(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】水産加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/00 20160101AFI20240425BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20240425BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240425BHJP
【FI】
A23L17/00 A
A23L5/20
A23L5/00 H
(21)【出願番号】P 2023171934
(22)【出願日】2023-10-03
【審査請求日】2023-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523377313
【氏名又は名称】有限会社 原田水産
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】原田 静男
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特許第7278508(JP,B1)
【文献】特開昭63-148960(JP,A)
【文献】特開昭63-148961(JP,A)
【文献】特開平05-316936(JP,A)
【文献】特開2020-096536(JP,A)
【文献】特開2004-129534(JP,A)
【文献】特開平11-243918(JP,A)
【文献】特開2002-199862(JP,A)
【文献】爽やか[トマト レモン鍋]塩こうじ入り by Little Darling,cookpad [online],2017年10月25日,pp.1-2,インターネット,[2023年11月14日検索],URL:<https://cookpad.com/recipe/2395578>
【文献】赤魚の煮込み南仏風 by tomomitti,cookpad [online],2014年06月30日,pp.1-2,インターネット,[2023年11月14日検索],URL:<https://cookpad.com/recipe/2692070>
【文献】カレイの赤ワイン煮 by 料理人TK,cookpad [online],2015年07月28日,pp.1-2,インターネット,[2023年11月14日検索],URL:<https://cookpad.com/recipe/3319794>
【文献】金目鯛・白ワインで煮付け,おすすめレシピBOX グリーンコープのおすすめレシピサイト,2017年11月,pp.1-2,インターネット,[2023年11月14日検索],URL:<https://www.greencoop.or.jp/recipebox/1711-6/ 1/6 >
【文献】さわらのイタリア風煮魚 by HARUYAGI,cookpad [online],2013年05月13日,pp.1-2,インターネット,[2023年11月14日検索],URL:<https://cookpad.com/recipe/1081987>
【文献】料理用のワイン,税関ホームページ [online],2013年,pp.1,インターネット,[2023年11月15日検索],URL:<https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/bunruijirei/bunruijirei2103001.pdf>
【文献】ミツカン 発酵調味料 クッキングワインタイプ 1.8L,Amazon [online],2011年11月16日,pp.1-4,インターネット,[2023年11月15日検索],URL:<https://www.amazon.co.jp/dp/B0068CVVTI?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_14Y8BTPK2TBXCEX6BHRW>
【文献】ミツカン 発酵調味料 クッキング赤ワインタイプ 1.8L,Amazon [online],2011年11月16日,pp.1-5,インターネット,[2023年11月15日検索],URL:<https://www.amazon.co.jp/dp/B0068CVY8Q?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_6BYBWVWA3KHMVJZ3262J>
【文献】いかなごのくぎ煮 正当版,cookpad [online],2023年03月21日,pp.1-2,インターネット、[2024年3月15日検索]、URL:<https://cookpad.com/recipe/7480629>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
cookpad
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器に水と食塩とワインとを含む茹で汁を準備する工程(A1)と、
前記調理容器を加熱して前記茹で汁を煮沸する工程(B1)と、
煮沸した前記茹で汁が入った前記調理容器に水産物を投入する工程(C1)と、
前記茹で汁に前記水産物を浸漬させながら前記調理容器を加熱する工程(D1)と、
