(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】アルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/04 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
B29B17/04 ZAB
(21)【出願番号】P 2023523254
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2022047509
(87)【国際公開番号】W WO2023157467
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2022021572
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511166758
【氏名又は名称】東和ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚窪寛志
(72)【発明者】
【氏名】棚窪重博
(72)【発明者】
【氏名】小柳三穂
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-025734(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02682421(EP,A1)
【文献】特開2006-192748(JP,A)
【文献】特開2021-006604(JP,A)
【文献】特開2022-007899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/04
C08J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム箔の表面に接着層を介して押出成形フィルムを積層したアルミニウム箔複合フィルムを、固定刃と、ローターに装着された超
硬刃とによって粉砕してアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を形成する粉砕ステップと、
前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体が粉砕機スクリーンメッシュ部材を通過する粉砕機スクリーンメッシュ部材通過ステップと、
前記粉砕機スクリーンメッシュ部材を通過したアルミニウム箔複合フィルム粉砕体をアルミニウム箔の表面に接着層を介して押出成形フィルムを積層したまま加熱及び加圧してゲル化する混練押出ステップと、
前記混練押出ステップを経たゲル状のアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を、アルミニウム箔の表面に接着層を介して押出成形フィルムを積層したまま前記粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目寸法より小さい開き目寸法の混練押出機スクリーンメッシュ部材を通過させる混練押出機スクリーンメッシュ部材通過ステップと
を有することを特徴とするアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法。
【請求項2】
前記混練押出ステップの加熱が、複合フィルム粉砕体の剪断摩擦熱による加熱を含むことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目が、円形であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法。
【請求項4】
前記混練押出機スクリーンメッシュ部材の開き目が、正方形であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法。
【請求項5】
前記混練押出ステップにおいて、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に増量充填材を添加することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法。
【請求項6】
前記混練押出ステップにおいて、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に着色剤を添加することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法。
【請求項7】
前記混練押出ステップにおいて、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に抗菌剤を添加することを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法。
【請求項8】
前記押出成形フィルムが、二軸延伸処理をされたものであることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法。
【請求項9】
アルミニウム箔の表面に接着層を介して押出成形フィルムを積層したアルミニウム箔複合フィルムを、固定刃と、ローターに装着された超
