(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】安定な殺微生物剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20240425BHJP
A01N 43/80 20060101ALI20240425BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240425BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N43/80 102
A01P1/00
A01P3/00
(21)【出願番号】P 2021524847
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021718
(87)【国際公開番号】W WO2020246452
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019103461
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019148626
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180586
【氏名又は名称】株式会社ケミクレア
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴昌
(72)【発明者】
【氏名】野口 友昭
(72)【発明者】
【氏名】田口 直人
(72)【発明者】
【氏名】楮山 真吾
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0115765(US,A1)
【文献】特開平5-132404(JP,A)
【文献】特開2000-143413(JP,A)
【文献】特開平7-324007(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0070622(KR,A)
【文献】国際公開第99/15512(WO,A1)
【文献】特開平7-82108(JP,A)
【文献】特開2000-128716(JP,A)
【文献】特開平7-2605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、(B)2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、並びに(C)水及び親水性有機溶媒から選ばれる1種以上の溶剤を含有する殺微生物剤組成物。
【請求項2】
更に、(D)2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する請求項1記載の殺微生物剤組成物。
【請求項3】
更に、(E)1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、N-ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル、メチレンジチオシアナート、4,5-ジクロロ-3H-1,2-ジチオール-3-オン、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,4-ビス(ブロモアセトキシ)-2-ブテン、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)プロパン、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2-(メトキシカルボニルアミノ)-1H-ベンゾイミダゾール、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、2-メルカプトピリジンN-オキシド亜鉛、2-メルカプトピリジンN-オキシドナトリウム、グルタルアルデヒド、オルトフタルアルデヒド、ヒドラジン、α-クロロベンズアルデヒドオキシム、ジクロログリオキシム、1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリス(エタノール)、マレイミド、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、塩化ベンザルコニウム、硫酸アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、硫酸アンモニウムと次亜塩素酸カリウムの組み合わせ、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、臭化アンモニウムと次亜塩素酸カリウムの組み合わせ、安息香酸、サリチル酸、及びデヒドロ酢酸から選ばれる1種以上の成分を含有する請求項1又は2記載の殺微生物剤組成物。
【請求項4】
成分(A)を0.0005~15質量%、成分(B)を0.000005~1.5質量%、成分(C)を70~99.9995質量%含有する請求項1~3のいずれか1項記載の殺微生物剤組成物。
【請求項5】
成分(D)を0.0001~50質量%含有する請求項2~4のいずれか1項記載の殺微生物剤組成物。
【請求項6】
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを有効成分とする5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、並びに水及び親水性有機溶媒から選ばれる1種以上の溶剤を含有する組成物の安定化剤。
【請求項7】
前記組成物が、更に2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する請求項6記載の安定化剤。
【請求項8】
5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、並びに水及び親水性有機溶媒から選ばれる1種以上の溶剤を含有する組成物に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを添加することを特徴とする、当該組成物の安定化方法。
【請求項9】
前記組成物が、更に2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する請求項8記載の安定化方法。
【請求項10】
被殺微生物対象物に請求項1~5のいずれかに記載の殺微生物剤組成物を添加することを特徴とする殺微生物方法。
【請求項11】
