シート材が、
フロートバールの外周面を覆う外周面被覆部と、
外周面被覆部の両側の側縁に沿って設けられ、フロートバールの両側の端面を覆う一対の端面被覆部と
を備え、
端面被覆部が、外周面被覆部よりも柔軟なシート材によって形成された
ことを特徴とするフロートカバー。
【請求項5】
端面被覆部の外縁を絞るための絞り紐が、端面被覆部の外縁に沿って挿通された請求項4記載のフロートカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バール状を為す発泡樹脂製のフロートを保護するためのフロートカバーと、その施工方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶を係留する際には、緩衝性を有するフロートを船舶の周囲に浮かべて、その船舶が隣に係留されている船舶や岸壁等に激しく衝突しないようにすることが行われている。このような用途では、「フロートバール」と呼ばれるバール状のフロートが用いられることが多い。フロートバールは、通常、発泡スチロール等の発泡樹脂で形成されるが、その表面は、合成樹脂シート等からなる表皮で覆われている。この種のフロートバールは、船舶を係留する際の緩衝材としてだけでなく、浮き桟橋や養殖筏の浮力体等、様々な用途で用いられている。
【0003】
ところが、フロートバールを使用していると、日光等による劣化や、衝突等による衝撃によって、表皮が破れ、内側の発泡樹脂が露出することがある。発泡樹脂が露出すると、フロートバールの見た目が悪くなるだけでなく、発泡樹脂の微細な粒子(マイクロプラスチック)が流出し、環境を汚染するおそれもある。このような実状に鑑みてか、これまでには、フロートバールを覆って保護するフロートカバーであって、耐久性のある生地等を筒状に形成したもの(例えば、特許文献1~3を参照。)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平04-117569号公報
【文献】特開2000-296872号公報
【文献】特開2013-094136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、筒状のフロートカバーは、フロートバールを船上や陸上に引き上げなければ取り付けにくいという欠点があった。加えて、フロートバールには、ロープ(係留ロープやアンカーロープ等)が通されることもあるところ、その場合には、フロートバールからロープを取り外さないと、フロートカバーを取り付けることができなかった。また、筒状のフロートカバーは、フロートバールの外径が変わると、適切に取り付けることができなくなるため、フロートバールの外径に応じた複数の種類を用意しなければならないという欠点もあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、水面に浮かんだ状態のフロートバールに対して取り付けることができる等、施工が容易なフロートカバーを提供するものである。また、フロートバールの外径が変わっても取り付けることができるフロートカバーを提供することも本発明の目的である。さらに、そのフロートカバーの施工方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
発泡樹脂製のフロートバールを保護するためのフロートカバーであって、
フロートバールの外周面に巻き付け可能なシート材によって形成され、
前記シート材の巻付始端部に、フロートバールの外周面に固定するための始端側固定部α1が設けられ、
前記シート材の巻付終端部に、フロートバールの外周面に固定するための終端側固定部α2が設けられた
ことを特徴とするフロートカバー
を提供することによって解決される。
【0008】
ここで、シート材(フロートカバー)の「巻付始端部」とは、シート材(フロートカバー)の一端部(巻付方向の一端部)と他端部(巻付方向の他端部)のうち、フロートバールの外周面に対してシート材(フロートカバー)を巻き付ける際に、フロートバールの外周面に対して最初に重ねる側の端部を言う。一方、シート材(フロートカバー)の「巻付終端部」とは、シート材(フロートカバー)の一端部(巻付方向の一端部)と他端部(巻付方向の他端部)のうち、フロートバールの外周面に対してシート材(フロートカバー)を巻き付ける際に、フロートバールの外周面に対して最後に重ねる側の端部を言う。
【0009】
