(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】プレス工具、及びプレス工具の製造方法
(51)【国際特許分類】
B30B 11/02 20060101AFI20240425BHJP
B22F 7/00 20060101ALI20240425BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20240425BHJP
B22F 3/035 20060101ALI20240425BHJP
C22C 29/08 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
B30B11/02 F
B22F7/00 H
B22F3/10 101
B22F3/035 D
C22C29/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020021988
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-12-13
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591106875
【氏名又は名称】セコ ツールズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ステルケンブルフ, ディルク
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511842(JP,A)
【文献】米国特許第05543235(US,A)
【文献】特開2015-183280(JP,A)
【文献】特開2013-170285(JP,A)
【文献】特開2013-108134(JP,A)
【文献】特開2003-193168(JP,A)
【文献】特開平09-248633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/02
B22F 7/00
B22F 3/10
B22F 3/035
C22C 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削インサート未加工体を製造するためのプレス工具において、
-第1の金型表面(5)を画成する第1の脚部(4)と第2の金型表面(7)を画成する第2の脚部(6)とを有する少なくとも1つの金型部材(1)であって、各脚部(4,6)が、前記金型部材(1)の残りの部分に接続する基部と、前記第1及び第2の金型表面(5,7)の端部のそれぞれの自由端(10,11)とを有する、金型部材(1)
を備えており、
-前記第1の金型表面(5)及び第2の金型表面(7)が、金型キャビティ(3)の境界を定め、前記金型キャビティ(3)内での粉末の圧縮時に前記切削インサート未加工体が形成され、
-前記第1及び第2の脚部(4,6)の基部の領域において、前記金型キャビティ(3)が、2つの接触する表面間に角部(8)を有する角部領域を提示し、かつ
-前記金型部材(1)が超硬合金からなり、ここで、前記プレス工具が、前記角部領域に、前記超硬合金が前記角部領域からより離れている前記金型部材(1)の超硬合金よりも高い靭性を有している、前記金型部材(1)の部分(9)が存在することを特徴とする、
プレス工具。
【請求項2】
前記2つの接触する表面の少なくとも一方が、前記第1及び第2の金型表面(5,7)のうちの一方であることを特徴とする、請求項1に記載のプレス工具。
【請求項3】
前記2つの接触する表面が前記第1及び第2の金型表面(5,7)であることを特徴とする、請求項1に記載のプレス工具。
【請求項4】
前記部分(9)が、前記角部(8)の頂点(23)から前記第1の脚部(4)及び前記第2の脚部(6)の前記自由端(10,11)に向かう方向(y)に前記第1及び第2の金型表面(5,7)に沿って測定して、少なくとも0.1mm延在することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項5】
前記部分(9)が、前記角部(8)の頂点(23)から前記第1の脚部(4)及び前記第2の脚部(6)の前記自由端(10,11)に向かう方向(y)に前記第1及び第2の金型表面(5,7)に沿って測定して、前記金型表面(5,7)の長さの半分以下で延在することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項6】
前記部分(9)が、前記金型キャビティ(3)の境界を定める前記部分(9)の前記金型表面(5,7)に対して法線の方向に少なくとも0.1mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項7】
