(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/17 20230101AFI20240425BHJP
H10K 50/18 20230101ALI20240425BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240425BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20240425BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20240425BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H10K50/17
H10K50/18
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
G09F9/30 349Z
(21)【出願番号】P 2019147846
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亨
【審査官】西岡 貴央
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093196(JP,A)
【文献】特開2013-051158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/22
H10K 59/10
H10K 50/10
H05B 33/12
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光領域と非発光領域を含む画素を有する有機EL表示装置であって、
第1電極と、
前記非発光領域に配置され、前記第1電極の端部を覆う有機絶縁層と、
前記有機絶縁層の両側に配置された第1発光層及び第2発光層と、
前記第1発光層及び前記第2発光層上の第2電極と、
前記第1電極と前記第1発光層、又は前記第1電極と前記第2発光層の間のキャリア輸送層と、
前記第1電極と前記キャリア輸送層の間のキャリア注入層と、
前記有機絶縁層が配置された領域において、前記キャリア注入層上に配置された第1キャリア遮断層と、
を有し、
前記キャリア輸送層が電子輸送層である場合、前記キャリア注入層は電子注入層であり、
前記キャリア輸送層が正孔輸送層である場合、前記キャリア注入層は正孔注入層であり、
前記キャリア注入層は前記有機絶縁
層と重畳する重畳領域を有し、
前記有機絶縁層上に、前記第1発光層及び前記第2発光層のいずれも重畳しない遮断領域を有し、
前記重畳領域において、前記キャリア輸送層と前記キャリア注入層は重畳し、
前記第1キャリア遮断層は前記非発光領域に配置され
るとともに前記遮断領域を覆い、前記重畳領域において、その端部が前記キャリア輸送層と前記キャリア注入層の間にあり
、
前記遮断領域における前記キャリア注入層の導電性は、前記第1発光層又は前記第2発光層と重畳する領域における前記キャリア注入層の導電性よりも低下している、
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
発光領域と非発光領域を含む画素を有する有機EL表示装置であって、
第1電極と、
前記非発光領域に配置され、前記第1電極の端部を覆う有機絶縁層と、
前記有機絶縁層の両側に配置された第1発光層及び第2発光層と、
前記第1発光層及び前記第2発光層上の第2電極と、
前記第1電極と前記第1発光層、又は前記第1電極と前記第2発光層の間のキャリア輸送層と、
前記第1電極と前記キャリア輸送層の間のキャリア注入層と、
前記有機絶縁層が配置された領域において、前記キャリア注入層上に配置された第1キャリア遮断層と、
を有し、
前記キャリア輸送層が電子輸送層である場合、前記キャリア注入層は電子注入層であり、
前記キャリア輸送層が正孔輸送層である場合、前記キャリア注入層は正孔注入層であり、
前記キャリア注入層は前記有機絶縁
層と重畳する重畳領域を有し、
前記有機絶縁層上に、前記第1発光層及び前記第2発光層のいずれも重畳しない遮断領域を有し、
前記重畳領域において、前記キャリア輸送層と前記キャリア注入層は重畳し、
前記第1キャリア遮断層は前記非発光領域に配置され
るとともに前記遮断領域を覆い、前記重畳領域において、その端部が前記キャリア輸送層と前記キャリア注入層の間にあり
、
前記遮断領域は、前記キャリア注入層を有さない、ことを特徴とす
る有機EL表示装置。
【請求項3】
