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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】体内挿入管セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
A61M16/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020095424
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021186316
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】高山 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 真弘
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-13973(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2371036(GB,A)
【文献】特開2010-17297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ本体とインフレーションシステムとを有する体内挿入管と、
前記体内挿入管を収容する包装袋とを備える体内挿入管セットであって、
前記チューブ本体は、先端部と、前記先端部の反対側に配置された基端部とを備え、
前記インフレーションシステムは、カフと、前記カフから延びているインフレーションラインと、前記インフレーションラインを隔てて前記カフの反対側に配置されたパイロットバルーンとを備え、
前記包装袋は、
前記体内挿入管が前記包装袋内に収容されている状態で、前記基端部と前記パイロットバルーンとを隣接させる位置決め部を備え
前記包装袋は、第1シートの外周部である第1外周部と、第2シートの外周部である第2外周部とを接合することによって構成され、
前記位置決め部は、前記第1シートの非外周部の一部である第1接合部と、前記第2シートの非外周部の一部である第2接合部とを接合することによって構成され、
前記位置決め部は、前記体内挿入管が前記包装袋内に収容されている状態で、前記チューブ本体と前記パイロットバルーンとの間に位置する、体内挿入管セット。
【請求項2】
前記包装袋は、前記パイロットバルーンに隣接して配置された弁部を備え、
前記弁部は、前記パイロットバルーンに空気を供給するシリンジの先端部を抜き差し可能に構成された貫通穴を有する、
請求項1に記載の体内挿入管セット。
【請求項3】
前記貫通穴の深さ寸法は、前記先端部の長さ寸法よりも小さい、
請求項に記載の体内挿入管セット。
【請求項4】
前記カフに供給される潤滑剤が収容されている潤滑剤収容袋を更に備え、
前記潤滑剤収容袋は前記包装袋に固定されており、
前記潤滑剤は、前記体内挿入管が前記包装袋内に収容されている状態で、前記カフに供給される、
請求項1に記載の体内挿入管セット。
【請求項5】
前記潤滑剤収容袋の強度は、前記包装袋の強度よりも低い、
請求項に記載の体内挿入管セット。
【請求項6】
前記体内挿入管に挿入されていない状態で前記包装袋に収容されたスタイレットを更に備え、
前記体内挿入管と前記スタイレットとが前記包装袋内に収容されている状態で、前記潤滑剤が前記カフと前記スタイレットとに供給される、
請求項に記載の体内挿入管セット。
【請求項7】
前記体内挿入管が、前記包装袋の一方の端部から取り出され、前記スタイレットが、前記包装袋の他方の端部から取り出される、
請求項に記載の体内挿入管セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内挿入管セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、膨張可能なカフを有する気管チューブと、カフを膨張させる可撓性膨張線とを備える気管用チューブアセンブリが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、使用前の気管用チューブアセンブリが、シート状の気体透過性紙とシート状の可撓性プラスチックとによって構成されたパッケージ(包装袋)に収容されている。
また、特許文献1に記載された技術では、パッケージ(包装袋)のヒートシール処理時に、可撓性膨張線の一部がパッケージ(包装袋)の縁部(ヒートシール部)に位置してしまうことを回避するために、可撓性膨張線の装置側端が、気管チューブと共に保持される。
