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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】操作支援システム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
H04Q9/00 301Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020051868
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2020167676
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2019066423
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 繁年
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-196441(JP,A)
【文献】特表2016-511963(JP,A)
【文献】特開2000-305155(JP,A)
【文献】特開2011-197859(JP,A)
【文献】特表2011-504054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車のための操作支援システムであって、
前記無人搬送車に設けられ、手動および遠隔で操作可能な非常停止ボタンと、
前記非常停止ボタンの遠隔操作を行う遠隔操作ユニットと、
前記無人搬送車に設けられ、前記遠隔操作ユニットによる前記遠隔操作を検知する検知部、前記検知部で検知された前記遠隔操作に基づいて前記非常停止ボタンを作動させる作動部と、前記作動部の駆動制御を行う制御部を有する非常停止スイッチユニットとを備え、
前記遠隔操作ユニットによる前記非常停止ボタンの前記遠隔操作が、非常停止信号、または、人により認知可能な光もしくは音の少なくともいずれか2つを含んでいてこれらが多重化されるとともに、前記非常停止ボタンが遠隔操作されず作動しない場合には、前記遠隔操作に含まれる光または音のいずれかまたは双方が人により認知可能になっていることで、前記光または音のいずれかまたは双方を認知した第三者により前記非常停止ボタンが手動操作可能になっている
ことを特徴とする操作支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記遠隔操作ユニットが、前記非常停止信号を送信する送信部と、前記光による遠隔操作を行うためのレーザポインタ部とを有し、
前記非常停止スイッチユニットが、複数の前記無人搬送車の各々に設けられるとともに、前記送信部から送信された前記非常停止信号を受信する受信部と、前記レーザポインタ部から出射されたレーザ光を受光するレーザ受光部とを有している
ことを特徴とする操作支援システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記遠隔操作ユニットが、
前記非常停止信号を送信する送信部と、
前記送信部からの前記非常停止信号の送信後に、前記非常停止ボタンの動作状態を表す状態信号を前記非常停止スイッチユニットから受信する受信部とを備えた、
ことを特徴とする操作支援システム。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記非常停止スイッチユニットが、
前記非常停止ボタンの動作状態を表す状態信号を送信する送信部をさらに備えた、
ことを特徴とする操作支援システム。
【請求項5】
請求項において、
前記遠隔操作ユニットが、複数の前記非常停止スイッチユニットのそれぞれの前記非常停止ボタンに対して遠隔操作可能に設けられており、前記遠隔操作の際には、前記複数の前記非常停止スイッチユニットのうちのいずれかの前記非常停止スイッチユニットの前記非常停止ボタンが優先的に選択されている、
ことを特徴とする操作支援システム。
【請求項6】
請求項において、
優先的に選択された前記非常停止ボタンを有する前記無人搬送車は、前記遠隔操作時に非常停止し、優先的に選択されていない前記非常停止ボタンを有する残りの前記無人搬送車はソフト停止しまたは停止せずに走行状態を続行するようになっている、
ことを特徴とする操作支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作スイッチの操作支援をより確実に行える操作支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非常停止スイッチは、操作者が押し込み操作可能な押しボタン(操作スイッチ)と、押しボタンの押し込み操作によりスライド移動する操作軸と、操作軸の移動に応じて接断される接点とを備えている(特開2001-35302号公報の図1参照)。非常停止スイッチの操作時には、操作軸の移動により接点がOFF状態となることで装置の電気回路が遮断されて、装置が緊急停止するようになっている。
【0003】
従来の非常停止スイッチは、押しボタン操作の際に操作者が非常停止スイッチのすぐ近くにいる必要があり、非常停止スイッチから離れた場所からでは操作できなかった。そのため、非常停止スイッチから離れた場所からでも操作を行える操作支援機能付きの非常停止スイッチの要請があった。
【0004】
その一方、非常停止スイッチを単に遠隔操作できるように構成しただけでは、何らかの不具合により遠隔操作ができない状態になった場合に十分な操作支援が行えない事態が発生することが想定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、操作スイッチの操作支援をより確実に行える操作支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無人搬送車のための操作支援システムであって、無人搬送車に設けられ、手動および遠隔で操作可能な非常停止ボタンと、非常停止ボタンの遠隔操作を行う遠隔操作ユニットと、無人搬送車に設けられ、遠隔操作ユニットによる遠隔操作を検知する検知部、検知部で検知された遠隔操作に基づいて非常停止ボタンを作動させる作動部、および、作動部の駆動制御を行う制御部を有する非常停止スイッチユニットとを備えている。そして、遠隔操作ユニットによる非常停止ボタンの遠隔操作が、非常停止信号、または、人により認知可能な光もしくは音の少なくともいずれか2つを含んでいてこれらが多重化されるとともに、非常停止ボタンが遠隔操作されず作動しない場合には、遠隔操作に含まれる光または音のいずれかまたは双方が人により認知可能になっていることで、光または音のいずれかまたは双方を認知した第三者により非常停止ボタンが手動操作可能になっている。
【0007】