添加量が、殺微生物剤組成物中の成分(A)の濃度が5~1000ppmとなる量である請求項10記載の殺微生物方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定な殺微生物剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤、樹脂エマルジョン、インキ、糊剤、塗料、紙、繊維、建材等の分散物製品、及びその製造工程の分散物系、クーリングタワー等においては、それの分散系や製品に含まれている有機化合物や無機物を栄養源にして、細菌、酵母、糸状菌、藻類等の微生物が増殖し、製品の品質や生産性の低下、また感染症の発生等が生じる。これらの問題に対する殺微生物剤として、イソチアゾロン系化合物が用いられている。これらのイソチアゾロン系化合物の中でも、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンは、広範囲の微生物に対する殺微生物作用を示すことから、広く用いられている。
【0003】
しかし、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(以下、CMIと記載する)は、単独では水に対して非常に不安定であり、水溶液製剤にすると分解するという問題があった。かかる問題を解決するため種々検討がなされている。例えば、プロピレングリコール等のアルコール、クロトン酸等の不飽和カルボニル化合物、ポリアミン、ハロアセトアミド等の有機化合物を添加する手段が知られている(特許文献1~6またはZONEN-FP:ケミクレア製)。ところが、これらの有機化合物の添加では、CMIの安定化効果は未だ十分とは言えなかった。
【0004】
一方、水溶媒内でのCMIの保存安定化を目的に硝酸マグネシウム及び塩化マグネシウムを配合した殺微生物剤(ZONEN-C:ケミクレア製、KATHON WT:DowDuPont製)が商業的に流通している。しかしながら、当該殺微生物剤を対象用途の一部であるラテックスエマルジョン及び各種樹脂エマルジョン相へ添加する場合、マグネシウム塩等の金属塩の存在の故に、エマルジョン相が破壊され分相や凝固が生じる問題(いわゆるエマルジョンショック)がある。また、硝酸イオンは微生物の栄養源となる事が良く知られており、水資源汚染防止の観点から、近年の水質汚濁防止法改正により、例えば硝酸マグネシウムの様な硝酸塩あるいはその混合物を使用・貯蔵等する施設の設置者に対し、地下浸透防止のための構造、設備及び使用の方法に関する基準の遵守、定期点検及びその結果の記録・保存の義務が生じたため、その使用が制限される可能性がある。更には、実用上充分なCMI安定化効果を得ることを目的に多量の硝酸マグネシウムを使用するため、製品の高コスト化をもたらしていた。従って、マグネシウム塩等の金属塩を含まない殺微生物剤の開発が必要とされている。
【0005】
また、CMIの保存安定化剤として4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシル、ジエチルヒドロキシアミン等を添加する手段も開示されている(特許文献7)。しかしながら、かかる安定化剤単独では、実用上充分なCMIの安定化効果は得られず、臭素酸塩をはじめとするハロゲン酸塩との組み合わせによってのみCMIの安定効果が得られる。当該文献には、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシルまたはジエチルヒドロキシアミン単独での、実用上充分なCMI安定化効果についての記載は無い。加えて、臭素酸は強い変異原性が認められる化学物質であり、その使用及び排出が制限される可能性がある。更には、製品へのハロゲン酸塩の配合は高コスト化をもたらすため、使用することは望ましくない。
この他のCMI保存安定化手段として、銅イオンを添加することが知られている(特許文献8)。しかしながら、銅イオンは環境汚染物質であるため水質汚濁防止法において3mg/L以下の排水基準が設けられており、やはりその使用が制限される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-56174号公報
【文献】特開昭61-212576号公報
【文献】特開平3-206085号公報
【文献】特開2008-156243号公報
【文献】特開2005-89348号公報
【文献】国際公開第2008/146436号
【文献】米国特許第6437020号明細書
【文献】特許第4942250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、人体及び環境への負荷が懸念される物質である硝酸マグネシウムや銅などの金属塩、及び臭素酸塩をはじめとするハロゲン酸及びその塩を含有しないにもかかわらず、CMI及び他の殺微生物剤による優れた殺微生物作用及び良好なCMIの保存安定性を有し、エマルジョンショックの原因物質を含有しないため広範な用途に適用可能であり、なおかつ安価な殺微生物剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、CMIに種々の成分を添加して、その安定性、殺微生物作用及びその使用性について検討してきたところ、溶剤として水及び/または親水性有機溶媒を用い、少量の2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを配合することにより、極めて優れたCMIの安定化効果が得られ、十分な殺微生物効果が得られ、更にエマルジョンショックを生じないことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔11〕を提供するものである。
【0010】
〔1〕(A)5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、(B)2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、並びに(C)水及び親水性有機溶媒から選ばれる1種以上の溶剤を含有する殺微生物剤組成物。
〔2〕更に、(D)2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する〔1〕記載の殺微生物剤組成物。
[3]更に、(E)1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、N-ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル、メチレンジチオシアナート、4,5-ジクロロ-3H-1,2-ジチオール-3-オン、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,4-ビス(ブロモアセトキシ)-2-ブテン、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)プロパン、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2-(メトキシカルボニルアミノ)-1H-ベンゾイミダゾール、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、2-メルカプトピリジンN-オキシド亜鉛、2-メルカプトピリジンN-オキシドナトリウム、グルタルアルデヒド、オルトフタルアルデヒド、ヒドラジン、α-クロロベンズアルデヒドオキシム、ジクロログリオキシム、1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリス(エタノール)、マレイミド、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、塩化ベンザルコニウム、硫酸アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、硫酸アンモニウムと次亜塩素酸カリウムの組み合わせ、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、臭化アンモニウムと次亜塩素酸カリウムの組み合わせ、安息香酸、サリチル酸、及びデヒドロ酢酸から選ばれる1種以上の成分を含有する〔1〕又は〔2〕記載の殺微生物剤組成物。
