(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】プロテオグリカン産生促進剤及び皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240425BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240425BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240425BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20240425BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20240425BHJP
A61K 36/424 20060101ALI20240425BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240425BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20240425BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/08
A61Q19/00
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K36/28
A61K36/48
A61K36/424
C12N15/09 Z ZNA
C12N5/071
(21)【出願番号】P 2020039644
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】大村 夏美
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-501176(JP,A)
【文献】特開2017-110007(JP,A)
【文献】特開2015-199715(JP,A)
【文献】特開平10-072333(JP,A)
【文献】特開2018-050496(JP,A)
【文献】BOUDIER David, et al.,皮膚に効果的な”ビタミンD様”作用をもたらす天然由来の有効成分,FRAGRANCE JOURNAL,2013年04月,p.56-59
【文献】Natural Plus Sun Stick SPF50+PA++++, Carver Korea, 2017年6月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.12.12], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:4922369
【文献】Cooling Watery Sun Block EX SPF50+PA++, LG Household & Health Care, 2017年5月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.12.12], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:4798707
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/9068
A61P 17/00-17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
北海道増毛
町湯ノ沢の有機JAS認定圃場にて、特定の土壌分析に基づく肥沃度のコントロールを活用した有機栽培によって生産されたキクニガナの根を50%エタノール水溶液で抽出したキクニガナからの抽出物を有効成分とする
パールカン産生促進剤。
【請求項2】
北海道増毛
町湯ノ沢の有機JAS認定圃場にて、特定の土壌分析に基づく肥沃度のコントロールを活用した有機栽培によって生産されたキクニガナの根を50%エタノール水溶液で抽出したキクニガナからの抽出物と、アカツメクサ抽出物及び/又はアマチャヅル抽出物を含有する皮膚外用剤
(日焼け防止用皮膚外用剤を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテオグリカン産生促進剤及び皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、生育する環境や土壌によって、その植物の収穫量や、含まれる有用成分の含有量が大きく異なることが知られている。また土壌の肥沃度を評価する方法として、従来の科学的分析に加えて、土壌バクテリア数、窒素循環、リン循環、土壌バイオマス量を指標とした土壌肥沃度評価方法(SOFIX、土壌肥沃度指標)による土壌の成分分析に基づき肥沃度をコントロールすることにより、高品質な植物を安定的に生産する研究が進められている(特許文献1参照)。また、炭素、窒素及びリンの量や微生物活性を改善した土壌で北海トウキを有機栽培すると、土壌肥沃度の上昇に応じて収穫量が増えるだけでなく、根に含まれる活性成分であるリグスチリドの量が増大することが知られている(特許文献2参照)。係る事実に基づき、出願人は北海道増毛での有機栽培において、土壌分析に基づく肥沃度のコントロールを活用した栽培植物における活性成分増大に取り組んでいる
