(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20240425BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
(21)【出願番号】P 2020085343
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 愉子
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-031028(JP,A)
【文献】特開2016-171057(JP,A)
【文献】特開2016-186932(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047491(WO,A1)
【文献】特表2010-530124(JP,A)
【文献】特表2010-505732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A):
Li
aMn
bFe
cM
zPO
4・・・(A)
(式(A)中、MはCo、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びzは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦z≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×z=3を満たす数を示す。)
で表されるリチウム系ポリアニオン粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなり、
乾式ミキサーによって積算エネルギー1.1kJ/gの負荷をかけたときに測定される粒径1.0μm以下の粒子量が、体積基準で0%~5%であり、かつ
タップ密度が1.0g/cm
3~1.6g/cm
3であるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子。
【請求項2】
安息角が、30°~45°である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子。
【請求項3】
リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の表面に担持してなるセルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量が、リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子中に1.0質量%~10.0質量%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子。
【請求項4】
平均粒径が、5μm~30μmである請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子。
【請求項5】
次の工程(I)~(III):
(I)リチウム系ポリアニオン粒子及びセルロースナノファイバーを含む造粒体Sを焼成して、焼結体Xを得る工程
(II)得られた焼結体Xに、乾式ミキサーにより積算エネルギー0.15kJ/g~0.30kJ/gの負荷をかけて、圧密体Yを得る工程
(III)得られた圧密体Yを焼成する工程
を備え、かつ工程(I)における焼成と工程(III)における焼成との少なくとも一方の焼成が、600℃~750℃の温度である請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の製造方法。
【請求項6】
工程(I)における焼成が、400℃~750℃の温度である請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の製造方法。
【請求項7】
工程(III)における焼成が、200℃~750℃の温度である請求項5又は6に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の製造方法。
【請求項8】
工程(I)における焼成での温度よりも工程(III)における焼成での温度が低い請求項5~7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好なサイクル特性を示すリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、携帯電話、デジタルカメラ、ノートPC、ハイブリッド自動車、電気自動車等広い分野に利用されている。こうしたリチウムイオン二次電池の正極材料として、その安全性の高さや容量の大きさから、LiMnxFe1-xPO4のようなリチウム系ポリアニオン粒子が有望視されている。その一方で、リチウム系ポリアニオン粒子は導電性が低く、得られるリチウムイオン二次電池において充分に電池物性を高めるには、依然として改善を要することから、従来より種々の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭素源としてイオン性有機物を用いた、特定の炭素質被膜で被覆された電極活物質(LiaAxMyPO4等)の集合体である電極材料が開示されており、電池の放電容量や入出力特性等の向上を図っている。また特許文献2には、カーボンナノチューブ等の特定の炭素材料とリチウム含有リン酸塩(LiMnxFe1-xPO4等)を含み、特定の細孔を有する複合粒子が開示されており、電池のレート特性等を高める試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6547891号公報
【文献】特開2018-139213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電極活物質であると、得られる二次電池において充放電を繰り返すにつれ、活物質の膨張収縮により電子伝導パスが消失してしまうおそれがあり、また上記特許文献2に記載の複合粒子であっても、粒子間の電子伝導パスは依然として不十分であり、サイクル特性の向上を充分に図る上では、更なる改善を要する状況にある。
