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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】レゾルバ
(51)【国際特許分類】
   H02K 24/00 20060101AFI20240425BHJP
   H02K 11/225 20160101ALI20240425BHJP
【FI】
H02K24/00
H02K11/225
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020057111
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158798
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴子
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/008516(WO,A1)
【文献】特開2014-150703(JP,A)
【文献】特開2004-069374(JP,A)
【文献】特開2015-186370(JP,A)
【文献】特開2018-133989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 24/00
H02K 11/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機に取り付けられるレゾルバであって、
前記回転電機のシャフトに固定されるロータと、
前記ロータの周囲に配置されるステータと、
を備え、
前記ステータは複数のティースを有するステータコアを備え、前記複数のティースに励磁巻線と出力巻線とからなるステータ巻線を巻回し、
前記ステータコアは、周期対称となるように周方向に均等に配置された複数の磁束誘導変化部を有し、前記複数の磁束誘導変化部の数は、前記回転電機のロータの磁極数の、1以外の約数であり、
前記回転電機のロータの極対数を第1の値とし、
前記レゾルバのロータの軸倍角数と前記レゾルバの前記励磁巻線の極対数との差の絶対値を第2の値とした場合、
前記第1の値及び前記第2の値は、整数であり、且つ、前記第1の値及び前記第2の値は、一方の値が偶数であり、他方の値が奇数である、レゾルバ。
【請求項2】
前記ステータコアは、前記複数の磁束誘導変化部が配置される環状部と前記環状部から径方向内側に突出する前記複数のティースとを有し、
前記励磁巻線と前記出力巻線とは、それぞれ前記複数のティースの全てに巻回された、請求項に記載のレゾルバ。
【請求項3】
前記複数の磁束誘導変化部は、前記環状部の外周縁から径方向外側に突出した箇所に穴が形成されている、請求項に記載のレゾルバ。
【請求項4】
前記複数の磁束誘導変化部は、前記環状部の内部に形成された長孔である、請求項に記載のレゾルバ。
【請求項5】
前記複数の磁束誘導変化部は、前記環状部の外周縁に形成された切欠である、請求項に記載のレゾルバ。
【請求項6】
前記磁束誘導変化部は、前記穴と、当該穴に挿通されたボルトとで構成される、請求項に記載のレゾルバ。
【請求項7】
前記複数の磁束誘導変化部の数は4である、請求項1~のいずれか一項に記載のレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の駆動に回転電機が用いられている。回転電機の回転子は、シャフトに固定された回転子鉄心と、永久磁石とを備え、シャフトは軸受けにより回転可能に支持されている。このような回転電機の回転子の回転角度等を検出する手段として、レゾルバが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このようなレゾルバは、ステータコアとロータコアとを備えている。レゾルバのロータコアは、回転電機のシャフトに固定され、回転電機の回転子の回転角度等を検出する。
【0003】
レゾルバのステータコアは、例えば、回転電機のハウジングに固定される。例えば、外周縁から径方向外側に突出する複数の取付部が形成され、取付部に取付穴が形成されたステータコアを有するレゾルバが知られている(例えば、特許文献2を参照)。このようなステータコアは、取付穴にボルトを挿通して回転電機のハウジングに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-158401号公報
