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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】列車の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/04 20060101AFI20240425BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B61L25/04
G01C21/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020109927
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007164
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 茂
(72)【発明者】
【氏名】山越 基玄
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-052105(JP,A)
【文献】特開2017-199247(JP,A)
【文献】特開平07-123533(JP,A)
【文献】特開2007-278023(JP,A)
【文献】特開2018-036797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/04
G01C 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の走行する線路に磁気マーカの埋設された情報提供区間が設定され、列車に搭載した磁気センサによって前記磁気マーカを検出し、所定の情報を読み取るようにした列車の制御装置であって、
列車には、車幅方向に並んで複数の前記磁気センサが設けられ、
前記情報提供区間には、一対のレールの間に複数の前記磁気マーカが線路の幅方向に並んで埋設され、
前記情報提供区間の手前に、前記情報提供区間から所定の第1間隔を空けて手前側磁気マーカが埋設され、
前記手前側磁気マーカは、列車の走行方向に互いに間隔を空けて埋設され、車幅方向に長尺の第1、第2の2つの手前側磁気マーカからなり、
前記第1、第2の手前側磁気マーカをそれぞれ検出した前記磁気センサの出力から、列車の走行速度を算出する車速算出部を備え、
前記手前側磁気マーカを検出した後、前記車速算出部が算出した列車の走行速度と予め設定された基準速度と前記第1間隔とに基づいて、前記情報提供区間に進入するタイミングに合わせて前記磁気センサを作動させるように構成されている、
ことを特徴とする列車の制御装置。
【請求項2】
前記情報提供区間には、線路の幅方向に並ぶ複数の前記磁気マーカによって形成されるマーカ列が、列車の進行方向に所定の第2間隔を空けて2列以上、設けられ、
前記マーカ列同士の前記第2間隔に応じて予め設定された前記基準速度と、前記車速算出部が算出した列車の走行速度との偏差を求める車速偏差算出部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の列車の制御装置。
【請求項3】
前記車速偏差算出部で算出された前記基準速度との偏差を小さくするように、列車の走行速度を補正する車速補正部を備え、
前記情報提供区間における前記磁気センサを作動させる間隔は、前記基準速度と前記第2間隔とに基づいて予め設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の列車の制御装置。
【請求項4】
前記情報提供区間は、前記情報提供区間を通過した列車が転轍機に到達する前に前記転轍機の作動を完了できるような距離だけ、前記転轍機から手前に離れて設定されている、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の列車の制御装置。
【請求項5】
前記情報提供区間は、前記磁気センサの出力によって、分岐後に転向する進路の曲率の情報及び制限速度の少なくとも一方を含む走行情報を提供する、