ところで、特許文献1に記載された技術では、可撓性膨張線の装置側端を気管チューブと共に保持するためのアダプタが、気管用チューブアセンブリに含められている。そのため、特許文献1に記載された技術では、気管用チューブアセンブリ全体のコストが嵩んでしまう。
【0003】
また、従来から、気管内に挿入される気管内チューブと、気管内チューブを収容する包装用袋とを備える気管挿管セットが知られている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に記載された技術では、使用前の気管内チューブが、包装用袋に収容されている。
ところで、特許文献2に記載された技術では、カフが気管内チューブに備えられていない。
そのため、特許文献2には、包装用袋から気管内チューブの全体を取り出す必要なく、カフを膨張させるシステムの異常の有無を確認する手法について記載されていない。
【0004】
気管用チューブアセンブリの全体をパッケージから取り出した後、あるいは、気管内チューブの全体を包装用袋から取り出した後に、カフを膨張させるシステムの異常の有無を確認する作業は、例えば狭い場所で気管挿管を迅速に行うことが要求される救急救命士にとって、非常に煩雑な作業である。従って、気管用チューブアセンブリのパッケージ、あるいは、気管内チューブの包装用袋の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-79468号公報
【文献】特開2008-206568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題点に鑑み、本発明は、全体のコストを抑制しつつ、包装袋から体内挿入管の全体を取り出す必要なく、インフレーションシステムの異常の有無を確認することができる体内挿入管セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、チューブ本体とインフレーションシステムとを有する体内挿入管と、前記体内挿入管を収容する包装袋とを備える体内挿入管セットであって、前記チューブ本体は、先端部と、前記先端部の反対側に配置された基端部とを備え、前記インフレーションシステムは、カフと、前記カフから延びているインフレーションラインと、前記インフレーションラインを隔てて前記カフの反対側に配置されたパイロットバルーンとを備え、前記包装袋は、前記体内挿入管が前記包装袋内に収容されている状態で、前記基端部と前記パイロットバルーンとを隣接させる位置決め部を備える、体内挿入管セットである。
【0008】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記包装袋は、第1シートの外周部である第1外周部と、第2シートの外周部である第2外周部とを接合することによって構成され、前記位置決め部は、前記第1シートの非外周部の一部である第1接合部と、前記第2シートの非外周部の一部である第2接合部とを接合することによって構成されていてもよい。
【0009】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記位置決め部は、前記体内挿入管が前記包装袋内に収容されている状態で、前記チューブ本体と前記パイロットバルーンとの間に位置してもよい。
【0010】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記包装袋は、前記パイロットバルーンに隣接して配置された弁部を備え、前記弁部は、前記パイロットバルーンに空気を供給するシリンジの先端部を抜き差し可能に構成された貫通穴を有してもよい。
【0011】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記貫通穴の深さ寸法は、前記先端部の長さ寸法よりも小さくてもよい。
【0012】
本発明の一態様の体内挿入管セットは、前記カフに供給される潤滑剤が収容されている潤滑剤収容袋を更に備え、前記潤滑剤収容袋は前記包装袋に固定されており、前記潤滑剤は、前記体内挿入管が前記包装袋内に収容されている状態で、前記カフに供給されてもよい。
【0013】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記潤滑剤収容袋の強度は、前記包装袋の強度よりも低くてもよい。
【0014】
本発明の一態様の体内挿入管セットは、前記体内挿入管に挿入されていない状態で前記包装袋に収容されたスタイレットを更に備え、前記体内挿入管と前記スタイレットとが前記包装袋内に収容されている状態で、前記潤滑剤が前記カフと前記スタイレットとに供給されてもよい。
【0015】