を含
み、
前記水産物は、内臓が未除去の魚介類であって、シラウオ、イカナゴ、イワシ、アサリ、シジミ、ホタテガイ及びエビから選ばれる1種であり、
前記工程(A1)における前記茹で汁に含まれる前記ワインの量は、前記水に対して、質量比で0.005~0.050である、水産加工品の製造方法。
【請求項2】
調理容器に
醤油と砂糖とワインとを含むタレを準備する工程(A2)と、
前記調理容器に水産物を投入する工程(C2)と、
前記タレに前記水産物を浸漬させながら前記調理容器を加熱する工程(D2)と、
を含
み、
前記水産物は、内臓が未除去の魚介類であって、シラウオ、イカナゴ、イワシ、アサリ、シジミ、ホタテガイ及びエビから選ばれる1種であり、
前記工程(A2)における前記タレに含まれる前記ワインの量は、前記タレの全量に対して、0.5質量%以上5質量%以下である、水産加工品の製造方法。
【請求項3】
前記ワインは、ワインの総質量に対して1.0質量%以上の食塩を含有する、請求項1又は請求項2に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項4】
前記工程(D1)において、前記調理容器に前記ワインをさらに投入する、請求項1に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A1)における前記茹で汁に含まれる前記ワインに対する、前記工程(D1)で投入されるワインの質量比は0.6~0.9である、請求項4に記載の水産加工品の
製造方法。
【請求項6】
前記工程(D2)において、前記調理容器に前記タレをさらに投入する、請求項2に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項7】
前記工程(A2)における前記タレに対する、前記工程(D2)で投入されるタレの質量比は0.01~0.10である、請求項
6に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項8】
前記工程(D1)における加熱は、前記茹で汁の温度が90℃以上において少なくとも3分間行われる、請求項1に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項9】
前記工程(D2)における加熱は、前記タレの温度が90℃以上で、20分以上30分以下行われる、請求項2に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項10】
前記工程(C1)において投入する前記水産物の量は、前記工程(A1)における前記茹で汁に含まれる前記水の総質量に対して、30質量%以下である、請求項1に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項11】
前記工程(C2)において投入する前記水産物の量は、前記工程(A2)で準備した前記タレの総質量に対して、70質量%以上120質量%以下である、請求項2に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項12】
前記工程(A1)における前記茹で汁に含まれる前記食塩の量は、前記水と前記食塩とを混合させた食塩水の食塩濃度において、1~8質量%である、請求項1に記載の水産加工品の製造方法。
【請求項13】
前記水産物が、シラウオ又はイカナゴである、請求項1又は請求項2に記載の水産加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類等の水産物は、他の生鮮食品に比べて保存性が低いため、加熱等の加工を施した水産加工品として流通、販売することがしばしばある。その中で、水産加工品の品質保持や、生臭さの低減等を目的として様々な処理方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、オリーブの葉を用いて生魚を加熱下で煮熟処理することによって生臭さを低減する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法を使用しても生臭さを低減する効果や保存性が十分とはいえず、消臭剤や防腐剤などの化学物質に依存せざるを得なかった。このような化学物質を使用せずに、水産物が有する生臭みや苦みを低減しつつ、さらに雑菌の増殖を抑制できる水産加工品の製造方法が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水産加工品の製造方法の一態様は、
調理容器に水と食塩とワインとを含む茹で汁を準備する工程(A1)と、
前記調理容器を加熱して前記茹で汁を煮沸する工程(B1)と、
煮沸した前記茹で汁が入った前記調理容器に水産物を投入する工程(C1)と、
前記茹で汁に前記水産物を浸漬させながら前記調理容器を加熱する工程(D1)と、
を含むものである。
【0007】
本発明に係る水産加工品の製造方法の一態様は、
調理容器に調味料とワインとを含むタレを準備する工程(A2)と、
前記調理容器に水産物を投入する工程(C2)と、
前記タレに前記水産物を浸漬させながら前記調理容器を加熱する工程(D2)と、
を含むものである。
【0008】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記ワインは、ワインの総質量に対して1.0質量%以上の食塩を含有してもよい。