ことを特徴とする請求項4に記載の列車の制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路を走行する列車の制御装置に関し、特に位置その他の情報の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より一般的に、走行している列車の位置情報を得るために、列車の車軸に設けた速度発電機から出力する交流信号により車輪の回転数を積算して、列車の走行距離を算出している。このように車輪の回転数を利用して列車の走行位置を検出する方法では、走行中における車輪の空転や滑走が生じると、列車の走行距離を正確に算出できなくなるので、位置情報の精度が低下してしまう。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1に開示されるように、地上側に設置された地上子やIDタグ、トランスポンダ等を列車が通過するたびに、列車の走行位置を補正することが行われている。但し、そのように走行位置を補正する場合、精度を高めようとすればするほど、設置する地上子等の数が多くなって、多額の費用がかかってしまう。また、補正の頻度があまり高くなると、その処理の演算負荷も問題になる。
【0004】
すなわち、前記の地上子やIDタグ、トランスポンダ等は、その位置情報を含めた種々の情報を提供するために、有線または無線の通信装置を備えることから、比較的高価なものになる。位置情報を得るだけであれば、線路に沿って埋設した磁気マーカを磁気センサによって検出することが考えられ、例えば特許文献2には、磁気マーカを用いて自動車の走行を支援するシステムが開示されている。
【0005】
特許文献2に開示されるシステムでは、自動車の走行する方向に沿って道路に多数の磁気マーカを埋設し、これらを誘導マーカとして用いるだけでなく、特定の区間(道路走行支援情報提供区間)においては磁気マーカの極性(N/S)を所定のパターンで変化させることにより、自動車に運転支援のための情報を提供するようになっている。例えば8個の磁気マーカを用いれば、8ビットの情報を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-157957号公報
【文献】特開2003-109182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献2のシステムにおいては、自動車の走行する方向に沿って磁気マーカを並べている。これは通常、自動車の進路が左右に(道路の幅方向に)変化することを考慮したものであるが、例えば磁気マーカの間隔を2mとすれば、8個のマーカ(8ビットの情報)を検出するために14mも進まなくてはならず、自動車の移動距離に対して得られる情報量が少ないと言える。
【0008】
これに対して列車の場合は、一対のレール(軌道)上を車輪が転動することから、走行方向に対して左右に進路が変化することはない。そこで、複数の磁気マーカを線路の幅方向に、即ちレールの間を延びるように並べるとともに、列車にもその車幅方向に並べて磁気センサを配設し、これにより複数の磁気マーカの極性(N/S)のパターンを読み取ることが考えられる。
【0009】
但し、そのように線路の幅方向に並んだ磁気マーカを一度に検出するようにした場合、検出ミスによって失われる情報量も多くなってしまう。すなわち、走行する列車に搭載した磁気センサで線路の磁気マーカを検出するためには、マーカの埋設されている箇所に到達するタイミングで磁気センサの出力の変化を読み取らなくてはならないが、列車の走行速度によってはタイミングが合わず、検出ミスが発生する。こうなると、一度に8ビット分の情報が失われることから、訂正が難しくなる。
【0010】
本発明は以上の課題を考慮したものであり、その目的は、線路に埋設した複数の磁気マーカのパターンから情報を読み取る場合に、移動距離あたりの情報提供量を多くしながら、検出ミスを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る1つの態様は、列車の走行する線路に磁気マーカの埋設された情報提供区間が設定され、列車に搭載した磁気センサによって前記磁気マーカを検出し、所定の情報を読み取るようにした列車の制御装置であって、列車には、車幅方向に並んで複数の前記磁気センサが設けられ、前記情報提供区間には、一対のレールの間に複数の前記磁気マーカが線路の幅方向に並んで埋設され、前記情報提供区間の手前に、手前側磁気マーカが埋設され、前記手前側磁気マーカを検出した後、列車の走行速度に応じて前記磁気センサを作動させる構成としたものである。
