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特許7478448音波による流体解析用センサ付きデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】音波による流体解析用センサ付きデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/02 20060101AFI20240425BHJP
   G01N 5/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G01N29/02 501
G01N5/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021540315
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 IB2020050151
(87)【国際公開番号】W WO2020144620
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】102019000000418
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521304357
【氏名又は名称】インタ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アゴスティーニ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】チェッキーニ,マルコ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/082266(WO,A1)
【文献】特開2005-121498(JP,A)
【文献】国際公開第2008/019694(WO,A2)
【文献】再公表特許第2008/102577(JP,A1)
【文献】特表2010-501067(JP,A)
【文献】特開平11-163662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 33/484
G01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体内の分析物を検出するための方法であって、前記方法が、
-少なくとも1つのSAWセンサ(110)を備えるセンサ付きデバイス(100)を事前配置するステップであって、前記SAWセンサ(110)が、
-少なくとも1つの圧電部分を備える外面(115’)を有する基板(115)と、
-前記外面(115’)の前記圧電部分に配置された少なくとも1つの放出インターデジタルトランスデューサ(111)であって、前記放出インターデジタルトランスデューサ(111)が、入力電気信号に応答して表面弾性波を放出するように配置された放出インターデジタル変換器(111)と、
-前記外面(115’)上に配置された少なくとも1つの反射器電極(112)であって、波を前記放出インターデジタルトランスデューサ(111)に向けて反射するように配置された反射器電極(112)と、を備える、ステップと、
前記基板(115)の前記外面(115’)上で、および/もしくは前記放出インターデジタルトランスデューサ(111)上で、および/もしくは前記反射器電極(112)上で、複数のプローブ分子を吸着するステップと、
-それぞれの周波数f(i=1、...、nである)を有するn個の入力電気信号を前記放出インターデジタルトランスデューサ(111)へ送信し、少なくとも1つの表面弾性波を、前記放出インターデジタルトランスデューサ(111)によってその後に伝送するステップと、
-前記音波を反射するステップであって、前記放出インターデジタルトランスデューサ(111)によって、前記表面弾性波が伝送され、前記表面弾性波の前記反射電極(112)によって、前記音波を反射するステップと、
-前記入力電気信号の前記n個の周波数fの間で、所定の閾値Pを超える電力を有する表面弾性波の発生に対応する少なくとも1つの共振周波数fを特定するステップと、
-前記流体を前記外面(115’)上に、および/もしくは、前記放出インターデジタル変換器(111)の上に、および/もしくは、前記反射器電極(112)上に搬送するステップと、
-前記外面(115’)によって、および/もしくは前記放出インターデジタル変換器(111)から、および/もしくは前記反射器電極(112)から、前記流体を除去するステップと、
-以前に特定された少なくとも1つの共振周波数fの値の可能性のある変化を検証するステップと、を含み、
前記センサ付きデバイス(100)がまた、前記外面(115’)の前記圧電部分に配置された補助インターデジタルトランスデューサ(120)を備えることを特徴とし、
体内に乱流を導入するための周波数fを有する弾性表面波を前記補助インターデジタルトランスデューサ(120)によって伝送するステップが提供されていることを特徴とし、
かつ、前記SAWセンサ(110)が、レイリー型弾性表面波を生成するように適合されたR-SAWセンサであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
複数のプローブ分子を吸着する前記ステップが、前記発光インターデジタル変換器(111)および/もしくは前記反射器電極(112)上で実行される、請求項1に記載の流体内の分析物を検出するための方法。