本発明のフロートカバーは、上記のように、フロートバールの外周面に対して巻き付けることによって取り付けるものとなっている。具体的には、
[1] フロートカバーの巻付始端部をフロートバールの外周面に重ねる。
[2] フロートカバーの始端側固定部α1をフロートバールの外周面に固定する。
[3] フロートバールをその中心線回りに回転させ、フロートバールの外周面にフロートカバーを巻き付ける。
[4] フロートカバーの巻付終端部をフロートバールの外周面(実際には、フロートバールの外周面に既に重ねられているフロートカバーの巻付始端部近傍の外面)に重ねる。
[5]フロートカバーの終端側固定部α2をフロートバールの外周面に固定する。
という手順を経て、フロートカバーをフロートバールに取り付けることができるようになっている。
【0010】
このため、水面に浮かんだままの状態のフロートバールに対して、本発明のフロートカバーを取り付けることができるようになっている。加えて、ロープ(係留ロープやアンカーロープ等)が通されたままの状態のフロートバールに対しても、本発明のフロートカバーを取り付けることができるようになっている。このように、本発明のフロートカバーは、施工が容易なものとなっている。また、本発明のフロートカバーは、フロートバールの外周面に巻き付けるときに、始端側固定部α1に対する終端側固定部α2の相対的位置を変えることで、その巻付径を変えることができるものとなっている。このため、フロートバールの外径が変わっても、本発明のフロートカバーを取り付けることができるようになっている。
【0011】
本発明のフロートカバーにおいて、始端側固定部α1及び終端側固定部α2は、フロートバールの外周面に対して固定するための部分であれば、その形態を特に限定されない。しかし、一般的なフロートバールの外周面には、フロートカバーを引っ掛けたりできるような凹凸が形成されていない。その一方で、フロートバールの表皮の下側(内側)は、発泡樹脂で形成されているため、尖ったもの(ピン状のもの)であればフロートバールに突き刺すことができる。これらのことを考慮すると、始端側固定部α1及び終端側固定部α2は、固定ピンを挿通することができる挿通孔(固定ピン挿通孔)の形態で設けることが好ましい。この固定ピン挿通孔(始端側固定部α1及び終端側固定部α2)に挿通した固定ピンをフロートバールに突き刺すことで、始端側固定部α1及び終端側固定部α2をフロートバールの外周面に対してしっかりと固定することが可能になる。
【0012】
ただし、この場合には、フロートカバーの始端側固定部α1の上側に終端側固定部α2が重なることがあると、終端側固定部α2に固定ピンを挿通してフロートバールに突き刺そうとした際に、その固定ピンが、始端側固定部α1に挿通された固定ピンに干渉してしまい、終端側固定部α2に挿通した固定ピンをフロートバールに突き刺すことができなくなるおそれがある。このため、始端側固定部α1を形成する固定ピン挿通孔と、終端側固定部α2を形成する固定ピン挿通孔は、シート材(フロートカバー)の幅方向(フロートカバーの巻付方向に垂直な方向)においてずれた位置に設けることが好ましい。これにより、始端側固定部α1に挿通された固定ピンと、終端側固定部α2に挿通された固定ピンとが干渉しないようにすることが可能になる。
【0013】
本発明のフロートカバーにおいては、シート材(フロートカバー)の巻付始端部における外面側に、始端側仮止部β1を設け、シート材(フロートカバー)の巻付終端部における内面側に、始端側仮止部β1に仮止めするための終端側仮止部β2を設けることも好ましい。これにより、フロートカバーの終端側固定部α2をフロートバールの外周面に固定する作業を行いやすくなる。特に、上記の固定ピンをフロートバールに突き刺す際には、一方の手で固定ピンを持ち、他方の手で固定ピンをフロートバールに打ち付けるようになるため、両手が塞がった状態となる。このため、1人の作業では、フロートカバーを手で押さえることができず、終端側固定部α2に固定ピンを挿通してフロートバールに突き刺す際に、フロートカバーが緩むおそれがある。この点、上記の始端側仮止部β1と終端側仮止部β2とを仮止めすることによって、1人でも上記の作業を行いやすくすることができる。
【0014】
