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特許7478524保護膜形成用フィルム、保護膜形成用複合シート、及び保護膜付きワーク加工物の製造方法
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  • 特許-保護膜形成用フィルム、保護膜形成用複合シート、及び保護膜付きワーク加工物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】保護膜形成用フィルム、保護膜形成用複合シート、及び保護膜付きワーク加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240425BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20240425BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240425BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240425BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20240425BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240425BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240425BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240425BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240425BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20240425BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240425BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L23/00 C
H01L23/30 D
C09J7/20
C09J7/30
C09J201/00
B32B7/023
B32B27/00 B
B23K26/57
B23K26/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019162134
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021040098
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】米山 裕之
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/163971(WO,A1)
【文献】特開2010-030279(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145938(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082968(WO,A1)
【文献】特開2006-140348(JP,A)
【文献】特開2015-058600(JP,A)
【文献】国際公開第2010/047322(WO,A1)
【文献】特開2012-028404(JP,A)
【文献】特開2018-081953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 23/00
H01L 23/29
C09J 7/20
C09J 7/30
C09J 201/00
B32B 7/023
B32B 27/00
B23K 26/57
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が266nmである光の透過率が60%以下であり、熱硬化性であり、エネルギー線硬化性ではなく、波長が532nmよりも短波長のレーザー光による印字用である、保護膜形成用フィルム。
【請求項2】
支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、を備え、
前記支持シートの、波長が266nmである光の透過率が20%以上であり、
前記保護膜形成用フィルムが、請求項1に記載の保護膜形成用フィルムである、保護膜形成用複合シート。
【請求項3】
前記支持シートの、波長が266nmである光の透過率が、前記保護膜形成用フィルムの、波長が266nmである光の透過率に対して、同等以上である、請求項2に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項4】
前記保護膜形成用複合シートが、半導体ウエハの裏面への貼付用であり、
前記半導体ウエハには、その前記裏面と、前記裏面とは反対側の回路形成面と、の間で貫通している溝が存在しない、請求項2又は3に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項5】
前記保護膜形成用複合シートが、ワークを加工することにより得られたワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を形成するためのものであり、
前記保護膜形成用フィルムが、ワークのいずれかの箇所に貼付して用いるためのものであり、
前記保護膜形成用フィルムの熱硬化物が保護膜であり、
前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成用フィルムを、前記ワークのいずれかの箇所に貼付した後、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの前記支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行うために、前記保護膜形成用複合シートを用いる、請求項2~4のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項6】
保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、
前記保護膜付きワーク加工物は、ワークを加工することにより得られたワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えており、
前記保護膜は、請求項2~5のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、
前記保護膜形成用フィルムの熱硬化物が保護膜であり、
前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用複合シートが設けられた第1積層体を作製する貼付工程と、
前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを熱硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、
前記貼付工程の後に、前記第1積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、波長が266nmであるレーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、
前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法。
【請求項7】
保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、
前記保護膜付きワーク加工物は、ワークを加工することにより得られたワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えており、
前記保護膜は、請求項1に記載の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、
前記保護膜形成用フィルムの熱硬化物が保護膜であり、
前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用フィルムが設けられた第2積層体を作製する貼付工程と、
前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを熱硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、
前記貼付工程の後に、前記第2積層体における前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜の前記ワーク側とは反対側の外部から、波長が266nmであるレーザー光を直接照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、
前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持シート、保護膜形成用フィルム、保護膜形成用複合シート、及び保護膜付きワーク加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程においては、目的物を得るために加工を必要とするワークを、保護膜で保護することがある。
例えば、フェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を適用した半導体装置の製造時においては、回路形成面上にバンプ等の電極を有する半導体ウエハがワークとして用いられ、半導体ウエハやその分割物である半導体チップにおいて、クラックの発生を抑制するために、半導体ウエハ又は半導体チップの回路形成面とは反対側の裏面を保護膜で保護することがある。また、半導体装置の製造過程では、ワークとして後述する半導体装置パネルが用いられ、このパネルにおいて反りやクラックの発生を抑制するために、パネルのいずれかの部位を保護膜で保護することがある。
【0003】
このような保護膜を形成するためには、例えば、支持シートを備え、保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムを、さらに前記支持シートの一方の面上に備えて構成された保護膜形成用複合シートが使用される。
保護膜形成用フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。また、支持シートは、保護膜形成用フィルム又は保護膜を備えたワークを固定するために利用できる。例えば、ワークとして半導体ウエハを用いた場合、支持シートは、半導体ウエハを半導体チップへと分割するときに必要なダイシングシートとして利用可能である。支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材からなるもの等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成用フィルムとの間に配置される。
【0004】
上述の保護膜形成用複合シートを用いる場合には、まず、ワークの目的とする箇所に、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを貼付する。
次いで、このような保護膜形成用複合シートを備えた状態のワークにおいて、必要に応じて加工を行うことにより、ワーク加工物を得る。そして、目的とする半導体装置を得るまでのいずれかの段階で、保護膜形成用フィルム又は保護膜の、ワーク又はワーク加工物への貼付面とは反対側の面(すなわち、保護膜形成用複合シート中においては、支持シート側の面)に、レーザー光の照射によって、印字(レーザー印字)を行うことがある。この印字は、例えば、保護膜を備えたワーク又はワーク加工物の識別に利用される。保護膜形成用フィルムに施された印字は、このフィルムの硬化によって保護膜が形成された後も、同様の状態が維持されるため、レーザー印字は、保護膜形成用フィルム及び保護膜の、いずれの段階で行ってもよい。
【0005】
例えば、支持シートと、保護膜形成用フィルム又は保護膜と、ワーク又はワーク加工物と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層された構造を有する積層体において、レーザー印字を行う場合には、前記積層体の支持シート側の外部から、支持シート越しに、保護膜形成用フィルム又は保護膜に対してレーザー光を照射するか、又は、前記積層体のワーク又はワーク加工物側の外部から、ワーク又はワーク加工物越しに、保護膜形成用フィルム又は保護膜に対してレーザー光を照射する。
【0006】
これらのうち、支持シート越しにレーザー光を照射する場合には、以下のような問題が生じることがある。すなわち、支持シートは、レーザー光を一定水準以上で透過させる必要があるのに対し、支持シートには通常、光を吸収可能な成分が含有されている。特に、硬化性の粘着剤層には、このような成分が多用されている。したがって、支持シートは、レーザー光の透過を過度に妨げないように、その組成を調節することが求められる。
【0007】
一方、このとき照射するレーザー光の波長は、印字が可能であればよい。これまでは、例えば、発生方法が確立されている、波長が532nm又は1064nmであるレーザー光が、汎用されている。しかし、波長がより短いレーザー光で印字した方が、印字精度が向上するとの知見が得られており、従来よりも短波長のレーザー光が利用可能であれば、有用性が高い。
【0008】
より短波長の光の透過率が一定水準以上である支持シートとしては、例えば、波長400nmでの光線透過率が30%以上であるダイシングテープが開示されている(特許文献1参照)。このダイシングテープは、支持シートに相当する。そして、このダイシングテープは、波長400nmでの光線透過率が20%以下である接着フィルムと一体化して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-74129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1で開示されているダイシングテープは、400nmよりも短波長の光線透過率が不明である。また、このダイシングテープは、接着フィルムと一体化されて使用されるものであり、この接着フィルムは、半導体チップ(前記ワーク加工物に相当)を目的とする箇所へ接着することを目的としており、半導体チップの裏面に保護膜を形成することを目的とはしていない。そして、このダイシングテープと接着フィルムの波長400nmでの光線透過率は、ダイシングテープ側から、接着フィルムとダイシングテープとの間の剥離の有無を観察可能とするために、特定されている。このように、特許文献1で開示されているダイシングテープと接着フィルムを一体化したものは、保護膜形成用複合シートではない。そして、ダイシングテープと接着フィルムに求められる、光の透過に関する特性は、これらの用途が異なる場合、当然に異なり得る。
これに対して、保護膜形成用複合シートとして、従来よりも短波長のレーザー光による印字を可能とするものは、知られていない。
【0011】
本発明は、支持シート及び保護膜形成用フィルムを備えて構成され、ワーク又はワーク加工物のいずれかの箇所を保護するための保護膜を、前記保護膜形成用フィルムから形成可能な保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの前記支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、従来よりも短波長のレーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行うことが可能な保護膜形成用複合シートを提供することを目的とする。
また、本発明は、前記保護膜形成用複合シートを構成可能な、支持シート及び保護膜形成用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、波長が266nmである光の透過率が20%以上である、支持シートを提供する。
本発明は、波長が266nmである光の透過率が60%以下である、保護膜形成用フィルムを提供する。
本発明は、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、を備え、前記支持シートが、前記本発明の支持シートであり、前記保護膜形成用フィルムが、前記本発明の保護膜形成用フィルムである、保護膜形成用複合シートを提供する。
【0013】
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、前記支持シートの、波長が266nmである光の透過率が、前記保護膜形成用フィルムの、波長が266nmである光の透過率に対して、同等以上であることが好ましい。
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、前記保護膜形成用複合シートが、半導体ウエハの裏面への貼付用であり、前記半導体ウエハには、その前記裏面と、前記裏面とは反対側の回路形成面と、の間で貫通している溝が存在しないことが好ましい。
本発明の保護膜形成用複合シートは、ワークを加工することにより得られたワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を形成するためのものであり、前記保護膜形成用フィルムが、ワークのいずれかの箇所に貼付して用いるためのものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成用フィルムを、前記ワークのいずれかの箇所に貼付した後、前記保護膜形成用複合シート中の前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの前記支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行うために、用いることが好ましい。
【0014】
本発明は、保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜付きワーク加工物は、ワークを加工することにより得られたワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えており、前記保護膜は、前記本発明の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用複合シートが設けられた第1積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記第1積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、波長が266nmであるレーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有し、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法を提供する。
本発明は、保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜付きワーク加工物は、ワークを加工することにより得られたワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えており、前記保護膜は、前記本発明の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用フィルム又は保護膜が設けられた第2積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記第2積層体における前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜の前記ワーク側とは反対側の外部から、波長が266nmであるレーザー光を直接照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有し、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、支持シート及び保護膜形成用フィルムを備えて構成され、ワーク又はワーク加工物のいずれかの箇所を保護するための保護膜を、前記保護膜形成用フィルムから形成可能な保護膜形成用複合シートであって、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの前記支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、従来よりも短波長のレーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行うことが可能な保護膜形成用複合シートが提供される。
また、本発明により、前記保護膜形成用複合シートを構成可能な、支持シート及び保護膜形成用フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを用いた場合の、保護膜付き半導体チップの製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
◇支持シート
本発明の一実施形態に係る支持シートは、波長が266nmである光(本明細書においては、「光(266nm)」と略記することがある)の透過率が20%以上である。
本実施形態の支持シートは、例えば、後述するように、保護膜形成用フィルムと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0018】
