(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】テストピースの圧縮強度の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20240425BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240425BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20240425BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240425BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G01N3/08
G01N33/38
G01N3/00 M
B41J2/01 401
B41J2/01 307
B41J2/01 451
B41J2/01
B41J2/01 501
B41J2/01 201
G01N1/28 E
(21)【出願番号】P 2020140512
(22)【出願日】2020-08-22
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】592002695
【氏名又は名称】株式会社セイア
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久原 実
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-245822(JP,A)
【文献】特開2019-059182(JP,A)
【文献】特開2007-190790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-3/62
G01N 33/38
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートのテストピースの圧縮強度を測定する方法であって、
生コンクリートを円柱状に成形して硬化させるテストピースの成形工程と、
前記成形工程で作製された円柱状の前記テストピースの端面を平滑面に処理する平滑工程と、
前記平滑工程で
前記端面を平滑化してなる前記テストピースの
前記端面に、
前記テストピースを特定する識別用表示を付着する表示工程と、
前記表示工程で、
前記端面に
前記識別用表示が付着された前記テストピースを加圧して圧縮強度を測定する測定工程とからなり、
前記表示工程において、
前記テストピースの前記端面に前記識別用表示を付着するインクジェットプリンタに、
前記識別用表示のプリント時の移動方向に直交する直線状に配置している多数のノズルと、
直線状に配置している前記ノズルの両側に一対のロールとを備え、
少なくともひとつの前記ロールは位置検出ロールで、
一対の前記ロールは、互いに平行姿勢にケースに連結された同一外径の弾性ロールである、
可搬式のインクジェットプリンタを使用して、
前記テストピースの
前記端面に、
前記端面に沿って移動する
前記ノズルからインクを噴出して
前記識別用表示を付すと共に、
前記ノズルの移動を位置検出ロールで検出して前記インクの噴出を制御すると共に、
前記ノズルと前記端面との間隔を一定に保持して、
前記テストピースの
前記端面に沿って移動する
前記ノズルから前記インクを噴出して、
前記テストピースの
前記端面に一定の膜厚で
前記識別用表示を付着することを特徴とするテストピースの圧縮強度の測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載するテストピースの圧縮強度の測定方法であって、
一対の前記ロールの両方が前記位置検出ロールであることを特徴とするテストピースの圧縮強度の測定方法。
【請求項3】
請求項1に記載するテストピースの圧縮強度の測定方法であって、
前記表示工程において、
前記テストピースの
前記端面に付着する前記識別用表示の膜厚を5μm以下とすることを特徴とするテストピースの圧縮強度の測定方法。
【請求項4】
請求項1
ないし3のいずれか一項に記載するテストピースの圧縮強度の測定方法であって、
前記平滑工程が、
前記テストピースの
前記端面を平面研磨して平滑面とすることを特徴とするテストピースの圧縮強度の測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれかに記載するテストピースの圧縮強度の測定方法であって、