本発明のフロートカバーに始端側仮止部β1及び終端側仮止部β2を設ける場合には、終端側仮止部β2を、シート材(フロートカバー)の巻付方向に沿って帯状に設けることが好ましい。既に述べたように、本発明のフロートカバーでは、始端側固定部α1に対する終端側固定部α2の相対的位置を変えることで、フロートカバーの巻付径を変えることができるところ、上記のように、終端側仮止部β2を帯状に設けることによって、フロートカバーの巻付径(すなわち、フロートカバーを巻き付けるフロートバールの外径)が変わっても、始端側仮止部β1と終端側仮止部β2とを重ねて仮止めすることができるようになる。
【0015】
本発明のフロートカバーは、フロートバールの外周面を覆う外周面被覆部と、外周面被覆部の両側の側縁に沿って設けられ、フロートバールの両側の端面を覆う一対の端面被覆部とを備えたものとすることも好ましい。これにより、フロートバールの外周面だけでなく端面も、フロートカバーで保護することが可能になる。この場合には、端面被覆部の外縁を絞るための絞り紐を、端面被覆部の外縁に沿って挿通することが好ましい。また、端面被覆部を、外周面被覆部よりも柔軟なシート材によって形成することも好ましい。これにより、フロートカバーの端面被覆部をフロートバールの端面に密着した状態にフィットさせやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によって、水面に浮かんだ状態のフロートバールに対して取り付けることができる等、施工が容易なフロートカバーを提供することが可能になる。また、フロートバールの外径が変わっても取り付けることができるフロートカバーを提供することも可能になる。さらに、そのフロートカバーの施工方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のフロートカバーを取り付ける対象のフロートバールを示した斜視図である。
【
図2】本発明のフロートカバーの巻付始端部をフロートバールの外周面に重ね、始端側固定部α
1に固定ピンを挿通している様子を示した斜視図である。
【
図3】本発明のフロートカバーをフロートバールの外周面に巻き付け、始端側仮止部β
1に対して終端側仮止部β
2を仮止めしている様子を示した斜視図である。
【
図4】本発明のフロートカバーの巻付終端部を巻付始端部の近傍に重ね、終端側固定部α
2に固定ピンを挿通している様子を示した斜視図である。
【
図5】本発明のフロートカバーをフロートバールに対して取り付け終えた状態を示した斜視図である。
【
図6】本発明のフロートカバーのオモテ面(外面)を示した展開図である。
【
図7】本発明のフロートカバーのウラ面(内面)を示した展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のフロートカバーの好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる実施形態は、飽くまで一例であり、本発明のフロートカバーの技術的範囲を限定するものではない。本発明のフロートカバーには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0019】
0.フロートカバーの概要
図1は、本実施形態のフロートカバーを取り付ける対象のフロートバール50を示した斜視図である。フロートバール50は、水面に浮かべて使用される。この種のフロートバール50は、船舶を係留する際の緩衝材や、水上施設(浮き桟橋や養殖筏等)の浮力体等、様々な用途で用いられる。フロートバール50には、その中心線に沿って貫通孔が設けられており、その貫通孔にロープ60を通すことができるようになっている。このロープ60によって、水面に浮かべられたフロートバール60が所定の箇所から動かないようにすることが可能となっている。
【0020】
図1に示したフロートバール50は、発泡樹脂製の樽状部材(浮力体)を、合成樹脂シート製の円筒状部材(表皮)の中に収容し、表皮の両端部(円筒状部材の両側の口の部分)を絞るとともに、表皮の外面を2本のベルトで締結したものとなっている。フロートバール50の表皮が破れると、フロートバール50の見た目が悪くなるだけでなく、表皮の下側(内側)の発泡樹脂(浮力体)が露出し、発泡樹脂の微細な粒子(マイクロプラスチック)が周囲に流出して環境を汚染するおそれがある。また、フロートバール50を海で使用する場合には、フロートバール50の外面にフジツボ等が付着するおそれもある。本実施形態のフロートカバーは、フロートバール50の外面を覆って保護することによって、そのような不具合の発生を抑えるものとなっている。