硬刃とによって粉砕するアルミニウム箔複合フィルム粉砕機と、
前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕機がアルミニウム箔の表面に接着層を介して押出成形フィルムを積層したまま粉砕したアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を通過させる粉砕機スクリーンメッシュ部材と、
前記粉砕機スクリーンメッシュ部材を通過した前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体を、アルミニウム箔の表面に接着層を介して押出成形フィルムを積層したまま加熱及び加圧してゲル化する混練押出機と、
前記ゲル状のアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を通過させる混練押出機スクリーンメッシュ部材であって、前記粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目寸法より小さい開き目寸法の前記混練押出機スクリーンメッシュ部材と
を有することを特徴とするアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置。
【請求項10】
前記混練押出機の少なくとも一部の熱が、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体の剪断摩擦熱であることを特徴とする請求項
9に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置。
【請求項11】
前記粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目が、円形であることを特徴とする請求項
9に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置。
【請求項12】
前記混練押出機スクリーンメッシュ部材の開き目が、正方形であることを特徴とする請求項
9に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置。
【請求項13】
前記混練押出機が、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に成形材料充填材を添加する成形材料増量充填材添加部を有することを特徴とする請求項
9に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置。
【請求項14】
前記混練押出機が、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に着色剤を添加する着色剤添加部を有することを特徴とする請求項
9に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置。
【請求項15】
前記混練押出機が、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に抗菌剤を添加する抗菌剤添加部を有することを特徴とする請求項
9に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置。
【請求項16】
前記押出成形フィルムが、二軸延伸処理をされていることを特徴とする請求項
9に記載のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム箔に押出成形フィルムを積層したアルミニウム箔複合フィルムを粉砕して製造するアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム箔は、酸素遮蔽性、耐水性、耐油性、電波遮蔽性、電波反射性、赤外線反射性、紫外線反射性、遮光性、耐熱性等の性質・機能を有していることが知られている。アルミニウム蒸着フィルムやアルミニウム箔複合フィルムは、アルミニウムのこれらの性質・機能を活かして、食品、薬品の包装資材等として多年に亘り広く使用されている。
アルミニウム箔複合フィルムに使用されるアルミニウム箔の厚さは、JISによれば、6μ~0.2mmである。アルミニウム蒸着は、アルミニウム金属粒子が積層されており、アルミニウム蒸着層の厚さは、最大100nm、通常約40~50nmであると言われている。
【0003】
アルミニウムは、ボーキサイトを膨大な電力を使用して精錬することによって製造される。日本では、電力が高価なことにより前記精錬が全く行われなくなり、電力コストの低い日本以外の国で精錬された粗アルミニウムインゴットを輸入し、アルミニウム最終製品にする加工を行っているのが現状である。
【0004】
アルミニウム製品の製造に関する上述した現状に鑑み、日本では、不要になったアルミニウム含有製品、例えばアルミニウム箔複合フィルム製品の製造時の端材や前出しロス部分、アルミニウム箔複合フィルム包装材の印刷内容の変更等により不要になったアルミニウム箔含有製品等を、都市型資源として活用することが行われている。
【0005】