前記遮断領域において、前記キャリア注入層は、他の領域よりも薄く形成された領域を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記非発光領域において、前記第1キャリア遮断層はストライプ状に形成されることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記非発光領域において、前記第1キャリア遮断層は格子状に形成されることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記非発光領域において、前記第1キャリア遮断層は島状に形成されることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記第1キャリア遮断層の前記第1発光層側の端部は、前記遮断領域の前記第1発光層側の端部よりも前記発光領域側に位置する、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
さらに、前記発光領域において、前記第1発光層及び前記第2発光層と、前記キャリア輸送層と、の間に、第2キャリア遮断層を有する、ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置は、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)や有機発光ダイオード(OLED)などが形成される。OLEDは、一対の電極間に有機層を備える。有機層は、例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層等が積層されて構成される。このような有機層は、代表的には、画素を区画するために予め設けられた凸状のバンクで囲まれた領域及びバンクの上側に形成される。
【0003】
ここで、例えば、正孔輸送層等の導電性の材料を複数の画素間で共通に設けると、隣接する画素間でリーク電流が流れてしまうという問題がある。具体的には、リーク電流により本来発光すべきでない隣接の画素が発光し、コントラストや色純度の低下を招くという問題がある。このような問題は、高精細化(例えば、隣接する画素間の距離が短くなる)や駆動電圧の低減化(例えば、高移動度材料の採用)が進むほど、顕著に発生し得る。
【0004】
上記の問題を解決するために、特許文献1では、リーク電流が流れる経路となる隔壁の上部に形成された正孔輸送層を除去する点を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機層には、正孔輸送層以外にも正孔注入層や電子注入層などのキャリア注入層も含まれる。キャリア注入層は、正孔輸送層よりも電気抵抗が小さい。従って、特許文献1のように隔壁の上部に形成された正孔輸送層を除去したとしても、キャリア注入層が表示領域全体を覆うように配置された場合、当該キャリア注入層がリーク電流の流れる経路となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣接する画素間のリーク電流をより確実に抑制し得る有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る有機EL表示装置は、発光領域と非発光領域を含む画素を有する有機EL表示装置であって、第1電極と、前記非発光領域に配置され、前記第1電極の端部を覆う有機絶縁層と、前記有機絶縁層の両側に配置された第1発光層及び第2発光層と、前記第1発光層及び前記第2発光層上の第2電極と、前記第1電極と前記第2電極の間のキャリア輸送層と、前記第1電極と前記第2電極の間のキャリア注入層と、前記有機絶縁層が配置された領域において、前記キャリア注入層上に配置された第1キャリア遮断層と、を有し、前記キャリア注入層は前記有機絶縁層の端部と重畳する重畳領域を有し、前記重畳領域において、前記キャリア輸送層と前記キャリア注入層は重畳し、前記第1キャリア遮断層は前記非発光領域に配置され、前記重畳領域において、その端部が前記キャリア輸送層と前記キャリア注入層の間にある、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機EL表示装置において、隣接する画素間のリーク電流をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る有機EL表示装置の概略の構成を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る有機EL表示装置の一例を示す模式的な平面図である。
【
図4】
