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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/02 20060101AFI20240425BHJP
   F25D 17/08 20060101ALI20240425BHJP
   F25D 17/06 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F25D11/02 K
F25D17/08 309
F25D17/06 314
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020014765
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021121769
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健一
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223752(JP,A)
【文献】特開2009-074755(JP,A)
【文献】特開2007-139296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0343269(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00 ~ 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却室に収容された冷却器と、
第1温度帯と、前記第1温度帯よりも高温の第2温度帯とに設定温度帯を切り替え可能な切り替え室と、
前記冷却器の除霜用の第1ヒータと、
前記冷却器から溶け落ちた霜を蒸発させる第2ヒータと、
前記第1ヒータと前記第2ヒータの動作を制御する制御部と、
を備え、
特定の温度帯とは冷蔵温度帯における設定温度の中で中程度の冷却よりも弱い弱冷蔵設定の温度帯であり、
前記制御部は、
前記切り替え室の設定温度帯が前記第1温度帯から前記第2温度帯に切り替えられたことに応じて、前記冷却室から前記切り替え室への冷気の供給を制御するためのダンパを開き、前記第1ヒータを動作させて、
前記切り替え室の切り替え後の設定温度帯が前記特定の温度帯である場合、前記切り替え室の設定温度帯が前記第1温度帯から前記第2温度帯に切り替えられたことに応じて前記第2ヒータを動作させる、
冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれ冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室とに用途が切り替え可能な複数の切り替え室を備えた冷蔵庫が提案されている。このような冷蔵庫では、切り替え室が冷蔵温度帯室として使用される場合、その切り替え室に対応するダンパが閉じられた状態で冷却器に液冷媒が供給され、冷却器の冷熱により切り替え室の冷却が行われる。
【0003】
ところで、上記のような冷蔵庫では、切り替え室に設定される温度帯が低い温度帯から高い温度帯に変更された場合、当該切り替え室の温度が変更後の温度帯に到達するまでに長い時間を要する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-265226号公報
【文献】特開平10-332244号公報
【文献】特開2000-146411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、切り替え室に設定される温度帯が低い温度帯から高い温度帯に変更された場合において、当該切り替え室の温度が変更後の温度帯に到達するまでに要する時間を短縮することができる冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の冷蔵庫は、冷却器と、切り替え室と、第1ヒータと、第2ヒータと、制御部と、を持つ。冷却器は、冷却室に収容される。切り替え室は、第1温度帯と、前記第1温度帯よりも高温の第2温度帯とに設定温度帯を切り替え可能である。第1ヒータは、前記冷却器の除霜用のヒータである。第2ヒータは、前記冷却器から溶け落ちた霜を蒸発させる。制御部は、前記第1ヒータと前記第2ヒータの動作を制御する。特定の温度帯とは冷蔵温度帯における設定温度の中で中程度の冷却よりも弱い弱冷蔵設定の温度帯である。前記制御部は、前記切り替え室の設定温度帯が前記第1温度帯から前記第2温度帯に切り替えられたことに応じて、前記冷却室から前記切り替え室への冷気の供給を制御するためのダンパを開き、前記第1ヒータを動作させて、前記切り替え室の切り替え後の設定温度帯が前記特定の温度帯である場合、前記切り替え室の設定温度帯が前記第1温度帯から前記第2温度帯に切り替えられたことに応じて前記第2ヒータを動作させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の冷蔵庫を示す正面図。
図2図1中に示された冷蔵庫のF2-F2線に沿う断面図。
図3】第1の実施形態の第1切り替え室および第2切り替え室を示す正面図。
図4】第1の実施形態の冷凍サイクル装置の構成を示す図。
図5】第1の実施形態の冷蔵庫の機能構成の一部を示すブロック図。
図6】第1の実施形態の通常加熱制御のタイムチャートの一例を示す図。
図7】第1の実施形態の特別加熱制御のタイムチャートの一例を示す図。
図8】第2の実施形態の冷蔵庫の機能構成の一部を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の冷蔵庫を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本明細書では、冷蔵庫の正面に立つユーザから冷蔵庫を見た方向を基準に、左右を定義している。また、冷蔵庫から見て冷蔵庫の正面に立つユーザに近い側を「前」、遠い側を「後ろ」と定義している。
【0009】
本明細書で「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。本明細書で「YY1またはYY2」とは、「YY1」のみが存在する場合、または「YY2」のみが存在する場合に限定されず、「YY1」および「YY2」の両方が存在する場合も含む。これは、「または」で繋がれる要素が3つ以上の場合も同様である。本明細書で「ZZ1とZZ2とのうち少なくとも一方」とは、「ZZ1」および「ZZ2」の両方が前提として存在する場合に限定されず、「ZZ1」のみしか存在しない場合、または「ZZ2」のみしか存在しない場合も含む。「XX」、「YY1」、「YY2」、「ZZ1」、および「ZZ2」は、それぞれ、任意の要素(例えば任意の情報、機能、または構成)である。