【0006】
したがって、本発明の課題は、リチウム系ポリアニオン粒子を用いつつ、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を有効に向上させることのできるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、リチウム系ポリアニオン粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなり、かつ特定の粒子強度及びタップ密度を有するリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子であれば、得られるリチウムイオン二次電池において優れたサイクル特性を発現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(A):
LiaMnbFecMzPO4・・・(A)
(式(A)中、MはCo、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びzは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦z≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×z=3を満たす数を示す。)
で表されるリチウム系ポリアニオン粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなり、
乾式ミキサーによって積算エネルギー1.1kJ/gの負荷をかけたときに測定される粒径1.0μm以下の粒子量が、体積基準で0%~5%であり、かつ
タップ密度が1.0g/cm3~1.6g/cm3であるリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、次の工程(I)~(III):
(I)リチウム系ポリアニオン粒子及びセルロースナノファイバーを含む造粒体Sを焼成して、焼結体Xを得る工程
(II)得られた焼結体Xに、乾式ミキサーにより積算エネルギー0.15kJ/g~0.30kJ/gの負荷をかけて、圧密体Yを得る工程
(III)得られた圧密体Yを焼成する工程
を備え、かつ工程(I)における焼成と工程(III)における焼成との少なくとも一方の焼成が、600℃~750℃の温度である上記リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子であれば、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を有効に向上させることができ、極めて有用性の高い電極材料である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、上記式(A)で表されるリチウム系ポリアニオン粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなり、
乾式ミキサーによって積算エネルギー1.1kJ/gの負荷をかけたときに測定される粒径1.0μm以下の粒子量が、体積基準で0%~5%であり、かつ
タップ密度が1.0g/cm3~1.6g/cm3である。
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、表面にセルロースナノファイバー由来の炭素が堅固に担持されてなるリチウム系ポリアニオン粒子が一次粒子として堅固に集結した、圧密体のような二次粒子であって、乾式ミキサーによる積算エネルギー1.1kJ/gなる特定の負荷をかけたときに粒径1.0μm以下の粒子量が抑制され、かつ特定のタップ密度を有することから、リチウムイオン二次電池の製造過程において過度な微粉化を有効に抑制することのできる適度な強度を有する粒子である。
【0012】
リチウムイオン二次電池を構成する正極は、リチウム系ポリアニオン粒子のような正極活物質粒子を導電助剤や結着剤とともにミキサー等によって混練して電極スラリーを作製し、これを塗工・乾燥することにより製造される。ところが、この混練の際に衝撃や摩耗等によって正極活物質粒子が過度に微粉化されると、電極スラリー中で正極活物質が凝集して導電助剤との分散性の低下を招き、また、結着剤を過剰に吸油して電極全体の結着力の低下を招き、電子導電パスの低下を引き起こしかねない。さらに、過度に微粉化された正極活物質粒子は、サイクル時、電解液の分解や固体電解質界面形成等の副反応の影響を受けやすいため、これが電子導電パスの低下を引き起こしかねず、これを解決すべく本発明を見いだしたものである。
【0013】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子を構成するリチウム系ポリアニオン粒子は、下記式(A):
LiaMnbFecMzPO4・・・(A)
(式(A)中、MはCo、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。a、b、c、及びzは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦z≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×z=3を満たす数を示す。)
で表される。
【0014】
上記式(A)で表されるリチウム系ポリアニオン粒子は、いわゆる少なくとも遷移金属としてマンガン(Mn)及び鉄(Fe)を含むオリビン型リン酸遷移金属リチウム化合物である。式(A)中、Mは、Co、Ni、Ca、Sr、Y、Zr、Mo、Ba、Pb、Bi、La、Ce、Nd又はGdを示す。
また、上記式(A)中のa、b、c、及びzは、0<a≦1.2、0≦b≦1.2、0≦c≦1.2、0≦z≦0.3、及びb+c≠0を満たし、かつa+(Mnの価数)×b+(Feの価数)×c+(Mの価数)×z=3を満たす数を示す。