(2)上記(1)の態様において、前記情報提供区間には、線路の幅方向に並ぶ複数の前記磁気マーカによって形成されるマーカ列が、列車の進行方向に所定の間隔を空けて2列以上、設けられ、前記マーカ列同士の間隔に応じて予め設定された基準速度と、列車の走行速度との偏差を求める車速偏差算出部を備えていてもよい。
(3)上記(2)の態様において、前記車速偏差算出部で算出された基準速度との偏差を小さくするように、列車の走行速度を補正する車速補正部を備えていてもよい。
(4)上記(1)の態様において、前記手前側磁気マーカを検出した時の列車の走行速度に基づいて、前記マーカ列同士の間隔から前記磁気センサを作動させる間隔を変化させるようにしてもよい。
(5)上記(1)~(4)のいずれかの態様において、前記絵前側磁気マーカは、列車の走行方向に互いに間隔を空けて埋設された第1、第2の2つの手前側磁気マーカからなり、これら第1、第2の手前側磁気マーカをそれぞれ検出した前記磁気センサの出力から、列車の走行速度を算出する車速算出部を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の列車の制御装置によれば、線路に埋設した複数の磁気マーカのパターンから情報を読み取る場合に、移動距離あたりの情報提供量を多くしながら、検出ミスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態の列車の制御装置の概略構成を示す図である。
図2】情報提供区間における磁気マーカの配置について説明する図である。
図3】磁気マーカの検出ミスについて説明する図である。
図4】車上装置の構成を示す機能ブロック図である。
図5】列車の制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0015】
図1はこの発明の列車の制御装置の概略構成を模式的に示しており、本実施形態では、例えば路面電車である列車1に、その走行制御等を行う車上装置2が搭載され、無線通信などによって地上装置3と情報交換するようになっている。地上装置3は、車上装置2から送信される列車1の位置の情報やその進路の情報(図外の連動装置から得られる)を基に、列車1の走行制御情報や信号機Sおよび転轍機Tの作動制御情報等を生成する。
【0016】
車上装置2は、いわゆるコンピュータ装置からなり、所定のプログラムを実行して各種の処理を行う処理演算ユニット(CPU)、この処理演算ユニットにおいて使用されるプログラムやデータを記憶するROMやRAM等のメモリを備えている。車上装置2は、列車1に搭載されたGPS受信機4や磁気センサ5からの信号によって列車1の位置情報や走行制御のための所定の情報を取得するための処理を行う。なお、GPS受信機4は、人口衛星との通信によって位置を検出する周知のものであり、その説明は省略する。
【0017】
磁気センサ5は、磁気マーカ6との相互作用によってその位置および極性(N/S)を検出する。一例として磁気センサ5は公知のマグネトインピーダンス(MI:Magneto Impedance)センサで、列車1の床などに配設されており、外部磁界に応じてインピーダンスが変化する感磁体を含むマグネトインピーダンス素子を利用して、磁気を検出する。本実施形態では、図2に模式的に示すように、列車1の車幅方向に並んで複数の磁気センサ5が設けられ、横長のセンサユニットを構成している。
【0018】
一方、磁気マーカ6は一例として柱状の磁石であり、酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させた等方性フェライトラバーマグネットが用いられる。この磁気マーカ6は、例えば路面に穿設された穴に収容された状態で敷設されており、N極を上にする場合とS極を上にする場合と、の2つの形態で埋設されている。なお、磁気マーカ6の外周面に、樹脂モールドによる保護層を設けてもよいし、ガラス繊維により強化した樹脂モールドを形成してもよい。
【0019】