〔4〕成分(A)を0.0005~15質量%、成分(B)を0.000005~1.5質量%、成分(C)を70~99.9995質量%含有する〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の殺微生物剤組成物。
〔5〕成分(D)を0.0001~50質量%含有する〔2〕~[4〕のいずれかに記載の殺微生物剤組成物。
〔6〕2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを有効成分とする5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、並びに水及び親水性有機溶媒から選ばれる1種以上の溶剤を含有する組成物の安定化剤。
〔7〕前記組成物が、更に2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する〔6〕記載の安定化剤。
〔8〕5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、並びに水及び親水性有機溶媒から選ばれる1種以上の溶剤を含有する組成物に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを添加することを特徴とする、当該組成物の安定化方法。
〔9〕前記組成物が、更に2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有する〔8〕記載の安定化方法。
〔10〕被殺微生物対象物に〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の殺微生物剤組成物を添加することを特徴とする殺微生物方法。
〔11〕添加量が、殺微生物剤組成物中の成分(A)の濃度が5~1000ppmとなる量である〔10〕記載の殺微生物方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の殺微生物剤組成物は、有効成分であるCMIの溶液中での分解が抑制され、かつ優れた殺微生物作用を有する。安定化剤として用いた2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの添加量は少量でよいため、本発明の殺微生物剤組成物はエマルジョンショックの原因とならず、微生物の栄養源とならず、低コストかつ安定性の面でも問題がない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の殺微生物剤組成物は、(A)CMI、(B)2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、並びに(C)水及び親水性有機溶媒から選ばれる1種以上の溶剤を含有することを特徴とする。
【0013】
(A)CMI(成分(A))は、本発明殺微生物剤組成物における殺微生物剤としての有効成分であり、従来から工業用殺微生物剤として広く使用されている。
成分(A)の本発明殺微生物剤組成物中の含有量は、殺微生物効果及び安定性の観点から、0.0005~15質量%が好ましく、0.0007~13質量%がより好ましく、0.0008~12質量%が更に好ましい。
本発明殺微生物剤組成物は、そのまま使用してもよいが、水含有液に添加して使用することもある。このように、水で希釈して使用することがあるから、各成分の含有量は、使用時の濃度及び製剤中の濃度の両者を考慮した量である。
【0014】
本発明の殺微生物剤組成物には、成分(A)以外に、(D)2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有させるのが、より優れた殺微生物効果を得る点から好ましい。
成分(D)の本発明殺微生物剤組成物中の含有量は、殺微生物効果の観点から、0~50質量%が好ましく、0.0001~50質量%がより好ましく、0.0002~50質量%が更に好ましい。
【0015】
本発明の殺微生物剤組成物には、成分(A)及び(D)以外に、更に他の殺微生物剤(E)を含有させるのが、より優れた殺微生物効果を得る点から好ましい。そのような成分(E)としては、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、N-ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル、メチレンジチオシアナート、4,5-ジクロロ-3H-1,2-ジチオール-3-オン、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,4-ビス(ブロモアセトキシ)-2-ブテン、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)プロパン、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2-(メトキシカルボニルアミノ)-1H-ベンゾイミダゾール、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、2-メルカプトピリジンN-オキシド亜鉛、2-メルカプトピリジンN-オキシドナトリウム、グルタルアルデヒド、オルトフタルアルデヒド、ヒドラジン、α-クロロベンズアルデヒドオキシム、ジクロログリオキシム、1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリス(エタノール)、マレイミド、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、塩化ベンザルコニウム、硫酸アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、硫酸アンモニウムと次亜塩素酸カリウムの組み合わせ、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、臭化アンモニウムと次亜塩素酸カリウムの組み合わせ、安息香酸、サリチル酸、及びデヒドロ酢酸から選ばれる1種以上の成分が挙げられる。
これらの成分(E)は、従来殺微生物剤として用いられている成分であり、市販品を使用することができる。
また、これらの成分(E)は、成分(A)と併用することも知られているが、成分(A)と成分(E)と成分(C)を含有する組成物における成分(A)が、下記の成分(B)によって安定化することは知られていない。
