(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】レンズユニット、カメラモジュール、絞り部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03B 9/02 20210101AFI20240425BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240425BHJP
G03B 15/00 20210101ALN20240425BHJP
【FI】
G03B9/02 A
G02B7/02 H
G02B7/02 D
G03B15/00 V
(21)【出願番号】P 2020102206
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 将俊
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-072151(JP,A)
【文献】特開2009-229542(JP,A)
【文献】特開2017-015815(JP,A)
【文献】特開2011-059237(JP,A)
【文献】特開2002-229095(JP,A)
【文献】特開2016-216631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/02
G02B 7/02-7/16
G02B 15/00
G03B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を通過する光の量を調整する環状の絞り部材と、前記絞り部材を含む前記レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する筒状の鏡筒とを備えるレンズユニットにおいて、
光吸収性樹脂が前記絞り部材の内周面または内周端部に設けられ、
前記絞り部材の内周面または内周端部が前記光吸収性樹脂を係止させるための係止部を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記係止部が凹凸状の段部または傾斜面であることを特徴とする請求項
1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記光吸収性樹脂が前記絞り部材の内周面または内周端部の全周にわたって設けられることを特徴とする請求項1
または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記光吸収性樹脂が前記絞り部材の内周面全体または内周端部全体を覆うように設けられることを特徴とする請求項
3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記光吸収性樹脂の表面が滑らかな曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記絞り部材は、絞り機能を果たす光軸に対するその最突出部位が全周にわたって前記光吸収性樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載のレンズユニットを備えていることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項8】
光学系に設けられ、通過する光の量を調整するための環状の絞り部材であって、その内周面または内周端部に光吸収性樹脂が設けられ
、
前記内周面または内周端部が前記光吸収性樹脂を係止させるための係止部を有することを特徴とする絞り部材。
【請求項9】
前記係止部が凹凸状の段部または傾斜面であることを特徴とする請求項
8に記載の絞り部材。
【請求項10】
前記光吸収性樹脂が前記絞り部材の内周面または内周端部の全周にわたって設けられることを特徴とする請求項
8または9に記載の絞り部材。
【請求項11】
前記光吸収性樹脂が前記絞り部材の内周面全体または内周端部全体を覆うように設けられることを特徴とする請求項
10に記載の絞り部材。
【請求項12】
前記光吸収性樹脂の表面が滑らかな曲面状に形成されていることを特徴とする請求項
8から11のいずれか一項に記載の絞り部材。
【請求項13】
絞り機能を果たす光軸に対するその最突出部位が全周にわたって前記光吸収性樹脂で構
成されていることを特徴とする請求項
8から12のいずれか一項に記載の絞り部材。
【請求項14】
光学系に設けられて通過する光の量を調整するための絞り部材を製造する製造方法であって、
金型に樹脂を流し込んで環状の成形体を形成する成形ステップと、
凹凸状の段部または傾斜面を含む係止部を前記成形体の内周面または内周端部に形成する係止部形成ステップと、
流動性の光吸収性樹脂を前記係止部に係止させるように前記成形体の内周面または内周端部に塗布する樹脂塗布ステップと、
前記光吸収性樹脂を硬化させる樹脂硬化ステップと、
を含むことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成するレンズユニット、カメラモジュール、絞り部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レンズユニットの前記絞り部材は、通過する光の量を調整(制限)するものであり、絞り部材を適切な位置に配置することにより、フレアやゴーストを適切に抑えることができ、所望の光学性能を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、透過光量を制限する前記絞り部材としては、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」や、ゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」(フレアカッター)などがあるが、このような絞り部材は、いずれの場合にも、環状を成しており、その内周面形状によってはレンズユニットの光学性能に悪影響を及ぼす場合もある。
