IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許7478549電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム
<>
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図1
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図2
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図3
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図4
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図5
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図6
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図7
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図8
  • 特許-電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240425BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/00 130
H02J3/00 170
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020029234
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021136724
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 満文
(72)【発明者】
【氏名】末廣 諭
(72)【発明者】
【氏名】丸山 真範
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真三郎
(72)【発明者】
【氏名】中ノ瀬 潤
(72)【発明者】
【氏名】吉村 史隆
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213256(JP,A)
【文献】特開2015-177686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
想定する船舶の運行状態それぞれと、それぞれの運行状態について想定する発電機それぞれの発電量とを関連付けた第1シナリオを記憶する記憶部と、
前記船舶の実際の運行状態に最も近い運行状態を前記第1シナリオにおいて特定し、特定した運行状態に関連付けられている前記発電機それぞれの発電量を特定する発電計画部と、
前記発電機が発電した電力を前記船舶におけるすべてのゾーンの各ゾーンへ供給し、前記各ゾーンのうちの1つである一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定する充放電計画部と
を備える電力系統制御装置。
【請求項2】
前記充放電計画部は、
前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記変動を抑制する電力の授受が可能であると判定した場合、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の前記経路を実現させる指令を前記経路を制御する系統構成計画部に送信する、
求項1に記載の電力系統制御装置。
【請求項3】
前記充放電計画部は、
前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記変動を抑制する電力の授受が不可能であると判定した場合に、前記すべてのゾーンと前記一のゾーンとの間の前記経路に係る情報と、前記すべてのゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと前記すべてのゾーンのうちの何れかとの間で前記変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定する、
求項1または請求項2に記載の電力系統制御装置。
【請求項4】
前記充放電計画部は、
前記一のゾーンと前記すべてのゾーンのうちの何れかとの間で前記変動を抑制する電力の授受が可能であると判定した場合に、前記一のゾーンと前記すべてのゾーンのうちの何れかとの間の前記経路を実現させる指令を前記経路を制御する系統制御部に送信する、
求項3に記載の電力系統制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の電力系統制御装置と、
前記蓄電池と、
を備える電力分配システム。
【請求項6】
想定する船舶の運行状態それぞれと、それぞれの運行状態について想定する発電機それぞれの発電量とを関連付けた第1シナリオを記憶することと、
前記船舶の実際の運行状態に最も近い運行状態を前記第1シナリオにおいて特定し、特定した運行状態に関連付けられている前記発電機それぞれの発電量を特定することと、
前記発電機が発電した電力を前記船舶におけるすべてのゾーンの各ゾーンへ供給し、前記各ゾーンのうちの1つである一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定すること
を含む制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
想定する船舶の運行状態それぞれと、それぞれの運行状態について想定する発電機それぞれの発電量とを関連付けた第1シナリオを記憶することと、
前記船舶の実際の運行状態に最も近い運行状態を前記第1シナリオにおいて特定し、特定した運行状態に関連付けられている前記発電機それぞれの発電量を特定することと、
前記発電機が発電した電力を前記船舶におけるすべてのゾーンの各ゾーンへ供給し、前記各ゾーンのうちの1つである一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定すること
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
艦艇などの船舶では、時々刻々と運航状態が変化し、それに伴い、船舶内において消費される電力量も時々刻々と変化する。また、船舶が電力を動力源とする場合には、電力量の変化はより大きくなる可能性がある。