【請求項3】
記n個の入力電気信号の前記周波数fが800MHz超であり、一方で、前記補助インターデジタルトランスデューサ(120)によって放出される前記周波数fが800MHz未満である、請求項1に記載の流体内の分析物を検出するための方法。
【請求項4】
前記センサ付きデバイス(100)が、少なくとも2つのSAWセンサ(110)および制御ユニットを備え、ノイズを低減するための前記少なくとも2つのSAWセンサ(110)の前記反射器電極(112)によって反射された前記弾性表面波を比較するステップも提供され、前記共振周波数fをより高い精度で判定する、請求項1に記載の流体内の分析物を検出するための方法。
【請求項5】
前記センサ付きデバイス(100)が、前記分析物の検出が実行される場所に前記流体を最小容積で収容するために、前記流体を前記外面(115’)上の所定の経路に沿って搬送するように配置された少なくとも1つのマイクロ流体チャネル(130)を備える、請求項1に記載の流体内の分析物を検出するための方法。
【請求項6】
前記基板(115)の前記圧電部分がニオブ酸リチウム[LN]で作製されている、請求項1に記載の流体内の分析物を検出するための方法。
【請求項7】
少なくとも2つの共振周波数fを定義するステップが存在する、請求項1に記載の流体内の分析物を検出するための方法。
【請求項8】
流体内の分析物を検出するためのセンサ付きデバイス(100)であって、少なくとも1つのSAWセンサ(110)を備え、前記SAWセンサ(110)が、
-少なくとも1つの圧電部分を備える外面(115’)を有する基板(115)と、
-前記外面(115’)上に配置された放出インターデジタルトランスデューサ(111)であって、入力電気信号に応答して表面弾性波を放出するように配置された放出インターデジタルトランスデューサ(111)と、
-前記外面(115’)上に配置された少なくとも1つの反射器電極(112)であって、前記表面弾性波を前記放出インターデジタルトランスデューサ(111)に向けて反射するように配置された反射器電極(112)と、を備え、
前記流体内に乱流を導入するための周波数fを有する表面弾性波を放出するように配置された補助インターデジタルトランスデューサ(120)もまた、提供されていることを特徴とし、
かつ、前記SAWセンサ(110)が、レイリー型弾性表面波を生成するように適合されたR-SAWセンサであることを特徴とする、センサ付きデバイス(100)。
【請求項9】
ノイズを低減するために、少なくとも2つのSAWセンサ(110)の反射器電極(112)によって反射された前記表面弾性波を比較するように配置された、前記少なくとも2つのSAWセンサ(110)および制御ユニットが提供されている、請求項8に記載のセンサ付きデバイス(100)。
【請求項10】
前記分析物の検出が実行される場所に前記流体を最小容積で収容するために、前記外面(115’)上の所定の経路に沿って前記流体を搬送するように配置された、少なくとも1つのマイクロ流体チャネル(130)が提供されている、請求項8に記載のセンサ付きデバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
本発明は、流体解析および関心対象の特定の分析物の検出に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、ナノ構造センサによって生成された表面弾性波によるこれらの分析物の検出に関する。
【0003】
マイクロテクノロジおよびナノテクノロジの分野における過去数十年間に起きた急速な技術進歩による恩恵から、「マイクロ流体力学」と称される、つまり、マイクロメートル単位での生物学的および非生物学的流体の操作を可能にする技術は、非常に高い関心を持たれるようになっている。
【0004】
実際、好適なナノ構造センサを備えたチップによって、マイクロ流体レジームで分析を実行すると、限られた寸法で最小限のオペレーター介入を必要とする完全自動化されたシステムの形成が可能になり、より少量の試薬を使用することにより、高感度を維持しながら、さらに方法の効率が増加することから、実験室分析用の標準的機器と比較して大きな利点をもたらす。このことはすべて、コストの大幅な低減、方法自体の複雑さの軽減、および分析ツールの可搬性の増加に繋がっている。
【0005】
そのようなデバイスの一例は、2018年1月に発行されたM.Agostini、G、Greco、およびM.Snipersによる「A Rayleigh Surface Acoustic Wave(R-SAW)Resonator Biosensor based on Positive and Negative Reflectors with Sub-Nanomolar Detection limit」に開示される。この論文のバイオセンサ対象物は、圧電基板を含み、無線周波数を印加することによって、表面弾性波(SAW)であって、特にレイリー型(R-SAW)を生成することができる金属構造がこの上に生成される。
【0006】
