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特許7478458水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/10 20060101AFI20240425BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240425BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240425BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240425BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20240425BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20240425BHJP
   E02D 3/12 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
C04B22/10
C04B22/06 Z
C04B22/08 A
C04B28/02
C09K17/02 P
C09K17/10 P
E02D3/12 102
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022073503
(22)【出願日】2022-04-27
(65)【公開番号】P2023162834
(43)【公開日】2023-11-09
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】519335440
【氏名又は名称】株式会社サン・エンジニア
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 誠心
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋
(72)【発明者】
【氏名】稲澤 知洋
(72)【発明者】
【氏名】角田 和明
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-290791(JP,A)
【文献】特開2006-002347(JP,A)
【文献】国際公開第2022/070761(WO,A1)
【文献】特開2021-169389(JP,A)
【文献】特開2021-095320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C09K 17/02
C09K 17/10
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と固化材との重量比が60%以上の粘性が低い水硬性固化材液に添加する水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤であって、
セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなり、
マグネシウムの金属塩が水酸化マグネシウムであり、セスキ炭酸ソーダと水酸化マグネシウムとの重量比が7:3から6:4の範囲であることを特徴とする水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤。
【請求項2】
水と固化材との重量比が60%以上の粘性が低い水硬性固化材液に添加する水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤であって、
セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなり、
マグネシウムの金属塩が炭酸マグネシウムであり、セスキ炭酸ソーダと炭酸マグネシウムとの重量比が9:1から6:4の範囲であることを特徴とする水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤。
【請求項3】
水と固化材との重量比が60%以上の粘性が低い水硬性固化材液に添加する水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤であって、
セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなり、
マグネシウムの金属塩がケイ酸マグネシウムであり、セスキ炭酸ソーダとケイ酸マグネシウムとの重量比が7:3から6:4の範囲であることを特徴とする水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性固化材液に混合されるブリーディング抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的軽い造物の基礎の一例として、水硬性固化剤液置換コラムを地中に築造する方法がある。水硬性固化材液とは、水と水和反応して固化するポルトランドセメントのように自硬性を有する粉体と水を主要構成要素として、例えば、セメントスラリー(水硬性固化材液)や、砂等からなる細骨材を含むモルタル、さらに、砂利や砕石等の粗骨材をも含む(セメント)コンクリート等からなる。水硬性固化材液はポンプ圧送可能な流動体であることが望ましい。
【0003】
粘性が高い水硬性固化材液を調製及び圧送する場合には粘性に応じた出力のミキサー及びポンプが必要となる。粘性を低く抑えるためには、水硬性固化材液に混ぜる水の比率を大きくすればよい。
【0004】
しかし、例えば、水と固化材との重量比が60%以上の粘性が低い水硬性固化材液であれば、出力が低いミキサー及びポンプで調製及び圧送可能となるが、水硬性固化材液が固化する際のブリーディング量が大きくなるという問題があった。
【0005】
ブリーディング量が大きくなると、出来形不足となる可能性があるので、水硬性固化材液を継ぎ足す必要がある。水硬性固化材液を継ぎ足して、さらにその継ぎ足した水硬性固化材液が固化する際のブリーディング量も確認しなければならない。そのため、施工効率が悪化することとなる。