特許文献1には、関連する技術として、船舶において複数のゾーンへ電力を供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5357526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶において複数のゾーンへ電力を供給しているときに、定常状態からあるゾーンにおける電力需要が急激に変化した場合、そのゾーンに備えられる電力貯蔵システムの充放電だけでは、その急激な電力需要の変化に追従できなくなり、電力系統における電気に係る物理量(電圧、電流、電力、周波数等)が不安定になる可能性がある。
そのため、船舶において、局所的に電力需要が急激に変化した場合に、その変化に伴って生じる電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制することのできる技術が求められている。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決することのできる電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る電力系統制御装置は、想定する船舶の運行状態それぞれと、それぞれの運行状態について想定する発電機それぞれの発電量とを関連付けた第1シナリオを記憶する記憶部と、前記船舶の実際の運行状態に最も近い運行状態を前記第1シナリオにおいて特定し、特定した運行状態に関連付けられている前記発電機それぞれの発電量を特定する発電計画部と、前記発電機が発電した電力を前記船舶におけるすべてのゾーンの各ゾーンへ供給し、前記各ゾーンのうちの1つである一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定する充放電計画部と、を備える
【0007】
本開示に係る電力分配システムは、上記の電力系統制御装置と、前記蓄電池と、を備える。
【0008】
本開示に係る制御方法は、想定する船舶の運行状態それぞれと、それぞれの運行状態について想定する発電機それぞれの発電量とを関連付けた第1シナリオを記憶することと、前記船舶の実際の運行状態に最も近い運行状態を前記第1シナリオにおいて特定し、特定した運行状態に関連付けられている前記発電機それぞれの発電量を特定することと、前記発電機が発電した電力を前記船舶におけるすべてのゾーンの各ゾーンへ供給し、前記各ゾーンのうちの1つである一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定することと、を含む
【0009】
本開示に係るプログラムは、想定する船舶の運行状態それぞれと、それぞれの運行状態について想定する発電機それぞれの発電量とを関連付けた第1シナリオを記憶することと、前記船舶の実際の運行状態に最も近い運行状態を前記第1シナリオにおいて特定し、特定した運行状態に関連付けられている前記発電機それぞれの発電量を特定することと、前記発電機が発電した電力を前記船舶におけるすべてのゾーンの各ゾーンへ供給し、前記各ゾーンのうちの1つである一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定することと、を実行させる
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態による電力系統制御装置、電力分配システム、制御方法及びプログラムによれば、船舶において、局所的に電力需要が急激に変化した場合に、その変化に伴って生じる電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態による船舶の構成の一例を示す図である。
図2】本開示の第1実施形態による電力分配システムの構成の一例を示す図である。
図3】本開示の第1実施形態による電力系統制御装置の構成の一例を示す図である。
図4】本開示の第1実施形態における電力系統における変動の抑制を説明するための図である。
図5】本開示の第1実施形態による電力分配システムの処理フローの一例を示す第1の図である。
図6】本開示の第1実施形態による電力分配システムの処理フローの一例を示す第2の図である。
図7】本開示の第1実施形態による電力分配システムの処理フローの一例を示す第3の図である。
図8】本開示の第2実施形態による電力系統制御装置の構成の一例を示す図である。
図9】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
本開示の第1実施形態による船舶1は、複数の電力貯蔵システム(Energy Storage System)(以下、ESSと記載)を備え、船舶1内の電力系統において局所的な電力変動が生じた場合に、すべてのESSの充放電を考慮して各ESSの充放電を決定する船舶である。例えば、船舶1は、艦艇である。
【0013】
(船舶の構成)
船舶1は、図1に示すように、船舶本体10、電力分配システム20を備える。
船舶本体10は、複数のゾーンに分けられている。なお、本開示の第1実施形態では、図2に示すように、船舶本体10が6つのゾーンに分けられている場合の船舶1を例に説明する。
【0014】
(電力分配システムの構成)
電力分配システム20は、複数のゾーンにわたって設けられるシステムである。電力分配システム20は、図2に示すように、発電機201a、201b、201c、負荷202a、202b、202c、202d、202e、202f、ESS203a、203b、203c、203d、203e、203f、電力系統L、電力系統制御装置204を備える。
なお、発電機201a、201b、201cを総称して、発電機201と呼ぶ。また、負荷202a、202b、202c、202d、202e、202fを総称して、負荷202と呼ぶ。また、ESS203a、203b、203c、203d、203e、203fを総称して、ESS203と呼ぶ。
【0015】
発電機201のそれぞれは、電力を生成する装置である。
発電機201aは、第1ゾーンに設けられる。発電機201bは、第3ゾーンに設けられる。発電機201cは、第5ゾーンに設けられる。
【0016】
負荷202aは、第1ゾーンにおいて電力系統Lを介して接続される負荷である。また、負荷202bは、第2ゾーンにおいて電力系統Lを介して接続される負荷である。また、負荷202cは、第3ゾーンにおいて電力系統Lを介して接続される負荷である。また、負荷202dは、第4ゾーンにおいて電力系統Lを介して接続される負荷である。また、負荷202eは、第5ゾーンにおいて電力系統Lを介して接続される負荷である。また、負荷202fは、第6ゾーンにおいて電力系統Lを介して接続される負荷である。負荷202のそれぞれは、複数の負荷から構成されることがある。そのため、一般的に、負荷202の間で、負荷の大きさは異なる。
なお、図2では、電力系統Lは、簡易的に1つの配線で示されている。しかしながら、実際の電力系統Lは、配線のある箇所が断線した場合であっても、他の経路を経由して各ゾーン間で接続可能な配線(例えば、スイッチが切り替わることによって経路を変更可能な配線)で構成されている。
【0017】