図3のIV-IV断面の一例を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る断面の一例を示す図である。
【
図6】第3実施形態に係る断面の一例を示す図である。
【
図7】第4実施形態に係る断面の一例を示す図である。
【
図8】キャリア遮断層及び正孔注入層の変形例を示す図である。
【
図9】キャリア遮断層及び正孔注入層の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
なお、以下の説明において参照する図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であり、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0013】
図1は、本実施形態に係る有機EL表示装置2の概略の構成を示す模式図である。有機EL表示装置2は、画像を表示する画素アレイ部4と、画素アレイ部4を駆動する駆動部とを備える。有機EL表示装置2は、基板404(
図4参照)上にTFT10,12やOLED6などの積層構造が形成された構成を有する。なお、
図1に示した概略図は一例であって、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0014】
画素アレイ部4には、画素に対応してOLED6および画素回路8がマトリクス状に配置される。画素回路8は複数のTFT10,12やキャパシタ14で構成される。
【0015】
上記駆動部は、走査線駆動回路20、映像線駆動回路22、駆動電源回路24および制御装置26を含み、画素回路8を駆動しOLED6の発光を制御する。
【0016】
走査線駆動回路20は、画素の水平方向の並び(画素行)ごとに設けられた走査信号線28に接続されている。走査線駆動回路20は、制御装置26から入力されるタイミング信号に応じて走査信号線28を順番に選択し、選択した走査信号線28に、点灯TFT10をオンする電圧を印加する。
【0017】
映像線駆動回路22は、画素の垂直方向の並び(画素列)ごとに設けられた映像信号線30に接続されている。映像線駆動回路22は、制御装置26から映像信号を入力され、走査線駆動回路20による走査信号線28の選択に合わせて、選択された画素行の映像信号に応じた電圧を各映像信号線30に出力する。当該電圧は、選択された画素行にて点灯TFT10を介してキャパシタ14に書き込まれる。駆動TFT12は、書き込まれた電圧に応じた電流をOLED6に供給し、これにより、選択された走査信号線28に対応する画素のOLED6が発光する。
【0018】
駆動電源回路24は、画素列ごとに設けられた駆動電源線32に接続され、駆動電源線32および選択された画素行の駆動TFT12を介してOLED6に電流を供給する。
【0019】
ここで、OLED6の第1電極304(
図3、4参照)は、駆動TFT12に接続される。一方、各OLED6の第2電極44(
図2、4参照)は、全画素のOLED6に共通の電極で構成される。第1電極304を陽極(アノード)として構成する場合は、高電位が入力され、第2電極44は陰極(カソード)となって低電位が入力される。第1電極304を陰極(カソード)として構成する場合は、低電位が入力され、第2電極44は陽極(アノード)となって高電位が入力される。
【0020】
図2は、
図1に示す有機EL表示装置2の一例を示す模式的な平面図である。有機EL表示装置2の表示領域42に、
図1に示した画素アレイ部4が設けられ、上述したように画素アレイ部4にはOLED6が配列される。上述したようにOLED6を構成する第2電極44は、各画素に共通に形成され、表示領域42全体を覆う。
【0021】
矩形である有機EL表示装置2の一辺には、部品実装領域46が設けられ、表示領域42につながる配線が配置される。部品実装領域46には、駆動部を構成するドライバ集積回路(IC)48が搭載されたり、フレキシブルプリント基板(FPC50)が接続されたりする。FPC50は、制御装置26やその他の回路20,22,24等に接続されたり、その上にICを搭載されたりする。
【0022】
各画素は、複数の副画素から構成される。具体的には、例えば、各画素は、赤色の光を発する第1副画素52と、緑色の光を発する第2副画素54と、青色の光を発する第3副画素56と、を含む。
【0023】
図3は、
図2の画素周辺を拡大した平面図である。また、
図4は、
図3のIV―IV断面の一例を示す図である。
図3及び