本発明によれば、遠隔操作ユニットにより非常停止ボタンが遠隔操作されると、非常停止スイッチユニットの検知部により遠隔操作が検知され、検知された遠隔操作に基づいて制御部の駆動制御により作動部が非常停止スイッチを作動させる。これにより、非常停止ボタンから離れた場所からでも非常停止ボタンを操作でき、非常停止ボタンの遠隔操作を行えるようになる。
【0008】
さらに、本発明によれば、遠隔操作ユニットによる遠隔操作が、非常停止信号、または、人により認知可能な光もしくは音の少なくともいずれか2つを含んでいてこれらが多重化されているので、これらのいずれかによる遠隔操作が機能しない場合であっても、残りのいずれかによる遠隔操作が可能であり、これにより、操作支援の確実性を向上できる。しかも、本発明によれば、遠隔操作に含まれる光または音のいずれかまたは双方が人により認知可能になっているので、非常停止ボタンが遠隔操作されずに作動しない場合には、光または音のいずれかまたは双方を認知した第三者非常停止ボタンを手動操作することが可能になって、操作支援をより確実に行えるようになる。また、この場合、人による操作支援が追加されることで、さらなる多重化が可能になる。
【0009】
本発明においては、遠隔操作ユニットが、非常停止信号を送信する送信部と、光による遠隔操作を行うためのレーザポインタ部とを有し、非常停止スイッチユニットが、複数の無人搬送車の各々に設けられるとともに、送信部から送信された非常停止信号を受信する受信部と、レーザポインタ部から出射されたレーザ光を受光するレーザ受光部とを有している
【0010】
本発明においては、遠隔操作ユニットが、非常停止信号を送信する送信部と、送信部からの非常停止信号の送信後に、非常停止ボタンの動作状態を表す状態信号を非常停止スイッチユニットから受信する受信部とを備えている。
【0011】
本発明においては、非常停止スイッチユニットが、非常停止ボタンの動作状態を表す状態信号を送信する送信部をさらに備えている。
【0012】
本発明においては、遠隔操作ユニットが、複数の非常停止スイッチユニットのそれぞれの非常停止ボタンに対して遠隔操作可能に設けられており、遠隔操作の際には、複数の非常停止スイッチユニットのうちのいずれかの非常停止スイッチユニットの非常停止ボタンが優先的に選択されている。
【0013】
本発明においては、優先的に選択された非常停止ボタンを有する無人搬送車は、遠隔操作時に非常停止し、優先的に選択されていない非常停止ボタンを有する残りの無人搬送車はソフト停止しまたは停止せずに走行状態を続行するようになっている
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、非常停止ボタンから離れた場所からでも非常停止ボタンを操作でき、非常停止ボタンの遠隔操作を行えるようになるばかりでなく、遠隔操作ユニットによる非常停止ボタンの遠隔操作が、非常停止信号、または、人により認知可能な光もしくは音の少なくともいずれか2つを含んでいてこれらが多重化されているので、これらのいずれかが機能しない場合であっても、残りのいずれかによる遠隔操作が可能であり、これにより、操作支援の確実性を向上できるとともに、遠隔操作に含まれる光または音のいずれかまたは双方が人により認知可能になっているので、非常停止ボタンが遠隔操作されずに作動しない場合には、光または音のいずれかまたは双方を認知した第三者非常停止ボタン手動操作できるようになって、操作支援をより確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施例による操作支援システムが適用される無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)を操作者とともに示す側面概略図である。
図2】前記操作支援システム(図1)の平面概略図である。
図3】前記操作支援システム(図1)を構成する携帯型無線端末の正面図である。
図4】前記操作支援システム(図1)を構成する非常停止スイッチユニットの縦断面概略構成図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
図5】前記操作支援システム(図1)を構成する非常停止スイッチユニットの縦断面概略構成図であって、非常停止スイッチの操作時(遠隔操作時/手動操作時)の状態を示している。
図6】前記操作支援システム(図1)の概略ブロック構成図である。
図7】前記操作支援システム(図1)の制御フローの一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2の実施例による操作支援システムの概略ブロック構成図である。
図9】前記操作支援システム(図8)のペアリング処理の一例を示すフローチャートである。
図10】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット2およびAGV1間の制御フローの一例を示すフローチャートである。
図11】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット2、2およびAGV2、3間の制御フローの一例を示すフローチャートである。
図12】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット2およびAGV1間の制御フローの他の例を示すフローチャートである。
図13】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット2、2およびAGV2、3間の制御フローの他の例を示すフローチャートである。
図14】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット1およびAGV2間の制御フローのさらに他の例を示すフローチャートである。
図15】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット2およびAGV2間の制御フローのさらに他の例を示すフローチャートである。
図16】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット2およびAGV3間の制御フローのさらに他の例を示すフローチャートである。
図17】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット2、2、2およびAGV1、2、3間において遠隔操作の優先的選択の一例を説明するための図である。
図18】前記操作支援システム(図8)において、携帯型無線端末、非常停止スイッチユニット2、2、2およびAGV1、2、3間において遠隔操作の優先的選択の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
〔第1の実施例〕
