(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ロープ、ストランド、およびストランドの製造方法
(51)【国際特許分類】
D07B 1/02 20060101AFI20240425BHJP
D07B 1/22 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
D07B1/02
D07B1/22
(21)【出願番号】P 2024011734
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501066532
【氏名又は名称】大竹 幸衛
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】大竹 幸衛
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-24454(JP,U)
【文献】特開昭57-121681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0249361(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B、D02G、D02J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本以上のストランドが撚り合わされてなるロープ本体と、
前記ロープ本体の長さ方向の全域に亘って、かつ、前記ロープ本体の長さ方向と平行に、一本の前記ロープ本体を縫合する撚り止め糸と、
を備える、ロープ。
【請求項2】
前記ロープは断面が扁平形状である、
請求項1に記載のロープ。
【請求項3】
前記ロープ本体は、3本の前記ストランドが撚り合わされてなる、
請求項1または2に記載のロープ。
【請求項4】
前記ロープ本体は、並打ちロープに比べて10~50%長い撚りピッチで撚り合わされた、
請求項1または2に記載のロープ。
【請求項5】
海苔養殖に使用される網状シートと、前記網状シートを固定するための支柱とを連結するために使用される、
請求項1または2に記載のロープ。
【請求項6】
テント張りに使用される、
請求項1または2に記載のロープ。
【請求項7】
複数のヤーンが撚り合わされてなるストランド本体と、
前記ストランド本体の長さ方向の全域に亘って、かつ、前記ストランド本体の長さ方向と平行に、一本の前記ストランド本体を縫合する撚り止め糸と、
を備える、ストランド。
【請求項8】
請求項7に記載のストランドが複数本撚り合わされてなるロープ。
【請求項9】
請求項7のストランドの製造方法であって、
ヤーンを撚り合わせてストランド本体を形成する工程と、
前記ストランド本体を水溶性樹脂に浸漬し乾燥させる仮撚り止め工程と、
樹脂が乾燥したストランド本体にミシンで撚り止め糸を縫合する工程と、
を備える、ストランドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープおよびストランドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、海苔養殖において、特許文献1に示されるような、養殖用の網と、網を支柱に固定するための直径6mm程度のロープが使用されている。ロープを使用すると、一部ロープの口が開くなどの形崩れの問題があり、それを防ぐために撚りを硬くする必要があった。しかし、撚りを硬くすると、使い勝手や作業性が悪くなるという問題があった。
【0003】
このような問題により、海苔養殖において、ロープの代わりに組紐を使われることが多い。しかしながら、組紐は生産効率が悪く、コストも高いという問題があった。
【0004】
本出願人は、特許文献2のロープを提案した。特許文献2は、三つ撚りロープのストランド芯にモノフィラメント糸および強力糸を挿入したものである。
【0005】
しかしながら、特許文献2のロープも、さらなる生産効率の向上および作業性向上が求められている。
【0006】
その他、例えば、直径4~5mm程度の細いロープについて、テント張りなどの用途において、金剛打ちロープが使用されることが多い。金剛打ちロープは作業性はよいが生産性が低いという問題があり、生産効率の高いロープが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004―313158号公報
【文献】特開2020-133086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明では、生産効率が高く、形崩れがおこりにくく、作業性が高い、ロープまたはストランドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、3本以上のストランドが撚り合わされてなるロープ本体と、前記ロープ本体の長さ方向の全域に亘って、かつ、前記ロープ本体の長さ方向と平行に、一本の前記ロープ本体を縫合する撚り止め糸と、を備える、ロープである。