図4に示すように、有機EL表示装置2は、基板404と、アレイ層406と、平坦化膜408と、第1電極304と、有機絶縁層410と、有機層と、第2電極44と、キャップ層428と、封止膜と、を含む。
【0024】
基板404は、例えば樹脂で形成され、可撓性を有する。基板404はガラスであってもよい。
【0025】
アレイ層406は、基板404の上側に形成される。具体的には、アレイ層406は、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極及び半導体層等を含んで構成される複数の点灯TFT10、駆動TFT12を含むように基板404の上層に形成される。
【0026】
平坦化膜408は、アレイ層406の上層に絶縁材料により形成される。平坦化膜408は、駆動TFT12のソース電極又はドレイン電極の一方の上側でスルーホールを有する。平坦化膜408は、アレイ層406を覆うように絶縁材料で形成される。例えば、平坦化膜408は、アクリルや、ポリイミドといった有機絶縁材料により形成される。
【0027】
第1電極304は、平坦化膜408の上層に形成される。具体的には、第1電極304は、ITO等の透明かつ導電性を有する材料で、スルーホールを介して駆動TFT12のソース電極又はドレイン電極と電気的に接続するように形成される。有機ELの光の取り出し方には、後述する発光層からの光をアレイ層406と反対側に取り出す、トップエミッション方式と、それとは逆方向に取り出すボトムエミッション方式がある。トップエミッション方式では、第1電極304は、光反射性を持たせるために、銀とITOとの積層体のような構成でも構わない。
【0028】
有機絶縁層410は、非発光領域402に配置される。具体的には、有機絶縁層410は、第1電極304が形成されていない領域では平坦化膜408を覆うように、かつ、第1電極304の端部では第1電極304の上層に形成される。有機絶縁層410は、非発光領域に配置され、有機絶縁層410が設けられていない領域は、有機絶縁層410の開口部である。有機絶縁層410の開口部は、発光層から光が取り出される発光領域302である。有機絶縁層410は例えば、アクリルやポリイミドといった有機絶縁層であってもよい。
【0029】
有機層は、発光層と、キャリア輸送層と、キャリア注入層と、第1キャリア遮断層308と、第2キャリア遮断層420とを有する。
【0030】
発光層は、第2電極44と第1電極304から供給された電子と正孔によって光を発する。具体的には、例えば、発光層は、赤色の光を発する第1発光層310rと、緑色の光を発する第2発光層310gと、青色の光を発する第3発光層310bと、を含む。断面視で、第1発光層310rから第3発光層310bは、それぞれ有機絶縁層410を挟んで配置される。例えば、第1発光層310rと第2発光層310gは、有機絶縁層410の両側に配置される。また、第2発光層310gと第3発光層310bは、有機絶縁層410の両側に配置される。
【0031】
キャリア輸送層は、第1発光層310r乃至第3発光層310bの上側及び下側に配置される。具体的には、例えば、キャリア輸送層は、正孔輸送層と電子輸送層416とを含む。第1電極304が陽極(アノード)である場合、正孔輸送層は、第1発光層310r乃至第3発光層310bの下側に配置され、電子輸送層416は、第1発光層310r乃至第3発光層310bの上側に配置される。
【0032】
また、正孔輸送層は、第1副画素52、第2副画素54及び第3副画素56に共通に設けられた第1正孔輸送層414と、第1副画素52の第1正孔輸送層414の上側にのみ設けられた第2正孔輸送層414rと、第2副画素54の第1正孔輸送層414の上側にのみ設けられた第3正孔輸送層414gより構成されてもよい。各発光層上に設けられた正孔輸送層は、それぞれ各副画素が発する光の波長に応じた厚さで形成される。これにより、いわゆるマイクロキャビティ構造が形成される。
【0033】
キャリア注入層は、第1電極304と第2電極44の間に配置される。また、キャリア注入層は、有機絶縁層410の端部と重畳する重畳領域を有する。さらに、重畳領域において、キャリア輸送層とキャリア注入層は重畳する。例えば、キャリア注入層は、キャリア輸送層と第1電極304の間に配置され、また、有機絶縁層410上に配置される(有機絶縁層410と重畳する)。キャリア注入層の端部は、有機絶縁層410の端部と重畳する。キャリア注入層は、正孔注入層と電子注入層418とを含む。正孔注入層は、発光領域302において正孔輸送層の下側に配置され、電子注入層418は、発光領域302において電子輸送層416の上側に配置される。有機絶縁層410の端部と重畳する領域において、キャリア輸送層と第1電極304の間に配置される。