図1ないし図7は、本発明の第1の実施例による操作支援システムを説明するための図であって、図1図2は、本実施例による操作支援システムが適用される無人搬送車を操作者とともに示し、図3は操作者が着用する携帯型(ウェアラブル)無線端末を示し、図4図5は、操作支援システムにより操作支援される非常停止スイッチユニットを示し、図6は操作支援システムの概略ブロック構成を示し、図7は操作支援システムの制御フローを示している。なお、図4および図5は、図示の便宜上、ハッチングを省略して示している。
【0017】
図1および図2に示すように、この操作支援システム1は、AGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)10を備えている。AGV10は、たとえば工場や倉庫内の通路を決められたルートに沿って自動走行しており、商品等の搬送に用いられている。AGV10は、非常停止ボタン21を有する非常停止スイッチユニット2と、前方の障害物を検出するレーザスキャナ14とを有している。操作者Pの一方の手首には、携帯型無線端末4が装着されている。無線端末4は、図3に示すように、操作者Pがもう一方の指や手で操作可能な押しボタン40と、ディスプレイ(表示部)43と、作業者Pの手首の周りに巻回される左右一対のバンド45とを有しており、バンド45は、腕時計のバンドと同様に、一方のバンド45に複数の小穴45aが貫通形成され、他方のバンド45には、これらの小穴45aに挿入される、腕時計バンドのつく棒に相当する棒状部材(図示せず)が設けられている。なお、面ファスナやその他の係脱手段により双方のバンド45を係脱自在に構成するようにしてもよい。
【0018】
非常停止スイッチユニット2は、図4および図5に示すように、ケース(ハウジング)20と、ケース20の一端側に設けられ、ケース20に軸方向スライド可能に支持されるとともに、操作者Pが手動で押し込み操作(手動操作)するための押圧面21aを有する非常停止ボタン(操作スイッチ)21と、非常停止ボタン21の押圧面21aと逆側の裏面に連結され、ケース20の内部において軸方向に延びる操作軸22と、操作軸22の先端に取り付けられ、操作軸22とともに移動する可動接点23と、ケース20の内壁面に固定され、可動接点23に対向配置されるとともに、可動接点23に対して接離する固定接点24とを備えている。この例では、非常停止ボタン21は非常停止スイッチユニット2の一端側に配置され、接点は非常停止スイッチユニット2の他端側に配置されている。
【0019】
非常停止スイッチユニット2は、さらに、ケース20の内部に設けられ、非常停止ボタン21を作動させるための電磁ソレノイド(作動部)3と、ケース20の外壁面に取り付けられ、無線端末4からの無線信号を受信する受信部(検知部)32と、受信部32で受信(検知)された無線信号に基づいてソレノイド3の駆動を制御する制御回路33とを備えている。ソレノイド3は、接点と非常停止ボタン21の間に配置されている。また、ソレノイド3は、ソレノイド本体(電磁コイル部)30を有しており、ソレノイド本体30は、操作軸22を軸方向スライド可能に保持している。ソレノイド本体30は、操作軸22を軸方向に移動させるように作用する。制御回路33は、リード線34によりソレノイド3に接続されている。
【0020】
操作軸22は、その略中央において外周側に張り出すフランジ部22aを有している。一方、ケース20の内壁面には、内周側に張り出す張出し部20aが設けられている。張出し部20aは、軸方向の所定の間隔を隔ててフランジ部22aに対向配置されている。フランジ部22aおよび張出し部20a間には、コイルばね25が圧縮状態で配設されている。コイルばね25の一端は、フランジ部22aに当接して係止されることで軸部22の移動とともに移動するようになっている。コイルばね25の他端は、張出し部20aに当接して係止されることでケース20の側に係止されている。コイルばね25は、フランジ部22aおよび張出し部20aに対して弾性反発力を作用させている。この弾性反発力により、可動接点23は固定接点24から離れる方向(接点開離方向(図4右側)すなわち非常停止ボタン21のON状態からOFF状態の側)に付勢されている。
【0021】
図4に示す非常停止スイッチ2の非操作時(操作前)においては、コイルばね25は張出し部20aおよびフランジ部22a間で最大圧縮された状態におかれており、コイルばね25の弾性反発力は最大であって、最大の弾性エネルギーを保有している。これに対して、図5に示す非常停止スイッチ2の操作時においては、コイルばね25は図4の状態から軸方向に伸びていて、コイルばね25の弾性反発力は減少しており、コイルばね25が保有する弾性エネルギーも減少している。
【0022】
操作軸22は、非常停止ボタン21の近傍において外周側に突出する突部22bを有している。突部22bは縦断面が台形形状をしており、一対の傾斜面を有している。一方、ケース20の内部には、一対の係合部材26が設けられている。各係合部材26は、突部22bの各傾斜面と係合し得る一対の傾斜面を有している。各係合部材26は、ケース20の内部に配設されたばね27の弾性反発力により、対応する各突部22bの側に付勢されている。図4に示す非操作時の状態では、突部22bの図示右側の傾斜面に係合部材26の図示左側の傾斜面が係合しており、図5に示す操作時の状態では、突部22bの図示左側の傾斜面に係合部材26の図示右側の傾斜面が係合している。
【0023】
ケース20において、ソレノイド3、コイルばね25、操作軸22の突部22bおよび係合部材26が収容された部分は操作部20Aに相当しており、可動接点23および固定接点24からなる接点が収容された部分は接点部(コンタクト部)20Bに相当している。操作部20Aの一端側に非常停止ボタン21が配置され、他端側に接点部20Bが配置されている。
【0024】
次に、操作支援システム1の概略ブロック構成について図6を用いて説明する。
同図に示すように、操作支援システム1は、AGVコントローラ10Cを有している。AGVコントローラ10Cには、AGV10に対して各種設定やモニタリング等を行うための入出力部11および送受信部12と、警告表示等を行う表示部13と、走行用モータ15を駆動制御するモータドライバ16と、レーザスキャナ14と、非常停止スイッチユニット2とが接続されている。非常停止スイッチユニット2に対しては、無線端末4が送受信可能に設けられている。
【0025】
無線端末4は、図6に示すように、各種制御を行うための制御回路44を有している。制御回路44には、無線端末4を操作して非常停止スイッチユニット2を遠隔操作するための押しボタン40と、たとえば非常停止スイッチユニット2の状態に応じて異なる色を表示する表示部43とが接続されている。また、制御回路44には、押しボタン40の押込み時に非常停止信号を送信する送信部41と、押しボタン40の押込み時に警告音や警告メッセージ等の音を発報するスピーカー41と、押しボタン40の押込み時に光(可視光)を発する(つまり発光する)発光部41と、非常停止スイッチユニット2からの信号を受信する受信部42とが接続されている。送信部41、スピーカー41および発光部41は多重化(冗長化)されており、押しボタン40の押込み時には、送信部41から非常停止信号が送信されると同時に、スピーカー41から音が発報され、発光部41から光が発せられるようになっている。