図1図2にそれぞれ示すように、線路の所定箇所(図示の例では転轍機Tの手前)には情報提供区間Pが設定されている。ここでは、一対のレールRの間に複数(図の例では5個)の磁気マーカ6が線路の幅方向に並んで埋設されて、マーカ列を形成しており、図示の例では列車1の進行方向に所定の間隔d1を空けて、4列のマーカ列60A~60Dが設けられている。それぞれのマーカ列60A,60B,…は、磁気マーカ6の極性(N/S)のパターンによって、種々の情報を車上装置2に提供することができる。
【0020】
すなわち、一対のレールR上を車輪が転動する列車の場合、走行方向に対して左右に進路が変化することはないので、複数の磁気マーカ6を線路の幅方向に、即ちレールRの間を延びるように並べるとともに、これに対応して同数の磁気センサ5を、列車1の車幅方向に並べて配設し、これにより磁気マーカ6の極性(N/S)のパターンを読み取ることで、種々の情報を取得することができる。
【0021】
例えば図2に示すように、N/Sを黒丸/白丸で表現すると、列車1の進行方向に順番に第1マーカ列60Aは、[01000]、第2マーカ列60Bは、[00100]、第3マーカ列60Cは、[00010]、第4マーカ列60Dは、[01010]となり、各列5ビット×4=128通りの情報を提供できる。この情報は、例えば情報提供区間Pの位置の情報やこれに予めヒモづけられた列車1の運行情報などである。
【0022】
より具体的には図1に表れているように、情報提供区間Pは転轍機Tの手前に、ここを通過した列車1が到達する前に転轍機Tの作動を完了できるような距離だけ離れて、設定されている。この情報提供区間Pで磁気センサ5の出力から位置情報を検出した車上装置2は、この位置情報を地上装置3に送信し、必要に応じて転轍機Tの切り換え作動が行われる。また、情報提供区間Pでは磁気センサ5の出力によって、分岐後に左側(図の上側)に転向する進路の曲率などの情報や制限速度などの走行情報を提供することもできる。
【0023】
ところで、上述したように線路の幅方向に複数の磁気マーカ6を並べ、これに対応して幅方向に並ぶ磁気センサ5によって一度に検出するようにすると、提供できる情報量が多くなる反面、検出に失敗した場合に失われる情報量も多くなってしまう。すなわち、まず、列車1に搭載した磁気センサ5で線路の磁気マーカ6を検出するためには、磁気マーカ6の埋設されている場所に到達して、磁気センサ5が反応するタイミングでセンサ出力の変化を読み取ることが求められる。
【0024】
本実施形態の場合、上述したように4列のマーカ列60A~60Dがあるので、図3(a)に模式的に示すように、第1、第2、…の順にそれぞれのマーカ列60A,60B,…に到達するタイミングで磁気センサ5を作動(出力の読み取り)させることになる。磁気センサ5の作動は車上装置2によって制御され、そのタイミングは調整可能であるが、前記のようにマーカ列60A,60B,…の到達に応じて繰り返し作動させる場合は、信号処理などの観点から好ましい作動間隔がある。
【0025】
ここで、4列のマーカ列60A~60Dの間隔d1は一定なので、列車1の走行速度によってマーカ列60A,60B,…に到達するタイミングが変化し、好ましい作動間隔からずれることがある。例えば列車1の走行速度が高過ぎると、マーカ列60A,60B,…に到達するタイミングが徐々に早くなってゆくことから、図3(b)に示すように、出力信号の波形が時間軸(図の横軸)において徐々に縮んでゆく。
【0026】
このため、図の上から2番目の磁気マーカ6について見ると、図3(b)に表れているようにマーカ列60A,60B,…に到達するタイミングでの出力信号が徐々に小さくなってゆき、第2マーカ列60Bでは問題ないが、第3マーカ列60Cでは出力の明らかな低下が見られ、第4マーカ列60Dでは出力が顕著に低下してしまう。このように磁気センサ5の出力が低下すると、これを読み取り損なうことがある(検出ミス)。
【0027】
この点に着目して本実施形態では、列車1が情報提供区間Pに進入する手前でその走行速度を調整し、4列のマーカ列60A~60Dのそれぞれで磁気マーカ6を好適に検出できるようにしている。そのために、まず、情報提供区間Pの手前には予め設定した間隔d2を空けて、長尺かつ幅広の磁気マーカ7(手前側磁気マーカであり、以下、長尺磁気マーカと呼ぶ)を埋設している。本実施形態では、列車1の進行方向に離間して第1および第2の2つの長尺磁気マーカ7A,7Bが埋設されており、両者の間隔d3は、列車1の走行速度を算出するのに適したものとして、実験等により決定されている。