【0010】
本明細書で「所定条件が満たされた場合、ダンパを開く(または閉じる)」とは、所定条件が成立した瞬間にダンパを開く(または閉じる)場合に限定されず、所定条件が成立している間の任意のタイミングでダンパを開く(または閉じる)場合も含む。
【0011】
また本明細書で「ダンパAを閉じ、ダンパBを開く」とは、ダンパAを閉じるタイミングとダンパBを開くタイミングとが同じである場合に限定されず、ダンパAを閉じた後にダンパBを開く場合や、ダンパBを開いた後にダンパAを閉じる場合なども含む。「ダンパA」および「ダンパB」は、例えば、後述する第1ダンパ71および第2ダンパ72のうち任意のダンパである。
【0012】
(第1の実施形態)
[1.冷蔵庫の全体構成]
図1から図7を参照し、第1の実施形態の冷蔵庫1について説明する。まず、冷蔵庫1の全体構成について説明する。
【0013】
図1は、冷蔵庫1を示す正面図である。図2は、図1中に示された冷蔵庫1のF2-F2線に沿う断面図である。図1および図2に示すように、冷蔵庫1は、例えば、筐体10、複数の扉20、複数の棚30、複数の容器40、流路形成部品50、冷却ユニット60、および制御基板100を備えている。
【0014】
筐体10は、上壁11、下壁12、左右の側壁13,14、および後壁15を有する。上壁11および下壁12は、略水平に広がっている。左右の側壁13,14は、下壁12の左右の端部から上方に起立し、上壁11の左右の端部に繋がっている。後壁15は、下壁12の後端部から上方に起立し、上壁11の後端部に繋がっている。
【0015】
筐体10は、例えば、内箱10a、外箱10b、および断熱部10cを有する(図2参照)。内箱10aは、筐体10の内面を形成する部材である。外箱10bは、筐体10の外面を形成する部材である。外箱10bは、内箱10aよりも一回り大きく形成されており、内箱10aの外側に配置されている。内箱10aと外箱10bとの間には、発泡ウレタンのような発泡断熱材を含む断熱部10cが設けられている。
【0016】
筐体10の内部には、複数の貯蔵室17と、第1冷却室18Aおよび第2冷却室18Bが設けられている。複数の貯蔵室17は、例えば、冷蔵室17A、製氷室17B、小冷凍室17C、第1切り替え室17D、および第2切り替え室17Eを含む。本実施形態では、最上部に冷蔵室17Aが配置され、冷蔵室17Aの下方に製氷室17Bおよび小冷凍室17Cが配置され、製氷室17Bおよび小冷凍室17Cの下方に第1切り替え室17Dが配置され、第1切り替え室17Dの下方に第2切り替え室17Eが配置されている。ただし、貯蔵室17の配置は、上記例に限定されない。筐体10は、各貯蔵室17の前面側に、各貯蔵室17に対して食材の出し入れを可能にする開口を有する。
【0017】
第1切り替え室17Dと第2切り替え室17Eとは、例えばそれぞれ互いに独立して、冷蔵温度帯室と、冷凍温度帯室とに用途が切り替え可能である。冷蔵温度帯室とは、例えば、後述する設定温度帯の中心温度が-3℃から+7℃の間にある貯蔵室である。冷蔵温度帯室は、いわゆる冷蔵室、チルド室、または野菜室などである。さらに本実施形態では、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの各々は、冷蔵温度帯室として使用される場合、設定温度帯が切り替えられることで、冷蔵室、チルド室、および野菜室の間で用途が切り替え可能である。これについては詳しく後述する。一方で、冷凍温度帯室は、例えば、設定温度帯の中心温度が-10℃以下(例えば-18℃以下)である貯蔵室である。冷凍温度帯室は、いわゆる冷凍室である。
【0018】
第1冷却室18Aは、冷蔵室17Aの背後に設けられた空間である。第1冷却室18Aは、後述する第1冷却器81および第1送風機82を収容している。一方で、第2冷却室18Bは、製氷室17B、小冷凍室17C、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの背後に設けられた空間である。第2冷却室18Bは、後述する第2冷却器83および第2送風機84を収容している。なお、第1冷却室18Aおよび第2冷却室18Bについては詳しく後述する。
【0019】
筐体10は、第1から第3の仕切部19A,19B,19Cを有する。第1から第3の仕切部19A,19B,19Cは、例えば、それぞれ略水平方向に沿う仕切壁である。第1仕切部19Aは、冷蔵室17Aと、製氷室17Bおよび小冷凍室17Cとの間に位置し、冷蔵室17Aと、製氷室17Bおよび小冷凍室17Cとの間を仕切っている。第2仕切部19Bは、製氷室17Bおよび小冷凍室17Cと、第1切り替え室17Dとの間に位置し、製氷室17Bおよび小冷凍室17Cと、第1切り替え室17Dとの間を仕切っている。第3仕切部19Cは、第1切り替え室17Dと第2切り替え室17Eとの間に位置し、第1切り替え室17Dと第2切り替え室17Eとの間を仕切っている。第1から第3の仕切り部19A,19B,19Cの各々は、例えば発泡断熱材を含み、断熱性を有する。
【0020】
複数の貯蔵室17の開口は、複数の扉20によって開閉可能に閉じられる。複数の扉20は、例えば、冷蔵室17Aの開口を閉じる左右の冷蔵室扉20Aa,20Ab、製氷室17Bの開口を閉じる製氷室扉20B、小冷凍室17Cの開口を閉じる小冷凍室扉20C、第1切り替え室17Dの開口を閉じる第1切り替え室扉20D、および第2切り替え室17Eの開口を閉じる第2切り替え室扉20Eを含む。
【0021】
複数の棚30は、冷蔵室17Aに設けられている。
複数の容器40は、冷蔵室17Aに設けられたチルド室容器40A、製氷室17Bに設けられた製氷室容器(不図示)、小冷凍室17Cに設けられた小冷凍室容器40C、第1切り替え室17Dに設けられた第1および第2の切り替え室容器40Da,40Db、および第2切り替え室17Eに設けられた第3および第4の切り替え室容器40Ea,40Ebを含む。
【0022】
流路形成部品50は、筐体10内に配置されている。流路形成部品50は、第1ダクト部品(第1冷却器カバー)51と、第2ダクト部品(第2冷却器カバー)52とを含む。