【0003】
キクニガナは、別名チコリとも呼ばれるキクニガナ属に属する植物である。キクニガナに含まれる成分は栽培方法によって異なり、特定の波長の光を照射して栽培することにより、抗酸化効果などが変化することが知られている(特許文献3参照)。
【0004】
プロテオグリカンはタンパク質(コアタンパク質)にグリコサミノグリカンが共有結合した分子の総称であり、細胞表面と細胞外マトリックスの主要成分となっている。
プロテオグリカンとしては、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、デコリン、ビグリカン、セルグリシン、パールカン、シンデカン、グリピカン、ルミカン、ケラトカンなどが知られている。また、グリコサミノグリカンはその骨格構造によりコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸及びヘパリン、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸に分類される。
【0005】
プロテオグリカンは皮膚、骨、軟骨などの結合組織に豊富に存在しており、細胞内や細胞膜に存在が認められている。これまでに、プロテオグリカンの産生を促進することにより、生体組織の機能を向上・改善する技術が提案されている。
特許文献4には、皮膚の萎縮や、しわ、たるみなどの加齢に伴う皮膚性状変化に対する改善効果を有する、甘草の抽出物を含有するプロテオグリカンの生成促進剤が記載されている。
特許文献5には、骨の伸長障害、関節症、関節炎、軟骨外傷、骨折などの軟骨及び骨疾患の治療及び/又は改善を目的とする、プロテオグリカン生合成原料成分を含有する軟骨生成促進剤が記載されている。
特許文献6には、軟骨細胞のプロテオグリカン生成を促進する作用を有するプロテオグリカン生成促進剤が記載されている。特許文献3には、プロテオグリカン生成促進剤が、変形性関節症、慢性関節リウマチ変形性、脊椎症椎間板ヘルニア、軟骨形成異常症、骨折の治癒及び修復、外傷による関節軟骨、関節円板の修復、急性化膿性関節炎、結核性関節炎、梅毒性関節炎、リウマチ熱、全身性エリテマトーデス、骨移植による修復を含む、軟骨障害に起因する各種疾患の治療・予防に有効であることが記載されている。
特許文献7には、プロテオグリカンであるデコリン、フィブロモジュリン、パールカン、ルミカン、シンデカン-4及びセルグリシンの産生促進に有用なプロテオグリカン生成促進剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際特許公表WO2010/107121号公報
【文献】特開2018-505496号公報
【文献】特開2015-199715号公報
【文献】特開2006-028071号公報
【文献】特開2007-161688号公報
【文献】特開2000-281577号公報
【文献】特開2017-186284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、増毛で有機栽培したキクニガナからの抽出物を有効成分とする新規なプロテオグリカン産生促進剤、表皮機能改善剤を提供することを第一の課題とする。また、本発明は、さらに特定の植物抽出物を併用した皮膚外用剤を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決する手段は、下記のとおりである。
(1)
増毛で有機栽培したキクニガナからの抽出物を有効成分とするプロテオグリカン産生促進剤。
(2)
増毛で有機栽培したキクニガナからの抽出物を有効成分とする表皮機能改善剤。
(3)
増毛で有機栽培したキクニガナ(以下有機栽培キクニガナと略する場合があります。)からの抽出物と、アカツメクサ抽出物及び/又はアマチャヅル抽出物を含有する皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機栽培キクニガナ抽出物は、ヒト真皮線維芽細胞及びヒト表皮角化細胞におけるプロテオグリカン関連因子の産生を促進することにより、ヒト真皮線維芽細胞又はヒト表皮角化細胞におけるプロテオグリカンの産生を促進する効果を有する。また、有機栽培キクニガナ抽出物は、ヒト表皮角化細胞における、カリクレイン5因子、オクルディン、カスパーゼ14の産生を促進することにより、ヒト表皮におけるターンオーバーを促進し、タイトジャンクションの組織を強化し、フィラグリンの分解による天然保湿因子の産生を促進する効果を発揮する。