本実施形態の支持シートは、後述する保護膜形成用フィルム又は保護膜をいずれかの箇所に備えたワークを固定するために利用できる。
ワークとしては、例えば、半導体ウエハ、半導体装置パネル等が挙げられる。半導体装置パネルとは、半導体装置の製造過程で取り扱うものであり、その具体例としては、1個又は2個以上の電子部品が封止樹脂によって封止された状態の半導体装置を用い、複数個のこれら半導体装置が、円形、矩形等の形状の領域内に、平面的に配置されて構成されたものが挙げられる。
本明細書においては、ワークを加工したものを「ワーク加工物」と称する。例えば、ワークが半導体ウエハである場合、ワーク加工物としては半導体チップが挙げられる。
例えば、ワークが半導体ウエハである場合には、本実施形態の支持シートは、保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体ウエハを固定するために利用できる。
【0019】
前記支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材からなるもの;基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層の前記基材側とは反対側の面上に設けられた中間層と、を備えたもの;基材と、前記基材の一方の面上に設けられた中間層と、を備えたもの等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、後述する保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成用フィルムとの間に配置される。
【0020】
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートと保護膜形成用フィルムとの間の粘着力又は密着性を容易に調節できる。
基材からなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
基材、粘着剤層及び中間層を備えた支持シートを用いた場合には、支持シート又は保護膜形成用複合シートへの、新たな機能の付与が可能である。また、支持シートと保護膜形成用フィルムとの間の粘着力又は密着性を、上述の粘着剤層の場合よりもさらに容易に調節できる。
【0021】
本実施形態の支持シートは、光(266nm)の透過性が高い。したがって、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、波長が266nmであるなど、従来よりも短波長のレーザー光を照射することにより、保護膜形成用フィルム又は保護膜に、良好に印字できる。そして、この印字を、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、良好に視認できる。
本明細書において、「良好に印字できる」とは、印字適性が良好であること、すなわち、目的とする字を正確に識別可能に印字できることを意味する。また、「印字を良好に視認できる」とは、印字視認性が良好であること、すなわち、印字を視覚によって誤りなく認識できることを意味する。
【0022】
本明細書において、保護膜形成用複合シートを用いた場合の「印字」とは、特に断りのない限り、上記のように、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字することを意味する。
【0023】
本明細書において、保護膜形成用複合シートを用いた場合の「保護膜形成用フィルム又は保護膜の印字の視認」とは、特に断りのない限り、上記のように、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、保護膜形成用フィルム又は保護膜の印字を視認することを意味する。
【0024】
保護膜形成用フィルム又は保護膜の印字には、従来、波長が532nm又は1064nmであるレーザー光が、汎用されている。
これに対して、波長が266nmであるなど、従来よりも短波長のレーザー光で印字することにより、印字精度が向上する。
【0025】
前記支持シートの光(266nm)の透過率は、23%以上であることが好ましく、例えば、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、及び80%以上のいずれかであってもよい。支持シートの前記透過率が前記下限値以上であることで、保護膜形成用フィルム又は保護膜に対する印字適性と、これらの印字視認性がより向上する。
【0026】
前記支持シートの光(266nm)の透過率の上限値は、特に限定されず、例えば、100%であってもよい。例えば、前記透過率が97%以下である支持シートは、その製造がより容易である。
【0027】
前記支持シートの光(266nm)の透過率は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、支持シートの前記透過率は、20~97%であることが好ましく、23~97%であることがより好ましく、例えば、40~97%、50~97%、60~97%、70~97%、及び80~97%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、支持シートの前記透過率の一例である。
【0028】
◎基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、光(266nm)の透過性を有する。
【0029】
前記基材の構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリアクリル酸エステル;ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0030】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0031】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0032】
本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0033】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~140μmであることがより好ましく、80~100μmであることがさらに好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、ワーク又はワーク加工物への貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0034】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0035】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
例えば、基材の充填材又は着色剤の含有の有無、あるいは、基材が充填材又は着色剤を含有する場合のこれらの含有量、を調節することで、基材の光(266nm)の透過率を容易に調節できる。
【0036】
基材は、例えば、光(266nm)の吸収性を有する成分を含有しないか、又は、その含有量が少ないものが好ましい。ここで、光(266nm)の吸収性を有する成分としては、例えば、ベンゼン環骨格(すなわち、ベンゼンから1~6個の水素原子が除かれた構造を有する基)を有する樹脂又は着色剤等の、芳香族環式基を有する化合物が挙げられる。
【0037】
基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくとも一方の面において、粘着性を有するものであってもよい。
【0038】
基材の光学特性は、支持シートが、先に説明したその光(266nm)の透過率の条件を満たすようになっていればよい。
例えば、上述のとおり、基材のみで支持シートが構成されることもあるため、基材の光(266nm)の透過率は、先に例示した支持シートの光(266nm)の透過率と、同じであってもよい。
【0039】
さらに、上述の支持シートの光(266nm)の透過率の場合と同じ理由で、基材の光(266nm)の透過率は、例えば、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、及び90%以上のいずれかであってもよい。
【0040】
また、上述の支持シートの光(266nm)の透過率の場合と同じ理由で、基材の光(266nm)の透過率の上限値は、特に限定されず、例えば、100%であってもよい。例えば、前記透過率が97%以下である基材は、その製造又は入手がより容易である。
【0041】
また、基材の光(266nm)の透過率は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、基材の前記透過率は、40~97%、50~97%、60~97%、70~97%、80~97%、及び90~97%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、基材の前記透過率の一例である。
【0042】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、保護膜形成用フィルム等)との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
また、基材は、帯電防止コート層;保護膜形成用複合シートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有していてもよい。
また、基材は、その表面に剥離処理層を有していてもよい。
【0043】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0044】
◎粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、光(266nm)の透過性を有する。
【0045】
前記粘着剤層は、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0046】
なお、本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0047】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0048】
粘着剤層の厚さは1~14μmであることが好ましく、2~12μmであることがより好ましく、例えば、3~8μmであってもよい。粘着剤層の厚さが前記下限値以上であることで、粘着剤層を設けたことによる効果が、より顕著に得られる。粘着剤層の厚さが前記上限値以下であることで、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に、より良好に印字できる。そして、この印字を、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、より良好に視認できる。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0049】
粘着剤層の光学特性は、支持シートが、先に説明したその光(266nm)の透過率の条件を満たすようになっていればよい。
【0050】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。すなわち、粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。例えば、後述する保護膜付き半導体チップ又は保護膜形成用フィルム付き半導体チップのピックアップ前に、エネルギー線硬化性の粘着剤層を硬化させることにより、これら半導体チップをより容易にピックアップできる。
【0051】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0052】
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0053】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0054】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されない。粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0055】
基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層すればよい。また、基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0056】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);前記粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0057】
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
【0058】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)、粘着剤組成物(I-3)及び粘着剤組成物(I-4)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-4)」と略記する)における前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0059】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0060】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0061】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0062】
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0063】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0064】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、前記アクリル系重合体等の前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0065】
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましい。
【0066】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0067】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)において、粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0068】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着剤組成物(I-2)及び(I-3)における前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0069】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0070】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0072】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0073】
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I-1)及び(I-3)における前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0074】
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
【0075】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0076】
前記粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましい。
【0077】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0078】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士又は粘着性樹脂(I-2a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0079】
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)又は(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0080】
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、例えば、0.01~35質量部、及び0.01~20質量部のいずれかであってもよい。
前記粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、例えば、0.01~35質量部、0.01~20質量部、及び0.01~10質量部のいずれかであってもよい。
【0081】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0082】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0083】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0084】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、例えば、0.01~10質量部、及び0.01~5質量部のいずれかであってもよい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0085】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0086】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0087】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0088】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
なお、本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、対象成分を溶解させるものだけでなく、対象成分を分散させる分散媒も含む概念とする。
【0089】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0090】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0091】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0092】
前記粘着剤層及び粘着剤組成物は、例えば、光(266nm)の吸収性を有する成分を含有しないか、又は、その含有量が少ないものが好ましい。ここで、光(266nm)の吸収性を有する成分としては、上述の基材の場合と同じものが挙げられる。
【0093】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)等の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0094】
◎中間層
前記中間層は、シート状又はフィルム状であり、光(266nm)の透過性を有する。
【0095】
前記中間層は、保護膜形成用複合シート中では、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間に配置される。
中間層の種類は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0096】
中間層の光学特性は、支持シートが、先に説明したその光(266nm)の透過率の条件を満たすようになっていればよい。
【0097】
中間層は、その種類に応じて、公知の方法で形成できる。例えば、樹脂を主要構成成分とする中間層は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで形成できる。
【0098】
中間層として、例えば、その一方の面が剥離処理されている剥離性改善層が挙げられる。
【0099】
○剥離性改善層
剥離性改善層としては、例えば、樹脂層と、前記樹脂層上に形成された剥離処理層と、を備えて構成された、複数層からなるものが挙げられる。
保護膜形成用複合シート中で、剥離性改善層は、その剥離処理層を保護膜形成用フィルム側に向けて、配置されている。
【0100】
剥離性改善層のうち、前記樹脂層は、樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで作製できる。
そして、剥離性改善層は、前記樹脂層の一方の面を剥離処理することで製造できる。
【0101】
前記樹脂層の剥離処理は、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系又はワックス系等の、公知の各種剥離剤によって行うことができる。