【0028】
また、車上装置2には、図4の機能ブロック図に示すように、列車1の走行中に第1、第2長尺磁気マーカ7A,7Bをそれぞれ検出した磁気センサ5の出力から、列車1の走行速度を算出する車速算出部21と、列車1の走行速度と基準速度との偏差ΔVを求める車速偏差算出部22と、この偏差ΔVに応じて列車1の走行速度を制御する走行制御部23と、を備えている。なお、前記の基準速度は、列車1が情報提供区間Pを通過する時に、予め設定された列車1の走行速度であり、4列のマーカ列60A~60D同士の間隔d1と、予め設定された走行速度(基準速度)から前記の好ましい磁気センサ5の作動間隔が決定される。
【0029】
前記の走行制御部23は本来、列車1の運行情報等に応じて走行速度を制御するものであるが、本実施形態では、前記基準速度との偏差ΔVを小さくするように、列車1の走行速度を補正する速度補正部としても機能する。また、図4に表れているように車上装置2は、GPS受信機4からの信号に基づいて列車1の位置を検出するGPS位置検出部24と、速度発電機11からの速度信号を積算して列車1の位置を算出する走行位置算出部25と、も備えている。
【0030】
上述した車上装置2により制御される磁気センサ5は、線路を走行する列車1が情報提供区間Pに進入する手前で第1、第2の長尺磁気マーカ7A,7Bを検出し、これに応じて車速算出部21により列車1の走行速度が算出される。そして、走行制御部23によって走行速度が基準速度になるように補正されることで、情報提供区間Pに設けられた4列のマーカ列60A~60Dのそれぞれを、磁気センサ5によって適切なタイミングで読み取れるようになる。
【0031】
以下、本実施形態の列車の制御装置において、情報提供区間Pの磁気マーカ6から列車1の位置情報など種々の情報を取得する車上装置2の処理について、図5のフローチャートを参照して具体的に説明する。なお、この処理は、予め設定した時間(例えば100ミリ秒)毎に繰り返し実行される。
【0032】
まず、列車1の走行とともにルーチンが開始され、ステップS1ではGPS受信機4からの信号が入力されて、列車1の位置の情報(GPS位置情報)が取得される。続いて、そうして取得された列車1の位置が情報提供区間Pの手前の所定区間内かどうか判定され(ステップS2)、区間内でなければ(NO)フローを終了する一方、区間内であれば(YES)ステップS3に進む。
【0033】
ステップS3では、磁気センサ5からの信号によって第1長尺磁気マーカ7Aが検出されたか否か判定し、検出されなければ(NO)フローを終了する一方、検出されれば(YES)ステップS4に進んで、今度は第2長尺磁気マーカ7Bが検出されたか否か判定する。そして、検出されなければ(NO)所定時間、待機し、検出されれば(YES)ステップS5に進んで、待機した時間から列車1の走行速度を算出する。2つの長尺磁気マーカ7A,7Bの間隔d3は既知なので、その間の時間から走行速度を算出できる。
【0034】
そして、ステップS6において、前記算出した列車1の走行速度と基準速度との偏差ΔVを算出し、この車速偏差ΔVに応じて列車1の原動機(電動モータなど)の出力を調節することにより、走行速度を補正する(ステップS7)。すなわち、基準速度よりも高ければ、原動機の出力を低下させることにより、走行速度を低下させ、基準速度よりも低ければ、原動機の出力を増大させることにより、走行速度を高くする。これにより、列車1の走行速度が基準速度に近づいてゆく。
【0035】
こうして速度の補正を開始した後のステップS8では、前記ステップS5にて算出した列車1の走行速度に基づいて、情報提供区間Pに進入するタイミングに合わせて磁気センサ5を作動させる(センサ出力を読み込む)。第2長尺磁気マーカ7Bは、情報提供区間Pの手前に予め設定した間隔d2を空けて埋設されているので、この間隔d2と列車1の走行速度によって、第1列のマーカ列60Aに到達するタイミングで磁気センサ5を作動させることができる。
【0036】
さらにステップS8では、磁気センサ5を一定の作動間隔で繰り返し作動させ、第1マーカ列60Aに続いて第2、第3および第4のマーカ列60A~60Dを検出して、処理を終了する。前記したように、事前に列車1の走行速度を基準速度に補正しているので、情報提供区間Pに設けられた4列のマーカ列60A~60Dのそれぞれが、磁気センサ5によって適切なタイミングで読み取られるようになる。