本発明の一態様の体内挿入管セットでは、前記体内挿入管が、前記包装袋の一方の端部から取り出され、前記スタイレットが、前記包装袋の他方の端部から取り出されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、全体のコストを抑制しつつ、包装袋から体内挿入管の全体を取り出す必要なく、インフレーションシステムの異常の有無を確認することができる体内挿入管セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の体内挿入管セットの構成の一例を示す図である。
図2】包装袋に収容される前における体内挿入管の一例などを示す図である。
図3図1および図2(A)に示す体内挿入管を包装袋に収容する方法の一例を説明するための包装袋の分解斜視図である。
図4】第2実施形態の体内挿入管セットの構成の一例を示す図である。
図5図4に示す体内挿入管を包装袋に収容する方法の一例を説明するための包装袋の分解斜視図である。
図6】第2実施形態の体内挿入管セットのインフレーションシステムの異常の有無の確認方法の一例を説明するための図である。
図7】第3実施形態の体内挿入管セットの構成の一例を示す図である。
図8図7に示す体内挿入管と潤滑剤収容袋とを包装袋に収容する方法の一例を説明するための包装袋の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の体内挿入管セットの実施形態について説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例を示す図である。詳細には、図1は体内挿入管11が包装袋14に収容されている状態における体内挿入管セット1を示す図である。図2は包装袋14に収容される前における体内挿入管11の一例などを示す図である。詳細には、図2(A)は包装袋14に収容される前における体内挿入管11の一例を示しており、図2(B)は図2(A)に示す体内挿入管11に適用されるシリンジSYの一例を示している。
図1および図2に示す例では、体内挿入管セット1が、体内挿入管11と、例えば滅菌された状態で体内挿入管11を収容する包装袋14とを備えている。
体内挿入管11は、人間または動物の例えば気管、食道、大腸などの器官に挿入される管である。体内挿入管11は、チューブ本体11Aと、インフレーションシステム11Bとを備えている。チューブ本体11Aは、管状の部分であり、例えば体内挿入管11が気管挿管に用いられる場合に気管への換気を行う部分である。
チューブ本体11Aは、先端部11A1と、先端部11A1の反対側に配置された基端部11A2とを備えている。先端部11A1は、体内挿入管11の使用時に人間または動物の例えば気管、食道、大腸などの器官に挿入される部分である。基端部11A2は、体内挿入管11の使用時に例えば気管、食道、大腸などの器官に挿入されることなく、人間または動物の体外に配置される(残される)部分である。
【0020】
インフレーションシステム11Bは、カフ11B1と、インフレーションライン11B2と、パイロットバルーン11B3とを備えている。
カフ11B1は、チューブ本体11Aの外周面と器官の内壁面との間のシールなどを行う部分である。カフ11B1は膨張可能に構成されている。カフ11B1の理解を容易にするために、図2(A)には、膨張させられた状態のカフ11B1が示されている。実際には、図1に示すようにカフ11B1が膨張させられていない状態で、体内挿入管11は、包装袋14に収容されている。
インフレーションライン11B2は、カフ11B1から延びている。パイロットバルーン11B3は、インフレーションライン11B2を隔ててカフ11B1の反対側(図1および図2(A)の右側)に配置されている。パイロットバルーン11B3は、カフ11B1に空気を注入し、カフ11B1を膨張させるために用いられる。また、パイロットバルーン11B3は、カフ11B1から空気を抜く場合にも用いられる。
つまり、インフレーションシステム11Bは、カフ11B1の内圧の維持に関わるシステムである。インフレーションシステム11Bのパイロットバルーン11B3は、シリンジSY(図2(B)参照)と接続可能に構成されている。詳細には、シリンジSYの先端部SY1(図2(B)参照)をパイロットバルーン11B3に差し込むことによって、パイロットバルーン11B3とシリンジSYとが接続される。
【0021】
図3図1および図2(A)に示す体内挿入管11を包装袋14に収容する方法の一例を説明するための包装袋14の分解斜視図である。
図3に示す例では、包装袋14が、第1シート14-1と、第2シート14-2とを備えている。
第1シート14-1は、外周部14-1Aと、外周部14-1A以外の部分である非外周部とを備えている。第1シート14-1の非外周部には、第2シート14-2に接合される部分である接合部14-1Bが含まれている。
第2シート14-2は、外周部14-2Aと、外周部14-2A以外の部分である非外周部とを備えている。第2シート14-2の非外周部には、第1シート14-1に接合される部分である接合部14-2Bが含まれている。
