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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット支持構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240425BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240425BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20240425BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240425BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240425BHJP
   B60L 50/72 20190101ALI20240425BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/2475
H01M8/2465
H01M8/12 101
B60L50/72
B60K8/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019165673
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021044163
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 敬士
(72)【発明者】
【氏名】安武 明
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-79678(JP,A)
【文献】特開2010-62133(JP,A)
【文献】特開2006-40752(JP,A)
【文献】特開2004-127771(JP,A)
【文献】特開2004-47211(JP,A)
【文献】特開2010-27543(JP,A)
【文献】特開2007-95359(JP,A)
【文献】特開2007-15920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 50/00-58/40
B60K 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックを含む高温部品からなる高温ユニットを断熱材を介して筐体で包囲して車体骨格部材に支持する燃料電池ユニット支持構造であって、
当該燃料電池ユニット支持構造は、
前記高温ユニットを前記筐体内に支持するマウント装置と、
前記マウント装置を介して前記高温ユニットを前記筐体取り付けるための取り付け構造と、を有し、
前記取り付け構造は、
前記マウント装置が固定される平面部と、
前記平面部と前記筐体を接続するように延在して設けられ、前記平面部よりも高い熱抵抗を有するとともに、前記高温ユニット、前記マウント装置、及び該取り付け構造からなる振動系の共振周波数を増加させ車体振動を抑制する剛性を有する低熱伝導接続体と、を含む、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記低熱伝導接続体は、記平面部よりも低い熱伝導率を持つように構成される、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記取り付け構造は、前記平面部の長手方向の両端に配置され、前記筐体に支持する一対のブラケットをさらに含み、
前記低熱伝導接続体は、前記平面部における一対の前記ブラケットの間の位置に配置される、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記低熱伝導接続体は、前記ブラケットよりも低い熱伝導率を持つように構成される、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記高温ユニットは、前記高温部品として、前記燃料電池スタック及び該燃料電池スタックに供給される燃料ガスを生成する燃料処理ユニットと、を含み、
前記燃料電池ユニット支持構造は、前記燃料電池スタックと前記燃料処理ユニットとが並ぶ方向に複数設けられる、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
複数の前記取り付け構造のうち、前記燃料処理ユニットの作動時により低温となる前記高温ユニットの部分に近い前記取り付け構造に設けられる前記低熱伝導接続体の数が、より高温となる前記高温ユニットの部分に近い前記取り付け構造に設けられる前記低熱伝導接続体の数よりも多い、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項7】
請求項3~6の何れか1項に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記低熱伝導接続体には、
前記高温ユニットから前記筐体への熱の輻射を抑制する遮熱板がさらに設けられる、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記遮熱板は、前記平面部において前記ブラケットの内側の平面領域の略全域に亘って伸展する、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記遮熱板は、前記平面部から前記筐体へ向かう方向に沿って積層された複数の層により構成され、
前記複数の層は、第1層と、前記第1層よりも前記平面部に近い第2層と、を含み、