上記式(A)で表されるリチウム系ポリアニオン粒子としては、リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の平均放電電圧の観点から、aについては、0.6≦a≦1.2が好ましく、0.65≦a≦1.15がより好ましく、0.7≦a≦1.1がさらに好ましい。bについては、0.4≦b≦0.8が好ましく、0.5≦b≦0.8がより好ましく、0.7≦b≦0.8がさらに好ましい。cについては、0.2≦c≦0.6が好ましく、0.2≦c≦0.5がより好ましく、0.2≦c≦0.3がさらに好ましい。zについては、0≦z≦0.2が好ましく、0≦z≦0.15がより好ましく、0≦z≦0.1がさらに好ましい。
【0015】
具体的には、例えばLiMnPO4、LiMn0.3Fe0.7PO4、LiMn0.7Fe0.3PO4、LiMn0.9Fe0.1PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.75Fe0.15Mg0.1PO4、LiMn0.75Fe0.19Zr0.03PO4、LiMn0.6Fe0.4PO4、LiMn0.5Fe0.5PO4、Li1.2Mn0.63Fe0.27PO4、Li0.6Mn0.84Fe0.36PO4等が挙げられる。なかでもLiMn0.3Fe0.7PO4、LiMn0.7Fe0.3PO4、LiMn0.8Fe0.2PO4、LiMn0.6Fe0.4PO4、Li1.2Mn0.63Fe0.27PO4、又はLi0.6Mn0.84Fe0.36PO4が好ましい。
【0016】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、上記式(A)で表されるリチウム系ポリアニオン粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなる。かかるセルロースナノファイバーは炭化されて炭素となり、これが上記リチウム系ポリアニオン粒子の表面に堅固に担持してなる。セルロースナノファイバーとは、全ての植物細胞壁の約5割を占める骨格成分であって、かかる細胞壁を構成する植物繊維をナノサイズまで解繊等することにより得ることができる軽量高強度繊維である。かかるセルロースナノファイバーの繊維径は1nm~1000nmであり、水への良好な分散性も有している。また、セルロースナノファイバーを構成するセルロース分子鎖では、炭素による周期的構造が形成されていることから、これが炭化されて上記リチウム系ポリアニオン粒子の表面に堅固に担持されることによって、過度な微粉化を抑制する適度な強度を有し、電子導電パスの低下を有効に抑制して、得られる電池において優れたサイクル特性を発現させることができる。
【0017】
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、上記式(A)で表されるリチウム系ポリアニオン粒子の表面に、セルロースナノファイバー由来の炭素とともに水溶性炭素材料由来の炭素を担持してもよい。かかる水溶性炭素材料は、セルロースナノファイバーと同様、炭化されて炭素となり、これが上記リチウム系ポリアニオン粒子の表面に担持してなる。かかる水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、溶媒への溶解性及び分散性を高めて炭素材料として効果的に機能させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、デキストリンが好ましく、グルコースがより好ましい。
【0018】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子中に存在する、リチウム系ポリアニオン粒子の表面に担持してなるセルロースナノファイバー由来の炭素は、上記式(A)で表されるリチウム系ポリアニオン粒子間の間隙を充填するように存在する。すなわち、セルロースナノファイバー由来の炭素は、リチウム系ポリアニオン粒子の表面に存在しながら、リチウム系ポリアニオン粒子が形成するパッキング構造の粒子間空隙を充填している。一方、さらに炭素源として用い得る水溶性炭素材料は、リチウム系ポリアニオン粒子の表面に均一に堆積されることとなる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、特徴的な複合構造を有する炭素が、正極活物質のパッキング密度が増大する状態でリチウム系ポリアニオン粒子間の導電パスを形成しているため、優れたサイクル特性が発現され、かかる炭素の量を有効に減じることも可能になると考えられる。
【0019】
セルロースナノファイバー及び水溶性炭素材料は、その後炭化されて、上記リチウム系ポリアニオン粒子の表面に担持された炭素として、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子中に存在することとなる。リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の表面に担持してなる、炭化してなるセルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子中に、好ましくは1.0質量%~10.0質量%であり、より好ましくは1.5質量%~7.0質量%であり、さらに好ましくは2.0質量%~5.0質量%である。
また、水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量は、好ましくは0質量%~4.0質量%であり、より好ましくは0質量%~3.0質量%であり、さらに好ましくは0質量%~2.0質量%である。
セルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量及び水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量の合計は、好ましくは1.0質量%~10.0質量%、より好ましくは1.5質量%~7.0質量%、さらに好ましくは2.0質量%~5.0質量%である。
【0020】
なお、リチウムイオン二次電池用正極活物質粒子中に存在するセルロースナノファイバー由来の炭素の原子換算量、及び水溶性炭素材料由来の炭素の原子換算量は、炭素・硫黄分析装置を用いた測定により求められる。