アルミニウムを含む資材を回収してアルミニウムをリサイクルする従来技術の一つは、アルミニウム蒸着層を有する複層フィルムを用いた成形用材料ペレットの製造方法である(例えば、特許文献1参照)。
該製造方法は、リサイクル材であるアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムの断裁品、粉砕品等に、アルミニウム蒸着層を有しない熱可塑性樹脂フィルム又は熱可塑性樹脂成形品の粉砕物を配合し、溶融混練押出機により溶融混練し、ペレットに成形する成形用材料ペレットの製造方法であって、前記アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムが、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム及びポリエステル系樹脂フィルムの中から選ばれる少なくとも2層からなり、かつ前記積層フィルムのいずれか1層がアルミニウム蒸着層を有すること、及び溶融混練押出機として、第一混練単軸押出機と、これに直列に配置した第二多軸混練押出機とを用いて溶融混練すること、を特徴とするアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムを用いた成形用材料ペレットの製造方法である。
【0006】
アルミニウムを含む包装資材をリサイクルする他の従来技術として、「低温焙焼による樹脂分の熱分解による燃料油化、残アルミニウム箔の回収」と称されるものが実施されている(例えば、非特許文献1参照)。この従来技術は、回収したアルミニウム箔複合フィルムを粉砕し、該粉砕体を加熱して、積層されていた樹脂成分を熱分解して低分子量化・液状化して粉砕アルミニウム箔と分離する。残った粉砕アルミニウム箔は、アルミニウム地金として使用される。分離された液状の樹脂成分は、燃料油化され、重油助燃剤(重油代替品)、還元剤代替品、あるいは石炭代替品等として使用される。
【0007】
上述した従来技術のアルミニウム蒸着層を有する積層フィルムを用いた成形用材料ペレットの製造方法においては、アルミニウム蒸着層がアルミニウム箔に比較して非常に薄いため、アルミニウム蒸着層を有する積層フィルムのアルミニウム含有率が非常に少ない。すなわち、一般的に、包装材、装飾品、建材等のアルミニウム箔複合フィルムに使用されているアルミニウム箔の厚さは、アルミニウム蒸着層の厚さの約100倍であり、アルミニウム蒸着層を有するもののリサイクルは、アルミニウムの回収効率が非常に低いという問題がある。
【0008】
従来技術の「低温焙焼による樹脂分の燃料油化、残アルミニウム箔の回収」は、アルミニウム蒸着層よりはるかに厚いアルミニウム箔を有するアルミニウム箔複合フィルムを全部使用するため、アルミニウムを効率良くリサイクルできる。
この方法「低温焙焼による樹脂分の燃料油化、残アルミ箔の回収」によるリサイクルは、アルミニウムのリサイクルについてのみに注目すると、新地金のアルミニウムだけを使用する場合と比べて、約3%のエネルギーしか消費しないという利点がある(非特許文献2参照)。
【0009】
一方、上述した「低温焙焼による樹脂分の燃料油化、残アルミ箔の回収」によれば、アルミ箔複合フィルムは一次的には100%リサイクルされることになる。しかし、リサイクルされた重油助燃剤(重油代替品)として燃料油化された積層樹脂成分は、その後燃焼されることによってCO2を排出するので、CO2の削減効果は極めて限定的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】平成23年3月に設けられた財団法人アルミニュウム協会のホームページに開示されたクリーンジャパンセンター「リサイクルによる低炭素社会形成の促進に関する調査研究報告書」(21頁)
【文献】社団法人日本アルミニウム協会発行「地球温暖化防止はアルミニウムが決めて」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、アルミニウム箔複合フィルムのリサイクルに関する上述した問題に鑑みてなされたものであって、アルミニウム箔複合フィルムを効率よく粉砕し、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体のアルミニウム箔成分も、積層した押出成形フィルム成分も、接着層成分も100%成形材料としてリサイクルできるアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一発明は、
アルミニウム箔の表面に接着層を介して押出成形フィルムを積層したアルミニウム箔複合フィルムを粉砕してアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を形成する粉砕ステップと、
前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体が粉砕機スクリーンメッシュ部材を通過する粉砕機スクリーンメッシュ部材通過ステップと、
前記粉砕機スクリーンメッシュ部材を通過したアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を加熱及び加圧してゲル化する混練押出ステップと、
