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特許7478542乾燥装置の運転制御方法、及び乾燥装置の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】乾燥装置の運転制御方法、及び乾燥装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
F26B25/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020017138
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021060184
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2019185100
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末広 篤
(72)【発明者】
【氏名】濱口 凌二
(72)【発明者】
【氏名】井上 広大
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-099735(JP,A)
【文献】特開2013-204181(JP,A)
【文献】特開2011-208871(JP,A)
【文献】登録実用新案第3079829(JP,U)
【文献】特開2000-271396(JP,A)
【文献】特開2001-300465(JP,A)
【文献】特開2010-057669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸液が含浸されたシール素材を熱風により加熱して乾燥させる乾燥炉と、前記乾燥炉の運転を制御する制御部と、を備えた乾燥装置において、前記制御部が実行する乾燥装置の運転制御方法であって、
前記乾燥炉の運転中に、前記乾燥炉内の前記シール素材の重量を所定時間毎に取得する取得ステップと、
前記シール素材の加熱を開始した時点から、前記所定時間よりも長い一定時間が経過したときに、現時点において前記取得ステップで取得した前記シール素材の重量である第1重量と、現時点の直前において前記取得ステップで取得した前記シール素材の重量である第2重量との重量差が閾値以下であるか否かの判定を行う判定ステップと、
前記判定ステップで前記重量差が閾値以下であると判定された場合に前記乾燥炉の運転を停止する制御ステップと、を含み、
前記所定時間は、前記第2重量を取得する時点から、前記第1重量を取得する時点までの時間間隔である、乾燥装置の運転制御方法
【請求項2】
前記取得ステップでは、前記重量に加えて、前記乾燥炉内の前記シール素材の温度を所定時間毎に取得し、
前記判定ステップは、前記取得ステップで取得した前記シール素材の温度が温度閾値を超えたときに行う、請求項1記載の乾燥装置の運転制御方法。
【請求項3】
含浸液が含浸されたシール素材を熱風により加熱して乾燥させる乾燥炉と、前記乾燥炉内の前記シール素材の重量を測定する重量測定部と、前記乾燥炉の運転を制御する制御部と、を備えた乾燥装置の運転方法であって、
前記乾燥炉の運転中に、前記重量測定部が前記シール素材の重量を測定する第1工程と、
前記制御部が、前記重量測定部から所定時間毎に前記シール素材の重量を取得して前記乾燥炉の運転を制御する第2工程と、を含み、
前記第2工程において、前記制御部は、前記シール素材の加熱を開始した時点から、前記所定時間よりも長い一定時間が経過したときに、現時点で前記重量測定部が測定した前記シール素材の重量である第1重量と、現時点の直前において前記重量測定部が測定した前記シール素材の重量である第2重量との重量差が閾値以下であるか否かの判定を行い、前記重量差が閾値以下である場合に前記乾燥炉の運転を停止
前記所定時間は、前記第2重量を取得する時点から、前記第1重量を取得する時点までの時間間隔である、乾燥装置の運転方法。
【請求項4】
前記乾燥装置は、前記乾燥炉内において前記シール素材を収容する収容カゴをさらに備え、