【0021】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、表面にセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなるリチウム系ポリアニオン粒子である一次粒子が堅固に集結した圧密体のような二次粒子であることから、乾式ミキサーによって積算エネルギー1.1kJ/gの負荷をかけたときに測定される粒径1.0μm以下の粒子量が、体積基準で0%~5%である。かかる負荷は、従来のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子であれば、粉砕されて大部分が微粉化してしまい、粒径1.0μm以下の粒子量が過度に増大してしまう程の負荷である。これに対し、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、リチウム系ポリアニオン粒子の表面にセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなる一次粒子が堅固に集結してなり、適度な強度を有する圧密体様の二次粒子であることから、電極スラリーの調製中にリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子が不要に凝集することや、混練時の衝撃や摩耗等によって過度に微粉化されることを有効に回避することのできる粒子である。
【0022】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、乾式ミキサーによって積算エネルギー1.1kJ/gの負荷をかけたときに測定される粒径1.0μm以下の粒子量が、体積基準で0%~5%であって、好ましくは0%~3%であり、より好ましくは0%~1%である。
【0023】
なお、乾式ミキサーによる積算エネルギーは、下記式(1)により求められる。
積算エネルギー(kJ/g)
=粉体にかける負荷量(kW)×処理時間(s)÷処理量(g)・・・式(1)
また、乾式ミキサーによって積算エネルギー1.1kJ/gの負荷をかけたときに測定される粒径1.0μm以下の粒子量とは、JIS Z 8841-1993(造粒物の強度試験方法)における、回転ドラム及び駆動装置を用いた回転強度試験方法に類似した方法により求められる値である。
具体的には、例えばNOB-130(ホソカワミクロン社製)のような乾式ミキサーを用い、正極活物質粒子に対して、積算エネルギー1.1kJ/gの負荷に相当する圧縮力及びせん断力を付加したのち、JIS R 1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に準じる粒度分布測定装置、例えばレーザー回折散乱粒度分布測定装置マイクロトラックMT3300EX II(マイクロトラック・ベル社製)等により測定される、体積基準による粒径1.0μm以下の粒子量が占める割合(%)を意味する。
【0024】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、表面にセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなるリチウム系ポリアニオン粒子である一次粒子が堅固に集結した圧密体のような二次粒子であることから、そのタップ密度は、1.0g/cm3~1.6g/cm3であって、好ましくは1.2g/cm3~1.6g/cm3であり、より好ましくは1.4g/cm3~1.6g/cm3である。
なお、タップ密度とは、JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に規定される方法により測定される「タップかさ密度」を意味する。
【0025】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、リチウム系ポリアニオン粒子の表面にセルロースナノファイバー由来の炭素が担持してなる一次粒子が堅固に集結してなる二次粒子であり、その表面が滑らかな略球状を呈していることも相まって、適度な強度を発現することができる。具体的には、例えば、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の安息角は、好ましくは30°~45°であり、より好ましくは30°~40°であり、さらに好ましくは30°~35°である。
【0026】
なお、安息角とは、粉体を落下・堆積させたときに形成される山の稜線の角度であり、JIS R 9301-2-2「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角」に規定される方法により測定される値(°)を意味する。用い得る具体的な測定装置しては、粉体特性評価装置、例えばパウダテスタPT-X(ホソカワミクロン社製)が挙げられる。
【0027】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子の平均粒径は、過度な微粒子化が回避されてなる圧密体様の粒子である観点から、好ましくは5μm~30μmであり、より好ましくは9μm~26μmであり、さらに好ましくは13μm~22μmである。
【0028】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子は、次の工程(I)~(III):
(I)リチウム系ポリアニオン粒子及びセルロースナノファイバーを含む造粒体Sを焼成して、焼結体Xを得る工程
(II)得られた焼結体Xに、乾式ミキサーにより積算エネルギー0.15kJ/g~0.30kJ/gの負荷をかけて、圧密体Yを得る工程
(III)得られた圧密体Yを焼成する工程
を備え、かつ工程(I)における焼成と工程(III)における焼成との少なくとも一方の焼成が、600℃~750℃の温度である製造方法により得ることができる。
【0029】
工程(I)は、リチウム系ポリアニオン粒子及びセルロースナノファイバーを含む造粒体Sを焼成して、焼結体Xを得る工程である。
工程(I)で用いるリチウム系ポリアニオン粒子及びセルロースナノファイバーを含む造粒体は、具体的には、リチウム系ポリアニオン粒子を含むスラリー水qに、セルロースナノファイバー添加及び混合してスラリー水rを得た後、得られたスラリー水rをスプレードライに付して得ることができる。