【0006】
例えば、樹脂やSUS等により形成される絞り部材の内周面に欠損部位や粗面部位があると、その部位で光が反射して拡散する場合があり、そのような拡散光(迷光)は、シャワー状のゴーストを生じさせて、光学性能を悪化させ得る。特に、絞り部材を樹脂により金型成形する場合には、それに伴って生じるバリ等にも起因して拡散光を伴わない所望の形状に絞り部材の内周面を仕上げることが困難な場合もあり、そうした状況下でも、絞り部材の内周面形状に起因する光の反射を抑えることが、迷光を確実に排除した高い撮像性能が求められる近年においては急務な課題である。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、絞り部材の内周形状に起因する光の反射を抑えることができるレンズユニット、カメラモジュール、絞り部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を通過する光の量を調整する環状の絞り部材と、前記絞り部材を含む前記レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する筒状の鏡筒とを備えるレンズユニットにおいて、
光吸収性樹脂が前記絞り部材の内周面または内周端部に設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明の上記構成によれば、絞り部材の内周面または内周端部に光吸収性樹脂が設けられているため、絞り部材の内周面または内周端部で光が吸収され、したがって、絞り部材の内周形状に起因する光の反射拡散を抑えることができる。その結果、拡散光(迷光)に伴うシャワー状のゴーストの発生を抑えて、所望の光学性能を確保することができるようになる。
【0010】
上記構成において、光吸収性樹脂は、光の反射を引き起こす欠損部位や粗面部位等の異形状部位が絞り部材の内周面または内周端部に存在する場合には、その異形状部位のみを覆うように部分的に絞り部材の内周面または内周端部に設けられてもよいが、絞り部材の内周面または内周端部での光反射を確実に抑えて迷光を排除できるようにするために絞り部材の内周面または内周端部の全周にわたって設けられることが好ましい。この場合、異形状部位の露出を確実に防止するために、光吸収性樹脂は、絞り部材の内周面全体または内周端部全体を覆うように設けられることが更に好ましい。
【0011】
このように、光吸収性樹脂は、光の反射を生じさせる絞り部材の内周面または内周端部の異形状部位を覆って排除することにより光の反射拡散を抑制することに加え、それ自体も光を吸収することにより光の反射拡散を確実に防止しようとするものであるが、それ自体が滑らかな曲面状の外表面を伴うことにより光の反射拡散を更に一層防止して迷光を確実に排除できるようになる。
【0012】
なお、上記構成において、「光吸収性樹脂」とは、光を吸収できる性質を有する樹脂のことであり、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂などを挙げることができる。特に、紫外線硬化樹脂としては、例えば、ケミテック株式会社が提供するケミシールU-2077が好適である。また、光吸収性樹脂は、絞り部材の内周面または内周端部に対するその保持力を高めるために、粘度が2000mPa・s以上であることが好ましい。また、上記構成において、絞り部材は、例えば樹脂やSUS等により形成することができ、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」や、ゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」(フレアカッター)などを含む。
【0013】
また、上記構成では、絞り部材の内周面または内周端部が光吸収性樹脂を係止させるための係止部を有することが好ましい。これによれば、光吸収性樹脂を係止部によって絞り部材の内周面または内周端部に確実に保持させる(絞り部材の内周面または内周端部に対する光吸収性樹脂の保持力を高める)ことができ、恒久的な光反射防止作用をもたらすことが可能となる。この場合、係止部は、凹凸状の段部または傾斜面を含むことが好ましい。
【0014】
また、以上のような特徴を有する絞り部材を樹脂により製造する場合、そのような製造方法は、例えば、金型に樹脂を流し込んで環状の成形体を形成する成形ステップと、凹凸状の段部または傾斜面を含む係止部を前記成形体の内周面または内周端部に形成する係止部形成ステップと、流動性の光吸収性樹脂を前記係止部に係止させるように前記成形体の内周面または内周端部に塗布する樹脂塗布ステップと、前記光吸収性樹脂を硬化させる樹脂硬化ステップとを含むことができる。
この場合、光吸収性樹脂の塗布厚は、例えば性能に適正な厚さに設定される。また、係止部形成ステップは、エッチングや機械加工などによって実現できる。
【0015】
また、本発明は、前述の特徴を有する絞り部材およびカメラモジュールも更に提供する。これにより、前述の作用効果を絞り部材およびカメラモジュールで得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、絞り部材の内周面または内周端部に光吸収性樹脂が設けられているため、絞り部材の内周面または内周端部で光が吸収され、したがって、絞り部材の内周形状に起因する光の反射拡散を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図である。
【
図2】
図1のレンズユニットに設けられる第1の絞り部材としてのミドルリングの光軸方向に対して垂直な方向に沿う横断面図(
図1のX-X線に沿う断面図)である。
【
図3】
図1のレンズユニットに設けられる第1の絞り部材としてのミドルリングの要部拡大断面図であり、
図1に二点鎖線の枠で示されるA部の光軸方向に沿う部分縦断面図である。
【
図4】