前記第1層は、前記第2層よりも高い断熱性を有する、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記遮熱板は、前記第1層よりも前記筐体に近い第3層をさらに有し、
前記第3層は、前記第1層よりも高い剛性を有する、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項11】
請求項3~10の何れか1項に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記平面部は、前記高温ユニットの第1部分を受ける第1座面を形成する部分と、前記高温ユニットの、前記第1部分とは異なる第2部分を受ける第2座面を形成する部分と、に分割され、
前記第1および前記第2座面を形成するそれぞれの部分に対し、前記低熱伝導接続体が接続された、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項12】
請求項3~11の何れか1項に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記低熱伝導接続体は、異方性弾性体により構成され、前記平面部の伸展方向のうち、前記高温部品の熱膨張による生じる変位が相対的に大きい第1伸展方向に、前記変位が相対的に小さい第2伸展方向よりも低い弾性を有する、
燃料電池ユニット支持構造。
【請求項13】
請求項3~12の何れか1項に記載の燃料電池ユニット支持構造であって、
前記マウント装置は、前記高温ユニットを前記平面部の伸展方向に変位可能に支持する可動マウント装置として構成され、
前記可動マウント装置は、
前記平面部に固定された固定部と、
前記固定部に対して前記平面部の伸展方向に変位可能に支持され、前記高温ユニットの荷重を受ける可動部と、を備え、
前記可動部の、前記固定部に対する単位量の相対変位を第1方向に生じさせるのに要する力が、前記単位量の相対変位を前記第1方向とは異なる第2方向に生じさせるのに要する力よりも小さい、
燃料電池ユニット支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックを含む高温部品を断熱ケースに収容してなる高温ユニットを車体に支持する燃料電池ユニット支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固体電解質型燃料電池を積層する燃料電池スタックに対してその積層方向に締付荷重を働かせる荷重付与機構が設けられた燃料電池システムが開示されている。特に、特許文献1では、燃料電池スタックと荷重付与機構との間に断熱部材が設けられ、この断熱部材により、燃料電池スタック側の空間から荷重付与機構側(低温側)への熱の伝達を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4598510号公報(段落0018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体電解質型燃料電池などの動作温度が高い燃料電池により構成された燃料電池スタックを備える燃料電池システムの場合、燃料電池スタックを含む高温ユニット(高温側)から低温側への伝熱を抑制することが要求される。
【0005】
一方で、燃料電池スタックを搭載する用途によっては、当該燃料電池スタック及び改質器等の周辺の装置を支持する構造において一定の耐振性を確保することも要求される。しかしながら、耐振性を確保するための構造を採用すると当該構造自体が高温側から低温側への伝熱経路となり、伝熱抑制効果が十分でなくなるという事態が生じ得る。すなわち、高温側から低温側への伝熱を抑制しつつ、耐振性の向上を図ることが容易ではないという問題があった。
【0006】
特に、燃料電池システムを車両に搭載する場合には、高温側から低温側への伝熱の抑制は勿論のこと、車両走行時に想定される外力に対する耐振性の向上に対する工夫も重要である。しかしながら、特許文献1においてはこのような耐振性の向上に対する工夫は提案されていない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑み、燃料電池スタック等の高温部品が配置される高温側から低温側への伝熱の抑制と耐振性の向上の両立を可能とする燃料電池ユニット支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、燃料電池スタックを含む高温部品からなる高温ユニットを断熱材を介して筐体で包囲して車体骨格部材に支持する燃料電池ユニット支持構造が提供される。この燃料電池ユニット支持構造は、高温ユニットを筐体内に支持するマウント装置と、筐体を車体骨格部材に取り付けるための取り付け構造と、を有する。そして、取り付け構造は、マウント装置が固定される平面部よりも高い熱抵抗を有し車体骨格部材への伝熱を抑制する伝熱抑制手段と、高温ユニット、マウント装置、及び該取り付け構造からなる振動系の共振周波数を増加させ車体振動を抑制する振動抑制手段と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料電池スタック等の高温部品が配置される高温側から低温側への伝熱の抑制と耐振性の向上の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る支持構造が適用された燃料電池システムの、車両における設置状態を示す概略図である。
図2図2は、同上実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を破断平面視により示す概略図である。
図3図3は、同上実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造の、取り付け構造の配置を示す概略図である。