【0030】
ここで、上記リチウム系ポリアニオン粒子とは、合成反応に付して得られるものであり、かかる合成反応に付す方法としては、固相法(焼成法、溶融-アニール法)と湿式法(水熱法)に大別されるが、いずれの方法であってもよく、さらに合成反応に付した後に粉砕又は分級してもよい。なかでも、粒径が小さく、かつ粒度が揃ったリチウム系ポリアニオン粒子が得られる観点から、水熱反応に付すことにより得られるものであるのが好ましい。
【0031】
具体的には、リチウム系ポリアニオン粒子を含むスラリー水qは、リチウム化合物を含むスラリーにリン酸化合物を混合して調製すればよい。
リチウム化合物としては、水酸化物(例えばLiOH・H2O、LiOH)、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩が挙げられる。なかでも、水酸化物が好ましい。
リン酸化合物としては、オルトリン酸(H3PO4、リン酸)、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等が挙げられる。なかでもリン酸を用いるのが好ましく、70質量%~90質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましい。
【0032】
そして、リチウム化合物を含むスラリー水を撹拌しながらリン酸を滴下し、窒素をパージして水熱反応等に付することにより、かかるスラリー中での反応を完了させて、上記(A)で表されるリチウム系ポリアニオン粒子を含むスラリー水qを得ればよい。
スラリー水qにおけるリチウム系ポリアニオン粒子の含有量は、水100質量部に対し、好ましくは10質量部~400質量部であり、より好ましくは30質量部~210質量部である。
【0033】
次いで、得られたスラリー水qに、セルロースナノファイバーを添加及び混合して、リチウム系ポリアニオン粒子とセルロースナノファイバーが共に充分に分散してなるスラリー水rを得る。
スラリー水rにおけるセルロースナノファイバーの含有量は、スラリー水r中のリチウム系ポリアニオン粒子100質量部に対し、炭化処理の残渣量換算で、好ましくは1.0質量部~10.0質量部であり、より好ましくは1.5質量部~7.0質量部であり、さらに好ましくは2.0質量部~5.0質量部である。このような割合になるように、スラリー水qへのセルロースナノファイバーの添加量を定めればよい。
【0034】
このようにして得られたスラリー水rをスプレードライに付して、上記造粒体Sを得ればよい。かかる造粒体Sの粒径は、レーザ回折・散乱法に基づく粒度分布におけるD50値で、好ましくは4μm~30μmであり、より好ましくは8μm~26μmである。ここで、粒度分布測定におけるD50値とは、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。したがって、適宜スプレードライヤーの運転条件を最適化することにより、かかる造粒体Sの粒径を調整すればよい。
【0035】
本発明の製造方法が備える工程(I)では、このようにして得られた造粒体Sを焼成して、焼結体Xを得る。これにより、造粒体Sに存在するセルロースナノファイバーを炭化させ、かかる炭素を式(A)で表されるリチウム系ポリアニオン粒子の表面に堅固に担持させることができる。
工程(I)における焼成温度は、好ましくは400℃~750℃であり、より好ましくは450℃~750℃であり、さらに好ましくは550℃~750℃である。また焼成時間は、好ましくは15分~180分であり、より好ましくは30分~120分である。さらに焼成雰囲気は、還元雰囲気又は不活性雰囲気であるのがよい。
【0036】
得られる焼結体Xの平均粒径は、好ましくは5μm~31μmであり、より好ましくは9μm~27μmである。
【0037】
工程(II)は、工程(I)で得られた焼結体Xに、乾式ミキサーにより積算エネルギー0.15kJ/g~0.30kJ/gの負荷をかけて、圧密体Yを得る工程である。工程(I)を経た焼結体Xにこのような負荷をかけることにより、焼結体Xを一旦締め固めたのちに、後述する工程(III)へ移行することとなり、表面に炭素が担持されてなる一次粒子のリチウム系ポリアニオン粒子が堅固に集結し、適度な強度を有する圧密体様の二次粒子として、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子を得ることができる。
【0038】
用い得る乾式ミキサーとしては、特に制限されないが、例えばMPミキサー(日本コークス社製)等を用いることができる。
【0039】
焼結体Xにかける積算エネルギーは、0.15kJ/g~0.30kJ/gであって、好ましくは0.17kJ/g~0.30kJ/gであり、より好ましくは0.20kJ/g~0.30kJ/gである。
【0040】
得られる圧密体Yの平均粒径は、好ましくは4μm~30μmであり、より好ましくは8μm~26μmである。
【0041】
工程(III)は、工程(II)で得られた圧密体Yを焼成する工程である。これにより、一旦締め固めた圧密体Yを一層堅固に圧密させることができ、適度な強度を発現させることができる。
工程(III)における焼成温度は、好ましくは200℃~750℃であり、より好ましくは200℃~600℃であり、さらに好ましくは200℃~400℃である。また焼成時間は、好ましくは15分~180分であり、より好ましくは30分~120分である。さらに焼成雰囲気は、還元雰囲気又は不活性雰囲気であるのがよい。
【0042】
ここで、本発明の製造方法において、工程(I)における焼成と工程(III)における焼成との少なくとも一方の焼成が、600℃~750℃の温度である。これにより、圧密体Yを一層堅固に圧密させつつ、工程を経るにしたがって、一部に生じ得るリチウム系ポリアニオン粒子やセルロースナノファイバー由来の炭素の結晶化度における欠陥を修復又は復活させて、適度な強度を有する圧密体としてのリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子を製造することができる。