前記平滑工程が、
前記テストピースの
前記端面にセメントペースト又は石膏を置き、
前記セメントペースト又は石膏が未硬化状態で平滑プレートを押圧して平滑面とすることを特徴とするテストピースの圧縮強度の測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれかに記載するテストピースの圧縮強度の測定方法であって、
前記インクに顔料インクを使用することを特徴とするテストピースの圧縮強度の測定方法。
【請求項7】
請求項
6に記載するテストピースの圧縮強度の測定方法であって、
前記テストピースの
前記端面に、
前記顔料
インクを1段以上であって3段以下に積層して、
前記顔料インクを積層して前記識別用表示を付すことを特徴とするテストピースの圧縮強度の測定方法。
【請求項8】
請求項
6または7に記載するテストピースの圧縮強度の測定方法であって、
前記インクに、
水よりも低沸点であって、
親水性の溶媒を含むバインダーに顔料粒子を分散してなる
前記顔料インクを使用することを特徴とするテストピースの圧縮強度の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製のテストピース(本明細書においてテストピースと記載する)の圧縮試験方法に関し、とくに圧縮試験で加圧されるプレス面に識別用表示を付して圧縮試験するテストピースの圧縮強度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テストピースは、建物などのコンクリート構造物が構造設計時の強度よりも高いことを確認するために使用される供試体である。テストピースは、コンクリート構造物に使用したコンクリートを円柱状に成形して作製され、特定の条件で硬化した後、両端を加圧して圧縮強度が測定される。コンクリート構造物の構築において、多数のテストピースが作製されて、圧縮強度が測定される。各々のテストピースは、識別のために識別用表示が必要とされ、従来からの方法としてテストピースの上面に必要事項がマジックで手書きされている。マジックによる手書きは、手間と時間がかかり効率的でない、記載ミスのおそれがあるのみならず、圧縮強度が測定されるテストピースの上面にマジックで書くときに擦れる、筆圧が加わる点が好ましくない。マジックのペン先にテストピースの微粉が付いて書きにくくなることも相まってより好ましくない状況となり得る。またシールを貼付する方法では、水中養生の際に剥がれるおそれがあり、測定時には剥がす工程が発生する。
【0003】
テストピースに識別用表示を付す方法は開発されている(特許文献1、2参照)。特許文献1は、
図6と
図7に示すように、両側に複数の折り曲げ部を突出して設けているクリアシート801の表面にネームラベルを接合して、テストピースに折り曲げ部を埋設して固定する構造を記載し、さらに文字情報やバーコードパターンが記載された管理ラベルを、現場打ち生コンクリートの硬化前にコンクリート部材の表面に固着させる方法を開示する。また、特許文献2は、
図8に示すように、可塑性のある薄板上に文字、図形若しくは記号などの表示を刻設し、薄板をテストピースの一部として剥離不能に一体的に付設する方法が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-61266号公報
【文献】特開平1-80837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の公報に記載するテストピースは、識別用表示を付すのに著しく手間がかかることに加えて、さらに識別用表示がテストピースの圧縮試験の精度を低下させる原因となる弊害がある。
【0006】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の大切な目的は、簡単かつ容易に端面に識別用表示を付しながら、識別用表示に起因する測定誤差を極限して、高い精度で圧縮強度を測定できるテストピースの圧縮強度の測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の一実施態様のテストピースの圧縮強度の測定方法は、コンクリートのテストピースの圧縮強度を測定する方法であって、生コンクリートを円柱状に成形して硬化させるテストピースの成形工程と、成形工程で作製された円柱状のテストピースの端面を平滑面に処理する平滑工程と、平滑工程で端面を平滑化してなる前記テストピースの端面に、テストピースを特定する識別用表示を付着する表