ESS203のそれぞれは、図3に示すように、制御器、蓄電池を備える。なお、図3において、蓄電池を示す四角形の大きさは、蓄電池の容量の大きさをイメージして記載したものであり、蓄電池と電力系統Lとの間の接続線の太さは、蓄電池と電力系統Lとの間で充放電可能な電力の大きさをイメージして記載したものである。
ESS203aは、第1ゾーンに設けられる。ESS203bは、第2ゾーンに設けられる。ESS203cは、第3ゾーンに設けられる。ESS203dは、第4ゾーンに設けられる。ESS203eは、第5ゾーンに設けられる。ESS203fは、第6ゾーンに設けられる。
【0018】
ESS203それぞれが備える蓄電池の容量は、各ゾーンにおいて接続される負荷202の大きさに応じて(すなわち、各ゾーンにおける電力需要に応じて)決定される。そのため、ESS203のそれぞれが充放電できる容量は、一般的に異なる。
【0019】
ESS203それぞれが備える制御器は、接続されている負荷202の状態と発電機201から供給されている電力とに基づいて、対応する蓄電池(すなわち、制御器と同一のESS203が備える蓄電池)の充放電を制御する。
例えば、発電機201から負荷202へ供給される電力が不足している場合、ESS203は、負荷202へ電力を放電する。また、発電機201から負荷202へ供給される電力が余っている場合、ESS203は、その余剰電力を充電する。
また、ESS203それぞれが備える制御器は、負荷202へ供給する電力が不足している場合、電力が不足していることを充放電計画部2046に通知する。また、ESS203それぞれが備える制御器は、負荷202へ供給する電力が余っている場合、電力が余っていることを充放電計画部2046に通知する。
【0020】
電力系統制御装置204は、ESS203それぞれの充放電を制御する装置である。また、電力系統制御装置204は、電力系統Lの経路を制御する装置である。電力系統制御装置204は、図3に示すように、系統構成計画部2041(系統制御部の一例)、需要予測部2042、記憶部2043、発電計画部2044、分配計画部2045、充放電計画部2046を備える。
【0021】
系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路の状態を取得する。また、系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路を制御する。また、系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路を示す情報を取得する。なお、電力系統Lの経路を示す情報にはその経路に接続されている船舶1内の機器(すなわち、負荷202)の情報が含まれる。
例えば、電力系統Lが断線した場合、系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路の状態として断線していることを示す情報を取得する。系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路を制御することによって、取得した状態の経路から、できる限り断線前の電力供給状態と同様の状態に近づける別の経路に変更する。なお、系統構成計画部2041は、別の経路に接続されている機器の情報を予め取得している。そのため、系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路を制御して別の経路に変更することにより、電力系統Lの経路とその経路に接続されている船舶1内の機器とを示す情報を特定する(すなわち、取得する)ことができる。
【0022】
需要予測部2042は、船舶1の運行状態及び電力系統Lの経路の状態に基づいて、各ゾーンにおける将来(例えば、2分後)の電力需要及び船舶1全体の電力需要を予測する。
【0023】
記憶部2043は、想定する船舶1の運行状態それぞれと、それぞれの運行状態について想定する発電機201それぞれの発電量とを関連付けた第1シナリオ情報を記憶する。また、記憶部2043は、想定する船舶1の運行状態について想定する各ゾーン及び船舶1全体の電力需要と、電力系統Lにおいて変更可能な各経路と、想定する電力需要と経路との組み合わせによって決まる電力の分配先とを関連付けた第2シナリオ情報を記憶する。なお、図3では、第1シナリオ情報と第2シナリオ情報をまとめてシナリオDBと記載している。
【0024】
発電計画部2044は、船舶本体10から船舶1の実際の運行状態を取得する。発電計画部2044は、取得した実際の運行状態に最も近い運行状態を、記憶部2043が記憶する第1シナリオにおいて特定する。発電計画部2044は、第1シナリオにおいて、特定した運行状態に関連付けられている発電機201それぞれの発電量を特定する。発電計画部2044が決定したこの発電量が将来(例えば、2分後)に発電機201それぞれが発電する電力量である。
【0025】
分配計画部2045は、系統構成計画部2041から実際の電力系統Lの経路の状態を取得する。また、分配計画部2045は、需要予測部2042から電力需要の予測を取得する。そして、分配計画部2045は、取得した電力系統Lの経路の状態と、取得した電力需要の予測との組み合わせに最も近い組み合わせを、記憶部2043が記憶する第2シナリオにおいて特定する。分配計画部2045が特定したこの経路が将来(例えば、2分後)に各ゾーンへ接続される電力系統Lの経路の状態である。
【0026】
充放電計画部2046は、発電機電力計画部2046a、第1ESS電力計画部2046b、第2ESS電力計画部2046c(第1判定部の一例、第2判定部の一例、第1制御部の一例、第2制御部の一例)を備える。
発電機電力計画部2046aは、発電計画部2044から発電機201それぞれの発電量を取得する。また、発電機電力計画部2046aは、分配計画部2045から電力の分配先である各ゾーンへの接続を示す情報を取得する。そして、発電機電力計画部2046aは、電力系統Lの経路を介して、発電機201それぞれが発電した電力を各ゾーンへ供給する。
【0027】
第1ESS電力計画部2046bは、発電機201それぞれが各ゾーンへ供給した電力と、各ゾーンにおける電力需要とに基づいて、各ゾーンに供給される電力を調整する。
例えば、発電機201それぞれが図3に示す第3ゾーンへ供給した電力がそのゾーンにおける電力需要を超える場合、第1ESS電力計画部2046bは、余剰電力を充電した場合にESS203の充電率の変化が最も小さいESS203(図3に示す例では、ESS203a)に充電させる指令を送信する。また、発電機201それぞれが図3に示す第3ゾーンへ供給した電力がそのゾーンにおける電力需要を下回る場合、第1ESS電力計画部2046bは、不足している電力を放電した場合にESS203の充電率の変化が最も小さいESS203(図3に示す例では、ESS203a)に放電させる指令を送信する。
【0028】
第2ESS電力計画部2046cは、あるゾーン(一のゾーンの一例)におけるESS203の電力需要が定常状態から局所的に急激に変化した場合に、その急激な変化を抑制し、電力系統Lにおける電気に係る物理量(電流、電圧、電力、周波数等)の変化を安定化させる機能部である。