【文献】特開2006-109658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転電機の回転子とレゾルバが接近して配置されると、回転電機の回転子の永久磁石から発生する磁束の影響を受け易い。例えば、特許文献2に記載されたような取付部や、取付穴に挿通したボルトがアンテナとなって、回転電機の回転子の永久磁石からの磁束がレゾルバのステータの内側に入り込み、レゾルバのステータの突極に巻回した巻線に鎖交し、レゾルバの出力信号にノイズとして重畳する虞がある。
【0006】
このような、取付部は、その配置位置によってはレゾルバのステータの内側に入り込む磁束の分布がアンバランスになり、レゾルバのステータの突極(ティースに相当)に巻回した巻線に及ぼす磁束にばらつきが生じる。その結果、突極(ティースに相当)ごとにノイズ成分のばらつきが生じることからレゾルバの角度検出精度が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回転電機から漏洩する磁束による角度検出精度の低下を抑制することができるレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るレゾルバは、回転電機に取り付けられるレゾルバであって、前記回転電機のシャフトに固定されるロータと、前記ロータの周囲に配置されるステータとを備える。前記ステータは複数のティースを有するステータコアを備え、前記複数のティースに励磁巻線と出力巻線とからなるステータ巻線を巻回し、前記ステータコアは、周期対称となるように周方向に均等に配置された複数の磁束誘導変化部を有し、前記複数の磁束誘導変化部の数は、前記回転電機のロータの磁極数の、1以外の約数であり、前記回転電機のロータの極対数を第1の値とし、前記レゾルバのロータの軸倍角数と前記レゾルバの前記励磁巻線の極対数との差の絶対値を第2の値とした場合、前記第1の値及び前記第2の値は、整数であり、且つ、前記第1の値及び前記第2の値は、一方の値が偶数であり、他方の値が奇数である。
【0009】
本発明の一態様に係るレゾルバは、回転電機から漏洩する磁束による角度検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係るレゾルバを備えた回転電機の断面図である。
図2図2は、図1に示すレゾルバと回転電機のロータとの位置関係を示す平面図である。
図3図3は、実施例1のレゾルバを示す図である。
図4図4は、実施例2のレゾルバを示す図である。
図5図5は、比較例1のレゾルバを示す図である。
図6図6は、実施例3のレゾルバを示す図である。
図7図7は、比較例2のレゾルバを示す図である。
図8図8は、実施例1と比較例1のレゾルバを用いた場合の角度誤差を示す図である。
図9図9は、変形例1のステータコアを示す図である。
図10図10は、変形例2のステータコアを示す図である。
図11図11は、変形例3のステータコアを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係るレゾルバについて図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0012】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るレゾルバを備えた回転電機の断面図である。図1に示す回転電機1は、有底円筒状のハウジング2と、ハウジング2の開口側に固定されたエンドブラケット3とから構成された筐体を有する。ハウジング2の底部の中央からは、シャフト4の一端が出ている。また、エンドブラケット3の中央には円筒状の凸部が設けられ、この凸部の中央からはシャフト4の他端が出ている。凸部の内部には、レゾルバ11が取り付けられている。シャフト4は、ハウジング2に設けられた軸受6と、エンドブラケット3に設けられた軸受5とにより回動可能に支持されている。なお、図1において、シャフト4については断面を省略している。
【0013】
回転電機1のモータ部分は、シャフト4に固着されたロータ7と、ハウジング2の円筒部の内側に固定されたステータコア9と、ステータコア9のティース(9b)に、図示しないインシュレータを介して巻回されたモータ巻線10と、を有している。ステータコア9は、ケイ素鋼板等の軟磁性材からなるプレートからプレス加工により製作された複数の鉄心(コア)が、軸方向に回転積層されることで構成されている。