示工程と、表示工程で、端面に識別用表示が付着されたテストピースを加圧して圧縮強度を測定する測定工程とからなり、表示工程において、テストピースの端面に識別用表示を付着するインクジェットプリンタに、識別用表示のプリント時の移動方向に直交する直線状に配置している多数のノズルと、直線状に配置しているノズルの両側に一対のロールとを備え、少なくともひとつのロールは位置検出ロールで、一対のロールは、互いに平行姿勢にケースに連結された同一外径の弾性ロールである、可搬式のインクジェットプリンタを使用して、テストピースの端面に、端面に沿って移動するノズルからインクを噴出して識別用表示を付すと共に、ノズルの移動を位置検出ロールで検出してインクの噴出を制御すると共に、ノズルと端面との間隔を一定に保持して、テストピースの端面に沿って移動するノズルからインクを噴出して、テストピースの端面に一定の膜厚で識別用表示を付着する。
【0008】
本発明のテストピースの圧縮強度の測定方法は、簡単かつ容易にテストピースの端面に識別用表示を付しながら、識別用表示に起因する測定誤差を極限して、高い精度で圧縮強度を測定できる。以上のテストピースの圧縮強度の測定方法によると、従来のようにテストピースの製造工程において、識別用表示をテストピースに付すために、テストピース以外の専用の部材を使用することなく、インクを噴出する位置を位置検出ロールで検出しながら、インクを噴出して識別用表示を端面に付すので、簡単かつ容易に、しかも速やかに識別用表示を付すことができる。また、識別用表示として、従来のマジックによる手書きが困難なバーコードなども簡単かつ容易に識別用表示を付すことができる。さらに、以上の方法は、位置検出ロールでノズルの移動位置を検出してインクの噴出を制御して、一定の膜厚となるように識別用表示を付着するので、極めて高い精度で膜厚を均一に制御して識別用表示を付すことができる。このことは、テストピースの端面の平面度を高くしてテストピースの圧縮試験において極めて高い精度で圧縮強度を検出できる特長を実現する。
【0009】
それは、テストピースの端面の凹凸が、圧縮強度を低下させる原因となるからである。高い精度で圧縮強度を測定するために、
JIS A 1132:2020 5.5 「供試体の形状及び寸法の許容差」には、以下のように供試体(テストピース)の形状寸法の許容差として
b)供試体の載荷面の平面度は、直径の0.05%以内とする、と規定される。
例えば、供試体のテストピースには、直径を10cmとするものが使用されるが、このテストピースは載荷面の平面度を10cmの0.05%、すなわち平面度の誤差を50μm以下と規定している。
【0010】
テストピースは、コンクリートを円柱状に成形して硬化した後、研磨して平滑面に加工し、あるいは硬化したテストピースの端面にセメントペースト等を置き、セメントペースト等が未硬化状態で平滑プレートを押圧して平滑面とする等の処理(以下、キャッピングと記載する)をして平面状に処理されるが、この工程で完成したテストピースは、端面を完全な平滑面には加工できない。平面度に誤差のある状態で作製されたテストピースは、その後の処理で、端面に識別用表示を付す工程での平面度の変位を、できる限り少なくすることが要求されるが、識別用表示を付す工程での平面度の誤差を、たとえばJISに規定する50μmの1/10~1/20以下である、5μm~2.5μm以下として、識別用表示を付す工程で増加する平面度の誤差は実質的に無視できる。
【0011】
以上の方法は、インクを付す位置をセンサで検出しながら、移動距離を検出しながら、インクを噴出する位置を位置検出ロールで検出しながらインクの噴出を制御して、一定の膜厚で識別用表示を付着するので、識別用表示するためのインクの膜厚を一定の膜厚に制御するので、識別用表示による平面度の誤差を、JISで規定する平面度の誤差に対して、実質的には無視できる程度に小さくできる。このため、端面を研磨し、あるいはキャッピングしたテストピースの圧縮試験において、端面に識別用表示を付してテストピースを明確に識別できる状態としながら、試験されるテストピースの端面の平面度の誤差を実質的に増加することがなく、テストピースを高い精度で圧縮試験できる特長がある。
【0012】
本発明の他の実施態様のテストピースの圧縮強度の測定方法は、表示工程において、テストピース端面に付着する識別用表示の膜厚を5μm以下とする。
【0013】