前記部分(9)が、前記第1及び第2の脚部(4,6)から離れて前記
金型部材(1)の反対側の端部(13)の方を指す第1の方向(x)に、前記角部(8)の頂点(23)から前
記反対側の端部(13)まで延在することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項8】
前記部分(9)が、前記金型部材(1)の第1の端部(14)から反対側の第2の端部(15)まで前記角部(8)に沿って延在することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項9】
前記角部の頂点(23)から前記金型部材(1)の反対側の端部(13)に向かう第1の方向(x)に対して垂直な平面で見て、前記部分(9)が長方形の断面を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項10】
前記角部
の頂点(23)から前記金型部材(1)の反対側の端部(13)に向かう第1の方向(x)に対して垂直な平面で見て、前記部分(9)が楕円形又は円形の断面を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項11】
前記角部(8)
の頂点(23)から前記金型部材(1)の反対側の端部(13)に向かう第1の方向(x)に対して垂直な平面で見て、前記部分(9)が、前記角部(8)の前記頂点(23)から前記金型部材(1)の前記反対側の端部(13)に向かうその全長に沿って同じ断面を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項12】
前記第1の脚部(4)が楔形の形状を有し、かつ第2の脚部(6)が楔形の形状を有しており、その各々が、前記金型部材(1)の残りの部分に接続する基部と、前記角部(8)とは反対側の前記第1及び第2の金型表面(5,7)の端部のそれぞれの自由端(10,11)とを有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項13】
前記部分(9)を形成する前記超硬合金が、前記第1の脚部(4)及び前記第2の脚部(6)を形成する前記超硬合金よりも大きい平均炭化物粒径を有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項14】
前記超硬合金がコバルト結合剤のマトリクス内に炭化タングステンの粒子を含み、前記部分(9)を形成する前記超硬合金が、前記第1の脚部(4)及び前記第2の脚部(6)を形成する前記超硬合金よりも高いコバルト含有量を有することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項による第1の金型部材(1)と、対応する第2の金型部材(2)であって、第1及び第2の金型部材(1、2)が、それらのそれぞれの第1及び第2の脚部(4,6)の自由端(10,11)が互いに向かうように配置されるように構成され、それによって金型キャビティ(3)を画成する、第1の金型部材(1)と対応する第2の金型部材(2)、並びに、前記金型キャビティ(3)内に導入される粉末を圧縮成形する目的で、前記第1の金型部材(1)と前記第2の金型部材(
2)とによって画成された前記金型キャビティ(3)内に導入されるように配置された少なくとも1つのパンチ(24,25)を備えていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のプレス工具。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のプレス工具の製造方法であって、
-金型部材(1)の第1のパーツ(20,21)を形成するように構成された第1の未加工体を形成するステップ、
-金型部材(1)の第2のパーツ(22)を形成するように構成された第2の未加工体を形成するステップ、
-前記第1の未加工体を前記金型部材(1)の第1のパーツ(20,21)へと焼結するステップ、
-前記第2の未加工体を前記金型部材(1)の第2のパーツ(22)へと焼結するステップであって、前記第1のパーツ(20,21)に取り付けたときに、第2のパーツが前記金型部材(1)の前記部分(9)を形成する、ステップ、及び
-焼結することによって前記第1のパーツ(20,21)を前記第2のパーツ(22)に取り付けるステップであって、前記第1のパーツと前記第2のパーツとの間の界面において、前記第1のパーツの結合剤と前記第2のパーツの結合剤とが前記焼結中に溶融する、ステップ
