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特許7478561ネズミ目動物忌避剤およびネズミ目動物の忌避方法
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  • 特許-ネズミ目動物忌避剤およびネズミ目動物の忌避方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ネズミ目動物忌避剤およびネズミ目動物の忌避方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 41/10 20060101AFI20240425BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A01N41/10 A
A01P17/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020054922
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021155347
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000169
【氏名又は名称】クミアイ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】北住 健太
(72)【発明者】
【氏名】京谷 恭弘
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-160813(JP,A)
【文献】特開平07-285821(JP,A)
【文献】特開平07-048530(JP,A)
【文献】特開平03-181402(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 41/00
A01P 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[I]で表されるアルキルフェニルスルフィド誘導体及びその農業上許容される塩からなる化合物群から選択される1または2以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするネズミ目動物忌避剤。
(式中、nは0~2の整数を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cアルキル基を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cアルキル基を示し、RはC~Cアルキル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)、フェニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)、ピリジル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)またはピリミジニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)を示し、RはC~Cハロアルキルチオ基またはフェニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cハロアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記アルキルフェニルスルフィド誘導体が、下記式[Ia]で表される化合物である請求項1に記載のネズミ目動物忌避剤。
(式中、R、R及びRは前記式[I]と同じ意味を示し、R31はC~Cアルキレン基を示す。)
【請求項3】
前記アルキルフェニルスルフィド誘導体が、下記式[I-1]で表される化合物である請求項1または2に記載のネズミ目動物忌避剤。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のネズミ目動物忌避剤を、ネズミ目動物を忌避したい場所またはその周辺に配置することを特徴とする、ネズミ目動物の忌避方法。
【請求項5】
前記ネズミ目動物忌避剤を飼料に混合して、ネズミ目動物を忌避したい場所またはその周辺に配置する、請求項に記載のネズミ目動物の忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアルキルフェニルスルフィド誘導体化合物を有効成分として含有するネズミ目動物忌避剤およびネズミ目動物の忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農地へのネズミ目動物の侵入による農作物の被害、道路・線路へのネズミ目動物の侵入による事故、家屋・倉庫へのネズミ目動物の侵入による被害、ネズミ目動物による電線・通信ケーブル網に対する咬害などの被害など、野生のネズミ目動物の引き起こす諸問題により、生活上の損失、経済上の損失が生じている。特に農業分野においては平成24年度で6億8900万円の被害が発生している(非特許文献1参照)。
【0003】
そこで、ネズミ目動物から対象物を保護するための忌避剤の開発が長年にわたり活発に行われてきた。例えば、カプサイシン類のネズミに対する高い忌避効果を利用した防鼠電線・ケーブルや防鼠塗料等の製品が特許文献1に、シクロヘキシミドとカプサイシンを用いて忌避効果を発揮するケーブルが特許文献2に、安息香酸デナトニウムやカプサイシンなどを用いて忌避効果を発揮するゴミ入れ用袋が特許文献3に記載されている。しかしながら、カプサイシン類は高価かつ人体への刺激性が強いことから取り扱いにくいという問題を有しており、シクロヘキシミドは皮膚接触により人体に害を及ぼすことがあるため、一般生活の中で人間が接触する可能性のある物品の表面に、有効成分が露出すると、問題を生じる恐れがあった。また、安息香酸デナトニウムは水溶性であるために水分が多い環境下では溶出するので、効果持続性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3053480号公報
【文献】特開2000-348542号公報