【0014】
モータ部分の回転子であるロータ7は、ケイ素鋼板等の軟磁性材からなるプレートからプレス加工により製作された複数の鉄心(コア)が、軸方向に積層されることで構成されている。ロータ7は、例えば、複数の鉄心(コア)を軸方向に積層してなるロータコアに形成された磁石挿入孔に永久磁石(8)が埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnet)型のロータである。
【0015】
レゾルバ11は、回転電機1に取り付けられている。レゾルバ11は、回転電機1のシャフト4に固定(嵌着)されたロータ12と、ロータ12の周囲に配置され、エンドブラケット3の内側に固定されたステータとを有する。ステータは、ステータコア13と、このステータコア13のティース(13b)にインシュレータ14を介して巻回されたステータ巻線15とを有している。レゾルバ11は、例えばVR(バリアブルリラクタンス)型レゾルバであり、ステータコア13の内側にロータ12が配置されたインナーロータ型のレゾルバである。
【0016】
図2は、図1に示すレゾルバと回転電機のロータとの位置関係を示す平面図である。図2は、レゾルバ11側の軸方向から見た平面図である。
【0017】
図2に示す回転電機1のステータコア9は、環状の環状部9aから径方向内側に突出する48本のティース9bを有する。すなわち、図2に示す回転電機1のステータのスロット数は「48」である。また、図2に示す回転電機1のロータ7は、永久磁石8が埋め込まれたIPM型のロータであり、8極の磁極を有する。すなわち、図2に示す回転電機1のロータ7の磁極数は「8」であり、極対数は「4」である。
【0018】
レゾルバ11のステータを構成するステータコア13は、環状の環状部13aから径方向内側に突出する複数のティース13b(図2では14本のティース13b)を有する。すなわち、図2に示すレゾルバ11のステータのスロット数は「14」である。ステータコア13の各ティース13bにはインシュレータ14を介してステータ巻線15が巻回されている。複数のティース13bは、同じ形状であり、周方向に均等配置されている。
【0019】
ステータコア13は、更に、環状の環状部13aの外周縁から径方向外側に突出する複数の取付部13c(図2では14本のティース13bでは8個の取付部13c)を備える。取付部13cには取付孔が形成されており、ステータコア13は、取付孔にボルト等の締結材が挿通されて、エンドブラケット3に固定される。複数の取付部13cは、同じ形状であり、周方向に均等配置されて周期対称となっている。ステータコア13は、ケイ素鋼板等の軟磁性材からなるプレートからプレス加工により製作された複数の鉄心(コア)が軸方向に回転積層されることで構成されている。
【0020】
ロータ12の外周面は、径方向外側に凹凸した非円形の形状となっている。図2に示すロータ12は、2箇所の凸部を有した軸倍角が2Xのロータである。すなわち、レゾルバ11のロータ12の軸倍角数は「2」である。ロータ12は、ケイ素鋼板等の軟磁性材からなるプレートからプレス加工により製作された複数のコア片が軸方向に所定枚数積層されることで構成されている。
【0021】
ステータ巻線15は、励磁巻線と出力巻線とから構成されている。励磁巻線には外部から励磁電圧が印加される。出力巻線は、ロータ12の回転に伴ってsin相の信号を出力するsin相出力巻線と、sin信号と90°位相が異なったcos相の信号を出力するcos相出力巻線とから構成されている。励磁巻線及び出力巻線は、1スロットピッチで巻線されている。励磁巻線及び出力巻線は、スロット飛びせずに、全てのティース13bに巻回されている。
【0022】
全てのティース13bに巻回される励磁巻線は、各ティース13bに同じ巻数で巻回される。そして、励磁巻線は、隣り合うティース13bの極性が逆になるよう、交互に巻線方向が逆方向に巻回される。
【0023】
また、励磁巻線の上から重ねて巻回される出力巻線のうち、sin相出力巻線は、sin相出力巻線に誘起される電圧が正弦波信号となるよう、各ティース13bに巻回される巻数と巻線方向が調整されて巻回される。励磁巻線の上から重ねて巻回される出力巻線のうち、cos相出力巻線は、cos相出力巻線に誘起される電圧が、sin相出力巻線に誘起される正弦波信号と電気角で90°位相が異なった正弦波信号となるよう、各ティース13bに巻回される巻数と巻線方向が調整されて巻回される。そして、sin相出力巻線とcos相出力巻線とは、180度で対向する位置(換言すれば、対称となる位置)のティース13bの巻線は、巻数が同じで、互いに逆位相になるように構成されている。
