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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】読影支援装置および読影支援方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/00 20180101AFI20240425BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G16H30/00
A61B5/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019095710
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020190913
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 和樹
(72)【発明者】
【氏名】中津川 実
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-157527(JP,A)
【文献】特開2010-282366(JP,A)
【文献】特開2016-206693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
読影者の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、当該読影対象画像から画像処理により抽出された画像特徴量と、を取得する取得部と、
前記読影者の前記読影スキル情報と、前記読影対象画像の属性情報と、前記読影対象画像の画像特徴量と、にもとづいて、前記読影者が前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成する学習済みモデルに対して、前記読影スキル情報、前記読影対象画像の属性情報、および前記読影対象画像の画像特徴量を入力することで、前記読影者が前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成する予測部と、
を備えた読影支援装置。
【請求項2】
前記予測部により生成された予測値にもとづいて読影支援情報をユーザに提示する提示部、
をさらに備えた請求項1記載の読影支援装置。
【請求項3】
前記予測部は、
複数の読影対象画像のそれぞれについて、前記読影者が読影した場合の読影結果の信頼度の前記予測値を生成し、
前記提示部は、
前記複数の読影対象画像のそれぞれに対応する前記予測値にもとづいて、前記読影者に読影を担当するよう推薦する読影対象画像をユーザに提示する、
請求項2記載の読影支援装置。
【請求項4】
前記予測部は、
複数の読影者のそれぞれについて、前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の前記予測値を生成し、
前記提示部は、
前記複数の読影者のそれぞれに対応する前記予測値にもとづいて、前記読影対象画像の読影を担当するよう推薦する読影者をユーザに提示する、
請求項2または3に記載の読影支援装置。
【請求項5】
前記提示部は、
複数の読影者を推薦するとともに、読影を依頼した読影者の前記予測値の合計値が閾値を越えると、読影者の提示を終了する、
請求項4記載の読影支援装置。
【請求項6】
前記提示部は、
複数の読影者を推薦するとともに、読影を依頼した読影者の前記予測値を1から減じた値どうしを乗じた値が閾値以下となると、読影者の提示を終了する、
請求項4記載の読影支援装置。
【請求項7】
前記学習済みモデルは、
学習用データと教師データからなるトレーニングデータセットであって、読影済み読影者の読影スキル情報と、前記読影済み読影者の読影済み画像の属性情報と、当該読影済み画像の画像特徴量と、を前記学習用データとし、前記読影済み画像の前記読影済み読影者の読影結果と確定診断結果とにもとづいて得られた前記読影済み読影者の読影結果の信頼度を前記教師データとするトレーニングデータセット、を用いて学習を行ったモデルである、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の読影支援装置。
【請求項8】
読影装置の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、当該読影対象画像から画像処理により抽出された画像特徴量と、を取得する取得部と、
前記読影装置の前記読影スキル情報と、前記読影対象画像の属性情報と、前記読影対象画像の画像特徴量と、にもとづいて、前記読影装置が前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成する学習済みモデルに対して、前記読影スキル情報、前記読影対象画像の属性情報、および前記読影対象画像の画像特徴量を入力することで、前記読影装置が前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成する予測部と、
を備えた読影支援装置。
【請求項9】
読影支援装置に用いられる読影支援方法であって、
前記読影支援装置が、読影者の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、当該読影対象画像から画像処理により抽出された画像特徴量と、にもとづいて、前記読影者が前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成する学習済みモデルに対して、前記読影スキル情報、前記読影対象画像の属性情報、および前記読影対象画像の画像特徴量を入力することで、前記読影者が前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成するステップと、