【文献】特開平9-169401号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】野生鳥獣による農作物被害状況(平成24年度)(農林水産省)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、取扱いが容易で、ネズミ目動物に対する優れた忌避効果を有する忌避剤、およびネズミ目動物の忌避方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる状況下、種々の化合物について検討した結果、特定のアルキルフェニルスルフィド誘導体が、ネズミ目動物に対する優れた忌避活性を有し、かつ、取り扱いが容易であることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
(1)下記式[I]で表されるアルキルフェニルスルフィド誘導体及びその農業上許容される塩からなる化合物群から選択される1または2以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするネズミ目動物忌避剤。
(式中、nは0~2の整数を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cアルキル基を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cアルキル基を示し、RはC~Cアルキル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)、フェニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)、ピリジル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)またはピリミジニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)を示し、RはC~Cハロアルキルチオ基またはフェニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cハロアルキル基を示す。)
(2)前記アルキルフェニルスルフィド誘導体が、下記式[Ia]で表される化合物である前記(1)に記載のネズミ目動物忌避剤。
(式中、R、R及びRは前記式[I]と同じ意味を示し、R31はC~Cアルキレン基を示す。)
(3)前記アルキルフェニルスルフィド誘導体が、下記式[I-1]で表される化合物である前記(1)または(2)に記載のネズミ目動物忌避剤。
)前記(1)~()のいずれかに記載のネズミ目動物忌避剤を、ネズミ目動物を忌避したい場所またはその周辺に配置することを特徴とする、ネズミ目動物の忌避方法。
)前記ネズミ目動物忌避剤を飼料に混合して、ネズミ目動物を忌避したい場所またはその周辺に配置する、前記()に記載のネズミ目動物の忌避方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明忌避剤はネズミ目動物に対して優れた忌避活性を示し、また、人体への刺激性が少なく、取扱いが容易であるという特徴を持つ。この為、本発明忌避剤を使用することにより、ネズミ目動物による被害を手軽に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1で用いた忌避試験用装置の概観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のネズミ目動物忌避剤およびネズミ目動物の忌避方法は、低薬量でも十分な忌避活性を発揮し、忌避効果が早期に達成され、忌避効果も持続することから、本発明の忌避剤を含有させることにより、ネズミ目動物による被害を防ぐことができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明のネズミ目動物忌避剤は、下記式[I]で表されるアルキルフェニルスルフィド誘導体及びその農業上許容される塩からなる化合物群から選択される1または2以上の化合物を有効成分として含有するものである。
(式中、nは0~2の整数を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cアルキル基を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cアルキル基を示し、RはC~Cアルキル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)、フェニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)、ピリジル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)またはピリミジニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)を示し、RはC~Cハロアルキルチオ基またはフェニル基(該基はRによりモノ置換又はポリ置換されてもよい)を示し、Rはハロゲン原子またはC~Cハロアルキル基を示す。)
【0013】
本明細書における上記記号及び用語について説明する。
【0014】
本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を示す。
【0015】
本発明において、C~C等の表記は、これに続く置換基の炭素数を示しており、この場合では炭素数が1~6であることを示している。
【0016】
本発明において、C~Cアルキル基とは、特に限定しない限り、炭素数が1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等を挙げることができる。
【0017】
本発明において、C~Cハロアルキル基とは、特に限定しない限り、同一又は相異なる1~13のハロゲン原子で置換されている、炭素数が1~6の直鎖又は分岐鎖のハロアルキル基を意味し、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、クロロジフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル等を挙げることができる。
【0018】
本発明において、C~Cハロアルキルチオ基とは、特に限定しない限り、ハロアルキル部が上記の意味である(C~Cハロアルキル)-S-基を示し、例えばフルオロメチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、トリクロロメチルチオ等を挙げることができる。
【0019】