【0024】
ここで、図1に示すように、回転電機1のロータ7とレゾルバ11とが接近して配置されると、レゾルバ11に対して回転電機1のロータ7の永久磁石8から発生する磁束による影響が生じる。永久磁石8から発生する磁束は、例えば、取付部13cや、取付部13cの取付穴に挿通したボルトがアンテナとなって、レゾルバ11のステータコア13のティース13bに入り込み、更にティース13bに巻回したステータ巻線15に鎖交し、レゾルバ11の出力信号にノイズとして重畳し、レゾルバ11の角度検出精度が低下してしまう。
【0025】
そこで、実施形態では、回転電機1から漏洩する磁束による角度検出精度の低下を抑制できるよう、以下に説明する2つの条件(第1の条件、第2の条件)に基づいてレゾルバを構成する。以下、第1の条件、第2の条件について、順に説明する。なお、図2に示すレゾルバ11は、図2に示すロータ7を備えた回転電機1から漏洩する磁束による角度検出精度の低下を抑制できるように構成された実施形態に係るレゾルバの一例であり、以下では、実施例1のレゾルバ11と称する。
【0026】
<第1の条件>
第1の条件は、「周方向に均等に配置される取付部の数を、回転電機のロータの磁極数の、1以外の約数とする」という条件である。この条件を満たすことで、取付部には、回転電機のロータの永久磁石から漏洩した磁束が等しく流入する。
【0027】
第1の条件について、図3図4図5を用いて説明する。図3は、実施例1のレゾルバを示す図であり、図4は、実施例2のレゾルバを示す図であり、図5は、比較例1のレゾルバを示す図である。図3図4図5に示す回転電機1は、ステータのスロット数が「48」で、ロータ7の磁極数(永久磁石8の極数)が「8」である。図3図4図5には、かかる回転電機1に取り付けられた実施例1のレゾルバ11、実施例2のレゾルバ110、比較例1のレゾルバ111をそれぞれ示している。
【0028】
図3に示す実施例1のレゾルバ11は、上述したように、ロータ12の軸倍角数が「2」であり、ステータ(ステータコア13)のスロット数(ティース13bの数)が「14」であり、取付部13cの数が「8」である。レゾルバ11の取付部13cの数「8」は、回転電機1のロータ7の磁極数「8」の約数である。
【0029】
また、図4に示す実施例2のレゾルバ110は、ロータ120の軸倍角数が「2」であり、ステータ(ステータコア130)のスロット数(環状部130aから径方向内側に突出するティース130bの数)が「14」であり、環状部130aから径方向外側に突出する取付部130cの数が「4」である。取付部130cは、周方向に均等配置されて周期対称となっている。レゾルバ110の取付部130cの数「4」は、回転電機1のロータ7の磁極数「8」の約数である。
【0030】
一方、図5に示す比較例1のレゾルバ111は、ロータ121の軸倍角数が「2」であり、ステータ(ステータコア131)のスロット数(環状部131aから径方向内側に突出するからティース131bの数)が「14」であり、環状部131aから径方向外側に突出する取付部131cの数が「7」である。取付部131cは、周方向に均等配置されて周期対称となっている。レゾルバ111の取付部131cの数「7」は、回転電機1のロータ7の磁極数「8」の約数ではない。上述した回転電機1、レゾルバ11、レゾルバ110、レゾルバ111に関する数値を以下の表1にまとめて示す。
【0031】
【表1】
【0032】
取付部13cの数「8」が、ロータ7の磁極数「8」の約数である実施例1では、図3に示すように、取付部13cに永久磁石8から漏洩した磁束が等しく流入する。永久磁石8のN極から漏れる磁束は、取付部13cから流入し、環状部13aを経由して隣接する取付部13cから永久磁石8のS極に帰還する。このため、取付部13cから環状部13aに流入した磁束は均一化される。また、環状部13a内に流入した磁束の一部が、ティース13bを通り、ロータ12を経由して近傍のティース13bを経て帰還した場合、ティース13bに流入する磁束にバラツキが無い。すなわち、実施例1では、ティース13bに巻回された巻線に鎖交する磁束にバラツキが無い。
