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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】卵汚れ用固体洗浄剤組成物及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/39 20060101AFI20240425BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20240425BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20240425BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20240425BHJP
   C11D 7/12 20060101ALI20240425BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C11D3/39
C11D3/10
C11D17/06
C11D7/18
C11D7/12
B08B3/08 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019191868
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021066778
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】397056042
【氏名又は名称】セッツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】大八木 伸
(72)【発明者】
【氏名】小泉 あや
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-171689(JP,A)
【文献】特開2017-008318(JP,A)
【文献】特開2014-111697(JP,A)
【文献】特開2015-086295(JP,A)
【文献】特開2014-040586(JP,A)
【文献】特開2013-082890(JP,A)
【文献】特開2014-025013(JP,A)
【文献】特表2012-503708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
B08B 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄に用いるための固体洗浄剤組成物であって、
前記固体洗浄剤組成物は、過炭酸塩を含み、
前記固体洗浄剤組成物は、前記過炭酸塩の含有率が50質量%以上である、固体洗浄剤組成物(但し、(A)過酸素化合物25~85質量%、(B)ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸及び/又はその塩0.3~2.5質量%、(C)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から選ばれる単量体を構成単位とする単独重合体及び/又は共重合体である高分子重合体0.5~5質量%、(D)陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤0.4~2質量%及び(E)炭酸塩10~30質量%を含有することを特徴とする粉末漂白洗浄剤組成物を除く。)
【請求項2】
前記固体洗浄剤組成物は、界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の固体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記固体洗浄剤組成物は、炭酸塩をさらに含む、請求項1又は2に記載の固体洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記固体洗浄剤組成物は、前記過炭酸塩の濃度が0.05質量%以上40質量%以下となるように水で希釈して使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記固体洗浄剤組成物は、粉末、顆粒、又は錠剤のいずれかの形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記卵由来の成分を含む汚れは、卵黄を主成分として含む汚れである、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物。
【請求項7】
卵の洗浄工程、選別工程、又は包装工程を含む製造ライン、又は、卵を使用した加工工場で使用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物。
【請求項8】
卵由来の汚れが付着した物品の洗浄方法であって、
過炭酸塩を含む固体洗浄剤組成物(但し、(A)過酸素化合物25~85質量%、(B)ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸及び/又はその塩0.3~2.5質量%、(C)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から選ばれる単量体を構成単位とする単独重合体及び/又は共重合体である高分子重合体0.5~5質量%、(D)陰イオン界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤0.4~2質量%及び(E)炭酸塩10~30質量%を含有することを特徴とする粉末漂白洗浄剤組成物を除く。)を用意する工程と、
前記固体洗浄剤組成物を水で希釈して洗浄剤を調製する工程と、
前記洗浄剤を、前記物品表面に接触させて、前記卵由来の成分を含む汚れを洗浄する工程と、
前記物品表面から洗浄剤を除去する工程と、