前記第1工程において、前記重量測定部は、前記乾燥炉に対して前記収容カゴを一点支持した状態で前記シール素材の重量を測定する、請求項に記載の乾燥装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置の運転制御方法、及び乾燥装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポンプ又はバルブ等の流体機器に使用される軸封部品として、紐状のグランドパッキンが用いられる。このようなグランドパッキンを製造する際には、シール性能等を向上させるためにパッキン素材に含浸液を含浸させる含浸工程と、含浸液が含浸されたパッキン素材を所定時間にわたって加熱して乾燥させる乾燥工程とが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-249283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、前記パッキン素材の乾燥工程では、ボイラーやヒータ等を熱源とする熱風発生装置で生成した熱風を乾燥炉内に供給することにより、乾燥炉内に配置されたパッキン素材を外部から加熱して乾燥させるバッチ式の熱風乾燥方法が用いられている。このような熱風乾燥方法は、乾燥時間が比較的長く、無人で行うことができるため、夜間や休日等を利用して一定の長時間にわたって行われることが多い。しかし、パッキン素材の種類によっては余分な乾燥時間が含まれるので、エネルギーロスが多くなる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、余分な乾燥時間を少なくしてエネルギーロスを低減することができる乾燥装置の運転制御方法、及び乾燥装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、含浸液が含浸されたシール素材を熱風により加熱して乾燥させる乾燥炉と、前記乾燥炉の運転を制御する制御部と、を備えた乾燥装置において、前記制御部が実行する乾燥装置の運転制御方法であって、前記乾燥炉内の前記シール素材の重量を所定時間毎に取得する取得ステップと、現時点において前記取得ステップで取得した前記シール素材の重量である第1重量と、過去に前記取得ステップで取得した前記シール素材の重量である第2重量との重量差が閾値以下であるか否かの判定を行う判定ステップと、前記判定ステップで前記重量差が閾値以下であると判定された場合に前記乾燥炉の運転を停止する制御ステップと、を含む乾燥装置の運転制御方法である。
本発明の乾燥装置の運転制御方法によれば、前記判定ステップに用いる閾値を適切な値に設定することで、シール素材が乾燥したタイミングで乾燥炉の運転を自動的に停止させることができる。これにより、乾燥炉での余分な乾燥時間が少なくなり、エネルギーロスを低減することができる。
【0007】
(2)前記第2重量は、現時点の直前において前記取得ステップで取得した前記シール素材の重量であるのが好ましい。
この場合、判定ステップにおいて第1重量と第2重量との重量差を求めるときに、現時点の直前に測定されたシール素材の重量を第2重量として用いるので、前記重量差を容易に求めることができる。
【0008】
(3)前記第2重量は、前記シール素材の加熱前に前記取得ステップで取得した前記シール素材の重量であってもよい。
この場合、判定ステップにおいて第1重量と第2重量との重量差を求めるときに、シール素材の加熱前に測定されたシール素材の重量を第2重量として用いるので、前記重量差を容易に求めることができる。
【0009】
(4)前記判定ステップは、前記シール素材の加熱を開始した時点から一定時間が経過したときに行うのが好ましい。
シール素材の加熱を開始してからシール素材が昇温して乾燥し始めるまでの間、シール素材の重量はほとんど変化しないので、その間に判定ステップが行われると前記重量差が閾値以下であると判定されて、シール素材が乾燥していない状態で乾燥炉の運転が停止するおそれがある。しかし、前記(4)では、シール素材の加熱を開始した時点から一定時間が経過したときに判定ステップを行うので、シール素材が乾燥していない状態で乾燥炉の運転が停止するのを抑制することができる。
【0010】
(5)前記取得ステップでは、前記重量に加えて、前記乾燥炉内の前記シール素材の温度を所定時間毎に取得し、前記判定ステップは、前記取得ステップで取得した前記シール素材の温度が温度閾値を超えたときに行うのが好ましい。