を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のプレス工具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削インサート未加工体を製造するためのプレス工具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削インサートは、フライス加工、ドリル加工、又は旋削加工、若しくは同様の切り屑形成方法による、金属加工用の金属切削工具である。切削インサートは、粉末冶金法により、超硬合金粉末などの金属複合粉末から、又は酸化アルミニウムと窒化ケイ素とを含む混合物などのセラミック粉末から製造される。超硬合金は、例えば、コバルト、ニッケル、又は鉄の金属結合剤中に金属炭化物、例えば、炭化タングステン、炭化チタン、又は炭化タンタルを有する金属複合材料である。
【0003】
切削インサートは、サーメット、例えば、炭化チタンとニッケルとを含む混合物から、又は他の材料、例えばcBN材料などから製造することもできる。粉末は、金型キャビティ内で対向する第1及び第2のパンチによって切削インサート未加工体へと圧縮することができる。圧縮後、切削インサート未加工は金型キャビティから取り出され、固体の切削インサートブランクへと焼結される。
【0004】
圧縮に関して粉末を収容するために用いられる金型は、それらの圧縮後に金型から幾何学的に複雑な未加工体を取り出すことができるようにする目的で、互いに移動可能な第1及び第2の金型半体を含む、いわゆる分割金型プレス工具でありうる。形成される未加工体の形状に応じて、金型半体は異なる形状でありうる。一設計原理によれば、各金型半体は、その端部にU字型の凹部を有する本体を備えている。U字型の凹部の2つの側面は、金型半体の本体の残りの部分から延びる2つの直方体の形状をした脚部によって画成されると見なすことができる。
【0005】
別の設計原理によれば、各金型半体は、その端部にV字型の凹部を有する本体を備えている。V字型の凹部の2つの側面は、金型半体の本体の残りの部分から延びる2つの楔形の形状をした脚部によって画成されると見なすことができる。
【0006】
圧縮時に、2つの金型半体は、それぞれのV字型の凹部が互いに向けられるように配置され、それによって、対向する凹部によって金型キャビティが画成される。下側のパンチ又は金型要素が金型キャビティの底部に配置され、粉末が金型キャビティ内に導入され、上方から前記金型キャビティ内に導入された上側のパンチが、下側のパンチの下からの金型キャビティ内への対応する導入と組み合わせて、粉末を圧縮するために使用される。このような圧縮の際、粉末によって、それぞれの金型半体の脚部に外向きの圧力が加わり、脚部が外側方向に曲がろうとする。
【0007】
本出願人は、対象とする用途に要求される耐摩耗性を有する等級の超硬合金で作られた金型半体が、各圧縮シーケンス中に脚部が外側方向に曲げられるために、繰り返しの圧縮シーケンスの後に2つの金型表面が互いに接触する金型部材の角部領域に亀裂が生じる可能性があることを認識した。言い換えれば、粉末によって引き起こされる摩耗に起因して脚部の内表面が許容できない基準にまで擦り切れる前に、角部領域に亀裂が形成される。したがって、それぞれの金型半体の角部領域での亀裂の開始及び伝播は、プレス工具の機能にとって重要な要素になる。
【0008】
本出願人が知得している限りでは、特定された問題は、これまで、この種の金型についての従来技術では対処されていなかった。
【0009】
したがって、本開示の目的は、上記特定された問題に対する解決策を提示することである。
【発明の概要】
【0010】
本開示の目的は、切削インサート未加工体を製造するためのプレス工具によって達成され、該プレス工具は、
-第1の金型表面によって画成される第1の脚部と第2の金型表面によって画成される第2の脚部とを有する少なくとも1つの金型部材であって、各脚部が、金型部材の残りの部分に接続する基部と、第1及び第2の金型表面の端部のそれぞれの自由端とを有する、金型部材
を備えており、
-前記第1の金型表面及び第2の金型表面が、金型キャビティの境界を定め、前記金型キャビティ内での粉末の圧縮時に前記切削インサート未加工体が形成され、
-前記第1及び第2の脚部(4,6)の基部の領域において、金型キャビティ(3)は、2つの接触する表面間に角部を有する角部領域を提示し、かつ
-前記金型部材が超硬合金からなり、前記プレス工具は、前記角部領域で、超硬合金が角部領域からより離れている金型部材の超硬合金よりも高い靭性を有する、金型部材の部分が存在することを特徴とする。
【0011】
多様な金型材料特性は、異なる微細構造及び/又は組成物の焼結超硬合金で作られた異なるパーツを単一の本体へと一緒に焼結し、その後、上記定義された幾何学形状及びキャビティを有する金型が形成されるように、放電加工によって凹部を形成する方法によって達成することができる。靭性の低い超硬合金は、靭性の高い部分よりも高い耐摩耗性を有する。前記角部領域とは別に、第1及び第2の脚部の第1及び第2の表面は、より低い靭性かつより高い耐摩耗性を有する超硬合金によって形成される。