前記読影支援装置が、前記予測値をユーザに提示するステップと、
を有する読影支援方法。
【請求項10】
読影支援装置に用いられる読影支援方法であって、
前記読影支援装置が、読影装置の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、当該読影対象画像から画像処理により抽出された画像特徴量と、にもとづいて、前記読影装置が前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成する学習済みモデルに対して、前記読影スキル情報、前記読影対象画像の属性情報、および前記読影対象画像の画像特徴量を入力することで、前記読影装置が前記読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成するステップと、
前記読影支援装置が、前記予測値をユーザに提示するステップと、
を有する読影支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、読影支援装置および読影支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モダリティによって撮影された被検体の医用画像から得られる情報は、読影者(読影者)によって、たとえば読影レポートとして記載される。読影レポートは、医用画像から読影者が認識、発見した事象や現象を記載する所見と呼ばれる記載内容と、所見にもとづいて疑われる病気の指摘などを行う診断と呼ばれる記載内容とを含む。
【0003】
読影レポートの作成を読影者に依頼するユーザ(以下、読影依頼者という)は、複数の読影者から医用画像の読影に適した読影者に読影レポートの作成を依頼(オーダ)する。読影者は、このオーダに応じて医用画像の読影レポートを作成する。
【0004】
読影対象となる医用画像(以下、読影対象画像という)の読影は、当該読影対象画像を撮影したモダリティや部位などに応じて、当該読影対象画像の読影が得意であると考えられる読影者に依頼することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-078082号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】クリストファー M. ビショップ(Christopher M. Bishop)著、「パターン認識と機械学習(上)(Pattern recognition and machine learning)」、(米国)、第1版、スプリンガー(Springer)、2006年、P.225-290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度を予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る読影支援装置は、取得部と、予測部とを備える。取得部は、読影者の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、当該読影対象画像から画像処理により抽出された画像特徴量と、を取得する。予測部は、読影者の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、読影対象画像の画像特徴量と、にもとづいて、読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る読影支援装置を含む読影支援システムの一例を示すブロック図。
図2】読影支援装置の一構成例を示すブロック図。
図3】予測機能の学習時におけるデータフローの一例を示す説明図。
図4】予測機能の運用時におけるデータフローの一例を示す説明図。
図5】提示機能により予測値にもとづいて読影依頼者に提示される読影支援情報の第1例を示す説明図。
図6】提示機能により予測値にもとづいて読影依頼者に提示される読影支援情報の第2例を示す説明図。
図7図6に示す読影支援情報の第2例の変形例の提示方法を説明するための図。
図8図1に示す読影支援システムの変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、読影支援装置および読影支援方法の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る読影支援装置10を含む読影支援システム1の一例を示すブロック図である。
【0012】
読影支援システム1は、読影支援装置10を含むほか、複数のモダリティ21、22と、画像サーバ23と、複数の読影端末30A、30B、・・・、30Nとを含む。
【0013】
モダリティ21、22は、たとえば超音波診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、核医学診断装置等により構成される。モダリティ21、22は、画像サーバ23および読影支援装置10と、ネットワークを介して、または有線で直接に、互いにデータ送受信可能に接続される。ここでネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、病院基幹LAN(Local Area Network)などの無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0014】