【0021】
図2~5は、本実施形態のフロートカバー10をフロートバール50に取り付けている様子を示した斜視図である。
図2は、フロートカバー10の巻付始端部をフロートバール50の外周面に重ねて、始端側固定部α
1に固定ピン21を挿通している様子を、
図3は、フロートカバー10をフロートバール50の外周面に巻き付けて、始端側仮止部β
1に対して終端側仮止部β
2を仮止めしている様子を、
図4は、フロートカバー10の巻付終端部を巻付始端部の近傍に重ねて、終端側固定部α
2に固定ピン22を挿通している様子を、
図5は、フロートカバー10をフロートバール50に対して取り付け終えた状態を、それぞれ示している。
図2~5及び後掲する
図6,7においては、図示の便宜上、後述する外周面被覆部11のオモテ面(フロートバール50に巻き付けた後に外側を向く面)全体に目の粗い網掛けハッチングを施している。
【0022】
本実施形態のフロートカバー10は、
図2~5に示すように、フロートバール50の外周面に巻き付け可能なシート材となっている。
図2に示すように、フロートカバー10における、フロートバール50の外周面に最初に宛がう端部(巻付始端部)には、その巻付始端部をフロートバール50の外周面に固定するため(固定ピン21を挿通するため)の始端側固定部α
1が設けられている。また、
図4に示すように、フロートカバー10における、フロートバール50の外周面に最後に宛がう端部(巻付終端部)には、その巻付終端部をフロートバール50の外周面に固定するため(固定ピン22を挿通するため)の終端側固定部α
2が設けられている。
【0023】
本実施形態のフロートカバー10は、
[1]
図2に示すように、フロートカバー10の巻付始端部をフロートバール50の外周面に重ねる。
[2]
図2の矢印A
1に示すように、固定ピン21を、フロートカバー10の始端側固定部α
1に挿通して、その固定ピン21をフロートバール50に突き刺し、フロートカバー10の巻付始端部をフロートバール50の外周面に固定する。
[3]
図2の矢印A
2に示すように、フロートバール50をその中心線回りに回転させ、フロートバール50の外周面にフロートカバー10を巻き付ける。
[4]
図3の矢印A
3に示すように、フロートカバー10の巻付終端部をフロートバール50の外周面(実際には、フロートカバー10の巻付始端部近傍の外面)に重ねる。
[5]
図4の矢印A
4に示すように、固定ピン22を、フロートカバー10の終端側固定部α
2に挿通して、その固定ピン22をフロートバール50に突き刺し、フロートカバー10の巻付終端部をフロートバール50の外周面に固定する。
[6]
図5に示すように、フロートカバー50の両側の側縁を絞って、フロートバール50の端面を覆う。
という手順を経て、フロートバール50に取り付けるものとなっている。
【0024】
上記[1]~[6]の手順に従うと、フロートバール50が水面に浮かんだままの状態であっても、そのフロートバール50にフロートカバー10を取り付けることができる。また、ロープ60がフロートバール50に通されていても、そのロープ60をフロートバール50から取り外すことなく、フロートカバー10を取り付けることもできる。このように、本実施形態のドアノブ用アタッチメント10は、施工が非常に容易なものとなっている。
【0025】
さらに、始端側固定部α1に対する終端側固定部α2の相対的位置を変える(巻付始端部に対する巻付終端部の重なり幅を変更する)ことで、フロートカバー10の巻付径を変えることができる。このため、フロートバール50の外径が変わっても、フロートカバー10を取り付けることができるようになっている。このように、本実施形態のドアノブ用アタッチメント10は、汎用性に優れたものとなっている。
【0026】
図6は、本実施形態のフロートカバー10のオモテ面(外面)を示した展開図である。
図7は、本実施形態のフロートカバー10のウラ面(内面)を示した展開図である。本実施形態のフロートカバー10は、
図6及び
図7に示すように、外周面被覆部11と、端面被覆部12と、絞り紐13とを備えている。以下、本実施形態のフロートカバー10を構成する各部について、より詳しく説明する。
【0027】
1.外周面被覆部
外周面被覆部11は、