第2ESS電力計画部2046cは、ESS203の何れかから電力が不足している通知(電力需要の急激な変化を示す情報の一例)を受けた場合、または、電力が余っている通知(電力需要の急激な変化を示す情報の一例)を受けた場合、系統構成計画部2041から電力系統Lの経路の状態を取得する。また、第2ESS電力計画部2046cは、電力が不足している通知を受けた場合または電力が余っている通知を受けた場合、通知を受けたESS203が存在するゾーンに隣接するゾーンのESS203の充電率を取得する。
【0029】
そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力が不足している通知を受けた場合には、電力系統Lの経路の状態と、隣接するゾーンのESS203の充電率とに基づいて、隣接するゾーンのESS203から通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力を供給できるか否かを判定する。第2ESS電力計画部2046cは、電力を供給する電力系統Lの経路への変更が可能であり、隣接するゾーンのESS203の充電率から換算した電力量が不足している電力量以上である場合、隣接するゾーンのESS203から通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力を供給できると判定する。また、第2ESS電力計画部2046cは、電力を供給する電力系統Lの経路への変更が不可能である場合、または、隣接するゾーンのESS203の充電率から換算した電力量が不足している電力量未満である場合には、隣接するゾーンのESS203から通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力を供給できないと判定する。
【0030】
第2ESS電力計画部2046cは、隣接するゾーンのESS203から通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力を供給できると判定した場合には、隣接するゾーンのESS203と通知を受けたゾーンのESS203とを接続させる電力系統Lの経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する。
【0031】
第2ESS電力計画部2046cは、隣接するゾーンのESS203から通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力を供給できないと判定した場合には、すべてのゾーンのESS203の充電率を取得する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力系統Lの経路の状態と、すべてのゾーンのESS203の充電率とに基づいて、すべてのゾーンのESS203のうちの何れかから通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力のすべてを供給できる電力系統Lの経路を特定する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、特定した電力系統Lの経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する。
【0032】
また、第2ESS電力計画部2046cは、電力が余っている通知を受けた場合には、電力系統Lの経路の状態と、隣接するゾーンのESS203の充電率とに基づいて、通知を受けたゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できるか否かを判定する。第2ESS電力計画部2046cは、電力を供給する電力系統Lの経路への変更が可能であり、隣接するゾーンのESS203の充電率から換算した充電可能な電力量が余剰電力量以上である場合、通知を受けたゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できると判定する。また、第2ESS電力計画部2046cは、電力を供給する電力系統Lの経路への変更が不可能である場合、または、隣接するゾーンのESS203の充電率から換算した充電可能な電力量が余剰電力量未満である場合には、通知を受けたゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できないと判定する。
【0033】
第2ESS電力計画部2046cは、通知を受けたゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できると判定した場合には、隣接するゾーンのESS203と通知を受けたゾーンのESS203とを接続させる電力系統Lの経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する。
【0034】
第2ESS電力計画部2046cは、通知を受けたゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できないと判定した場合には、すべてのゾーンのESS203の充電率を取得する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力系統Lの経路の状態と、すべてのゾーンのESS203の充電率とに基づいて、通知を受けたゾーンのESS203からすべてのゾーンのESS203のうちの何れかへ余剰電力のすべてを供給できる電力系統Lの経路を特定する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、特定した電力系統Lの経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する。
【0035】
例えば、図2に示す第1ゾーンから第6ゾーンのうち第3ゾーンにおいて局所的な電力需要の変化があった場合、第2ESS電力計画部2046cは、上述の手順に従って、次のような処理を行う。第2ESS電力計画部2046cは、第3ゾーンのESS203から第2ゾーンにおけるESS203への電力系統Lの経路を実現できるか、また、第3ゾーンのESS203から第4ゾーンにおけるESS203への電力系統Lの経路を実現できるかを判定する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、何れかの経路が実現できると判定した場合、その経路を介して電力需要の変化を吸収できるか否かを判定する(例えば、図4における符号4a1で示す部分または符号4b1の部分で示す部分)。第2ESS電力計画部2046cは、その経路を介して電力需要の変化を吸収できると判定した場合、その経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する。