【0012】
一実施形態によれば、前記角部は100°未満の角度αを有する。
【0013】
一実施形態によれば、前記角部は70°未満の角度αを有する。
【0014】
一実施形態によれば、前記角部領域の角部は、1.65mm未満、好ましくは1.1mm未満の半径に対応する角部曲率を有する。
【0015】
一実施形態によれば、前記2つの接触する表面の少なくとも一方は、前記第1及び第2の金型表面のうちの一方である。
【0016】
一実施形態によれば、前記2つの接触する表面は前記第1及び第2の金型表面である。
【0017】
一実施形態によれば、前記部分は、角部の頂点から第1の脚部及び第2の脚部の自由端に向かう方向に第1及び第2の金型表面に沿って測定して、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.25mm、最も好ましくは少なくとも1mm延在する。したがって、前記部分は、角部の頂点から少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.25mm、最も好ましくは少なくとも1mm延在する、第1及び第2の表面の一部を画成する。最小伸張は、例えば、その部分の製造方法や角部領域の応力条件に応じて決まる。
【0018】
一実施形態によれば、前記部分は、角部の頂点から第1の脚部及び第2の脚部の自由端に向かう方向に第1及び第2の金型表面に沿って測定して、金型表面の長さの半分以下で延在する。したがって、前記部分は、角部の頂点からある方向に第1及び第2の金型表面の長さの半分以下で延在する、第1及び第2の表面の一部を画成する。このような角部からの距離では、靭性よりも耐摩耗性が優先されうる。
【0019】
一実施形態によれば、前記部分は、金型キャビティの境界を定める前記部分の金型表面に対して法線の方向に、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも1mmの厚さを有する。したがって、前記部分は、角部頂点の延長部に見られるような厚さを有する。それによって、前記部分の所定の最小限の技術的効果が達成される。
【0020】
一実施形態によれば、前記部分は、金型部材の前記角部の頂点から反対側の端部まで、前記第1及び第2の脚部から離れて前記反対側の端部の方を指す第1の方向に延在する。 このような実施形態は、一緒に焼結されて前記金型部材を形成する第1及び第2のパーツの正確かつ迅速な位置決めを容易にする。金型部材が前記第1の方向と平行な長手方向を有していること、並びに前記部分及び金型部材の断面が、金型部材の前記長手方向に対して横方向に又は垂直に見て、金型部材の長さに沿って一定であることを条件として、前記脚部を画成する金型部材のV字型の凹部、したがって金型キャビティは、後者の金型キャビティ画成面が摩耗するにつれて、元の金型部材内へとますます深く形成されうる。
【0021】
一実施形態によれば、前記部分は、前記金型部材の第1の端部から反対側の第2の端部まで前記角部に沿って延在する。代替として、前記部分は、金型キャビティ内へと移動する少なくとも1つのパンチによる圧縮中に切削インサートの未加工体が最終的に形成される金型部材の領域に集中する。
【0022】
一実施形態によれば、角部の頂点から金型部材の反対側の端部に向かう第1の方向に対して垂直な平面で見て、前記部分は長方形の断面を有する。第1の方向は、上述した長手方向でありうる。
【0023】
一実施形態によれば、角部の頂点から金型部材の反対側の端部に向かう第1の方向に対して垂直な平面で見て、前記部分は楕円形又は円形の断面を有する。第1の方向は、上述した長手方向でありうる。
【0024】
一実施形態によれば、角部の頂点から金型部材の反対側の端部に向かう第1の方向に対して垂直な平面で見て、上述した前記長手方向と平行な第1の方向に、前記部分が、角部の頂点から金型部材の前記反対側の端部に向かってその全長に沿って同じ断面を有する。したがって、前記脚部を画成する金型部材のV字型の凹部、並びに、それによって金型キャビティは、後者の金型キャビティ画成面が磨耗するにつれて、前記長手方向に元の金型部材内へとますます深く形成されうる。また、前記角部領域における前記部分の断面は同じままである。
【0025】
一実施形態によれば、
-第1の脚部は、前記第1の表面に関して第1の脚部の反対側に外表面を有し、
-第2の脚部は、前記第2の金型表面に関して第2の脚部の反対側に外表面を有し、かつ
-第1の脚部の前記外表面は、第2の脚部の前記外表面と平行である。
【0026】
一実施形態によれば、