本発明において、C~Cアルキレン基とは、特に限定しない限り、炭素数が1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロパン-2,2-ジイル基、ブチレン基、イソブチレン基、ヘキシレン基等を挙げることができる。
【0020】
上記式[I]で表されるアルキルフェニルスルフィド誘導体の好適例としては、例えば、下記式[Ia]
(式中、R、R及びRは前記式[I]と同じ意味を示し、R31はC~Cアルキレン基を示す。)、
又は、下記式[Ib]

(式中、Rは前記式[I]と同じ意味を示し、mは1または2の整数を示し、Lは単結合または炭素数1~6のアルキレン基を示し、R32は2価または3価のベンゼン環又はピリジン環を示す。)
で表される化合物を挙げることができる。
【0021】
更に上記式[I]で表されるアルキルフェニルスルフィド誘導体の具体例としては、下記式[I-1]、式[I-2]、式[I-3]、式[I-4]及び式[I-5]で表される以下の化合物を挙げることができる。
【0022】
なお、以下の説明においては、上記式[I]で表されるアルキルフェニルスルフィド誘導体及びその農業上許容される塩からなる化合物群から選択される1または2以上の化合物のことを「本化合物」と記載することとする。
【0023】
本化合物は、いずれも特開2015-160813号公報に記載されている公知の化合物であり、該公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0024】
本化合物はネズミ目動物に対する忌避効果を有する。これを有効成分とするとは、忌避剤として本化合物のみを有する場合だけでなく、他の公知な忌避剤を含有する場合も含む。このような他の公知な忌避剤としては、例えば、p-シメン、γ-テルピネン、酢酸ヘキシル、テルピネオール、オレンジオイル、ローズマリーオイル、樟脳、ハッカ油等の精油成分、ホウ酸、カプサイシン、シクロヘキシミド、安息香酸デナトニウムなどが挙げられる。上記他の忌避剤の量は得られるネズミ目動物忌避剤が、人に接触した場合に、問題を生じない程度の量であることが望ましい。
【0025】
一方、本発明のネズミ目動物忌避剤は、必要に応じ農薬製剤に通常用いられる添加成分を含有することができる。
【0026】
この添加成分としては、固体担体又は液体担体等の担体、界面活性剤、結合剤、粘着付与剤、増粘剤、着色剤、拡展剤、展着剤、凍結防止剤、固結防止剤、崩壊剤、分解防止剤、高分子材料等が挙げられる。
【0027】
その他必要に応じて、防腐剤、植物片等を添加成分に用いてもよく、これらの添加成分は1種用いてもよいし、又、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加成分について以下に説明する。
【0028】
固体担体としては、例えば、石英、クレー、カオリナイト、ピロフィライト、セリサイト、タルク、ベントナイト、酸性白土、アタバルジャイト、ゼオライト、珪藻土等の天然鉱物質類;炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;合成ケイ酸、合成ケイ酸塩、デンプン、セルロース、植物粉末等の有機固体担体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体等が挙げられる。
【0029】
液体担体としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の一価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;プロピレン系グリコールエーテル等の多価アルコール誘導体類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ノルマルパラフィン、ナフテン、シオパラフィン、ケロシン、鉱油等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、ジイソプロピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、アジピン酸ジメチル等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-アルキルピロリジノン等のアミド類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類;大豆油、ナタネ油、綿実油、ヒマシ油等の植物油;水等を挙げることができる。
【0030】
界面活性剤としては、特に限定されないが、好ましくは水中でゲル化したもの、又は膨潤性を示すものである。例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルマリン縮合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレンポリプロピレンブロックポリマーエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレン付加アセチレンジオール、ポリオキシエチレンエーテル型シリコン、エステル型シリコン、フッ素系界面活性剤、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスホン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合体の塩、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合体の塩、脂肪酸塩、ポリカルボン酸塩、N-メチル-脂肪酸サルコシネート、樹脂酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等のアニオン性界面活性剤;ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド等のアルキルアミン塩等のカチオン界面活性剤;アミノ酸型、ベタイン型、イミダゾリン型等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
又、結合剤や粘着付与剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースやその塩、デキストリン、水溶性デンプン、キサンタンガム、グアーガム、蔗糖、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム、平均分子量6,000~20,000のポリエチレングリコール、平均分子量100,000~5,000,000のポリエチレンオキサイド、天然燐脂質等が挙げられる。