【0023】
第1ダクト部品51は、筐体10の後壁15に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第1ダクト部品51は、例えば、冷蔵室17Aの下端部の後方から冷蔵室17Aの上端部の後方まで延びている。第1ダクト部品51と筐体10の後壁15との間には、第1冷却室18Aが形成されている。第1ダクト部品51は、冷気吹出口51aと、冷気戻り口51bとを有する。冷気吹出口51aは、冷蔵室17Aに開口している。第1冷却室18Aを流れる冷気(空気)は、冷気吹出口51aから冷蔵室17Aに吹き出される。冷気戻り口51bは、例えば冷蔵室17Aの下端部に開口している。冷蔵室17Aを通った冷気は、冷気戻り口51bから第1冷却室18Aに戻る。
【0024】
第2ダクト部品52は、筐体10の後壁15に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第2ダクト部品52は、例えば、第2切り替え室17Eの後方から製氷室17Bおよび小冷凍室17Cの後方まで延びている。第2ダクト部品52と筐体10の後壁15との間には、第2冷却室18Bが形成されている。第2ダクト部品52は、複数の冷気吹出口52aと、複数の冷気戻り口52b(図3参照)とを有する。複数の冷気吹出口52aは、第1切り替え室17Dに開口した第1冷気吹出口52aa、第2切り替え室17Eに開口した第2冷気吹出口52ab、および製氷室17Bまたは小冷凍室17Cに開口した第3冷気吹出口52acを含む。複数の冷気戻り口52bは、第1切り替え室17Dに開口した第1冷気戻り口52ba(図3参照)、第2切り替え室17Eに開口した第2冷気戻り口52bb(図3参照)、および製氷室17Bまたは小冷凍室17Cに開口した第3冷気戻り口(不図示)を含む。
【0025】
第2冷却室18Bを流れる冷気(空気)は、後述する第1ダンパ71が開かれた場合、第1冷気吹出口52aaから第1切り替え室17Dに吹き出される。第1切り替え室17Dに吹き出された冷気は、第1冷気戻り口52baを通じて第2冷却室18Bに戻る。第2冷却室18Bを流れる冷気は、例えば、後述する第2ダンパ72が開かれた場合、第2冷気吹出口52abから第2切り替え室17Eに吹き出される。第2切り替え室17Eに吹き出された冷気は、第2冷気戻り口52bbを通じて第2冷却室18Bに戻る。第2冷却室18Bを流れる冷気は、後述する第3ダンパ73が開かれた場合、第3冷気吹出口52acから製氷室17Bおよび小冷凍室17Cに吹き出される。製氷室17Bおよび小冷凍室17Cに吹き出された冷気は、第3冷気戻り口および不図示の冷気流路を通じて第2冷却室18Bに戻る。
【0026】
冷却ユニット60は、複数の貯蔵室17(冷蔵室17A、製氷室17B、小冷凍室17C、第1切り替え室17D、および第2切り替え室17E)を冷却する。冷却ユニット60は、例えば、第1冷却モジュール61、第2冷却モジュール62、第1から第3のダンパ71,72,73、圧縮器75、および冷凍サイクル装置76(図4参照)を含む。
【0027】
第1冷却モジュール61は、例えば、第1冷却器(第1蒸発器)81と、第1送風機82とを含む。第1冷却器81および第1送風機82は、第1冷却室18Aに配置されている。第1冷却器81は、後述する冷凍サイクル装置76により液冷媒が供給され、液冷媒の気化熱により第1冷却室18Aを流れる冷気を冷却する。第1送風機82が駆動されると、冷蔵室17Aの冷気が冷気戻り口51bから第1冷却室18Aに流入する。第1冷却室18Aに流入した冷気は、第1冷却器81によって冷却される。第1冷却器81によって冷却された冷気は、冷気吹出口51aから冷蔵室17Aに吹き出される。これにより、冷蔵室17Aを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、冷蔵室17Aの冷却が行われる。
【0028】
第2冷却モジュール62は、例えば、第2冷却器(第2蒸発器)83と、第2送風機84とを含む。第2冷却器83および第2送風機84は、第2冷却室18Bに配置されている。第2冷却器83は、後述する冷凍サイクル装置76により液冷媒が供給され、液冷媒の気化熱により第2冷却室18Bを流れる冷気を冷却する。第2送風機84が駆動されると、製氷室17B、小冷凍室17C、第1切り替え室17D、または第2切り替え室17Eの冷気が対応する第1から第3の冷気戻り口52ba,52bbから第2冷却室18Bに流入する。第2冷却室18Bに流入した空気は、第2冷却器83によって冷却される。第2冷却器83によって冷却された冷気は、第1から第3の冷気吹出口52aa,52aab,52acから製氷室17B、小冷凍室17C、第1切り替え室17D、および第2切り替え室17Eに流入する。これにより、製氷室17B、小冷凍室17C、第1切り替え室17D、および第2切り替え室17Eを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、製氷室17B、小冷凍室17C、第1切り替え室17D、および第2切り替え室17Eの冷却が行われる。
【0029】
第1ダンパ71は、第1切り替え室17Dと第2冷却室18Bとの間に設けられている。第1ダンパ71は、例えば第1冷気吹出口52aaを開閉することで、第2冷却室18Bから第1切り替え室17Dへの冷気の供給を制御する。例えば、第1ダンパ71が開かれると、第1切り替え室17Dと第2冷却室18Bとが連通し、第2冷却室18Bから第1切り替え室17Dへ冷気が供給可能になる。一方で、第1ダンパ71が閉じられると、第1切り替え室17Dと第2冷却室18Bとの間が遮断され、第2冷却室18Bから第1切り替え室17Dへ冷気が供給されなくなる。
【0030】
第2ダンパ72は、第2切り替え室17Eと第2冷却室18Bとの間に設けられている。第2ダンパ72は、例えば第2冷気吹出口52abを開閉することで、第2冷却室18Bから第2切り替え室17Eへの冷気の供給を制御する。例えば、第2ダンパ72が開かれると、第2切り替え室17Eと第2冷却室18Bとが連通し、第2冷却室18Bから第2切り替え室17Eへ冷気が供給可能になる。一方で、第2ダンパ72が閉じられると、第2切り替え室17Eと第2冷却室18Bとの間が遮断され、第2冷却室18Bから第2切り替え室17Eへ冷気が供給されなくなる。
【0031】