前記剥離剤は、耐熱性を有する点では、アルキッド系、シリコーン系又はフッ素系の剥離剤であることが好ましい。
【0102】
前記樹脂層の構成材料である樹脂は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
前記樹脂で好ましいものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【0103】
前記樹脂層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0104】
剥離性改善層の厚さ(樹脂層及び剥離処理層の合計の厚さ)は、10~2000nmであることが好ましく、25~1500nmであることがより好ましく、50~1200nmであることが特に好ましい。剥離性改善層の厚さが前記下限値以上であることで、剥離性改善層の作用がより顕著となり、さらに、剥離性改善層の切断等の破損を抑制する効果がより高くなる。剥離性改善層の厚さが前記上限値以下であることで、後述する保護膜又は保護膜形成用フィルムを裏面に備えた半導体チップを、より容易にピックアップできる。
【0105】
前記中間層は、例えば、光(266nm)の吸収性を有する成分を含有しないか、又は、その含有量が少ないものが好ましい。ここで、光(266nm)の吸収性を有する成分としては、上述の基材の場合と同じものが挙げられる。
【0106】
ここまでは、前記支持シートを保護膜形成用フィルムと併用して、保護膜形成用複合シートを構成する場合について、主に説明したが、前記支持シートは、保護膜形成用フィルムと併用せずに、保護膜形成用複合シートを構成していない状態で用いてもよい。
例えば、前記支持シートをワークのいずれかの箇所に直接貼付した後、ワークの前記支持シートの貼付箇所に対して、ワークの外部から支持シート越しに、波長が266nmであるなど、従来よりも短波長のレーザー光を照射することにより、ワークの前記支持シートの貼付箇所に良好に印字できる。そして、この印字を、ワークの外部から支持シート越しに、良好に視認できる。
ワークのいずれかの箇所に対して、支持シート越しに印字を行う場合には、通常、支持シート越しに保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して印字を行う場合と同様に、良好に印字でき、良好にこの印字を視認できる。
保護膜形成用複合シートを構成せずに用いる場合の支持シートは、保護膜形成用複合シートを構成して用いる場合の支持シートと、同様であってよい。
【0107】
◇保護膜形成用フィルム
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、波長が266nmである光(光(266nm))の透過率が60%以下である。
本実施形態の保護膜形成用フィルムは、例えば、後述するように、支持シートと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0108】
本実施形態の保護膜形成用フィルムは、ワーク加工物のいずれかの箇所を保護するための保護膜を形成し、加工前のワークのいずれかの箇所を保護するための保護膜も形成可能である。ワークが半導体ウエハである場合には、本実施形態の保護膜形成用フィルムを用いることで、半導体ウエハ及び半導体チップの回路形成面とは反対側の面(本明細書においては、いずれの場合も「裏面」と称することがある)に保護膜を形成できる。本明細書においては、このように保護膜を備えたワーク加工物を「保護膜付きワーク加工物」と称することがあり、裏面に保護膜を備えた半導体チップを「保護膜付き半導体チップ」と称することがある。
前記保護膜形成用フィルムは、軟質であり、ワーク及びワーク加工物等の貼付対象物に、容易に貼付できる。
【0109】
本実施形態の保護膜形成用フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。硬化していない状態で保護膜として機能する前記保護膜形成用フィルムは、例えば、ワークの目的とする箇所に貼付された段階で、保護膜を形成したと見做せる。
【0110】
本実施形態の保護膜形成用フィルムは、光(266nm)の透過性が低く、光(266nm)の吸収性が高い。したがって、保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、波長が266nmであるなど、従来よりも短波長のレーザー光を照射することにより、保護膜形成用フィルム又は保護膜に、良好に印字できる。
さらに、本実施形態の保護膜形成用フィルムは、このように短波長のレーザー光を照射することにより、従来よりも高精度に印字できる。
なお、保護膜形成用フィルムと、その硬化物(例えば保護膜)とは、同じ波長の光に対して、概ね、同等の透過率、同等の吸収率を示す。
【0111】
さらに、本実施形態の保護膜形成用フィルムは、光(266nm)の透過性が一定水準以上である支持シートと組み合わせて、保護膜形成用複合シートを構成した場合、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、波長が266nmであるなど、従来よりも短波長のレーザー光を照射することにより、保護膜形成用フィルム又は保護膜に、良好に印字できる。そして、この印字を、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、良好に視認できる。
【0112】
前記保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率は、例えば、55%以下、45%以下、35%以下、25%以下、及び15%以下のいずれかであってもよい。保護膜形成用フィルムの前記透過率が前記上限値以下であることで、保護膜形成用フィルム又は保護膜に対する印字適性と、これらの印字視認性がより向上する。
【0113】
前記保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率の下限値は、特に限定されない。例えば、前記透過率は、0%以上、及び1%以上のいずれかであってもよい。
【0114】
前記保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、保護膜形成用フィルムの前記透過率は、0~60%であることが好ましく、例えば、0~55%、0~45%、0~35%、0~25%、及び0~15%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、保護膜形成用フィルムの前記透過率の一例である。
【0115】
前記保護膜形成用フィルムは、上述のとおり、硬化性であってもよいし、非硬化性であってもよい。
硬化性の保護膜形成用フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。
本明細書において、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
【0116】
保護膜形成用フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成する場合には、エネルギー線の照射によって硬化させる場合とは異なり、保護膜形成用フィルムは、その厚さが厚くなっても、加熱によって十分に硬化するため、保護性能が高い保護膜を形成できる。また、加熱オーブン等の通常の加熱手段を用いることによって、多数の保護膜形成用フィルムを一括して加熱し、熱硬化させることができる。
保護膜形成用フィルムを、エネルギー線の照射によって硬化させて、保護膜を形成する場合には、熱硬化させる場合とは異なり、保護膜形成用複合シートは耐熱性を有する必要がなく、幅広い範囲の保護膜形成用複合シートを構成できる。また、エネルギー線の照射によって、短時間で硬化させることができる。
保護膜形成用フィルムを硬化させずに保護膜として用いる場合には、硬化工程を省略できるため、簡略化された工程で保護膜付きワーク加工物を製造できる。
【0117】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成用フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0118】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることが特に好ましく、例えば、5~40μm、及び5~20μmのいずれかであってもよい。保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
ここで、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルムの厚さとは、保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0119】
<<保護膜形成用組成物>>
保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
熱硬化性保護膜形成用フィルムは、熱硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、非硬化性保護膜形成用フィルムは、非硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。なお、本明細書においては、保護膜形成用フィルムが、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有する場合、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムの熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムを熱硬化性のものとして取り扱う。反対に、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムをエネルギー線硬化のものとして取り扱う。
【0120】
保護膜形成用組成物の塗工は、例えば、上述の粘着剤組成物の塗工の場合と同じ方法で行うことができる。
【0121】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、熱硬化性保護膜形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性保護膜形成用フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0122】
以下、熱硬化性保護膜形成用フィルム、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム及び非硬化性保護膜形成用フィルムについて、順次説明する。
【0123】
◎熱硬化性保護膜形成用フィルム
熱硬化性保護膜形成用フィルムをワークの目的とする箇所に貼付し、熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、熱硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、110~180℃であることがより好ましく、120~170℃であることが特に好ましい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、0.5~3時間であることがより好ましく、1~2時間であることが特に好ましい。
【0124】
好ましい熱硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0125】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)>
好ましい熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)(本明細書においては、単に「組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0126】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0127】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0128】
重合体成分(A)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0129】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルム及びその硬化物の被着体との接着力が向上する。
【0130】
アクリル系樹脂がm種(mは2以上の整数である。)の構成単位を有し、これら構成単位を誘導するm種のモノマーに対して、それぞれ1からmまでのいずれかの重複しない番号を順次割り当てて、「モノマーm」と名付けた場合、アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、以下に示すFoxの式を用いて算出できる。
【0131】
【数1】
(式中、Tgはアクリル系樹脂のガラス転移温度であり;mは2以上の整数であり;Tgはモノマーmのホモポリマーのガラス転移温度であり;Wはアクリル系樹脂における、モノマーmから誘導された構成単位mの質量分率であり、ただし、Wは下記式を満たす。)
【0132】
【数2】
(式中、m及びWは、前記と同じである。)
【0133】
前記Tgとしては、高分子データ・ハンドブック又は粘着ハンドブックに記載されている値を使用できる。例えば、アクリル酸メチルのホモポリマーのTgは10℃であり、メタクリル酸メチルのホモポリマーのTgは105℃であり、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのホモポリマーのTgは-15℃である。
【0134】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0135】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0136】
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0137】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0138】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0139】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0140】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0141】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0142】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0143】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0144】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合)は、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましく、例えば、20~45質量%、及び20~35質量%のいずれかであってもよく、35~60質量%、及び45~60質量%のいずれかであってもよい。
【0145】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III-1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0146】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化させるための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0147】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0148】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0149】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0150】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性が向上する。
【0151】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0152】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに、保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0153】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0154】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0155】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0156】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0157】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0158】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0159】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0160】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、例えば、0.5~25質量部、0.5~10質量部、及び0.5~5質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0161】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、5~120質量部であることが好ましく、5~80質量部であることがより好ましく、例えば、5~40質量部、5~20質量部、及び5~10質量部のいずれかであってもよく、40~80質量部、50~75質量部、及び60~75質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0162】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0163】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0164】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成用フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。
【0165】
[充填材(D)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムと保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0166】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0167】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0168】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合)は、15~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましく、例えば、35~60質量%、40~60質量%、及び45~60質量%のいずれかであってもよく、30~55質量%、30~50質量%、及び30~45質量%のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の、熱硬化性保護膜形成用フィルムと保護膜の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0169】
[カップリング剤(E)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0170】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0171】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0172】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0173】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0174】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0175】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0176】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III-1)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0177】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0178】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0179】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0180】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0181】