【0034】
また、正孔注入層は、第1電極304の上側に、異なる色の光を発する副画素毎に設けられる。具体的には、正孔注入層は、第1副画素52、第2副画素54、及び、第3副画素56ごとに設けられる。
図3に示すように、平面視で、第1副画素52、第2副画素54、及び、第3副画素56は、それぞれ縦方向に並べて配置される。第1副画素52には第1正孔注入層306rが配置され、第2副画素54には第2正孔注入層306gが配置され、第3副画素56には第3正孔注入層306bが配置される。そのため、平面視で上下に並んで配置された各副画素の正孔注入層は繋がっているが、左右に並んで配置された各副画素の正孔注入層は分離されている。すなわち、
図4に示すように、断面視で、有機絶縁層410の上側の領域において、正孔注入層は孔が設けられた遮断領域422を有する。遮断領域422が設けられることにより、異なる色を発する副画素間で、正孔注入層を介して生じるリーク電流を小さくすることができる。正孔注入層は、隣り合う副画素の間で分離されていればよく、例えば後述するように、平面視で島状の形状に設けられてもよい。例えば、横方向だけでなく、縦方向にも異なる色が並ぶ場合には、正孔注入層は島状に設けられてもよい。
【0035】
なお、正孔注入層は、有機絶縁層410の端部に乗り上げるように配置される。また、
図4では、電子輸送層416は複数の異なる色の画素に跨って配置されているが、正孔輸送層と同様の構成としてもよい。また、電子注入層418も複数の異なる色の画素に跨って配置されているが、正孔注入層と同様の構成としてもよい。
【0036】
第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410が配置された領域において、キャリア注入層上に配置される。また、第1キャリア遮断層308は、非発光領域402に配置され、重畳領域において、その端部がキャリア輸送層とキャリア注入層の間にある。具体的には、断面視で、第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410の上側の領域において、正孔輸送層と正孔注入層の間に配置される。また、第1キャリア遮断層308は、リーク電流を遮断する有機材料で形成され、正孔注入層及び正孔輸送層よりも電気抵抗が高い(正孔の移動度が低い)。例えば、第1キャリア遮断層308は、正孔遮断層、電子注入層418または電子輸送層416と同じ材料で形成される。また、第1キャリア遮断層308は、正孔遮断層、電子注入層418及び電子輸送層416が積層されて形成されてもよい。また、第1キャリア遮断層308は、100nm以下の厚さで形成される。
【0037】
また、平面視で、第1キャリア遮断層308は、異なる色の光を発する副画素の境界をまたぐように配置される。具体的には、
図3に示すように、第1キャリア遮断層308は、左右方向に並ぶ副画素の間にある非発光領域402に配置される。一方、第1キャリア遮断層308は、上下方向に並ぶ副画素の間にある非発光領域402には配置されなくてもよい。従って、第1キャリア遮断層308は、
図3の上下方向に長いストライプ形状を有する。
【0038】
隣接する副画素の第1電極304には、表示される画像に応じた電圧が印加される。隣接する副画素間で当該電圧に相違がある場合、隣接する副画素の間でリーク電流が流れる。ここで、リーク電流が流れる主な経路は、非発光領域402に配置された正孔注入層及び正孔輸送層である。第1キャリア遮断層308は、正孔注入層及び正孔輸送層よりも電気抵抗が高い(正孔の移動度が低い)ため、正孔注入層と正孔輸送層の間に第1キャリア遮断層308が配置されることにより、リーク電流を減少させることができる。
【0039】
また、第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410の上側の領域において、正孔注入層の遮断領域422を覆うように配置される。さらに、断面視で、第1キャリア遮断層308の第1発光層310r側の端部は、遮断領域422の第1発光層310r側の端部よりも発光領域302側に位置する。また、断面視で、第1キャリア遮断層308の第2発光層310g側の端部は、遮断領域422の第2発光層310g側の端部よりも発光領域302側に位置する。すなわち、第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410の上側の領域において正孔注入層と重なる領域を有する。
【0040】