図4図4は、同上実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を、図3に示すA-A線に沿う断面により示す概略図である。
図5図5は、同上実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を、図4に示すB-B線に沿う断面により示す概略図である。
図6図6は、燃料電池ユニット支持構造の要部斜視図である。
図7図7は、燃料電池ユニット支持構造の要部分解斜視図である。
図8図8は、同上実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造に適用可能な可動マウント装置の構成を示す概略図である。
図9図9は、第1実施形態の第1変形例に係る燃料電池ユニット支持構造の構成を説明する図である。
図10図10は、第1実施形態の第2変形例に係る燃料電池ユニット支持構造の要部斜視図である。
図11図11は、第1実施形態の第2変形例に係る燃料電池ユニット支持構造の要部分解斜視図である。
図12図12は、第2実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。
図13図13は、第2実施形態の変形例に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。
図14図14は、第3実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。
図15図15は、第3実施形態の変形例に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。
図16図16は、第4実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。
図17図17は、第5実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造の、取り付け構造および低熱伝導接続体の配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
(全体構成の説明)
図1は、本発明の一実施形態に係る支持構造が適用された燃料電池システムSの車上での設置状態を、車体上方からの平面視により示す概略図である。
【0013】
本実施形態に係る燃料電池システム(以下「燃料電池システム」といい、単に「システム」という場合がある)Sは、燃料電池スタック1と、燃料処理ユニット2と、を備える。
【0014】
燃料電池スタック1は、発電ユニットである複数の燃料電池ないし燃料電池セルを積み重ねて構成され、個々の燃料電池は、固体酸化物形燃料電池である。燃料処理ユニット2は、原燃料を処理し、燃料電池ないし燃料電池セルにおける発電反応に用いられる燃料ガスを生成する。
【0015】
燃料処理ユニット2は、燃料電池スタック1に対し、生成された燃料ガスをそれぞれの燃料電池に供給可能に接続されている。本実施形態では、燃料電池の原燃料として、含酸素燃料水溶液、具体的には、エタノール水溶液が用いられる。燃料処理ユニット2は、改質器により具現され、原燃料中の燃料成分であるエタノールの改質により、燃料ガスである水素を生成する。燃料電池スタック1は、燃料処理ユニット2から水素の供給をアノード側で受けるとともに、図示しないカソードガス供給ユニットから、酸化剤ガスである酸素の供給をカソード側で受け、水素と酸素との電気化学反応により、発電を行う。還元剤ガスの供給は、例えば、エアコンプレッサにより大気中から取り込んだ空気を燃料電池スタック1に供給することにより達成可能である。発電により得られた電気は、走行用の電動モータに供給して、車両の推進力を得るのに用いたり、バッテリに供給して、その充填に充てたりすることが可能である。
【0016】
燃料電池スタック1のアノード極およびカソード極での発電に係る反応は、次式(1.1)、(1.2)により表され、燃料処理ユニット2における改質反応は、エタノールの水蒸気改質による場合に、次式(2)により表される。
【0017】
アノード極: 2H2+4O2- → 2H2O+4e- …(1.1)
カソード極: O2+4e- → 2O2- …(1.2)
25OH+3H2O → 6H2+2CO2 …(2)
【0018】
そして、本実施形態の燃料電池スタック1および燃料処理ユニット2は燃料電池システムSの作動時に発熱が問題となり得る高温部品として断熱ケース5に収容されることで、全体として高温ユニットUhtを構成する。さらに、本実施形態の高温ユニットUhtは、燃料電池システムSが搭載される車体の構成部品である筐体3に収容された状態で設けられている。なお、図1には、筐体3に収容された状態にある高温ユニットUhtを、二点鎖線により模式的に示している。特に、高温ユニットUhtは、筐体3の内部で、本実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造により筐体3の内壁に、具体的には、筐体3内部の底面に固定されている。そして、この筐体3は車体のフレーム構造に支持されている。これにより、高温ユニットUhtが車体に対して支持される構造が実現される。なお、燃料電池ユニット支持構造の詳細については後述する。
【0019】
図1では、車両の後輪11r、11lを示すとともに、後輪11r、11lと、車体のフレーム構造および筐体3等の燃料電池システムSの主要部品と、の相対的な位置関係を示している。フレーム構造は、車体の骨格をなすものであり、モノコック式またはラダーフレーム式等、その形式を問わない。後輪11r、11lは、回転軸12を介して互いに連結されるとともに、フレーム構造に対して図示しない後輪マウント機構により支持されている。
【0020】