かかる観点から、工程(I)における焼成での温度よりも工程(III)における焼成での温度が低いのが好ましく、より具体的には、例えば工程(I)における焼成温度が600℃~750℃であり、かつ工程(III)における焼成温度が200℃~400℃であるのがよい。
【0043】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質粒子を含む正極を適用できる、リチウムイオン二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータ、若しくは正極と負極と固体電解質を必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0044】
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト、シリコン系(Si、SiOx)、チタン酸リチウム又は非晶質炭素等の炭素材料等を用いることができる。そしてリチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。さらに、二種以上の上記の負極材料を併用してもよく、たとえばグラファイトとシリコン系の組み合わせを用いることができる。
【0045】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0046】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF3)2及びLiN(SO3CF3)2、LiN(SO2C2F5)2及びLiN(SO2CF3)(SO2C4F9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【0048】
固体電解質は、正極及び負極を電気的に絶縁し、高いリチウムイオン電導性を示すものである。たとえば、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Li7La3Zr2O12、50Li4SiO4・50Li3BO3、Li2.9PO3.3N0.46、Li3.6Si0.6P0.4O4、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3、Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P2S5、50Li2S・50GeS2、Li7P3S11、Li3.25P0.95S4を用いればよい。
【0049】
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型,角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
LiOH・H2O 1272g、及び水4Lを混合してスラリーaを得た。次いで、得られたスラリーaを、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液1153gを35mL/分で滴下し、続いてセルロースナノファイバー(Wma-10002、スギノマシン社製、繊維径4nm~20nm)11.78kgを添加して、速度400rpmで12時間撹拌して、Li3PO4を含むスラリーbを得た。得られたスラリーbに窒素パージして、スラリーbの溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした後、スラリーb全量に対し、MnSO4・5H2O 1688g、FeSO4・7H2O 834gを添加してスラリーcを得た。添加したMnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、70:30であった。
【0052】
次いで、得られたスラリーcをオートクレーブに投入し、170℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は0.8MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を-50℃で12時間凍結乾燥して複合体dを得た。得られた複合体dを1000g分取し、これに水1Lを添加して、スラリーeを得た。得られたスラリーeを超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた後、スプレードライ装置(MDL-050M、藤崎電機株式会社製)を用いてスプレードライ(ノズルエアー流量35L/min、給気温度180℃)に付して造粒体S1を得た。
【0053】
得られた造粒体S1を、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)にて650℃で30分焼成して、焼結体X1を得た。得られた焼結体X1を300g分取し、MPミキサー(日本コークス社製)を用いて、粉体にかかる負荷量0.4kWで3分間の圧縮力及びせん断力を付加し(負荷した積算エネルギー:0.24kJ/g)、圧密体Y1を得た。次いで、得られた圧密体Y1をアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)にて200℃で30分焼成して、二次電池用正極活物質粒子A(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:15.8μm)を得た。
【0054】
[実施例2]
焼結体X1に負荷した積算エネルギーを0.16kJ/g(圧縮力及びせん断力の付加時間:2分間)とした以外、実施例1と同様にして、二次電池用正極活物質粒子B(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:16.0μm)を得た。
【0055】
[実施例3]
添加するMnSO4・5H2Oを723g、FeSO4・7H2Oを1946gとし、MnSO4とFeSO4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)を30:70とした以外、実施例1と同様にして、二次電池用正極活物質粒子C(LiMn0.3Fe0.7PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:15.5μm)を得た。