【0026】
非常停止スイッチユニット2の制御回路33には、図6に示すように、非常停止ボタン21と、無線端末4の送信部41から送信された非常停止信号を無線で受信する受信部32図4図5中の受信部32に対応)と、無線端末4のスピーカー41から発報された警告音や警告メッセージ等の音を受音するマイク32と、無線端末4の発光部41から発せられた光を受光する受光部32と、ソレノイド3と、非常停止スイッチユニット2の状態を表す状態信号等を送信する送信部28と、警告表示等を行う表示部29と、警告音や警告メッセージ等の音を発報するスピーカー29とが接続されている(図1図2参照)。受信部32、マイク32および受光部32にてそれぞれの処理を行う各処理回路は多重化(冗長化)されており、論理和(OR)回路で接続されている。よって、これらの処理回路のいずれか一つ以上で処理が行われると、その出力信号が制御回路33に入力されて、非常停止スイッチユニット2が遠隔操作されるようになっている。
【0027】
送信部41および受信部32間の通信については、たとえば、Wi-Fi(登録商標)通信、BLUETOOTH(登録商標)通信、ZIGBEE(登録商標)通信、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信、WiMAX(登録商標)通信、赤外線通信等が用いられる。また、マイク32の処理回路においては、たとえば、受音した音の周波数分析を行うなどしてスピーカー41からの音を特定して処理を行うようにし、受光部32の処理回路においては、たとえば、発光部41から発せられた所定輝度以上の光をフォトダイオード等で受光して処理を行うようにしたり、あるいは周波数分析を行うようにしたりしてもよい。
【0028】
次に、本実施例による操作支援システム1の制御フローについて、図7のフローチャートを用いて説明する。
無線端末のステップT1において、遠隔操作の発信/発報/発光がなされる、すなわち、操作者Pが無線端末4の押しボタン40を押込み操作することにより、送信部41から非常停止信号が無線で送信され、スピーカー41から警告音や警告メッセージ(たとえば「非常停止ボタンが遠隔操作されました」等)の音が発報され、発光部41から光(可視光)が発光される。このとき、送信部41、スピーカー41および発光部41は多重化(冗長化)されているので、押しボタン40の押込み時には、送信部41からの非常停止信号の送信と同時に、スピーカー41からの警告音や警告メッセージ等の音の発報、および発光部41からの光の発光が行われるようになっている。ステップT1での処理後、ステップT2に移行して、無線端末4の表示部43を赤色で点灯表示させる。
【0029】
無線端末のステップT1において、送信部41からの非常停止信号の送信、スピーカー41からの警告音や警告メッセージの音の発報、および発光部41からの光の発光が行われると、非常停止スイッチユニットのステップS1において、これらの非常停止信号、音、光がそれぞれ受信部32、マイク32、受光部32で受信/受音/受光される。このとき、受信部32、マイク32および受光部32にてそれぞれの処理を行う各処理回路は多重化(冗長化)されており、論理和(OR)回路で接続されているので、これらの処理回路のいずれか一つ以上で処理が行われる、すなわち、受信、受音または受光の少なくとも一つがなされると、ステップS2に移行する。
【0030】
ステップS2では、制御回路33からソレノイド3のソレノイド本体30に電流が供給され、これにより、図5に示すように、操作軸22が引き込まれて図示右側に移動し、非常停止ボタン21が押し込まれる。このとき、ステップS3に示すように、可動接点23が固定接点24から開離して接点がオフとなり、非常停止ボタン21が押し込まれた状態でロックされる。このような遠隔操作時には、操作者Pが非常停止ボタン21を手動で押し込み操作した場合と全く同じ状態におかれている。ステップS3で接点がオフになると、AGVコントローラのステップC1において、走行用モータが停止して、AGV10の走行が停止する。
【0031】
その一方、無線端末4で遠隔操作の発信/発報/発光がなされても、通信不良等を含む何らかの不具合により、非常停止スイッチユニットのステップS2に移行せず、非常停止ボタン21が押し込まれない場合には、スピーカー41から発報された警告音/警告メッセージの音や、発光部41から発光された光が人(操作者および第三者を含む)により認知できるものなので、これらのいずれかまたは双方を認知した人が非常停止スイッチユニット2の非常停止ボタン21を手動で押し込むことで手動操作を行うことが可能である。このときの非常停止スイッチユニット2の作動の仕方は、遠隔操作の場合と同様である。このような手動操作により、非常停止ボタン21が押し込まれると(ステップS2)、遠隔操作の場合と同様に、ステップS3に移行して接点がオフとなり、AGV10の走行が停止する。また、ステップS2において、非常停止スイッチユニット2の内部で接点溶着や異物混入等の不具合により、非常停止ボタン21が押し込まれない場合においては、非常停止スイッチユニット2のスピーカー29から発報された警告音/警告メッセージの音や、表示部29による警告表示を認知した人が非常停止スイッチユニット2の非常停止ボタン21を手動で押し込むことで手動操作を行うことが可能である。また、この場合、送信部28から別途警告信号を送信するようにしてもよい。
【0032】
次に、ステップS4では、非常停止スイッチユニット2が停止状態にあることを表す停止状態信号が警報信号として、非常停止スイッチユニット2の送信部28から送信される。この停止状態信号は、無線端末のステップT3で受信されるとともに、AGVコントローラのステップC2で受信される。そして、非常停止スイッチユニットのステップS5において、警告音や警告メッセージ(たとえば「緊急停止します」等)による警告報知を行う。このとき、無線端末のステップT4では、表示部43を赤色で点滅表示させ、警告音や警告メッセージ(たとえば「非常停止スイッチが押されました」等)による警告報知を行う。AGVコントローラのステップC3においても同様の警告報知を行う。
【0033】
次に、非常停止スイッチユニットのステップS6では、操作者Pまたは第三者が非常停止ボタン21をたとえば引っ張って元の位置に戻すと、可動接点23が固定接点24に接触して接点がオンの状態になるとともに、非常停止ボタン21のロック状態が解除される(図4参照)。次に、ステップS7では、非常停止スイッチユニット2が解除状態にあることを表す解除状態信号が解除信号として、非常停止スイッチユニット2の送信部28から送信される。この解除状態信号は、無線端末のステップT5で受信されるとともに、AGVコントローラのステップC4で受信される。そして、非常停止スイッチユニットのステップS8において、音やメッセージ(たとえば「緊急停止状態を解除します」等)による警告報知解除を行う。このとき、無線端末のステップT6では、表示部43を緑色で点灯表示させ、AGVコントローラのステップC5では、同様に音やメッセージ(たとえば「緊急停止状態を解除します」等)による警告報知解除を行う。