を備え、
前記固体洗浄剤組成物は、前記過炭酸塩の含有率が50質量%以上である、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄方法。
【請求項9】
前記固体洗浄剤組成物は、界面活性剤をさらに含む、請求項に記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記固体洗浄剤組成物は、炭酸塩をさらに含む、請求項8又は9に記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記固体洗浄剤組成物は、前記過炭酸塩の濃度が0.05質量%以上40質量%以下となるように水で希釈して使用する、請求項8~10のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項12】
前記固体洗浄剤組成物は、粉末、顆粒、又は錠剤のいずれかの形態である、請求項8~11のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物
【請求項13】
前記卵由来の成分を含む汚れは、卵黄を主成分として含む汚れである、請求項8~12のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項14】
卵の洗浄工程、選別工程、又は包装工程を含む製造ライン、又は、卵を使用した加工工場で行われる、請求項8~13のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄に用いるための固体洗浄剤組成物、当該固体洗浄剤組成物を用いた洗浄及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵の生産工程において、農場から搬入された卵は、卵の洗浄工程、選別工程、包装工程などの製造ラインを経て、消費地に出荷されている。このような製造ラインにおいては、卵が破損し、製造ラインの物品に卵由来の成分を含む汚れが付着することがある。同様に卵を使用し加工する工場においても、製造設備、床等で卵由来の成分を含む汚れが付着することがある。
【0003】
卵由来の成分を含む汚れに対しては、効果的な洗浄方法がなく、特に、卵由来の成分を含む汚れは、乾燥すると非常に除去し難くなるという問題がある。
【0004】
例えば特許文献1には、汚れた物品から卵含有汚れを除去する方法であって、洗浄力を増加するために効果的である量のプロテアーゼおよびプロテアーゼ阻害剤を含む洗浄剤で前記物品を洗浄することを含む、特殊な洗浄方法が開示されている。しかしながら、このような洗浄方法は汎用性が低く、卵由来の成分を含む汚れに対しては、中性洗剤やアルカリ洗剤などを用い、擦り洗いを行うことで物理的に汚れを除去しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-506021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、本発明は、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄に用いるための固体洗浄剤組成物を提供することを主な目的とする。さらに、本発明は、当該固体洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄剤、及び、当該洗浄剤組成物を利用した、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、過炭酸塩を含む固体洗浄剤組成物は、水で希釈して洗浄剤として用いることにより、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品から当該汚れを好適に除去できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄に用いるための固体洗浄剤組成物であって、
前記固体洗浄剤組成物は、過炭酸塩を含む、固体洗浄剤組成物。
項2. 前記固体洗浄剤組成物は、界面活性剤をさらに含む、項1に記載の固体洗浄剤組成物。
項3. 前記固体洗浄剤組成物は、炭酸塩をさらに含む、項1又は2に記載の固体洗浄剤組成物。
項4. 前記固体洗浄剤組成物は、前記過炭酸塩の濃度が0.05質量%以上40質量%以下となるように水で希釈して使用される、項1~3のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物。
項5. 前記固体洗浄剤組成物は、粉末、顆粒、又は錠剤のいずれかの形態である、項1~4のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物
項6. 前記卵由来の成分を含む汚れは、卵黄を主成分として含む汚れである、項1~5のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物。
項7. 卵の洗浄工程、選別工程、又は包装工程を含む製造ライン、又は、卵を使用した加工工場で使用される、項1~6のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物。
項8. 卵由来の汚れが付着した物品の洗浄方法であって、
過炭酸塩を含む固体洗浄剤組成物を用意する工程と、
前記固体洗浄剤組成物を水で希釈して洗浄剤を調製する工程と、
前記洗浄剤を、前記物品表面に接触させて、前記卵由来の成分を含む汚れを洗浄する工程と、
前記物品表面から洗浄剤を除去する工程と、
を備える、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄方法。
項9. 前記固体洗浄剤組成物は、界面活性剤をさらに含む、項8に記載の洗浄方法。
項10. 前記固体洗浄剤組成物は、炭酸塩をさらに含む、項8又は9に記載の洗浄方法。