第3ダンパ73は、製氷室17Bまたは小冷凍室17Cと、第2冷却室18Bとの間に設けられている。第3ダンパ73は、例えば第3冷気吹出口52acを開閉することで、第2冷却室18Bから製氷室17Bおよび小冷凍室17Cへの冷気の供給を制御する。例えば、第3ダンパ73が開かれると、製氷室17Bまたは小冷凍室17Cと第2冷却室18Bとが連通し、第2冷却室18Bから製氷室17Bまたは小冷凍室17Cへの冷気が供給可能になる。一方で、第3ダンパ73が閉じられると、製氷室17Bまたは小冷凍室17Cと、第2冷却室18Bとの間が遮断され、第2冷却室18Bから製氷室17Bまたは小冷凍室17Cへ冷気が供給されなくなる。
【0032】
図3は、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eを示す正面図である。第2冷却器83は、冷蔵庫1を正面から見た場合、第1切り替え室17Dと重なる第1部分83aと、第2切り替え室17Eと重なる第2部分83bとを有する。本実施形態では、冷蔵庫1を正面から見た場合、第2部分83bの大きさは、第1部分83aの大きさよりも小さい。なお、第2冷却器83は、第2部分83bを有しなくてもよい。例えば、第2冷却器83の全体が第1切り替え室17Dと重なっていてもよい。本実施形態では、第2冷却器83は、冷蔵庫1の左右方向の中心に対して、右側に偏心して配置されている。第2送風機84は、例えば、比較的大型の遠心ファンである。第2送風機84は、第2冷却器83の上方に配置されている。
【0033】
第1冷気吹出口52aaは、第1切り替え室17Dの上端部に設けられている。第1冷気吹出口52aaは、例えば冷蔵庫1の左右方向の中心に対して、左側に偏心して配置されている。一方で、第1冷気戻り口52baは、第1切り替え室17Dの下端部に設けられている。第1冷気戻り口52baは、例えば冷蔵庫1の左右方向の中心に対して、右側に偏心して配置されている。
【0034】
第1ダンパ71は、例えば、第1冷気吹出口52aaを覆う第1フラップ71aと、第1フラップ71aを駆動する第1駆動機構71bとを有する。第1駆動機構71bは、例えばモータまたはソレノイドのような駆動源を含む。第1駆動機構71bは、例えば第1フラップ71aを回動またはスライド移動させることで第1冷気吹出口52aaを開放する。ここで、「第1ダンパ71の開き量」とは、第1ダンパ71の開き度合(第1冷気吹出口52aaに対する冷気の流れやすさ度合)を意味する。例えば、第1フラップ71aにより第1冷気吹出口52aaが閉じられた状態を基準とすると、第1駆動機構71bによる第1フラップ71aの駆動量(回動量またはスライド移動量など)が大きくなるほど、第1ダンパ71の開き量は大きくなる。
【0035】
第2冷気吹出口52abは、第2切り替え室17Eの上端部に設けられている。第2冷気吹出口52abは、例えば冷蔵庫1の左右方向の中心に対して、左側に偏心して配置されている。一方で、第2冷気戻り口52bbは、第2切り替え室17Eの上端部に設けられている。第2冷気戻り口52bbは、例えば冷蔵庫1の左右方向の中心に対して、右側に偏心して配置されている。
【0036】
第2ダンパ72は、例えば、第2冷気吹出口52abを覆う第2フラップ72aと、第2フラップ72aを駆動する第2駆動機構72bとを有する。第2駆動機構72bは、例えばモータまたはソレノイドのような駆動源を含む。第2駆動機構72bは、例えば第2フラップ72aを回動またはスライド移動させることで第2冷気吹出口52abを開放する。ここで、「第2ダンパ72の開き量」とは、第2ダンパ72の開き度合(第2冷気吹出口52abに対する冷気の流れやすさ度合)を意味する。例えば、第2フラップ72aにより第2冷気吹出口52abが閉じられた状態を基準とすると、第2駆動機構72bによる第2フラップ72aの駆動量(回動量またはスライド移動量など)が大きくなるほど、第2ダンパ72の開き量は大きくなる。
【0037】
圧縮器75(図1参照)は、例えば、冷蔵庫1の底部の機械室に設けられている。圧縮器75は、貯蔵室17の冷却に用いられるガス冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を後述する凝縮器91などを介して第1冷却器81および第2冷却器83に供給する。
【0038】
制御基板100(図1参照)は、例えば、筐体10の上壁11に設けられている。本実施形態では、筐体10の上壁11の上面は、下方に向けて窪んだ凹部を有する。制御基板100は、凹部に配置されている。制御基板100は、例えばマイクロコンピュータやタイマなどにより構成される制御部100a(図5参照)を有する。制御部100aは、冷蔵庫1の全体を制御する。制御部100aについては詳しく後述する。
【0039】
[2.冷凍サイクル装置]
図4は、冷凍サイクル装置76の構成を示す図である。冷凍サイクル装置76は、凝縮器91、ドライヤ92、三方弁93、キャピラリーチューブ94A,94B、サクションパイプ95A,95B、および逆止弁96を含む。これら構成要素は、冷媒の流れ順に、圧縮器75、凝縮器91、ドライヤ92、三方弁93、キャピラリーチューブ94A,94B、第1冷却器81,第2冷却器83、およびサクションパイプ95A,95Bの順に環状に接続されている。詳しく述べると、圧縮器75の高圧吐出口には、凝縮器91とドライヤ92とが順に接続されている。ドライヤ92の吐出側には、三方弁93が接続されている。三方弁93は、ドライヤ92が接続される1つの入口と、2つの出口とを有している。
【0040】
三方弁93の2つの出口のうち、一方の出口には第1キャピラリーチューブ94Aと第1冷却器81とが順に接続されている。第1冷却器81は、接続配管である第1サクションパイプ95Aを介して圧縮器75に接続されている。三方弁93の2つの出口のうち、他方の出口には、第2キャピラリーチューブ94Bと第2冷却器83とが順に接続されている。第2冷却器83は、接続配管である第2サクションパイプ95Bを介して圧縮器75に接続されている。第2冷却器83と圧縮器75との間には、第1冷却器81からの冷媒が第2冷却器83側に逆流しないための逆止弁96が設けられている。
【0041】
次に、冷凍サイクル装置76の冷媒の流れを説明する。まず、冷凍サイクル装置76を循環する冷媒は、圧縮器75により圧縮されて、高温、高圧のガス冷媒となり、流路Aを流れる。このガス冷媒は、凝縮器91により放熱されて、中温、高圧の液冷媒となる。その後、ドライヤ92を通ることで汚れや水分などの不純物が取り除かれた液冷媒は、三方弁93により絞り制御されながら、第1キャピラリーチューブ94A(または第2キャピラリーチューブ94B)に入る。このとき、第1キャピラリーチューブ94A(または第2キャピラリーチューブ94B)内の中温、高圧の液冷媒は、第1サクションパイプ95A(または第2サクションパイプ95B)内の冷媒と熱交換されながら減圧される。そして、減圧された液冷媒は、第1冷却器81(または第2冷却器83)を通過しながら蒸発することで、第1冷却器81(または第2冷却器83)が冷却される。