第1キャリア遮断層308が設けられない構成の場合、第1副画素52の正孔注入層の端部から、遮断領域422の正孔輸送層を経由して、第2副画素54の正孔注入層へリーク電流が流れる経路が存在する。しかし、上記実施形態によれば、第1正孔注入層306rから第2正孔注入層306gに流れるリーク電流は、
図4の矢印に示す経路424で流れる。正孔注入層よりも正孔輸送層の方が電気抵抗が高いため、リーク電流が正孔輸送層を流れる経路424を長くすることにより、リーク電流を低減できる。
【0041】
第2キャリア遮断層420は、発光領域302において、第1発光層310r乃至第3発光層310bと、キャリア輸送層と、の間に、配置される。具体的には、
図4に示すように、第2キャリア遮断層420は、第1発光層310r乃至第3発光層310bそれぞれと、電子輸送層416と、の間に配置される。第2キャリア遮断層420は、第1電極304から供給された正孔が電子輸送層416に到達することを防止する正孔遮断層である。なお、
図4には記載していないが、発光領域302において、第1発光層310r乃至第3発光層310bそれぞれと、正孔輸送層と、の間に第2電極44から供給された電子が正孔輸送層に到達することを防止する電子遮断層が配置されてもよい。
【0042】
第2電極44は、有機層の上側に、配置される。具体的には、第2電極44は、有機層を覆うように、光の透過特性及び反射特性と共に導電性を有するMgAg等の材料で形成される。本実施例では、第2電極44は複数の副画素に跨って連続して形成される。第2電極44は、有機層に電子を供給することによって、第1発光層310r乃至第3発光層310bを発光させる。キャップ層428は、第2電極44の上側に配置される。キャップ層428は、発する色が異なる副画素毎に異なる厚さで形成されてもよい。キャップ層428は、いわゆるマイクロキャビティ構造が形成される。
【0043】
封止膜は、キャップ層428の上側に配置される。具体的には、封止膜は、一または複数層により形成される。本実施例では、封止膜は、第1無機封止膜430と、有機封止膜432と、第2無機封止膜434と、の積層で構成され、キャップ層428を覆う。封止膜は、有機層に水分が侵入することで有機層が劣化することを防止する。
【0044】
以上のように、第1キャリア遮断層308が配置されることにより、リーク電流を低減することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、第1電極304から発光層に正孔が供給され、第2電極44から発光層に電子が供給される場合について説明したが、逆の構成であってもよい。すなわち、第1電極304から発光層に電子が供給され、第2電極44から発光層に正孔が供給されてもよい。この場合、正孔注入層、第1キャリア遮断層308、及び、正孔輸送層は、発光層の上側に配置される。
[第2実施形態]
【0046】
続いて、第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態における有機EL表示装置2の断面を示す図である。なお、第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0047】
図5に示すように、基板404から有機絶縁層410までの構成及び第2電極44から封止膜までの各構成は第1実施形態と同様である。また、有機絶縁層410及び第1電極304の上側に有機層が配置される点も第1実施形態と同様であるが、第2実施形態は、有機絶縁層410の上側の領域において、キャリア注入層が、他の領域よりも薄く形成された遮断領域422を有する点で第1実施形態と異なる。
【0048】
具体的には、キャリア注入層に含まれる正孔注入層500は、発光領域302及び非発光領域402全体を覆うように形成され、有機絶縁層410の上側において、他の領域よりも薄く形成された遮断領域422を有する。
【0049】
なお、第1副画素52乃至第3副画素56に対して同時に形成されてもよいし、正孔注入層500は、第1副画素52、第2副画素54、及び、第3副画素56ごとに個別に形成されてもよい。
【0050】
第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410の上側に配置される。具体的には、第1キャリア遮断層308は、遮断領域422を覆うように配置される。また、第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410の上側の領域において、正孔注入層500(遮断領域422以外の領域に形成された正孔注入層500)と重なる領域を有する。これにより、正孔輸送層を通るリーク経路424の長さを長くすることができる。