【0034】
このように本実施例によれば、非常停止スイッチユニットから離れた場所からでも非常停止ボタンを操作でき、非常停止スイッチユニットの遠隔操作を行えるようになるばかりでなく、無線端末による遠隔操作が複数の遠隔操作を含んでいてこれらが多重化されているので、複数の遠隔操作のいずれかが機能しない場合であっても、残りのいずれかの遠隔操作による操作が可能であり、これにより、操作支援の確実性を向上できる。しかも、本実施例によれば、遠隔操作の少なくとも一つが人に認知可能になっているので、無線操作端末による遠隔操作が行われたことが人(操作者以外の第三者も含む)によって認知され、これにより、遠隔操作を認知した人が非常停止ボタンを操作することが可能になって、操作支援をより確実に行えるようになる。また、この場合、人による操作支援が追加されることで、さらなる多重化が可能になる。
【0035】
〔第2の実施例〕
図8ないし図16は、本発明の第2の実施例による操作支援システムを説明するための図であって、図8は操作支援システムの概略ブロック構成を示し、図9は操作支援システムにおいてペアリング処理のフローの一例を示し、図10ないし図16は操作支援システムの制御フローの例を示し、図17および図18は操作支援システムにおいて遠隔操作の優先的選択の例を示している。なお、各図中、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。また、本実施例においても、前記第1の実施例の図1ないし図5に示したものと同様の無人搬送車、携帯型(ウェアラブル)無線端末および非常停止スイッチユニットが用いられる。
【0036】
図8に示すように、無線端末4は、各種制御を行うための制御回路44を有している。制御回路44には、前記第1の実施例と同様に、無線端末4を操作して非常停止スイッチユニット2を遠隔操作するための押しボタン40と、押しボタン40の押込み時に非常停止信号を送信する送信部41と、押しボタン40の押込み時に警告音や警告メッセージ等の音を発報するスピーカー41と、押しボタン40の押込み時に光(可視光)を発する(つまり発光する)発光部41と、非常停止スイッチユニット2からの信号を受信する受信部42と、非常停止スイッチユニット2の状態に応じて異なる色を表示する表示部43とが接続されている。送信部41、スピーカー41および発光部41は多重化(冗長化)されており、押しボタン40の押込み時には、送信部41から非常停止信号が送信されると同時に、スピーカー41から音が発報され、発光部41から光が発せられるようになっている。
【0037】
制御回路44には、さらに、無縁端末4のIDデータを記憶するメモリ41と、ペアリング処理を行うためのペアリング設定ボタン41と、レーザ光を出射するレーザポインタ部41とが接続されている。ここで、「ペアリング処理」とは、複数の機器間、この例では、無線端末4および非常停止スイッチユニット2間の無線通信において1対1(または1対n)の対応付けがなされた接続を確立するための処理をいう。
【0038】
図8に示すように、操作支援システム1のAGVコントローラ10Cには、非常停止スイッチユニット2が接続されている。非常停止スイッチユニット2の制御回路33には、非常停止ボタン21と、無線端末4の送信部41から送信された非常停止信号や、ペアリング処理時に無線端末4から送信されたIDデータを無線で受信する受信部32と、無線端末4のスピーカー41から発報された警告音や警告メッセージ等の音を受音するマイク32と、無線端末4の発光部41から発せられた光を受光する受光部32と、ソレノイド3と、非常停止スイッチユニット2の状態を表す状態信号等を送信する送信部28と、警告表示等を行う表示部29と、警告音や警告メッセージ等の音を発報するスピーカー29とが接続されている。受信部32、マイク32および受光部32にてそれぞれの処理を行う各処理回路は多重化(冗長化)されており、論理和(OR)回路で接続されている。よって、これらの処理回路のいずれか一つ以上で処理が行われると、その出力信号が制御回路33に入力されて、非常停止スイッチユニット2が遠隔操作されるようになっている。
【0039】
制御回路33には、さらに、非常停止スイッチユニット2のIDデータを記憶するメモリ32と、無縁端末4のレーザポインタ部41から照射されたレーザ光を受光するレーザ受光部32とが接続されている。
【0040】
送信部41および受信部32間の通信については、たとえば、Wi-Fi(登録商標)通信、BLUETOOTH(登録商標)通信、ZIGBEE(登録商標)通信、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信、WiMAX(登録商標)通信、赤外線通信等が用いられる。ペアリング処理時の通信についても同様である。また、マイク32の処理回路においては、たとえば、受音した音の周波数分析を行うなどしてスピーカー41からの音を特定して処理を行うようにし、受光部32の処理回路においては、たとえば、発光部41から発せられた所定輝度以上の光をフォトダイオード等で受光して処理を行うようにしたり、あるいは周波数分析を行うようにしたりしてもよい。
【0041】
次に、本実施例による操作支援システム1において、無線端末4および非常停止スイッチユニット2間のペアリング処理時のフローの一例について、図9のフローチャートを用いて説明する。
まず、図9中の無線端末4のステップU1において、操作者Pにより無線端末4のペアリング設定ボタン41がONされる。すると、ステップU2において、無線端末4のメモリ41に記憶されていた無線端末4のIDデータが送信される。非常停止スイッチユニット2のステップV1においては、ステップU2で送信された無線端末4のIDデータが受信部32で受信され、メモリ32に記憶される。
【0042】
次に、ステップV2において、非常停止スイッチユニット2のメモリ32に記憶されていた非常停止スイッチユニット2のIDデータが送信される。無線端末4のステップU3においては、ステップV2で送信された非常停止スイッチユニット2のIDデータが受信部42で受信され、メモリ41に記憶される。
このようにして、無線端末4および非常停止スイッチユニット2間のペアリング処理が完了する。
【0043】
次に、本実施例による操作支援システム1の制御フローについて、図17および図18を参照しつつ、図10ないし図16のフローチャートを用いて説明する。ここでは、3種類の制御フロー1、2、3を例にとって説明する。なお、図10ないし図16中のAGV1、2、3は、図17図18中のAGV1、2、3にそれぞれ対応している。また、図10ないし図16中の非常停止スイッチユニット2、2、2は、図17図18中のAGV1、2、3に取り付けられた各非常停止スイッチユニット2、2、2にそれぞれ対応している。