この方法は、例えば直径を10cmとする、多用されるテストピースにおいて、端面に付す識別用表示の膜厚をJISで規定する平面度の誤差である50μmの1/10以下とするので、テストピース端面に識別用表示を付しながら実質的に平面度の誤差を増加させることがなく、テストピースの端面に識別用表示を付しながら、高い精度で圧縮強度を測定できる特長がある。
【0014】
本発明の他の実施態様のテストピースの圧縮強度の測定方法は、平滑工程が、テストピースの端面を平面研磨して平滑面とする。
【0015】
本発明の他の実施態様のテストピースの圧縮強度の測定方法は、平滑工程が、テストピースの端面にセメントペースト又は石膏を置き、セメントペースト又は石膏が未硬化状態で平滑プレートを押圧して平滑面とする。
【0016】
本発明の他の実施態様のテストピースの圧縮強度の測定方法は、一対のロールの両方を位置検出ロールにできる。
【0017】
【0018】
本発明の他の実施態様のテストピースの圧縮強度の測定方法は、インクに顔料インクを使用する。
【0019】
以上の方法は、顔料インクを使用するので、無数の空隙があって液状のインクが表面から内部に浸透しやすいテストピースの端面に、明瞭に識別用表示を付すことができる。さらに、顔料粒子を端面にプリントして明確な表示をしながら、識別用表示の膜厚を高い精度で均一化して、識別用表示を明確に表示しながら、テストピースの端面の平面度を低下することなく、テストピースの圧縮強度を高い精度で測定できる特長がある。
【0020】
顔料インクは、粒径を0.1~0.5μmとする顔料粒子が使用されるが、本発明の方法で、
図5の拡大断面図に示すように、たとえば、0.5μmの顔料粒子15をテストピース1の端面1aに、2~3層に積層して識別用表示2を付すと、識別用表示2の膜厚は約1~1.5μmとなる。JISの規格では、直径を100mmφとするテストピースは、端面の凹凸を50μm以下とする平面度で圧縮強度を測定することが規定されるので、膜厚を1~1.5μmとする識別用表示を付すことは、テストピースの端面の平面度に実質的に影響を与えることがなく、テストピースの端面に明確に識別用表示を表示しながら、圧縮強度を高い精度で測定できる。
【0021】
本発明の他の実施態様のテストピースの圧縮強度の測定方法は、テストピースの端面に、顔料粒子を1段以上であって3段以下に積層して、顔料インクを積層して識別用表示を付す。
【0022】
本発明の他の実施態様のテストピースの圧縮強度の測定方法は、インクに、水よりも低沸点であって、親水性の溶媒を含むバインダーに顔料粒子を分散してなる顔料インクを使用する。
【0023】
以上の方法は、親水性の溶媒に顔料粒子を分散して、テストピースの表面に顔料粒子で明確な識別用表示を付すことができ、さらに、親水性の溶媒に顔料粒子を分散しているので、溶媒は速やかにテストピースの表面の無数の微細な空隙に浸透し、さらに低沸点の溶媒が速やかに気化して、テストピースの端面に短時間に綺麗に識別用表示を付すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る測定方法の表示工程を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、表示工程に使用するインクジェットプリンタの一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、表示工程で表示される識別用表示の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、表示工程で表示される識別用表示の他の例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すテストピースの端面の拡大断面図である。
【
図6】
図6は、従来のテストピースに識別用表示を付す方法の概略斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6をコンクリート部材に固着させる過程を示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、従来の他のテストピースに識別用表示を付す方法の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0026】
本発明のテストピースの圧縮強度の測定方法は、コンクリートのテストピースの圧縮強度を測定する方法であって、生コンクリートを円柱状に成形して硬化させるテストピースの成形工程と、成形工程で作製された円柱状のテストピースの端面を平滑面に処理する平滑工程と、平滑工程で端面を平滑化したテストピースの端面に、テストピースを特定する識別用表示を付着する表示工程と、表示工程で、端面に識別用表示を付したテストピースを両端面から加圧して圧縮強度を測定する測定工程とで、テストピースの圧縮強度を測定する。