彼の技術は、適時の診断の分野において、すなわち、病状の存在を早い段階で特定することを目的とする患者に対して実施される分析方法において特に高い関心になり得る。実際、患者の体液中の濃度が変化するのを見る分子は、より深刻な症状が観察される前であっても、内臓の損傷または機能不全の指標(「バイオマーカー」)になることがある。たとえば、特定のバイオマーカーのモニタリングのおかげで、乳がん、膵臓がん、前立腺がんなどのがんの発症を特定する可能性が知られている。これらバイオマーカーの濃度の変動は、特に疾患の初期段階では、多くの場合、複雑な実験室分析によってのみ検出可能である。このことから、近年、高感度、低コストで、高速で信頼性の高い測定を可能にする、使いやすく、ポータブルでタイムリーな診断システムの開発に関する学術的および産業的研究に大きな関心が寄せられている。それらの使用は、生物医学の分野に限定されない。実際、これらのデバイスは、関心対象の分析物を適切に特定する際に、環境モニタリングおよび食品中の汚染物質の検出にも使用され得る。
【0007】
しかしながら、特定の分析物を特定するための流体分析の分野では、使用される機器は、ほとんどが光学センサを利用しており、これらは小型チップに一体化するのが困難であるが、前述の音波バイオセンサ表面の用途は依然として先駆的な研究分野であり、この場合、効果的な方法論の事例は存在しない。
【0008】
US2006/049714は、血液などの物質中の分析物の濃度を監視するために使用される化学音響波センサについて説明している。この化学センサは、1つ以上のインターデジタルトランスデューサ、および圧電基板上に形成された選択的コーティングを備え得る。コーティングおよびインターデジタルトランスデューサは、電気信号を表面波に変換するために使用される。デバイスは、1つ以上の入力信号を受信するのに好適なアンテナを備え、このアンテナは音響デバイスを励起し、関心対象の分析物の濃度に関連する出力信号を生成する。
【0009】
しかしながら、このシステムは、流体に乱流を導入して流体自体を混合し、分析物と分子プローブの間に分子結合を作成する可能性を高め、分析物自体の検出効率を高める機能は備えていない。実際、US2006/049714では、SH-SAWタイプの音波のみが使用されており、前述の目的に必要な乱流を生成するには不十分である。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の特徴は、流体内の分析物を検出するための方法を提供することであり、この方法は、ナノ構造デバイスを利用して、全体的な寸法はかなり小さく、ポータビリティの点で明らかな利点を有する、既知の方法以上の精度および/または精密度の分析を実行することを可能にする。
【0011】
従来の方法と比較してコストを低減することを可能にする、そのような方法を提供することもまた、本発明の特徴である。
【0012】
本発明のさらなる特徴は、分析の再現性を促進することを可能にする、そのような方法を提供することである。
【0013】
これらおよび他の目的は、以下のステップを含む、流体内の分析物を検出するための方法によって達成されており、それらは、
-少なくとも1つのSAWセンサを備えるセンサ付きデバイスを事前配置するステップであって、前述の、もしくは各SAWセンサは、
-少なくとも1つの圧電部分を備える外面を有する基板と、
-外面の圧電部分に配置された少なくとも1つの放出インターデジタルトランスデューサであって、入力電気信号に応答して表面弾性波を放出するように配置された放出インターデジタルトランスデューサと、
-外面に配置された少なくとも1つの反射器電極であって、放出インターデジタルトランスデューサに向かって音波を反射するように配置されている反射器電極と、を備える、ステップと、
-基板の外面の上で、および/もしくは、前述の、もしくは各放出インターデジタルトランスデューサの上で、および/もしくは、前述の、もしくは各反射器電極上で複数のプローブ分子を吸着するステップと、
-放出インターデジタルトランスデューサへのそれぞれの周波数f(i=1、...、nである)を有するn個の入力電気信号を放出インターデジタルトランスデューサへ送信し、少なくとも1つの表面弾性波を、前述の、もしくは各放出インターデジタルトランスデューサによってその後に伝送するステップと、
-放出された前述の、もしくは各表面弾性波を、前述の、もしくは各反射器電極によって反射するステップと、
-入力電気信号のn個の周波数fの間で、所定の閾値Pを超える電力を有する弾性表面波の生成に対応する少なくとも1つの共振周波数fを特定するステップと、
-流体を外面の上に、および/もしくは、前述の、もしくは各放出インターデジタルトランスデューサの上に、および/もしくは前述の、もしくは各電極反射器の上に搬送するステップと、
-外面によって、および/もしくは、前述の、もしくは各放出インターデジタルトランスデューサによって、および/もしくは、前述の、もしくは各電極反射器によって、流体を除去するステップと、
-以前に特定された少なくとも1つの共振周波数fの値の可能性のある変化を検証するステップと、を含む。
【0014】
特に、特定された共振周波数、または特定された共振周波数のうち1つを選択し、流体の通過後に、その周波数の電気信号が以前に検出された電力を有する音響波を生成するかを評価することが可能である。
【0015】
代替的に、新規の複数の電気信号を放出し、新規の共振周波数(または複数の新規の周波数)を検出し、これらの検出された周波数を流体の通過前に特定された周波数と比較することが可能である。
【0016】