なお、図1には読影支援システム1が2つのモダリティ21、22を含む場合の例を示したが、読影支援システム1が含むモダリティの数に制限はない。また、読影支援システム1が含むモダリティの設置位置に制限はない。たとえばモダリティ21、22の少なくとも一方は、読影支援装置10の遠隔地の病院内に設置されてもよい。
【0015】
画像サーバ23は、モダリティで撮影された医用画像を、ネットワークを介して保存、読み出しする機能を提供する。画像サーバ23は、モダリティ21、22および読影支援装置10と、ネットワークを介して、または有線で直接に、互いにデータ送受信可能に接続される。
【0016】
モダリティ21、22から出力される医用画像および画像サーバ23に記憶される医用画像には、医用画像の属性情報が関連付けられる。また、モダリティ21、22から出力される医用画像および画像サーバ23に記憶される医用画像の少なくとも一方には、医用画像の画像特徴量の情報が関連付けられるとよい。
【0017】
医用画像の属性情報は、医用画像の撮影部位、読影対象部位、医用画像の撮影を行ったモダリティ、撮影条件などの情報を含む。医用画像の画像特徴量は、画像処理により医用画像から抽出された特徴量である。画像特徴量の種別としては、たとえば輝度分布、エッジ、HOG(Histograms of Oriented Gradients)、テクスチャ、大きさ、形状など、従来各種のものが知られており、これらのうち任意のものを利用することが可能である。
【0018】
読影端末30A、30B、・・・、30Nは、たとえばパーソナルコンピュータやワークステーションなどの一般的な情報処理装置により構成される。読影端末30A、30B、・・・、30Nは、それぞれ読影者A、B、・・・、Nにより利用される。なお、モダリティ同様、読影支援システム1が含む読影端末の数および読影端末の設置位置に制限はない。読影端末30A、30B、・・・、30Nは、読影支援装置10と、ネットワークを介して、または有線で直接に、互いにデータ送受信可能に接続される。
【0019】
図2は、読影支援装置10の一構成例を示すブロック図である。図2に示すように、読影支援装置10は、たとえばパーソナルコンピュータやワークステーションなどの一般的な情報処理装置により構成され、入力インターフェース11、ディスプレイ12、記憶回路13、ネットワーク接続回路14、および処理回路15を有する。
【0020】
読影支援装置10は、読影対象画像(読影対象となる医用画像)の読影を読影者に依頼する読影依頼者により利用される。読影依頼者は、読影支援装置10を利用して、読影対象画像の読影に適した読影者に当該読影対象画像の読影を依頼する。
【0021】
読影支援装置10の入力インターフェース11は、たとえばトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を処理回路15に出力する。ディスプレイ12は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。
【0022】
記憶回路13は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、処理回路15が利用するプログラムやパラメータデータやその他のデータを記憶する。なお、記憶回路13の記録媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は、ネットワークを介した通信によりダウンロードされてもよいし、光ディスクなどの可搬型記憶媒体を介して記憶回路13に与えられてもよい。
【0023】
また、記憶回路13は、読影者A、B、・・・、Nのそれぞれの読影スキルを記憶してもよい。読影スキルは、読影者の読影経験年数、読影経験回数、専門診療科、専門部位などの情報を含む。読影者A、B、・・・、Nのそれぞれの読影スキルは、読影支援装置10とネットワークを介して接続された外部のデータベースであって処理回路15のプロセッサにより読み取り可能な外部のデータベースに記憶されてもよい。
【0024】
ネットワーク接続回路14は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路14は、この各種プロトコルに従ってネットワークを介して他の電気機器と接続する。
【0025】
処理回路15は、読影支援装置10を統括制御する機能を実現する。また、処理回路15は、記憶回路13に記憶された読影支援プログラムを読み出して実行することにより、読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度を予測するための処理を実行するプロセッサである。
【0026】
従来、遠隔地の病院や中小規模の病院など、読影者が不足または不在の病院に対し、読影を支援するためのシステムが開発されてきた。しかし、従来の技術では、読影者の読影スキルに応じて読影者と読影対象画像とをマッチングすることについて、考慮されていない。
【0027】
そこで、処理回路15のプロセッサは、読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度を予測するため、整理機能151、抽出機能152、取得機能153、予測機能154、提示機能155、および依頼機能156を実現する。これらの各機能は、それぞれプログラムの形態で記憶回路13に記憶されている。
【0028】