(成形工程)
【0027】
この工程は、建物や橋梁などの構築物に使用する生コンクリートを型枠に充填して、直径の2倍の高さの円柱状であるテストピース1を作製する。例えば、直径は10cm、12.5cm、15cmとする。型枠は、内面に鉱物製の油を塗布して生コンクリートを充填する。充填した生コンクリートを突き棒で締め固め、あるいは内部振動機で固める。型枠の上端から上方の生コンクリートを取り除いて上端面を平面状とする。型枠の下端面は平面状の金属板などで下端面を平面状に成形する。
(平滑工程)
【0028】
コンクリートを硬化させた後、テストピースの端面を平面研磨して平滑面に仕上げる。研磨によらず、テストピースの端面にセメントペースト又は石膏を置き、セメントペースト又は石膏が未硬化状態で平滑プレートを押圧して平滑面とするキャッピングをすることもできる。この方法は、セメントペースト等でテストピースの端面を平滑面に仕上げて、高さを直径の2倍の高さのテストピースとする。
(表示工程)
【0029】
図1は表示工程を示す概略斜視図であり、
図2は表示工程に使用するインジェットプリンタの一例を示す概略構成図であり、
図3及び
図4は表示工程で表示された識別用表示2の例を示す平面図である。この工程では、テストピース1の端面1aにテストピース1を特定するための識別用表示2を付着して、テストピース1を特定する。識別用表示2には、たとえば、事業主体、工事名、打設場所、立会者の所属や氏名、打設日、配合、材齢、試験日、養生方法、スランプや温度等の表示項目を表示するが、本発明は表示項目を特定するものでなく、テストピース1の特定に必要な他の表示項目、たとえばバーコードなども表示することができる。識別用表示2のデータは、入力部7から直接入力できる。また、外部のマイクロコンピュータなどの入力装置(図示せず)に接続して、入力装置からメモリ9に識別用表示2のデータを入力記憶させることもできる。
【0030】
識別用表示2は、テストピース1の端面1aに沿って移動するノズル6からインク14を噴出して、テストピース1の端面1aに識別用表示2を付す。さらに、この工程は、識別用表示2の膜厚を一定に保持して、均一な膜厚とするために、インク14を噴出するノズル6の移動を位置検出ロール11で検出しながらインク14の噴出を制御すると共に、ノズル6とテストピース1の端面1aとの間隔を一定に保持して、テストピース1の端面1aに沿って移動するノズル6からインク14を噴出して、テストピース1の端面1aに一定の膜厚で識別用表示2を付着する。この工程は、テストピース1の端面1aとの間隔を一定に保持し、かつノズル6の移動を検出する位置検出ロール11でノズル6がインク14を噴出するのを制御する可搬式のインクジェットプリンタ100が使用できる。このインクジェットプリンタ100は、ノズル6とテストピース1の端面1aとの間隔を、位置検出ロール11で一定に保持しながら、移動距離を位置検出ロール11で検出しながら、ノズル6からのインク噴出をコントロールして、テストピース1の端面1aに識別用表示2を付すことができる。
【0031】
図2に示すインクジェットプリンタ100は、プリント時の移動方向に直交する直線状に配置している多数のノズル6と、各々のノズル6からインク14を加圧して断続的に噴出するインク14の噴出部4と、噴出部4を制御して、各々のノズル6からインク14を噴出して、識別用表示2である事業主体、工事名、打設場所、立会者の所属や氏名、打設日、配合、材齢、試験日、養生方法、スランプや温度等をプリントする制御部8と、ノズル6の移動位置を検出して制御部8に出力する位置検出ロール11と、識別用表示2のデータを直接入力する入力部7と、識別用表示2のデータを記憶しているメモリ9と、メモリ9を外部のマイクロコンピュータなどの入力装置(図示せず)に接続して、入力装置からメモリ9に識別用表示2の情報を入力する通信インターフェース13と、噴出部4を介してノズル6に連結しているインクタンク5とを備えている。
【0032】
直線状に配置している多数のノズル6は互いに接近して、テストピース1の端面1aに直交する姿勢で、先端をテストピース1の端面1aに接近して配置され、テストピース1の端面1aに沿って直線状に移動しながら、各々のノズル6が別々に断続的にインク14を噴出して、テストピース1の端面1aに識別用表示2をプリントする。ノズル6は、