また、第2ESS電力計画部2046cは、第2ESS電力計画部2046cは、その経路を介して電力需要の変化を吸収できないと判定した場合、すべてのゾーンを対象に第3ゾーンのESS203からの電力系統Lの経路を実現できるかを判定する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、実現できる経路のうち電力需要の変化を吸収できる経路を特定する(例えば、図4における符号4a2で示す部分または符号4b2の部分で示す部分)。第2ESS電力計画部2046cは、特定した経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する。
【0036】
なお、第2ESS電力計画部2046cは、電力系統Lにおける電気に係る物理量(電流、電圧、電力、周波数等)の変化を安定化させる後、ESS203それぞれの充電率を電力需要の変化を吸収前の変動率になるように、ESS203それぞれの充電率から電力系統Lの経路と特定し、特定した経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する。
【0037】
(電力分配システムが行う処理)
ここでは、充放電計画部2046が電力需要と、発電機201が発電する電力量と、ESS203それぞれの充放電電力量とのバランスが取れた定常状態から、あるゾーンにおけるESS203の電力需要が局所的に急激に変化した場合に、電力分配システムその急激な変化を抑制する処理について説明する。
【0038】
(電力分配システムが行う定常状態の処理)
まず、電力分配システム20が行う定常状態の処理について、図5を参照して説明する。
系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路の状態を取得する。また、系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路を制御する。また、系統構成計画部2041は、電力系統Lの経路を示す情報を取得する(ステップS1)。
【0039】
需要予測部2042は、船舶1の運行状態及び電力系統Lの経路の状態に基づいて、各ゾーンにおける将来(例えば、2分後)の電力需要及び船舶1全体の将来(例えば、2分後)の電力需要を予測する(ステップS2)。
【0040】
発電計画部2044は、船舶本体10から船舶1の実際の運行状態を取得する。発電計画部2044は、取得した実際の運行状態に最も近い運行状態を、記憶部2043が記憶する第1シナリオにおいて特定する(ステップS3)。発電計画部2044は、第1シナリオにおいて特定した運行状態に関連付けられている発電機201それぞれの発電量を特定する(ステップS4)。
【0041】
分配計画部2045は、系統構成計画部2041から実際の電力系統Lの経路の状態を取得する。また、分配計画部2045は、需要予測部2042から電力需要の予測を取得する。そして、分配計画部2045は、取得した電力系統Lの経路の状態と、取得した電力需要の予測との組み合わせに最も近い組み合わせを、記憶部2043が記憶する第2シナリオにおいて特定する(ステップS5)。つまり、分配計画部2045が特定したこの経路が将来(例えば、2分後)に各ゾーンへ接続される電力系統Lの経路の状態である。
【0042】
発電機電力計画部2046aは、発電計画部2044から発電機201それぞれの発電量を取得する。また、発電機電力計画部2046aは、分配計画部2045から電力の分配先である各ゾーンへの接続を示す情報を取得する。そして、発電機電力計画部2046aは、電力系統Lの経路を介して、発電機201それぞれが発電した電力を各ゾーンへ供給する(ステップS6)。
第1ESS電力計画部2046bは、発電機201それぞれが各ゾーンへ供給した電力と、各ゾーンにおける電力需要とに基づいて、各ゾーンに供給される電力を調整する(ステップS7)。
【0043】
(定常状態から電力需要が局所的に急激に変化したときに電力分配システムが行う処理)
次に、定常状態から電力需要が局所的に急激に変化したときに電力分配システム20が行う処理について、図6図7を参照して説明する。
【0044】
図6は、ESS203の何れかから電力が不足しているときの電力分配システム20の処理フローである。
第2ESS電力計画部2046cは、ESS203の何れかから電力が不足している通知を受けた場合、または、電力が余っている通知を受けた場合、系統構成計画部2041から電力系統Lの経路の状態を取得する。また、第2ESS電力計画部2046cは、電力が不足している通知を受けた場合または電力が余っている通知を受けた場合、通知を受けたESS203が存在するゾーンに隣接するゾーンのESS203の充電率を取得する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力が不足している通知を受けた場合には、電力系統Lの経路の状態と、隣接するゾーンのESS203の充電率とに基づいて、隣接するゾーンのESS203から通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力を供給できるか否かを判定する(ステップS11)。
【0045】
第2ESS電力計画部2046cは、隣接するゾーンのESS203から通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力を供給できると判定した場合には(ステップS11においてYES)、隣接するゾーンのESS203と通知を受けたゾーンのESS203とを接続させる電力系統Lの経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する(ステップS12)。
【0046】
また、第2ESS電力計画部2046cは、隣接するゾーンのESS203から通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力を供給できないと判定した場合には(ステップS11においてNO)、すべてのゾーンのESS203の充電率を取得する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力系統Lの経路の状態と、すべてのゾーンのESS203の充電率とに基づいて、すべてのゾーンのESS203のうちの何れかから通知を受けたゾーンのESS203へ不足している電力のすべてを供給できる電力系統Lの経路を特定する(ステップS13)。そして、第2ESS電力計画部2046cは、特定した電力系統Lの経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する(ステップS14)。
【0047】
図7は、ESS203の何れかから電力が不足しているときの電力分配システム20の処理フローである。