【0010】
ここで、「全域に亘って」とは、実質的に全域であればよく、具体的にはロープ全体の長さに対して、80~100%の部位が撚り止め糸により縫合されていることを示す。
【0011】
前記ロープは断面が扁平形状であることが好ましい。
【0012】
前記ロープ本体は、3本のストランドが撚り合わされてなることが好ましい。
【0013】
前記ロープ本体は、並打ちロープに比べて10~50%長い撚りピッチで撚り合わされていることが好ましい。
【0014】
前記ロープは、海苔養殖に使用される網状シートと、前記網状シートを固定するための支柱とを連結するために使用されることが好ましい。
【0015】
前記ロープは、テント張りに使用されることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、複数のヤーンが撚り合わされてなるストランド本体と、前記ストランド本体の長さ方向の全域に亘って、かつ、前記ストランド本体の長さ方向と平行に、一本の前記ストランド本体を縫合する撚り止め糸と、を備える、ストランドである。
【0017】
また、本発明は、前記ストランドが複数本撚り合わされてなるロープである。
【0018】
また、本発明は、前記ストランドの製造方法であって、ヤーンを撚り合わせてストランド本体を形成する工程と、ストランド本体を水溶性樹脂に浸漬し乾燥させる仮撚り止め工程と、樹脂が乾燥したストランド本体にミシンで撚り止め糸を縫合する工程と、を備える、ストランドの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、生産効率が高く、形崩れがおこりにくく、作業性が高い、ロープまたはストランドを提供できる。本発明のロープまたはストランドは生産効率が高いため、低いコストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係るロープを説明するための平面概略図である。
【
図4】第2実施形態に係るストランドを説明するための平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~3を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示される通り、ロープ1は、3本のストランド4が撚り合わされてなるロープ本体2と、ロープ本体2の長さ方向に沿ってロープ本体2を縫合し、ロープ本体2の撚りを固定するための撚り止め糸3を備える。
【0022】
ロープ本体2を構成する、各ストランド4は、
図3に示される通り、複数のマルチフィラメントの集合体であるヤーン51と紡績糸の集合体であるヤーン52が撚り合わされて形成される。ストランド4の平均直径は1~10mmであり、2~5mmが好ましい。ロープ1の平均直径は3~30mmであり、4~10mmが好ましい。
【0023】
図1に示される通り、撚り止め糸3は、ロープ本体2の長さ方向と平行に、一本のロープ本体2の平面視中央部を縫合する。撚り止め糸3は、一本のロープ本体2の上面から下面まで貫通している。撚り止め糸3の縫目は、ロープ1の上面および下面に存在するが、どちらにおいても、
図3の写真のように、ロープ1の表面に食い込み埋設されている。撚り止め糸3により、全てのストランド4が撚り合わされた状態で部分的に縫合され、撚りが固定される。縫合はミシン加工によって行われることが好ましい。縫合糸としては、上糸、下糸ともに、ポリエステル系繊維からなる糸を用いているが、これに限定するものではない。
【0024】
撚り止め糸3は、ロープ本体2の長さ方向全域に亘って縫合される。具体的にはロープ本体2の全体の長さに対して、80~100%の部位が撚り止め糸3により縫合されていることが好ましい。撚り止め糸3は、一本のロープ本体2に対して、直線縫いで縫合されている。撚り止め糸3の縫目は、確実に撚りを固定できるように、撚りピッチPを撚り数(本実施形態では3)で除する長さL(
図1参照)よりも短いことが好ましい。
【0025】
ロープ1は、
図2で示されるとおり、断面が扁平形状であることが好ましい。ロープ本体2を形成後、ミシン押さえにより押さえながら縫合することにより、扁平形状のロープ1が得られる。断面が略楕円とすると、ロープ1の長径D1は5~15mmが好ましく、ロープ1の短径D2は3~12mmが好ましい。長径D1の中央部に撚り止め糸3が存在する。ロープ1は断面が扁平形状であるため、手になじみやすく作業性がよい。
【0026】
ロープ1は、3つ撚りロープに限定されることなく、3本以上、8本以下の複数のストランドを撚り合わせて形成されるものであればよい。
【0027】