前記混練押出ステップを経たゲル状のアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を、前記粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目寸法より小さい開き目寸法の混練押出機スクリーンメッシュ部材を通過させる混練押出機スクリーンメッシュ部材通過ステップと
を有することを特徴とするアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法である。
【0014】
第二発明は、
アルミニウム箔の表面に接着層を介して押出成形フィルムを積層したアルミニウム箔複合フィルムを粉砕するアルミニウム箔複合フィルム粉砕機と、
前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕機が粉砕したアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を通過させる粉砕機スクリーンメッシュ部材と、
前記粉砕機スクリーンメッシュ部材を通過した前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体を加熱及び加圧してゲル化する混練押出機と、
前記ゲル状のアルミニウム箔複合フィルム粉砕体を通過させる混練押出機スクリーンメッシュ部材であって、前記粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目寸法より小さい開き目寸法の前記混練押出機スクリーンメッシュ部材と
を有することを特徴とするアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造装置である。
【0015】
ここで、粉砕機スクリーンメッシュ部材及び混練押出機スクリーンメッシュ部材の開き目寸法とは、スクリーンメッシュ部材の開き目が円形である場合はその直径であり、正方形である場合はその内接円の直径である。
【0016】
第一発明の望ましい態様を以下に示す。
前記混練押出ステップの加熱が、複合フィルム粉砕体の剪断摩擦熱による加熱を含むことを特徴とする。
前記粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目が、円形であることを特徴とする。
前記混練押出機スクリーンメッシュ部材の開き目が、正方形であることを特徴とする。
前記混押出ステップにおいて、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に増量充填材を添加することを特徴とする。
前記混練押出ステップにおいて、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に着色剤を添加することを特徴とする。
前記混練押出ステップにおいて、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に抗菌剤を添加することを特徴とする。
前記押出成形フィルムが、一軸延伸処理をされたものであることを特徴とする。
前記押出成形フィルムが、二軸延伸処理をされたものであることを特徴とする。
【0017】
第二発明の望ましい態様を以下に示す。
前記混練押出機の少なくとも一部の熱が、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体の剪断摩擦熱であることを特徴とする。
前記粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目が、円形であることを特徴とする。
前記混練押出機スクリーンメッシュ部材の開き目が、正方形であることを特徴とする。
前記混練押出機が、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に成形材料増量充填材を添加する成形材料増量充填材添加部を有することを特徴とする。
前記混練押出機が、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に着色剤を添加する着色剤添加部を有することを特徴とする。
前記混練押出機が、前記アルミニウム箔複合フィルム粉砕体に抗菌剤を添加する抗菌剤添加部を有することを特徴とする。
前記押出成形フィルムが、一軸延伸処理をされていることを特徴とする。
前記押出成形フィルムが、二軸延伸処理をされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法及び装置によれば、アルミニウム箔複合フィルムを効率よく粉砕し、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体のアルミニウム箔成分も、積層した押出成形フィルム成分も、接着層成分も100%成形材料としてリサイクルできるアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法及び装置が提供される。
【0019】
以下に、本発明のアルミ箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造方法及び装置の構成及び効果を、さらに詳しく具体的に説明する。