第2ESS電力計画部2046cは、電力が余っている通知を受けた場合には、電力系統Lの経路の状態と、隣接するゾーンのESS203の充電率とに基づいて、通知を受けたゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できるか否かを判定する(ステップS21)。
【0048】
第2ESS電力計画部2046cは、通知を受けたゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できると判定した場合には(ステップS21においてYES)、隣接するゾーンのESS203と通知を受けたゾーンのESS203とを接続させる電力系統Lの経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する(ステップS22)。
【0049】
また、第2ESS電力計画部2046cは、通知を受けたゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できないと判定した場合には(ステップS21においてNO)、すべてのゾーンのESS203の充電率を取得する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力系統Lの経路の状態と、すべてのゾーンのESS203の充電率とに基づいて、通知を受けたゾーンのESS203からすべてのゾーンのESS203のうちの何れかへ余剰電力のすべてを供給できる電力系統Lの経路を特定する(ステップS23)。そして、第2ESS電力計画部2046cは、特定した電力系統Lの経路に変更させる指令を系統構成計画部2041に送信する(ステップS24)。
【0050】
以上、本開示の第1実施形態による船舶1について説明した。
船舶1において、電力系統制御装置204の第2ESS電力計画部2046c(判定部の一例)は、一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統Lの経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定する。
【0051】
この第2ESS電力計画部2046cは、電力需要が急激に変化する一のゾーンに最も近いゾーンに設けられる蓄電池によって電力需要が急激に変化に伴う電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制することを試みる。つまり、第2ESS電力計画部2046cは、可能な限り早急に電気に係る物理量の変動を抑制する。その結果、第2ESS電力計画部2046cにより、船舶において、局所的に電力需要が急激に変化した場合に、その変化に伴って生じる電力系統における電気に係る物理量の変動を抑制することができる。
【0052】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態による船舶1は、ESSを備え、船舶1内の電力系統において予め電力需要の変動の生じるゾーンとその変動量とがわかっている場合に、予めESS203の充放率を調整しておくことのできる船舶である。
以下、本開示の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0053】
(船舶の構成)
船舶1は、図1に示すように、船舶本体10、電力分配システム20を備える。
【0054】
(電力分配システムの構成)
電力分配システム20は、発電機201、負荷202、ESS203、電力系統L、電力系統制御装置204を備える。
【0055】
電力系統制御装置204は、ESS203それぞれの充放電を制御する装置である。また、電力系統制御装置204は、電力系統Lの経路を制御する装置である。電力系統制御装置204は、図8に示すように、系統構成計画部2041、需要予測部2042、記憶部2043、発電計画部2044、分配計画部2045、充放電計画部2046、電力需要変動予測部2047を備える。
【0056】
電力需要変動予測部2047は、船舶1内の電力系統における将来の電力需要の変動の生じるゾーンとその変動量とを予め特定する。
例えば、電力需要変動予測部2047は、予め記憶部2043に記録された将来の電力需要の変動の生じるゾーンとその変動量とを示す情報を取得する。
【0057】
充放電計画部2046は、発電機電力計画部2046a、第1ESS電力計画部2046b、第2ESS電力計画部2046cを備える。
【0058】
第2ESS電力計画部2046cは、電力需要変動予測部2047から将来の電力需要の変動の生じるゾーンとその変動量との情報(電力需要の急激な変化を示す情報の一例)を取得する。
第2ESS電力計画部2046cは、系統構成計画部2041から電力系統Lの経路の状態を取得する。また、第2ESS電力計画部2046cは、電力需要の変動の生じるゾーンに隣接するゾーンのESS203の充電率を取得する。
【0059】
そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力が不足する電力需要の変動の情報を取得した場合には、電力系統Lの経路の状態と、隣接するゾーンのESS203の充電率とに基づいて、隣接するゾーンのESS203から電力需要の変動の生じるゾーンのESS203へ不足している電力を供給できるか否かを判定する。第2ESS電力計画部2046cは、電力を供給する電力系統Lの経路への変更が可能であり、隣接するゾーンのESS203の充電率から換算した電力量が不足している電力量以上である場合、隣接するゾーンのESS203から電力需要の変動の生じるゾーンのESS203へ不足している電力を供給できると判定する。また、第2ESS電力計画部2046cは、電力を供給する電力系統Lの経路への変更が不可能である場合、または、隣接するゾーンのESS203の充電率から換算した電力量が不足している電力量未満である場合には、隣接するゾーンのESS203から電力需要の変動の生じるゾーンのESS203へ不足している電力を供給できないと判定する。
【0060】
第2ESS電力計画部2046cは、隣接するゾーンのESS203から電力需要の変動の生じるゾーンのESS203へ不足している電力を供給できると判定した場合には、隣接するゾーンのESS203と電力需要の変動の生じるゾーンのESS203とを接続させる電力系統Lの経路に変更させる指令を、電力需要の変動が生じる前に系統構成計画部2041に送信する。
【0061】
第2ESS電力計画部2046cは、隣接するゾーンのESS203から電力需要の変動の生じるゾーンのESS203へ不足している電力を供給できないと判定した場合には、すべてのゾーンのESS203の充電率を取得する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力系統Lの経路の状態と、すべてのゾーンのESS203の充電率とに基づいて、すべてのゾーンのESS203のうちの何れかから電力需要の変動の生じるゾーンのESS203へ不足している電力のすべてを供給できる電力系統Lの経路を特定する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、特定した電力系統Lの経路に変更させる指令を、電力需要の変動が生じる前に系統構成計画部2041に送信する。