所望されない方法で共振周波数の位置に影響を及ぼすパラメータ(温度および圧力など)が変化していない場合、ならびに基準共振周波数が変化していない場合など、いずれの場合も、このことは、基板の外面の、またはトランスデューサの電極および反射器の電極の質量密度が変化していないことを意味し、したがって、分析した分析物、すなわちセンサに吸着された分子プローブと結合を形成することができる分子が、分析した流体中に存在しなかったことを意味する。
【0017】
逆に、共振周波数の変動は、外面の質量密度の変動の関数であり、したがって、分析される流体中に存在する分析物の濃度である。
【0018】
質量密度の変動は、分析物が分子プローブに結合した場合には、正となり得、分析物が分子プローブを切断した場合には、負となり得る。
【0019】
トランスデューサに結合された光学センサを利用するデバイスと比較して、この解決策は、完全に電気的で、チップ上に集積されており、より小さな設置面積で、より大きな使用上の実用性を有することを可能にし、デバイスを流体分析実験室に容易に輸送可能にする。
【0020】
有利に、複数のプローブ分子を吸着するステップは、前述の、もしくは各放出インターデジタルトランスデューサ上で、およびまたもしくは前述の、もしくは各電極反射器上で実行される。
【0021】
特に、センサ付きデバイスはまた、補助インターデジタルトランスデューサを備え、同時に、または流体を外面上に搬送するステップの上流に、流体内に乱流を導入するめの周波数fを有する弾性表面波を補助インターデジタルトランスデューサによって伝送するステップが提供される。
【0022】
このように方法では、分析物と分子プローブとの間に分子結合を作製する可能性が増加し、分析物自体の検出における効率が増加する。
【0023】
有利に、放出インターデジタルトランスデューサによって放出されたn個の弾性表面波の周波数fは、800MHz超であり、一方で、補助インターデジタルトランスデューサによって放出された周波数fは800MHz未満である。
【0024】
有利に、センサ付きデバイスは、少なくとも2つのSAWセンサ、および制御ユニットを備え、少なくとも2つのSAWセンサの反射器電極によって反射された弾性表面波をノイズ低減について比較し、より高い精度で前述の、もしくは各共振周波数fを判定するステップもまた提供される。
【0025】
単一のSAWセンサを使用するデバイスと比較して、この解決策は、応答信号のフィルタとして機能する差分測定により、分析の精度を高めることができる。
【0026】
特に、センサ付きデバイスは、分析が実行される場所で流体を最小容積で収容するために、流体を外面上の所定の経路に沿って搬送するために配置された、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを備える。
【0027】
この解決策により、従来技術のデバイスと比較して使用する流体の量を低減し、消費を低減し、表面/容積比を増加させ、結果として診断性能を増加させ、したがって、同じデバイスで実行される分析の数を大幅に増加させることを可能にする。
【0028】
有利に、少なくとも2つの共振周波数frを定義するステップが存在する。
【0029】
この解決策では、複数の信号を同時に受信することを可能にし、信号自体のノイズを低減する比較を行うことができるようになっている。
【0030】
本発明の別の態様によれば、流体内の分析物を検出するためのセンサ付きデバイスが特許請求されており、センサ付きデバイスは、少なくとも1つのSAWセンサを備え、前述の、もしくは各SAWセンサは、
-少なくとも1つの圧電部分を備える外面を有する基板と、
外面に配置された放出インターデジタルトランスデューサであって、入力電気信号に応答して表面弾性波を放出するように配置された放出インターデジタルトランスデューサと、
-外面に配置された少なくとも1つの反射器電極であって、放出インターデジタルトランスデューサに向かって音波を反射するように配置される反射器電極と、を備える。
【0031】
したがって、本発明は、チップ内に完全に一体化することができ、従来式機器に対して高感度の分析を実行することができ、それにより、前述の方法の実施を可能にするデバイスを提示する。
【0032】
有利に、流体内に乱流を導入するための周波数fを有する表面弾性波を放出するように配置された補助インターデジタルトランスデューサも提供され、ここで、放出インターデジタルトランスデューサによって放出されるn個の表面弾性波の周波数fは800MHz超であり、一方で、補助インターデジタルトランスデューサによって放出される周波数fは800HMz未満である。
【0033】
特に、ノイズを低減するために、少なくとも2つのSAWセンサの反射器電極によって反射された弾性表面波を比較するように配置された、少なくとも2つのSAWセンサおよび制御ユニットも提供される。
【0034】
特に、分析が実行される場所に流体を最小容積で収容するために、外面上の所定の経路に沿って流体を搬送するように配置された少なくとも1つのマイクロ流体チャネルも提供される。
【0035】
特に、前述の、もしくは各SAWセンサは、レイリー型の表面弾性波[レイリー表面弾性波]を生成するように適合されたR-SAWセンサである。
【0036】
有利に、基板の圧電部分はニオブ酸リチウム[LN]で形成される。
【0037】
この物質は、R-SAW弾性表面波を少なくとも1つの方向に伝送することを可能にする。
【0038】
特に、基板は「X回転の128°Yカット」をカットしている。