【0016】
前記成分(E)のうち、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、N-ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル、メチレンジチオシアナート、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)エタン、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、2-メルカプトピリジンN-オキシド亜鉛、グルタルアルデヒド、ヒドラジン、ジクロログリオキシム、1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリス(エタノール)、マレイミド、塩化ベンザルコニウム、硫酸アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、及び安息香酸から選ばれる1種以上が好ましい。
【0017】
更に、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、N-ブチルカルバミン酸3-ヨード-2-プロピニル、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、グルタルアルデヒド、ヒドラジン、塩化ベンザルコニウム、硫酸アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、臭化アンモニウムと次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせ、及び安息香酸から選ばれる1種以上が好ましい。
【0018】
成分(E)の本発明殺微生物組成物中の含有量は、殺微生物作用を奏する量であればよく、成分(E)の種類により異なるが、0.0001~40質量%がより好ましく、0.0002~30質量%が更に好ましい。
【0019】
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(成分(B))は、本発明殺微生物剤組成物における成分(A)の安定化剤として作用する。ここで、安定化とは、成分(A)を含有する溶液を長期保存した時の成分(A)の分解を防止し、当該溶液の外観変化(沈殿の発生、着色)を防止することを言う。
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの安定化作用は、後記実施例に示すように、類似の化合物である4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンオキシルの作用に比べて特に優れている。
成分(B)2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルは、略名TEMPOとして広く知られており、市販品を入手することができる。
成分(B)の本発明殺微生物剤組成物中の含有量は、成分(A)の安定化効果の観点から、0.000005~1.5質量%が好ましく、0.000005~1.0質量%がより好ましく、0.00001~0.5質量%が更に好ましい。
【0020】
本発明の殺微生物剤組成物の溶媒(C)は、水及び親水性有機溶媒から選ばれる1種以上の溶剤である。
水を溶媒として用いる場合には、本発明の組成物は、水系における殺微生物剤として広く適用が可能となる。用いられる水としては、水道水、イオン変換水、蒸留水、工業用水等が挙げられる。
前述のように、成分(A)は単独では水に対して非常に不安定であることから、本発明の殺微生物剤組成物においては、成分(C)は水であるのが特に好ましい。
【0021】
親水性有機溶剤としてはポリオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールといったアルキレンオキシドグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール及び1,5-ペンタンジオールといったアルカンジオール、ならびにグリセロールといったアルカントリオール)、メチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルといったグリコールエーテル、酢酸及びプロピオン酸の(C1-C4)アルキルエステル(例えば、メチルアセテート、エチルアセテート、エチルプロピオネート及びブチルアセテート)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートといったアルキレンカーボネート、(C2-C4)アルコール(例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール及びtert-ブチルアルコール)、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロンといったケトン、ならびにジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの親水性有機溶媒のうち、ポリオール、グリコールエーテル、酢酸C1-C4アルキルエステル、プロピオン酸C1-C4エステル、アルキレンカーボネート、C2-C4アルコールなどが好ましく、成分(A)の安定化効果の点で、グリコール系溶剤がより好ましい。
グリコール系溶剤としては、グリコール、グリコールエーテルなどが挙げられるが、その中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、及びポリプロピレングリコールエーテルから選ばれる1種又は2種以上のグリコール系溶剤が好ましい。
【0022】
ポリエチレングリコールとしては、常温(5~35℃)で液体であるポリエチレングリコールが用いられ、平均分子量200~800のポリエチレングリコールが好ましい。
エチレングリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテルが挙げられ、具体的にはエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグリム)、エチレングリコールジエチルエーテル(エチルグリム)などが挙げられる。
ジエチレングリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテルが挙げられ、具体的にはジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルカルビトール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルカルビトール)などが挙げられる。