【0062】
また、第2ESS電力計画部2046cは、電力が余る電力需要の変動の情報を取得した場合には、電力系統Lの経路の状態と、隣接するゾーンのESS203の充電率とに基づいて、電力需要の変動の生じるゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できるか否かを判定する。第2ESS電力計画部2046cは、電力を供給する電力系統Lの経路への変更が可能であり、隣接するゾーンのESS203の充電率から換算した充電可能な電力量が余剰電力量以上である場合、電力需要の変動の生じるゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できると判定する。また、第2ESS電力計画部2046cは、電力を供給する電力系統Lの経路への変更が不可能である場合、または、隣接するゾーンのESS203の充電率から換算した充電可能な電力量が余剰電力量未満である場合には、電力需要の変動の生じるゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できないと判定する。
【0063】
第2ESS電力計画部2046cは、電力需要の変動の生じるゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できると判定した場合には、隣接するゾーンのESS203と電力需要の変動の生じるゾーンのESS203とを接続させる電力系統Lの経路に変更させる指令を、電力需要の変動が生じる前に系統構成計画部2041に送信する。
【0064】
第2ESS電力計画部2046cは、電力需要の変動の生じるゾーンのESS203から隣接するゾーンのESS203へ余剰電力を供給できないと判定した場合には、すべてのゾーンのESS203の充電率を取得する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、電力系統Lの経路の状態と、すべてのゾーンのESS203の充電率とに基づいて、電力需要の変動の生じるゾーンのESS203からすべてのゾーンのESS203のうちの何れかへ余剰電力のすべてを供給できる電力系統Lの経路を特定する。そして、第2ESS電力計画部2046cは、特定した電力系統Lの経路に変更させる指令を、電力需要の変動が生じる前に系統構成計画部2041に送信する。
【0065】
なお、電力分配システム20が行う定常状態の処理については、図5に示した処理フローと同様である。
また、定常状態から電力需要が局所的に急激に変化したときに電力分配システム20が行う処理については、電力需要変動予測部2047が、船舶1内の電力系統における将来の電力需要の変動の生じるゾーンとその変動量とを予め特定し、第2ESS電力計画部2046cが特定した電力系統Lの経路に変更させる指令を、電力需要の変動が生じる前に系統構成計画部2041に送信することを考慮して、図6図7に示した処理フローと同様に考えればよい。
【0066】
以上、本開示の2実施形態による船舶1について説明した。
船舶1において、電力系統制御装置204の第2ESS電力計画部2046cは、電力需要変動予測部2047から将来の電力需要の変動の生じるゾーンとその変動量との情報(電力需要の急激な変化を示す情報の一例)を取得した(受けた)場合、電力需要の変動の生じるゾーンに隣接するゾーンのESS203からその電力需要の変動の生じるゾーンのESS203へ不足している電力を供給できるか否かを判定する。
【0067】
この第2ESS電力計画部2046cにより、船舶1内の電力系統において予め電力需要の変動の生じるゾーンとその変動量とがわかっている場合に、予めESS203の充放率を調整しておくことができる。
【0068】
なお、本開示の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0069】
なお、本発明の各実施形態における記憶部2043、その他の記憶装置等(レジスタ、ラッチを含む)は、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部2043、その他の記憶装置等は、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0070】
本開示の実施形態について説明したが、上述のESS203、電力系統制御装置204、その他の制御装置は内部に、コンピュータ装置を有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図9は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、図9に示すように、CPU6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述のESS203、電力系統制御装置204、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0071】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0072】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ装置にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、開示の範囲を限定しない。これらの実施形態は、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、種々の省略、種々の置き換え、種々の変更を行ってよい。
【0074】
<付記>
本開示の各実施形態に記載の電力系統制御装置(204)、電力分配システム(20)、制御方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0075】
(1)第1の態様に係る電力系統制御装置(204)は、
一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統(L)の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定する第1判定部(2046c)、
を備える。
【0076】
この第1判定部(2046c)は、電力需要が急激に変化する一のゾーンに最も近いゾーンに設けられる蓄電池によって電力需要が急激に変化に伴う電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制することを試みる。つまり、第1判定部(2046c)は、可能な限り早急に電気に係る物理量の変動を抑制する。その結果、電力系統制御装置(204)により、船舶(1)において、局所的に電力需要が急激に変化した場合に、その変化に伴って生じる電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制することができる。