特に、本実施形態において、筐体3は、車両の進行方向(Y軸正方向)に対して後輪11r、11lの後方に配置される。なお、車体のフレーム構造に対する支持は、筐体3を足回りの骨格部分であるシャシーフレームのサイドメンバ21r、21lに対して支持することによる。また、筐体3の支持のため、筐体3とサイドメンバ21r、21lとの間に複数の固定点ないし接続点31a~31cを形成する筐体マウント機構が設けられている。すなわち、本実施形態の高温ユニットUht及び燃料電池ユニット支持構造は、車両の進行方向に対して後輪11r、11lの後方に配置されることとなる。
【0021】
(支持構造の説明)
図2図7は、本実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。特に、図2および図3は、燃料電池ユニット支持構造を車体上方からの破断平面視により概略的に示す。図4は、燃料電池ユニット支持構造を車体側方からの破断側面視により概略的に示す。特に、図4は、当該燃料電池ユニット支持構造を図3に示すA-A線に沿う断面により示している。さらに、図5は、燃料電池ユニット支持構造を、図4に示すB-B線に沿う断面により示している。また、図6は、燃料電池ユニット支持構造の要部斜視図である。また、図7は、燃料電池ユニット支持構造の要部分解斜視図である。なお、図6及び図7においては図面の簡略化のため、後述する取り付け構造90を一つのみ示している。
【0022】
以下、図2図7を参照して、燃料電池システムSのより具体的な構成および燃料電池ユニット支持構造について説明する。
【0023】
本実施形態では、筐体3の内面全体に断熱材4が施され、筐体3に断熱性が付与されている。さらに、筐体3の内部に高温ユニットUhtが設置されている。そして、高温ユニットUhtの断熱ケース5により、筐体3の内部が高温室Rhと低温室Rlとに隔てられている。すなわち、断熱ケース5に囲まれた空間が高温室Rhであり、その外側の空間が低温室Rlである。
【0024】
本実施形態の高温ユニットUhtでは、燃料電池スタック1と燃料処理ユニット2とが、車両の横方向(X軸方向)に並べて配置されており、断熱ケース5によりそれらの全周に亘って包囲されている。すなわち、燃料電池スタック1および燃料処理ユニット2は、いずれも高温室Rhに配置されており、本実施形態に係る「高温部品」を構成する。
【0025】
なお、本実施形態では、説明の簡略化のため、燃料処理ユニット2が改質器であることを想定して説明を行う。しかしながら、燃料処理ユニット2には、改質器以外の燃料を処理する装置であってその作動時に一定の発熱が懸念されるもの(例えば液体の原燃料を改質前に気化させる燃料蒸発器)が含まれていても良い。例えば、燃料処理ユニット2に燃料蒸発器が含まれる場合には、燃料蒸発器、改質器、及び燃料電池スタック1が「高温部品」となり、これらを断熱ケース5で包囲することで高温ユニットUhtが構成される。なお、本実施形態では、燃料電池システムSの作動中に、高温室Rhは、600℃~800℃ほどの温度にまで上昇し、低温室Rlは、断熱ケース5により、高温室Rhよりも低い温度に維持される。
【0026】
また、筐体3には、原燃料供給管6が貫通して挿入されている。この原燃料供給管6は、筐体3の内部で断熱ケース5をさらに貫通して、燃料処理ユニット2に接続されている。他方で、原燃料供給管6は、筐体3の外部で図示しない原燃料タンクに接続されており、原燃料タンクに貯蔵されている原燃料、具体的には、エタノール水溶液が、原燃料供給管6を介して燃料処理ユニット2に供給可能な状態にある。
【0027】
さらに、断熱ケース5内において燃料処理ユニット2及び燃料電池スタック1が相互にアノードガス供給管7により接続されている。したがって、燃料処理ユニット2により生成された燃料ガス(すなわち水素)は、アノードガス供給管7を介して燃料電池スタック1に供給される。
【0028】
また、筐体3には、複数のバスバー8a、8bが貫通して挿入されている。このバスバー8a、8bは、断熱ケース5を貫通して燃料電池スタック1の周辺電気機器(電子制御基盤等)に接続されている。
【0029】
図示を省略するが、燃料電池システムSの構成部品として、上記以外に、燃料電池スタック1に還元剤ガス(具体的には、酸素)を供給するカソードガス供給管、燃料電池スタック1における発電後のオフガス(アノードオフガスおよびカソードオフガス)を、アノード極およびカソード極からそれぞれ排出するオフガス排出管等が設けられる。
【0030】
そして、本実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造は、高温ユニットUhtを、車体の構成部品である筐体3の内部で当該筐体3に対して支持するものである。特に、燃料電池ユニット支持構造は、高温ユニットUhtを支持するマウント装置Mと、マウント装置Mを介して高温ユニットUhtを筐体3に取り付けるための取り付け構造90を有する。
【0031】
本実施形態では、複数の取り付け構造90(90-1~90-3)が設けられ、取り付け構造90-1~90-3は、いずれも筐体3と高温ユニットUhtとの間に介装され、高温ユニットUhtと筐体3とを連結する(図3及び図4参照)。
【0032】
本実施形態では、車体構成部品である筐体3に、3つの取り付け構造90-1~90-3が設けられている。特に、3つの取り付け構造90-1~90-3は、高温部品である燃料電池スタック1および燃料処理ユニット2が並ぶ方向(X軸方向)において、高温ユニットUhtを支持する観点から適切な間隔を空けて配置されている。本実施形態では、取り付け構造90-1~90-3は、いずれも同様な基本構成を有する。なお、取り付け構造90の数は、3つに限定されるものではなく、2または4等、高温ユニットUhtの重量等に応じて適宜に選択することが可能である。