図5に示すように、フロートバール50の外周面を覆う部分となっている。フロートバール50は、樽状(円柱状)に形成されるため、外周面被覆部11は、通常、長方形状に形成される。外周面被覆部11の長手方向(フロートカバー10の巻付方向)に沿った長さL
0(
図6)は、通常、フロートバール50の外周長よりもやや長く設定される。一般的なフロートバール50の直径は、30~67cm程度であり、その外周長は、94~210cm程度であるところ、外周面被覆部11の長さL
0は、100~220cmの範囲で設定することが好ましい。また、外周面被覆部11の幅W
1は、通常、フロートバール50の中心線に沿った長さと略等しく設定される。一般的なフロートバール50の長さは、55~115cm程度であるところ、外周面被覆部11の幅W
1も、その程度に設定される。
【0028】
外周面被覆部11は、耐久性を有するシート材であれば、具体的な素材を特に限定されない。本実施形態のフロートカバー10においては、基布(帆布)を合成樹脂フィルムでサンドイッチしたシート材を、外周面被覆部11として用いている。この種のシート材は、「ターポリン」と呼ばれ、強靭であるだけでなく、防水性や耐食性にも優れている。ターポリンの基布としては、ポリエステル糸を織製した織物等が例示され、ターポリンの合成樹脂フィルムとしては、EVAフィルムや塩化ビニルフィルム等が例示される。フロートカバー10のオモテ面とウラ面は、同じ色にしてもよいが、本実施形態のフロートカバー10においては、フロートカバー10を取り付ける人がフロートカバー10のオモテ面とウラ面を判別しやすくするため、外周面被覆部11のオモテ面とウラ面とで色を変えている。
【0029】
既に述べたように、本実施形態のフロートカバー10の巻付始端部には、始端側固定部α1が設けられており、フロートカバー10の巻付終端部には、終端側固定部α2が設けられているところ、始端側固定部α1は、外周面被覆部11の巻付始端部に設け、終端側固定部α2は、外周面被覆部11の巻付終端部に設けている。始端側固定部α1及び終端側固定部α2はいずれも、固定ピン挿通孔の形態で設けている。始端側固定部α1及び終端側固定部α2を形成する固定ピン挿通孔は、ハトメ金具等で補強してもよい。
【0030】
始端側固定部α
1を形成する固定ピン挿通孔には、
図2に示すように、軸部及び頭部を有する固定ピン21が挿通される。これにより、固定ピン21の軸部がフロートバール50に突き刺さり、固定ピン21の頭部がフロートカバー10をフロートバール50側に抑えるけることで、フロートカバー10の巻付始端部がフロートバール50の外周面に固定されるようになっている。固定ピン50の軸部には、抜止突起が形成されており、フロートバール50から固定ピン50が抜けにくくなっている。
【0031】
一方、終端側固定部α
2を形成する固定ピン挿通孔には、
図4に示すように、軸部及び頭部を有する固定ピン22が挿通される。これにより、固定ピン22の軸部がフロートバール50に突き刺さり、固定ピン21の頭部がフロートカバー10をフロートバール50側に抑えるけることで、フロートカバー10の巻付終端部がフロートバール50の外周面に固定されるようになっている。本実施形態のフロートカバー10において、固定ピン22は、上記の固定ピン21と同じものを使用するようにしている。
【0032】
始端側固定部α1及び終端側固定部α2は、それぞれ、外周面被覆部11の巻付始端部及び巻付終端部に1箇所ずつのみに設けてもよいが、複数箇所ずつ設けることが好ましい。この場合、始端側固定部α1及び終端側固定部α2は、それぞれ、外周面被覆部11の巻付始端部及び巻付終端部に沿って略均等に配置することが好ましい。これにより、フロートカバー10の巻付始端部及び巻付終端部における広い範囲をフロートバール50の外周面に対してしっかりと固定することが可能になる。本実施形態のフロートカバー10においては、始端側固定部α1を2箇所に設け、終端側固定部α2を4箇所に設けている。
【0033】
始端側固定部α
1の数が、終端側固定部α
2の数よりも少ないのは、以下の理由による。すなわち、本実施形態のフロートカバー10では、
図3に示したように、フロートカバー10をフロートバール50に巻き付けたときに、フロートカバー10の巻付終端部が、フロートカバー10の巻付始端部の近傍に重なるようになっている。このため、
図4に示すように、終端側固定部α