【0042】
その後、低温、低圧のガス冷媒は、第1サクションパイプ95A(または第2サクションパイプ95B)に流入する。第1サクションパイプ95A(または第2サクションパイプ95B)に流入した直後のガス冷媒の温度は、-10℃前後と低温である。このガス冷媒は、第1サクションパイプ95A(または第2サクションパイプ95B)を通る間に、第1キャピラリーチューブ94A(または第2キャピラリーチューブ94B)内の冷媒と熱交換されて、最終的には室温程度にまで昇温される。そして、このガス冷媒が、圧縮器75に再び吸入されて、冷媒の循環が完了する。
【0043】
上記の冷凍サイクル装置76において、三方弁93は、制御部100aによって制御され、流路Bおよび流路Cのうち例えば一方または両方を選択する。流路Bは、冷媒を第1冷却器81に供給する流路である。流路Cは、冷媒を第2冷却器83に供給する流路である。これら2つの流路B,Cは、合流点Dにおいて合流する。冷媒は、合流点Dから矢印Eの方向に流れて圧縮器75へと戻る。本実施形態では、第1切り替え室17Dと第2切り替え室17Eとのうち少なくとも一方が冷凍温度帯室として使用される場合、第2冷却器83には、冷凍温度帯室の冷却に適した量および温度の液冷媒が供給される。
【0044】
[3.制御]
[3.1 制御に関する機能構成]
図5は、冷蔵庫1の機能構成の一部を示すブロック図である。制御部100aには、操作パネル部111、記憶部112、冷蔵室温度センサ113、第1切り替え室温度センサ114、第2切り替え室温度センサ115、第1ダンパ71、第2ダンパ72、第1送風機82、第2送風機84、圧縮器75、三方弁93、冷却器温度センサ121および除霜ヒータ122(第1ヒータ)が電気的に接続されている。
【0045】
操作パネル部111は、例えばボタンやダイヤル、または静電容量式のタッチセンサなどにより実現され、冷蔵庫1の動作に関するユーザの操作を受け付ける。例えば、操作パネル部111は、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eのそれぞれを冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室との間で切り替えるユーザの操作を受け付ける。
【0046】
例えば、ユーザは、操作パネル部111を操作し、第1切り替え室17Dの動作モードを「冷蔵運転モード」に設定することで、第1切り替え室17Dを冷蔵温度帯室として使用することができる。本実施形態では、第1切り替え室17Dが冷蔵温度帯室として使用される場合、操作パネル部111は、冷蔵温度室帯の動作モードとして「強冷蔵設定」、「中冷蔵設定」、および「弱冷蔵設定」の選択を受け付け可能である。「強冷蔵設定」の設定温度帯の中心温度は、「中冷蔵設定」の設定温度帯の中心温度よりも低い。「中冷蔵設定」の設定温度帯の中心温度は、「弱冷蔵設定」の設定温度帯の中心温度よりも低い。
【0047】
例えば、ユーザは、操作パネル部111を操作し、第1切り替え室17Dの動作モードを「中冷蔵設定」または「強冷蔵設定」に設定することで、第1切り替え室17Dをいわゆる「冷蔵室」として使用することができる。一方で、ユーザは、操作パネル部111を操作し、第1切り替え室17Dの動作モードを「弱冷蔵設定」に設定することで、第1切り替え室17Dをいわゆる「野菜室」として使用することができる。この内容は詳しく後述する。なお、第1切り替え室17Dの動作モードが「強冷蔵設定」に設定されることで、第1切り替え室17Dはいわゆる「チルド室」として使用可能であってもよい。
【0048】
一方で、ユーザは、操作パネル部111を操作し、第1切り替え室17Dの動作モードを「冷凍運転モード」に設定することで、第1切り替え室17Dを冷凍温度帯室(いわゆる「冷凍室」)として使用することができる。本実施形態では、第1切り替え室17Dが冷凍温度帯室として使用される場合、操作パネル部111は、冷凍温度室帯の動作モードとして「強冷凍設定」、「中冷凍設定」、および「弱冷凍設定」の選択を受け付け可能である。「強冷凍設定」の設定温度帯の中心温度は、「中冷凍設定」の設定温度帯の中心温度よりも低い。「中冷凍モード」の設定温度帯の中心温度は、「弱冷凍設定」の設定温度帯の中心温度よりも低い。
【0049】
同様に、操作パネル部111は、第2切り替え室17Eを冷蔵温度帯室と冷凍温度帯室との間で切り替えるユーザの操作を受け付ける。なお、第2切り替え室17Eの動作モードの切り替えに関する内容は、第1切り替え室17Dの動作モードの切り替えに関する内容と同様である。このため、第2切り替え室17Eに関する説明は、上述した第1切り替え室17Dに関する説明において「第1切り替え室17D」を「第2切り替え室17E」と読み替えればよい。本実施形態の冷蔵庫1は、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの各々が、ユーザの好みによって冷蔵室、冷凍室、または野菜室などから選択された任意の貯蔵室に設定可能である。
【0050】
記憶部112は、例えば不揮発性の半導体メモリなどで実現され、冷蔵庫1の運転に必要な情報を記憶する。記憶部112には、例えば、各種動作モードにおける第1ダンパ71、第2ダンパ72、第1送風機82、第2送風機84、および圧縮器75の制御量および駆動タイミングなどが記憶されている。
【0051】
冷蔵室温度センサ113は、冷蔵室17Aに設けられ、冷蔵室17Aの空気温度を検出する。第1切り替え室温度センサ114は、第1切り替え室17Dに設けられ、第1切り替え室17Dの空気温度を検出する。第2切り替え室温度センサ115は、第2切り替え室17Eに設けられ、第2切り替え室17Eの空気温度を検出する。
【0052】