本発明の皮膚外用剤は、有機栽培キクニガナ抽出物とアカツメクサ抽出物及び/又はアマチャヅル抽出物を併用して用いることにより、高い老化防止効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、有機栽培キクニガナ抽出物を用いることにより、基底膜に存在するプロテオグリカンの一種であるパールカンの産生が向上することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本発明で使用する有機栽培キクニガナ抽出物は、増毛で有機栽培したキクニガナから得られる抽出物である。
【0013】
[キクニガナ]
キクニガナ(学名:Cichorium intybus)は、キク科キクニガナ属に属する多年草である。
[増毛]
増毛は、北海道の北西部、留萌振興局管内南部にあり、標高1492mの暑寒別岳を含む地域である。本発明においては、増毛の中でも標高の高い湯の沢地区で栽培することが好ましい。
[キクニガナ苗]
キクニガナ苗は、1~2年、好ましくは1年育苗したものを用いる。
【0014】
[圃場準備]
定植前に圃場の土壌改質を目的として、有機肥料の施肥を行う。
具体的には、有機肥料として、醗酵鶏糞、醗酵豚糞、醗酵牛糞、油粕、醗酵油粕、骨粉、魚粉、米糠、醗酵米糠、腐葉土、バーク堆肥、苦土石灰、消石灰、ヨウ成リン肥から選択される1種又は2種以上を併用して用いる。
【0015】
醗酵鶏糞、醗酵豚糞、醗酵牛糞、油粕、醗酵油粕、骨粉、魚粉、米糠、醗酵米糠、腐葉土、バーク堆肥、ヨウ成リン肥は、おもに三大栄養素である窒素、リン酸、カリを補給するために使用する。これらは、1種を単独で、若しくは2種以上を併用して用いる。キクニガナの栽培においては、醗酵鶏糞、油粕、ヨウ成リン肥を併用して用いることが好ましい。これらの肥料の施肥量は、元の土壌の状態によって増減できるが、窒素として2.0kg/a以上、リンとして3.4kg/a以上、カリウムとして1.0kg/a以上施肥することが好ましい。
【0016】
施肥は、定植前7日以上前に行うことが好ましい。定植前6日以内に行うと、肥料による土壌改善効果が十分ではなく、肥料焼けや、初期の生育不良の原因となる。有機肥料は溝施肥でも、全面施肥でも問題ないが、作業効率の点から全面施肥が好ましい。
【0017】
[定植]
9~12月の積雪がない時期に、育苗したキクニガナ苗を定植する。定植は株間20~50cm、畝間30~100cmとすることが栽培効率の点から好ましい。
【0018】
[育成]
春先、及び7月ごろ、追肥を行うことにより、より根の肥大が見込まれる。また、適宜雑草を除去し、乾燥状態に応じ潅水を行う。
【0019】
[収穫]
キクニガナは定植後約1年を目安として収穫する。晴天の日に、根を傷つけないよう掘り上げる。収穫後すぐ、若しくは数日風乾した後、水若しくは湯を用いて洗浄する。洗浄せず、風乾のみで土を落とすことも可能である。保存する場合は水分量が20%未満の状態で、乾燥した条件下で保存する。また、凍結乾燥して保存することも可能である。
【0020】
[使用部位]
使用し得るキクニガナの構成部位としては、例えば、根、葉、茎、花、蕾、地上全草等が挙げられるが、好ましくは根である。
【0021】
[抽出]
抽出物を調製する際には、生の植物をそのまま、若しくは乾燥させて用いる。
抽出溶媒としては、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。
上記溶媒による抽出物は、そのままでも用いることができるが、濃縮,乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはそれらの皮膚生理機能向上作用を損なわない範囲で脱色,脱臭,脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また、抽出物を酸、アルカリ、酵素などを用いて加水分解したものを用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~30倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温または還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
例えば、本発明のキクニガナ抽出物は、乾燥したキクニガナの根を50容量%エタノール水溶液に浸漬後、溶媒を留去し、50容量%の1,3-ブチレングリコール水溶液にエキス純分として1質量%となるように添加したものを用いることができる。
【0022】
本発明の有機栽培キクニガナ抽出物は、非有機栽培のキクニガナ抽出物と比較して、ヒト表皮角化細胞におけるパールカン(基底膜に存在するプロテオグリカンの一種)の産生が有意に向上する。
【0023】
本発明の有機栽培キクニガナ抽出物は、ヒト真皮線維芽細胞又はヒト表皮角化細胞におけるプロテオグリカン関連因子の産生を促進することにより、ヒト真皮線維芽細胞又はヒト表皮角化細胞におけるプロテオグリカンの産生を促進する作用を有する。また、有機栽培キクニガナ抽出物は、ヒト表皮角化細胞における、表皮機能改善効果による老化防止作用を有する。
【0024】