本発明によれば、ロープ1全体に亘って撚りがしっかりと固定され、硬撚りでなくても、使用時に形崩れがなく、また、作業性がよい。また、組紐と比較して、生産効率も高い。さらには、甘打ちロープであっても、使用時に型崩れのないロープが形成されるため、引張強度も高くでき、費用も安いというメリットがある。甘打ちロープは、ストランドが、並打ちロープに比べて10~50%長い撚りピッチで撚り合わされたものが好ましい。
【0028】
本実施形態においては、ストランド4の直径が2~5mm、撚りピッチPが20~30mmである。撚りピッチPが、ロープ1断面の短径D2の2.5倍以上が好ましく、3.0倍以上が好ましく、3.2倍以上がさらに好ましい。
【0029】
本発明のロープ1は、複数のヤーンを撚り合わせてストランド4を形成し、複数のストランド4を撚り合わせてロープ本体2を形成し、その後、ミシン加工により、ロープ本体2の長さ方向に平行に、撚り止め糸3を直線状に縫うことによって製造される。
【0030】
本発明によるロープ1は、例えば、支柱式の海苔養殖において用いられることが好ましい。支柱式の海苔養殖は水深の比較的浅いところで行われ、支柱を砂地に刺して、帯状の網を支柱に縛りつけるが、本願発明のロープ1は支柱と網を繋げるために用いられることができる。海苔養殖において用いられる場合は、ロープ1の平均直径(扁平の場合は長径D1と短径D2の平均値)は6~15mmが好ましい。本発明によるロープ1は、並打ちまたは甘打ちロープであるため、硬撚りのロープに比べて引張強度や作業性が高く、生産効率も高い。
【0031】
その他、本発明によるロープ1の別用途として、テント張りが挙げられる。例えば鉄のパイプとテントシートとの接合のためのロープ1である。テント張りに用いられる場合は、ロープ1の平均直径は3~5mmが好ましい。高い作業性を保ちながら、現在多く用いられる金剛打ちロープよりも、生産効率が高く、コストも低く経済的である。
【0032】
次に
図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、ストランド本体12に、撚り止め糸13が縫合されていることを特徴とする。
【0033】
ストランド11は、複数のヤーン14が撚り合わされてなるストランド本体12と、ストランド本体12の長さ方向に沿ってストランド本体12を縫合し、ストランド本体12の撚りを固定するための撚り止め糸13を備える。
【0034】
ストランド11は、単体で使用することもできるが、さらにストランド11を撚り合わせて、ロープとすることもできる。ストランド11の直径は、3~6mmが好ましく、4~5mmがさらに好ましい。ストランド11の断面が扁平形状であることも好ましい。ストランドは、並打ちに比べて10~50%長い撚りピッチで撚り合わされる甘撚りであることも好ましい。
【0035】
ストランド11は片撚り(ほとんどの場合は左撚り)であるため、キンクをおこしやすく、キンクがおこるとその部分の強度が低くなるが、撚り止め糸13の存在によりキンクがおこりにくくなり、形崩れが抑制され、作業性が向上される。
【0036】
ストランド本体12を縫合する撚り止め糸13は例えばポリエステル繊維からなり、撚り止め糸13はストランド本体12をミシン加工により縫合することが好ましい。ストランド本体12は片撚りのため、そのままミシンをかけることができないため、ミシンをかける前の仮撚り止めを目的として、水溶性樹脂の付着により固定されていることが好ましい。水溶性樹脂が使用中に水に浸かるなどによって溶けたとしても、撚り止め糸13により、確実に撚りが固定される。
【0037】
ストランド11の製造方法について説明する。まず、ヤーン14を撚り合わせて、ストランド本体12を形成する。その後、ストランド本体12を水溶性樹脂に浸漬し、その後、乾燥させて、撚りを固定させる(仮撚り止め工程)。その後、ストランド本体12に撚り止め糸13をミシンにより縫合する。
【0038】
本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれ、該技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることは無論である。
【符号の説明】
【0039】
1 :ロープ
2 :ロープ本体
3、13 :撚り止め糸
4、11 :ストランド
12 :ストランド本体
14 :ヤーン
D1 :長径
D2 :短径
P :撚りピッチ
【要約】
【課題】 生産効率が高く、形崩れがおこりにくく、作業性が高い、ロープまたはストランドを提供する。
【解決手段】 3本以上のストランド4が撚り合わされてなるロープ本体2と、ロープ本体2の長さ方向の全域に亘って、かつ、ロープ本体2の長さ方向と平行に、一本のロープ本体2を縫合する撚り止め糸3と、を備える、ロープ1である。ロープ1は断面が扁平形状であることが好ましい。また、ロープ本体2は、3本のストランド4が撚り合わされてなることが好ましい。
【選択図】
図1