アルミニウム箔複合フィルムのアルミニウム箔の回収を低コストで完全かつ効率的に行うことができる。アルミニウム箔複合フィルム粉砕体は、その混練剪断摩擦熱によって約230℃に昇温してゲル化される。従って、混練押出機内において無酸素状態下であって、アルミニウム箔が酸化アルミニウムに変化することなく、回収したアルミニウム箔全体をそのまま再利用可能な状態で完全にリサイクルすることができる。
ただし、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体の温度制御のために、加熱装置、冷却装置等をさらに設けることを妨げるものではない。
【0020】
アルミニウム箔複合フィルム粉砕体の寸法を大きくして、粉砕効率の向上やリサイクル成形材料の低コスト化を実現できる。
アルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料のアルミニウム箔粉砕体の個々の寸法が、アルミ箔複合フィルムリサイクル成形材料を使用する射出成形機金型のゲート寸法より大きいと、前記アルミニウム箔粉砕体が前記射出成形機金型のゲートを通過できず、ゲートでゲート詰まりが発生する。
【0021】
このゲート詰まりを防ぐため、常識的には、アルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料に含まれるアルミニウム箔粉砕体の寸法を前記ゲート寸法より小さくすることが必要であると考える。
一方、アルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料に含まれるアルミニウム箔粉砕体の寸法を所定寸法すなわち前記ゲート寸法以下にしようとすると、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体の寸法を、前記所定ゲート寸法以下にすることが必要であると考えられる。
【0022】
しかし、本発明者は、以下のことを実験で確認した。積層したアルミニウム箔複合フィルムのアルミニウム箔の表面に押出成形フィルムを貼着したまま粉砕すると、アルミニウム箔複合フィルムの粉砕体のアルミニウム箔は、平面状である。しかし、アルミニウム箔複合フィルムの粉砕体を、例えば230℃に加熱して混練すると、押出成形フィルムを構成していた合成樹脂は軟化してゲル化する。その結果、押出成形フィルムを構成していた合成樹脂は収縮変形し、接着層で貼着していたアルミニウム箔粉砕体も一緒に収縮させられて、縮径化する。
インターネットのWikipedia“アルミ箔”によると、装飾、建材、包装などもっとも一般的な用途では、純度99.3%以上のものが使われている。他方、日刊工業新聞社発行「アルミニウム大全」(第55頁第3行~第5行)によると、アルミニウム合金は、200℃以上では急速に引張強さが低下し、曲げ弾性率も低くなると解説され、他方合成樹脂はこの温度ではゲル化する。本発明は、前記混錬押出ステップにおいて、アルミニウム箔の曲げ弾性率の温度変化と、前記押出成形フィルムのゲル化による縮径化を賢く組み合わせている。
【0023】
この技術的現象は、本発明において、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体の寸法を決めるアルミニウム箔複合フィルム粉砕装置の粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目寸法を、射出成形機ゲート寸法すなわち混練押出機スクリーンメッシュの開き目寸法より大きくすることに活用された。
【0024】
このことがどの位産業上有利であるかということを知るために、本発明者は、アルミニウム箔複合フィルムを使用して、粉砕機の粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目寸法を変化させ、その時の粉砕量を測定した。
粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目寸法: 1.0mm 1.2mm 1.5mm 3.0mm
20秒間の粉砕量 : 0.31kg 0.38kg 0.56kg 3.08kg
1時間当たりの粉砕処理量比率 : 1.0 1.22 1.81 9.94
この実験結果により、「アルミニウム箔複合フィルム粉砕体の寸法を大きくすることは、粉砕効率を高め、粉砕電力・粉砕時間の削減をもたらす」ことが確認され、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体の寸法を決める粉砕機スクリーンメッシュ部材の開き目は、大きい程有利であるとの結論を得た。
【0025】
アルミニウム箔の表面から、積層されていた押出成形フィルムを剥離除去せず、アルミニウム箔に接着層を介して押出成形フィルムが貼着された状態で粉砕することによって、アルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料の製造過程において、アルミニウム箔と押出成形フィルムの強固な貼着を維持できるだけでなく、本発明のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料を使用した成形品の強度を高めることができる。