【0009】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記工程(D1)において、前記調理容器に前記ワインをさらに投入してもよい。
【0010】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記工程(A1)における前記茹で汁に含まれる前記ワインに対する、前記工程(D1)で投入されるワインの質量比は0.6~0.9であってもよい。
【0011】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記工程(A1)における前記茹で汁に含まれる前記ワインの量は、前記水に対して、質量比で0.005~0.050であってもよい。
【0012】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記工程(D2)において、前記調理容器に前記タレをさらに投入してもよい。
【0013】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記工程(A2)における前記タレに対する、前記工程(D2)で投入されるタレの質量比は0.01~0.10であってもよい。
【0014】
前記工程(A2)における前記タレに含まれる前記ワインの量は、前記タレの全量に対して、0.5質量%以上5質量%以下であってもよい。
【0015】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記工程(D1)における加熱は、前記茹で汁の温度が90℃以上において少なくとも3分間行われてもよい。
【0016】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記水産物は、内臓が未除去の魚介類であってもよい。
【0017】
上記水産加工品の製造方法のいずれかの態様において、
前記水産物は、シラウオ(Salangichthys microdon)、イワシ、カツオ、サケ、サバ、アサリ、ホタテガイ、コンブ、及びワカメから選ばれる1種であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一の水産加工品の製造方法を示すフローチャート。
【
図2】第二の水産加工品の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0020】
1.第一の水産加工品の製造方法
図1は、第一の水産加工品の製造方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る第一の水産加工品の製造方法は、調理容器に水と食塩とワインとを含む茹で汁を準備する工程(A1)(ステップ101)と、調理容器を加熱して茹で汁を煮沸する工程(B1)(ステップ102)と、煮沸した茹で汁が入った調理容器に水産物を投入する工程(C1)(ステップ103)と、茹で汁に水産物を浸漬させながら調理容器を加熱する工程(D1)(ステップ104)と、を含むものである。
【0021】
本実施形態に係る水産加工品の製造方法によれば、ワインを含む茹で汁に原料である水産物を浸漬させながら茹でることによって、該水産物が有する生臭みや苦みを効果的に低減しつつ、長期に亘り雑菌の増殖を抑制することができる。これは、ワインに含まれるエタノール、ポリフェノール、酸などが加熱によって水産物に直接作用することで、該水産物の臭みを除去し、長期に亘り雑菌の増殖を抑制する効果が得られるものと推測される。また、水産加工品に良好な艶を付与できる。
【0022】
本発明において、「水産加工品」とは、魚介類、海藻類、淡水藻類等の水産物を加工した製品であって、食用となる製品をいう。水産加工品としては、例えば、釜揚げ等のボイル製品(ボイル後冷凍した製品も含む)、乾製品、塩蔵品、燻製品、節製品、佃煮等の調味加工品、練り製品などが挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る水産加工品の製造方法においては、水産加工品は、水産物のボイル製品であることが好ましい。水産加工品の中でも、茹でる加工により製造されるボイル製品は、特に雑菌が繁殖しやすい課題がある。これに対して、本実施形態に係る水産加工品の製造方法であれば、ボイル製品であっても雑菌の増殖を長期に亘り抑制することができる。
【0024】
1.1 工程(A1)
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、調理容器に水と食塩とワインとを含む茹で汁を準備する工程(A1)(ステップ101)を含む。
【0025】
調理容器は、水や水産物を内部に投入でき、加熱調理が行えるものであれば特に限定されない。調理容器は、底部と、胴部とを含むことが好ましい。底部は、調理容器の下部を構成するものであり、皿状又は球面上に形成されることが好ましい。胴部は、調理容器の側壁部を構成するものであり、底部に結合され全体が一体に形成されることが好ましい。調理容器としては、例えば、鍋、釜などが挙げられる。
【0026】
調理容器の材質としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅などが挙げられ、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0027】