本発明で用いるアカツメクサ抽出物は、アカツメクサ(学名:Trifolium Pratense)から得られる抽出物である。使用し得るアカツメクサの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、根茎部、地上部又はこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは花部である。
【0025】
アカツメクサ抽出物の抽出方法は、上記キクニガナ抽出物と同様である。例えば、本発明のアカツメクサ抽出物は、乾燥したアカツメクサの花を50容量%エタノール水溶液に浸漬後、溶媒を留去し、50容量%の1,3-ブチレングリコール水溶液にエキス純分として0.6質量%となるように添加したものを用いることができる。
【0026】
アカツメクサ抽出物として、市販のアカツメクサ抽出物を用いることもできる。係るアカツメクサ抽出物としては、Miniporyl(アリスタライフサイエンス社製)、Capixyl(UNIPEX INNOVATIONS社製)、STEROCARE、STEROCARE PH(以上SEDERMA社製)、オーガニックレッドクローバーエキス BG-50(香栄興業社製)、ステームクローバーRF(テクノーブル社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明で用いるアマチャヅル抽出物は、アマチャヅル(学名:Gynostemma pentaphyllum)から得られる抽出物である。使用し得るアマチャヅルの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、つる部、花部、蕾部、根茎部、地上部又はこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは葉部及び茎部又は葉部であり、さらに好ましくは葉部である。
【0028】
アマチャヅル抽出物の抽出方法は、上記キクニガナ抽出物と同様である。例えば、本発明のアマチャヅル抽出物は、乾燥したアマチャヅルの葉を精製水に浸漬後、溶媒を留去し、30容量%の1,3-ブチレングリコール水溶液にエキス純分として0.5質量%となるように添加したものを用いることができる。
【0029】
アマチャヅル抽出物として、市販のアマチャヅル抽出物を用いることもできる。係るアマチャヅル抽出物としては、アマチャヅルエキス-BG(ヤマダ薬研社製)、ファルコレックス アマチャヅル B(一丸ファルコス社製)等が挙げられる。
【0030】
本発明において、有機栽培キクニガナ抽出物を用いることにより、ヒト表皮角化細胞、ヒト真皮線維芽細胞における、プロテオグリカン関連因子や老化防止関連因子の産生が、向上する。
【0031】
本発明においては、有機栽培キクニガナ抽出物とアカツメクサ抽出物及び/又はアマチャヅル抽出物を併用して用いることにより、老化防止作用が認められる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤は、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、水系、油系、乳化型等いずれの剤型でもよい。
【0034】
本発明の皮膚老化防止剤は定法により調製することができる。
【0035】
本発明の皮膚老化防止剤は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0037】
まず、実施例等に用いる植物抽出物の調製方法を示す。
【0038】
[有機栽培キクニガナ抽出物]
(1)栽培から収穫
北海道増毛町湯の沢の有機JAS認定圃場にて、キクニガナの栽培を行った。9月中旬、定植の1週間前に、有機栽培用鶏糞、有機栽培用米糠、有機栽培用石灰、有機栽培用熔燐を施肥し、圃場を整備した。定植は1年育苗した根を株間30cm、畝間50cmとなるように行った。5月上旬、及び7月上旬に、有機栽培用鶏糞、有機栽培用米糠を追肥した。また、適宜雑草を除去し、乾燥状態に応じ潅水を行った。定植後約1年となる9月下旬の晴天の日に、根を傷つけないよう掘り上げ、根の部分を水洗し、屋外で風乾した。ある程度乾燥したところで、凍結乾燥を行い、水分を除去した状態で保管した。
(2)有機栽培キクニガナ抽出物の調製
(1)で得られた有機栽培キクニガナ根をミルミキサーで粉砕した。50容量%エタノール水溶液に浸漬後、溶媒を留去し、50容量%の1,3-ブチレングリコール水溶液にエキス純分として1質量%となるように添加することにより、有機栽培キクニガナ抽出物を調製した。
【0039】
[キクニガナ抽出物1]
市販されているヨーロッパ産乾燥キクニガナ根(非有機栽培)を、50容量エタノール水溶液に浸漬後、溶媒を留去した。等質量のデキストリンで倍散したものをキクニガナ抽出物1とした。
【0040】
[キクニガナ抽出物2]
市販されているヨーロッパ産乾燥キクニガナ根(非有機栽培)を、50容量エタノール水溶液に浸漬後、溶媒を留去した。エキス分濃度が5.5%となるよう精製水に溶解したものをキクニガナ抽出物2とした。