【0006】
水硬性固化材液は、固化の際にブリーディングを抑制するため添加するブリーディング抑制剤として、特許文献1に示すような、重曹を使用したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-95320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ブリーディング抑制剤として重曹を混合した水硬性固化材液では、気温が15℃以下でのブリーディング抑制効果が著しく低下し、最終ブリーディング率が大きくなってしまうという問題がある。
【0009】
さらに、気温が15℃以下では、ブリーディングが終了するまでの時間が長くなってしまうという問題がある。日本では最も平均気温が高い沖縄でも、最も冷え込む12―1月は、15℃以下の最低気温が観測されている。
【0010】
そこで、本発明は、気温が15℃以下の施工環境であっても、従来のブリーディング抑制剤と比較して、高いブリーディング抑制効果を得られるとともに、ブリーディングが終了するまでの時間を短縮し、水硬性固化材液を出力が低いミキサー及びポンプで調製及び圧送可能なブリーディング抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1の水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤は、水と固化材との重量比が60%以上の粘性が低い水硬性固化材液に添加する水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤であって、セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなり、マグネシウムの金属塩が水酸化マグネシウムであり、セスキ炭酸ソーダと水酸化マグネシウムとの重量比が7:3から6:4の範囲である。
【0012】
請求項1のブリーディング抑制剤を混合した水硬性固化材液は、ブリーディング抑制剤に含まれるセスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩によって、気温が15℃以下でもブリーディング量を抑制することができる。
【0013】
請求項1のブリーディング抑制剤を混合した水硬性固化材液は、ブリーディング抑制剤に含まれるセスキ炭酸ソーダと水酸化マグネシウムとの重量比が7:3から6:4の範囲であることによって、気温が15℃以下でのブリーディング量をさらに抑制することができる。
【0014】
本発明の請求項2の水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤は、水と固化材との重量比が60%以上の粘性が低い水硬性固化材液に添加する水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤であって、セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなり、マグネシウムの金属塩が炭酸マグネシウムであり、セスキ炭酸ソーダと炭酸マグネシウムとの重量比が9:1から6:4の範囲である。
【0015】
請求項のブリーディング抑制剤を混合した水硬性固化材液は、ブリーディング抑制剤に含まれるセスキ炭酸ソーダと水酸化マグネシウムとの重量比が9:1から6:4の範囲であることによって、気温が15℃以下でのブリーディング量をさらに抑制することができる。
【0016】
本発明の請求項3の水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤は、水と固化材との重量比が60%以上の粘性が低い水硬性固化材液に添加する水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤であって、セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなり、マグネシウムの金属塩がケイ酸マグネシウムであり、セスキ炭酸ソーダとケイ酸マグネシウムとの重量比が7:3から6:4の範囲である。
【0017】
請求項のブリーディング抑制剤を混合した水硬性固化材液は、ブリーディング抑制剤に含まれるセスキ炭酸ソーダとケイ酸マグネシウムとの重量比が7:3から6:4であることによって、気温が15℃以下でのブリーディング量をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1からのいずれかの発明は、通年にわたり、従来の水硬性固化材液用のブリーディング抑制剤と比較して、高いブリーディング抑制効果を得られるとともに、ブリーディングが終了するまでの時間を短縮して施工の効率化を実現し、ブリーディング抑制剤を添加した水硬性固化材液は、出力が低いミキサー及びポンプで調製及び圧送できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】養生温度5℃における最終ブリーディング率と添加率のグラフである。
図2】養生温度15℃における最終ブリーディング率と添加率のグラフである。
図3】養生温度25℃における最終ブリーディング率と添加率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
水硬性固化材液は、地中に充填され固化後に置換柱体となる。
【0021】
ブリーディング抑制剤を水硬性固化材液に添加することによって、水硬性固化材液が固化する際のブリーディングを抑制することができる。
【0022】
水硬性固化材液の調製方法の一例は、以下の通りである。
【0023】
水とブリーディング抑制剤とを混合する。次いで、混合された水とブリーディング抑制剤とに、固化剤と骨材を投入し、さらに撹拌混合する。
【0024】
固化材は、ポルトランドセメント・高炉セメント・セメント系固化材のいずれかを主成分とする。
【0025】
骨材は、例えば、再生土を利用可能であるが、そのほか、コンクリートの骨材として使用できるものであれば適宜選択して利用可能である。