加熱中のシール素材から含浸液が蒸発している間、その蒸発熱によってシール素材は昇温しにくいので、シール素材は所定温度付近に維持される。そして、シール素材の乾燥が進んで含浸液の蒸発量が少なくなると、シール素材は前記所定温度から昇温し始める。このため、その昇温時に判定ステップを行えば前記重量差が閾値以下であると判定される可能性が高くなり、シール素材が乾燥した状態で乾燥炉の運転を停止できる可能性が高くなる。そこで、前記(5)では、温度測定部が測定したシール素材の温度が温度閾値を超えたときに判定ステップを行うので、シール素材が乾燥していない状態で乾燥炉の運転が停止するのをさらに抑制することができる。
【0011】
(6)他の観点からみた本発明は、含浸液が含浸されたシール素材を熱風により加熱して乾燥させる乾燥炉と、前記乾燥炉内の前記シール素材の重量を測定する重量測定部と、前記乾燥炉の運転を制御する制御部と、を備えた乾燥装置の運転方法であって、前記重量測定部が前記シール素材の重量を測定する第1工程と、前記制御部が、前記重量測定部から所定時間毎に前記シール素材の重量を取得して前記乾燥炉の運転を制御する第2工程と、を含み、前記第2工程において、前記制御部は、現時点で前記重量測定部が測定した前記シール素材の重量である第1重量と、過去に前記重量測定部が測定した前記シール素材の重量である第2重量との重量差が閾値以下であるか否かの判定を行い、前記重量差が閾値以下である場合に前記乾燥炉の運転を停止する、乾燥装置の運転方法である。
本発明の乾燥装置の運転方法によれば、制御部が前記判定に用いる閾値を適切な値に設定することで、シール素材が乾燥したタイミングで乾燥炉の運転を自動的に停止させることができる。これにより、乾燥炉での余分な乾燥時間が少なくなり、エネルギーロスを低減することができる。
【0012】
(7)前記乾燥装置は、前記乾燥炉内において前記シール素材を収容する収容カゴをさらに備え、前記第1工程において、前記重量測定部は、前記乾燥炉に対して前記収容カゴを一点支持した状態で前記シール素材の重量を測定するのが好ましい。
この場合、重量測定部は、シール素材が収容された収容カゴを一点支持した状態でシール素材の重量を測定するので、測定時の外乱要因を低減することができる。これにより、シール素材の重量を正確に測定することができるので、制御部は前記判定を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、余分な乾燥時間を少なくしてエネルギーロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る乾燥装置の運転方法を用いて製造されたシール材を示す斜視図である。
図2】パッキン素材の乾燥工程で用いられる乾燥装置を示す概略断面図である。
図3】乾燥炉でパッキン素材を加熱しているときのパッキン素材の重量及び温度の時間的変化を示すグラフである。
図4】制御部の内部構成を示す機能ブロック図である。
図5】制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
図6】乾燥装置の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[シール素材]
図1は、本発明の実施形態に係る乾燥装置の運転方法を用いて製造されたシール材を示す斜視図である。本実施形態のシール材は、例えばグランドパッキン1からなる。グランドパッキン1は、例えばポンプ、バルブ又はドレッサージョイント等の流体機器の軸封部品として使用される。グランドパッキン1は、芯材2の周りで複数本のヤーン3を編組してなる紐状のパッキン素材(シール素材)4に対して含浸工程及び乾燥工程等を行うことによって製造される。
【0016】
含浸工程は、パッキン素材4に含浸液(例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョン)を含浸させる工程である。乾燥工程は、含浸液が含浸されたパッキン素材4を加熱して乾燥させる工程である。なお、シール素材は、パッキン素材4に限定されるものではなく、例えばヤーン3単体であってもよい。
【0017】
[乾燥装置]
図2は、パッキン素材4の乾燥工程で用いられる乾燥装置10を示す概略断面図である。乾燥装置10は、バッチ式のものであり、乾燥炉11、収容カゴ12、重量測定部13、温度測定部14、及び制御部15を備えている。
【0018】
