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  • 特許-脂質活性代謝改善組成物 図1
  • 特許-脂質活性代謝改善組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】脂質活性代謝改善組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/175 20160101AFI20240425BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20240425BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20240425BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240425BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240425BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20240425BHJP
【FI】
A23L33/175
A61K31/195
A61K38/06
A61P3/06
A61P43/00 121
A23L33/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019082489
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020178581
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野 美玉
(72)【発明者】
【氏名】梶 直人
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-542191(JP,A)
【文献】特開2008-143811(JP,A)
【文献】特表2007-519678(JP,A)
【文献】世界のウェブアーカイブ|株式会社カプセル・マーケッツのウェブサイトに掲載された栄養機能食品「アディポリック(R)fairy」の商品情報に対する2016年 9月 6日付けアーカイブ,2016年,[オンライン],[検索日:2023年 1月31日],URL,http://web.archive.org/web/20160906073812/http://www.capsule-m.com/shop/adipolic_fairy.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A61K,A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII),
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルニチン及びグルタチオンを含有する脂肪細胞への分化抑制組成物であって、グルタチオン1重量部に対して、カルニチンが0.25~0.5重量部である、組成物。
【請求項2】
請求項1の組成物を含む脂肪細胞への分化抑制用食品。
【請求項3】
請求項1の組成物を含む脂肪細胞への分化抑制用医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタチオン及びカルニチンを有効成分として含むに脂質代謝改善剤及び改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に肥満化傾向が顕著になってきており、体脂肪の蓄積という肥満だけでなく、高脂血症、高血圧、糖尿病など生活習慣病の増加が問題となっている。
【0003】
体脂肪の減少には、運動、特に有酸素運動が体脂肪の減少に有効とされているが、移動手段の発達、生活環境の改善などで歩行などの軽度な運動が減少し、有酸素運動により、体脂肪を減少させることが難しくなっている。
【0004】
L-カルニチンは、細胞内のミトコンドリア内膜に存在するアミノ酸の一つで、脂肪酸をミトコンドリア内に取り込み脂肪酸をエネルギーとして使用する際に使用され、脂質代謝に関与していることが知られているため、体脂肪減少効果があるとされているが、その効果は充分ではないと記載されている(特許文献1)。そこで、カルニチンと他の成分との組み合わせが検討されている。例えば、特許文献2では、大豆レシチンなどの主成分として含まれるホスファチジルコリンを、脱アシル化することにより得られるグリセロホスホコリンと組み合わせ、特許文献3では、ハス胚芽の抽出物との組み合わせを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-097159号公報
【文献】特開2016-74617号公報
【文献】特開2005-097159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、体脂肪減少や肥満防止などの効果を有する組成物を得ることを課題として、鋭意検討を行った。その結果、カルニチン及びグルタチオンを配合した組成物は、脂肪細胞への分化を抑制することを見出し本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カルニチン及びグルタチオンを含有することを特徴とする脂肪細胞への分化抑制し、脂質蓄積抑制する組成物、または脂質代謝を活性化する組成物である。
(1)カルニチン及びグルタチオンを含有する脂質蓄積抑制用組成物
(2)カルニチン及びグルタチオンを含有する脂質代謝活性用組成物
(3)前記(1)または(2)の組成物を含む食品
(4)前記(1)または(2)の組成物を含む医薬品
【発明の効果】
【0008】