整理機能151は、読影済みの医用画像(以下、読影済み画像という)の属性と読影済み画像の画像特徴量とを、読影者の読影スキルに応じて複数に分類したトレーニングデータセットを取得する。なお、読影支援装置10は整理機能151を備えずともよい。読影支援装置10が整理機能151を備える場合は、読影済み画像の属性と読影済み画像の画像特徴量とを、読影者の読影スキルに応じて分類されたトレーニングデータセットが利用可能となる。この場合、学習済みモデルは当該分類に応じて複数生成できる。
【0029】
抽出機能152は、モダリティ21、22、または画像サーバ23から読影対象画像を取得し、読影対象画像を画像処理して画像特徴量を抽出する。なお、モダリティ21、22から出力される医用画像および画像サーバ23に記憶される医用画像の少なくとも一方に医用画像の画像特徴量の情報が関連付けられる場合は、読影支援装置10は抽出機能152を備えずともよい。この場合、読影対象画像に関連付けられた画像特徴量を取得機能153がモダリティ21、22、または画像サーバ23から取得すればよい。
【0030】
取得機能153は、読影を依頼する候補の読影者(以下、候補読影者という)の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、当該読影対象画像から画像処理により抽出された画像特徴量と、を取得する。取得機能153は、取得部の一例である。
【0031】
予測機能154は、候補読影者の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、読影対象画像の画像特徴量と、にもとづいて、候補読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値(予測信頼度)を生成する。予測機能154は、予測部の一例である。
【0032】
予測機能154は、候補読影者の読影スキル情報と、読影対象画像の属性情報と、読影対象画像の画像特徴量と、にもとづいて候補読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成する学習済みモデルに対して、候補読影者の読影スキル情報、読影対象画像の属性情報、および読影対象画像の画像特徴量を入力することで予測信頼度を生成してもよい。また、予測機能154は、学習済みモデルとして、ニューラルネットワーク、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、SVM、ブースティング、またはそれらの組合せなどの、機械学習手法を用いてもよい。以下の説明では、予測機能154が学習済みモデルを用いて予測信頼度を生成する場合の例について示す。
【0033】
提示機能155は、予測機能154により生成された予測値にもとづいて読影支援情報を読影依頼者(読影支援装置10のユーザ)に提示する。読影支援情報としては、候補読影者と読影対象画像と予測値とを関連付けた情報、候補読影者に読影を推薦する読影対象画像の情報、読影対象画像の読影依頼を推薦する候補読影者の情報などが挙げられる。読影支援情報の提示方法としては、読影支援情報を示す画像を生成してディスプレイ12に表示する方法や、図示しないスピーカを介して読影支援情報を示す音声を出力する方法などが挙げられる。提示機能155は、提示部の一例である。
【0034】
依頼機能156は、予測機能154により生成された予測値にもとづいて、自動的に、または読影依頼者による入力インターフェースを介した指示にもとづいて、読影対象画像の読影を依頼する読影者を決定し、当該読影者に読影対象画像の読影を依頼する。
【0035】
図3は、予測機能154の学習時におけるデータフローの一例を示す説明図である。予測機能154は、トレーニングデータセットを多数用いて深層学習を行うことにより、パラメータデータ42を逐次的に更新する。
【0036】
トレーニングデータセットは、学習用データと教師データとの組からなる。学習用データは、読影者の読影スキル61と、当該読影者が読影済みの医用画像の属性62と、当該読影済み画像の画像特徴量63と、の組みからなる。また、教師データは、当該読影済み画像の確定診断結果にもとづいて得られた、当該読影者による当該読影済み画像の読影結果の信頼度71により構成される。信頼度71は、当該読影者による当該読影済み画像の確定診断と読影結果が一致していた場合は1とし、不一致である場合は0とする。あるいはICD10分類の診断病名の階層性などに従って、確定診断と読影結果の一致の程度に応じた0から1の間の連続的な値をとってもよい。
【0037】
予測機能154は、トレーニングデータセットが与えられるごとに、学習用データをニューラルネットワーク41で処理した結果が教師データに近づくようにパラメータデータ42を更新していく、いわゆる学習を行う。一般に、パラメータデータ42の変化割合が閾値以内に収束すると、学習は終了と判断される。以下、学習後のパラメータデータ42を特に学習済みパラメータデータ42tという。
【0038】
なお、学習用データの種類と図4に示す運用時の入力データの種類は一致させるべきことに注意する。たとえば、学習用データの画像特徴量としてテクスチャの情報を用いる場合は、運用時の入力データの画像特徴量にもテクスチャの情報を用いる。
【0039】
図4は、予測機能154の運用時におけるデータフローの一例を示す説明図である。運用時には、予測機能154は、候補読影者の読影スキル81と、読影対象画像の属性82と、読影対象画像の画像特徴量83と、を入力され、学習済みモデル40を用いて、候補読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値91を生成する。信頼度の予測値91は、候補読影者による読影対象画像の確定診断と読影結果が一致する確率であっても良い。