重合に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0182】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0183】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III-1)において、組成物(III-1)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0184】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0185】
組成物(III-1)における光重合開始剤(H)としては、例えば、上述の粘着剤組成物が含有していてもよい光重合開始剤と同じものが挙げられる。
【0186】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0187】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III-1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0188】
[着色剤(I)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、着色剤(I)を含有していることが好ましい。着色剤(I)を用いることにより、光(266nm)の透過率が60%以下である保護膜形成用フィルムを、より容易に製造できる。
【0189】
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0190】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0191】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0192】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0193】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、熱硬化性保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率を調節することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルム又は保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、半導体ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これらの点を考慮すると、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、着色剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合)は、0.05~12質量%であることが好ましく、0.05~9質量%であることがより好ましく、0.1~7質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、前記割合が前記上限値以下であることで、着色剤(I)の過剰使用が抑制される。
【0194】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0195】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0196】
[溶媒]
組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0197】
組成物(III-1)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(III-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0198】
組成物(III-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0199】
<熱硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(III-1)等の熱硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
熱硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0200】
◎エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムをワークの目的とする箇所に貼付し、エネルギー線硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、120~280mW/cmであることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cmであることが好ましい。
【0201】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、エネルギー線硬化性成分(a)を含有するものが挙げられ、エネルギー線硬化性成分(a)及び充填材を含有するものが好ましい。
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0202】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)>
好ましいエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)(本明細書においては、単に「組成物(IV-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0203】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0204】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0205】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、ワークやワーク加工物等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0206】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0207】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0208】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0209】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0210】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0211】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0212】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0213】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0214】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0215】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0216】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0217】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0218】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合)は、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0219】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0220】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が、その1分子中に有する前記エネルギー線硬化性基の数は、特に限定されず、例えば、目的とする保護膜に求められる収縮率等の物性を考慮して、適宜選択できる。
例えば、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0221】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0222】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0223】
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの硬化物の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0224】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0225】
前記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものである場合、前記重合体(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤と反応する基を有するモノマーが重合して、前記架橋剤と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0226】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0227】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0228】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0229】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0230】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0231】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0232】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0233】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0234】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0235】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0236】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0237】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、先に説明した、アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマー(アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)と同じものが挙げられる。
【0238】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0239】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0240】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0241】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、ワークやワーク加工物の回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0242】
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0243】
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0244】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0245】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0246】
組成物(IV-1)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0247】
組成物(IV-1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、組成物(IV-1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0248】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量の前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0249】
組成物(IV-1)は、前記エネルギー線硬化性成分以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0250】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III-1)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0251】
例えば、前記エネルギー線硬化性成分及び熱硬化性成分を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、このエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
また、前記エネルギー線硬化性成分及び着色剤を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0252】
組成物(IV-1)において、前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0253】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0254】
組成物(IV-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV-1)が含有する溶媒としては、例えば、組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
組成物(IV-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0255】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(IV-1)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0256】
◎非硬化性保護膜形成用フィルム
好ましい非硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂及び充填材を含有するものが挙げられる。
【0257】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)>
好ましい非硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記熱可塑性樹脂及び充填材を含有する非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)(本明細書においては、単に「組成物(V-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0258】
[熱可塑性樹脂]
前記熱可塑性樹脂は、特に限定されない。
前記熱可塑性樹脂として、より具体的には、例えば、上述の組成物(III-1)の含有成分として挙げた、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等の、硬化性ではない樹脂と同様のものが挙げられる。
【0259】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0260】
組成物(V-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合)は、25~75質量%であることが好ましい。
【0261】
[充填材]
充填材を含有する非硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有する熱硬化性保護膜形成用フィルムと、同様の効果を奏する。
【0262】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材としては、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)と同じものが挙げられる。
【0263】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0264】
組成物(V-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材の含有量の割合)は、25~75質量%であることが好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、組成物(III-1)を用いた場合と同様に、非硬化性保護膜形成用フィルム(すなわち保護膜)の熱膨張係数の調整が、より容易となる。
【0265】
組成物(V-1)は、前記熱可塑性樹脂及び充填材以外に、目的に応じて、他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記熱可塑性樹脂及び着色剤を含有する組成物(V-1)を用いることにより、形成される非硬化性保護膜形成用フィルム(換言すると保護膜)は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0266】
組成物(V-1)において、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0267】
組成物(V-1)の前記他の成分の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0268】
組成物(V-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(V-1)が含有する溶媒としては、例えば、上述の組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(V-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
組成物(V-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0269】
<非硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(V-1)等の非硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
非硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0270】
ここまでは、保護膜形成用フィルムを前記支持シートと併用して、保護膜形成用複合シートを構成する場合について、主に説明したが、保護膜形成用フィルムは、前記支持シートと併用せずに、保護膜形成用複合シートを構成していない状態で用いてもよい。
例えば、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムをワークのいずれかの箇所に貼付した後、保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、その外部から直接レーザー光を照射することにより、保護膜形成用フィルム又は保護膜に良好に印字できる。このような場合の印字工程については、後ほど詳しく説明する。
保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、支持シートを介さずに直接印字を行う場合には、支持シート越しに印字を行う場合に対して、通常、印字適性が同等以上となる。