-第1の脚部から金型部材の反対側の端部に向かって、第1の脚部の外表面の延長において、金型部材の残りの部分が第1の脚部の外表面と一直線になった外表面を有し、かつ
-第2の脚部から金型部材の反対側の端部に向かって、第2の脚部の外表面の延長において、金型部材の残りの部分が第2の脚部の外表面と一直線になった外表面を有する。
【0027】
一実施形態によれば、第1の脚部は楔形の形状を有し、第2の脚部は楔形の形状を有しており、その各々が、金型部材の残りの部分に接続する基部と、前記角部とは反対側の第1及び第2の表面の端部のそれぞれの自由端とを有する。第1及び第2の脚部は、上記定義された金型部材の長手方向に垂直な方向及びその内部での粉末の圧縮に関連してパンチが金型キャビティ内へと移動する方向で見たときに、楔形の形状をしている。
【0028】
さらなる実施形態は、脚部が直方体などの楔形の形状以外の形状を有することができ、複数の角部、したがって複数の角部領域が存在してもよい、代替となる実施形態を含む。
【0029】
一実施形態によれば、前記部分を形成する超硬合金は、第1の脚部及び第2の脚部を形成する超硬合金よりも大きい平均炭化物粒径を有する。
【0030】
一実施形態によれば、前記超硬合金はコバルト結合剤のマトリクス内に炭化タングステンの粒子を含む。
【0031】
一実施形態によれば、超硬合金はコバルト結合剤のマトリクス内に炭化タングステンの粒子を含んでおり、前記部分を形成する超硬合金は、第1の脚部及び第2の脚部を形成する超硬合金よりも高いコバルト含有量を有する。
【0032】
一実施形態によれば、前記プレス工具は、上記又は下記の本発明による第1の金型部材と、対応する第2の金型部材であって、該第1及び第2の金型部材が、それらのそれぞれの第1及び第2の脚部の自由端が互いに向かうように配置されるように構成されており、それによって金型キャビティを画成する、第1の金型部材と第2の金型部材、並びに、前記金型キャビティ内に導入される粉末を圧縮する目的で、第1の金型部材と第2の金型部材とによって画成された金型キャビティ内に導入されるように配置された少なくとも1つのパンチを備えている。
【0033】
本発明の目的はまた、以下のステップを含む、上記又は下記に定義されるプレス工具を製造する方法によっても達成される:
-金型部材の第1のパーツを形成するように構成された第1の未加工体を形成するステップ、
-金型部材の第2のパーツを形成するように構成された第2の未加工体を形成するステップ、
-第1の未加工体を金型部材の第1のパーツへと焼結するステップ、
-第2の未加工体を金型部材の第2のパーツへと焼結するステップであって、該第2のパーツが、第1のパーツに取り付けたときに、金型部材の前記部分を形成する、ステップ、及び
-焼結することによって第1のパーツを第2のパーツに取り付けるステップであって、第1のパーツと第2のパーツとの間の界面において、第1のパーツの結合剤と第2のパーツの結合剤とが前記焼結中に溶融する、ステップ。
【0034】
一実施形態によれば、本方法は、焼結した金型部材を最終形状へと放電加工するさらなるステップを含む。最終形状は、前記プレス工具が、前記角部領域において、超硬合金が、それぞれの脚部のそれぞれの対向する自由端に向かう方向に角部領域からより離れている第1及び第2の脚部の超硬合金よりも高い靭性を有する金型の部分が存在することを特徴とする、形状である。
【0035】
本開示によるプレス工具及び方法のさらなる特徴及び利点は、以下の実施形態の詳細な説明において提示される。
【0036】
これより、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】排出位置、すなわち開放位置にある2つの金型部材の上面図
【
図2】プレス位置、すなわち閉位置にある金型部材を示す、
図1に対応する図
【
図3】金型部材の第1の実施形態を示す、
図1のII-IIによる端面図
【
図4】金型部材の第2の実施形態を示す、
図1のII-IIによる端面図
【
図6】本開示による方法の実施形態のステップを示す図
【
図7】本開示による方法の実施形態のステップを示す図
【
図8】本開示による方法の実施形態のステップを示す図
【
図9】本開示による方法の実施形態のステップを示す図
【
図11】固定具を含む本発明によるプレス工具を示す図
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1、10、及び11は、本開示によるプレス工具のパーツを示している。プレス工具は、切削インサート未加工体を製造するためのプレス工具であり、示される実施形態では、2つの金型部材1,2を備えており、その各々が金型キャビティ3のパーツを画成するように構成されている。プレス工具はまた、前記金型キャビティ内に導入された粉末を切削インサート未加工体へと圧縮する目的で上下から金型キャビティ3内に導入されるように構成された2つのパンチ24,25(