【0056】
[実施例4]
分取する複合体dを600gとした以外、実施例1と同様にしてスラリーeを得た。次いで、得られたスラリーeを用い、スプレードライの条件をノズルエアー流量75L/min、給気温度120℃として造粒体S1を得た以外、実施例1と同様にして、二次電池用正極活物質粒子D(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:5.2μm)を得た。
【0057】
[実施例5]
分取する複合体dを1200gとした以外、実施例1と同様にしてスラリーeを得た。次いで、得られたスラリーeを用い、スプレードライの条件をノズルエアー流量20L/min、給気温度190℃として造粒体S1を得た以外、実施例1と同様にして、二次電池用正極活物質粒子E(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:29.7μm)を得た。
【0058】
[実施例6]
焼結体X1に負荷した積算エネルギーを0.20kJ/g(圧縮力及びせん断力の付加時間:2分30秒間)とした以外、実施例4と同様にして、二次電池用正極活物質粒子F(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:5.3μm)を得た。
【0059】
[実施例7]
焼結体X1に負荷した積算エネルギーを0.29kJ/g(圧縮力及びせん断力の付加時間:3分40秒間)とした以外、実施例5と同様にして、二次電池用正極活物質粒子G(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:29.6μm)を得た。
【0060】
[実施例8]
セルロースナノファイバーの添加量を6481gとした以外、実施例1と同様にして二次電池用正極活物質粒子H(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=1.1質量%、平均粒径:15.6μm)を得た。
【0061】
[実施例9]
セルロースナノファイバーの添加量を28.28kgとした以外、実施例1と同様にして二次電池用正極活物質粒子I(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=4.8質量%、平均粒径:16.1μm)を得た。
【0062】
[比較例1]
焼結体X1に負荷した積算エネルギーを0.10kJ/g(圧縮力及びせん断力の付加時間:1分15秒間)とした以外、実施例1と同様にして二次電池用正極活物質粒子J(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:16.5μm)を得た。
【0063】
[比較例2]
焼結体X1に負荷した積算エネルギーを0.40kJ/g(圧縮力及びせん断力の付加時間:5分間)とした以外、実施例1と同様にして二次電池用正極活物質粒子K(LiMn0.7Fe0.3PO4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:13.3μm)を得た。
【0064】
得られた活物質粒子A~Kを用い、下記方法にしたがって、各測定及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0065】
《平均粒径》
レーザー回折散乱粒度分布測定装置マイクロトラックMT3300EX II(マイクロトラック・ベル社製)を用いて体積基準の粒度分布を測定し、累積50%での粒径を平均粒径とした。
【0066】
《粒径1μm以下の粒子量(%)》
NOB-130(ホソカワミクロン社製)を用い、正極活物質粒子300gに対し、粉体にかかる負荷量2.7kWで2分間の圧縮力及びせん断力(積算エネルギー1.1kJ/gの負荷)を付加した後、レーザー回折散乱粒度分布測定装置マイクロトラックMT3300EX II(マイクロトラック・ベル社製)により測定される、粒径1.0μm以下の体積基準の割合を粒径1μm以下の粒子量(%)とした。
【0067】
《タップ密度(g/cm3)》
JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に規定される方法にしたがってタップかさ密度を測定し、これをタップ密度(g/cm3)とした。
【0068】
《安息角(°)》
粉体特性評価装置パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン社製)を用い、JIS R 9301-2-2「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-2:安息角」に規定される方法にしたがって、安息角(°)を測定した。
【0069】
《サイクル特性の評価方法》
実施例、比較例で得られた活物質粒子を正極材料として用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られた活物質粒子、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを質量比90:5:5の配合割合で混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が-50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型二次電池(CR-2032)を製造した。
【0070】
得られた二次電池を用いて、サイクル特性を評価した。具体的には、電流密度170mA/g、電圧4.5Vの定電流充電と、電流密度170mA/g、終止電圧2.0Vの定電流放電とし、電流密度170mA/g(1CA)における放電容量を求めた。さらに、同じ充放電条件の100サイクル繰り返し試験を行い、下記式(2)により容量保持率(%)を求めた。なお、充放電試験は全て30℃で行った。
容量保持率(%)
=(100サイクル後の放電容量)/(1サイクル後の放電容量)×100 ・・・(2)
【0071】