保護膜形成用複合シートを構成せずに用いる場合の保護膜形成用フィルムは、保護膜形成用複合シートを構成して用いる場合の保護膜形成用フィルムと、同様であってよい。
保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムをワークに貼付する場合には、保護膜形成用フィルムのワークへの貼付面とは反対側の面には、剥離フィルムが設けられていてもよく、その場合、剥離フィルムは、レーザー光の照射前に取り除くことが好ましい。
【0271】
◇保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、を備え、前記支持シートが、上述の本発明の一実施形態に係る支持シートであり、前記保護膜形成用フィルムが、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムである。
【0272】
本実施形態の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムは、上述のとおり、硬化性又は非硬化性である。
前記保護膜形成用複合シートは、その中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行うために、用いることができる。
本実施形態においては、保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、ワークのいずれかの箇所に貼付された後の保護膜形成用フィルムを保護膜として取り扱う。
【0273】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、より具体的には、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成用フィルムと、を備え、前記支持シートの光(266nm)の透過率が20%以上であり、前記保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率が60%以下である。
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、支持シートの光(266nm)の透過率が高く、かつ、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率が低いため、従来よりも短波長(例えば、波長が266nm)のレーザー光を照射した場合であっても、保護膜形成用フィルム又は保護膜に、良好に印字できる。そして、この印字を、支持シート越しに良好に視認できる。
【0274】
本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、支持シートの光(266nm)の透過率が、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率に対して、同等以上([支持シートの光(266nm)の透過率(%)]≧[保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率])であることが好ましい。そして、支持シートの光(266nm)の透過率が、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率よりも高い([支持シートの光(266nm)の透過率(%)]>[保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率]である)ことがより好ましい。このような条件を満たす保護膜形成用複合シートは、従来よりも短波長(例えば、波長が266nm)のレーザー光を照射した場合であっても、保護膜形成用フィルム又は保護膜に良好に印字でき、かつ、この印字を支持シート越しに良好に視認できる、という効果がより高くなる。
【0275】
本明細書においては、保護膜形成用フィルムが硬化した後であっても、支持シートと、保護膜形成用フィルムの硬化物(例えば保護膜)と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0276】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、基材と、粘着剤層と、中間層と、保護膜形成用フィルムと、剥離フィルムと、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
前記他の層の種類は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層の配置位置、形状、大きさ等も、その種類に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0277】
本実施形態の保護膜形成用複合シートの貼付対象であるワークの厚さは、特に限定されないが、後述するワーク加工物への加工(例えば分割)がより容易となる点では、30~1000μmであることが好ましく、70~400μmであることがより好ましい。
【0278】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、ワークへの貼付用であるが、貼付対象であるワークで好ましいものとしては、例えば、半導体ウエハが挙げられる。前記保護膜形成用複合シートは、半導体ウエハの裏面への貼付用であることが好ましい。
前記保護膜形成用複合シートは、半導体ウエハの裏面への貼付用であり、かつ、前記半導体ウエハには、その前記裏面と前記回路形成面との間で、貫通している溝が存在しないことがより好ましく、半導体ウエハの裏面への貼付用であり、かつ、前記半導体ウエハには、その前記裏面と前記回路形成面との間で、貫通している溝と、亀裂と、がともに存在していなくてもよい。
【0279】
前記保護膜形成用複合シートの貼付対象には、加工操作後のワークは、含まれない。ここで、「加工操作後のワーク」としては、目的とするワーク加工物と、加工が完了していない状態のワークと、が挙げられる。加工が完了していない状態のワークとしては、例えば、加工途中のワークと、加工を試みたものの、一部で加工が不完全となった状態のワーク等が挙げられる。加工が完了していない状態のワークとしては、例えば、半導体ウエハの半導体チップへの分割を試みたものの、一部で分割が不完全となった状態のものが挙げられる。
【0280】
図1は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に設けられた保護膜形成用フィルム13と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成用フィルム13との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート10の保護膜形成用フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
【0281】
保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成用フィルム13上に、治具用接着剤層16及び剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の保護膜形成用フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。
【0282】
保護膜形成用複合シート101の場合に限らず、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルム(例えば、図1に示す剥離フィルム15)は任意の構成であり、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、剥離フィルムを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0283】
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造を有していてもよい。
【0284】
保護膜形成用複合シート101においては、支持シート10の光(266nm)の透過率が20%以上であり、かつ、保護膜形成用フィルム13の光(266nm)の透過率が60%以下である。
【0285】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aにワーク(図示略)のいずれかの箇所が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0286】
図2は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0287】
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成用フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用接着剤層が保護膜形成用フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0288】
より具体的には、保護膜形成用複合シート102において、保護膜形成用フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(図2における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。そして、保護膜形成用フィルム23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、治具用接着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。
【0289】
図3は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート103は、支持シート10に代えて支持シート20を備えて構成されている点と、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
支持シート20は、基材11と、基材11の第1面11a上に設けられた粘着剤層12と、粘着剤層12の第1面12a上に設けられた中間層17と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート103中、中間層17は、粘着剤層12と保護膜形成用フィルム23との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート103は、基材11、粘着剤層12、中間層17及び保護膜形成用フィルム23がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート20の保護膜形成用フィルム23側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)20aは、粘着剤層12の第1面12aと同じである。
【0290】
中間層17の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)17aの面積は、粘着剤層12の第1面12a(すなわち、保護膜形成用フィルム23が積層されている領域と積層されていない領域とを合わせた領域)の面積よりも小さい。
中間層17の第1面17aの平面形状は、特に限定されず、例えば、円形状等であってよい。
中間層17の第1面17aの形状及び大きさは、保護膜形成用フィルム23の第1面23aの形状及び大きさと、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、保護膜形成用フィルム23の第1面23aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)23bの全面が、中間層17で被覆されていることが好ましい。
【0291】
図4は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート104は、支持シート10に代えて支持シート30を備えて構成されている点以外は、図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
支持シート30は、基材11のみからなる。
すなわち、保護膜形成用複合シート104は、基材11及び保護膜形成用フィルム13が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート30の保護膜形成用フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)30aは、基材11の第1面11aと同じである。
基材11は、少なくともその第1面11aにおいて、粘着性を有する。
【0292】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、図1図4に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1図4に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。より具体的には、以下のとおりである。
【0293】
ここまでは、基材からなる支持シートを備えた保護膜形成用複合シートについては、図4に示す保護膜形成用複合シート104のみを示しているが、基材からなる支持シートを備えた保護膜形成用複合シートとしては、例えば、図2に示す保護膜形成用複合シート102において、粘着剤層12を備えていないものも挙げられる。ただし、これは、基材からなる支持シートを備えた他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0294】
ここまでは、支持シートの一部として中間層を備えた保護膜形成用複合シートについては、図3に示す保護膜形成用複合シート103のみを示しているが、中間層を備えた保護膜形成用複合シートとしては、例えば、以下に示すものも挙げられる。ただし、これらは、中間層を備えた他の保護膜形成用複合シートの一例である。
図1に示す保護膜形成用複合シート101において、粘着剤層12と保護膜形成用フィルム13との間に、図3に示すものと同様の中間層を備えたもの。
図2に示す保護膜形成用複合シート102において、粘着剤層12と保護膜形成用フィルム23との間に、図3に示すものと同様の中間層を備えたもの。
図4に示す保護膜形成用複合シート104において、基材11と保護膜形成用フィルム13との間に、図3に示すものと同様の中間層を備えたもの。
【0295】
ここまでは、治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートについては、図1に示す保護膜形成用複合シート101、図2に示す保護膜形成用複合シート102、及び図4に示す保護膜形成用複合シート104を示しているが、治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートとしては、例えば、図3に示す保護膜形成用複合シート103において、粘着剤層12の第1面12aのうち、中間層17及び保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域に、図1等に示すものと同様の治具用接着剤層を備えたものも挙げられる。ただし、これは、治具用接着剤層を備えた他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0296】
このような治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートは、図1に示す保護膜形成用複合シート101等の場合と同様に、治具用接着剤層の第1面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
このように、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、支持シート及び保護膜形成用フィルムがどのような形態であっても、治具用接着剤層を備えたものであってもよい。
【0297】
ここまでは、治具用接着剤層を備えていない保護膜形成用複合シートについては、図3に示す保護膜形成用複合シート103のみを示しているが、治具用接着剤層を備えていない保護膜形成用複合シートとしては、例えば、図2に示す保護膜形成用複合シート102において、治具用接着剤層16を備えていないものも挙げられる。ただし、これは、治具用接着剤層を備えていない他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0298】
図1図4においては、保護膜形成用複合シートを構成するものとして、基材、粘着剤層、中間層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムを示しているが、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、これらのいずれにも該当しない、前記他の層を備えていてもよい。
図1図4に示す保護膜形成用複合シートが前記他の層を備えている場合、その配置位置は、特に限定されない。
【0299】
本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、各層の大きさ及び形状は、目的に応じて任意に選択できる。
【0300】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0301】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせる方法でも、基材上に粘着剤層を積層できる。このとき、粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に中間層又は前記他の層を積層する場合にも適用できる。
【0302】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成用フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成用フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に中間層又は前記他の層を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
【0303】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0304】
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成用フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートが得られる。
【0305】
◇保護膜付きワーク加工物の製造方法(保護膜形成用複合シートの使用方法)
前記保護膜形成用複合シートは、前記保護膜付きワーク加工物の製造に用いることができる。
ワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を備えた、保護膜付きワーク加工物の製造方法の一例としては、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)第1積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記第1積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有し、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法が挙げられる。
【0306】
前記貼付工程後の各工程において、保護膜形成用フィルム及び保護膜のいずれを取り扱うかは、保護膜を形成するタイミングで決定される。保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、貼付工程後に取り扱うのは、いずれの工程においても保護膜である。保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、硬化工程前に取り扱うのは保護膜形成用フィルムであり、硬化工程後に取り扱うのは保護膜である。
したがって、印字工程においては、前記第1積層体における保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムに対して、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、保護膜形成用フィルムに印字を行うか、又は、前記第1積層体における保護膜形成用複合シート中の保護膜に対して、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、保護膜に印字を行う。
【0307】