【0039】
この方法で、基板はR-SAW弾性表面波を少なくとも2方向に伝送することを可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明のさらなる特徴および/または利点は、添付の図面を参照して、例示的であるが限定的ではない、それらの例示的な実施形態の以下の説明により、より明らかになるであろう。
図1】本発明による、流体内の分析物を検出するための方法のフローシートを示す。
図2A】本発明による、流体内の分析物を検出するためのセンサ付きデバイスの1つの可能な例示的な実施形態を示す。
図2B】センサ付きデバイスの別の可能な例示的な実施形態を示す。
図3A-3F】基板の外面上のインターデジタルトランスデューサおよび反射器電極のいくつかの可能な配置を示す。
【0041】
好ましい例示的な実施形態の説明
図1のフローシート300を参照すると、本発明による、流体内の分析物を検出するための方法は、センサ付きデバイス100を事前配置する第1のステップを含み、その1つの可能な例示的実施形態が図2Aに示される[301]。
【0042】
特に、図2Aのセンサ付きデバイス100は、4つのSAWセンサ110を備え、それらの各々が、少なくとも1つの圧電部分を有する外面115’を有する基板115を順番に備える。図3A図3B図3C図3D図3Eおよび図3Fを均等に参照すると、各SAWセンサ110は、外面115’の圧電部分に配置された少なくとも1つの放出インターデジタルトランスデューサ111および少なくとも1つの反射器電極112を備える。特に、放出インターデジタルトランスデューサ111は、入力電気信号に応答して表面弾性波を放出するように適合されており、一方で、反射器電極112は、放出インターデジタルトランスデューサ111に向かって音波を反射するように適合されている。
【0043】
さらに、センサ付きデバイス100は、流体に乱流を導入するための周波数fを有する表面弾性波を放出するように配置された少なくとも1つの補助インターデジタルトランスデューサ120を備えることができる。
【0044】
図1のフローシート300を続けて参照すると、本方法は、次いで、基板115の外面115’上および/または放出インターデジタルトランスデューサ111のおよび反射器電極112の電極上で複数のプローブ分子を吸着するステップを提供する[302]。
【0045】
次に、それぞれの周波数f(i=1、...、nである)を有するn個の入力電気信号を、放出トランスデューサ111に送信し、続いて少なくとも1つの表面弾性波を伝送するステップが存在する[303]。
【0046】
次に、前述の、もしくは各放出された表面弾性波の、前述の、もしくは各反射器電極112によって反射するステップが存在する[304]。
【0047】
反射信号および/または伝送に基づいて、入力電気信号のn個の周波数fの間で、所定の閾値P を超える電力を有する表面弾性波の生成に対応する少なくとも1つの共振周波数fを特定することが可能である[305]。このような特定は、反射信号のスペクトルにおいて、特定の値よりも高いピークを特定することで、すなわち、音波が実際に生成されたピーク、したがって反射信号のエネルギーが低いかゼロであるピークを特定することでグラフィカルに実行され得る。
【0048】
次に、プローブ分子で、すなわち、基板115の外面115’上で、ならびに/または放出インターデジタルトランスデューサ111の電極上および反射器電極112の電極上に流体を搬送するステップが存在する[306]。
【0049】
図2Bを参照すると、好ましい例示的な実施形態では、デバイス100は、分析が実行される場所で流体を最小の容積で封じ込めるために、外面115’上の所定の経路に沿って流体を導くことによって搬送するステップを提供するように配置された少なくとも1つのマイクロ流体チャネル130を備える。マイクロ流体チャネル130はまた、そのようなSAWセンサ110の電極上での流体の配置および/または移動を可能にするために、各SAWセンサ110に分析チャンバ130’を備え得る。
【0050】
好ましい例示的な実施形態では、デバイス100は、流体に乱流を導入するための周波数fを有する表面弾性波を放出するように配置された少なくとも1つの補助インターデジタルトランスデューサ120を備える。
【0051】
次に、搬送された領域ごとに流体を除去するステップが存在する[307]。
【0052】
次に、以前に特定された少なくとも1つの共振周波数frの値の可能性のある変化を検証するステップが存在する[308]。
【0053】
前述の説明におけるいくつかの例示的な特定の実施形態は、概念的な観点に従って本発明を完全に明らかにし、その結果、他者が現状の知識を適用することにより、さらなる研究なしに、また本発明から離れることなしに、特定の例示的な実施形態を様々な用途において変更および/または適合することができるようにするものであり、したがって、そのような適合および変更は、特定の実施形態と等価とみなされるべきであることを意味する。本明細書に記載の異なる機能を実現するための手段および材料は、この理由で、本発明の分野から逸脱することなく、異なる性質を有し得る。本明細書で使用される語法または用語は説明のためのものであり、限定のためではないことを理解されたい。

図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F