【0044】
<制御フロー1>
図10および図11は制御フロー1の例を示しており、図10は無線端末4および非常停止スイッチユニット2間の制御フローを、図11は無線端末4および非常停止スイッチユニット2、2間の制御フローをそれぞれ示している。
【0045】
図10および図11中、無線端末4のステップTAおよび非常停止スイッチユニット2、2、2のステップSAにおいて、上述したペアリング処理がなされる。すなわち、無線端末4および各非常停止スイッチユニット2、2、2間で送受信を行うことにより(図17中の実線Pa参照)、無線端末4および各非常停止スイッチユニット2、2、2間で無線通信の1対1の対応付けがそれぞれ行われる(この場合には、全体として1対3の対応付けが行われる)。なお、ペアリング処理後の無線端末4および非常停止スイッチユニット2、2、2間の通信においては、送信側は、送信側のIDデータと受信側のIDデータを対にしたペアリングデータを通信データのヘッダまたはフッタに付けて送信を行うようにし、これに対して、受信側は、受信された通信データのヘッダまたはフッタに付されたペアリングデータがメモリに格納されているIDデータと一致する場合に限って受信するようにする(他の制御フロー2、3においても同様)。
【0046】
次に、図10図11中の無線端末4のステップTBにおいて、操作者Pにより無線端末4のレーザポインタ部41がONされ、レーザポインタ部41からレーザ光が出射される。そして、レーザポインタ部41がAGV1の非常停止スイッチユニット2のレーザ光受光部32に向けられることにより、レーザポインタ部41から出射されたレーザ光Lが非常停止スイッチユニット2のレーザ受光部32に受光される(図10中の非常停止スイッチユニット2のステップSB、および図17中の一点鎖線L参照)。これにより、非常停止スイッチユニット2の制御回路33は、AGV1が選択されたと判断する。その一方、レーザポインタ部41から出射されたレーザ光Lは非常停止スイッチユニット2、2のレーザ受光部32では受光されない。すなわち、この場合には、レーザポインタ部41からのレーザ光Lにより、AGV1、2、3(の各非常停止スイッチユニット2、2、2)のうちからAGV1(の非常停止スイッチユニット2)が優先的に選択されたことになる。
【0047】
次に、図10図11中の無線端末4のステップTCにおいて、遠隔操作の発信/発報/発光がなされる、すなわち、操作者Pが無線端末4の押しボタン40を押込み操作することにより、送信部41から非常停止信号Ssが無線で送信され(図17参照)、スピーカー41から警告音や警告メッセージ(たとえば「非常停止ボタンが遠隔操作されました」等)の音が発報され、発光部41から光(可視光)が発光される。このとき、送信部41、スピーカー41および発光部41は多重化(冗長化)されているので、押しボタン40の押込み時には、送信部41からの非常停止信号の送信と同時に、スピーカー41からの警告音や警告メッセージ等の音の発報、および発光部41からの光の発光が行われるようになっている。
【0048】
すると、図10図11中の各非常停止スイッチユニット2、2、2のステップSCにおいて、無線端末4の送信部41からの非常停止信号、スピーカー41からの警告音や警告メッセージの音、および発光部41からの光が各非常停止スイッチユニット2、2、2の受信部32、マイク32、受光部32で受信/受音/受光される。このとき、受信部32、マイク32および受光部32にてそれぞれの処理を行う各処理回路は多重化(冗長化)されており、論理和(OR)回路で接続されているので、これらの処理回路のいずれか一つ以上で処理が行われる、すなわち、受信、受音または受光の少なくとも一つがなされると、各制御フローは次の処理に移行する。
【0049】
図10の制御フローでは、ステップSCでの処理後、ステップSDに移行する。ステップSDでは、制御回路33からソレノイド3に電流が供給されることにより、非常停止ボタン21が押し込まれる。これにより、AGV1のステップCAに示すように、AGV1への電力供給が遮断されてAGV1が非常停止する(図17参照)。一方、図11の制御フローでは、AGV2、3のステップCBに示すように、AGV2、3がソフト停止する(図17参照)。ここで、「ソフト停止」とは、AGV2、3への電力供給が維持されたままの状態で、制御プログラムやシーケンサー、論理回路等によってAGV2、3が減速しながら停止することをいう。
【0050】
このように本実施例によれば、前記第1の実施例と同様に、非常停止スイッチユニットから離れた場所からでも非常停止ボタンを操作でき、非常停止スイッチユニットの遠隔操作を行えるようになるばかりでなく、無線端末による遠隔操作が複数の遠隔操作を含んでいてこれらが多重化されているので、複数の遠隔操作のいずれかが機能しない場合であっても、残りのいずれかの遠隔操作による操作が可能であり、これにより、操作支援の確実性を向上できる。さらに、前記第1の実施例と同様に、遠隔操作の少なくとも一つが人に認知可能になっており、無線端末による遠隔操作が行われたことが人(操作者以外の第三者も含む)によって認知されるので、遠隔操作を認知した人が非常停止ボタンを操作することが可能になって、操作支援をより確実に行えるようになる。また、この場合、人による操作支援が追加されることで、さらなる多重化が可能になる。
【0051】
しかも、本実施例によれば、無線端末4のレーザポインタ部41により選択された(すなわち狙い撃ちされた)非常停止スイッチユニット2に対しては、非常停止ボタン21が押し込まれることで優先的に非常停止処理を行うことができる。なお、レーザポインタ部41により選択されなかった非常停止スイッチユニット2、2については、非常停止ボタン21が押し込まれずにソフト停止処理がなされる。
【0052】
<制御フロー2>
図12および図13は制御フロー2の例を示しており、図12は無線端末4および非常停止スイッチユニット2間の制御フローを、図13は無線端末4および非常停止スイッチユニット2、2間の制御フローをそれぞれ示している。
【0053】
図12および図13中、無線端末4のステップTAおよび非常停止スイッチユニット2、2、2のステップSAにおいては、上述したペアリング処理がなされる。すなわち、無線端末4および各非常停止スイッチユニット2、2、2間で送受信を行うことにより(図17中の実線Pa参照)、無線端末4および各非常停止スイッチユニット2、2、2間で無線通信の1対1の対応付けがそれぞれ行われる(この場合には、全体として1対3の対応付けが行われる)。
【0054】