2を形成する固定ピン挿通孔から固定ピン22を突き刺すと、その固定ピン22がフロートカバー10の巻付始端部の近傍を貫通してフロートバール50に突き刺さるようになる。したがって、フロートカバー10の巻付始端部の付近では、固定ピン21だけでなく、固定ピン22でも、フロートバール50に対して固定された状態となるからである。
【0034】
ただし、フロートカバー10の巻付終端部が、フロートカバー10の巻付始端部の近傍に重なるようにすると、
図4に示すように、終端側固定部α
2を形成する固定ピン挿通孔に固定ピン22を挿通してフロートバール50に突き刺そうとした際に、その固定ピン22が、始端側固定部α
1を形成する固定ピン貫通孔に既に挿通されている固定ピン21に干渉するおそれがある。このため、本実施形態のフロートカバー10では、始端側固定部α
1を形成するそれぞれの固定ピン挿通孔と、終端側固定部α
2を形成するそれぞれの固定ピン挿通孔とを、外周面被覆部11の幅方向(フロートカバー10の幅方向)においてずれた位置に設けている。
【0035】
また、本実施形態のフロートカバー10では、
図6に示すように、外周面被覆部11の巻付始端部におけるオモテ面(外面)側に、始端側仮止部β
1を設けており、
図7に示すように、外周面被覆部11の巻付終端部におけるウラ面(内面)側に、終端側仮止部β
2を設けている。
図3の矢印A
3で示すように、終端側仮止部β
2は、始端側仮止部β
1に仮止めするための部分となっている。終端側仮止部β
2を始端側仮止部β
1に仮止めしておくことで、
図4の矢印A
4で示すように、終端側固定部α
2を形成する固定ピン挿通孔に固定ピン22を挿通して、フロートカバー10の巻付終端部をフロートバール50に固定する作業を行う際に、フロートカバー10の巻付終端部を手等で押さえておかなくても、フロートカバー10が緩まないようにすることが可能になる。
【0036】
始端側仮止部β1と終端側仮止部β2は、互いに止着できるものであれば特に限定されない。しかし、既に述べたように、本実施形態のフロートカバー10では、始端側固定部α1に対する終端側固定部α2の相対的位置を変える(巻付始端部に対する巻付終端部の重なり幅を変更する)ことで、フロートカバー10の巻付径を変えることができるようになっているところ、始端側仮止部β1と終端側仮止部β2とが、ボタンとボタン穴のように、予め決まった特定の箇所でしか止着できないものであると、フロートカバー10の巻付径を段階的にしか調節することができなくなる。このため、始端側仮止部β1と終端側仮止部β2は、止着箇所を連続的に調節できるものとすることが好ましい。本実施形態のフロートカバー10においては、始端側仮止部β1と終端側仮止部β2を互いに固着可能な面ファスナーとしている。
【0037】
また、終端側仮止部β
2は、外周面被覆部11の巻付方向に沿って帯状(長手状)に設けている。このため、外周面被覆部11の巻付方向において、終端側仮止部β
2に対する始端側仮止部β
1の固着位置(止着位置)の調節幅が大きくなっており、フロートバール50の外径が所定値からある程度異なっていても、終端側仮止部β
2を始端側仮止部β
1に仮止めできるようになっている。終端側仮止部β
2の長手方向(外周面被覆部11の巻付方向)に沿った長さL
1(
図7)をどの程度とするかは特に限定されないが、通常、10~50cmの範囲とされる。本実施形態のフロートカバー10においては、外周面被覆部11の巻付終端部における幅方向中央部に、長さL
1が25cmの終端側仮止部β
2を設けている。
【0038】
ところで、終端側仮止部β
2ではなく、始端側仮止部β
1を帯状(長手状)に形成することでも、終端側仮止部β
2に対する始端側仮止部β
1の固着位置(止着位置)の調節幅を大きく確保することができる。しかし、始端側仮止部β
1は、フロートカバー10のオモテ面(外面)側に形成される。このため、始端側仮止部β
1を、フロートカバー10の巻付方向に沿って帯状に形成すると、フロートカバー10をフロートバール50に巻き付けたときに、始端側仮止部β
1が、フロートカバー10の巻付終端部から食み出て露出し、その部分にゴミやフジツボ等が付着しやすくなる。このため、本実施形態のフロートカバー10では、
図6に示すように、始端側仮止部β
1を帯状には形成しておらず、スポット状に形成している。
【0039】
2.端面被覆部
端面被覆部12は、
図6及び
図7に示すように、外周面被覆部11の両側の側縁に沿って帯状に設けられている。この端面被覆部12は、