【0040】
なお、ニューラルネットワーク41と学習済みパラメータデータ42tは、学習済みモデル40を構成する。この種の学習の方法および学習済みモデルの構築方法については、非特許文献1に開示された方法など種々の方法が知られている。ニューラルネットワーク41は、プログラムの形態で記憶回路13に記憶される。学習済みパラメータデータ42tは、記憶回路13に記憶されてもよいし、ネットワークを介して処理回路15と接続された記憶媒体に記憶されてもよい。学習済みモデル40(ニューラルネットワーク41と学習済みパラメータデータ42t)が記憶回路13に記憶される場合、処理回路15のプロセッサにより実現される予測機能154は、記憶回路13から学習済みモデル40を読み出して実行することで、候補読影者の読影スキル81と、読影対象画像の属性82と、画像特徴量83とにもとづいて、候補読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値91を生成する。
【0041】
なお、学習済みモデル40は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路によって構築されてもよい。
【0042】
また、読影支援装置10が整理機能151を備え、読影者の読影スキルに応じて分類されたトレーニングデータセットが利用可能な場合は、この分類ごとに学習済みモデル40が生成される。この場合、運用時には、運用時の入力データの候補読影者の読影スキル81が属する分類に対応する学習済みモデルを用いる。読影者の読影スキルに応じて複数の学習済みモデル40を用意し、候補読影者の読影スキル81に応じた学習済みモデル40を利用することにより、より精度よく候補読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値91を生成することができる。
【0043】
また、読影支援装置10が整理機能151を備え、読影者に応じて分類したトレーニングデータセットが利用可能な場合は、読影者ごとに学習済みモデル40が生成される。この場合は、運用時には、候補読影者の学習済みモデル40を用いればよい。また、読影者の読影スキルに応じた分類ごとに学習済みモデル40を生成するとともに、読影者ごとに学習済みモデル40を生成してもよい。この場合、提示機能155は、両者の予測値のそれぞれにもとづいて読影支援情報を生成して読影依頼者に提示してもよいし、これらを組み合わせた最終的な予測値、たとえば両者の平均値、両者の高い方の値、または両者の低い方の値、にもとづいて読影支援情報を生成して読影依頼者に提示してもよい。
【0044】
図5は、提示機能155により予測値にもとづいて読影依頼者に提示される読影支援情報の第1例を示す説明図である。
【0045】
たとえば、読影依頼者が、1人の候補読影者Aに対して複数の読影対象画像A、B、C、・・・のうちのどの画像を読影してもらうよう依頼すべきかを決定することを考える。この場合、予測機能154は、学習済みモデル40を用いて、候補読影者Aが読影対象画像A、B、C、・・・のそれぞれを読影した場合の読影結果の信頼度の予測値91を生成する。
【0046】
この場合、提示機能155は、複数の読影対象画像A、B、C、・・・のそれぞれに対応する予測値にもとづいて、候補読影者Aに読影を担当するよう推薦する読影対象画像の情報を、読影支援情報としてユーザに提示する。具体的には、提示機能155は、読影支援情報として、信頼度の予測値が最高の読影対象画像(図5に示す例では画像B)の情報を抽出し、この読影対象画像の情報のみ(図5下段参照)またはこの情報とリスト画像とを組み合わせた情報(図5上段のハッチング参照)を読影依頼者に提示するとよい。
【0047】
また、読影支援情報として、信頼度の予測値が閾値以上の1または複数の読影対象画像を読影依頼者に提示してもよい。この場合、候補読影者Aの空きスケジュールの情報や候補読影者Aの読影に要する時間の情報などが取得できる場合は、候補読影者に読影を依頼する読影対象画像の数の上限値を当該情報にもとづいて設定してもよい。
【0048】
図6は、提示機能155により予測値にもとづいて読影依頼者に提示される読影支援情報の第2例を示す説明図である。
【0049】
たとえば、読影依頼者が、1つの読影対象画像に対して複数の候補読影者A、B、C、・・・のうちのどの候補読影者に読影対象画像(図6に示す例では画像B)を読影してもらうよう依頼すべきかを決定することを考える。この場合、予測機能154は、学習済みモデル40を用いて、候補読影者A、B、C、・・・のそれぞれが読影対象画像Bを読影した場合の読影結果の信頼度の予測値91を生成する。
【0050】
この場合、提示機能155は、複数の候補読影者A、B、C、・・・のそれぞれに対応する予測値にもとづいて、読影対象画像Bの読影を担当するよう推薦する候補読影者の情報を、読影支援情報としてユーザに提示する。具体的には、提示機能155は、読影支援情報として、信頼度の予測値が最高の候補読影者(図6に示す例では候補読影者B)の情報を抽出し、この候補読影者の情報のみ(図6下段参照)またはこの情報とリスト画像とを組み合わせた情報(図6上段のハッチング参照)を読影依頼者に提示するとよい。
【0051】