次に、図12中の非常停止スイッチユニット2のステップSB’において、たとえば「『1号車』危ない!」等の操作者Pの声が非常停止スイッチユニット2のマイク32が受音される(図17中の一点鎖線L参照)。このとき、非常停止スイッチユニット2の制御回路33は、操作者の声の中に『1号車』の文言が含まれていることでAGV1が選択されたと判断する。その一方、操作者の声は非常停止スイッチユニット2、2のマイク32でも受音されるが、この場合、操作者の声の中に『2号車』または『3号車』の文言が含まれていないので、非常停止スイッチユニット2、2の各制御回路33は、AGV2、3が選択されたとは判断しない。その結果、操作者Pの声により、AGV1、2、3(の各非常停止スイッチユニット2、2、2)のうちからAGV1(の非常停止スイッチユニット2)が優先的に選択されたことになる。
【0055】
次に、図12図13中の無線端末4のステップTCにおいて、遠隔操作の発信/発報/発光がなされる、すなわち、操作者Pが無線端末4の押しボタン40を押込み操作することにより、送信部41から非常停止信号Ssが無線で送信され(図17参照)、スピーカー41から警告音や警告メッセージ(たとえば「非常停止ボタンが遠隔操作されました」等)の音が発報され、発光部41から光(可視光)が発光される。このとき、送信部41、スピーカー41および発光部41は多重化(冗長化)されているので、押しボタン40の押込み時には、送信部41からの非常停止信号の送信と同時に、スピーカー41からの警告音や警告メッセージ等の音の発報、および発光部41からの光の発光が行われる。
【0056】
すると、図12図13中の各非常停止スイッチユニット2、2、2のステップSCにおいて、無線端末4の送信部41からの非常停止信号、スピーカー41からの警告音や警告メッセージの音、および発光部41からの光が各非常停止スイッチユニット2、2、2の受信部32、マイク32、受光部32で受信/受音/受光される。このとき、受信部32、マイク32および受光部32にてそれぞれの処理を行う各処理回路は多重化(冗長化)されており、論理和(OR)回路で接続されているので、これらの処理回路のいずれか一つ以上で処理が行われる、すなわち、受信、受音または受光の少なくとも一つがなされると、各制御フローは次の処理に移行する。
【0057】
図12の制御フローでは、ステップSCでの処理後、ステップSDに移行する。ステップSDでは、制御回路33からソレノイド3に電流が供給されることにより、非常停止ボタン21が押し込まれる。これにより、AGV1のステップCAに示すように、AGV1への電力供給が遮断されてAGV1が非常停止する(図17参照)。一方、図13の制御フローでは、AGV2、3のステップCBに示すように、AGV2、3が減速しながらソフト停止する(図17参照)。
【0058】
このように本実施例によれば、前記第1の実施例と同様に、非常停止スイッチユニットから離れた場所からでも非常停止ボタンを操作でき、非常停止スイッチユニットの遠隔操作を行えるようになるばかりでなく、無線端末による遠隔操作が複数の遠隔操作を含んでいてこれらが多重化されているので、複数の遠隔操作のいずれかが機能しない場合であっても、残りのいずれかの遠隔操作による操作が可能であり、これにより、操作支援の確実性を向上できる。さらに、前記第1の実施例と同様に、遠隔操作の少なくとも一つが人に認知可能になっており、無線端末による遠隔操作が行われたことが人(操作者以外の第三者も含む)によって認知されるので、遠隔操作を認知した人が非常停止ボタンを操作することが可能になって、操作支援をより確実に行えるようになる。また、この場合、人による操作支援が追加されることで、さらなる多重化が可能になる。
【0059】
しかも、本実施例によれば、操作者Pの声により選択された非常停止スイッチユニット2に対しては、非常停止ボタン21が押し込まれることで優先的に非常停止処理を行うことができる。なお、操作者Pの声により選択されなかった非常停止スイッチユニット2、2については、非常停止ボタン21が押し込まれずにソフト停止処理がなされる。
【0060】
<制御フロー3>
図14ないし図16は制御フロー3の例を示しており、図14は無線端末4および非常停止スイッチユニット2間の制御フローを、図15は無線端末4および非常停止スイッチユニット2間の制御フローを、図16は無線端末4および非常停止スイッチユニット2間の制御フローをそれぞれ示している。
【0061】
図15に示すように、無線端末4のステップTAおよび非常停止スイッチユニット2のステップSAにおいては、上述したペアリング処理がなされる(図18中の実線Pa参照)が、図14および図16に示すように、無線端末4および各非常停止スイッチユニット2、2間では、ペアリング処理がなされない(図18中の実線PaおよびX印参照)。
【0062】
図14ないし図16中の無線端末4のステップTBにおいて、操作者Pにより無線端末4のレーザポインタ部41がONされることにより、レーザポインタ部41からレーザ光が出射される。そして、レーザポインタ部41がAGV1の非常停止スイッチユニット2のレーザ光受光部32に向けられることにより、レーザポインタ部41から出射されたレーザ光Lが非常停止スイッチユニット2のレーザ受光部32に受光される(図14中の非常停止スイッチユニット2のステップSB、および図18中の一点鎖線L参照)。これにより、非常停止スイッチユニット2の制御回路33は、AGV1が選択されたと判断する。その一方、レーザポインタ部41から出射されたレーザ光Lは非常停止スイッチユニット2、2のレーザ受光部32では受光されない。すなわち、この場合には、レーザポインタ部41からのレーザ光Lにより、AGV1、2、3(の各非常停止スイッチユニット2、2、2)のうちからAGV1(の非常停止スイッチユニット2)が優先的に選択されたことになる。
【0063】
次に、図14ないし図16中の無線端末4のステップTCにおいて、遠隔操作の発信/発報/発光がなされる、すなわち、操作者Pが無線端末4の押しボタン40を押込み操作することにより、送信部41から非常停止信号Ssが無線で送信され(図18参照)、スピーカー41から警告音や警告メッセージ(たとえば「非常停止ボタンが遠隔操作されました」等)の音が発報され、発光部41から光(可視光)が発光される。このとき、送信部41、スピーカー41および発光部41は多重化(冗長化)されているので、押しボタン40の押込み時には、送信部41からの非常停止信号の送信と同時に、スピーカー41からの警告音や警告メッセージ等の音の発報、および発光部41からの光の発光が行われるようになっている。
【0064】
すると、図14ないし図16中の各非常停止スイッチユニット2、2、2のステップSCにおいて、無線端末4の送信部41からの非常停止信号、スピーカー41からの警告音や警告メッセージの音、および発光部41からの光が各非常停止スイッチユニット2、2、2の受信部32、マイク32、受光部32で受信/受音/受光される。このとき、受信部32、マイク32および受光部32にてそれぞれの処理を行う各処理回路は多重化(冗長化)されており、論理和(OR)回路で接続されているので、これらの処理回路のいずれか一つ以上で処理が行われる、すなわち、受信、受音または受光の少なくとも一つがなされると、各制御フローは次の処理に移行する。