ワークが半導体ウエハである場合の保護膜付きワーク加工物、すなわち保護膜付き半導体チップの製造方法の一例としては、半導体チップの裏面に保護膜を備えた、保護膜付き半導体チップの製造方法であって、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、前記半導体ウエハの裏面に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜付き半導体チップの製造方法は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、前記半導体ウエハの裏面に貼付することにより、前記半導体ウエハの裏面に前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)第1積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記第1積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記半導体ウエハを分割することにより、半導体チップを作製する分割工程と、前記印字工程の後に、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜を切断する切断工程 と、前記切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を備えた前記半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有し、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、を有する、保護膜付き半導体チップの製造方法が挙げられる。
【0308】
前記製造方法においては、前記レーザー光の波長が、従来よりも短波長であることが好ましく、266nmであることがより好ましい。
【0309】
前記製造方法において、ワークが半導体ウエハである場合には、ワークとしては、先に説明したものを使用できる。
【0310】
前記製造方法においては、上述の本実施形態の保護膜形成用複合シートを用いることにより、波長が266nm等の短波長の前記レーザー光を照射した場合であっても、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に、良好に印字できる。さらに、この印字を、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、良好に視認できる。
【0311】
前記製造方法は、前記硬化工程を有する場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(1)」と称することがある)と、前記硬化工程を有しない場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(2)」と称することがある)と、に分けられる。
以下、これら製造方法について、順次説明する。
【0312】
<<製造方法(1)>>
前記製造方法(1)は、ワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を備えた、保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性であるため、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)第1積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、前記貼付工程の後に、前記第1積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有する。
【0313】
ワークが半導体ウエハである場合には、前記製造方法(1)としては、半導体チップの裏面に保護膜を備えた、保護膜付き半導体チップの製造方法であって、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性であるため、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜付き半導体チップの製造方法は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、前記半導体ウエハの裏面に貼付することにより、前記半導体ウエハの裏面に前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)第1積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、前記貼付工程の後に、前記第1積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記半導体ウエハを分割することにより、半導体チップを作製する分割工程と、前記印字工程の後に、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜を切断する切断工程 と、前記切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を備えた前記半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する。
【0314】
ワークが半導体ウエハである場合、前記分割工程及び切断工程を行う順番は、目的に応じて任意に選択でき、分割工程を行ってから切断工程を行ってもよいし、分割工程及び切断工程を同時に行ってもよいし、切断工程を行ってから分割工程を行ってもよい。
本実施形態においては、半導体ウエハの分割と、保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断とを、その順序によらず、中断することなく同じ操作によって連続的に行った場合には、分割工程及び切断工程を同時に行ったものとみなす。
【0315】
分割工程及び切断工程は、いずれも、これらを行う順番に応じて、公知の方法で行うことができる。
【0316】
分割工程を行ってから切断工程を行う場合には、半導体ウエハの分割(換言すると固片化)は、例えば、ステルスダイシング(登録商標)又はレーザーダイシング等によって行うことができる。
ステルスダイシング(登録商標)とは、以下のような方法である。すなわち、まず、半導体ウエハの内部において、分割予定箇所を設定し、この箇所を焦点として、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成する。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、半導体ウエハに力が加えられることにより、半導体ウエハの内部の改質層において、半導体ウエハの両面方向に延びる亀裂が発生し、半導体ウエハの分割(切断)の起点となる。次いで、半導体ウエハに力を加えて、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割し、半導体チップを作製する。
【0317】
分割工程を行ってから切断工程を行う場合には、保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断は、例えば、保護膜形成用フィルム又は保護膜を、その半導体チップへの貼付面に対して平行な方向に引っ張る、所謂エキスパンドによって行うことができる。エキスパンドされた保護膜形成用フィルム又は保護膜は、半導体チップの外周に沿って切断される。このようなエキスパンドによる切断は、-20~5℃等の低温下において、行うことが好ましい。
【0318】
分割工程及び切断工程を同時に行う場合には、ブレードを用いるブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各ダイシングによって、半導体ウエハの分割と、保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断と、を同時に行ことができる。
また、ステルスダイシング(登録商標)により改質層を形成し、かつ分割を行っていない半導体ウエハと、保護膜形成用フィルム又は保護膜と、をともに、上記と同様の方法でエキスパンドすることにより、半導体ウエハの分割と、保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断と、を同時に行こともできる。
【0319】
切断工程を行ってから分割工程を行う場合には、上記と同様の各ダイシング時の手法によって、半導体ウエハを分割することなく、保護膜形成用フィルム又は保護膜を切断することができ、次いで、半導体ウエハをブレーキングによって分割することができる。
【0320】
図5は、ワークが半導体ウエハである場合の前記製造方法(1)の一例を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図1に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合の製造方法について説明する。
【0321】
<貼付工程>
前記貼付工程においては、保護膜形成用複合シート101として、剥離フィルム15を取り除いたものを用い、図5(a)に示すように、保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成用フィルム13を、半導体ウエハ9の裏面9bに貼付する。これにより、半導体ウエハ9と、その裏面9bに設けられた保護膜形成用複合シート101と、を備えて構成された第1積層体901を作製する。
【0322】
前記貼付工程においては、保護膜形成用フィルム13を加熱することにより軟化させて、半導体ウエハ9に貼付してもよい。
なお、ここでは、半導体ウエハ9において、回路形成面9a上のバンプ等の図示を省略している。
また、符号13bは、保護膜形成用フィルム13の第1面13aとは反対側(換言すると粘着剤層12側)の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示す。
【0323】
半導体ウエハ9は、その厚さを目的の値とするために、その裏面が研削されたものであってよい。すなわち、半導体ウエハ9の裏面9bは、研削面であってよい。
【0324】
半導体ウエハ9においては、その回路形成面9aと裏面9bとの間で貫通している溝が、存在しないことが好ましい。
【0325】
<硬化工程>
前記貼付工程の後、前記硬化工程においては、図5(b)に示すように、保護膜形成用フィルム13を硬化させることにより、保護膜13’を形成する。
ここでは、前記印字工程の前に硬化工程を行う場合を示している。
本実施形態においては、半導体ウエハ9に貼付した後の保護膜形成用フィルム13を硬化させて得られた硬化物を、その切断の有無によらず、保護膜とする。
【0326】
硬化工程を行うことにより、保護膜形成用複合シート101は、保護膜形成用フィルム13が保護膜13’となった保護膜形成用複合シート1011となり、半導体ウエハ9と、その裏面9bに設けられた保護膜形成用複合シート1011と、を備えて構成された、硬化済み第1積層体9011が得られる。
符号13a’は、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに対応する、保護膜13’の第1面を示し、符号13b’は、保護膜形成用フィルム13の第2面13bに対応する、保護膜13’の第2面を示している。
【0327】
硬化工程においては、保護膜形成用フィルム13が熱硬化性である場合には、保護膜形成用フィルム13を加熱することにより、保護膜13’を形成する。保護膜形成用フィルム13がエネルギー線硬化性である場合には、支持シート10を介して保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射することにより、保護膜13’を形成する。
【0328】
硬化工程において、保護膜形成用フィルム13の硬化条件、すなわち、熱硬化時の加熱温度及び加熱時間、並びに、エネルギー線硬化時のエネルギー線の照度及び光量は、先に説明したとおりである。
【0329】
<印字工程>
前記貼付工程の後、前記印字工程においては、図5(c)に示すように、硬化済み第1積層体9011における保護膜形成用複合シート1011中の保護膜13’に対して、保護膜形成用複合シート1011の支持シート10側の外部から、支持シート10越しに、レーザー光Lを照射することにより、保護膜13’に印字を行う。印字(図示略)は、保護膜13’の第2面13b’に施される。
【0330】
印字工程を行うことにより、保護膜形成用複合シート1011は、印字済みの保護膜13’を備えた保護膜形成用複合シート1012となり、半導体ウエハ9と、その裏面9bに設けられた保護膜形成用複合シート1012と、を備えて構成された、印字及び硬化済み第1積層体9012が得られる。
【0331】
前記レーザー光Lの波長は、従来よりも短波長であることが好ましく、266nmであることがより好ましい。
【0332】
印字工程においては、波長が266nm等の短波長の前記レーザー光Lを照射した場合であっても、保護膜形成用複合シート1011中の保護膜13’に、良好に印字できる。さらに、この印字を、保護膜形成用複合シート1012の支持シート10側の外部から、支持シート10越しに、良好に視認できる。
【0333】
<分割工程、切断工程>
本実施形態においては、前記印字工程の後に、半導体ウエハ9を分割することにより、半導体チップを作製する分割工程と、保護膜13’を切断する切断工程 と、を行う。
分割工程及び切断工程を行う順番は、先の説明のとおり、限定されない。
分割工程及び切断工程を行う方法は、先に説明したとおりである。
分割工程及び切断工程を行うことにより、図5(d)に示すように、半導体チップ9’と、半導体チップ9’の裏面9b’に設けられた、切断後の保護膜130’と、を備えて構成された、保護膜付き半導体チップ91が複数個得られる。これら複数個の保護膜付き半導体チップ91はすべて、1枚の支持シート10上で整列した状態となっており、これら保護膜付き半導体チップ91と支持シート10は、保護膜付き半導体チップ群910を構成している。
【0334】
符号130a’は、保護膜13’の第1面13a’に対応する、切断後の保護膜130’の第1面を示し、符号130b’は、保護膜13’の第2面13b’に対応する、切断後の保護膜130’の第2面を示している。
符号9a’は、半導体ウエハ9の回路形成面9aに対応する、半導体チップ9’の回路形成面を示している。
【0335】
<ピックアップ工程>
前記分割工程及び切断工程の後、前記ピックアップ工程においては、図5(e)に示すように、切断後の保護膜130’を備えた半導体チップ9’(保護膜付き半導体チップ91)を、支持シート10から引き離してピックアップする。ここでは、ピックアップの方向を矢印Iで示している。
【0336】
保護膜付き半導体チップ91のピックアップは、公知の方法で行うことができる。例えば、保護膜付き半導体チップ91を支持シート10から引き離すための引き離し手段8としては、真空コレット等が挙げられる。なお、ここでは、引き離し手段8のみ断面表示をしていない。
以上により、目的とする保護膜付き半導体チップ91が得られる。
【0337】
ピックアップされたものをはじめとして、印字工程の対象であった保護膜付き半導体チップ91においては、切断後の保護膜130’の第2面130b’に、印字が鮮明に維持されている。
【0338】
<硬化工程を行うタイミング>
ここまでは、貼付工程と印字工程との間に、硬化工程を行う場合について説明したが、製造方法(1)において、硬化工程を行うタイミングは、これに限定されない。例えば、製造方法(1)において、硬化工程は、印字工程と分割工程との間、印字工程と切断工程との間、分割工程と切断工程との間、分割工程とピックアップ工程との間、切断工程とピックアップ工程との間、ピックアップ工程の後、のいずれかで行ってもよい。
【0339】
貼付工程及び印字工程の後に硬化工程を行う場合、印字工程においては、図5(a)に示す第1積層体901における保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成用フィルム13に対して、保護膜形成用複合シート101の支持シート10側の外部から、支持シート10越しに、レーザー光Lを照射することにより、保護膜形成用フィルム13に印字を行う。印字(図示略)は、保護膜形成用フィルム13の第2面13bに施される。
この場合の印字工程は、レーザー光Lの照射対象が、保護膜13’ではなく、保護膜形成用フィルム13である点を除けば、先に説明した印字工程の場合と同じ方法で行うことができる。
【0340】
この場合の印字工程においても、波長が266nm等の短波長の前記レーザー光Lを照射した場合であっても、保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成用フィルム13に、良好に印字できる。さらに、この印字を、保護膜形成用複合シート101の支持シート10側の外部から、支持シート10越しに、良好に視認できる。
【0341】
<他の工程>
製造方法(1)は、前記貼付工程、硬化工程、印字工程、分割工程、切断工程、及びピックアップ工程、の各工程以外に、これらのいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類と、これを行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0342】
<<製造方法(2)>>
前記製造方法(2)は、ワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を備えた、保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性であるため、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)第1積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記第1積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有する。製造方法(2)では、前記貼付工程で前記ワークに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜である。
製造方法(2)は、ワークの種類によらず、前記硬化工程を有さず、ワークに貼付した後の保護膜形成用フィルムをそのまま保護膜とする点を除けば、製造方法(1)と同じであり、製造方法(1)の場合と同様の効果を奏する。
【0343】
ここまでは、主として、図1に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合の、保護膜付きワーク加工物の製造方法について説明したが、本実施形態の保護膜付きワーク加工物の製造方法は、これに限定されない。
例えば、図2図4に示す保護膜形成用複合シート等、図1に示す保護膜形成用複合シート101以外のものを用いても、上述の製造方法により、同様に保護膜付きワーク加工物を製造できる。
他の実施形態の保護膜形成用複合シートを用いる場合には、このシートと、保護膜形成用複合シート101と、の間の構造の相違に基づいて、上述の製造方法において、適宜、工程の追加、変更、削除等を行って、保護膜付きワーク加工物を製造してもよい。
【0344】
◇保護膜付きワーク加工物の製造方法(保護膜形成用フィルムの使用方法)
前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムも、前記保護膜付きワーク加工物の製造に用いることができる。
前記保護膜付きワーク加工物の製造方法の他の例としては、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用フィルム又は保護膜が設けられた(積層された)第2積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記第2積層体における前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜の前記ワーク側とは反対側の外部から、レーザー光を直接照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有し、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法が挙げられる。
【0345】
前記貼付工程後の各工程において、保護膜形成用フィルム及び保護膜のいずれを取り扱うかは、保護膜を形成するタイミングで決定される。保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、貼付工程後に取り扱うのは、いずれの工程においても保護膜である。保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、硬化工程前に取り扱うのは保護膜形成用フィルムであり、硬化工程後に取り扱うのは保護膜である。
したがって、印字工程においては、前記第2積層体における保護膜形成用フィルムに対して、保護膜形成用フィルムの前記ワーク側とは反対側の外部から、レーザー光を直接照射することにより、保護膜形成用フィルムに印字を行うか、又は、前記第2積層体における保護膜に対して、保護膜の前記ワーク側とは反対側の外部から、レーザー光を直接照射することにより、保護膜に印字を行う。
【0346】