【0041】
[アカツメクサ抽出物]
乾燥したアカツメクサの花を50容量%エタノール水溶液に浸漬後、溶媒を留去し、50容量%の1,3-ブチレングリコール水溶液にエキス純分として0.6質量%となるように添加することにより、アカツメクサ抽出物を調製した。
【0042】
[アマチャヅル抽出物]
乾燥したアマチャヅルの葉を精製水に浸漬後、溶媒を留去し、30容量%の1,3-ブチレングリコール水溶液にエキス純分として0.5質量%となるように添加することにより、アマチャヅル抽出物を調製した。
【0043】
[ヒト表皮角化細胞を用いた試験]
ヒト表皮角化細胞を3×105細胞/ウェルの細胞密度にて6ウェルプレートに播種し、HuMedia-KG2培地中で一晩培養した。各植物抽出物を所定量添加・溶解した新鮮培地、または抽出物を添加しない新鮮培地(ブランク)で、培地交換を行い、さらに24時間培養した。その後採取した細胞から、市販のRNA抽出キットを使用して全RNAを抽出し、cDNA合成後に下記のプライマーを使用して、サイバーグリーン法によるリアルタイムPCRにより発現レベルを定量化した。GAPDHは内部標準として使用した。発現量は、ブランクの発現量を1とした場合の相対値で示した。
【0044】
[ヒト真皮線維芽細胞を用いた試験]
ヒト真皮線維芽細胞を6×105個/ウェルとなるように6ウェルプレートに播種し、0.5%FBSを含むDMEM培地にて一晩培養した。各植物抽出物を所定量添加した培地に交換し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。採取した細胞から、市販のRNA抽出キット(Quick Gene RNA Cultured Cell HC Kit S)を使用してRNAを抽出し、cDNA合成後に下記のプライマーを使用してサイバーグリーン法によるリアルタイムPCRにより遺伝子発現を確認した。なお、内部標準としてGAPDHを使用した。mRNA発現量は、各植物抽出物無添加の場合の発現量を1とした相対値で示した。
【0045】
使用したプライマー配列を表1に示す。
【0046】
【0047】
有機栽培キクニガナ抽出物の有効性を、通常栽培のキクニガナ抽出物と比較した。ヒト表皮角化細胞を用いた試験方法により、エキス純分で50μg/mLとなるよう各抽出物を添加して試験を行い、基底膜に存在するプロテオグリカンの一種である、HSPG2(パールカン)の発現量を比較した。その結果、表2、
図1に示す通り、本発明の有機栽培キクニガナ抽出物は、市販のキクニガナ根を用いたキクニガナ抽出物1、2と比較して、有意に高いHSPG2発現量の増加が認められた。
【0048】
【0049】
有機栽培キクニガナ抽出物のプロテオグリカン産生に対する有効性を、ヒト表皮角化細胞を用いた試験により評価した。その結果、表3に示す通り、有機栽培キクニガナ抽出物を添加することにより、ヒト表皮角化細胞におけるプロテオグリカンの産生に関与する因子の発現が高まっていた。
【0050】
【0051】
有機栽培キクニガナ抽出物のプロテオグリカン産生に対する有効性を、ヒト真皮線維芽細胞を用いた試験により評価した。その結果、表4に示す通り、有機栽培キクニガナ抽出物を添加することにより、ヒト真皮線維芽細胞におけるプロテオグリカンの産生に関与する因子の発現が高まっていた。
【0052】
【0053】
有機栽培キクニガナ抽出物の角化細胞における老化防止に対する有効性を、ヒト表皮角化細胞を用いた試験により評価した。その結果、表5に示す通り、有機栽培キクニガナ抽出物を添加することにより、ヒト表皮角化細胞正常化に関与する因子の発現が高まっていた。
【0054】
【0055】
有機栽培キクニガナ抽出物と、アカツメクサ抽出物、アマチャヅル抽出物を併用することによる老化防止効果を、ヒト表皮角化細胞を用いた試験により評価した。実施例、比較例は、各抽出物のエキス純分が表6の示す量となるよう添加した。結果を表7~9に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
表7に示した通り、有機栽培キクニガナ抽出物とアカツメクサ抽出物を併用して用いることにより、プロテオグリカン関連因子をはじめとする老化防止関連因子の発現が相乗的に向上した。
【0059】
【0060】
表8に示した通り、有機栽培キクニガナ抽出物とアマチャヅル抽出物を併用して用いることにより、表皮角化細胞正常化効果を有するカリクレイン5の発現が相乗的に向上した。
【0061】
【0062】
表9に示した通り、有機栽培キクニガナ抽出物とアカツメクサ抽出物とアマチャヅル抽出物の3成分を併用して用いることにより、プロテオグリカン関連因子をはじめとする老化防止関連因子の発現が相乗的に向上した。
【0063】
[実施例4]乳液
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)メチルフェニルポリシロキサン 4.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)モノステアリン酸ポリオキシエチレン