調理容器の容積は、特に限定されないが、10L以上が好ましく、30L以上がより好ましく、50L以上がさらに好ましく、70L以上が特に好ましく、90L以上がより特に好ましい。
【0028】
茹で汁は、水を含む。水としては、例えば、浄水、蒸留水、イオン交換水等の精製水、水道水などが挙げられるが、これらに制限されず、食品製造用水として適合するものを用い得る。調理容器に投入する水の量は、5L以上が好ましく、20L以上がより好ましく、40L以上がさらに好ましく、50L以上が特に好ましく、60L以上がより特に好ましい。
【0029】
茹で汁は、食塩を含む。食塩としては、例えば、岩塩、天日塩、せんごう塩等の塩を用いることができる。食塩は、塩化ナトリウムを乾燥重量あたり95重量%以上含むことが好ましく、97重量%以上含むことがより好ましく、99重量%以上含むことが特に好ましい。調理容器に投入する食塩の量は、投入する水と混合させた食塩水の食塩濃度において、0.1~10質量%であることが好ましく、1~8質量%であることが好ましく、1.5~7質量%であることがより好ましく、2~5質量%であることが特に好ましい。食塩の量が上記範囲内であると、雑菌の増殖をより抑制できる場合がある。なお、食塩水とは、水に食塩を溶かした水溶液のことを指す。
【0030】
茹で汁は、ワインを含む。本発明における「ワイン」とは、ブドウ果実を主な原料として製造された発酵液体を含むものをいう。したがって、本発明における「ワイン」には、いわゆるワイン風味の発酵調味料も含む。ワインとしては、例えば、赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン等が挙げられ、発泡ワイン、オレンジワイン等であってもよい。
【0031】
ワインは、白ワインであることが好ましい。ワインが白ワインである場合には、水産加工品が着色されることを低減でき、自然な風合いに仕上げられる傾向にある。
【0032】
ワインには、ワインの総質量に対して1.0質量%以上の食塩を含有することが好ましく、1.5質量%以上の食塩を含有することがより好ましく、2.0質量%以上の食塩を含有することがさらに好ましく、3.0質量%以上の食塩を含有することが特に好ましく、5.0質量%以上の食塩を含有することがより特に好ましく、7.0質量%以上の食塩を含有することが殊更に好ましく、9.0質量%以上の食塩を含有することがより殊更に好ましい。ワインに上記範囲の食塩が含有される場合には、水産物の臭みや苦みをより効果的に除去でき、また水産物により良好な艶を付与できる傾向にある。
【0033】
工程(A1)における茹で汁に含まれるワインの量は、水に対して、質量比で0.005~0.050であることが好ましく、0.010~0.045であることがより好ましく、0.020~0.040であることがさらに好ましく、0.020~0.030であることが特に好ましい。ワインの量が上記範囲内であると、水産物が有する生臭みや苦みをより低減しつつ、さらに雑菌の増殖をより抑制できる傾向にある。また、水産加工品により良好な艶を付与できる傾向にある。
【0034】
茹で汁は、必要に応じて、調味料等のその他の成分を含有してもよい。その他の成分は、茹で汁に含まれる水の全量に対して、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下が特に好ましく、含有しないことがより特に好ましい。
【0035】
工程(A1)において、調理容器に水と食塩とワインとを投入する順序は特に制限されず、先に水と食塩を投入して後にワインを投入する順序、先にワインを投入して後に水と食塩を投入する順序、又は水と食塩とワインとを同時に投入する順序であってよい。また、先に水と食塩を投入して後にワインを投入する順序において、ワインを投入する前に水と食塩(食塩水)を加熱してもよく、この場合、水の温度は、30℃以上が好ましく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。
【0036】
1.2 工程(B1)
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、調理容器を加熱して茹で汁を煮沸する工程(B1)(ステップ102)を含む。
【0037】
調理容器を加熱する方式は、特に制限されないが、例えば、蒸気式、ガス式、電気式などが挙げられる。なお、「煮沸」とは、水などを加熱して沸騰させることをいう。
【0038】
茹で汁を煮沸する時間は、特に制限されず、10分以下であってよく、5分以下であってよく、1分以下であってよく、30秒以下であってもよい。
【0039】
1.3 工程(C1)
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、煮沸した前述の茹で汁が入った調理容器に水産物を投入する工程(C1)(ステップ103)を含む。
【0040】
水産物としては、例えば、シラウオ、アジ、イカナゴ、イワシ、カツオ、サケ、サバ、サメ、サンマ、タラ、フグ、ホッケ、マス等の魚類;サケの卵、マスの卵、タラの卵、チョウザメの卵、トビウオの卵、ニシンの卵、ボラの卵等の魚卵;アカガイ、アサリ、アワビ、カキ、サザエ、シジミ、ハマグリ、ホタテガイ等の貝類;イカ、タコ等の頭足類;ウニ、ナマコ等の棘皮動物;エビ、カニ等の甲殻類;アサクサノリ、アオサ、コンブ、テングサ、ヒジキ、モズク、ワカメ等の海藻類;カワノリ、スジアオノリ、ヒトエグサ等の淡水藻類等が例示される。