【0051】
また、一般的に正孔注入層500は、遮断領域422を覆うマスクを用いて形成される。有機EL表示装置2が高精細である場合、隣接する副画素間の距離が近接するため、マスクで覆われた領域に正孔注入層500の材料が回り込んで付着することがある。当該回り込んで付着した正孔注入層500の材料により、遮断領域422に薄い正孔注入層500が形成される。すなわち、第2実施形態によれば、より高精細な有機EL表示装置2を実現できる。また、マスクをまわりこんで付着することによって形成された正孔注入層500は非常に薄いため、正孔注入層500を経由するリーク電流は小さい。
【0052】
また、例えば、正孔注入層500を第1副画素52、第2副画素54、及び、第3副画素56ごとに個別に形成した場合、それぞれの正孔注入層500の端部は厚みが薄くなる。この時、隣り合う副画素の正孔注入層500間の幅が十分に広くない場合、それぞれの正孔注入層500の端部が接してしまう恐れがある。しかし、第1キャリア遮断層308がそれぞれの正孔注入層500の端部を覆うことにより、リーク経路424を十分な長さとし、リーク電流を低減することができる。また、それぞれの正孔注入層500の端部間の距離が短くなるので、結果として高精細化を実現できる。
【0053】
以上のように、第2実施形態によれば、リーク電流を低減しつつ高精細な有機EL表示装置2を実現できる。
【0054】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態における有機EL表示装置2の断面を示す図である。なお、第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0055】
図6に示すように、基板404から有機絶縁層410までの構成及び第2電極44から封止膜までの各構成は第1実施形態と同様である。また、有機絶縁層410及び第1電極304の上側に有機層が配置される点も第1実施形態と同様であるが、第3実施形態は、有機絶縁層410の上側の領域において、キャリア注入層に含まれる正孔注入層600は、導電性が低下している遮断領域422を有する点で第1実施形態と異なる。
【0056】
具体的には、第3実施形態では、有機絶縁層410の上側に配置された正孔注入層600は、その物性が変質することにより導電性が低下している領域を含む。ここで、正孔注入層600の物性が変質しているとは、変質していない領域と変質している領域とを比較して、正孔注入層600を構成する多元素の元素は一致しているが、その物性が異なることをいう。
【0057】
遮断領域422は、有機絶縁層410の上側に存在する正孔注入層600に対して、有機絶縁層410の反対側(有機層が有機絶縁層410と接する面の反対側の面方向)から選択的にエネルギー線を照射することで形成される。エネルギー線は、有機層の有機分子を変質、劣化させ得るものであり、例えば、紫外線光、赤外線光、電子線、高強度白色光等が用いられる。このとき、エネルギー線は、正孔注入層600が吸収可能な波長を有することが好ましい。このように、エネルギー線を照射することにより、有機絶縁層410上に存在する有機層が導電性の低い遮断領域422を含むことで、隣接する副画素間を流れるリーク電流を低減することができる。
【0058】
なお、遮断領域422は、全ての副画素間において形成されてもよいし、特定の副画素の周囲に選択的に(例えば、第1副画素52、第2副画素54及び第3副画素56の中でもリーク電流による色純度の低下が顕著な第2副画素54の周囲に選択的に)形成されてもよい。また、遮断領域422は、同じ色の副画素間では設けなくてもよい。
【0059】
第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410の上側の領域において、正孔注入層600の遮断領域422を覆うように配置される。また、断面視で、第1キャリア遮断層308の第1発光層310r側の端部は、遮断領域422の第1発光層310r側の端部よりも発光領域302側に位置する。さらに、断面視で、第1キャリア遮断層308の第2発光層310g側の端部は、遮断領域422の第2発光層310g側の端部よりも発光領域302側に位置する。すなわち、第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410の上側の領域において変質した正孔注入層602を覆いかつ変質していない正孔注入層600と重なる領域を有する。
【0060】