【0032】
増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル系ポリマー、デンプン誘導体、多糖類のような水溶性高分子、高純度ベントナイト、ホワイトカーボンのような無機微粉等が挙げられる。
【0033】
着色剤としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン、プルシアンブルーのような無機顔料、アリザリン染料、アゾ染料、金属フタロシアニン染料のような有機染料等が挙げられる。
【0034】
拡展剤としては、例えば、シリコン系界面活性剤、セルロース粉末、デキストリン、加工デンプン、ポリアミノカルボン酸キレート化合物、架橋ポリビニルピロリドン、マレイン酸とスチレン類、メタアクリル酸共重合体、多価アルコールのポリマーとジカルボン酸無水物とのハーフエステル、ポリスチレンスルホン酸の水溶性塩等が挙げられる。
【0035】
展着剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの界面活性剤;パラフィン;テルペン;ポリアミド樹脂;ポリアクリル酸塩;ポリオキシエチレン;ワックス;ポリビニルアルキルエーテル;アルキルフェノールホルマリン縮合体;合成樹脂エマルジョン等が挙げられる。
【0036】
凍結防止剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類等が挙げられる。
【0037】
固結防止剤としては、例えば、デンプン、アルギン酸、マンノース、ガラクトース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ホワイトカーボン、エステルガム、石油樹脂等が挙げられる。
【0038】
崩壊剤としては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ステアリン酸金属塩、セルロース粉末、デキストリン、メタクリル酸エステルの共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアミノカルボン酸キレート化合物、スルホン化スチレン・イソブチレン・無水マレイン酸共重合体、デンプン・ポリアクリロニトリルグラフト共重合体等が挙げられる。
【0039】
分解防止剤としては、例えば、ゼオライト、生石灰、酸化マグネシウム等の乾燥剤;フェノール系、アミン系、硫黄系、リン酸系統の酸化防止剤;サリチル酸系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0040】
高分子材料としては、本発明に係る忌避剤としての効果を失わせないものであれば特に制限はない。例えば、シリコンゴム、アクリルゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、天然ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン系ゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエン系ゴム(SBRやSEBRなど)のごときゴム系材料;ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルプロリドン、カルボキシルビニルポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルアルキルアミノアクリル酸共重合体、メタカルボキシベタイン/メタカルボキシエステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、部分鹸化エチレン/酢酸ビニル共重合体、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリアルキレンオキシドなどの合成高分子;キチン、キトサン、デンプン、コラーゲン、プルラン、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタレートメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの天然系高分子材料などが挙げられる。
【0041】
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸カリウム、1,2-ベンズチアゾリン-3-オン等が挙げられる。
【0042】
植物片としては、例えばおがくず、やしがら、トウモロコシ穂軸、タバコ茎等が挙げられる。
【0043】
本発明のネズミ目動物忌避剤は、本化合物と、必要に応じて、上記した他の公知な忌避剤、少なくとも1種類の上記添加成分、例えば、不活性な液体担体及び/又は固体担体と、更に、少なくとも1種類の界面活性剤とを混合することにより製造することができる。
【0044】
そして、上記のように製造された本発明のネズミ目動物忌避剤は、液剤、乳剤、水和剤、顆粒水和剤、粉剤、油剤、フロアブル剤、粒剤、錠剤、ジャンボ剤、サスポエマルジョン、マイクロカプセル、ペースト、種子用被覆剤、燻蒸剤、燻煙剤、豆つぶ(登録商標)剤、ゲル化剤、噴射剤、加硫剤、シート剤等の任意の剤型に製剤化して使用してもよい。これらの製剤は製薬、農薬又は食品などの分野において、製剤化に通常用いられる添加剤を用いて、通常用いられる公知な方法で調製することができる。かかる添加剤としては、例えば、上記添加成分が挙げられる。
【0045】
また、本化合物は、多孔性物質に含浸又は担持させることも出来る。多孔性物質としては、例えばゼオライト、多孔質シリカ、セルロース、湿熱処理デンプン、サイクロデキストリン、ポリウレタン発砲体、発砲ポリスチレンなどが挙げられる。また、本化合物は、不織布、ロックウール、発泡ウレタン、紙、綿、フェルト、ロープ、網などの他の基材に含浸、塗布させたり、積層させたりして使用することもできる。
【0046】