【0033】
同様に、取付部131cの数「4」が、ロータ7の磁極数「8」の約数である実施例2では、図4に示すように、取付部130cに永久磁石8からの漏洩磁束が等しく流入する。このため、実施例2でも、取付部130cから環状部130aに流入した磁束は均一化され、ティース130bに流入する磁束(ティース130bに巻回した巻線に鎖交する磁束)にバラツキが無い。
【0034】
一方、取付部131cの数「7」が、ロータ7の磁極数「8」の約数ではない比較例1では、図5に示すように、取付部131cに永久磁石8からの漏洩磁束が等しく流入しない。永久磁石8のN極から漏れる磁束は、取付部131cから流入し、環状部131aを経由して隣接する取付部131cから永久磁石8のS極に帰還する。しかし、取付部131cの数が、ロータ7の磁極数の約数となっていないため、永久磁石8から漏洩する磁束が取付部131cから均等にステータコアの環状部131aに流入せず、また、ステータコアの環状部131aから均等に取付部131cに帰還しない。このため、ステータコア131に流入した磁束は均一化されない。また、環状部131a内に流入した磁束の一部が、環状部131aからティース131bを通り、ロータ12を経由して近傍のティース131bを経て帰還した場合、ティース131bに流入する磁束にバラツキが生じる。比較例1では、ティース131bに巻回した巻線に鎖交する磁束にバラツキが生じる。
【0035】
このように、周方向に均等配置されて周期対称となっている取付部13c、130c、131cは、回転電機1のロータ7から漏洩する磁束をレゾルバ11のステータコアに誘導し、ステータコアの内周側(ティース側)に流入する磁束に影響を及ぼす箇所として作用するため、これを磁束誘導変化部と呼ぶこととする。このため、回転電機のロータの磁極数に応じて、回転電機のロータからの漏洩磁束の流入を誘導する要因となる磁束誘導変化部(例えば取付部)の数を、第1の条件を満たすように調整することで、回転電機のロータからレゾルバのステータに流入する磁束を均一にすることができる結果、レゾルバのステータコアのティースに巻回した巻線に鎖交する磁束にバラツキが生じことを抑制できる。
【0036】
<第2の条件>
第2の条件は、第1の条件に加えて、よりレゾルバのステータに均一に流入する磁束(ノイズ)のキャンセルが可能となる条件である。具体的には、回転電機のロータの極対数(磁極数の半分の値)をA(第1の値)とし、レゾルバのロータの軸倍角数とレゾルバの励磁巻線の極対数の値をB(第2の値、以下の式1を参照)とする。第2の条件は「A及びBは、整数であり、且つ、A及びBは、一方の値が偶数であり、他方の値が奇数である」という条件である。
【0037】
B=|(レゾルバのロータの軸倍角数)-(レゾルバの励磁巻線の極対数)|・・・(式1)
【0038】
ここで、VR型レゾルバでは、出力巻線に誘導される電圧が、レゾルバのロータの凸部の位置に応じた電圧となるよう、軸倍角数と励磁巻線の極対数と出力巻線の極対数とが設定されている。具体的には、励磁巻線の極対数と出力巻線の極対数との和、又は、励磁巻線の極対数から出力巻線の極対数を引いた値が、軸倍角数となるように設定されている。すなわち、式1に示すBの値は、出力巻線の極対数となる。
【0039】
第1の条件を満たしている場合、レゾルバのステータに流入する磁束(ノイズ)が均一であることから、回転電機のロータの極対数を「A」とすると、「ノイズは機械角1周期(360度)の間に、A周期現れる」ことになる。また、レゾルバの励磁巻線が1スロットピッチで巻回され、レゾルバの出力巻線が1スロットピッチで巻回されているという条件下では、「レゾルバの出力巻線は、機械角1周期(360度)の間に、B周期の正弦波が現れる形状の磁束分布となる巻線パターンで巻回されている」ことになる。
【0040】
そして、以下の表2に示すように、Aの値及びBの値の双方が偶数、又は、奇数である場合、ノイズキャンセルが不可の巻線パターンとなり、Aの値及びBの一方の値が偶数であり、他方の値が奇数である場合、ノイズキャンセルが可の巻線パターンとなる。
【0041】
【表2】
【0042】
表2について、Aの値が偶数でBの値が奇数の場合、及びAの値及びBの値の双方が偶数の場合について、図6図7を用いて説明する。図6は、実施例3のレゾルバを示す図であり、図7は、比較例2のレゾルバを示す図である。なお、Aの値及びBの値の双方が偶数の場合、及びAの値が偶数でBの値が奇数の場合については、その作用が上述と同様であるため、その説明は省略する。