【0022】
図1図3に示す例では、体内挿入管11を包装袋14に収容する場合に、体内挿入管11が、第1シート14-1と第2シート14-2との間に配置される。つまり、体内挿入管11が、第1シート14-1よりも図3の下側であって、第2シート14-2よりも図3の上側に配置される。
次いで、第1シート14-1の外周部14-1Aと、第2シート14-2の外周部14-2Aとが、例えば溶着などのような公知の任意の手法によって接合されると共に、第1シート14-1の接合部14-1Bと、第2シート14-2の接合部14-2Bとが、同様の手法によって接合される。その結果、体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態(図1に示す状態)になる。
詳細には、第1シート14-1の接合部14-1Bと、第2シート14-2の接合部14-2Bとが、互いに接合されることによって、位置決め部14A(図1参照)が構成されている。すなわち、第1シート14-1の外周部14-1Aと、第2シート14-2の外周部14-2Aとを接合することによって構成される包装袋14は、位置決め部14Aを備えている。
【0023】
図1図3に示す例では、図1に示すように体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態において、位置決め部14Aが、チューブ本体11Aと、インフレーションシステム11Bのパイロットバルーン11B3との間に位置する。
つまり、位置決め部14Aは、体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態において、チューブ本体11Aの基端部11A2とパイロットバルーン11B3とを隣接させる機能を有する。
そのため、図1図3に示す例では、体内挿入管セット1の使用者が体内挿入管11を包装袋14から取り出す時に、パイロットバルーン11B3が体内挿入管11の先端部11A1の側(図1の左側)に移動してしまっていることを抑制することができる。
【0024】
例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者は、体内挿入管11を人間または動物の器官に挿入する前に、カフ11B1を実際に膨張させることによって、カフ11B1の内圧の維持に関わるインフレーションシステム11Bに異常がないことを確認する必要がある。
図1図3に示す例では、体内挿入管セット1の使用者が、インフレーションシステム11Bの異常の有無の確認を行うために、体内挿入管11の全体を包装袋14から取り出す必要はない。体内挿入管セット1の使用者は、例えば包装袋14の一部(図1の右上側の一部)のみを開封し、パイロットバルーン11B3の一部のみを包装袋14の外部に露出させればよい。
詳細には、体内挿入管セット1の使用者は、包装袋14の開封された部分を介して、パイロットバルーン11B3とシリンジSYとを接続することによって、カフ11B1を膨張させることができる。
【0025】
すなわち、図1図3に示す例では、体内挿入管セット1の使用者は、包装袋14から体内挿入管11の全体を取り出す必要なく、インフレーションシステム11Bの異常の有無を確認することができる。
また、図1図3に示す例では、図1に示すように体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態において、チューブ本体11Aの基端部11A2とパイロットバルーン11B3とを隣接させるために、特許文献1に記載されているようなアダプタを体内挿入管11に設ける必要もない。そのため、図1図3に示す例では、特許文献1に記載された技術よりも、体内挿入管セット1の全体のコストを抑制することができる。
【0026】
[第2実施形態]
以下、本発明の体内挿入管セットの第2実施形態について説明する。
第2実施形態の体内挿入管セット1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の体内挿入管セット1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様の効果を奏することができる。
【0027】
図4は第2実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例を示す図である。
図4に示す例では、体内挿入管セット1が、図1および図2(A)に示す例と同様に構成された体内挿入管11と、例えば滅菌された状態で体内挿入管11を収容する包装袋14とを備えている。
【0028】
図5図4に示す体内挿入管11を包装袋14に収容する方法の一例を説明するための包装袋14の分解斜視図である。