図3に示すように、事業主体、工事名、打設場所、立会者の所属や氏名、打設日、配合、材齢、試験日、養生方法、スランプや温度等データ複数の表示を平行な姿勢で1段ずつ、または多段に並べて同時にプリントできるように、多段の表示を同時にプリントできる本数を直線状に配置している。たとえば、1000本のノズル6を直線状に接近して配置しているインクジェットプリンタ100は、10段に別々の項目の識別用表示2をプリントして、各段を100本のノズル6でプリントすることができる。直線状に配置するノズル6の数を多くして、同時にプリントできる表示項目を多くでき、また識別用表示2をスムーズにプリントできる。
図3に示す識別用表示2は、所定の表示項目を文字や数字で6段に表示すると共に、これらの内容をバーコードで併記する例を示している。この識別用表示2は、表示項目を文字や数字で表示することで簡単に視認しながら、バーコード表示をバーコードリーダー等で読み取ってデータ管理することもできる。ただ、識別用表示2は、所定の表示項目を文字や数字のみで表示することも、バーコードのみで表示することもできる。
図3のように表示項目及びバーコードを併記して付すことができ、また
図4のようにバーコードのみを付すこともできる。
図3及び
図4に示すように、バーコードを、縦並びのノズルに対して縦書きまたは横書きに付すことができる。インジェットプリンタ100をテストピース1の端面1aに沿って移動させることでノズル6からインク14を噴出するが、
図4のようにバーコードを横書きにする場合においても、後述する位置検出ロール11でノズル6の移動位置を検出することで、移動速度にかかわらず、一定の膜厚で、バーコードリーダーで読み取り可能なバーコードの縞模様状の各線の太さを適切にテストピース1の端面1aに付することができる。
【0033】
噴出部4は、インクタンク5に蓄えているインク14をノズル6に圧送してノズル6から噴出する。噴出部4は、制御部8でインク14の噴出タイミングが制御される。噴出部4は制御部8からの信号で、断続的にノズル6からインク14を噴出して、テストピース1の端面1aにドット状にインク14を付着して、識別用表示2をプリントする。各々のノズル6には独立して各々の噴出部4が連結されて、各々の噴出部4が独立して各々のノズル6からインク14を噴出して、テストピース1の端面1aに識別用表示2をプリントする。
【0034】
制御部8は、噴出部4を制御してノズル6からインク14を噴出する。制御部8は、メモリ9に記憶している識別用表示2のデータと、ノズル6の移動位置を検出する位置検出ロール11からの信号を演算して、噴出部4を制御して、ノズル6からインク14を噴出してテストピース1の端面1aに識別用表示2をプリントする。制御部8は、テストピース1の端面1aに、一定の膜厚の識別用表示2をプリントするように、メモリ9の識別用表示2のデータと位置検出ロール11からの信号を演算して、ノズル6からインク14を噴出する。
図5の拡大断面図は、テストピース1の端面1aに、インク14を多層に積層してプリントしている状態を示している。この図は、インク14に顔料インク14Aを使用して、顔料粒子15を多段に積層して識別用表示2をプリントしている。制御部8は、好ましくは、テストピース1の端面1aにプリントする識別用表示2の膜厚が5μm以下となるように、噴出部4を制御してノズル6からインク14を噴出する。識別用表示2の膜厚が薄すぎると、各々の表示項目を明確に表示できなくなるので、制御部8は、テストピース1の端面1aに、インク14の顔料粒子15が1段以上であって3段以下に積層するように顔料インク14Aを噴出して、識別用表示2をプリントする。
【0035】
図2の位置検出ロール11は、テストピース1の端面1aに沿って回転する一対のロール11Aを備える。一対のロール11Aは、ノズル6の先端とテストピース1の端面1aとを一定の隙間とするように、ノズル6の両側に配設している。この構造は、位置検出ロール11で、ノズル6の先端とテストピース1の端面1aとを一定の間隔に設定できる。ただ、ノズル6の先端とテストピース1の端面1aとの間隔を一定に保持するために、位置検出ロール11とは別に、専用のロールやガイドロールやスリップバー又はスリップロールをノズル6の両側に配置する構造とすることもできる。この構造は、位置検出ロール11を弾性的にテストピース1の端面1aに押圧する機構とすることができる。
【0036】