乾燥炉11は、その内部に形成された乾燥室111を有している。乾燥炉11の一側壁112には、例えば電気ヒータを熱源とする熱風発生装置(図示省略)で生成された熱風を乾燥室111に導入する導入管16が接続されている。導入管16は、搬送カゴ5内のパッキン素材4に向けて熱風を導入できる位置に配置されている。
【0019】
乾燥炉11の他側壁113には、図示しないブロワ等により乾燥室111内の熱風を強制的に回収するための回収管17が接続されている。これにより熱風は、導入管16及び回収管17を介して熱風発生装置と乾燥室111との間を循環するようになっている。
【0020】
収容カゴ12は、乾燥室111内においてパッキン素材4を収容するカゴであり、載置部121と、格子状に形成された側壁部122と、天井部123とを有している。本実施形態では、収容カゴ12の載置部121に、1又は複数のパッキン素材4が収容された搬送カゴ5が載置される。
【0021】
搬送カゴ5は、例えば、台車部51と、台車部51上に固定された格子状のカゴ部52とにより構成され、カゴ部52にパッキン素材4が収容される。これにより、パッキン素材4が収容された搬送カゴ5を収容カゴ12の載置部121に載置することで、パッキン素材4を収容カゴ12に収容することができる。
【0022】
なお、収容カゴ12は、搬送カゴ5を介さずにパッキン素材4を直接収容してもよい。また、搬送カゴ5を収容カゴ12として用いてもよい。また、乾燥室111には収容カゴ12を必ずしも設ける必要はなく、乾燥室111に搬送カゴ5を直接搬入してもよい。
【0023】
重量測定部13は、乾燥炉11内のパッキン素材4の重量を測定するものである。本実施形態の重量測定部13は、乾燥炉11に対して収容カゴ12を一点支持した状態でパッキン素材4の重量を測定するように構成されている。具体的には、重量測定部13は、収容カゴ12の天井部123を吊り下げ支持する第1支持部131と、第1支持部131を吊り下げ支持するロードセル132と、ロードセル132を吊り下げ支持する第2支持部133とを有している。
【0024】
第1支持部131は、当該第1支持部131に作用する水平方向の荷重を逃がすことができるチェーン等を用いて上下方向に延びて構成されている。第1支持部131の下端部は、収容カゴ12の天井部123の中央部に連結されている。ロードセル132は、例えばS型ロードセル等の引張り型のロードセルからなり、乾燥炉11の上方である乾燥炉11の外部に配置されている。ロードセル132は、乾燥炉11の熱の影響を受けないように、図示しない空冷装置により冷却されている。ロードセル132の下側には、乾燥炉11の天井壁114を非接触で貫通した第1支持部131の上端部が連結されている。
【0025】
第2支持部133は、例えば上下方向に延びる棒部材からなる。第2支持部133の下端部は、ロードセル132の上側に連結され、第2支持部133の上端部は、乾燥炉11の天井壁114の上面に固定された固定枠115に連結されている。
【0026】
以上の構成により、重量測定部13は、第1支持部131、ロードセル132及び第2支持部133を介して、乾燥炉11に対して収容カゴ12を1箇所で吊り下げた状態で常に一点支持している。これによって、重量測定部13は、ロードセル132により収容カゴ12に収容されたパッキン素材4の重量を測定することができる。
【0027】
重量測定部13は、第1支持部131の重量、収容カゴ12の重量、及び搬送カゴ5の重量も含めて測定するため、予めこれらの重量を差し引いた状態で、パッキン素材4の重量を測定する。重量測定部13は、制御部15から測定開始指令が入力されると、その後は常にパッキン素材4の重量を測定する。そして、重量測定部13は、制御部15からの出力指令に基づいて、測定したパッキン素材4の重量を制御部15に出力する。
【0028】
なお、重量測定部13は、本実施形態の構成に限定されるのもではない。例えば、第1支持部131及び第2支持部133は、複数の部材で構成されていてもよい。また、重量測定部13は、収容カゴ12を2箇所以上で吊り下げてもよいし、ロードセル132以外の重量測定器を用いてもよい。また、乾燥室111に収容カゴ12を設けずに搬送カゴ5を直接搬入する場合、重量測定部13は、例えば乾燥室111の床面に設置したロードセル上に搬送カゴ5を載置してパッキン素材4の重量を測定するように構成されていてもよい。
【0029】