【0043】
図6及び図7に示す回転電機1は、上述したように、ステータのスロット数が「48」で、ロータ7の磁極数(永久磁石8の極数)が「8」である。図6及び図7は、かかる回転電機1に取り付けられた実施例3のレゾルバ11、比較例2のレゾルバ112をそれぞれ示している。なお、回転電機1のロータ7の磁極数が「8」であることから、ロータ7の対極数(Aの値)は「4」である。また、図6に示すレゾルバ11は、図3に示した実施例1のレゾルバ11と同じものである。
【0044】
図6に示す実施例3のレゾルバ11は、上述したように、ロータ12の軸倍角数が「2」であり、ステータ(ステータコア13)のスロット数(ティース13bの数)が「14」である。従って、レゾルバ11の励磁巻線の対極数は「7」であり、レゾルバ11の出力巻線の対極数となるBの値は「5」である。なお、図6に示す実施例3のレゾルバ11は、磁束誘導変化部となる取付部13cの数「8」がロータ7の磁極数「8」の約数であることから、第1の条件を満たしている。
【0045】
実施例3において、「ノイズは機械角1周期(360度)の間に、4周期現れる」ことになり、「出力巻線は、機械角1周期(360度)の間に、5周期の正弦波が現れる形状の磁束分布となる巻線パターンで巻回されている」ことになる。
【0046】
Aの値が「4(偶数)」であり、Bの値が「5(奇数)」の場合、180度(機械角)で対向するティース13bには、同位相で同じ大きさのノイズ(磁束)が鎖交するが、180度(機械角)で対向するティース13bには、同じ巻数の出力巻線が互いに逆方向に巻回されているため、ノイズをキャンセルすることができる。
【0047】
図7に示す比較例2のレゾルバ112は、ロータ122の軸倍角数が「2」であり、ステータ(ステータコア132)のスロット数(環状部132aから径方向内側に突出するからティース132bの数)が「16」である。従って、レゾルバ112の励磁巻線の対極数は「8」であり、レゾルバ112の出力巻線の対極数であるBの値は「6」である。なお、磁束誘導変化部となる取付部132cの数「8」は、ロータ7の磁極数「8」の約数であることから、図7に示す比較例2のレゾルバ112は、第1の条件を満たしている。
【0048】
比較例2において、「ノイズは機械角1周期(360度)の間に、4周期現れる」ことになり、「出力巻線は、機械角1周期(360度)の間に、6周期の正弦波が現れる形状の磁束分布となる巻線パターンで巻回されている」ことになる。
【0049】
比較例2のように、Aの値が「4(偶数)」であり、Bの値が「6(偶数)」の場合、180度(機械角)で対向するティース132bには、同位相で同じ大きさのノイズ(磁束)が鎖交するが、180度(機械角)で対向するティース132bには、同じ巻数の出力巻線が同一方向に巻回されているため、ノイズをキャンセルすることができない。
【0050】
なお、図6図7では、cos相出力巻線について説明しているが、sin相出力巻線についても同様である。また、図4に示す実施例2は、実施例1と同様、Aの値が「4(偶数)」であり、Bの値が「5(奇数)」となるので、第2の条件を満たしている。図6図7を用いて説明したものを以下の表3にまとめる。上述した回転電機1、レゾルバ11、レゾルバ112に関する数値及びノイズキャンセルの可/不可について、以下の表3にまとめて示す。
【0051】
【表3】
【0052】
<シミュレーションの結果>
図8は、比較例1のレゾルバを用いた場合の角度誤差を1とした時の実施例1のレゾルバを用いた場合の角度誤差の比を示す図で、縦軸は角度誤差比(無次元)である。実施例1の角度誤差は、図2図3図6に示す実施例1(実施例3)のレゾルバ11を回転機器1に取り付けた場合に、90度(機械角)の範囲での出力巻線から検出した信号に基づく角度誤差をシミュレーションによって計算した結果を示す。また、比較例1の角度誤差は、図5に示す比較例1のレゾルバ111を回転機器1に取り付けた場合に、90度(機械角)の範囲での出力巻線から検出した信号に基づく角度誤差をシミュレーションによって計算した結果を示す。
【0053】
図8に示すように、実施例1(実施例3)では、比較例1に比べて、角度誤差は、略生じていない。このように、実施例のレゾルバ11は、回転電機1の永久磁石8から漏洩する磁束により受ける影響を抑制でき、その結果、角度検出精度の低下を抑制することができる。