【0037】
以上、説明したように本実施形態の列車の制御装置によれば、まず、線路上の情報提供区間Pにおいて、線路の幅方向に複数の磁気マーカ6が並んだマーカ列60A~60Dから一度に多くの情報を取得することができる。また、その情報提供区間Pの手前に設けた長尺磁気マーカ7A,7Bを検出することで、情報提供区間Pまでの間隔と列車1の走行速度とに応じて好適なタイミングで磁気センサ5を作動させることができる。つまり、列車1の移動距離あたりの情報提供量を多くしながら、検出ミスを抑制できる。
【0038】
さらに、列車1が情報提供区間Pに進入する手前でその走行速度を算出し、基準速度との偏差に応じて補正することによって、列車1の磁気センサ5が情報提供区間Pを通過する際の走行速度を概ね基準速度に維持することができる。これにより、情報提供区間Pに設けられた4列のマーカ列60A~60Dのそれぞれの磁気マーカ6を、いずれも適切なタイミングで検出することができ、検出ミスをより確実に防止できる。
【0039】
加えて、前記の実施形態では、第1、第2長尺磁気マーカ7A,7Bをそれぞれ検出する時間の間隔から、列車1の走行速度を算出するようにしているので、走行速度を精度よく算出できる。しかも、それら第1、第2長尺磁気マーカ7A,7Bを長尺かつ幅広のものとした上で、さらにGPSの位置検出も利用するようにしているので、第1、第2長尺磁気マーカ7A,7Bの検出ミスも防ぐことができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0041】
例えば、上述の実施形態では情報提供区間Pの手前に第1、第2の2つの長尺磁気マーカ7A,7Bを配置しているが、これには限定されず、第2長尺磁気マーカ7Bだけにしてもよい。この場合、列車1の走行速度は、例えば速度発電機11からの信号によって求めることができる。また、第1、第2の2つの長尺磁気マーカ7A,7Bは、必ずしも長尺でなくてもよいが、長尺かつ幅広としたことで、検出ミスを防ぎやすい。
【0042】
また、上述の実施形態では、車上装置2の車速偏差算出部22で算出された車速偏差ΔVを小さくするように、走行制御部23によって列車1の原動機の出力を補正するようにしているが、これにも限定されず、車速偏差算出部22で算出された車速偏差ΔVを列車1の運転者に表示する表示装置を備え、この表示を見た運転者に走行速度の調節を促すようにしてもよい。
【0043】
その他、車速偏差算出部22で算出された車速偏差ΔVを使わずに、車速算出部21により算出された列車1の走行速度に基づいて、磁気センサ5を繰り返し作動させる速さを変化させる。すなわち4列のマーカ列60A~60D同士の間隔d1と、列車1の走行速度から磁気センサ5の作動間隔を決定してもよい。
【0044】
さらに、上述の実施形態では情報提供区間Pにおいて、線路の幅方向に並ぶ5個の磁気マーカ6によって4列のマーカ列60A~60Dを形成しているが、幅方向に並ぶ磁気マーカ6の個数は2~5個であってもよいし、6個以上であってもよい。また、マーカ列の数についても1~3列、或いは5列以上であってもよい。なお、1列の場合は、列車1の走行速度と基準速度との偏差ΔVを求める必要はなく、この車速偏差ΔVに応じて走行速度を補正する必要もない。
【0045】
また、上述の実施形態では、GPS受信機4からの信号により、列車1の位置の情報を取得して情報提供区間Pの手前の所定区間内かどうか判定しているが、これには限定されず、情報提供区間Pの手前であること伝達すればよく、例えば長尺磁気マーカ7を追加して第3長尺磁気マーカ7Cおよび第4長尺磁気マーカ7Dとして、第1長尺磁気マーカ7Aの手前(列車1側)に間隔をあけて設置して、[11111]を2回連続して検知することにより列車1が情報提供区間Pの手前であることを判定するなど、予め決められた組み合わせを検知することで、情報提供区間Pの手前を判定してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1;列車
2;車上装置
5;磁気センサ
6;磁気マーカ
60;マーカ列
7:長尺磁気マーカ
21;車速算出部
22;車速偏差算出部
23;走行制御部(車速補正部)
P;情報提供区間
R;レール
図1
図2
図3
図4
図5