温度測定部14は、例えば非接触の温度センサからなり、収容カゴ12に載置された搬送カゴ5内のパッキン素材4の温度を測定する。本実施形態では、温度測定部14は、例えば乾燥炉11の他側壁113に固定されている。温度測定部14は、制御部15から測定開始指令が入力されると、その後は常にパッキン素材4の温度を測定する。そして、温度測定部14は、制御部15からの出力指令に基づいて、測定したパッキン素材4の温度を制御部15に出力する。
【0030】
図3は、乾燥炉11でパッキン素材4を加熱しているときのパッキン素材4の重量及び温度の時間的変化を示すグラフである。図3に示すように、パッキン素材4が加熱されて昇温すると、パッキン素材4に含浸された含浸液が蒸発することで、パッキン素材4の重量は徐々に減少する。そして、含浸液の蒸発が進んでパッキン素材4が乾燥してくると、パッキン素材4の重量はほとんど変化しなくなる。乾燥装置10の制御部15は、このようなパッキン素材4の重量の変化に基づいて、パッキン素材4が乾燥したタイミングで乾燥炉11の運転を自動的に停止する制御を行う。
【0031】
[制御部の構成]
図4は、制御部15の内部構成を示す機能ブロック図である。制御部15は、CPU等を有するコンピュータを備えて構成されている。制御部15は、重量測定部13の測定重量及び温度測定部14の測定温度に基づいて乾燥炉11の運転を制御する。制御部15の各機能は、前記コンピュータの記憶装置に記憶された制御プログラムがCPUにより実行されることで発揮される。
【0032】
制御部15は、CPUが制御プログラムを実行することにより、取得部151、判定部152、及び運転制御部153として機能する。
取得部151は、所定時間毎に重量測定部13のロードセル132に出力指令を出力し、ロードセル132で測定されたパッキン素材4の重量をロードセル132から取得する。
【0033】
取得部151は、所定時間毎に温度測定部14に出力指令を出力し、温度測定部14で測定されたパッキン素材4の温度を温度測定部14から取得する。
取得部151は、取得したパッキン素材4の重量及び温度を判定部152に渡す。
【0034】
判定部152は、取得部151から入力されたパッキン素材4の重量及び温度を前記記憶装置に記憶する。そして、判定部152は、現時点で入力されたパッキン素材4の重量である第1重量と、過去に入力されたパッキン素材4の重量である第2重量との重量差を算出し、算出した重量差が閾値以下であるか否かの判定を行う。
【0035】
図3及び図4において、本実施形態の判定部152は、前記第2重量として、現時点の直前に入力されたパッキン素材4の重量を用いる。したがって、本実施形態の判定部152は、現時点で入力されたパッキン素材4の重量W1である第1重量と、現時点の直前に入力されたパッキン素材4の重量W2である第2重量との重量差ΔW(W2-W1)が閾値以下であるか否かの判定を行う。判定部152は、判定結果を運転制御部153に渡す。
【0036】
なお、判定部152は、第2重量として、前記重量W2に替えて、加熱前にロードセル132で測定されたパッキン素材4の重量W3を用いてもよい。この場合、後述するステップST2とステップST3の処理順序を入れ替え(図5参照)、判定部152は、重量差ΔW’(W3-W1)が閾値以下であるか否かの判定を行えばよい。
また、判定部152は、前記重量W2及び前記重量W3を用いて、重量差ΔW(W2-W1)及び重量差ΔW’(W3-W1)の両方又は一方が閾値以下であるか否かの判定を行ってもよい。
【0037】
運転制御部153は、乾燥炉11の運転を制御する。具体的には、運転制御部153は、乾燥炉11の操作スイッチ(図示省略)から操作指令が入力されると、乾燥炉11の運転を開始する。その後、運転制御部153は、重量測定部13及び温度測定部14にそれぞれ測定開始指令を出力する。そして、運転制御部153は、判定部152で重量差ΔWが閾値以下でないと判定された場合には乾燥炉11の運転を継続し、判定部152で重量差ΔWが閾値以下であると判定された場合には乾燥炉11の運転を停止する。
【0038】
ところで、図3に示すように、乾燥炉11の運転を開始した時点t0から、パッキン素材4が昇温して第1温度K1に達する時点t1までの間、パッキン素材4に含浸された含浸液は蒸発しないので、パッキン素材4の重量はほとんど変化しない。このため、その間に判定部152で前記判定が行われると、重量差ΔWが閾値以下であると判定され、パッキン素材4が乾燥していない状態で運転制御部153が乾燥炉11の運転を停止するおそれがある。