図1のレンズユニットに設けられる第2の絞り部材としてのアイリスリングの要部拡大断面図であり、
図1に二点鎖線の枠で示されるB部の光軸方向に沿う部分縦断面図である。
【
図5】絞り部材を製造する製造方法のステップの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、
図1および
図6において複数のレンズについてはハッチングを省略している。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、例えば金属製の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16、第5のレンズ17、および、第6のレンズ18から成る6つのレンズとを備えている。これらのレンズ13~18は、それらの一部同士の間にスペーサ20A,20B,20C,20Dを介しつつ積み重ねられるように鏡筒12内に組み込まれている。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0020】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17,18は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17,18が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成するこれらのレンズ13,14,15,16,17,18は全てがガラス製であるが、そうである必要はなく、一部がガラス製で一部が樹脂製、または、全てが樹脂製であっても構わない。また、本実施の形態において、像側に位置される2つの第4および第5のレンズ16,17は貼り合わせレンズであるが、そうである必要もない。また、本実施の形態において、鏡筒12は、前述したように金属製であるが、樹脂によって形成されても構わない。なお、これらのレンズ13,14,15,16,17,18の表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0021】
鏡筒12の物体側端部12b(
図1において上端部)には締結固定部材としての略円筒状のキャップ23が螺着されており、このキャップ23によって最も物体側に位置される第1のレンズ13が鏡筒12の物体側端部12bに固定されている。具体的には、キャップ23は、その周側壁の内周面に形成された雌ネジ部23aが鏡筒12の物体側端部12bの外周面に形成された雄ネジ部12aに螺合されて、そのフランジ状の上端の径方向内側の周端縁部23bが第1のレンズ13の物体側に面する表面13aの外周縁部に形成された段差部13bに当て付けられており、このキャップ23が締め付けられることによって第1のレンズ13が物体側端部12bに固定されてレンズ群Lが鏡筒12内に光軸方向で保持される。
【0022】
また、鏡筒12の像側の端部(
図1において下端部)には、第6のレンズ18よりも外径の小さい開口部を有する内側フランジ部24(本実施の形態では、第6のレンズ18の像側の表面に設けられた段差と係合している)が設けられており、この内側フランジ部24とキャップ23との間で、レンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17,18とスペーサ20A,20B,20C,20Dとが光軸方向で挟持されて保持される。
【0023】
なお、図示しないが、第1のレンズ13の外周側面と鏡筒12との間にはシール部材として例えばOリングが装着される。このOリングは、第1のレンズ13の外周側面と鏡筒12の物体側端部12bの内周面との間で径方向に圧縮されることにより、鏡筒12の物体側端部12bと第1のレンズ13との間を封止しており、これにより、レンズユニット11の物体側の端部から鏡筒12内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。なお、鏡筒12の像側の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられる外側フランジ部25が鍔状に設けられている。
【0024】
また、本実施の形態において、前述したスペーサ20A,20B,20C,20Dの一部は、レンズ群Lを通過する光の量を調整(制限)する絞り部材を兼ねている。具体的には、本実施の形態において、第2のレンズ14と第3のレンズ15との間に介挿される第1のスペーサ20Aは、ゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」(フレアカッター)として機能する径方向内側端部が尖端縁を成すミドルリングであり(したがって、以下、第1のスペーサ20Aを第1の絞り部材20Aと称する)、また、第3のレンズ15と第4のレンズ16との間に介挿されるスペーサのうち物体側に位置される第2のスペーサ20Bは、第1の絞り部材20Aよりも薄い「遮光絞り」(フレアカッター)として機能する径方向内側端部が面状を成すアイリスリングであり(したがって、以下、第2のスペーサ20Bを第2の絞り部材20Bと称する)、さらに、第3のレンズ15と第4のレンズ16との間に介挿されるスペーサのうち像側に位置される第3のスペーサ20Cは、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」として機能する(したがって、以下、第3のスペーサ20Cを第3の絞り部材20Cと称する)。
【0025】
ここで、フレアカッターとして機能する第1および第2の絞り部材20A,20Bは、例えば樹脂を環状に成形することにより形成され(勿論、SUS等の金属により形成されても構わない)、
図1のX-X線に沿う断面図である
図2、
図1に二点鎖線の枠で示されるA部(第1の絞り部材20Aの内周端縁)の光軸方向に沿う部分拡大縦断面図である
図3、および、
図1に二点鎖線の枠で示されるB部(第2の絞り部材20Bの内周端縁)の光軸方向に沿う部分拡大縦断面図である