ポリエチレングリコールエーテルとしては、常温(5~35℃)で液体のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、常温(5~35℃)で液状のポリエチレングリコールジアルキルエーテルが挙げられ、具体的にはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)などが挙げられる。
【0023】
成分(C)の本発明殺微生物剤組成物中の含有量は、成分(A)の溶解性、安定性の観点から、70~99.9995質量%が好ましく、80~99.9995質量%がより好ましく、85~99.9995質量%が更に好ましい。
成分(C)としては、水と親水性有機溶媒をそれぞれ用いてもよく、これらを併用してもよい。水と親水性有機溶媒を併用する場合、その使用質量比は、0.1/99.9~99.9/0.1でもよく、1/99~99/1が好ましい。また、本発明の殺微生物剤組成物を、クーリングタワーなどの水系に使用する場合には、水と親水性有機溶媒の使用質量比(水/親水性有機溶媒)は、50/50~100/0が好ましく、60/40~100/0がより好ましく、80/20~100/0が更に好ましく、90/10~100/0がより更に好ましい。
【0024】
また、本発明の殺微生物剤組成物には、本発明の効果を妨げない限り、その利用形態や対象となる系に応じて、例えば塩化ナトリウムや塩化カリウム等の硝酸塩以外の塩、任意の安定剤、界面活性剤、緩衝剤等を更に含有しても良い。
【0025】
本発明殺微生物剤組成物のpHは、CMIの保存安定性の点から1.0~7.0が好ましく、1.5~5.0がより好ましく、2.0~4.0が更に好ましい。
【0026】
本発明殺微生物剤組成物は、前記成分を混合し、水及び/又は親水性有機溶媒中に溶解させることにより製造することができる。
【0027】
本発明の組成物は、限定はされないが、紙・パルプ工業における抄紙工程水やパルプスラリー、各種工業用の冷却水や洗浄水、並びにコーティングカラー、切削油、ラテックス類、合成樹脂のエマルジョン、デンプンスラリー、炭酸カルシウムスラリー、泥水ポリマー、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント類、防汚塗料、紙用塗工液、バラスト水等の各種工業製品の、防腐、殺菌または静菌用として好適に用いることができる。ここで、本発明殺微生物剤組成物の対象となる微生物としては、各種細菌、酵母、糸状菌、藻類が挙げられる。
【0028】
本発明の組成物の使用に際しての添加量は、微生物濃度や適用対象に応じて適宜決定することができるが、例えば、接着剤、樹脂エマルジョン、インキ、糊剤、塗料、紙、繊維及び建材等の諸工業分野において利用されている水系分散物での使用において、成分(A)濃度として5~1000ppm程度であり、より好ましくは20~500ppm程度である。
【実施例】
【0029】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら例によってなんら限定されるものではない。配合量は全て組成物全質量に基づく質量部で表す。また、%という記載は質量%である。
【0030】
(添加剤によるCMI安定化試験)
実施例1
添加剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを用いた表1記載の組成物を製造し、55℃に20日間保存して保存安定性を検討した。組成物は、添加剤と水を混合した後、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を添加して製造した。安定性の評価は、着色(黄色から褐色への着色)の有無、沈殿の析出を目視で行った。
実施例2
添加剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを用いた表1記載の組成物を製造し、55℃に20日間保存して保存安定性を検討した。組成物は、添加剤とジエチレングリコールを混合した後、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を添加して製造した。安定性の評価は、着色(黄色から褐色への着色)の有無、沈殿の析出を目視で行った。
実施例3
添加剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを用いた表1記載の組成物を製造し、55℃に20日間保存して保存安定性を検討した。組成物は、添加剤とジエチレングリコールモノメチルエーテルを混合した後、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を添加して製造した。安定性の評価は、着色(黄色から褐色への着色)の有無、沈殿の析出を目視で行った。
実施例4
添加剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを用いた表1記載の組成物を製造し、55℃に20日間保存して保存安定性を検討した。組成物は、添加剤とジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)を混合した後、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を添加して製造した。安定性の評価は、着色(黄色から褐色への着色)の有無、沈殿の析出を目視で行った。
実施例5
添加剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを用いた表1記載の組成物を製造し、55℃に20日間保存して保存安定性を検討した。組成物は、添加剤とポリエチレングリコール(平均分子量:300)を混合した後、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を添加して製造した。安定性の評価は、着色(黄色から褐色への着色)の有無、沈殿の析出を目視で行った。
【0031】
比較例1~8
添加剤として表に記載の化合物を使用する以外は、実施例1と同じ組成物を製造し、実施例1と同様の試験を行った。
比較例9~16
添加剤として表に記載の化合物を使用する以外は、実施例2と同じ組成物を製造し、実施例2と同様の試験を行った。実施例1~5及び比較例1~16の結果を表1に示す。この表で「-」は20日以上CMIの分解が観測されなかったことを示し、「+」は20日以内にCMIの分解が観測されたことを示す。
【0032】
【0033】
表1の結果より、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルによりCMIが安定化されることは明らかである。データは示していないが、実施例1~5の組成物は平均気温25℃の室温下、1年以上CMIが安定であった。
【0034】
(本発明品と市販品CMI配合剤との、殺菌効力の同等性確認)
某製紙工場より入手した白水(微細な繊維を含んだ水)に指定濃度になるように下記に示す薬剤を添加した。薬剤添加濃度は2.5ppm、5ppm、10ppm、20ppm、50ppmとした。白水への薬剤の所定時間の接触を行った。その後、試料を採取し培養法による生菌数測定を行った。菌数の減少が認められた場合を「-」、菌数の減少が認められなかった場合を「+」として評価した。使用培地はペトリフィルムACプレート(住友スリーエム社製)とし、培養温度は32℃とした。実施例6、実施例7、比較例17、比較例18、比較例19及び比較例20の結果を表2に示す。