【0039】
また、加熱中のパッキン素材4から含浸液が蒸発している間、その蒸発熱によってパッキン素材4は昇温しにくいので、パッキン素材4は第2温度K2(>第1温度K1)付近に維持される。そして、パッキン素材4の乾燥が進んで含浸液の蒸発量が少なくなると、パッキン素材4は第2温度K2付近から昇温し始める。このため、その昇温時に判定部152が前記判定を行えば、重量差ΔWが閾値以下であると判定される可能性が高くなり、パッキン素材4が乾燥した状態で運転制御部153が乾燥炉11の運転を停止する可能性が高くなる。
【0040】
したがって、本実施形態の判定部152は、乾燥炉11の運転(パッキン素材4の加熱)を開始した時点t0からパッキン素材4が第1温度K1に達する時点t1までの一定時間が経過したとき、かつ、取得部151から入力されたパッキン素材4の現時点の温度が温度閾値を超えたときに、前記判定を行う。前記温度閾値は、第2温度K2よりも少し高い温度に設定されている。
【0041】
なお、判定部152は、パッキン素材4の現時点の温度に基づいて前記判定を行っているが、パッキン素材4の現時点及び過去の温度に基づいて前記判定を行ってもよい。例えば、判定部152は、パッキン素材4の現時点とその直前の温度が温度閾値を超えたときに、前記判定を行ってもよい。
また、判定部152は、前記一定時間が経過したとき、及び前記測定温度が温度閾値を超えたときのいずれか一方の時点で、前記判定を行ってもよい。
【0042】
[制御部の処理手順]
図5は、制御部15が実行する処理を示すフローチャートである。以下、図5を参照しつつ、制御部15が実行する処理手順について説明する。
制御部15は、乾燥炉11の操作スイッチから操作指令が入力されると(ステップST1で「Yes」の場合)、乾燥炉11の運転を開始する(ステップST2)。
【0043】
次に、制御部15は、重量測定部13に測定開始指令を出力する(ステップST3)。これにより、重量測定部13は、パッキン素材4の重量測定を開始する。また、制御部15は、温度測定部14に測定開始指令を出力する(ステップST4)。これにより、温度測定部14は、パッキン素材4の温度測定を開始する。なお、ステップST3とステップST4の処理順序は入れ換えてもよい。
【0044】
次に、制御部15は、乾燥炉11の運転を開始した時点から一定時間が経過すると(ステップST5で「Yes」の場合)、温度測定部14で測定されたパッキン素材4の温度を所定時間毎に取得する(ステップST6)。
【0045】
制御部15は、取得したパッキン素材4の現時点の温度が温度閾値を超えたか否かを判断する(ステップST7)。ステップST7の判断結果が否定的(「No」)である場合、制御部15はステップST6へ戻る。一方、ステップST7の判断結果が肯定的(「Yes」)である場合、制御部15は、パッキン素材4の重量を所定時間毎に取得する(ステップST8)。制御部15は、ステップST6及びステップST7の処理により、パッキン素材4の重量に加え、パッキン素材4の温度に基づいて判断を行うので、より精度の高い判定が可能となる。なお、ステップST6及びステップST7の処理は、必ずしも行う必要はなく、乾燥炉11の運転状況等によって省略可能である。
【0046】
次に、制御部15は、パッキン素材4の現時点の重量W1(第1重量)とその直前に取得した重量W2(第2重量)との重量差ΔW(W2-W1)を算出し、算出した重量差ΔWが閾値以下であるか否かを判定する(ステップST9)。ステップST9の判定結果が否定的(「No」)である場合、制御部15はステップST8へ戻る。一方、ステップST9の判定結果が肯定的(「Yes」)である場合、制御部15は、乾燥炉11の運転を停止し(ステップST10)、処理を終了する。
【0047】
[本実施形態の効果]
本実施形態の乾燥装置10によれば、制御部15は、現時点で重量測定部13が測定したパッキン素材4の重量である第1重量と、過去に重量測定部13が測定したパッキン素材4の重量である第2重量との重量差が閾値以下であるか否かの判定を行い、前記重量差が閾値以下である場合に乾燥炉11の運転を停止する。これにより、パッキン素材4が乾燥したタイミングで乾燥炉11の運転を自動的に停止させることができるので、乾燥炉11での余分な乾燥時間が少なくなり、エネルギーロスを低減することができる。
【0048】