図10及び11に見られる)も備えている。
図11には、その内部での粉末の圧縮中に金型部材1,2を位置づけることができる固定具26も示されている。
【0039】
金型部材1,2の一方のみが以下に開示されるが、第2の金型部材は開示されたものと同じ特徴を有しうることが理解されるべきである。
【0040】
金型部材1は、第1の金型表面5を画成する第1の脚部4と第2の金型表面7を画成する第2の脚部6とを有する固体物体を含む。第1の金型表面5及び第2の金型表面7は金型キャビティ3の境界を定めており、前記金型キャビティ3内での粉末の圧縮時に切削インサート本体が形成される。第1の金型表面5及び第2の金型表面7は、第1及び第2の表面5,7が互いに接触する金型部材1の角部領域の角部8において、互いに対して96°以下の角度αで延在する。前記角部領域の角部8は、1.65mm未満の半径に対応する角部曲率を有する。
【0041】
第1の脚部4は楔形の形状を有し、第2の脚部6は楔形の形状を有しており、その各々が、金型部材1の残りの部分に接続された基部と、第1及び第2の表面5,7が互いに接触する前記角部8とは反対側の第1及び第2の表面の端部のそれぞれの自由端10,11とを有する。
【0042】
金型部材1は超硬合金からなり、前記角部領域には、超硬合金が、第1の脚部4及び第2の脚部6のそれぞれの対向する自由端10,11に向かう方向に角部領域からより離れている金型部材の超硬合金が有するよりも高い靭性を有する金型部材1の部分9が存在する。靭性が低い材料は、靭性が高い材料よりも耐摩耗性が高い。したがって、第1及び第2の表面5,7は、より高い靭性を有する部分9が位置する角部領域よりも、その他のパーツでより高い耐摩耗性を有する。
【0043】
前記部分9と金型部材の他のパーツとの靱性の違いは、超硬合金の組成又はその微細構造が前記部分9と金型部材1の他のパーツとの間で異なることに起因する。例えば、前記部分9は、金型部材1の他のパーツよりも高い結合剤含有量及び/又はより大きい平均炭化物粒径を有しうる。
【0044】
強靱な部分9は、角部の頂点23から第1の脚部4及び第2の脚部6の対向する自由端10,11に向かう方向yに延在する。部分9は、角部8の頂点23から第1の脚部4及び第2の脚部6の自由端10,11に向かう方向yに、第1及び第2の金型表面5,7の長さの少なくとも0.1mm延在する。前記部分9は、角部8の頂点23から第1の脚部4及び第2の脚部6の自由端10,11に向かう方向yに、第1及び第2の金型表面5,7の長さの半分以下で延在する。強靱な部分9は、第1及び第2の金型表面に対して法線の方向に、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも1mmの厚さを有する。
【0045】
示される実施形態では、強靱な部分9は、金型部材1の角部8の頂点23から反対側の端部13まで、前記第1及び第2の脚部から前記反対側の端部に向かって第1の方向xに延在する。方向xは、金型部材1の長手方向に平行である。しかしながら、強靱な部分9は、前記方向xにおいて、金型部材の長さよりもかなり短い長さを有しうる。
【0046】
示される実施形態では、強靱な部分9は、金型部材1の角部の頂点から前記反対側の端部13まで、その全長に沿って同じ断面を有する。このような設計は必須ではないが、金型部材の製造を容易にし、また、角部領域における強靱な部分9の断面を維持しつつ、第1及び第2の表面が摩耗したときに、第1及び第2の脚部4,6を画成するV字型の凹部のさらなる段階的な機械加工も可能にする。
【0047】
図3は、長手方向xに垂直な平面で見て強靱な部分の断面が長方形であり、該強靱な部分9が、この場合、前述の長手方向xに垂直な方向に、及びその内部での粉末の圧縮に関連してパンチが金型キャビティ内に移動する方向に第1の端部14から第2の端部15までずっと延びている実施形態を示している。強靱な部分9は、金型部材1の角部8から反対側の端部13までずっと第1の方向に延在する。
【0048】
図4は、長手方向xに対して垂直な平面で見たときに、強靱な部分9’が円形の断面を有する代替となる実施形態を示している。
【0049】
強靱な部分9、9’は、切削インサート未加工体が最終的に圧縮される金型キャビティ3の角部8に配置される、すなわち、強靱な部分は、第1及び第2の表面6、7への圧縮圧力によって引き起こされる応力が非常に高い値に達する、金型キャビティ3の部分に配置される。
【0050】
第1の脚部4は、前記第1の表面5に関して第1の脚部4の反対側に外表面16を有し、第2の脚部6は、前記第2の表面7に関して第2の脚部6の反対側に外表面17を有しているる。第1の脚部4の外表面16は第2の脚部6の外表面17と平行である。