冷却器温度センサ121は、第2冷却器83に設けられ、第2冷却器83の温度を検出する。除霜ヒータ122は、第2冷却器83の除霜用のヒータであり、第2冷却器83に取り付けられる、または第2冷却器83の近傍に設けられ、自身への通電によって発熱する。通常加熱制御においては、第2冷却器83に付着した霜が除霜ヒータ122が発する熱によって溶かされる。また、特別加熱制御においては、第2冷却室18Bの空気が除霜ヒータ122が発する熱によって温められる。通常加熱制御および特別加熱制御については後述する。除霜ヒータ122に対する通電のオン・オフは制御部100aによって制御される。
【0053】
[3.2 冷蔵庫の温度管理]
次に、冷蔵庫1の温度管理について説明する。ここでは、第1切り替え室17Dに関する温度管理を代表として説明する。
【0054】
制御部100aは、第1切り替え室17Dの温度(例えば、第1切り替え室温度センサ114により検出された温度)を監視し、第1切り替え室17Dの温度に基づいて、第1切り替え室17Dの冷却制御を行う。詳しく述べると、第1切り替え室17Dには、各動作モードに応じた設定温度帯が設定されている。制御部100aは、例えば、第1切り替え室17Dの温度が設定温度帯の上限値まで上昇した場合、第1切り替え室17Dの冷却を開始する。
【0055】
一方で、制御部100aは、例えば、第1切り替え室17Dの温度が設定温度帯の下限値(冷却目標温度)まで低下した場合、第1切り替え室17Dの冷却を終了する(停止する)。制御部100aは、上記動作を繰り返すことで、第1切り替え室17Dの温度を設定温度帯内に維持する。なお、制御部100aは、上記制御に代えて/加えて、第1切り替え室17Dの前回の冷却終了時からの経過時間が予め設定された時間を超えた場合、第1切り替え室17Dの温度が設定温度帯の上限値に達することを待たずに第1切り替え室17Dの冷却を再開してもよい。
【0056】
第2切り替え室17Eに関する基本運転は、第1切り替え室17Dに関する基本運転と同様である。このため、第2切り替え室17Eの基本運転に関する説明は、上述した第1切り替え室17Dの基本運転に関する説明において「第1切り替え室17D」を「第2切り替え室17E」と読み替え、「第1切り替え室17Dの温度(例えば、第1切り替え室温度センサ114により検出された温度)」を「第2切り替え室17Eの温度(例えば、第2切り替え室温度センサ115により検出された温度)」と読み替えればよい。
【0057】
[3.3 設定温度帯]
次に、「設定温度帯」について説明する。「設定温度帯」は、冷蔵運転モードおよび冷凍運転モードのそれぞれにおいて、温度管理の対象となる貯蔵室17の空気温度が維持される温度範囲を意味する。「設定温度帯」とは、上限値と下限値とにより規定される温度範囲を意味する。
【0058】
本実施形態では、上述したように、冷蔵温度室帯の動作モードとして「強冷蔵設定」、「中冷蔵設定」、および「弱冷蔵設定」が設けられている。「強冷蔵設定」の設定温度帯の上限値および下限値は、「中冷蔵設定」の設定温度帯の上限値および下限値よりもそれぞれ低い。「弱冷蔵設定」の設定温度帯の上限値および下限値は、「中冷蔵設定」の設定温度帯の上限値および下限値よりもそれぞれ高い。
【0059】
本実施形態では、制御部100aは、「強冷蔵設定」が選択されると、「中冷蔵設定」が選択される場合と比べて、圧縮器75の制御量(例えば運転周波数)を高く設定することと、第2送風機84の制御量(例えば回転数)を高く設定することとのうち少なくとも一方を行う。一方で、制御部100aは、「弱冷蔵設定」が選択されると、「中冷蔵設定」が選択される場合と比べて、圧縮器75の制御量(例えば運転周波数)を低く設定することと、第2送風機84の制御量(例えば回転数)を低く設定することとのうち少なくとも一方を行う。
【0060】
これらは、冷凍温度室帯の動作モードである「強冷凍設定」、「中冷凍設定」、および「弱冷凍設定」についても同様である。なお、第1切り替え室17Dが「弱冷蔵設定」に設定され、第2切り替え室17Eが「強冷凍設定」に設定されるなど、圧縮器75の制御量および第2送風機84の制御量について相反する設定がされる場合は、予め設定されるルール(「冷蔵運転モード」を優先する、または「冷凍運転モード」を優先するなど)に従い、圧縮器75の制御量および第2送風機84の制御量が決定されてよい。
【0061】
なお、冷蔵温度室帯の動作モードである「強冷蔵設定」、「中冷蔵設定」、および「弱冷蔵設定」における圧縮器75の制御量および第2送風機84の制御量は、互いに同じでもよい。また、冷凍温度室帯の動作モードである「強冷凍設定」、「中冷凍設定」、および「弱冷凍設定」における圧縮器75の制御量および第2送風機84の制御量は、互いに同じでもよい。また、冷蔵温度室帯の動作モードと、冷凍温度室帯の動作モードとにおいて、圧縮器75の制御量および第2送風機84の制御量は、互いに同じでもよい。
【0062】
[3.4 制御モード]
次に、制御部100aが除霜ヒータ122について実行可能ないくつかの制御モードについて説明する。ここでは、「通常加熱制御」と、「特別加熱制御」とについて説明する。通常加熱制御は、第1の通電開始タイミングから所定期間(以下「除霜期間」という。)除霜ヒータ122に通電する制御である。第1の通電開始タイミングは、第2冷却器83の除霜を目的として除霜ヒータ122の通電を開始するタイミングである。このため、第1の通電開始タイミングは、第2冷却器83に対する着霜が検知されたことに応じて決定される。本実施形態では、第2冷却器83に対する着霜の有無は、冷却器温度センサ121によって測定された第2冷却器83の温度によって判定されるものとするが、第2冷却器83に対する着霜の有無は他の方法で判定されてもよい。例えば、第2冷却器83に対する着霜の有無は、圧縮器75の運転時間や扉20の開閉回数、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの空気温度等に基づいて検知されてもよいし、予め定められた周期的なタイミングであってもよい。
【0063】
一方、特別加熱制御は、第2冷却器83の除霜が必要であるか否かに関わらず、第1切り替え室17D又は第2切り替え室17Eの設定温度帯が変更されたことに応じて除霜ヒータ122に通電する制御である。具体的には、制御部100aは、第1切り替え室17D又は第2切り替え室17Eの設定温度帯が変更されたことを検知した場合、特別加熱制御として除霜ヒータ122の通電を開始するタイミング(以下「第2の通電開始タイミング」という。)を決定し、決定した第2の通電開始タイミングから所定期間(以下「特別加熱期間」という。)除霜ヒータ122に通電する。本実施形態において、特別加熱期間は予め定められた所定時間の期間であるものとするが、特別加熱期間は冷蔵庫1の状態に応じて定められる可変の期間であってもよい。