すなわち、本発明においては、アルミニウム箔複合フィルムを粉砕しても、接着層によってアルミニウム箔に押出成形フィルムが貼着したままであり、混練押出機においてアルミニウムと樹脂が完全に貼着し合った状態でゲル化し、ゲル化後成形材料ペレット等になっても剛性の高い成形品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、アルミニウム箔複合フィルムの断面図である。
【
図2】
図2は、実施例で使用するアルミニウム箔複合フィルムリサイクル装置のシステム構成図である。
【
図3】
図3は、実施例のアルミニウム箔複合フィルムの粉砕機の構成説明図である。
【
図5】
図5は、実施例の混練押出スクリーンメッシュ部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0027】
本発明のアルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料製造装置は、回収したアルミニウム箔複合フィルムを粉砕して、必要により他の成形品粉砕体、着色剤等他の材料をブレンドして、成形材料としてリサイクルする装置である。
【0028】
(リサイクル材料)
本発明の実施例でリサイクルするアルミニウム箔複合フィルムは、厚さ約100μのアルミニウム箔複合フィルムAAであり、上述したように、アルミニウム箔複合フィルム製品製造時の端材や前出しロス部分、アルミニウム箔複合フィルムの包装品の印刷内容の変更等により不要になったアルミニウム箔含有製品等である。
【0029】
アルミニウム箔複合フィルムAAは、
図1にその断面を示すように、厚さが約8μのアルミニウム箔10と、アルミニウム箔10の外面(
図1においては上面)に、接着層12と、接着層12を含めて厚さ約62μの、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、PET等の外面合成樹脂層14とを有する。外面合成樹脂層14には、商品名や充填物仕様等が印刷される。外面合成樹脂層14を形成する合成樹脂は、押出成形フィルムであり、一軸方向または2軸方向に延伸処理されたものも含む。
アルミニウム箔複合フィルムAAの内面(
図1においては下面)は、接着層13、及びポリエチレン、ポリプロピレン等のヒートシール可能な内面合成樹脂層16を有する。内は、低温でヒートシールが可能な樹脂層であって、相対向する部分が約180°Cに加熱されると両者が互いに溶着し、包装体がシールされる。
【0030】
(アルミニウム箔複合フィルムリサイクル成形材料製造装置)
アルミニウム箔複合フィルムを回収して、リサイクル成形材料を製造する装置すなわち成形材料製造装置100は、
図2に示すように、回収したアルミニウム箔複合フィルムAAの切断片を粉砕する粉砕部102と、粉砕部102から供給されたアルミニウム箔複合フィルム粉砕体CAに、必要により他の材料をブレンドして混錬し、リサイクル成形材料ペレットPAを形成する造粒部200とを有する。
【0031】
(粉砕部)
粉砕部102は、
図3に示すように、回収ホッパー103を備えた粉砕機104を、架台106に載置してなる。回収ホッパー103には、例えば一辺約25cmの四辺形に切断されたアルミニウム箔複合フィルムAAが投入される。
【0032】
(粉砕機)
粉砕機104は、
図3に示すように、ハウジング110の上部に、回収ホッパー103に連通した投入口113が設けられている。ハウジング110の中心付近には、回転軸線112を水平にしたローター114が配置されている。
ローター114の周囲には、複数の超硬刃116が等間隔をおいて取り付けられている。投入口113の下端部であって超硬刃116の回転移動領域の外側になる部分には、一対の固定刃118が装着されている。超硬刃116の回転移動領域の外側であって、投入口112及び固定刃118を除く部分には、超硬刃116の回転移動領域に沿って粉砕機スクリーンメッシュ部材120が配置されている。
粉砕機スクリーンメッシュ部材120は、強度を要するため、厚さ約3.0mmの鋼板に複数個の直径5.0mmの円孔すなわち粉砕排出口を複数個設けた打ち抜き部材であって、超硬刃116の回転移動領域の外周に沿って湾曲加工されている。直径2.0mmの円孔を複数個設けた打ち抜き部材も使用可能である。
【0033】
粉砕機104内では、ローター114の回転によって、投入されたアルミニウム箔複合フィルムAAが、超硬刃116と固定刃118によって繰り返し切断されて粉砕される。粉砕機104内で粉砕されたアルミニウム箔複合フィルム粉砕体は、粉砕スクリーンメッシュ部材120の開き目を通過できる寸法のものだけが排出される。排出されなかった大きい寸法のアルミニウム箔複合フィルム粉砕体は、粉砕スクリーンメッシュ部材120の開き目を通過できる寸法になるまで繰り返し超硬刃116と固定刃118によって切断・粉砕される。
粉砕機104としては、ホーライ株式会社製「BO-360」等が使用可能である。
打ち抜き部材である粉砕スクリーンメッシュ部材120は、金網部材に変更可能である。
【0034】
(造粒部)
造粒部200は、