項11. 前記固体洗浄剤組成物は、前記過炭酸塩の濃度が0.05質量%以上40質量%以下となるように水で希釈して使用する、項8~10のいずれか1項に記載の洗浄方法。
項12. 前記固体洗浄剤組成物は、粉末、顆粒、又は錠剤のいずれかの形態である、項8~11のいずれか1項に記載の固体洗浄剤組成物
項13. 前記卵由来の成分を含む汚れは、卵黄を主成分として含む汚れである、項8~12のいずれか1項に記載の洗浄方法。
項14. 卵の洗浄工程、選別工程、又は包装工程を含む製造ライン、又は、卵を使用した加工工場で行われる、項8~13のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄に用いるための固体洗浄剤組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該固体洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄剤、及び、当該洗浄剤組成物を利用した、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄方法を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の固体洗浄剤組成物は、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄に用いるための固体洗浄剤組成物であって、過炭酸塩を含むことを特徴としている。本発明の固体洗浄剤組成物は、固体であり、水で希釈して洗浄剤として使用される。本発明の固体洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄剤は、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品から当該汚れを好適に除去することができる。
【0011】
また、本発明の洗浄方法は、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄方法であって、過炭酸塩を含む固体洗浄剤組成物を用意する工程と、固体洗浄剤組成物を水で希釈して洗浄剤を調製する工程と、洗浄剤を、物品表面に接触させて、卵由来の成分を含む汚れを洗浄する工程と、物品表面から洗浄剤を除去する工程とを備えることを特徴としている。本発明の洗浄方法は、これらの工程を含むことにより、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品から当該汚れを好適に除去することができる。
【0012】
以下、本発明の固体洗浄剤組成物、洗浄剤及び洗浄方法について、詳述する。なお、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
【0013】
1.固体洗浄剤組成物
本発明の固体洗浄剤組成物は、過炭酸塩を含む。過炭酸塩としては、例えば過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなどが挙げられ、卵由来の成分を含む汚れの洗浄力に優れることから、過炭酸ナトリウムが好ましい。過炭酸塩は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0014】
本発明の固体洗浄剤組成物において、過炭酸塩の含有率としては、特に制限されないが、好ましくは30質量%以上、より好ましは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上が挙げられる。過炭酸塩の含有率の上限については、例えば100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0015】
また、本発明の固体洗浄剤組成物は、過炭酸塩の濃度が0.05質量%以上40質量%以下となるように水で希釈して使用されることが好ましい。当該希釈後の過炭酸塩の濃度は、0.1質量%以上20質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以上5質量%以下が特に好ましい。すなわち、本発明の固体洗浄剤組成物を、卵由来の成分を含む汚れの洗浄に用いる際、固体洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄剤中の過炭酸塩の濃度は、0.05質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0016】
本発明の固形洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄剤中の固形洗浄剤組成物の濃度としては、0.2質量%以上40質量%以下とすることが好ましく、0.3質量%以上30質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以上10質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の固体洗浄剤組成物は、過炭酸塩に加えて、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、特に制限されないが、卵由来の成分を含む汚れの洗浄力を向上させる観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0018】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、ポリオキシアルキレンのアルキレン部分としては、特に制限されないが、卵由来の成分を含む汚れの洗浄力を向上させる観点から、エチレン、プロピレン、及びブチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましく、エチレンを含んでいることがさらに好ましい。特に、ポリオキシアルキレンは、ポリオキシエチレンであることが好ましい。