【0064】
なお、特別加熱制御は、その有効化および無効化が、例えば操作パネル部111に対するユーザの操作により任意に切り替え可能であってよい。
【0065】
[3.4.1 通常加熱制御]
まず、通常加熱制御について説明する。
図6は、通常加熱制御のみを実施する場合における冷却制御のタイムチャートの一例を示す図である。図6において、『▼閉』は第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eに対応する第1ダンパ71および第2ダンパ72が閉じられたタイミングを表し、『▽開』は各ダンパ71および72が開かれたタイミングを表している。簡単のため、図6においては、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの設定温度帯は、いずれも同じ冷凍温度帯R1に設定されているものとし、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの空気温度は同様のパターンで変化している状況を想定する。
【0066】
図6は、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの空気温度が冷凍温度帯R1の下限値に達する時刻t10が第1の通電開始タイミングとして決定された例を示している。この第1の通電開始タイミングにおいて、制御部100aは圧縮器75の運転を停止するとともに第1ダンパ71および第2ダンパ72を閉じ、除霜ヒータ122に通電を開始する。制御部100aは、除霜ヒータ122に通電を開始してから所定の除霜期間Pが経過した時刻t11において除霜ヒータ122の通電を停止する。制御部100aは、除霜ヒータ122の通電を停止すると、圧縮器75の運転を再開させるとともに、第1ダンパ71および第2ダンパ72を開く。これにより、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの冷却が再開される。
【0067】
なお、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの空気温度が冷凍温度帯R1の下限値に達する時刻t10は、第1の通電開始タイミングの一例として示したものであり、必ずしもこのタイミングが第1の通電開始タイミングとなることを示すものではない。第1の通電開始タイミングは、冷蔵庫1の使用状況や圧縮器75の運転時間等によって変化し得るものである。
【0068】
また、図6の例とは異なり、除霜ヒータ122の通電中に第1切り替え室17Dまたは第2切り替え室17Eの空気温度が冷凍温度帯R1の上限値に達する可能性もある。このような場合に除霜動作を継続すると、第1切り替え室17Dまたは第2切り替え室17Eの空気温度が冷凍温度帯R1よりも高い温度になってしまう。そのため、このような場合には、制御部100aは規定の除霜期間(図6ではP)を短縮して通常の冷却制御に戻すように構成されてもよい。
【0069】
時刻t11以降では、次の除霜タイミング(時刻t14)が到来するまで通常の冷却制御が行われる。例えば図7の例では、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの空気温度が冷凍温度帯R1の下限値に達したタイミング(時刻t12)で第1ダンパ71および第2ダンパ72が閉じられる。また、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの空気温度が冷凍温度帯R1の上限値に達したタイミング(時刻t13)で第1ダンパ71および第2ダンパ72が開かれる。なお、説明を簡単にするため図7では省略しているが、第2送風機84は圧縮器75の運転に応じて駆動される。
【0070】
[3.4.2 特別加熱制御]
次に、特別加熱制御について説明する。
図7は、通常加熱制御と特別加熱制御の両方を実施する場合における冷却制御のタイムチャートの一例を示す図である。特別加熱制御では、いずれかの切り替え室17の設定温度帯が低い温度帯(第1温度帯)から高い温度帯(第2温度帯)に変更されたことに応じて除霜ヒータ122に対する通電が行われる。
【0071】
具体的には、図7の例において、制御部100aは、第1切り替え室17Dの設定温度帯が冷凍温度帯R1から冷蔵温度帯R2に変更された(時刻t23)ことに応じて第1ダンパ71を開くとともに、除霜ヒータ122への通電を開始する。すなわち時刻t23は第2の通電開始タイミングの一例である。このように、第1ダンパ71を開いた上で除霜ヒータ122への通電を開始することにより、除霜ヒータ122によって温められた冷却室18Bの空気が第1切り替え室17Dに流れ込みやすくなる。そのため、第1切り替え室17Dの空気温度をより早く冷蔵温度帯R2の範囲内に遷移させることが可能となる。具体的には、第1切り替え室17Dの空気温度を冷蔵温度帯R2の範囲内に遷移させるのに要する時間を、図7の破線矢印によって示される時間だけ短縮することができる。
【0072】
仮に、このような特別加熱制御を行わないとした場合、第1切り替え室17Dの空気温度の変化は破線のようになり、第1切り替え室17Dの空気温度が冷蔵温度帯R2の下限値にまで上昇するのが時刻t27となり、第1切り替え室17Dを設定変更後の冷蔵温度帯室として使用することができるようになるまでに相当の時間が必要となる。
【0073】
これに対して本実施形態の特別加熱制御を実施すれば、切り替え室17の設定温度帯が低い温度帯から高い温度帯に変更された場合において、切り替え室17の空気温度をより早く変更後の温度帯に近づけることができる。このため、本実実施形態の冷蔵庫1によれば、切り替え室を有した冷蔵庫の利便性を向上させることができる。
【0074】
<変形例>
制御部100aは、特別加熱制御において除霜ヒータ122に通電を行っている間、第2送風機84を稼働させてもよい。このような構成によれば、設定温度帯が変更された切り替え室17の空気温度を変更後の温度帯の範囲内に、より早く遷移させることが可能となる。
【0075】