【0041】
本実施形態に係る水産加工品の製造方法に用いる水産物は、内臓が未除去の魚介類であってもよい。内臓が未除去であるものを原料とした水産加工品は、生臭みや苦みがより生じやすい。これに対して、本実施形態に係る水産加工品の製造方法によれば、このようなものであっても生臭みや苦みを効果的に低減でき、内臓が未除去の魚介類であってもそのまま食することができる。
【0042】
ここでいう「内臓」とは、消化器系、循環器系、呼吸器系の臓器や組織を含むが生殖器系は含まないものとする。内臓としては、例えば、心臓、肝臓、えら、大腸、小腸、胃、脾臓、腎臓、胆のう、膀胱、食道、浮袋及び膵臓などが挙げられる。「内臓が未除去」とは、心臓、肝臓、胆のう、えら、大腸、小腸及び胃の何れかが未除去であることが好ましく、心臓、肝臓、胆のう、えら、大腸、小腸及び胃が未除去であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態に係る水産加工品の製造方法に用いる水産物は、未加熱状態であることが好ましい。未加熱状態とは、例えば、漁獲時点から50℃以上で5分以上の加熱が行われていないことを指し、50℃以上で3分以上の加熱が行われていないことが好ましく、50℃以上で1分以上の加熱が行われていないことがより好ましく、加熱が行われていないことがさらに好ましい。
【0044】
本実施形態に係る水産加工品の製造方法に用いる水産物は、シラウオ(Salangichthys microdon)、イワシ、カツオ、サケ、サバ、アサリ、ホタテガイ、コンブ、及びワカメから選ばれる1種であることが好ましい。これらの、水産物は独特の臭みや苦みを有する場合がある。これに対して、本実施形態に係る水産加工品の製造方法によれば、このような水産物であっても、臭みや苦みを効果的に低減できる傾向にある。
【0045】
本実施形態に係る水産加工品の製造方法に用いる水産物は、特に、シラウオ(Salangichthys microdon)であることが好ましい。該シラウオは、汽水域又は淡水域に分布する種であり、海水域に分布する他の種とは異なる独特の臭み(泥臭さ)を有する場合がある。これに対して、本実施形態に係る水産加工品の製造方法によれば、該シラウオであっても、臭みや苦みを効果的に低減できる。
【0046】
工程(C1)において投入する水産物の量は、上述の工程(A1)における茹で汁に含まれる水の総質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、25質量%以下であることが特に好ましく、20質量%以下であることがより特に好ましい。
【0047】
1.4 工程(D1)
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、茹で汁に水産物を浸漬させながら調理容器を加熱する工程(D1)(ステップ104)を含む。
【0048】
調理容器を加熱する方式は、特に制限されないが、例えば、蒸気式、ガス式、電気式などが挙げられる。工程(D1)における加熱は、茹で汁の温度が90℃以上において少なくとも3分間行われることが好ましい。この場合において、茹で汁の温度は、90℃以上煮沸温度(℃)以下であることがより好ましく、92℃以上100℃以下であることがさらに好ましく、94℃以上99℃以下であることがよりさらに好ましく、96℃以上98℃以下であることが特に好ましい。また、加熱時間は、3分以上10分以下行われることがより好ましく、3分以上8分以下行われることがさらに好ましく、3分以上6分以下行われることが特に好ましく、4分以上6分以下行われることがより特に好ましい。工程(D1)における加熱が上記条件であると、生臭みや苦みをより低減し、水産物により良好な艶を付与でき、雑菌の増殖をより抑制できる場合がある。なお、「煮沸温度」とは、茹
で汁の沸騰時の温度をいう。
【0049】
工程(D1)において、調理容器にワインをさらに投入してもよい。この場合、水産物に対するワインの効果をより高めることができ、生臭みや苦みをより低減し、水産物により良好な艶を付与でき、雑菌の増殖をより抑制できる場合がある。
【0050】
工程(D1)においてワインを投入するタイミングは、例えば、工程(D1)における加熱の開始時から5分以内であることが好ましく、4分以内であることがより好ましく、3分以内であることがさらに好ましい。また、工程(D1)における加熱の開始時から1分経過後であることが好ましく、2分経過後であることがより好ましく、3分経過後であることがさらに好ましい。
【0051】
前述の工程(A1)における茹で汁に含まれるワインに対する、工程(D1)で投入されるワインの質量比は0.6~0.9であることが好ましく、0.7~0.9であることがより好ましく、0.75~0.85であることがさらに好ましい。該質量比が上記範囲内であると、生臭みや苦みをより低減し、雑菌の増殖をより抑制できる場合がある。また、水産加工品により良好な艶を付与できる傾向にある。
【0052】
1.5 その他の工程