従って、第1実施形態と同様に、リーク電流が正孔輸送層を流れる経路424を長くすることにより、リーク電流を低減できる。
【0061】
[第4実施形態]
続いて、第4実施形態について説明する。
図7は、第4実施形態における有機EL表示装置2の断面を示す図である。なお、第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0062】
図7に示すように、基板404から有機絶縁層410までの構成及び第2電極44から封止膜までの各構成は第1実施形態と同様である。また、有機絶縁層410及び第1電極304の上側に有機層が配置される点も第1実施形態と同様であるが、第4実施形態は、有機絶縁層410の上側の領域かつ発光層より下層において、遮断領域422が設けられていない点で第1実施形態と異なる。
【0063】
第4実施形態によれば、正孔注入層は、表示領域42全体にわたって、均一な厚さで形成される。また、第1キャリア遮断層308は、有機絶縁層410の上側の領域700(第1乃至第3実施形態の遮断領域422に相当する領域)において、キャリア輸送層とキャリア注入層の間に配置される。第1キャリア遮断層308は、第1実施形態と同様100nm以下の厚さで形成される。さらに、正孔輸送層は、第1キャリア遮断層308の上側に配置される。
【0064】
図8は、第1キャリア遮断層308及び正孔注入層の変形例を示す図である。第1正孔注入層306r乃至第3正孔注入層306bは、副画素毎に島状に設けられてもよい。横方向だけでなく、縦方向にも異なる色が並ぶ場合には、第1正孔注入層306r乃至第3正孔注入層306bは島状に設けられてもよい。図示はしないが、第1正孔注入層306r乃至第3正孔注入層306bは、複数個の副画素毎に島状に設けられてもよい。この場合の第1キャリア遮断層308は、
図8のように格子状に設けられることで各正孔注入層端部を全て覆い、正孔輸送層を通るリーク電流を低減することができる。また、第1キャリア遮断層308は、隣接画素の正孔輸送層の長辺側のみを覆ってもよい。この場合、第1キャリア遮断層308は
図3のようにストライプ形状を有する。
【0065】
図9は、第1キャリア遮断層308の他の変形例を示す図である。第1キャリア遮断層308は、
図9のように島状に設けられてもよい。この場合の第1キャリア遮断層308は、隣接画素の正孔輸送層の長辺側のみを覆っている。図示はしないが、第1キャリア遮断層308は、複数個の副画素毎に島状に設けられてもよい。
図9では、正孔注入層はストライプ状に形成されているが、
図8のように島状に設けられていてもよい。
【0066】
当該構成によれば、マスクを用いずに正孔注入層を形成できるため、製造工程に係る負荷を低減することができる。また、第1キャリア遮断層308による段差によって、第1キャリア遮断層308の端部の上側で正孔輸送層は薄く形成されたり、場合によっては不連続に形成されたりする。さらに、第1キャリア遮断層308の厚さだけ正孔輸送層を通るリーク経路424が長くなる。従って、第4実施形態によれば、正孔輸送層を通るリーク電流を低減することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成、または同一の目的を達成することができる構成により置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0068】
2 有機EL表示装置、4 画素アレイ部、6 OLED、8 画素回路、10 点灯TFT、12 駆動TFT、14 キャパシタ、20 走査線駆動回路、22 映像線駆動回路、24 駆動電源回路、26 制御装置、28 走査信号線、30 映像信号線、32 駆動電源線、42 表示領域、44 第2電極、46 部品実装領域、48 ドライバIC、50 FPC、52 第1副画素、54 第2副画素、56 第3副画素、302 発光領域、304 第1電極、306r 第1正孔注入層,306g 第2正孔注入層,306b 第3正孔注入層、308 第1キャリア遮断層、402 非発光領域、404 基板、406 アレイ層、408 平坦化膜、410 バンク、310r 第1発光層、310g 第2発光層、310b 第3発光層、414 第1正孔輸送層、414r 第2正孔輸送層、414g 第3正孔輸送層、416 電子輸送層、418 電子注入層、420 第2キャリア遮断層、422 遮断領域、424 リーク電流の経路、428 キャップ層、430 第1無機封止膜、432 有機封止膜、434 第2無機封止膜、500 正孔注入層、600 変質していない正孔注入層、602 変質した正孔注入層、700 遮断領域に相当する領域。