【0051】
第1の脚部4から金型部材1の反対側の端部13に向かって、前記長手方向xの第1の脚部4の外表面16の延長において、金型部材1の残りの部分は、第1の脚部4の外表面16と一直線になる外表面18を有する。第2の脚部6から金型部材1の反対側の端部13に向かって、前記長手方向xの第2の脚部6の外表面17の延長において、金型部材1の残りの部分は、第2の脚部6の外表面17と一直線になる外表面19を有する。この設計により、上記のような平行な外表面を有する直方体の端部にV字型の凹部を機械加工し、その凹部を金型キャビティとして使用することが可能になる。その中で粉末が繰り返し圧縮される摩耗効果に起因して、このような凹部などの内表面が摩耗すると、凹部を画成するダイ部材1のパーツの重要な幾何学的尺度を同じままに、したがって、金型キャビティを同じままに維持しつつ、該凹部は、適切な機械加工によって単純に直方体へとさらに変位させることができる。
【0052】
開示される実施形態では、金型部材1は、互いに垂直な隣接する外表面を有する直方体によって形成され、前記V字形の凹部は、直方体の一端に形成される。
【0053】
図4~6は、本開示による金型部材1を製造する方法のステップを示している。図示されていない第1のステップ及び第2のステップでは、粉末が2つの第1の未加工体へと成形され、これが焼結され、後で一緒に接合されると金型部材1の第1のパーツ20,21を形成するように構成される。示される実施形態では、
図6に示される2つの第1のパーツ20,21は、それぞれの厚さt
1、t
2を有する長方形のシートの形状を有する直方体である。この実施形態では、t
1=t
2である。しかしながら、2つの第1のパーツ20,21は、形状及び/又は厚さに関して互いに異なっていてもよい。これは、プレス工具の設計又は圧縮される切削インサート未加工体の特定の設計、したがって金型部材1に成形される凹部の設計に応じて決まる。
【0054】
対応する第1及び第2のステップでは、第1の未加工体を形成する粉末とは異なる微細構造及び/又は組成を有する第2の粉末が形成及び焼結されて、後で第1のパーツ20,21と一緒に接合されると金型部材1の第2のパーツ22を形成する。第2のパーツ22は厚さt3を有する。第2のパーツ22は、上に開示された靱性の部分9を形成することを目的とし、その目的のために、その厚さt3は、この実施形態では、第1のパーツ20,21の厚さt1、t2より実質的に小さい。異なる微細構造は、例えば、異なる炭化物粒径を指す場合があり、異なる組成は、例えば、異なる結合剤含有量又は異なるタイプの炭化物を指す場合がある。
【0055】
一実施形態によれば、第1のパーツ20,21は3から13重量%のコバルト含有量を有する超硬合金で作られており、第2のパーツ22は6から25重量%のコバルト含有量を有する超硬合金で作られている。
【0056】
一実施形態によれば、第1のパーツ20,21は0.2から3.0μmの平均粒径を有する炭化タングステン粒子を含む超硬合金で作られており、第2のパーツ22は0.5から8.0μmの平均粒径を有する炭化タングステン粒子を含む超硬合金で作られている。
【0057】
図7に示す後続のステップでは、第2のパーツ22が第1のパーツ20,21の間に挟まれ、焼結によって前記第2のパーツに取り付けられ、ここで、第1のパーツと第2のパーツの間の界面では、第1のパーツの結合剤と第2のパーツの結合剤が前記焼結中に溶融される。
【0058】
これにより、直方体が形成された。
図8に示されるさらなるステップでは、V字型の凹部が、前記第1及び第2のパーツによって形成された本体の端部に機械加工され、その結果、上に開示された形状を有する
図9に示される金型部材1が得られる。
【0059】
未加工体20,21,22を圧縮によって成形する代わりに、少なくとも1つの未加工体は、例えば、次の成形方法:押出成形、粉末射出成形、又は積層造形のいずれかによって成形することができる。
【0060】
金型表面5,7は、図面では平面として、断面では直線として示されているが、金型表面は、未加工体の幾何学形状に対応して非平面であってもよいことが理解されるべきである。
【0061】
開示される実施形態では、本発明は、直方体の形状を有する2つの第1の本体20,21と、直方体の形状を有する1つの第2の本体とによって構成されるものとして例示されているが、上に示され、添付の特許請求の範囲においてさらに定義されるように、形成された金型部材1の角部8の領域に少なくとも1つの強靱な部分9が形成される限り、このような本体の他の数及び形状は、その最も広い意味において本発明の特許請求される範囲内にあることを述べておきたい。