図7は、図6に示す読影支援情報の第2例の変形例の提示方法を説明するための図である。図6に示す読影支援情報の第2例は、読影依頼者が、1つの読影対象画像に対して複数の候補読影者A、B、C、・・・のうちの1人の候補読影者に読影対象画像を読影してもらうよう依頼する場合の例である。図7に示す変形例は、読影依頼者が、1つの読影対象画像に対して複数の候補読影者A、B、C、・・・のうちの複数の候補読影者に読影対象画像を読影してもらうよう依頼する場合の例である。
【0052】
1つの読影対象画像の読影を複数の読影者に依頼することで、1人の読影者に依頼する場合に比べ、異常箇所を見落としてしまう確率を大幅に低減することができる。そこで、たとえば提示機能155は、まず、候補読影者と読影対象画像と予測値とを関連付けたリスト画像を表示するとともに、信頼度の予測値が閾値(たとえば0.3以上など)の読影者を強調表示することで、読影の依頼を推薦する複数の候補読影者の提示を行う。続いて、読影依頼者が依頼機能156により、1つの読影対象画像の読影を依頼する読影者を1人ずつ決定していく。そして、読影依頼済みの読影者の信頼度の予測値の合計値が閾値(たとえば2.0など)を越えると、提示機能155は、当該読影対象画像の候補読影者の推薦を終了する。
【0053】
同様に、読影依頼済みの読影者の予測値を1から減じた値どうしを乗じた値(図7に示す例では、(1-0.53)×(1-0.74)×(1-0.36)×(1-0.58))が閾値以下となると、提示機能155は、当該読影対象画像の候補読影者の推薦を終了するようにしてもよい。
【0054】
本実施形態にかかる読影支援装置10は、候補読影者の読影スキルと、読影対象画像の属性および画像特徴量と、にもとづいて、当該候補読影者が当該読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度の予測値を生成することができる。このため、読影者の読影スキルに応じて読影者と読影対象画像とを容易かつ適切にマッチングすることができる。したがって、たとえば不特定多数の読影医に対して遠隔読影を依頼する場合であっても、信頼度の高い読影結果を得ることができる。
【0055】
なお、依頼機能156が予測機能154により生成された予測値にもとづいて自動的に読影対象画像の読影を依頼する読影者を決定する場合は、読影支援装置10は提示機能155を備えずともよい。この場合、依頼機能156は、読影者を自動的に決定したあと確認のための入力を読影依頼者に促してもよい。また、当該入力を不要とする場合は、読影依頼者は不在であってもよい。
【0056】
図8は、図1に示す読影支援システム1の変形例を示すブロック図である。図8に示す読影支援システム1の変形例は、読影者A、B、・・・、Nによりそれぞれ利用される読影端末30A、30B、・・・、30Nにかえて、自律的に動作する読影装置35A、35B、・・・、35Nを備える点で図1に示す読影支援システム1と異なる。他の構成および作用については図1に示す読影支援システム1と実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
読影装置35A、35B、・・・、35Nは、たとえば、互いに異なる規模の読影実施用学習済みモデルを利用可能に構成されることで、互いに異なる読影スキルを有する。
【0058】
この場合も、読影支援装置10は、読影装置35A、35B、・・・、35Nのそれぞれの読影スキル(得意とする部位など)の情報にもとづいて、学習済みモデル40を用いて読影対象画像についての予測値を生成することができ、たとえば図5図6図7に示す例と同様の読影支援情報を提示することができる。
【0059】
また、読影装置35A、35B、・・・、35Nが互いに異なる事業者により運営されて、読影に要する料金、読影に要する時間等、読影スキル以外の情報が異なる場合には、たとえば図5図6図7の上段に示すリストに対し、さらに読影に要する料金、読影に要する時間を関連付けたリストを生成し読影依頼者に提示してもよい。
【0060】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、読影者が読影対象画像を読影した場合の読影結果の信頼度を予測することができる。
【0061】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびFPGA)等の回路を意味するものとする。プロセッサは、記憶媒体に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0062】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶媒体は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶媒体が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0063】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
10 読影支援装置
15 処理回路
40 学習済みモデル
61 読影者の読影スキル
62 読影済み画像の属性
63 読影済み画像の画像特徴量
71 信頼度
81 候補読影者の読影スキル
82 読影対象画像の属性
83 読影対象画像の画像特徴量
91 信頼度の予測値
151 整理機能
152 抽出機能
153 取得機能
154 予測機能
155 提示機能
156 依頼機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8