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、前述の工程(A1)~工程(D1)以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、工程(D1)により加熱した水産物を茹で汁から取り出し送風等により冷却する工程、工程(D1)により加熱した水産物を冷凍する工程などが挙げられる。
【0053】
2.第二の水産加工品の製造方法
図2は、第二の水産加工品の製造方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る第二の水産加工品の製造方法は、調理容器に調味料とワインとを含むタレを準備する工程(A2)(ステップ201)と、前記調理容器に水産物を投入する工程(C2)(ステップ202)と、前記タレに前記水産物を浸漬させながら前記調理容器を加熱する工程(D2)(ステップ203)と、を含むものである。
【0054】
本実施形態に係る水産加工品の製造方法によれば、ワインを含むタレに原料である水産物を浸漬させながら煮ることによって、該水産物が有する生臭みや苦みを効果的に低減しつつ、長期に亘り雑菌の増殖を抑制することができる。これは、ワインに含まれるエタノール、ポリフェノール、酸などが加熱によって水産物に直接作用することで、該水産物の臭みを除去し、長期に亘り雑菌の増殖を抑制する効果が得られるものと推測される。また、水産加工品に良好な艶を付与できる。
【0055】
2.1 工程(A2)
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、調理容器に調味料とワインとを含むタレを準備する工程(A2)(ステップ201)を含む。
【0056】
調理容器については、上述の第一の水産加工品の製造方法と同様にできる。
【0057】
タレは、ワインを含む。ワインについては、上述の第一の水産加工品の製造方法と同様にできる。工程(A2)におけるタレに含まれるワインの量は、タレの全量に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。ワインの量が上記範囲内であると、水産物が有する生臭みや苦みをより低減しつつ、さらに雑菌の増殖をより抑制できる傾向に
ある。また、水産加工品により良好な艶を付与できる傾向にある。
【0058】
タレは、調味料を含む。調味料としては、例えば、醤油、砂糖、食塩、鰹等の出汁、みりん、酒等が挙げられる。なお、ワインは調味料に含まれないものとする。調味料は、醤油と、砂糖とを含有することが好ましい。
【0059】
タレは、必要に応じて、水等のその他の成分を含有してもよい。水等のその他の成分は、調味料の全量に対して、100質量%以下であってよく、50質量%以下であってよく、25質量%以下であってよく、10質量%以下であってよい。
【0060】
調理容器に準備するタレの量は、特に限定されないが、5L以上が好ましく、10L以上がより好ましく、15L以上がさらに好ましい。上限については、特に限定されないが、50L以下が好ましく、40L以下がより好ましく、30L以下がさらに好ましく、20L以下が特に好ましい。
【0061】
工程(A2)において、調理容器を加熱してもよい。該加熱は、タレを90℃以上の温度とすることが好ましく、95℃以上の温度とすることがより好ましく、煮沸下とすることがさらに好ましい。
【0062】
2.2 工程(C2)
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、調理容器に水産物を投入する工程(C2)(ステップ202)を含む。
【0063】
水産物については、上述の第一の水産加工品の製造方法と同様にできる。工程(C2)において投入する水産物の量は、特に限定されないが、上述の工程(A2)で準備したタレの総質量に対して、150質量%以下であることが好ましく、120質量%以下であることがより好ましく、100質量%以下であることがさらに好ましい。下限は、特に限定されないが、上述の工程(A2)で準備したタレの総質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0064】
別の一実施形態として、本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、調理容器に上述の第一の水産加工品の製造方法で得られた水産加工物を投入する工程を含むものであってよい。この場合、水産物が有する生臭みや苦みをより低減しつつ、雑菌の増殖をより抑制することができる傾向にある。また、水産加工品により良好な艶を付与できる傾向にある。
【0065】
工程(C2)において、必要に応じて、各種具材を投入してもよい。具材としては、特に限定されないが、例えば、大根、玉ネギ、長ネギ、人参、牛蒡、れんこん、生姜、ニンニク、ピーマン、トマト、コーン、タケノコ等の野菜類や、シソ、パセリ、セロリ、ニラ、ミツバ等の香辛野菜類や、椎茸、マッシュルーム、エノキ、シメジ等のキノコ類や、リンゴ、ナシ、キウイ、パイナップル、梅等の果実類や、ゴマ、ナッツ、クルミ、栗等の種実類や、豚、牛、鶏等の畜肉類や、ハム、ベーコン、ヤキブタ等の食肉加工品、豆腐、油揚げ、こんにゃく、粒状大豆たんぱく等の加工食品等が好ましく用いられる。
【0066】
2.3 工程(D2)