ワークが半導体ウエハである場合の保護膜付きワーク加工物、すなわち保護膜付き半導体チップの製造方法の他の例としては、半導体チップの裏面に保護膜を備えた、保護膜付き半導体チップの製造方法であって、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性である場合には、前記半導体ウエハの裏面に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜付き半導体チップの製造方法は、前記保護膜形成用フィルムを、前記半導体ウエハの裏面に貼付することにより、前記半導体ウエハの裏面に前記保護膜形成用フィルム又は保護膜が設けられた(積層された)第2積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記第2積層体における前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜の前記半導体ウエハ側とは反対側の外部から、レーザー光を直接照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜の前記半導体ウエハ側とは反対側の面、あるいは前記半導体ウエハの前記保護膜形成用フィルム側又は保護膜側とは反対側の面に、ダイシングシートを積層する積層工程と、前記積層工程の後に、前記半導体ウエハを分割(ダイシング)することにより、半導体チップを作製する分割工程と、前記積層工程の後に、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜を切断する切断工程 と、前記切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を備えた前記半導体チップを、前記ダイシングシートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有し、前記保護膜形成用フィルムが硬化性である場合には、さらに、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、を有する、保護膜付き半導体チップの製造方法が挙げられる。
【0347】
保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムを用いた場合の保護膜付きワーク加工物の製造方法は、保護膜形成用複合シートに代えてこのような保護膜形成用フィルムを用いる点を除けば、上述の保護膜形成用複合シートを用いた場合の保護膜付きワーク加工物の製造方法と同じであり、必要に応じて、保護膜形成用複合シートを用いた場合とは異なる他の工程を追加して行ってもよい。
【0348】
例えば、保護膜付きワーク加工物として保護膜付き半導体チップを製造する場合には、上述のとおり、前記分割工程と切断工程で必要となるダイシングシートを保護膜形成用フィルム、保護膜又は半導体ウエハに積層するための前記積層工程を追加して行う必要がある。
【0349】
前記積層工程において、ダイシングシートの積層対象となる、保護膜形成用フィルム又は保護膜の面は、印字工程で印字が行われた面である。
前記積層工程において、ダイシングシートの積層対象となる、半導体ウエハの面は、回路形成面である。
前記ダイシングシートは、公知のものであってよく、前記積層工程は、公知の方法で行うことができる。
本実施形態においては、保護膜形成用フィルム又は保護膜にダイシングシートを積層した場合には、前記積層工程後、前記分割工程と前記切断工程を同時に行うか、又は前記分割工程を行ってから前記切断工程を行う。これに対して、半導体ウエハにダイシングシートを積層した場合には、前記積層工程後、前記分割工程と前記切断工程を同時に行うか、又は前記切断工程を行ってから前記分割工程を行う。
【0350】
前記印字工程においては、保護膜形成用フィルム又は保護膜の印字対象面を露出させ、何も介在させずに、保護膜形成用フィルム又は保護膜のこの露出面に対して、レーザー光を直接照射する。
【0351】
前記製造方法は、前記硬化工程を有する場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(3)」と称することがある)と、前記硬化工程を有しない場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(4)」と称することがある)と、に分けられる。
以下、これら製造方法について、順次説明する。
【0352】
<<製造方法(3)>>
前記製造方法(3)は、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性であるため、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用フィルムが設けられた(積層された)第2積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、前記貼付工程の後に、前記第2積層体における前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜の前記ワーク側とは反対側の外部から、レーザー光を直接照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有する。
【0353】
ワークが半導体ウエハである場合には、前記製造方法(3)としては、前記保護膜付き半導体チップの製造方法であって、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが硬化性であるため、前記保護膜形成用フィルムの硬化物が保護膜であり、前記保護膜付き半導体チップの製造方法は、前記保護膜形成用フィルムを、前記半導体ウエハの裏面に貼付することにより、前記半導体ウエハの裏面に前記保護膜形成用フィルムが設けられた(積層された)第2積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させることにより、保護膜を形成する硬化工程と、前記貼付工程の後に、前記第2積層体における前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に対して、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜の前記半導体ウエハ側とは反対側の外部から、レーザー光を直接照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜の前記半導体ウエハ側とは反対側の面、あるいは前記半導体ウエハの前記保護膜形成用フィルム側又は保護膜側とは反対側の面に、ダイシングシートを積層する積層工程と、前記積層工程の後に、前記半導体ウエハを分割(ダイシング)することにより、半導体チップを作製する分割工程と、前記積層工程の後に、前記保護膜形成用フィルム又は保護膜を切断する切断工程 と、前記切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を備えた前記半導体チップを、前記ダイシングシートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有する。
【0354】
<<製造方法(4)>>
前記製造方法(4)は、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムから形成されたものであり、前記保護膜形成用フィルムが非硬化性であるため、前記ワークのいずれかの箇所に貼付された後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜であり、前記保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜が設けられた(積層された)第2積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記第2積層体における前記保護膜に対して、前記保護膜の前記ワーク側とは反対側の外部から、レーザー光を直接照射することにより、前記保護膜に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有する。製造方法(4)では、前記貼付工程で前記ワークに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムが保護膜である。
製造方法(4)は、ワークの種類によらず、前記硬化工程を有さず、ワークに貼付した後の保護膜形成用フィルムをそのまま保護膜とする点を除けば、製造方法(3)と同じであり、製造方法(3)の場合と同様の効果を奏する。
【0355】
◇半導体装置の製造方法
上述の製造方法により、保護膜付きワーク加工物を得た後は、この保護膜付きワーク加工物を用い、その種類に応じて、公知の適切な方法により、半導体装置を製造できる。例えば、保護膜付きワーク加工物が保護膜付き半導体チップである場合には、この保護膜付き半導体チップを、基板の回路形成面にフリップチップ接続した後、半導体パッケージとし、この半導体パッケージを用いることにより、目的とする半導体装置を製造できる(図示略)。
【実施例
【0356】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0357】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
MA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
2EHA:アクリル酸-2-エチルヘキシル
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
【0358】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:MA(85質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量370000、ガラス転移温度6℃)
(A)-2:MA(65質量部)、MMA(20質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量400000、ガラス転移温度20℃)
[熱硬化性成分(B1)]
(B1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(B1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量255~260g/eq)
(B1)-4:アクリロイル基が付加されたクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「CNA-147」、エポキシ当量518g/eq)
[熱硬化剤(B2)]
(B2)-1:ジシアンジアミド(ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」、熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
[充填材(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたシリカフィラー、平均粒子径0.5μm)
(D)-2:球状シリカ(アドマテックス社製「YA050C-MJE」、平均粒子径0.05μm)
[カップリング剤(E)]
(E)-1:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製「A-1110」)
[着色剤(I)]
(I)-1:3種の有機顔料が混合されて調製された黒色顔料(大日精化社製)
【0359】
[実施例1]
<<支持シートの製造>>
<粘着性樹脂(I-2a)の製造>
2EHA(80質量部)と、HEA(20質量部)と、の共重合体である、重量平均分子量が600000のアクリル系重合体に、MOI(前記アクリル系重合体中のHEA由来の水酸基の総モル数に対して、MOI中のイソシアネート基の総モル数が、0.75倍となる量)を加え、空気気流中において50℃で48時間付加反応を行うことで、目的とする粘着性樹脂(I-2a)-1を得た。
以下、前記アクリル系重合体を「粘着性樹脂(I-1a)-1」と称することがある。
【0360】
<粘着剤組成物(I-2)の製造>
粘着性樹脂(I-2a)-1(100質量部)、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートHL」)(4質量部)、及び光重合開始剤(BASF社製「イルガキュア184」、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(3質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0361】
<支持シートの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-2)-1を塗工し、100℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ5μmのエネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
次いで、この粘着剤層の露出面に、基材としてポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色)を貼り合せることにより、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層シート、すなわち、剥離フィルム付きの支持シートを製造した。
【0362】
前記ポリプロピレン製フィルム(1)について、23℃の環境下で、JIS K 7127に準拠して、引張速度を200mm/minとして引張試験を行い、ヤング率を測定した結果、510MPaであった。
【0363】
<<保護膜形成用フィルムの製造>>
<保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-1(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(60質量部)、(B1)-2(10質量部)、(B1)-3(30質量部)、(B2)-1(2質量部)、硬化促進剤(C)-1(2質量部)、充填材(D)-1(300質量部)、カップリング剤(E)-1(0.5質量部)、及び着色剤(I)-1(17質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1を得た。なお、ここに示す前記混合溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0364】
<保護膜形成用フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III-1)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ15μmの熱硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
【0365】
さらに、得られた保護膜形成用フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの一方の面に設けられた第1剥離フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された積層フィルムを得た。
【0366】
<<保護膜形成用複合シートの製造>>
上記で得られた支持シートから剥離フィルムを取り除いた。また、上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。そして、上記の剥離フィルムを取り除いて生じた粘着剤層の露出面と、上記の第1剥離フィルムを取り除いて生じた保護膜形成用フィルムの露出面と、を貼り合わせることにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び第2剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護膜形成用複合シートを製造した。
【0367】
<<支持シートの評価>>
<支持シートの光(266nm)の透過率の測定>
上記で得られた支持シートから剥離フィルムを取り除いた。そして、この支持シートについて、分光光度計(SHIMADZU社製「UV-VIS-NIR SPECTROPHOTOMETER UV-3600」を用いて、波長域が190~1200nmである光の透過率を測定した。このとき、前記分光光度計に付属する大形試料室「MPC-3100」を用い、前記分光光度計に内蔵されている積分球を用いた。そして、得られた測定結果から、光(266nm)の透過率を算出した。結果を表1に示す。
【0368】
<基材の光(266nm)の透過率の測定>
支持シートの製造に用いた前記ポリプロピレン製フィルム(1)について、支持シートの場合と同じ方法で、光(266nm)の透過率を算出した。結果を表1に示す。
【0369】
<<保護膜形成用フィルムの評価>>
<光(266nm)の透過率の測定>
上記で得られた積層フィルムから、第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムを取り除き、得られた保護膜形成用フィルムについて、上述の支持シートの場合と同じ方法で、光(266nm)の透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0370】
<<保護膜形成用複合シートの評価>>
<印字適性及び印字視認性の評価>
上記で得られた保護膜形成用複合シートから第2剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面を、8インチシリコンウエハ(厚さ350μm)の裏面に相当する研磨面に貼付し、保護膜形成用複合シートとシリコンウエハとが積層されて構成された第1積層体を得た。
次いで、この第1積層体をオーブン内で、130℃で2時間加熱処理することにより、保護膜形成用フィルムを熱硬化させ、保護膜を形成した。
次いで、この熱硬化によって得られた硬化済み第1積層体中の前記保護膜に対して、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜に印字を行った。このとき、レーザー光の波長を266nm、レーザー光の周波数を10kHz、レーザー光の出力を0.19Wとし、1文字の大きさを縦1cm、横0.8cmとして、「ABCD」とアルファベット4文字の文字列を印字した。
【0371】
次いで、この印字により得られた、印字及び硬化済み第1積層体において、基材及び粘着剤層(すなわち支持シート)を印字済みの前記保護膜から取り除き、評価者5人で保護膜の印字面を直接目視観察した。そして、下記基準にしたがって、保護膜形成用複合シートの印字適性及び印字視認性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:5人の評価者全員が、印字を容易に視認可能と判断した。
B:1~4人の評価者が、印字を容易に視認可能と判断し、残りのすべての評価者が、「A」には劣るが、印字を視認可能と判断した。
C:1人以上の評価者が、印字を視認不可能と判断した。
【0372】
<<保護膜形成用フィルムの評価>>
<印字適性及び印字視認性の評価>
上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面を、上記と同じ8インチシリコンウエハの裏面に相当する研磨面に貼付し、さらに、この貼付後の保護膜形成用フィルムから第2剥離フィルムを取り除き、保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとが積層されて構成された第2積層体を得た。
次いで、この第2積層体をオーブン内で、130℃で2時間加熱処理することにより、保護膜形成用フィルムを熱硬化させ、保護膜を形成した。
次いで、この熱硬化後の第2積層体中の前記保護膜に対して、保護膜のシリコンウエハ側とは反対側の外部から、直接レーザー光を照射することにより、前記保護膜に印字を行った。このとき、レーザー光の照射条件は、上述の、保護膜形成用複合シートを用いた場合と同じとした。
【0373】
次いで、この印字済み第2積層体について、その保護膜側の外部から、評価者5人で保護膜の印字面を直接目視観察した。そして、上記と同じ基準にしたがって、保護膜形成用フィルムの印字適性及び印字視認性を評価した。結果を表1に示す。
【0374】
<<支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートの製造、並びに評価>>
[実施例2]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色、ヤング率510MPa)に代えて、これとは異なる種類のポリプロピレン製フィルム(2)(厚さ80μm、無色)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
前記ポリプロピレン製フィルム(2)について、実施例1の場合と同じ方法でヤング率を測定した結果、340MPaであった。
結果を表1に示す。
【0375】
[実施例3]
支持シートの製造時に、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-1を用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。粘着剤層の厚さも、実施例2の場合と同じで、5μmとした。
結果を表1に示す。
【0376】
<粘着剤組成物(I-4)の製造>
粘着性樹脂(I-1a)-1(100質量部)、及びヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートHL」)(5質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-1を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0377】
[実施例4]
支持シートの製造時に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-2を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。粘着剤層の厚さも、実施例3の場合と同じで、5μmとした。
結果を表1に示す。
【0378】
<粘着剤組成物(I-4)の製造>