【0035】
実施例6
本発明品:5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)を10.5%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を3.5%、CMIの安定化剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを0.2%含有する水溶液。
【0036】
実施例7
本発明品:5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)を10.5%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を3.5%、CMIの安定化剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを0.2%含有するジエチレングリコール溶液。
【0037】
比較例17
ケーソン-WT(DowDuPont製):5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を合計13.9%、CMIの安定化剤として硝酸マグネシウム及び塩化マグネシウムを合計28.0%含有する水溶液。
【0038】
比較例18
ZONEN-FP(ケミクレア製):5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)を11.2%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を1.3%、CMIの安定化剤としてプロピレングリコールを87.5%含有する溶液。
【0039】
比較例19
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルのみを0.2%含有する水溶液。
【0040】
比較例20
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルのみを0.2%含有するジエチレングリコール溶液。
【0041】
【0042】
(エマルジョンショック試験)
表2に示した実施例6、7の組成物及び比較例17を用いて合成高分子水系分散物スチレンブタジエン重合体ラテックスに対するエマルジョンショックの試験を行った。合成高分子水系分散物スチレンブタジエン重合体ラテックスまたはニトリルブタジエンゴムラテックス4種、約5mLをシャーレにとりわけ、そこに表3に示した実施例6または実施例7または比較例17の薬剤を4~5滴添加し、スプーンで十分にかき混ぜ、目視にて凝集の度合いを評価した。この表で「-」は全く凝集が起こらなかったことを示し、「+」は少量の凝集が発生したことを示し、「++」は激しく凝集したことを示す。
【0043】
【0044】
表1、表2及び表3より、本発明品は、CMIによる優れた殺微生物作用及び良好なCMIの保存安定性を有し、有機溶剤及び有害物質を含有せず、エマルジョンショックの原因とならないため、広範な用途に適用可能であることが明らかとなった。
【0045】
なお、本発明品の実用上、以下の様な処方での使用であっても薬剤の殺菌性、CMIの安定性に対する問題は何ら無い。
【0046】
(処方例1)
実施例6に示す組成物10部を、水90部を用いて希釈する。この場合のCMI濃度1.05%、MI濃度0.35%、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル濃度は0.02%である。
【0047】
(処方例2)
実施例6に示す組成物を50部と、市販のMI50%配合薬剤(ZONEN-MT、ケミクレア製)50部を混合する。この場合のCMI濃度5.25%、MI濃度26.75%、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル濃度は0.1%である。
【0048】
(処方例3)
実施例7に示す組成物90部を、プロピレングリコール10部を用いて希釈する。この場合のCMI濃度9.45%、MI濃度3.15%、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル濃度は0.18%である。
【0049】
(処方例4)
実施例6に示す組成物50部と、実施例7に示す組成物50部を混合する。この場合のCMI濃度10.5%、MI濃度3.5%、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル濃度は0.2%である。
【0050】
(成分E共存下での、成分Bによる成分Aの安定性確認試験)
成分A-1:前記実施例6の本発明品、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)を10.5%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を3.5%、CMIの安定化剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを0.2%含有する水溶液。
成分A-2:前記実施例7の本発明品、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)を10.5%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を3.5%、CMIの安定化剤として2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを0.2%含有するジエチレングリコール溶液。
成分B-1:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを0.1%含有する水溶液。
成分E-1:1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール若しくは2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾールから選ばれる1種を含む水溶液、又は硫酸アンモニウム及び次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液。
【0051】
実施例8
1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(東京化成社) 10部、ノニオン系界面活性剤 20部、イオン交換水 70部を混合して成分E-1とした。成分B-1 198部に対して成分A-1を1部加えた後で成分E-1を1部加え、実施例8とした。実施例8において、CMIの含有率は525ppm、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンの含有率は500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率は0.1%である。