ソルビタン(20E.O.) 1.3
(6)モノステアリン酸ソルビタン 1.0
(7)グリセリン 4.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)精製水 100とする残部
(11)アルギニン(1質量%水溶液) 20.0
(12)有機栽培キクニガナ抽出物 0.5
(13)アカツメクサ抽出物 0.5
(14)アマチャヅル抽出物 0.5
製法:(1)~(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)~(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。冷却後40℃にて、(11)~(14)を順次加え、均一に混合する。
【0064】
[実施例5]化粧水
(1)エタノール 15.0(質量%)
(2)ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 0.3
(3)香料 0.1
(4)精製水 100とする残部
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.1
(7)グリセリン 1.0
(8)ヒドロキシエチルセルロース 0.1
(9)有機栽培キクニガナ抽出物 0.2
(10)アカツメクサ抽出物 0.2
(11)アマチャヅル抽出物 0.2
製法:(1)に(2)および(3)を溶解する。さらに(4)~(11)を順次添加した後、十分に攪拌し、均一に混合する。
【0065】
[実施例6]クリーム
(1)スクワラン 10.0(質量%)
(2)ステアリン酸 2.0
(3)水素添加パーム核油 0.5
(4)水素添加大豆リン脂質 0.1
(5)セタノール 3.6
(6)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(7)グリセリン 10.0
(8)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(9)アルギニン(20質量%水溶液) 15.0
(10)精製水 100とする残部
(11)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 15.0
(12)有機栽培キクニガナ抽出物 0.3
(13)アカツメクサ抽出物 0.4
(14)アマチャヅル抽出物 0.3
製法:(1)~(6)の油相成分を80℃にて加熱溶解する。一方(7)~(10)の水相成分を80℃にて加熱溶解する。これに前記油相成分を攪拌しながら加え、ホモジナイザーにより均一に乳化する。(11)を添加して攪拌後、冷却し40℃にて(12)~(14)を加え、均一に混合する。
【0066】
[実施例7]美容液
(1)精製水 100とする残部(質量%)
(2)グリセリン 10.0
(3)ショ糖脂肪酸エステル 1.3
(4)カルボキシビニルポリマー(1質量%水溶液) 17.5
(5)アルギン酸ナトリウム(1質量%水溶液) 15.0
(6)モノラウリン酸ポリグリセリル 1.0
(7)マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 3.0
(8)N-ラウロイル-L-グルタミン酸
ジ(フィトステリル-2-オクチルドデシル) 2.0
(9)硬化パーム油 2.0
(10)スクワラン(オリーブ由来) 1.0
(11)ベヘニルアルコール 0.75
(12)ミツロウ 1.0
(13)ホホバ油 1.0
(14)1,3-ブチレングリコール 10.0
(15)L-アルギニン(10質量%水溶液) 2.0
(16)有機栽培キクニガナ抽出物 0.6
(17)アカツメクサ抽出物 0.7
(18)アマチャヅル抽出物 0.6
製法:(1)~(6)の水相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。一方、(7)~(14)の油相成分を混合し、75℃にて加熱溶解する。次いで、上記水相成分に油相成分を添加して予備乳化を行った後、ホモミキサーにて均一に乳化する。冷却後50℃にて(15)を、40℃にて(16)~(18)を加え、均一に混合する。
【0067】
[実施例8]水性ジェル
(1)カルボキシビニルポリマー 0.5(質量%)
(2)精製水 100とする残部
(3)水酸化ナトリウム(10質量%水溶液) 0.5
(4)グリセリン 10.0
(5)1,3-ブチレングリコール 10.0
(6)エタノール 10.0
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(8)香料 0.1
(9)有機栽培キクニガナ抽出物 0.4
(10)アカツメクサ抽出物 0.5
(11)アマチャヅル抽出物 0.4
製法:(1)を(2)に加え、均一に攪拌した後、(3)を加える。均一に攪拌した後、(4)に予め溶解した(5)を加える。均一に攪拌した後、予め混合しておいた(6)~(11)を加え、均一に攪拌混合する。