図4に示されるように、成形時に生じる凹凸部(例えば、光の反射を引き起こし得る欠損部位や粗面部位等の異形状部位)および/または成形後に意図的に形成される凹凸部(例えば、後述する係止部40,42)をその内周端部または内周面20Aa,20Baに有する。そして、このような凹凸部を伴う第1および第2の絞り部材20A,20Bの内周端部または内周面20Aa,20Baには、光を吸収する樹脂である光吸収性樹脂30が設けられている(勿論、F値を正確に規定できさえすれば、第3の絞り部材20Cの内周面に光吸収性樹脂30が設けられてもよい)。
【0026】
特に、本実施の形態において、第1および第2の絞り部材20A,20Bには、その成形後に、光吸収性樹脂30を係止させるための係止部40,42が内周端部または内周面20Aa,20Baに形成され、これらの係止部40,42に対して係止されるように光吸収性樹脂30が内周端部または内周面20Aa,20Ba上に設けられる。具体的には、本実施の形態において、第1の絞り部材20Aは、
図3に示されるように、凹凸状の段部(例えば、径方向に延びる面と光軸方向に延びる面とによって形成される段部)として形成される係止部40をその内周端部(内周端縁)20Aaに有し、この係止部40に対して光吸収性樹脂30が係止される。一方、第2の絞り部材20Bは、
図4に示されるように、凹凸状の傾斜面(例えば、物体側から像側へ向けて(又はその逆の方向に向けて)径方向内側に向かうように波状に延びる傾斜面)として形成される係止部42をその内周面20Baに有し、この係止部42に対して光吸収性樹脂30が係止される。
【0027】
また、本実施の形態においては、第1の絞り部材20Aに関して
図2にも示されるように、光吸収性樹脂30が絞り部材20A,20Bの内周端部または内周面20Aa,20Baの全周にわたって設けられる。また、
図3および
図4に明確に示されるように、光吸収性樹脂30は、絞り部材20A,20Bの内周端部または内周面20Aa,20Baの全体を覆うように設けられ、その表面が滑らかな曲面状に形成されている。また、第1の絞り部材20Aは、例えば
図2に示されるように、光軸に対する最突出部位(絞り機能を果たす部分)が全周にわたって光吸収性樹脂30で構成されているのが好ましい。これは、絞り部材が露出していると、その部分で反射等が生じるからである。
【0028】
また、このような絞り部材20A,20Bを本実施の形態のように樹脂により形成する場合には、例えば、以下のような製造方法によって絞り部材20A,20Bを製造することができる。具体的には、例えば
図5に示されるように、まず最初に、金型に樹脂を流し込んで環状の成形体20AA(20BA)(
図2~
図4参照)を形成する(成形ステップS1)。その後、凹凸状の段部または凹凸状の傾斜面を含む係止部40(42)をエッチングや機械加工などによって成形体20AA(20BA)の内周面または内周端部に形成する(係止部形成ステップS2)。このようにして係止部40(42)を形成したら、今度は、例えば粘度が2000mPa・s以上の流動性の光吸収性樹脂30、例えば紫外線硬化樹脂を係止部40(42)に係止させるように成形体20AA(20BA)の内周端部または内周面20Aa,20Baに塗布する(樹脂塗布ステップS3)。このとき、光吸収性樹脂30の塗布厚は、例えば100~500μmに設定される。この設定上限を上回ると、ひけが発生して形状が不安定となり、一方、この設定下限を下回ると、製造制御が困難となり、コスト増につながる。そして、最後に、光吸収性樹脂30を硬化させて成形体20AA(20BA)の内周端部または内周面20Aa,20Baに安定的に付着させる(樹脂硬化ステップS4)。前述のように、紫外線硬化樹脂が光吸収性樹脂30として使用される場合には、樹脂硬化ステップS4において、紫外線が紫外線硬化樹脂に対して照射される。
【0029】
図6は、以上のような構成を成すレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ99が装着された
図1のレンズユニット11を含んで構成される。
【0030】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0031】
上ケース301は、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面301aとレンズユニット11の鏡筒12の外周面12cとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0032】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、絞り部材20A,20Bの内周端部または内周面20Aa,20Baに光吸収性樹脂30が設けられているため、絞り部材20A,20Bの内周端部または内周面20Aa,20Baで光が吸収され、したがって、絞り部材20A,20Bの内周形状に起因する光の反射拡散を抑えることができる。その結果、拡散光(迷光)に伴うシャワー状のゴーストの発生を抑えて、所望の光学性能を確保することができるようになる。
【0034】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒などの形状は、前述した実施の形態に限定されない。また、レンズユニットにおける絞り部材の数および形態も前述した実施の形態のそれに限定されない。また、絞り部材の内周面または内周端部に対する光吸収性樹脂の配設形態も前述した実施の形態のそれに限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11 レンズユニット
12 鏡筒
13,14,15,16,17,18 レンズ
20A,20B,20C スペーサ(絞り部材)
20Aa 内周端部
20Ba 内周面
30 光吸収性樹脂
40,42 係止部
300 カメラモジュール
O 光軸
S 内側収容空間