【0019】
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、ポリオキシアルキレンの繰り返し単位の数(オキシアルキレン基の数)としては、特に制限されないが、卵由来の成分を含む汚れの洗浄力を向上させる観点から、好ましくは2~16程度、より好ましくは3~14程度、さらに好ましくは4~12程度が挙げられる。
【0020】
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、アルキルエーテル部分の炭素数としては、特に制限されないが、卵由来の成分を含む汚れの洗浄力を向上させる観点から、好ましくは5~20程度、より好ましくは6~18程度、さらに好ましくは8~16程度が挙げられる。
【0021】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、特に、ポリオキシエチレンアルキル(C12~C14)エーテルが好ましい。
【0022】
界面活性剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
本発明の固体洗浄剤組成物において、界面活性剤の含有率としては、特に制限されないが、過炭酸塩100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05~10質量部程度、さらに好ましくは0.1~5質量部程度が挙げられる。
【0024】
また、本発明の固体洗浄剤組成物は、過炭酸塩に加えて、炭酸塩を含んでいてもよい。炭酸塩としては、特に制限されないが、卵由来の成分を含む汚れの洗浄力を向上させる観点から炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましく、炭酸ナトリウムがより好ましい。
【0025】
本発明の固体洗浄剤組成物において、炭酸塩の含有率としては、特に制限されないが、過炭酸塩100質量部に対して、好ましくは10~250質量部程度、より好ましくは15~200質量部程度、さらに好ましくは20~100質量部程度が挙げられる。
【0026】
また固形洗浄剤組成物中に含まれる炭酸塩の濃度としては、好ましくは3~70質量%、より好ましくは5~50質量%、さらに好ましくは10~30質量%程度が挙げられる。
【0027】
本発明の固体洗浄剤組成物には、溶剤が含まれていてもよい。溶剤としては、特に制限されず、公知の洗浄剤に配合されているものを用いることができる。
【0028】
溶剤の具体例としては、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~3のアルコール化合物;エチレングリコール、プロピレングリコールなどの炭素数1~3のアルキレングリコール;ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。溶剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明の固体洗浄剤組成物に溶剤が含まれる場合、その含有率としては、過炭酸塩100質量部に対して例えば20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。固体洗浄剤組成物に含まれる溶剤の含有率は、過炭酸塩100質量部に対して0質量部であってもよい。
【0030】
その他、本発明の固体洗浄剤組成物は、公知の固体洗浄剤組成物に配合されている添加剤(例えば、キレート剤、防錆剤、増量剤など)を含んでいてもよい。固体洗浄剤組成物に添加剤が含まれる場合、その含有率としては、過炭酸塩100質量部に対して、例えば20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。固体洗浄剤組成物に含まれる添加剤の含有率は、過炭酸塩100質量部に対して0質量部であってもよい。
【0031】
本発明の固体洗浄剤組成物は、過炭酸塩、さらには、必要に応じて、炭酸塩、界面活性剤、溶剤、添加剤などを混合することで容易に調製することができる。
【0032】
本発明の固体洗浄剤組成物は、固体状の洗浄剤組成物であり、その形態は粉末、顆粒、又は錠剤のいずれかの形態であることが好ましい。固体洗浄剤組成物の形態が、粉末または顆粒であると、速やかに水に溶解させることができるため、固体洗浄剤組成物を用いた洗浄剤の調製作業が容易となる。また、過炭酸塩は、水中で分解されやすい性質を有しているが、本発明の固体洗浄剤組成物には、過炭酸塩が固体状で含有されているため、本発明の固体洗浄剤組成物は安定性に優れている。
【0033】
本発明の固体洗浄剤組成物は、固体として提供され、水で希釈された洗浄剤として、卵由来の成分を含む汚れた付着した物品の洗浄に使用する。
【0034】
なお、本発明の固体洗浄剤組成物が洗浄対象とする汚れは、卵由来の成分を含んでいればよく、卵由来の成分としては、卵黄、卵白などが挙げられ、特に卵黄を含む汚れに対して有効であり、卵黄を主成分とする汚れであってもよい。また、卵由来の成分を含む汚れは、卵由来ではない他の汚れ成分を含んでいてもよい。また、卵由来の成分は、通常は鶏卵由来の成分であるが、鶉の卵由来の成分などであってもよい。
【0035】
2.洗浄剤
本発明の洗浄剤は、前述した固体洗浄剤組成物を水で希釈したものであり、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄に好適に使用することができる。本発明の固体洗浄剤組成物の詳細については前述の通りである。
【0036】