図5に示す例では、包装袋14が、第1シート14-1と、第2シート14-2と、弁部14Bとを備えている。
第1シート14-1は、外周部14-1Aと、非外周部とを備えている。第1シート14-1の非外周部には、接合部14-1Bが含まれている。
第2シート14-2は、外周部14-2Aと、非外周部とを備えている。第2シート14-2の非外周部には、接合部14-2Bが含まれている。
弁部14Bは貫通穴14B1を有する。弁部14Bは貫通穴14B1は、パイロットバルーン11B3(図4参照)に空気を供給するシリンジSY(図2(B)参照)の先端部SY1(図2(B)参照)を抜き差し可能に構成されている。
【0029】
図4および図5に示す例では、体内挿入管11を包装袋14に収容する場合に、体内挿入管11および弁部14Bが、第1シート14-1と第2シート14-2との間に配置される。つまり、体内挿入管11および弁部14Bが、第1シート14-1よりも図5の下側であって、第2シート14-2よりも図5の上側に配置される。
次いで、第1シート14-1の外周部14-1Aと、第2シート14-2の外周部14-2Aとが、例えば溶着などのような公知の任意の手法によって接合されると共に、第1シート14-1の接合部14-1Bと、第2シート14-2の接合部14-2Bとが、同様の手法によって接合される。また、弁部14Bが、同様の手法によって、第1シート14-1の外周部14-1Aの一部と、第2シート14-2の外周部14-2Aの一部とに接合される。その結果、体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態(図4に示す状態)であって、弁部14Bが第1シート14-1の外周部14-1Aと第2シート14-2の外周部14-2Aとに挟まれた状態になる。
【0030】
図4および図5に示す例では、図4に示すように体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態において、位置決め部14Aが、チューブ本体11Aと、インフレーションシステム11Bのパイロットバルーン11B3との間に位置する。
そのため、図4および図5に示す例では、図1図3に示す例と同様に、体内挿入管セット1の使用者が体内挿入管11を包装袋14から取り出す時に、パイロットバルーン11B3が体内挿入管11の先端部11A1の側(図4の左側)に移動してしまっていることを抑制することができる。
また、図4および図5に示す例では、図4に示すように体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態において、弁部14Bが、パイロットバルーン11B3に隣接して配置されている。
【0031】
図4および図5に示す例においても、体内挿入管セット1の使用者は、インフレーションシステム11Bの異常の有無の確認を行うために、体内挿入管11の全体を包装袋14から取り出す必要はない。
詳細には、図4および図5に示す例では、体内挿入管セット1の使用者は、インフレーションシステム11Bの異常の有無の確認を行うために、包装袋14を開封する必要もない。
【0032】
図6は第2実施形態の体内挿入管セット1のインフレーションシステム11Bの異常の有無の確認方法の一例を説明するための図である。詳細には、図6は弁部14Bなどの拡大断面を概略的に示す図である。
図6に示すように、第2実施形態の体内挿入管セット1では、インフレーションシステム11Bの異常の有無の確認が行われる場合に、シリンジSYの先端部SY1が、弁部14Bの貫通穴14B1に差し込まれる。貫通穴14B1の深さ寸法DBは、シリンジSYの先端部SY1の長さ寸法LSより小さい値に設定されている。
従って、シリンジSYの先端部SY1が弁部14Bの貫通穴14B1に差し込まれると、シリンジSYの先端部SY1の一部は、包装袋14の内側(図6の左側)に突出する。
そのため、体内挿入管セット1の使用者は、シリンジSYの先端部SY1の一部(包装袋14の内側に突出している部分)とパイロットバルーン11B3とを接続することによって、カフ11B1を膨張させることができる。
すなわち、図4図6に示す例では、体内挿入管セット1の使用者は、包装袋14から体内挿入管11の全体を取り出す必要なく(詳細には、包装袋14を開封する必要もなく)、インフレーションシステム11Bの異常の有無を確認することができる。
【0033】
[第3実施形態]
以下、本発明の体内挿入管セットの第3実施形態について説明する。
第3実施形態の体内挿入管セット1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様に構成されている。従って、第3実施形態の体内挿入管セット1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の体内挿入管セット1と同様の効果を奏することができる。