図4に示すように、混練押出機202、混練押出機スクリーンメッシュ部材211、異物除去装置214、ダイ216,冷却装置204、引取カッター装置206、ペレット集荷装置208を順次配列してなる。
【0035】
(混練押出機)
混練押出機202は、
図4に示すように、シリンダー210と、シリンダー210の始端側に配置された減速機付き駆動モーター部217と、シリンダー210の始端側の上方に配置されて、粉砕部102から供給されるアルミニウム箔複合フィルム粉砕体CAを受け入れる混練押出機ホッパー212と、シリンダー210内において減速機付き駆動モーター部217によって回動するスクリュー部材213とを有する。
【0036】
混練押出機202内においては、混練押出機ホッパー212から供給されたアルミニウ度下で混練剪断され、圧縮されてゲル状化され、均質化する。ゲル化したアルミニウム箔複合フィルム粉砕体CAは、混練押出機202から、混練押出機スクリーンメッシュ部材211を通して押出される。
【0037】
混練押出機202には、必要に応じてアルミニウム箔複合フィルム粉砕体CAに酸化防止剤、例えばフェノール系やリン系の酸化防止剤、抗菌剤、着色材等を添加する添加部(図示せず)を設けることもできる。
【0038】
(混練押出機スクリーンメッシュ部材)
混練押出機スクリーンメッシュ部材211は、シリンダー210の終端に配置される。混練押出機スクリーンメッシュ部材211は、
図5及び
図6に示すように、金網部材であって、ステンレス製で直径0.05mmの直線状の金属線Mを、中心間隔2.0mmで平行に並べた縦線群MVを設け、また、縦線群MVと直交させて金属線Mを中心間隔2.0mmで平行に並べて配置した横線群MHを設けている。縦線群MVと横線群MHは、
図6に示すように、一段遅れで交互交差する織り方で編まれた平織であって、正方形の開き目215が形成されている。
金網部材である混練押出機スクリーンメッシュ部材211は、金属板の打ち抜き穴部材に変更可能である。
【0039】
(異物除去装置)
異物除去装置214は、金網部材である異物除去スクリーンメッシュ部材215を有していて、アルミニウム箔複合フィルム粉砕体CAの中に混入している不溶樹脂、砂、金属片等の異物を異物除去スクリーンメッシュ部材215によって除去する。
金網部材である異物除去スクリーンメッシュ部材215は、金属板の打ち抜き穴部材に変更可能である。
【0040】
(ダイ)
ダイ216は、一個または複数のノズル(図示せず)を有し、ストランド状の複合フィルムストランドSAを形成する。形成されるストランドSAの数は、ゲル化してノズルから押し出されるアルミニウム箔複合フィルム粉砕体CAの量によって変化し、1本~40本が例示される。
【0041】
(冷却装置)
冷却装置204は、
図4に示すように、水槽220を有する。水槽220内には、ダイ216から押し出されたストランド状の複合フィルムストランドSAを案内する複数のガイドローラー222―1~222―3が配置されている。第1ガイドローラー222-1~222―3は、複合フィルムストランドSAの進行方向に沿って移動可能に構成されていることが望ましい。第1ガイドローラー222-1は、水槽220の底部に設けられた第1ローラー支持体223―1によって回動自在に支持されている。第2ガイドローラー222-2は、水槽220の底部に設けられた第2ローラー支持体223-2によって回動自在に支持されている。第3ガイドローラー222-3は、水槽220の上部に設けられた第3ローラー支持体223-3によって回動自在に支持されている。
ダイ216から押し出されたストランド状の複合フィルムストランドSAは、ダイ216から押し出された直後から、後述する引取カッター装置206の引張力によって徐々に細くなった後、冷却水Wに入ってからは冷却固化する。
【0042】
(引取カッター装置)
引取カッター装置206は、公知のストランド切断装置(図示せず)によって、複合フィルムストランドSAを回転刃(図示せず)によって切断して、規定サイズのペレット状にし、リサイクル成形材料ペレットPAを形成する。
【0043】
(ペレット集荷装置)
ペレット集荷装置208は、引取カッター装置206から供給されたリサイクル成形材料ペレットPAを、計量して所定の容器に充填したり、袋詰めしたりする。
【0044】
(変形例1)
ダイ216の出口にプレス成形機を設置し、アルミニウム箔複合フィルム溶融体を計量し、直接プレス金型に投入して、圧縮成形するプレス成形材料として使用する。
【0045】
(変形例2)
混練機202の排出部にシート成形機を連結して、混練機202から供給されるアルミニウム箔複合フィルムの溶融体を、シート成形材料として使用する。
【符号の説明】
【0046】
AA アルミニウム箔複合フィルム
CA アルミニウム箔複合フィルム粉砕体
PA リサイクル成形材料ペレット
SA 複合フィルムストランド
MV 縦線群
MH 横線群
10 アルミニウム箔
12 接着層
14 外面合成樹脂層
16 内面合成樹脂層
100 成形材料製造装置
102 粉砕部
104 粉砕機
116 超硬刃
118 固定刃
120 粉砕機スクリーンメッシュ部材
200 造粒部
202 混練押出機
204 冷却装置
206 引取カッター装置
211 混練押出機スクリーンメッシュ部材