【0077】
(2)第2の態様に係る電力系統制御装置(204)は、(1)の電力系統制御装置(204)であって、
前記第1判定部(2046c)が前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記変動を抑制する電力の授受が可能であると判定した場合、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の前記経路を実現させる指令を前記経路を制御する系統制御部(2041)に送信する第1制御部(2046c)、
を備えるものであってもよい。
【0078】
この第1制御部(2046c)は、指令を前記経路を制御する系統制御部(2041)に送信する。その結果、電力系統制御装置(204)により、前記変動を抑制する電力の授受を実際に行うことができるようになる。
【0079】
(3)第3の態様に係る電力系統制御装置(204)は、(1)または(2)の電力系統制御装置(204)であって、
前記第1判定部(2046c)が前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記変動を抑制する電力の授受が不可能であると判定した場合に、すべてのゾーンと前記一のゾーンとの間の前記経路に係る情報と、前記すべてのゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと前記すべてのゾーンのうちの何れかとの間で前記変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定する第2判定部(2046c)、
を備えるものであってもよい。
【0080】
この第1判定部(2046c)は、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記変動を抑制する電力の授受が不可能であると判定した場合に、前記一のゾーンと前記すべてのゾーンのうちの何れかとの間で前記変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定する。その結果、電力系統制御装置(204)により、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記変動を抑制する電力の授受が不可能である場合においても、電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制することができる。
【0081】
(4)第4の態様に係る電力系統制御装置(204)は、(3)の電力系統制御装置(204)であって、
前記第2判定部(2046c)が前記一のゾーンと前記すべてのゾーンのうちの何れかとの間で前記変動を抑制する電力の授受が可能であると判定した場合に、前記一のゾーンと前記すべてのゾーンのうちの何れかとの間の前記経路を実現させる指令を前記経路を制御する系統制御部(2041)に送信する第2制御部(2046c)、
を備えるものであってもよい。
【0082】
この第2制御部(2046c)は、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記変動を抑制する電力の授受が不可能である場合においても、指令を前記経路を制御する系統制御部(2041)に送信する。その結果、電力系統制御装置(204)により、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記変動を抑制する電力の授受が不可能である場合においても、前記変動を抑制する電力の授受を実際に行うことができるようになる。
【0083】
(5)第5の態様に係る電力分配システムは、
(1)から(4)の何れか1つの電力系統制御装置(204)と、
前記蓄電池と、
を備える。
【0084】
この電力分配システムにより、船舶(1)において、局所的に電力需要が急激に変化した場合に、その変化に伴って生じる電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制することができる。
【0085】
(6)第6の態様に係る制御方法は、
一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統(L)の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記前記電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定すること、
を含む。
【0086】
この制御方法により、船舶(1)において、局所的に電力需要が急激に変化した場合に、その変化に伴って生じる電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制することができる。
【0087】
(7)第7の態様に係るプログラムは、
コンピュータに、
一のゾーンについて電力需要の急激な変化を示す情報を受けた場合に、前記一のゾーンに隣接するゾーンと前記一のゾーンとの間の電力系統(L)の経路に係る情報と、隣接する前記ゾーンにおける蓄電池の充電率とに基づいて、前記一のゾーンと隣接する前記ゾーンとの間で前記前記電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制する電力の授受が可能か否かを判定すること、
を実行させる。
【0088】
このプログラムにより、船舶(1)において、局所的に電力需要が急激に変化した場合に、その変化に伴って生じる電力系統(L)における電気に係る物理量の変動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0089】
1・・・船舶
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
10・・・船舶本体
20・・・電力分配システム
30・・・センサ装置
40・・・劣化予測装置
50・・・データサーバ装置
201、201a、201b、201c・・・発電機
202、202a、202b、202c、202d、202e、202f・・・負荷
203、203a、203b、203c、203d、203e、203f・・・ESS
204・・・電力系統制御装置
2041・・・系統構成計画部
2042・・・需要予測部
2043・・・記憶部
2044・・・発電計画部
2045・・・分配計画部
2046・・・充放電計画部
2046a・・・発電機電力計画部
2046b・・・第1ESS電力計画部
2046c・・・第2ESS電力計画部
2047・・・電力需要変動予測部
L・・・電力系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9