【0034】
図7は第3実施形態の体内挿入管セット1の構成の一例を示す図である。
図7に示す例では、体内挿入管セット1が、図1および図2(A)に示す例と同様に構成された体内挿入管11と、潤滑剤収容袋12と、潤滑剤13と、包装袋14とを備えている。
潤滑剤収容袋12は、潤滑剤13を収容する袋である。潤滑剤13は、例えばK-Y(登録商標)ゼリーなどのような、公知の任意の医療用潤滑剤である。
包装袋14は、例えば滅菌された状態で、体内挿入管11と潤滑剤収容袋12とを収容する。
【0035】
図8図7に示す体内挿入管11と潤滑剤収容袋12とを包装袋14に収容する方法の一例を説明するための包装袋14の分解斜視図である。
図8に示す例では、包装袋14が、第1シート14-1と、第2シート14-2とを備えている。
第1シート14-1は、外周部14-1Aと、非外周部とを備えている。第1シート14-1の非外周部には、接合部14-1Bが含まれている。
第2シート14-2は、外周部14-2Aと、非外周部とを備えている。第2シート14-2の非外周部には、接合部14-2Bが含まれている。
【0036】
図7および図8に示す例では、体内挿入管11と潤滑剤収容袋12とを包装袋14に収容する場合に、体内挿入管11および潤滑剤収容袋12が、第1シート14-1と第2シート14-2との間に配置される。つまり、体内挿入管11および潤滑剤収容袋12が、第1シート14-1よりも図8の下側であって、第2シート14-2よりも図8の上側に配置される。
次いで、第1シート14-1の外周部14-1Aと、第2シート14-2の外周部14-2Aとが、例えば溶着などのような公知の任意の手法によって接合されると共に、第1シート14-1の接合部14-1Bと、第2シート14-2の接合部14-2Bとが、同様の手法によって接合される。また、潤滑剤収容袋12が、同様の手法によって、第1シート14-1の非外周部の一部、および、第2シート14-2の非外周部の一部の少なくとも一方に接合される。その結果、体内挿入管11と潤滑剤収容袋12とが包装袋14内に収容されている状態(図7に示す状態)になる。
【0037】
図7および図8に示す例では、図7に示すように体内挿入管11と潤滑剤収容袋12とが包装袋14内に収容されている状態において、位置決め部14Aが、チューブ本体11Aと、インフレーションシステム11Bのパイロットバルーン11B3との間に位置する。
そのため、図7および図8に示す例では、図1図3に示す例と同様に、体内挿入管セット1の使用者が体内挿入管11を包装袋14から取り出す時に、パイロットバルーン11B3が体内挿入管11の先端部11A1の側(図7の左側)に移動してしまっていることを抑制することができる。
図7および図8に示す例においても、体内挿入管セット1の使用者は、インフレーションシステム11Bの異常の有無の確認を行うために、体内挿入管11の全体を包装袋14から取り出す必要はない。
【0038】
図7に示す体内挿入管セット1では、潤滑剤収容袋12(図8参照)が、包装袋14内に収容されている。また、潤滑剤収容袋12が包装袋14に固定されている。詳細には、図7に示すように、潤滑剤13を収容する潤滑剤収容袋12が、体内挿入管11のカフ11B1に隣接して配置されている。また、潤滑剤収容袋12の強度が、包装袋14の強度よりも低い値に設定されている。
図7および図8に示す例では、体内挿入管セット1の使用時に、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者によって、潤滑剤収容袋12が加圧される。その結果、潤滑剤収容袋12が破れ、潤滑剤収容袋12に収容されていた潤滑剤13が、体内挿入管11のカフ11B1に塗布される。
一方、潤滑剤収容袋12が加圧されても、体内挿入管11と潤滑剤収容袋12とを収容している包装袋14は破れない。その結果、包装袋14の内側において潤滑剤13がカフ11B1に塗布された状態になる。
そのため、図7および図8に示す例では、例えば救急救命士などの体内挿入管セット1の使用者は、潤滑剤13がカフ11B1に塗布された状態で体内挿入管11を包装袋14から取り出すことができる。
【0039】
換言すれば、図7に示す体内挿入管セット1は、カフ11B1に供給される潤滑剤13が収容されている潤滑剤収容袋12を備えている。また、潤滑剤13は、体内挿入管11が包装袋14内に収容されている状態で、カフ11B1に供給される。
【0040】
図1図8に示す例では、スタイレット(図示せず)が挿入されていない体内挿入管11が、包装袋14に収容されているが、他の例では、スタイレット(図示せず)が挿入されている体内挿入管11が、包装袋14に収容されていてもよい。
【0041】