【0026】
本発明の一実施形態のブリーディング抑制剤は、セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩を含む。
【0027】
水硬性固化材液の固化の過程で、セスキ炭酸ソーダ及びマグネシウムの金属塩と、固化材との水和反応により、C-S-Hゲルが生成する。このC-S-Hゲルが吸水することによってブリーディングが抑制される。
【0028】
気温が低くなればなるほど、セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなるブリーディング抑制剤を使用した水硬性固化材液の粘性が高くなる。また、セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなるブリーディング抑制剤を使用すると、重曹単体又はセスキ炭酸ソーダ単体のブリーディング抑制剤よりも偽固結までの時間が短くなる。また、マグネシウムの金属塩は、水硬性固化材液が固化後に置換柱体の強度を上げる作用がある。
【0029】
気温が低い環境下でも、偽固結までの時間を短くすること、水硬性固化材液が固化後に置換柱体の強度を上げることを実現しつつ、水硬性固化材液を出力が低いミキサー及びポンプで調製及び圧送可能な粘性となるように、セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなるブリーディング抑制剤の使用量を調整することができる。
【0030】
1.1 固化実験1
セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩との理想的な重量比を確認するため行った固化実験1について、以下に説明する。
【0031】
1.2 試料
水硬性固化材液の試料に使用された材料は、水、固化材である普通ポルトランドセメント、及び、ブリーディング抑制剤である。水と固化材との重量比は、10:8である。固化材とブリーディング抑制剤の重量比が100:2である。ブリーディング抑制材でのセスキ炭酸ソーダと水酸化マグネシウムとの重量比、及び、セスキ炭酸ソーダと炭酸マグネシウムとの重量比を変えた水硬性固化材液の各試料を作製した。
【0032】
1.3 実験結果
水硬性固化材液の各試料について、気温15℃の条件下で固化試験を行った。水硬性固化材液の固化が進みブリーディング率が安定した時点での数値を最終ブリーディング率とした。また、水硬性固化材液が固化後の材齢7日の圧縮強度を測定した。
【0033】
作製した水硬性固化材液の各試料の測定結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
ブリーディング抑制材でのセスキ炭酸ソーダと水酸化マグネシウムとの重量比が、7:3~6:4の範囲で、最終ブリーディング率が1.0%以下、かつ、一軸圧縮強度6500kN/m以上を実現することができる。
【0036】
ブリーディング抑制材でのセスキ炭酸ソーダと炭酸マグネシウムとの重量比が、9:1~6:4の範囲で、最終ブリーディング率が2.0%以下、かつ、一軸圧縮強度6500kN/m以上を実現することができる。
【0037】
ブリーディング抑制材でのセスキ炭酸ソーダとケイ酸マグネシウムとの重量比が、7:3~6:4の範囲で、最終ブリーディング率が1.5%以下、かつ、一軸圧縮強度6500kN/m以上を実現することができる。
【0038】
ブリーディング抑制剤において、最終ブリーディング率を抑制する効果については、水酸化マグネシウムの方が、炭酸マグネシウムより優れた結果を示す傾向にある。一方、ブリーディング抑制剤において、一軸圧縮強度を向上する効果については、炭酸マグネシウムの方が、水酸化マグネシウムより優れた結果を示す傾向にある。
【0039】
水硬性固化材液が固化したあとに求められる条件に応じて、マグネシウムの金属塩の選択や、セスキ炭酸ソーダとの重量比を選択することができる。
【0040】
2.1 固化実験2
セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなるブリーディング抑制剤を使用した水硬性固化材液が、早期にブリーディングが抑制されていることを確認するため行った固化実験2について、以下に説明する。
【0041】
2.2 試料
水硬性固化材液の試料に使用された材料は、水、固化材である普通ポルトランドセメント、及び、ブリーディング抑制剤である。
【0042】
ブリーディング抑制剤として使用したセスキ炭酸ソーダと水酸化マグネシウムの重量比が7:3である。
【0043】
また、すべての試料において、固化材とブリーディング抑制剤の重量比が100:1である。
【0044】
使用する水の温度は15℃である。
【0045】
水硬性固化材液の各試料を、水と固化材との重量比を変えて作製した。比較のため、ブリーディング抑制剤を使用しないプレーンの試料と、従来のブリーディング抑制剤である重曹を使用した試料を作製する。
【0046】
2.3 実験結果
これらの水硬性固化材液の試料を、気温15℃の条件下で固化させながら、ブリーディング率を測定した。
【0047】
実験結果として、固化開始から1時間後、2時間後、3時間後、6時間後、24時間後の各試料のブリーディング率について表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表中のブリーディング率は、時間経過しても、変化しなくなった場合は、ブリーディングが認められなくなったことを示す。例えば、表中の「3時間後」以降のブリーディング率が変化しない場合、「2時間後」から「3時間後」の間でブリーディングが終息したこととなる。
【0050】
水と固化材との重量比が60:100の試料を比較すると、プレーン1はブリーディングが終息するまで2時間以上、重曹1はブリーディングが終息するまで1時間以上、セスキ・水酸化マグネシウム1は、ブリーディングが終息するまで1時間未満となっている。
【0051】
水と固化材との重量比が80:100の試料及び100:100の試料の比較でも、同様に、ブリーディングが終息するまでの時間は、セスキ・水酸化マグネシウムの試料が、プレーン及び重曹の試料よりも短くなっている。