位置検出ロール11である一対のロール11Aは、互いに平行姿勢にケース10に連結された同一外径の弾性ロールで、ノズル6がテストピース1の端面1aに沿って移動すると、同じ回転数で回転する。この位置検出ロール11は、両方のロール11Aの回転を回転センサ12で検出し、あるいは一方のロール11Aの回転を回転センサ12で検出して、ノズル6の移動位置を検出する。両方のロール11Aの回転を回転センサ12で回転する位置検出ロール11は、より高い精度でノズル6の移動位置を検出できる。
図1及び
図2のインクジェットプリンタ100は、一対の位置検出ロール11の間にノズル6を配置してノズル6の移動位置を検出するが、位置検出ロール11は必ずしも一対のロール11Aを装備することなく、図示しないが、一つのロール11Aをノズル6の一方の側に配置する一つの位置検出ロール11とし、ノズル6の他方の側に別のガイドロールを配置することもできる。位置検出ロール11は、回転センサ12によりロール回転軸の回転角度を検出して、ノズル6の移動距離を検出する。
【0037】
通信インターフェース13は、可搬式のインクジェットプリンタ100をマイクロコンピュータなどの入力装置に接続して、入力装置から識別用表示2のデータをメモリ9に入力する。通信インターフェース13は、図示しないがコネクタを介して通信ラインで入力装置に接続は、あるいはブルートゥース(登録商標)などの無線回線で入力装置に接続して、識別用表示2のデータをメモリ9に入力できる。
【0038】
インクタンク5は、ノズル6から噴出するインク14を蓄えている。インク14は顔料インク14Aを使用して、テストピース1の端面1aに明瞭に識別用表示2をプリントできる。顔料インクは、粒径を0.1~0.5μmとする顔料粒子を水よりも低沸点であって、親水性の溶媒を含むバインダーに分散したものが使用できる。
【0039】
ノズル6から噴出されてテストピース1の端面1aに識別用表示2を付すインク14には顔料インク14Aを使用して、識別用表示2を明瞭にテストピース1の端面1aに表示できる。顔料インク14Aは、粒径を例えば0.1~0.5μm、好ましくは0.1~0.3μmとする微細な顔料粒子15を含むインク14を使用する。顔料インク14Aは、顔料粒子15にカーボンブラックを使用して、テストピース1の端面1aに明瞭に識別用表示2を付すことができる。さらに顔料インク14Aには、水よりも低沸点で親水性の溶媒を含むバインダーに顔料粒子15を分散しているインク14を使用して、テストピース1の端面1aに噴出されて速やかに乾燥できる。
【0040】
以上のインクジェットプリンタ100は、以下のようにしてテストピース1の端面1aに識別用表示2をプリントする。
最初に、通信インターフェース13を介してインクジェットプリンタ100をマイクロコンピュータなどの入力装置に接続して、入力装置から識別用表示2のデータをインクジェットプリンタ100のメモリ9に入力して記憶させる。その後、入力装置から分離して、インクジェットプリンタ100をテストピース1の端面1aに配置して、ノズル6の先端をテストピース1の端面1aに接近させる。位置検出ロール11でノズル6とテストピース1の端面1aとを一定の間隔に保持して、テストピース1の端面1aに沿って直線状に移動する。ノズル6がテストピース1の端面1aに沿って移動すると、位置検出ロール11がノズル6の移動位置を検出して、ノズル6の移動位置が制御部8に入力されると、制御部8はノズル6の移動位置とメモリ9に記憶する識別用表示2のデータを演算して、噴出部4が制御してノズル6からインク14をテストピース1の端面1aに噴出して識別用表示2をプリントする。制御部8は、ノズル6の移動位置を検出して、識別用表示2をテストピース1の端面1aにプリントするので、移動速度に関係なく、テストピース1の端面1aには一定の膜厚で複数の表示項目の識別用表示2がプリントされる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、コンクリートを円柱状に成形している多数のテストピースの端面に識別用表示を表示しながら高い精度で圧縮強度を測定する方法に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
100…インクジェットプリンタ
1…テストピース
1a…端面
2…識別用表示
4…噴出部
5…インクタンク
6…ノズル
7…入力部
8…制御部
9…メモリ
10…ケース
11…位置検出ロール
11A…ロール
12…回転センサ
13…通信インターフェース
14…インク
14A…顔料インク
15…顔料粒子
801…クリアシート