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、タレに水産物を浸漬させながら調理容器を加熱する工程(D2)(ステップ203)を含む。
【0067】
調理容器を加熱する方式は、特に制限されないが、例えば、蒸気式、ガス式、電気式などが挙げられる。工程(D2)における加熱は、製造する製品によって適宜調整される。例えば、タレの温度が90℃以上において少なくとも15分間行われることが好ましい。
この場合において、タレの温度は、90℃以上煮沸温度(℃)以下であることがより好ましく、92℃以上100℃以下であることがさらに好ましく、94℃以上99℃以下であることがよりさらに好ましく、96℃以上98℃以下であることが特に好ましい。また、加熱時間は、15分以上60分以下行われることがより好ましく、15分以上50分以下行われることがさらに好ましく、15分以上40分以下行われることが特に好ましく、20分以上30分以下行われることがより特に好ましい。工程(D2)における加熱が上記条件であると、生臭みや苦みをより低減し、より良好な艶を付与でき、雑菌の増殖をより抑制できる場合がある。なお、「煮沸温度」とは、タレの沸騰時の温度をいう。
【0068】
工程(D2)において、調理容器にタレをさらに投入してもよい。この場合、水産物に対するワインの効果をより高めることができ、生臭みや苦みをより低減し、水産物により良好な艶を付与でき、雑菌の増殖をより抑制できる場合がある。
【0069】
工程(D2)においてタレを投入するタイミングは、例えば、工程(D2)における加熱の終了時から10分前時点であることが好ましく、7分前時点であることがより好ましく、5分前時点であることがさらに好ましい。
【0070】
前述の工程(A2)におけるタレに対する、工程(D2)で投入されるタレの質量比は0.01~0.10であることが好ましく、0.03~0.09であることがより好ましく、0.05~0.07であることがさらに好ましく、0.06~0.07であることが特に好ましい。該質量比が上記範囲内であると、生臭みや苦みをより低減し、雑菌の増殖をより抑制できる場合がある。また、水産加工品により良好な艶を付与できる傾向にある。
【0071】
2.4 その他の工程
本実施形態に係る水産加工品の製造方法は、前述の工程(A2)、工程(C2)、工程(D2)以外のその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、工程(D2)により加熱した水産物をタレから取り出し送風等により冷却する工程などが挙げられる。
【0072】
3.実施例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。以下「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。
【0073】
3.1 水産加工品の製造
3.1.1 シラウオの釜揚げ
(実施例1)
内容積75Lの釜に水50Lと食塩1.5kgと、第1の白ワイン(メルシャン株式会社製「キュイソン」、アルコール分11%、食塩分2.0%)1.0Lとを投入し、茹で汁を準備した。次いで、茹で汁を沸騰させた。次いでシラウオ10kgを釜に投入し、茹で汁が96~98℃の温度範囲で3分間加熱した。その後、さらに第2の白ワイン(メルシャン株式会社製「キュイソン」、アルコール分11%、食塩分2.0%)0.8Lを釜に投入し、2分間強加熱を行った。加熱終了後、シラウオを釜から取り出し送風冷却を行い、実施例1の水産加工品を得た。
【0074】
(実施例2)
上記第1及び第2の白ワインを、食塩を含有しない白ワイン(メルシャン株式会社製、商品名「おいしい酸化防止剤無添加白ワイン」、アルコール分11%、食塩分0%)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の水産加工品を得た。
【0075】
(実施例3)
上記第2の白ワインの投入を行わず、茹で時間を総計で5分間とした以外は実施例1と同様にして、実施例3の水産加工品を得た。
【0076】
(比較例1)
上記第1及び第2の白ワインの投入を行わず(すなわち、水50Lと食塩1.5kgからなる茹で汁を使用)、茹で時間を総計で5分間とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の水産加工品を得た。
【0077】
3.1.2 シラウオの佃煮
(実施例4)
内容積75Lの釜に、醤油18Lと、砂糖20kgと、赤ワイン(メルシャン株式会社製「キュイソン」、アルコール分13%、食塩分2.2%)1.0Lとの比率で混合した第1のタレを16L投入した。次いで、タレを沸騰させた。次いでシラウオ15kgを釜に投入し、タレが90℃以上の温度で20分間加熱した。その後、さらに第2のタレとして上記同様のタレを1.0L投入し、5分間加熱した。加熱終了後、シラウオを釜から取り出し送風冷却を行い、実施例4の水産加工品を得た。
【0078】
(実施例5)
上記赤ワインを、食塩を含有しない赤ワイン(メルシャン株式会社製、商品名「おいしい酸化防止剤無添加赤ワイン」、アルコール分11.5%、食塩分0%)に変更した以外は実施例4と同様にして、実施例5の水産加工品を得た。
【0079】
(実施例6)
上記第2のタレの投入を行わず、加熱を総計で25分間とした以外は実施例4と同様にして、実施例6の水産加工品を得た。
【0080】
(比較例2)