【0052】
また、水と固化材との重量比が同じ試料で、ブリーディングが終息した時点でのブリーディング率を比較すると、セスキ・水酸化マグネシウムの試料が、プレーン及び重曹の試料よりも顕著に小さくなっている。
【0053】
いずれの試料も、固化材に対する水の重量比で大きくなるにしたがって、ブリーディングが終息するまでの時間は長くなり、ブリーディングが終息した時点でのブリーディング率は大きくなる傾向にある。しかし表2から明らかなように、セスキ・水酸化マグネシウムの試料は、ブリーディングが終息するまでの時間を最も短縮できることに加えて、ブリーディングが終息した時点でのブリーディング率を最も抑制できる。
【0054】
3.1 固化実験3
セスキ炭酸ソーダとマグネシウムの金属塩とからなるブリーディング抑制剤を使用した水硬性固化材液が、低温でのブリーディング抑制効果を確認するため行った固化実験3について、以下に説明する。
【0055】
3.2 試料
水硬性固化材液の試料に使用された材料は、水、固化材である普通ポルトランドセメント、及び、ブリーディング抑制剤である。
【0056】
ブリーディング抑制剤として使用したセスキ炭酸ソーダと水酸化マグネシウムの重量比が7:3である。
【0057】
ブリーディング抑制剤として使用したセスキ炭酸ソーダと炭酸マグネシウムの重量比が6:4である。
【0058】
ブリーディング抑制剤として使用したセスキ炭酸ソーダとケイ酸マグネシウムの重量比が7:3である。
【0059】
また、すべての試料において、水と固化材との重量比が100:100である。
【0060】
水硬性固化材液の各試料を、固化材とブリーディング抑制剤との重量比を変えて作製した。比較のため、ブリーディング抑制剤を使用しないプレーンの試料と、従来のブリーディング抑制剤である重曹を使用した試料と、ブリーディング抑制剤であるセスキ炭酸ソーダを使用した試料とを作製する。
【0061】
3.3 実験結果
これらの水硬性固化材液の試料を、養生温度5℃、15℃及び25℃の各条件下で固化させながら、ブリーディングが終息した時点での最終ブリーディング率を測定した。
【0062】
実験結果として、養生温度5℃、15℃及び25℃の各条件下での各試料の最終ブリーディング率について表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
また、重曹、セスキ炭酸ソーダ、セスキ炭酸ソーダ・水酸化マグネシウム、セスキ炭酸ソーダ・炭酸マグネシウム、及び、セスキ炭酸ソーダ・ケイ酸マグネシウムの試料について、養生温度ごとに、縦軸を最終ブリーディング率、横軸を添加率でグラフにしたものを、図1から図3に示す。
【0065】
表3に示すように、ブリーディング抑制剤を使用していないプレーンは、養生温度に関係なく最終ブリーディング率は30%程度である。これに対して、セスキ炭酸ソーダ・水酸化マグネシウム、セスキ炭酸ソーダ・炭酸マグネシウム、及び、セスキ炭酸ソーダ・ケイ酸マグネシウムは、すべての養生温度でブリーディング率が大幅に抑制されている。
【0066】
図1及び図2ブリーディング抑制剤として重曹を使用した試料は、養生温度5℃及び15℃において、プレーンに比べてブリーディングが抑制されている。しかし、同じ添加率で比較すると、セスキ炭酸ソーダ・水酸化マグネシウム、セスキ炭酸ソーダ・炭酸マグネシウム、及び、セスキ炭酸ソーダ・ケイ酸マグネシウムに比べて、最終ブリーディング率が大きくなっている。
【0067】
ブリーディング抑制剤としてセスキを使用した試料は、養生温度5℃及び15℃において、プレーン・重曹に比べてブリーディングが抑制されている。しかし、ブリーディング抑制剤としてセスキを使用した試料は、養生温度5℃及び15℃において、添加量1%に比べて、添加量2%及び3%の方が、最終ブリーディング率が高くなっている。同様に、ブリーディング抑制剤としてセスキを使用した試料は、養生温度25℃において、添加量2%に比べて、添加量3%の方が、最終ブリーディング率が高くなっている。
【0068】
これに対して、セスキ炭酸ソーダ・水酸化マグネシウム、セスキ炭酸ソーダ・炭酸マグネシウム、及び、セスキ炭酸ソーダ・ケイ酸マグネシウムは、養生温度5℃、15℃、25℃において、添加量が増えれば、最終ブリーディング率が小さくなる傾向がある。
【0069】
水硬性固化材液は、添加するブリーディング抑制剤が増えれば増えるほど、水硬性固化材液の粘性が高くなってしまう。水硬性固化材液は、粘性が高くなると、出力が低いミキサー及びポンプで調製及び圧送が困難となる。
【0070】
そのため、施工現場では、水と固化材との重量比で、水の比率を大きくして、水硬性固化材液の粘性を低く調整した上で、最終ブリーディング率を抑えるという必要がある。
【0071】
しかし、ブリーディング抑制剤としてセスキを使用した試料のように、特定の添加量で最終ブリーディング率の抑制がピークとなると、施工現場において、水硬性固化材液の固化における最終ブリーディング率の抑制と、出力が低いミキサー及びポンプで調整及び圧送可能とするための水硬性固化材液の粘性の調整とを両立することが難しくなる。
【0072】
これに対して、ブリーディング抑制剤として、セスキ炭酸ソーダ・水酸化マグネシウム、セスキ炭酸ソーダ・炭酸マグネシウム、及び、セスキ炭酸ソーダ・ケイ酸マグネシウムを使用した試料では、特定の添加量で最終ブリーディング率の抑制がピークとならず、添加量が増えれば増えるほど、水硬性固化材液の固化における最終ブリーディング率の抑制できる傾向となっている。したがって、施工現場において、水硬性固化材液の固化における最終ブリーディング率の抑制と、出力が低いミキサー及びポンプで調整及び圧送可能とするための水硬性固化材液の粘性の調整を容易に行うことができる。
【0073】
上記実施形態では、マグネシウムの金属塩が水酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムである場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等の他のマグネシウムの金属塩であってもよい。
図1
図2
図3