前記粘着性樹脂(I-1a)-1(100質量部)、及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネート-D110N」)(7質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-2を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0379】
[実施例5]
支持シートの製造時に、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-3を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。粘着剤層の厚さも、実施例1の場合と同じで、5μmとした。
結果を表1に示す。
【0380】
<粘着剤組成物(I-4)の製造>
粘着性樹脂(I-1a)-2(100質量部)、及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネート-D110N」)(18質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-3を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
前記粘着性樹脂(I-1a)-2は、2EHA(70質量部)、MMA(20質量部)、及びHEA(10質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が400000のアクリル系重合体である。
【0381】
[実施例6]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(2)(厚さ80μm、無色、ヤング率510MPa)に代えて、これとは異なる種類のポリプロピレン製フィルム(3)(厚さ80μm、青色)を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
前記ポリプロピレン製フィルム(3)について、実施例1の場合と同じ方法でヤング率を測定した結果、280MPaであった。
結果を表1に示す。
【0382】
[実施例7]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色、ヤング率510MPa)に代えて、ポリプロピレン製フィルム(2)(厚さ80μm、無色、ヤング率340MPa)を用いた点以外は、実施例5の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0383】
[実施例8]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色、ヤング率510MPa)に代えて、ポリプロピレン製フィルム(3)(厚さ80μm、青色、ヤング率280MPa)を用いた点以外は、実施例5の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0384】
[実施例9]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(2)(厚さ80μm、無色、ヤング率340MPa)に代えて、ポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色、ヤング率510MPa)を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0385】
[実施例10]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(2)(厚さ80μm、無色、ヤング率340MPa)に代えて、ポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色、ヤング率510MPa)を用いた点以外は、実施例4の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0386】
[実施例11]
保護膜形成用フィルムの製造時に、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-2を用いた点以外は、実施例9の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。保護膜形成用フィルムの厚さも、実施例9の場合と同じで、15μmとした。
結果を表1に示す。
【0387】
<保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-1(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(60質量部)、(B1)-2(10質量部)、(B1)-3(30質量部)、(B2)-1(2質量部)、硬化促進剤(C)-1(2質量部)、充填材(D)-1(300質量部)、カップリング剤(E)-1(0.5質量部)、及び着色剤(I)-1(4質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-2を得た。なお、ここに示す前記混合溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0388】
[実施例12]
保護膜形成用フィルムの製造時に、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-3を用いた点以外は、実施例9の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。保護膜形成用フィルムの厚さも、実施例9の場合と同じで、15μmとした。
結果を表1に示す。
【0389】
<保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-1(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(60質量部)、(B1)-2(10質量部)、(B1)-3(30質量部)、(B2)-1(2質量部)、硬化促進剤(C)-1(2質量部)、充填材(D)-1(300質量部)、カップリング剤(E)-1(0.5質量部)、及び着色剤(I)-1(1質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-3を得た。なお、ここに示す前記混合溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0390】
[実施例13]
保護膜形成用フィルムの製造時に、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-4を用いた点以外は、実施例9の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。保護膜形成用フィルムの厚さも、実施例9の場合と同じで、15μmとした。
結果を表1に示す。
【0391】
<保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-1(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(60質量部)、(B1)-2(10質量部)、(B1)-3(30質量部)、(B2)-1(2質量部)、硬化促進剤(C)-1(2質量部)、充填材(D)-1(300質量部)、カップリング剤(E)-1(0.5質量部)、及び着色剤(I)-1(30質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-4を得た。なお、ここに示す前記混合溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0392】
[参考例1]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(3)(厚さ80μm、青色、ヤング率280MPa)に代えて、ポリエチレンテレフタレート製フィルム(1)(厚さ50μm、無色)を用いた点以外は、実施例6の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
前記ポリエチレンテレフタレート製フィルム(1)について、実施例1の場合と同じ方法でヤング率を測定した結果、5000MPaであった。
結果を表1に示す。
【0393】
[参考例2]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色、ヤング率510MPa)に代えて、ポリ塩化ビニル製フィルム(1)(厚さ70μm、黒色)を用いた点以外は、実施例13の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
前記ポリ塩化ビニル製フィルム(1)について、実施例1の場合と同じ方法でヤング率を測定した結果、400MPaであった。
結果を表1に示す。
【0394】
[参考例3]
支持シートの製造時に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-4を用いた点と、粘着剤層の厚さを5μmに代えて10μmとした点、以外は、実施例6の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0395】
<粘着剤組成物(I-4)の製造>
前記粘着性樹脂(I-1a)-2(100質量部)、及び3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネート-D110N」)(15質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)-4を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0396】
[参考例4]
支持シートの製造時に、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-2を用いた点と、粘着剤層の厚さを5μmに代えて10μmとした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0397】
<粘着剤組成物(I-2)の製造>
前記粘着性樹脂(I-2a)-1(100質量部)、3官能キシリレンジイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製「タケネート-D110N」)(7質量部)、及び光重合開始剤(BASF社製「イルガキュア127」、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン)(3質量部)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が25質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-2を調製した。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0398】
[参考例5]
支持シートの製造時に、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1に代えて、前記粘着剤組成物(I-2)-2を用いた点と、粘着剤層の厚さを5μmに代えて10μmとした点、以外は、実施例2の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0399】
[参考例6]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(2)(厚さ80μm、無色、ヤング率340MPa)に代えて、前記ポリ塩化ビニル製フィルム(1)(厚さ70μm、黒色、ヤング率400MPa)を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0400】
[比較例1]
支持シートの製造時に、基材として、ポリプロピレン製フィルム(2)(厚さ80μm、無色、ヤング率340MPa)に代えて、ポリ塩化ビニル製フィルム(2)(厚さ70μm、黒色)を用いた点以外は、実施例3の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
前記ポリ塩化ビニル製フィルム(2)について、実施例1の場合と同じ方法でヤング率を測定した結果、350MPaであった。
結果を表1に示す。
【0401】
[実施例14]
保護膜形成用フィルムの製造時に、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-5を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。保護膜形成用フィルムの厚さも、実施例1の場合と同じで、15μmとした。
結果を表1に示す。
【0402】
<保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-2(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-4(10質量部)、(B2)-1(0.2質量部)、充填材(D)-2(100質量部)、及び着色剤(I)-1(2質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-5を得た。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0403】
[実施例15]
保護膜形成用フィルムの製造時に、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-6を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。保護膜形成用フィルムの厚さも、実施例1の場合と同じで、15μmとした。
結果を表1に示す。
【0404】
<保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-2(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-4(10質量部)、(B2)-1(0.2質量部)、充填材(D)-2(100質量部)、及び着色剤(I)-1(0.7質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-6を得た。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0405】
[比較例2]
保護膜形成用フィルムの製造時に、熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、熱硬化性の保護膜形成用組成物(R1)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。保護膜形成用フィルムの厚さも、実施例1の場合と同じで、15μmとした。
結果を表1に示す。
【0406】
<保護膜形成用組成物(R1)の製造>
重合体成分(A)-2(150質量部)、熱硬化性成分(B1)-4(10質量部)、(B2)-1(0.2質量部)、充填材(D)-2(100質量部)、及び着色剤(I)-1(0.5質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が45質量%である、熱硬化性の保護膜形成用組成物(R1)を得た。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0407】
[実施例16]
支持シートの製造時に、粘着剤組成物(I-4)-3の塗工量を変更することにより、粘着剤層の厚さを5μmに代えて10μmとした点以外は、実施例5の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表5に示す。
【0408】
[参考例7]
支持シートの製造時に、粘着剤組成物(I-4)-3の塗工量を変更することにより、粘着剤層の厚さを5μmに代えて15μmとした点以外は、実施例5の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
結果を表5に示す。
【0409】
【表1】
【0410】
【表2】
【0411】
【表3】
【0412】
【表4】
【0413】
【表5】
【0414】
上記結果から明らかなように、実施例1~16においては、従来よりも短波長のレーザー光を照射した場合であっても、保護膜形成用複合シートの印字適性及び印字視認性が良好であった。実施例1~16においては、支持シートの光(266nm)の透過率が25%以上(25~90%)であり、支持シートの光(266nm)の透過性が高く、その一方で、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率が57%以下(2~57%)であり、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の吸収性が高かった。
【0415】
実施例1~16においては、いずれも、支持シートの光(266nm)の透過率が、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率よりも高かった。
【0416】
単体の基材に着目すると、実施例1~16においては、その光(266nm)の透過率が49%以上(49~95%)であり、単体での光(266nm)の透過性が高かった。したがって、これら基材は、光学特性の点では、基材からなる支持シートとしても、好適なものであった。
【0417】
単体の保護膜形成用フィルムに着目すると、実施例1~16においては、印字適性及び印字視認性が良好であった。
【0418】
保護膜形成用フィルムと保護膜は、同じ波長の光に対して、概ね、同等の透過率を示す。したがって、実施例1~16の保護膜形成用複合シートは、保護膜形成用フィルムが硬化していない場合も、硬化している上記の場合と同様に、従来よりも短波長のレーザー光を照射した場合であっても、印字適性及び印字視認性が良好であると判断できた。
【0419】
参考例1~7においては、従来よりも短波長のレーザー光を照射した場合の、保護膜形成用複合シートの印字適性及び印字視認性が劣っていた。
参考例1~7においては、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率が4%以下(2~4%)であり、これらの保護膜形成用フィルムは、光(266nm)の吸収性が高く、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムに相当するものであった。しかし、参考例1~7においては、支持シートの光(266nm)の透過率が18%以下(0~18%)であり、支持シートの光(266nm)の透過性が低かった。そのため、参考例1~7においては、レーザー光が支持シート越しに、保護膜に全く又はほとんど到達せず、印字適性が劣っていた。
【0420】
比較例1~3においても、従来よりも短波長のレーザー光を照射した場合の、保護膜形成用複合シートの印字適性及び印字視認性が劣っていた。
【0421】
比較例1においては、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率が4%であり、この保護膜形成用フィルムは、光(266nm)の吸収性が高く、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムに相当するものであった。しかし、比較例1においては、支持シートの光(266nm)の透過率が0%であり、支持シートは光(266nm)の透過性を有していなかった。そのため、比較例1においては、レーザー光が支持シート越しに、保護膜に全く到達せず、印字適性を有していなかった。
【0422】
比較例2においては、支持シートの光(266nm)の透過率が88%であり、この支持シートは、支持シートの光(266nm)の透過性が高く、上述の本発明の一実施形態に係る支持シートに相当するものであった。しかし、比較例2においては、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過率が63%であり、保護膜形成用フィルムの光(266nm)の透過性が高かった。そのため、比較例2においては、レーザー光の大部分が保護膜を透過してしまい、印字適性が劣っていた。
【0423】
上述の実施例、参考例及び比較例の結果から、支持シートの光(266nm)の透過率は、支持シート(基材、粘着剤層等)の着色度が小さいほど高くなる傾向があること、支持シート(基材、粘着剤層等)の、ベンゼン環骨格等の芳香族環式基を有する成分の含有量が少ないほど高くなる傾向があること、支持シート(基材、粘着剤層等)の厚さが薄いほど高くなる傾向があること、をそれぞれ確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0424】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0425】
101,102,103,104・・・保護膜形成用複合シート、1011・・・保護膜形成用フィルムが保護膜となった保護膜形成用複合シート、1012・・・印字済みの保護膜を備えた保護膜形成用複合シート、10,20,30・・・支持シート、10a,20a,30a・・・支持シートの一方の面(第1面)、13,23・・・保護膜形成用フィルム、13’・・・保護膜、130’・・・切断後の保護膜、9・・・半導体ウエハ、9a・・・半導体ウエハの回路形成面、9b・・・半導体ウエハの裏面、9’・・・半導体チップ、91・・・保護膜付き半導体チップ、901・・・第1積層体、9011・・・硬化済み第1積層体、9012・・・印字及び硬化済み第1積層体、L・・・レーザー光
図1
図2
図3
図4
図5