本化合物は塗料組成物としても使用することができる。本化合物を混入せしめる塗料は特に限定されない。例えば、原料による分類でみてみると、油性塗料、酒精塗料、セルロース塗料、合成樹脂塗料、水性塗料、漆系塗料、ゴム系塗料があり、油性塗料には、ボイル油、油ペイント、油ワニス、エナメル、酒精塗料には、天然樹脂ワニス、合成樹脂ワニス、セルロース塗料にはクリヤーラッカー、ラッカーエナメル、合成樹脂塗料には水性塗料ワニス、合成樹脂エナメル、乳化重合塗料、水性塗料には水性ペイント、エマルジョン油ペイント、乳化重合塗料、漆系塗料には漆、カシューワニス、ゴム系塗料には塩化ゴム塗料、SBR等の合成ゴム塗料がある。
【0047】
本発明のネズミ目動物忌避剤は、上記のように様々な形態で使用することができる。そして、それぞれの形態において含有される本化合物の濃度は、忌避対象のネズミ目動物の種類、配置する場所、気温、本発明のネズミ目動物忌避剤の剤型などに応じて適宜決定することができ、例えば、製剤中の本化合物の濃度として、0.0001~100質量%、好ましくは0.0001~50質量%、より好ましくは0.001~30質量%、最も好ましくは0.02~10質量%の範囲が挙げられる。
【0048】
本発明のネズミ目動物忌避剤は、忌避作用を必要とする部材、例えば、ケーブル、配線、ゴミ袋等に塗布等の方法で付着させてもよいし、忌避作用を必要とする材料中、例えばケーブルや配線の被覆材、ゴミ袋の合成樹脂剤中に製造時に含有させて、その部材自体に忌避作用を付与することもできる。
【0049】
本発明のネズミ目動物忌避剤は、必要に応じて、さらに、防虫剤、殺虫剤、殺菌剤、防カビ剤、香料、着色料などの添加物を加えることもできる。
【0050】
本発明のネズミ目動物忌避剤は、農作物、森林、家畜、電線などに被害をもたらすネズミ目動物や、家屋、倉庫などに侵入して食糧を食べ荒らすネズミ目動物に対して有効である。
【0051】
ネズミ目動物とは、齧歯目動物又は齧歯類動物とも呼称される動物であり、例えば、トビネズミ、メクラネズミ、キヌゲネズミ、ハムスター、ミズハタネズミ、ハタネズミ、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ、アカネズミ、ヒメネズミ、ヤチネズミ、アレチネズミ、スナネズミ、アフリカオニネズミ等のネズミ下目動物;ビーバー等のビーバー下目動物;ヤマネ等のヤマネ下目動物;リス、シマリス等のリス下目動物;アメリカトゲネズミ、チンチラネズミ、ヌートリア、モルモット等のヤマアラシ下目動物が挙げられる。
【0052】
本発明のネズミ目動物忌避剤を配置することにより、配置した場所およびその周辺空間におけるネズミ目動物による被害を低減することができる。
【0053】
本発明のネズミ目動物忌避剤を配置する場所としては、例えば、田畑、果樹園、森林、家畜の飼育場、道路、高速道路、線路、空港、ゴミ集積場、塵埃集積場、公園、庭、花壇、駐車場、建築物、倉庫、家屋、厨房、洗面所、ベランダ、物置、床下、電柱、電線、通信ケーブル、金網、フェンスなどが挙げられる。
【0054】
本発明のネズミ目動物の忌避方法は、本発明のネズミ目動物忌避剤を、ネズミ目動物を忌避したい場所またはその周辺に配置すればよく、特に制限はない。本発明のネズミ目動物忌避剤を配置する方法は、本発明のネズミ目動物忌避剤を単純に置く方法のほか、散布、噴霧、塗布する等の公知な方法を使用することができる。
【0055】
本発明のネズミ目動物の忌避方法においては、あらかじめ、飼料に本発明のネズミ目動物忌避剤を混合して、ネズミ目動物を忌避したい場所またはその周辺に配置してもよい。この場合、例えば、飼料に対して0.0001~100質量%、好ましくは0.0001~50質量%、より好ましくは0.001~30質量%、最も好ましくは0.02~10質量%の範囲のネズミ目動物忌避剤を混合させればよい。
【実施例
【0056】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0057】
本化合物がネズミ目動物に対して優れた忌避活性を有することを試験例にて示す。なお、試験例に供した化合物を表1に示す。実施例1の化合物は特開2015-160813号公報に記載されている方法で合成したものを使用した。比較例1のカプサイシンは富士フイルム和光純薬株式会社から購入したものを使用した。比較例2の化合物は特開2017-036251号公報に記載されている方法で合成したものを使用した。
【0058】
【表1】
【0059】
試験例1(試験動物:ハツカネズミ)
<試験装置>
忌避試験は、図1記載の忌避試験用の装置を用いて行った。装置は、Y迷路(「YM-03M(マウス用)」、室町機械社製)を加工したものであって、居住区となる走路長100mm、走路幅100mmのスペースに2つの摂餌スペースへとつながる走路長300mm、走路幅40mmの2本のアームが伸びた形となっており、両端に食料を配置する試験区1と試験区2とを配した。壁面は高さ100mm、天井開口部100mmで統一されている。上部は脱走防止のために鉄製の網で覆っている。居住区の底部には床敷きとしてパルソフト(登録商標、オリエンタル酵母工業社製)を敷き詰めた。居住区上に給水容器を差し込み、試験期間中自由給水とした。
【0060】
<馴化作業>
忌避試験前に、試験動物を試験装置に馴れさせる為に、馴化作業を行った。
試験区1および試験区2に質量を測定した餌(MS粉末飼料、オリエンタル酵母工業株式会社製)約40g(初期餌質量)をそれぞれ配置した後、居住区に雄のマウス1匹を入れた。24時間毎に両試験区に残った餌の質量をそれぞれ測定し、各日の摂餌量を算出した。餌は3日又は4日毎に新しいものに交換し、数日間馴化した。
【0061】
<忌避試験>
馴化作業を終えた後、両試験区に基礎飼料(MS粉末飼料、オリエンタル酵母工業社製)と、表1の実施例および比較例の各化合物を飼料中の化合物濃度が表2に記載した質量%になるよう混合した混餌飼料をそれぞれ約40g程度ずつ配置した。24時間ごとに両試験区に残った餌の質量をそれぞれ測定し、各日の摂餌量を算出した。餌は3日又は4日毎に新しいものに交換した。
【0062】
各化合物の忌避効果は、各日の摂餌量から下記計算式(1)で忌避率を算出し、表2に示した。また、表2には、化合物の取り扱い時の作業性についても記載した。
忌避率(%)=100×(累計基礎飼料摂餌量-累計混餌飼料摂餌量)/(累計基礎飼料摂餌量+累計混餌飼料摂餌量)・・・(1)
【0063】
【表2】
【0064】
実施例1は、ハツカネズミに対して低薬量でも長期間にわたる高い忌避効果を発揮した。比較例1のカプサイシンも、長期間にわたる高い忌避効果を発揮したが、皮膚や目に対する刺激性が強いため、飛散や付着しないように十分な保護具で防御する必要があり、作業が煩雑であった。
図1