【0065】
図14の制御フローでは、ステップSCでの処理後、ステップSDに移行する。ステップSDでは、制御回路33からソレノイド3に電流が供給されることにより、非常停止ボタン21が押し込まれる。これにより、AGV1のステップCAに示すように、AGV1への電力供給が遮断されてAGV1が非常停止する(図18参照)。一方、図15の制御フローでは、AGV2のステップCBに示すように、AGV2が減速しながらソフト停止する(図18参照)。また、図16の制御フローでは、AGV3の制御フローに示すように、AGV3が非常停止もソフト停止もせずに走行状態を維持する(図18参照)。
【0066】
このように本実施例によれば、前記第1の実施例と同様に、非常停止スイッチユニットから離れた場所からでも非常停止ボタンを操作でき、非常停止スイッチユニットの遠隔操作を行えるようになるばかりでなく、無線端末による遠隔操作が複数の遠隔操作を含んでいてこれらが多重化されているので、複数の遠隔操作のいずれかが機能しない場合であっても、残りのいずれかの遠隔操作による操作が可能であり、これにより、操作支援の確実性を向上できる。さらに、前記第1の実施例と同様に、遠隔操作の少なくとも一つが人に認知可能になっており、無線端末による遠隔操作が行われたことが人(操作者以外の第三者も含む)によって認知されるので、遠隔操作を認知した人が非常停止ボタンを操作することが可能になって、操作支援をより確実に行えるようになる。また、この場合、人による操作支援が追加されることで、さらなる多重化が可能になる。
【0067】
しかも、本実施例によれば、無線端末4のレーザポインタ部41により選択された(すなわち狙い撃ちされた)非常停止スイッチユニット2に対しては(ペアリング処理がなされていない場合であっても)、非常停止ボタン21が押し込まれることで優先的に非常停止処理を行うことができる。なお、レーザポインタ部41により選択されなかった非常停止スイッチユニット2については、ペアリング処理がなされていることにより、非常停止ボタン21が押し込まれずに、AGV2に対してソフト停止処理がなされ、レーザポインタ部41により選択されなかった非常停止スイッチユニット2については、ペアリング処理がなされていないことにより、非常停止ボタン21は押し込まれず、またAGV3に対してソフト停止処理もなされずに、走行状態を続行する。
【0068】
〔第1の変形例〕
前記各実施例では、無線端末4によりなされる遠隔操作として、非常停止信号、音および光の3つすべてを含む場合を例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。遠隔操作としては、これら3つのうちの少なくとも2つ(たとえば、非常停止信号と音、非常停止信号と光)でもよい。
【0069】
〔第2の変形例〕
前記各実施例では、本発明を構成する操作スイッチユニットとして、非常停止スイッチユニットを例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されず、本発明は、一時停止スイッチ等のその他の操作スイッチを含むものにも適用できる。
【0070】
〔第3の変形例〕
前記各実施例では、無線端末4として、作業者Pが手首に装着することができるリストウォッチ(またはリストバンド)タイプのものを例にとって説明したが、作業者Pが身に付ける場所としては、手首に限らず、指(つまり指輪タイプ)でもよく、手の平に装着するタイプでもよい。また、手首のスナップ動作で動作するように加速度センサが内蔵されたものでもよい。さらに、無線端末4としては、これら携帯型(ウェアラブルタイプ)のものに限らない。作業者Pの体に装着するためのバンド45等の装着部がないものでもよい。この場合、無線端末4は、たとえば、作業服のポケット等に収納されたり、また工事現場等に設置される円錐状のロードコーンの先端部等に取り付けられたりして用いられる。あるいは、無線端末4は、ペンダント型の操作端末でもよい。
【0071】
〔第4の変形例〕
前記各実施例では、無線端末4が単一の無線端末から構成された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。無線端末4は、2つ以上の無線端末から構成されていてもよく、タブレットやスマートフォン等と連携させるようにしてもよい。これにより、他の無線端末やタブレット等との間で通信が可能になって、操作支援の確実性をさらに向上できる。
【0072】
〔第5の変形例〕
前記各実施例において、無線端末4の押しボタン40は、ボタンを押した後に手を離してもON状態を保持するオルタネイト動作方式でも、ボタンを押している間だけON状態になるモーメンタリ動作方式でもどちらでもよい。また、オルタネイト動作方式においては、ボタンを押したときに送信信号を連続して送信するタイプでなくてもよく、送信信号を間欠的に送信するタイプであってもよい。
【0073】
〔第6の変形例〕
前記第2の実施例において、非常停止スイッチユニット2のレーザ受光部32としては、AGVの向きや移動位置の如何に関わらず、無線端末4のレーザポインタ部41から出射されたレーザ光を受光する必要があるため、たとえば半球形や球形等の形状をした全方位型のものが好ましい。
【0074】
〔他の適用例〕
前記各実施例では、本発明が無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)に適用された例を示したが、本発明は、人とロボットが協調して作業を行う協調ロボットやその他の産業用ロボットにも適用可能である。これらの場合には、ロボットコントローラに接続された非常停止スイッチユニットに対して無線端末が遠隔操作を行う。また、本発明は、製造業や流通業の分野に限らず、飲食業界や食品業界、医療、建設、土木の分野にも同様に適用できる。
【0075】
〔その他の変形例〕
上述した各実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、操作スイッチの操作支援をより確実に行える操作支援システムに有用である。
【符号の説明】
【0077】
1: 操作支援システム

2: 非常停止スイッチユニット(操作スイッチユニット)
21: 押しボタン(非常停止ボタン/操作スイッチ)
28: 送信部
3: 電磁ソレノイド(作動部)
32: 受信部(検知部)
32: 受信部
32: マイク
32: 受光部
32: レーザ受光部
33: 制御回路(制御部)

4: 携帯型無線端末(遠隔操作ユニット)
41: 送信部
41: スピーカー
41: 発光部
41: レーザポインタ部
42: 受信部

L: レーザ光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【文献】特開2001-35302号公報(図1参照)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18