【0052】
実施例9
成分E-1として4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(東京化成社) 10部、ノニオン系界面活性剤 20部、イオン交換水 70部とする以外は実施例8と同様にし、CMIの含有率525ppm、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンの含有率500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率0.1%の水溶液を得た。
【0053】
実施例10
成分E-1として2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ケミクレア社) 10部、イオン交換水 90部とする以外は実施例8と同様にし、CMIの含有率525ppm、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールの含有率500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率0.1%の水溶液を得た。
【0054】
実施例11
成分E-1として2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール(東京化成社) 10部、ノニオン系界面活性剤 20部、イオン交換水 70部とする以外は実施例8と同様にし、CMIの含有率525ppm、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾールの含有率500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率0.1%の水溶液を得た。
【0055】
実施例12
硫酸アンモニウム(関東化学社) 5部をイオン交換水 91部に溶解した後、有効塩素濃度5.0%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(関東化学社) 24部を添加し成分E-1とした(有効塩素濃度1.0%)。成分B-1 189部に対して成分A-1を1部加えた後で前述の成分E-1を10部加え、実施例12とした。実施例12において、CMIの含有率は525ppm、有効塩素の含有率は500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率はおよそ0.1%である。
【0056】
実施例13
成分A-1の代わりに成分A-2を用いる以外は実施例8と同じ組成物を製造し、実施例13とした。実施例13において、CMIの含有率は525ppm、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンの含有率は500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率は0.1%である。
【0057】
実施例14
成分A-1の代わりに成分A-2を用いる以外は実施例9と同じ組成物を製造し、実施例14とした。実施例14において、CMIの含有率525ppm、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンの含有率500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率は0.1%である。
【0058】
実施例15
成分A-1の代わりに成分A-2を用いる以外は実施例10と同じ組成物を製造し、実施例15とした。実施例15において、CMIの含有率525ppm、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールの含有率500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率は0.1%である。
【0059】
実施例16
成分A-1の代わりに成分A-2を用いる以外は実施例11と同じ組成物を製造し、実施例16とした。実施例16において、CMIの含有率525ppm、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾールの含有率500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率は0.1%である。
【0060】
実施例17
硫酸アンモニウム(関東化学社) 5部をイオン交換水 91部に溶解した後、有効塩素濃度5.0%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(関東化学社) 24部を添加し成分E-1とした(有効塩素濃度1.0%)。成分B-1 189部に対して成分A-2を1部加えた後で前述の成分E-1を10部加え、実施例17とした。実施例17において、CMIの含有率は525ppm、有効塩素の含有率は500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの含有率はおよそ0.1%である。
【0061】
比較例21
イオン交換水 189.9部にZONEN-FP(ケミクレア製):5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMI)を11.2%、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)を1.3%、CMIの安定化剤としてプロピレングリコールを87.5%含有する溶液 10部、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ケミクレア社) 0.1部を加え、比較例21とした。比較例21において、CMIの含有率は560ppm、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールの含有率は500ppm、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルは含有されていない。
実施例8~17の本発明組成物及び比較例21の組成物を55℃の温度条件にて40日間保存して保存安定性を評価した。実施例8~17及び比較例21の評価結果を表4に記載する。安定性の評価は、着色(黄色から褐色への着色)の有無、沈殿の析出を目視で行った。表4において、「-」はCMIの分解による組成物の着色及び沈殿が認められなかったことを示し、「+」はCMIの分解による組成物の着色または沈殿が認められたことを示す。
【0062】
【0063】
表4より、従来殺微生物剤として用いられている成分とCMIを含有する組成物において2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルによりCMIが安定化されることが明らかとなった。