【0033】
また、図4において、本実施形態の燃料電池ユニット支持構造における各部の温度TのX軸方向における温度分布を示している。図4に示すように、本実施形態では、温度Tは、X軸方向における燃料電池スタック1と燃料処理ユニット2との間の位置で最も高くなり、点線Cに沿って(X軸方向に沿って)この最高点から離れるに従って低下する傾向にある。そして、温度Tは、断熱ケース5の内外(つまり、高温室Rhと低温室Rlとの境界)および筐体3(断熱材4)の内外で、不連続な変化を示す。
【0034】
先に述べたように、本実施形態では、取り付け構造90(90-1~90-3)は、いずれも、高温部品である燃料電池スタック1および燃料処理ユニット2が収容された断熱ケース5の外、すなわち低温室Rlに配置されている。
【0035】
図5及び図6に示すように、本実施形態の取り付け構造90は、主な要素として、平面部としてのマウントステージ91と、ブラケット92と、低熱伝導接続体93と、を有する。
【0036】
マウントステージ91は、マウント装置Mを介して高温ユニットUhtが取り付けられる座面を形成する。特に、マウントステージ91は略板状体に形成され、その長手方向が車両の進行方向(Y軸方向)と略平行となるようにブラケット92の上面に固定されている。特に、マウントステージ91は、高温ユニットUhtからの輻射熱が筐体3に伝達されることを抑制するように、当該高温ユニットUhtと筐体3の底面との間を遮蔽するように伸張する平面形状を有する。
【0037】
ブラケット92は、マウントステージ91を筐体3に支持する。より詳細には、ブラケット92は、筐体3の内部で図上のX軸方向に沿って一定長さ延在し、且つY軸方向における断面が略コ字状に形成されている。さらに、ブラケット92は、マウントステージ91の長手方向における両端のそれぞれを支えるように、当該両端のそれぞれに配置されている。なお、図7に示すように、一対のブラケット92におけるそれぞれの上面には、X軸方向における略中央位置においてマウントステージ91の両端が適切な固定手段(図7ではねじ止め)により固定される。
【0038】
特に、本実施形態では、一対のブラケット92は、マウントステージ91の伸展方向(より詳細には図上のY軸方向)に関して低熱伝導接続体93よりも外側に設けられる。
【0039】
低熱伝導接続体93は、マウントステージ91と筐体3を接続するように図上のZ軸方向に延在して設けられる。特に、本実施形態の低熱伝導接続体93は、中実体であって、円環状(例えば、真円形または楕円形)の断面を有する棒状体に形成され、一対のブラケット92よりも高い熱抵抗を有する。特に、低熱伝導接続体93は、マウントステージ91よりも低い熱伝導率(より好ましくはマウントステージ91及びブラケット92よりも低い熱伝導率)を持ち、高温ユニットUhtの荷重の少なくとも一部を支える観点から好適な強度(剛性)を有する材料により構成される。
【0040】
上記取り付け構造90では、高温ユニットUht、マウント装置M、及び取り付け構造90を含む振動系(以下、単に「支持構造振動系」とも称する)の共振周波数が、低熱伝導接続体93の付設により増大される。すなわち、低熱伝導接続体93が存在する場合にはこれが存在しない場合と比べて、マウントステージ91のX軸方向に定められる取り付け構造90の梁長Lが振動モードを評価する際の見かけ上、短縮される。
【0041】
特に、本実施形態では、マウントステージ91のY軸方向における両端部が一対のブラケット92により車体構成部品である筐体3に対して固定されつつ、低熱伝導接続体93がマウントステージ91のY軸方向における略中央位置に配置されている。このため、取り付け構造90の梁長Lを、実質的に半分のL1(=L/2)とみなすことが可能である。
【0042】
次に、上述した本実施形態の燃料電池ユニット支持構造の一部であるマウント装置M(M1~M3)について説明する。
【0043】
本実施形態では、マウントステージ91に高温ユニットUht(より詳細には燃料電池スタック1および燃料処理ユニット2)を支持するマウント装置M(M1~M3)が設けられている。特に、本実施形態では、1つの取り付け構造90に設けられた一対のマウント装置Mが、上記3つの取り付け構造90-1~90-3のそれぞれに設けられている。すなわち、本実施形態では、合計で6つのマウント装置M(M1~M3)を用いる例を説明するが、いずれのマウント装置Mも同様の構成のものである。なお、マウント装置Mの設置数は、これに限定されるものではなく、高温ユニットUhtの重量等に応じて適宜に選択することが可能である。
【0044】
(マウント装置の構成)
図8は、本実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造に適用されるマウント装置Mの構成を示しており、図8(a)は、マウント装置Mを正面視により、図8(b)は、側面視により、それぞれ示している。
【0045】
マウント装置Mは、筐体3に固定される固定部101と、固定部101に対して変位可能に支持され、燃料電池スタック1および燃料処理ユニット2の荷重を受ける可動部102と、を備える。マウント装置Mは、可動部102の、固定部101に対する単位量の相対変位を第1方向、例えば、特定の一方向に生じさせるのに要する力が、第1方向とは異なる第2方向、例えば、一方向以外の他方向に同じ単位量の相対変位を生じさせるのに要する力よりも小さくなるように構成される。
【0046】
本実施形態では、固定部101および可動部102は、いずれも平板状をなす。可動部102は、固定部101に対する不動点を形成する基部102aと、燃料電池スタック1および燃料処理ユニット2の荷重を受ける座部102bと、基部102aと座部102bとを連結し、可動部102の固定部101に対する変位方向を定める腕部102cと、を有する。腕部102cの材料力学的な特徴により、固定部101に対する可動部102の相対的な変位の方向が規制される。