【0054】
上述したように、実施形態では、取り付け対象となる回転電機の磁極数(極対数)に応じて、第1の条件を満たすようにレゾルバ側の取付箇所の数を調整し、好ましくは、更に、第2の条件を満たすように出力巻線の巻回パターンを調整することで、回転電機から漏洩する磁束によるノイズが出力信号に重畳することをより抑制することができる。その結果、実施形態に係るレゾルバ(11、110)は、回転電機から漏洩する磁束による角度検出精度の低下を抑制することができる。また、実施形態に係るレゾルバ(11、110)は、樹脂製の部材等、レゾルバのステータコアへの漏洩磁束を防止するための追加の部材が不要となる。
【0055】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、磁束誘導変化部となるレゾルバを回転電機に取り付けるための取付部が、環状部の外周縁から径方向外側に突出する形状であり、突出した箇所に穴(取付穴)が形成された形状であったが、他の形状であっても良い。図9は、変形例1のステータコアを示す図であり、図10は、変形例2のステータコアを示す図であり、図11は、変形例3のステータコアを示す図である。図9図11は、回転電機1に取り付けられ第1の条件及び第2の条件を満たすレゾルバ11の変形例を示している。
【0057】
図9に示す変形例1では、ステータコア13は、環状部13aとティース13bとを備えており、環状部13aの内部には略円弧状の長孔13dが形成され、環状部13aの外周縁には略半円の切欠13eが形成されている。長孔13dは、固定用のボルトを挿通するための孔で、切欠13eは、位置決め用のピンが係合するためのノッチである。長孔13dも切欠13eも、ボルトが挿通される取付穴が形成された取付部13cと同様、回転電機1の永久磁石8から発生する磁束がステータコア13に流入する要因となり、回転電機のロータから漏洩する磁束がレゾルバのステータコア13の内周側(ティース13b側)に流入する磁束に影響を及ぼす箇所として作用するため、磁束誘導変化部となる。このため、変形例1では、第1の条件を満たすように、磁束誘導変化部である長孔13d及び切欠13eの個数はそれぞれ「8」であり、回転電機1(ロータ7)の磁極数「8」の約数で、周方向に均等配置されて周期対称になっている。
【0058】
図10に示す変形例2のレゾルバ11は、図12に示す変形例1とは異なり、長孔13dが形成されているが、切欠13eが形成されていない環状部13aを有する。長孔13dは、実施例1と同様、回転電機のロータから漏洩する磁束がレゾルバのステータコア13の内周側(ティース13b側)に流入する磁束に影響を及ぼす箇所として作用するため、磁束誘導変化部となる。このため、磁束誘導変化部である長孔13dは、第1の条件を満たすように、回転電機のロータの極数の約数である8個形成され、周方向に均等配置されて周期対称になっている。
【0059】
図11に示す変形例3のレゾルバ11は、図12に示す変形例1とは異なり、切欠13eが形成されているが、長孔13dが形成されていない環状部13aを有する。切欠13eは、実施例1と同様、回転電機のロータから漏洩する磁束がレゾルバのステータコア13の内周側(ティース13b側)に流入する磁束に影響を及ぼす箇所として作用するため、磁束誘導変化部となる。このため、磁束誘導変化部である切欠13eは、第1の条件を満たすように、回転電機のロータの極数の約数である8個形成され、周方向に均等配置されて周期対称になっている。
【0060】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1,1A 回転電機、2 ハウジング、3 エンドブラケット、4 シャフト、5,6 軸受、7,7A ロータ、8,8A 永久磁石、9,9A ステータコア、9a,91a 環状部、9b,91b ティース、10 モータ巻線、11,110,111,112 レゾルバ、12,120,121,122 ロータ、13,130,131,132 ステータコア、13a,130a,131a,132a 環状部、13b,130b,131b,132b ティース、13c,130c,131c,132c 取付部、13d 長孔、13e 切欠、14 インシュレータ、15 ステータ巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11