上記赤ワインを含まないタレ(すなわち、醤油18Lと、砂糖20kgとの比率で混合したタレ)を用いたこと以外は実施例4と同様にして、比較例2の水産加工品を得た。
【0081】
3.2 評価試験
3.2.1 保存性評価
上記で得られた各実施例と各比較例に係る水産加工品を冷蔵にて保管後(釜揚げ品は4日、佃煮品は1カ月)、食品衛生検査指針に準じる標準寒天培地法により一般生菌数を検査し、以下の基準により保存性を評価した。
(判定基準)
〇:生菌数が300個/g以下
×:生菌数が300個/g超
【0082】
3.2.2 風味試験
上記で得られた各実施例と各比較例に係る水産加工品について、評価に習熟した6名のパネラーによる試食を行い、風味の官能評価を行った。なお、評価にあたっては、各パネラーが点数を付与し、6名のパネラーが付与した点数を平均して、各水産加工品の評価点数とした。
(評価基準)
0点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して臭みや苦みがある。
1点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して臭みや苦みが同等である。
2点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して臭みや苦みがやや少ない
。
3点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して臭みや苦みが少ない。
4点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して臭みや苦みがほとんどない。
5点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して臭みや苦みが全くない。(判定基準)
AA:4.0点超5.0点以下
A:3.0点超4.0点以下
B:2.0点超3.0点以下
C:1.0点超2.0点以下
D:0点以上1.0点以下
【0083】
3.2.3 外観試験
上記で得られた各実施例と各比較例に係る水産加工品について、評価に習熟した6名のパネラーによる目視観察行い、外観の官能評価を行った。なお、評価にあたっては、各パネラーが点数を付与し、6名のパネラーが付与した点数を平均して、各水産加工品の評価点数とした。
(評価基準)
0点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して艶が少ない。
1点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して艶が同等である。
2点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して艶が僅かにある。
3点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して艶がややある。
4点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して艶がある。
5点:ワイン投入なし品(比較例1又は比較例2)と比較して艶が非常にある。
(判定基準)
AA:4.0点以上5.0点以下
A:3.0点超4.0点未満
B:2.0点超3.0点未満
C:1.0点超2.0点未満
D:0点以上1.0点以下
【0084】
【0085】
【0086】
3.3 評価試験
評価結果を上表1、表2に示す。
【0087】
評価結果より、調理容器に水と食塩とワインとを含む茹で汁を準備する工程(A1)と、調理容器を加熱して茹で汁を煮沸する工程(B1)と、茹で汁が入った調理容器に水産物を投入する工程(C1)と、煮沸した茹で汁に水産物を浸漬させながら調理容器を加熱する工程(D1)と、を含む、実施例1~3に係る水産加工品の製造方法、及び、調理容器に調味料とワインとを含むタレを準備する工程(A2)と、前記調理容器に水産物を投入する工程(C2)と、前記タレに前記水産物を浸漬させながら前記調理容器を加熱する工程(D2)と、を含む、実施例4~6に係る水産加工品の製造方法では、水産物が有する生臭みや苦みを低減しつつ、雑菌の増殖を抑制することができた。また、いずれの水産加工品も口触りが滑らかで美味しく食べることができるものであった。
【0088】
これに対して、ワインを用いていない比較例1、2に係る水産加工品の製造方法では、生臭みや苦みの低減性(風味)、雑菌の増殖抑制性(保存性)、の何れかに劣った。
【0089】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成、を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【要約】
【課題】水産物が有する生臭みや苦みを低減しつつ、さらに雑菌の増殖を抑制できる水産加工品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る水産加工品の製造方法は、調理容器に水と食塩とワインとを含む茹で汁を準備する工程(A1)と、前記調理容器を加熱して前記茹で汁を煮沸する工程(B1)と、煮沸した前記茹で汁が入った前記調理容器に水産物を投入する工程(C1)と、前記茹で汁に前記水産物を浸漬させながら前記調理容器を加熱する工程(D1)と、を含む。
【選択図】
図1