【0047】
具体的には、腕部102cは、図8(a)に示すように、基部102aから外方に延びる水平部c1と、水平部c1に対し、座部102bに向けて垂直な方向に延びる鉛直部c2と、を有する。このような構成により、本実施形態では、水平部c1に基部102aを基点とする捩れが生じる方向にのみ、可動部102の実質的な変位が許容され、これ以外の方向、特に水平部c1に対して平行な方向への変位が禁止される。微視的には、変位が許容されるのは、水平部c1の軸を中心とする回転方向であるが、図8(b)は、この回転による変位量が小さく、線形的な変位とみなせるものとして、変位方向Dを矢印付きの線分により示している。
【0048】
本実施形態では、可動部102の変位が許容される方向が、燃料電池システムSの運転時における燃料電池スタック1および燃料処理ユニット2の熱膨張による変位の方向に設定されている。ここで、この熱膨張による変位は、高温室Rhのうち、最も温度が高くなる部位を基点として、この基点から離れる方向に生じる。
【0049】
さらに、本実施形態では、可動部102に一対の腕部102cが設けられているが、可動部102の構成は、これに限定されるものではなく、図8(a)に示す正面視において、左右いずれか一方の腕部102cのみが設けられた構成であってもよいし、腕部102cの捩りにより変位を付与する構成に代え、基部102aと座部102bとを接続する部材の撓みまたは曲げにより変位を付与する構成や、基部102aと座部102bとの間に、摺動式の変位要素を介装した構成が採用されてもよい。部材の撓み等により変位を付与する場合は、厚さの違い等により部材の弾性率を方向に応じて異ならせることで、変位が許容される方向を設定することが可能である。
【0050】
そして、このマウント装置Mをマウントステージ91に固定して高温ユニットUhtを支持する構造を採用したことで、路面からの加振等に対し、高温ユニットUhtの不要な方向への変位を抑制することができる。このため、取り付け構造90に過度な負担がかかるのを回避しながら、高温ユニットUhtにおける高温部品の熱膨張による変位を吸収することができる。
【0051】
(作用効果の説明)
本実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造により得られる効果について、以下に説明する。
【0052】
本実施形態の燃料電池ユニット支持構造は、燃料電池スタック1を含む高温部品(燃料電池スタック1及び燃料処理ユニット2)からなる高温ユニットUhtを断熱材(断熱ケース5)を介して筐体3で包囲して車体骨格部材(サイドメンバ21r、21l)に支持する。そして、この燃料電池ユニット支持構造は、高温ユニットUhtを筐体3内に支持するマウント装置Mと、マウント装置Mを介して高温ユニットUhtを筐体3に取り付けるための取り付け構造90と、を有する。そして、取り付け構造90は、マウント装置Mが固定される平面部としてのマウントステージ91よりも高い熱抵抗を有しサイドメンバ21r、21lへの伝熱を抑制する伝熱抑制手段と、高温ユニットUht、マウント装置M、及び該取り付け構造90からなる振動系の共振周波数を増加させ車体振動を抑制する振動抑制手段と、を含む。
【0053】
これによれば、伝熱抑制手段によって燃料電池スタック1を含む高温ユニットUhtから車体骨格部材であるサイドメンバ21r、21lを介して車体への伝熱を抑制しつつ、振動抑制手段により上記振動系における共振を抑制して車体振動を抑制することができる。
【0054】
特に、伝熱抑制手段及び振動抑制手段は、マウントステージ91と筐体3を接続するように延在して設けられマウントステージ91よりも高い熱抵抗を有する低熱伝導接続体93により構成される。
【0055】
これにより、低熱伝導接続体93でマウントステージ91と筐体3が接続されることで、当該低熱伝導接続体93が設けられている部分を支持構造振動系の振動における定点とすることができる。すなわち、マウントステージ91と筐体3を相互に接続する低熱伝導接続体93を設けることで支持構造振動系の共振周波数を増加させることができ、耐振性を高めることができる。その一方で、低熱伝導接続体93の熱抵抗がマウントステージ91の熱抵抗よりも高く構成されていることで、当該低熱伝導接続体93がマウントステージ91と筐体3の間における伝熱経路としての機能を抑制することができる。このため、高温ユニットUhtからの熱が低熱伝導接続体93に伝導して、低温室Rl又は筐体3の外の低温空間に輻射されるという事態の発生を抑制することができる。すなわち、高温側の高温ユニットUht(より詳細には、断熱ケース5内)から低温側(低温室Rl又は筐体3の外の低温空間)への伝熱を抑制しつつ、耐振性の向上も図ることができる。
【0056】
また、取り付け構造90は、マウントステージ91の長手方向の両端に配置され、筐体3に支持する一対のブラケット92をさらに含む。そして、低熱伝導接続体93は、マウントステージ91における一対のブラケット92の間の位置に配置される図5等参照)。
【0057】
これにより、マウントステージ91の筐体3への支持状態をより安定させることができる。その上で、低熱伝導接続体93を挟んで一対のブラケット92がマウントステージ91の長手方向の両端に配置されるので、高温ユニットUhtからの熱が当該高温ユニットUhtを支持するマウント装置Mを介してブラケット92に伝導されることを好適に抑制することができる。
【0058】
そして、低熱伝導接続体93は、マウントステージ91及びブラケット92よりも低い熱伝導率を持つように構成される。
【0059】