また、重量測定部13は、パッキン素材4が収容された収容カゴ12を一点支持した状態でパッキン素材4の重量を測定するので、測定時の外乱要因を低減することができる。また、ロードセル132が乾燥炉11の外部に設けられているので、パッキン素材4の重量測定時に乾燥炉11内の熱の影響を受けにくい。これにより、パッキン素材4の重量を正確に測定することができるので、制御部15は前記判定を正確に行うことができる。
【0049】
また、制御部15において第1重量と第2重量との重量差を求めるときに、現時点の直前に測定されたパッキン素材4の重量W2、又はパッキン素材4の加熱前に測定された重量W3を第2重量として用いるので、前記重量差を容易に求めることができる。
【0050】
また、制御部15は、パッキン素材4の加熱を開始した時点t0から、パッキン素材4が昇温して第1温度K1に達する時点t1までの一定時間が経過したときに前記判定を行うので、パッキン素材4が乾燥していない状態で乾燥炉11の運転が停止するのを抑制することができる。
【0051】
また、制御部15は、温度測定部14が測定したパッキン素材4の温度が温度閾値を超えたときに前記判定を行うので、パッキン素材4が乾燥していない状態で乾燥炉11の運転が停止するのをさらに抑制することができる。
【0052】
[乾燥装置の変形例]
図6は、乾燥装置10の変形例を示す概略断面図である。本変形例の乾燥装置10は、収容カゴ12及び重量測定部13の各構成が、上記実施形態と異なる。
本変形例の収容カゴ12は、搬送カゴ5が載置される載置部121と、載置部121から上方に延びる複数の柱部124と、これらの柱部124の上端が固定された天板部125とを有している。
【0053】
各柱部124の上部は、乾燥炉11の天井壁114を非接触で貫通している。これにより、天板部125は、乾燥炉11の上方である乾燥炉11の外部に配置されている。天板部125は、その中央部において下方に突出する突出部126を有している。この突出部126により、天板部125の中央部の板厚は、他の箇所よりも厚く形成されている。突出部126の下面126aは、凹球面状に形成されている。
【0054】
本変形例の重量測定部13は、上記実施形態と同様に、乾燥炉11に対して収容カゴ12を一点支持した状態でパッキン素材4の重量を測定するように構成されている。具体的には、重量測定部13は、乾燥炉11の天井壁114上に固定されたロードセル134と、ロードセル134上に固定されて収容カゴ12の天板部125を下方から支持する支持部135とを有している。ロードセル134は、圧縮型のロードセルからなる。
【0055】
支持部135の上面135aは、凸球面状に形成されており、支持部135の上面135aと突出部126の下面126aとが対向する。支持部135の上面135aには、天板部125における突出部126の下面126aが摺動自在に面接触している。これにより、例えば収容カゴ12に搬送カゴ5を載置したときに、重量測定部13に水平方向の荷重が作用しても、天板部125が支持部135に対して摺動することで、重量測定部13に作用する水平方向の荷重を逃がすことができる。
【0056】
以上の構成により、重量測定部13は、支持部135及びロードセル134を介して、乾燥炉11に対して収容カゴ12を常に一点支持している。これによって、重量測定部13は、ロードセル134により収容カゴ12に収容されたパッキン素材4の重量を測定することができる。本変形例の他の構成は、上記実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
本変形例の乾燥装置10においても、上記実施形態と同様に乾燥炉11の運転を制御することで、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。なお、本変形例の重量測定部13は、支持部135を有していなくてもよい。この場合、突出部126の下面126aを平坦に形成し、その下面126aをロードセル134上に直接載置すればよい。
【0058】
[その他]
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
4 パッキン素材(シール素材)
10 乾燥装置
11 乾燥炉
12 収容カゴ
13 重量測定部
14 温度測定部
15 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6