図5に示すように、フロートバール50の両側の端面を覆うための部分となっている。端面被覆部12の幅W
2(
図6)は、フロートバール50の外径等に応じて適宜決定される。具体的には、端面被覆部12の幅W
2は、フロートバール50の外径の半分(半径)と同程度かそれよりもやや短く設定される。本実施形態のフロートカバー10は、外径が46cm(半径が23cm)のフロートバール50に対して取り付けることを想定したものとなっており、端面被覆部12の幅W
2を16cmに設定している。端面被覆部12の外縁に沿った箇所には、ループ部12aを形成している。このループ部12aは、後述する絞り紐13を挿通するための部分となっている。ループ部12aの幅W
3は、特に限定されないが、通常、5cm前後とされる。
【0040】
端面被覆部12は、外周面被覆部11と連続する1枚のシート材によって形成してもよい。しかし、本実施形態のフロートカバー10では、外周面被覆部11を形成するシート材(ターポリン)とは異なるシート材を外周面被覆部11の側縁に沿って縫着することで、端面被覆部12を形成しており、端面被覆部12と外周面被覆部11とで使用するシート材(生地)を切り替えている。というのも、外周面被覆部11は、ある程度厚手でコシのあるシート材で形成することが好ましいところ、端面被覆部12は、後述する絞り紐13で絞ることによって、フロートバール50の端面にフィットさせる部分となっている。この点、端面被覆部12までも、厚手でコシのあるシート材で形成すると、端面被覆部12を絞りにくくなり、端面被覆部12がごわついて、フロートバール50の端面にフィットしにくくなるからである。このため、本実施形態のフロートカバー10では、外周面被覆部11よりも柔軟なシート材によって端面被覆部12を形成している。具体的には、ポリエステル製のシート又は帆布によって、端面被覆部12を形成している。
【0041】
3.絞り紐
絞り紐13は、
図6及び
図7に示すように、端面被覆部12の外縁に沿って設けられたそれぞれのループ部12aに挿通された状態となっている。それぞれの絞り紐13の一端部及び他端部は、ループ部12aの一端部及び他端部から引き出された状態となっている。この絞り紐13は、端面被覆部12が
図4に示す状態から
図5に示す状態となるように、端面被覆部12の外縁を絞るためのものとなっている。この絞り紐13を引っ張って、端面被覆部12の外縁を絞ることで、端面被覆部12をフロートバール50の端面にフィットさせることができる。端面被覆部12を絞った後の絞り紐の一端部と他端部は、互いに結んだ状態とされる。絞り紐13は、紐状のものであれば、その素材を特に限定されない。本実施形態のフロートカバー10では、ビニロン繊維(ポリビニルアルコール繊維)を直径4mmの紐状に結束したロープを、絞り紐13として用いている。
【0042】
4.まとめ
本実施形態のフロートカバー10をフロートバール50に取り付けることによって、フロートバール50を劣化やフジツボの付着等から保護することが可能になる。フロートカバー10が傷んだ場合や、フロートカバー10にフジツボが大量に付着したような場合には、フロートカバー10をフロートバール50から取り外し、そのフロートバール50に新しいフロートカバー10を取り付けることになるが、既に述べたように、本実施形態のフロートカバー10は、取り付けや取り外しが容易であるために、その交換作業も簡単に行うことができる。特に、フロートバール50を水に浮かべた状態や、フロートバール50にロープ60を通した状態のまま、フロートカバー50の取り付けや取り外しを行えることは、大きな利点である。また、本実施形態のフロートカバー10は、巻付始端部に対する巻付終端部の重なり幅を調節することで、巻付径を変えることができるため、フロートバール50の外径が変わっても取り付けることができるという利点も有している。
【符号の説明】
【0043】
10 フロートカバー
11 外周面被覆部
12 端面被覆部
12a ループ部
13 絞り紐
21 固定ピン
22 固定ピン
50 フロートバール
60 ロープ
L0 外周面被覆部の長手方向(フロートカバーの巻付方向)に沿った長さ
L1 終端側仮止部β2の長手方向(フロートカバーの巻付方向)に沿った長さ
W0 フロートカバーの幅
W1 外周面被覆部の幅
W2 端部被覆部の幅
W3 ループ部の幅
α1 始端側固定部
α2 終端側固定部
β1 始端側仮止部
β2 終端側仮止部