すなわち、上述のように低熱伝導接続体93に求められる上述の高い熱抵抗をマウントステージ91及びブラケット92よりも低い熱伝導率の材料で構成するという簡易な態様で実現することができる。特に、低熱伝導接続体93の熱伝導率をブラケット92よりも低くすることで、低熱伝導接続体93とブラケット92の伝熱経路の断面積(X軸方向に沿った断面積)を略同じにしつつ、低熱伝導接続体93の熱抵抗(より詳しくはZ軸方向に沿った経路における熱抵抗)をブラケット92に比べて小さくすることができる。すなわち、マウントステージ91と筐体3の間の伝熱を抑制する機能を維持しつつ、上記支持構造振動系の共振周波数を増加させる観点から望ましい剛性をより確実に実現することができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、高温ユニットUhtは、高温部品として、燃料電池スタック1及び該燃料電池スタック1に供給される燃料ガスを生成する燃料処理ユニット2と、を含む。そして、燃料電池ユニット支持構造は、燃料電池スタック1と燃料処理ユニット2とが並ぶ方向に複数設けられる(図4等参照)。
【0061】
これにより、燃料電池スタック1とこれに並べて配置された燃料処理ユニット2からなる高温ユニットUhtを、荷重分布バランスを好適に整えつつ筐体3に支持することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、マウントステージ91に一対のブラケット92を設けて筐体3に支持する例について説明した。しかしながら、ブラケット92の構成は、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、マウントステージ91の長手方向(X軸方向)の一端がブラケット92を介することなく筐体3に支持可能である場合には、当該部分におけるブラケット92の設置を省略することが可能である。この場合も、他側のブラケット92と筐体3に対する固定点との間に低熱伝導接続体93を設けることで、振動モードを評価する際の見かけ上、取り付け構造90の梁長を、全長Lよりも短い長さL1に短縮させることが可能である。
【0063】
また、本実施形態では、低熱伝導接続体93が略棒状に形成される例について説明した。しかしながら、これに限られず、上述した必要な熱抵抗の維持と高温ユニットUhtの筐体3への支持状態の安定化のバランスを考慮して、低熱伝導接続体93の形状を適宜変更しても良い。例えば、図10及び図11に示すように、低熱伝導接続体93を、マウントステージ91の短辺の両縁部のそれぞれに設けられ、筐体3に接触する部分にフランジ93a,93aが形成された形状としても良い。これにより、上述した低熱伝導接続体93の熱抵抗を維持しつつ、高温ユニットUhtの筐体3への支持状態をより安定化させることができる。
【0064】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図12は、第2実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。
【0066】
図12に示すように、本実施形態では、第1実施形態の図5等に示す例に加え、低熱伝導接続体93にさらに遮熱板94が設けられている。遮熱板94は、断熱性を有する平板状に形成されている。特に、本実施形態の遮熱板94は、低熱伝導接続体93を中心にマウントステージ91における筐体3との対向面の略全域を覆うようにX軸方向及びY軸方向において伸張して設けられている。すなわち、遮熱板94は、マウントステージ91においてブラケット92の内側の平面領域(より詳細には筐体3と対向する平面領域)の略全域に亘って伸展する。
【0067】
このように、遮熱板94を設け、これにより、高温ユニットUhtを熱源とするマウントステージ91からの輻射による筐体3の加熱を抑制することで、筐体3への熱の入力をさらに抑制することが可能となる。特に、遮熱板94は、マウントステージ91においてブラケット92の内側の平面領域略全域に亘って伸展するので、マウントステージ91からの熱の輻射をより好適に抑制することができる。
【0068】
なお、図12で説明した構成に代えて、遮熱板94の少なくとも一端をブラケット92にまで延設させ、ブラケット92に接続させる構成を採用してもよい。
【0069】
例えば、図13に示すように、遮熱板94の両端をブラケット92にまで延設させ、ブラケット92に接続させる構成を採用することができる。この図13に示す構成では、マウントステージ91の長手方向(X軸方向)の両端で、遮熱板94をブラケット92に接続させている。特に、図13に示す例では、遮熱板94を筐体3に向けて屈曲または湾曲させることで、遮熱板94を、ブラケット92の筐体3に対する固定部、つまり、ブラケット92の根本に接続させている。これにより、マウントステージ91の前面からの熱の輻射をより確実に抑制することが可能となり、筐体3への熱の入力をより確実に抑制することができる。
【0070】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
図14は、第3実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。図示のように、本実施形態の燃料電池ユニット支持構造では、マウントステージ91が複数の部分に分割されている。具体的には、マウントステージ91は、その長手方向(X軸方向)に並ぶ複数の部分に分割され、高温ユニットUhtの第1部分を受ける第1座面を形成する部分91-1と、高温ユニットUhtの、第1部分とは異なる第2部分を受ける第2座面を形成する部分91-2と、に分割されている。そして、第1および第2座面を形成するそれぞれの部分に対し、低熱伝導接続体93が接続されている。
【0072】