図7および図8に示す例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていない。
他の例では、スタイレット(図示せず)が包装袋14に収容されていてもよい。スタイレットが包装袋14に収容される第1例では、スタイレットが、体内挿入管11に挿入された状態で、包装袋14に収容される。
スタイレットが包装袋14に収容される第2例では、スタイレットが、体内挿入管11に挿入されていない状態で、包装袋14に収容される。この例では、潤滑剤収容袋12が破れ、潤滑剤収容袋12に収容されていた潤滑剤13が、体内挿入管11のカフ11B1に塗布される時に、潤滑剤収容袋12に収容されていた潤滑剤13が、スタイレットにも塗布される。すなわち、体内挿入管11とスタイレットとが包装袋14内に収容されている状態で、潤滑剤13がカフ11B1とスタイレットとに供給される。
この例では、体内挿入管11が、包装袋14の一方の端部(図7の右側の端部)から取り出され、スタイレットは、包装袋14の他方の端部(図7の左側の端部、つまり、潤滑剤収容袋12に近い側の端部)から取り出される。そのため、スタイレットの全体に潤滑剤13を塗布することができる。好ましくは、包装袋14に収容されるスタイレットとして、例えばFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などの低摩擦性材料によって形成されたスタイレットが用いられる。
【0042】
<実施例>
本発明者は、従来の気管挿管チューブと第3実施形態の体内挿入管セットとを用いて、気管挿管の準備にかかる時間を比較する検討を行った。
第3実施形態の体内挿入管セットを用いた場合に、従来の気管挿管チューブを用いた場合よりも、気管挿管の準備にかかる時間を短くすることができ、体内挿入管セット(気管挿管チューブ)の使用者ごとの所要時間のばらつきを小さくすることができた。本発明者が行った検討において、第3実施形態の体内挿入管セットの有効性が明らかになった。
本発明者が行った検討においては、10人の現職(消防職員救急隊)の救命救急士が、従来の気管挿管チューブと第3実施形態の体内挿入管セットとを使用し、気管挿管を行う前の点検操作(カフの破損確認、潤滑剤の塗布など)の開始時点から、体内挿入管11(気管挿管チューブ)を包装袋14(パッケージ)から取り出す時点までの所要時間を測定した。
本発明者が行った検討において比較に用いた統計学的検定は「paired-t test」である。
【0043】
10人の現職(消防職員救急隊)の救命救急士の平均年齢は39.8[歳]であり、性別は男である。
従来の気管挿管チューブの所要時間は81.1[秒]になり、標準偏差は12.4[秒]になった。被検者の95%の人数が56.3~165.9[秒]の間で操作を完了した。
一方、第3実施形態の体内挿入管セットの所要時間は47.0[秒]になり、標準偏差は5.8[秒]になった。被検者の95%の人数が35.4~58.6[秒]の間で操作を完了した。
この結果は、統計学的に有意な差であることを示している。
【0044】
従来の気管挿管チューブと第3実施形態の体内挿入管セットと所要時間の差[秒](95%信頼区間)は、34.1[秒](短くても23.8[秒]、長くても44.4[秒])になった。
【0045】
<適用例>
第1適用例では、第1から第3実施形態の体内挿入管セット1が気管挿管に適用される。詳細には、第1適用例では、体内挿入管11が、気管チューブとして用いられ、体内挿入管11のカフ11B1が、気管内に配置されるカフとして用いられる。
第2適用例では、第1適用例と同様に、第1から第3実施形態の体内挿入管セット1が気管挿管に適用される。詳細には、第2適用例では、体内挿入管11のカフ11B1が、食道カフとして用いられる。
第3適用例では、第1から第3実施形態の体内挿入管セット1が大腸内視鏡検査に適用される。詳細には、第3適用例では、体内挿入管11のカフ11B1が、エンドカフとして用いられる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…体内挿入管セット、11…体内挿入管、11A…チューブ本体、11A1…先端部、11A2…基端部、11B…インフレーションシステム、11B1…カフ、11B2…インフレーションライン、11B3…パイロットバルーン、12…潤滑剤収容袋、13…潤滑剤、14…包装袋、14A…位置決め部、14B…弁部、14B1…貫通穴、DB…深さ寸法、14-1…第1シート、14-1A…外周部、14-1B…接合部、14-2…第2シート、14-2A…外周部、14-2B…接合部、SY…シリンジ、SY1…先端部、LS…長さ寸法
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8