本発明の洗浄剤中の過炭酸塩の濃度は、前記の通りであり、0.05質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。このような濃度となるようにして、固体洗浄剤組成物を水で希釈した洗浄剤を、卵由来の成分を含む汚れの洗浄に用いる。また、前記の通り、本発明の洗浄剤中の固形洗浄剤組成物の濃度は、0.2質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の洗浄剤において、固体洗浄剤組成物の水による希釈倍率は、質量基準で、例えば2.5倍から500倍であり、好ましくは5倍から300倍、より好ましくは10倍から200倍、さらに好ましくは10倍から200倍、特に好ましくは20倍から100倍である。
【0038】
水としては、特に制限されず、水道水などを使用することができる。
【0039】
本発明の洗浄剤を用いた卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄方法については、後述の通りである。
【0040】
3.洗浄方法
本発明の洗浄方法は、前述の本発明の固体洗浄剤組成物を利用した洗浄方法である。すなわち、本発明の洗浄方法は、卵由来の成分を含む汚れが付着した物品の洗浄方法であり、過炭酸塩を含む固体洗浄剤組成物を用意する工程と、固体洗浄剤組成物を水で希釈して洗浄剤を調製する工程と、洗浄剤を、物品表面に接触させて、卵由来の成分を含む汚れを洗浄する工程と、物品表面から洗浄剤を除去する工程とを備える。
【0041】
過炭酸塩を含む固体洗浄剤組成物を用意する工程と、固体洗浄剤組成物を水で希釈して洗浄剤を調製する工程において、過炭酸塩を含む固体洗浄剤組成物(すなわち、本発明の固体洗浄剤組成物)、及びこれを水で希釈した洗浄剤(すなわち、本発明の洗浄剤)の詳細については、前述の通りである。
【0042】
本発明の洗浄方法において、洗浄剤を物品表面に接触させて、卵由来の成分を含む汚れを洗浄する工程については、本発明の洗浄剤を当該物品に接触させる方法であれば、特に制限されず、例えば、当該物品を本発明の洗浄剤中に浸漬する方法や、本発明の洗浄剤を当該物品表面に付着させる方法などが挙げられる。また、本発明の洗浄剤を当該物品表面に付着させる方法としては、特に制限されないが、洗浄剤を水で希釈しフォーマーなどでフォーム状としてから物品表面に付着させることが好ましい。フォーム状の洗浄剤を物品表面に付着させることにより、長時間にわたって物品表面に洗浄剤を付着させることができ、汚れをより好適に除去することが可能となる。洗浄剤をフォーム状するためには、市販のフォーマーを使用すればよい。
【0043】
洗浄剤を物品表面に接触させる時間としては、特に制限されないが、卵由来の成分を含む汚れをより好適に除去する観点から、好ましくは10分間以上、より好ましくは15分間以上、さらに好ましくは30分間以上、さらに好ましくは1時間以上、さらに好ましくは3時間以上、特に好ましくは8時間以上である。なお、当該時間の上限については、特に制限されないが、例えば48時間以下が挙げられる。
【0044】
洗浄剤を物品表面に接触させている間、ブラシなどで物品表面を擦るなどして、汚れを取り除きやすくしても良いが、本発明においては、物品表面を擦ることは必須ではなく、洗浄剤が物品表面に付着した状態で静置すればよい。
【0045】
また、洗浄剤を用いて物品を洗浄する際の温度としては、特に制限されなが、卵由来の成分を含む汚れをより好適に除去する観点から、好ましくは0~60℃程度、より好ましくは10~40℃程度である。
【0046】
物品表面から洗浄剤を除去する工程は、物品表面に付着した洗浄剤、さらには汚れを除去する工程である。洗浄剤を除去する方法としては、洗浄剤等を水ですすぐ方法や、布などで拭き取る方法などが挙げられる。水ですすぐ時間は特に制限されず、洗浄剤が十分に取り除かれる時間とすればよい。水としては、特に制限されず、水道水などを使用することができる。また、洗浄剤を水ですすぐ際の水の温度としては、特に制限されず、例えば5~60℃程度、好ましくは20~50℃程度が挙げられる。
【0047】
物品表面から洗浄剤を除去する工程の後には、必要に応じて、水の拭き取りや、物品の乾燥を行うことができる。
【0048】
前記の通り、卵の生産工程においては、一般に、農場から搬入された卵は、卵の洗浄工程、選別工程、包装工程などの製造ラインを経て、消費地に出荷されている。このような製造ラインにおいては、卵が破損し、製造ラインの物品に卵由来の成分を含む汚れが付着することがある。また、卵を使用した加工工場などにおいても、製造ラインの物品に卵由来の成分を含む汚れが付着することがある。卵由来の成分を含む汚れに対しては、効果的な洗浄方法がなく、特に、卵黄を含む汚れは、乾燥すると非常に除去し難くなるという問題がある。卵黄を含む汚れに対しては、中性洗剤やアルカリ洗剤などを用い、擦り洗いを行うことで物理的に汚れを除去しているのが現状である。
【0049】
これに対して、本発明の固体洗浄剤組成物を利用した洗浄方法は、卵黄を主成分として含む汚れ(具体的には、汚れ成分に占める卵黄の割合が50質量%以上の汚れ)に対しても、好適に使用することができる。また、このような汚れは、特に、卵の洗浄工程、選別工程、又は包装工程を含む製造ラインや、卵を使用した加工工場などで使用される物品に付着しやすい汚れであり、本発明の洗浄方法は、このような製造ラインなどで使用される物品の洗浄方法として特に好適である。なお、本発明の洗浄方法が洗浄対象とする汚れは、卵由来の成分を含んでいればよく、卵由来の成分としては、卵黄、卵白などが挙げられ、特に卵黄を含む汚れに対して有効であり、卵黄を主成分とする汚れであってもよい。また、卵由来の成分を含む汚れは、卵由来ではない他の汚れ成分を含んでいてもよい。また、卵由来の成分は、通常は鶏卵由来の成分であるが、鶉の卵由来の成分などに本発明の洗浄方法を適用することもできる。
【実施例
【0050】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0051】
[洗浄剤原液]
比較例1~9の洗浄剤原液として、以下の製品を用意した。
・オイルクリーナー(攝津製油株式会社製)
・ダイバークリーンコンク(攝津製油株式会社製)