本発明は、脂肪細胞への分化を抑制するため、体内脂肪の蓄積を抑制する効果などを有する食品等に利用することができる。グルタチオンは、酵母等に含まれているため、酵母や酵母エキス含有のグルタチオンとカルニチンとを組み合わせると酵母や酵母エキスが持つ栄養成分も同時に摂取でき、代謝改善機能を有する調味料などの食品として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における脂肪細胞への分化抑制結果
図2】実施例における脂肪細胞への分化抑制結果
【発明を実施するための形態】
【0010】
カルニチンは、L-カルニチン、D-カルニチン、及びDL-カルニチンなどがある。これらのカルニチンは、塩または誘導体の形態のものを用いることもできる。また、カルニチンの塩も利用することができる。カルニチンの塩は、例えばカルニチンナトリウム塩、カルニチンカリウム塩、カルニチン酒石酸塩およびカルニチンフマル酸塩等がある(以下カルニチン類)。本発明はこれらのカルニチン類を単独または複数組み合わせて利用することができる。特にL-カルニチンは、体内にリジン及びメチオニンから合成される。さらに、牛肉、豚肉等の畜肉に含まれており、安全性の高い物質であるため、特に好ましく利用することができる。
【0011】
本発明でいうグルタチオンは、還元型グルタチオン、酸化型グルタチオンあるいはこれらの混合物をいう。還元型グルタチオンとはγ - L - G l u - L - C y s - G l y の構造を有するトリペプチドを表し、酸化型グルタチオンとは還元型グルタチオン2 分子がS S 結合により結合したものである。グルタチオンの形態は、グルタチオンを有効成分として含有するものであれば何でもよい。
【0012】
グルタチオンは、例えば酵母や酵母エキス中に含むものを利用しても良い。グルタチオンを多く酵母としては、「ハイチオンコーボMG」(興人ライフサイエンス社製)、グルタチオンを含有する酵母エキスとしては「ハイチオンエキスYH」(興人ライフサイエンス社製)などがある。
【0013】
本願では、前段のグルタチオン及びカルニチン類を有効成分として含むものを投与する。投与の方法は、特に限定されず、経口投与、静脈内、腹膜内もしくは皮下投与等の非経口投与をあげることができる。具体的には、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の非経口剤のいずれでもよい。
【0014】
本発明の投与量は、前述の機能が発現する量でれば特に限定されない。ヒトに投与する場合の投与量および投与回数は、投与形態、被投与者の年齢、体重等により異なるが、成人一日当り、グルタチオンを通常は5 0 m g ~30g 、好ましくは100 mg~1 0g、特に好ましくは200 mg~3g、カルニチンは5mg~5g 、好ましくは50mg~2g、より好ましくは100mg~1000mg、となるように一日一回乃至数回投与する。
【0015】
投与間隔は、特に限定されない。継続的に投与することが好ましい。通常は1 日間~ 1 年間、好ましくは1 週間~3 ヶ月間である。なお、本発明の製剤は、ヒトだけでなく、ヒト以外の動物( 以下、非ヒト動物と略す)に対しても使用することができる。
【実施例
【0016】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0017】
3T3-L1細胞を3x10^4 cells/ 2 mLになるように6 well plateに播種する。培養2日目、5日目に培地交換を行い、培養7日目に分化誘導培地に交換した。分化誘導培地で培養3日目にインスリン含有培地に変更し、2日毎に培地交換を行いながら12日間培養を続けた。なお、本発明品は分化誘導培地に交換するときから培養終了まで添加した。添加量は、グルタチオンのみ1000μg/ml、カルニチン 250、500μg/ml、グルタチオン1000μg/ml及びカルニチン250μg/ml、グルタチオン1000μg/ml及びカルニチン500μg/mlとした。培養12日目の細胞をオイルレッド染色にて脂肪滴の染色を行い、写真撮影後にイソプロパノールにて色素を抽出し吸光度490nmにて測定を行い、数値化した。結果は、図1に示す。また参考に細胞染色写真を図2に示す。
【0018】
・ 分化誘導培地:
播種培地 100 mL
インスリン(終濃度 10 μg/mL) 1 mL
デキサメタゾン(終濃度 2.5 μM) 0.5 mL
イソブチルメチルキサンチン(終濃度 0.5mM) 0.1 mL
【0019】
・ インスリン含有培地
播種培地 100 mL
インスリン(終濃度 10 μg/mL) 1 mL
【0020】
・ オイルレッド染色(標準プロトコールに従って実施)
準備試薬:
1 Oil Red Oストック溶液:90 mg Oil Red Oを30 mLイソプロパノールに溶かすが、完全には解けない(遮光)
2 60%イソプロ:イソプロ:蒸留水(DW)=3:2 (90 mL:60 mL)

6 well plate染色:
1 染色液作成:ストック溶液:DW=3:2 (30mL:20mL)で混合し、0.45 μmフィルターでろ過し、沈殿除去
2 PBSで洗浄1回後、1mL 4%パラホルムアルデヒドを加えて、1hr 室温静置
3 DWで3回洗浄
4 染色液2 mL/Well、シェーカーでゆっくり振とうしながら、20 min 室温でインキュベート
5 DWで洗浄、5 min x3回
6 60%イソプロパノールで洗浄、5 min x3回
7 画像撮影
8 100%イソプロを1 mL加えて、5 minインキュベート
9 200 μL/Well移し、492 nm (490 nm)で測定(Blank=イソプロパノール200 μL)
【0021】
図1の結果より、L-カルニチン及びグルタチオンを添加した群では、同濃度の単独添加よりも相乗的に脂肪細胞への分化を抑制している。
【産業上の利用可能性】
【0022】
カルニチン及びグルタチオンの脂肪細胞への分化抑制用組成物となる本発明品は、カルニチンの脂質代謝効果を活性化することが期待されるため、脂質代謝の促進剤、体脂肪蓄積防止剤などとして利用でき、生活習慣病の予防等に適用できる。
図1
図2