除霜ヒータ122は、通電を停止した後においてもある程度の余熱を有している。そのため、除霜ヒータ122の通電を停止しても、除霜ヒータ122の温度が十分低下するまでは、冷却性能が低下する可能性がある。このような場合、圧縮器75の負荷を上げて冷却の強度を高めることにより除霜ヒータ122の温度低下を促進することができるが、そのためのエネルギーを多く消費することになる。そこで、設定温度帯が変更された切り替え室17の空気温度を上げるための熱の一部を除霜ヒータ122の余熱で賄うようにしてもよい。具体的には、制御部100aは、切り替え室17の空気温度が変更後の設定温度帯に達するよりも前に除霜ヒータ122の通電を停止してもよい。このような構成によれば、切り替え室17の空気温度の上昇と、除霜ヒータ122の冷却とを圧縮器75の負荷を上げることなく実現することができるため、特別加熱制御に要するエネルギーを低減することが可能となる。
【0076】
制御部100aは、変更前後の設定温度帯に基づいて特別加熱期間の長さ(動作時間)を決定するように構成されてもよい。例えば、変更前後の設定温度帯の各組み合わせと特別加熱時間との対応関係を示すテーブルを予め記憶部112に記憶させておく。制御部100aは、切り替え室17の設定温度帯が変更された場合にこのテーブルを参照し、変更前後の設定温度帯の組み合わせに対応する特別加熱時間を取得する。このような構成によれば、変更前後の設定温度帯の組み合わせに応じて、柔軟に特別加熱時間を設定することができるため効率良く特別加熱制御を実施することができる。例えば、切り替え室17の設定温度帯が冷凍温度帯から冷蔵温度帯への変更のように離れた温度帯の間での変更される場合には比較的長い特別加熱時間を設定し、冷蔵温度帯(中冷蔵設定)から野菜室温度帯(弱冷蔵設定)(特定の温度帯の一例)への変更のように近い温度帯の間での変更である場合に短い特別加熱時間を設定することが可能となる。
【0077】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態の冷蔵庫1の機能構成の具体例を示すブロック図である。第2の実施形態の冷蔵庫1は、制御部100aに代えて制御部100bを備える点、第2ヒータ123をさらに備える点で第1の実施形態の冷蔵庫1と異なる。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。そのため、図8では、それらの同様の構成に図5と同じ付すことにより、同様の構成についての説明を省略する。
【0078】
第2ヒータ123は、第2冷却器83の除霜によって溶け落ちた水を蒸発させるためのヒータである。第2冷却室18Bの底部には第2冷却器83から溶け落ちた水を受ける水受け部(図示せず)が設置される。第2ヒータ123は、この水受け部を加熱することにより水受け部に溜まった水を蒸発させる。
【0079】
制御部100bは、第1の実施形態における制御部100aの機能に加え、第2ヒータ123への通電を制御する機能を有する。具体的には、制御部100bは、切り替え室17の変更後の設定温度帯に応じて、特別加熱制御の実施中に第2ヒータ123に通電する機能を有する。これにより、制御部100bは、切り替え室17の空気温度を上昇させるとともに、当該切り替え室17の湿度も上昇させることができる。このような構成によれば、設定温度帯の変更後の切り替え室17の用途が野菜室のようにある程度の湿度が必要な用途である場合に、空気温度を上昇させるとともに、その用途に応じた湿度を実現することが可能となる。
【0080】
なお、制御部100bは、特別加熱期間の全期間において第2ヒータ123に通電を行うように構成されてもよいし、特別加熱期間の一部の期間において第2ヒータ123に通電を行うように構成されてもよい。例えば、切り替え室17の空気温度が変更前の設定温度帯から変更後の設定温度帯に遷移するまでの時間が、当該切り替え室17の湿度を目的の湿度とするのに必要な時間よりも長い場合には、制御部100bは、切り替え室17の空気温度がある程度上昇したところで第2ヒータ123への通電を開始するように構成されてもよい。
【0081】
また、切り替え室17の空気温度が変更前の設定温度帯から変更後の設定温度帯に遷移するまでの時間と、当該切り替え室17の湿度を目的の湿度とするのに必要な時間とが予め想定されている場合、制御部100bは、切り替え室17の空気温度が変更後の設定温度帯に達するタイミングから、当該切り替え室17の湿度を目的の湿度とするのに必要な時間だけ遡ったタイミングから第2ヒータ123への通電を開始するように構成されてもよい。
【0082】
また、切り替え室17の湿度を測定することが可能である場合には、制御部100bは、切り替え室17の湿度が目的の湿度に達したタイミングで第2ヒータ123への通電を停止するように構成されてもよい。
【0083】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、実施形態は、上記例に限定されない。例えば、第2冷却器83は、冷蔵庫1を正面から見た場合、第1切り替え室17Dおよび第2切り替え室17Eの両方と重ならない位置に配置されてもよい。また、制御部100aにより用いられる第1切り替え室17Dの温度は、第1切り替え室温度センサ114により検出された温度に限定されず、別の場所に設けられたセンサの検出結果に基づいて推定された第1切り替え室17Dの温度でもよい。これは第2切り替え室17Eの温度についても同様である。
【0084】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、冷蔵庫は、冷却室に収容された冷却器と、第1温度帯又は前記第1温度帯よりも高温の第2温度帯とに設定温度帯を切り替え可能な切り替え室と、前記冷却器の除霜用の第1ヒータと、前記第1ヒータの動作を制御する制御部であって、前記切り替え室の設定温度帯が前記第温度帯から前記第温度帯に切り替えられたことに応じて前記第1ヒータを動作させる制御部と、を有することで、切り替え室に設定される温度帯が低い温度帯から高い温度帯に変更された場合において、当該切り替え室の温度が変更後の温度帯に到達するまでに要する時間を短縮することができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1…冷蔵庫、10…筐体、60…冷却ユニット、17A…冷蔵室、17B…製氷室、17C…小冷凍室、17D…第1切り替え室、17E…第2切り替え室、18A…第1冷却室、18B…第2冷却室、71…第1ダンパ、72…第2ダンパ、81…第1冷却器、82…第1送風機、83…第2冷却器、84…第2送風機、100a…制御部、122…除霜ヒータ、123…第2ヒータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8