・ビューティークリーンSL(攝津製油株式会社製)
・ゆで麺器用洗浄剤(攝津製油株式会社製)
・サニスターフォーミングC(攝津製油株式会社製)
・レンジスターストロング(攝津製油株式会社製)
・ユーセルN(攝津製油株式会社製)
・リパーゼ(ノボノルディスク製)
・プロテアーゼ(ノボノルディスク製)
【0052】
(比較例1-9)
表1に記載の各洗浄剤原液を各試験濃度(希釈倍率)となるように水で希釈して、下記試験例1の洗浄剤として用いた。
【0053】
(実施例1)
過炭酸Na、炭酸Na、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを混合し、実施例1の固体洗浄剤組成物を調製した。固体洗浄剤組成物の内訳は、過炭酸Na78質量%、炭酸Na21質量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(C12、EO9mol)1質量%である。この固体洗浄剤組成物を水で10倍に希釈して、試験濃度として、過炭酸Naの濃度が7.8%の洗浄剤を調製した。
【0054】
[試験例1]
卵黄1gを76×26mmのスライドグラスに付着(付着面積は15cm2程度)させ、40℃環境で3時間乾燥させて試験片とした。次に、シャーレ内に各洗浄剤20mlを入れ、さらに試験片を入れて、室温(25℃)で15分間、洗浄剤に試験片を浸漬した。次に、試験片を水に1分間浸漬することですすぎ洗いを行った。次に、試験片を乾燥させて外観を確認した。すすぎ洗い後の試験片の外観から、以下の基準により、卵黄汚れに対する洗浄力を評価した。結果を表1に示す。
A:試験片に卵黄がほとんど残っていない。
B:試験片に卵黄が部分的に残っている。
C:試験片に卵黄が広い範囲に残っているが、僅かに膨潤している。
D:試験片の卵黄が洗浄前と比べほぼ変化がない。
【0055】
【表1】
【0056】
表1中の単位「%」は「質量%」を意味する。
【0057】
表1において、実施例1の洗浄剤は市販品ではないため、「洗浄剤製品名」及び「洗浄剤としての種類」の欄には、固形洗浄剤組成物の内訳を示した。
【0058】
[試験例2]
実施例1で調製した固形洗浄剤組成物を、それぞれ、水で希釈して、表2及び表3に示すように、固形洗浄剤組成物の濃度が0.1質量%、0.5質量%、1質量%、3質量%、及び10質量%の洗浄剤を調製した。次に、洗浄剤に試験片を浸漬する時間を、それぞれ、1時間または16時間としたこと以外は、試験例1と同様にして、各洗浄剤の卵黄汚れに対する洗浄力を評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2中の単位「%」は「質量%」を意味する。
【0061】
【表3】
【0062】
表3中の単位「%」は「質量%」を意味する。
【0063】
表1から表3に示される結果から、過炭酸塩を含む固形洗浄剤組成物を水で希釈して洗浄剤とすることにより、卵黄を含む汚れが付着した物品を好適に洗浄できることが分かる。特に、試験例1,2では、乾燥した卵黄汚れを洗浄対象としており、従来の洗浄剤では、擦り洗い無しに乾燥した卵黄汚れを除去することは困難であったが、本発明の固形洗浄剤組成物を用いて洗浄剤を調製することにより、擦り洗いなしに、乾燥した卵黄汚れを好適に洗浄できることが分かる。
【0064】
[実施例2-13]
表4に記載の組成となるようにして、過炭酸Na、炭酸Na、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを混合し、実施例2-13の固体洗浄剤組成物を調製した。この固体洗浄剤組成物を水で希釈して、表4に記載の試験濃度となるようにして洗浄剤を調製した。次に、表4に記載の浸漬時間となるようにしたこと以外は、試験例1と同様にして、各洗浄剤の卵黄汚れに対する洗浄力を評価した。結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
表4中の単位「%」は「質量%」を意味する。
【0067】
[実施例14-25]
表5に記載の組成となるようにして、過炭酸Na、炭酸Na、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを混合し、実施例14-25の固体洗浄剤組成物を調製した。この固体洗浄剤組成物を水で希釈して、表5に記載の試験濃度となるようにして洗浄剤を調製した。次に、表5に記載の浸漬時間となるようにしたこと以外は、試験例1と同様にして、各洗浄剤の卵黄汚れに対する洗浄力を評価した。結果を表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
表5中の単位「%」は「質量%」を意味する。
【0070】
[実施例26-37]
表6に記載の組成となるようにして、過炭酸Na、炭酸Na、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを混合し、実施例26-37の固体洗浄剤組成物を調製した。この固体洗浄剤組成物を水で希釈して、表6に記載の試験濃度となるようにして洗浄剤を調製した。次に、表6に記載の浸漬時間となるようにしたこと以外は、試験例1と同様にして、各洗浄剤の卵黄汚れに対する洗浄力を評価した。結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
[実施例38-49]
表7に記載の組成となるようにして、過炭酸Na、炭酸Na、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを混合し、実施例38-49の固体洗浄剤組成物を調製した。この固体洗浄剤組成物を水で希釈して、表7に記載の試験濃度となるようにして洗浄剤を調製した。次に、表7に記載の浸漬時間となるようにしたこと以外は、試験例1と同様にして、各洗浄剤の卵黄汚れに対する洗浄力を評価した。結果を表7に示す。
【0073】
【表7】