このように、マウントステージ91を分割することで、マウントステージ91の梁長Lを短縮することができ(L1)、振動モードをより容易に調整することが可能となる。
【0073】
また、図15には、本実施形態の変形例に係る燃料電池ユニット支持構造を示す。図15に示す燃料電池ユニット支持構造は、図14に示す構成に対してさらに、マウントステージ91と筐体3の間に熱の輻射を抑制する遮熱板94が設けられている。特に、遮熱板94は、低熱伝導接続体93と一体に形成される。
【0074】
これにより、双方の部分91-1、91-2に対して共通の低熱伝導接続体93が設けられ、各部分91-1、91-2の向かい合う端部が、この共通の低熱伝導接続体93により連結されている。さらに、低熱伝導接続体93は、異方性弾性体により構成され、マウントステージ91の座面の伸展方向のうち、高温ユニットUhtを熱源としてマウントステージ91に変位が生じる第1伸展方向に、これとは異なる(例えば、垂直な)第2伸展方向よりも低い弾性を有する。なお、弾性の異方性は、低熱伝導接続体93の寸法を方向に応じて異ならせることにより付与することが可能である。例えば、低熱伝導接続体93の寸法を、変位を許容する方向に薄く、変位を抑制する方向に長くするのである。
【0075】
これにより、低熱伝導接続体93の剛性を極力維持しながら、熱膨張による変位を吸収することが可能となる。
【0076】
[第4実施形態]
以下、第4実施形態について説明する。なお、第1~第3実施形態の何れかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図16は、第4実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造を説明する図である。先ず、図16(a)に示すように、本実施形態において、遮熱板94は、マウントステージ91の座面の伸展方向に対して垂直な方向に積層された複数の層94a~94cを有する。特に、図16(b)に示すように、遮熱板94は、3つの層94a~94cを有する。
【0078】
具体的に、遮熱板94は、中間の第1層94bと、第1層94bよりもマウントステージ91に近い側に積層された第2層94aと、第1層94bよりも筐体3に近い側に積層された第3層94cと、を有する。ここで、本実施形態では、第1層94bは、第2層94aよりも高い断熱性を有することで特徴付けられ、第3層94cは、第1層94bよりも高い剛性を有することで特徴付けられる。なお、図16(a)に示す遮熱板94において、図13に示すような、マウントステージ91の長手方向(X軸方向)の両端でブラケット92に接続させる構成を採用しても良い。
【0079】
このように、遮熱板94を複数の層94a~94cにより構成し、中央の第1層94bに、よりマウントステージ91に近い第2層94aよりも高い断熱性を持たせることで、マウントステージ91からの熱を受ける第2層94aからの熱の輻射を第1層94bにより抑え、筐体3への熱の入力をさらに抑制することが可能となる。
【0080】
さらに、第1層94bよりも筐体3に近い第3層94cに、第1層94bよりも高い剛性を持たせたことで、第1層94bにより高温ユニットUhtからの熱の伝達を抑制しながら、遮熱板94全体の剛性を確保することが可能となる。
【0081】
[第5実施形態]
以下、第5実施形態について説明する。なお、第1~第4実施形態の何れかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図17は、本発明の他の実施形態に係る燃料電池ユニット支持構造の、取り付け構造および低熱伝導接続体93の配置を示す概略図である。
【0083】
本実施形態では、複数の取り付け構造90-1~90-3のうち、燃料電池システムSの作動時により低温となる高温ユニットUhtの部分に近い取り付け構造(図10に示す例では、両端の取り付け構造90-1、90-3)に設けられる低熱伝導接続体93の数が、より高温となる高温ユニットUhtの部分に近い取り付け構造(中央の取り付け構造90-2)に設けられる低熱伝導接続体93の数よりも多い。これに限定されるものではないが、例えば、低温部に近い取り付け構造90-1、90-3に、2つの低熱伝導接続体93が、高温部に近い取り付け構造90-2に、1つの低熱伝導接続体93が、それぞれ設けられる。
【0084】
このように、複数の取り付け構造90-1~90-3のうち、より温度が低くなる取り付け構造90-1、90-3ほど、換言すれば、熱膨張が小さい高温ユニットUhtの部分に近い取り付け構造ほど多くの低熱伝導接続体93を設けることで、低熱伝導接続体93に対する熱膨張の影響を抑えながら、低熱伝導接続体93による振動モードの調整を積極的に活用し、振動を抑制することが可能となる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を、上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。上記実施形態に対し、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で様々な変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0086】
S…燃料電池システム
1…燃料電池スタック
2…燃料処理ユニット
3…筐体
4…断熱材
5…隔壁
6…原燃料供給管
7…アノードガス供給管
8a、8b…バスバー
11r、11l…後輪
21r、21l…シャシーフレーム(サイドメンバ)
90(90-1~90-3)…取り付け構造
M(M1~M3)…可動マウント装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17