(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】吐水具および小便器
(51)【国際特許分類】
E03D 13/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
E03D13/00
(21)【出願番号】P 2020116415
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 励
(72)【発明者】
【氏名】宮地 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博道
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 善博
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-069874(JP,A)
【文献】特開2019-178573(JP,A)
【文献】特開2000-303541(JP,A)
【文献】特開2015-071901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢に取り付けられ、便鉢面を洗浄する洗浄水を吐水する吐水具であって、
洗浄水を前記便鉢面に向けて吐水するように開口する吐水口を備え、
前記吐水口は、水滴を集める部分を有し、
前記水滴を集める部分は、下端に設けられており、
前記吐水口の前記便鉢面側の壁を構成する後ろ壁を有し、
前記後ろ壁は、下方に突出し、上端における左右方向の幅が下端における左右方向の幅よりも大きい突出壁を具備しており、
前記水滴を集める部分は、前記突出壁である吐水具。
【請求項2】
前記吐水口に対して後方側から洗浄水を供給する流路を備え、
前記突出壁は、前記吐水具が正規状態から前後方向に沿う中心軸回りに0°~15°傾いて前記便鉢に取り付けられた状態で、前側から見たときに前記流路と上下方向で重なる請求項
1に記載の吐水具。
【請求項3】
前記後ろ壁の下端面は、前記便鉢面に向かって下方に傾斜している請求項
1及び請求項2のいずれか1項に記載の吐水具。
【請求項4】
前記後ろ壁の下端面の前端は、湾曲面である請求項
1から請求項
3までのいずれか1項に記載の吐水具。
【請求項5】
前記水滴を集める部分は、前記後ろ壁から前方に突出し上下方向に延びるガイド部である請求項
1から請求項
4までのいずれか1項に記載の吐水具。
【請求項6】
前記後ろ壁の下端と前記便鉢面との距離が水滴の半径より小さい請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の吐水具。
【請求項7】
前記後ろ壁の下端と前記便鉢面との距離が、前記吐水口の開口領域の前後方向の幅よりも小さい請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の吐水具。
【請求項8】
前記便鉢と、
請求項1から請求項
7までのいずれか1項に記載の吐水具と、
を備える小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は吐水具および小便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来のスプレッダーを開示している。このスプレッダーは、吐出口と、洗浄水通路と、供給口と、を備えている。スプレッダーが小便器に固定された状態で、吐出口は、下向きに開口している。供給口は、エルボを介して給水管に連結されている。洗浄水通路は、供給口から吐出口に至る通路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなスプレッダーでは、小便器の洗浄後に、洗浄水通路内の残留水が水滴となって吐水口まで流下する。このスプレッダーでは、便鉢面に対する吐出口の位置が、吐水口の前後方向の幅以上の距離となるように大きく離れている。そのため、このような水滴が吐水口から便鉢面へと誘導されず、吐水口から直接下方へ滴下する現象(液垂れ現象)が生じてしまう。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、吐水具からの水滴の滴下を抑制する吐水具および小便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の吐水具は、便鉢に取り付けられ、便鉢面を洗浄する洗浄水を吐水する吐水具であって、洗浄水を前記便鉢面に向けて吐水するように開口する吐水口と、前記吐水口の前記便鉢面側の壁を構成する後ろ壁と、前記後ろ壁から前方に突出し上下方向に延びるガイド部と、を有し、前記後ろ壁の下端と前記便鉢面との距離が水滴の半径より小さい。
【0007】
本開示の第2の吐水具は、便鉢に取り付けられ、便鉢面を洗浄する洗浄水を吐水する吐水具であって、洗浄水を前記便鉢面に向けて吐水するように開口する吐水口と、前記吐水口の前記便鉢面側の壁を構成する後ろ壁と、前記後ろ壁から前方に突出し上下方向に延びるガイド部と、を有し、前記後ろ壁の下端と前記便鉢面との距離が、前記吐水口の開口領域の前後方向の幅よりも小さい。
【0008】
本開示の第3の吐水具は、便鉢に取り付けられ、便鉢面を洗浄する洗浄水を吐水する吐水具であって、前記吐水口の開口縁に設けられる水滴を集める部分を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態1の小便器を示す左右中央断面図である。
【
図3】実施形態1のスプレッダーを右斜め前方から見た斜視図である。
【
図4】実施形態1のスプレッダーを示す断面図であって、
図2のA-A線における断面に相当する断面図である。
【
図5】実施形態1のスプレッダーにおける
図4のB-B線相当断面図である。
【
図6】実施形態1のスプレッダーにおける
図4のC-C線相当断面図である。
【
図7】実施形態1の小便器の要部を示す
図2の拡大断面図である。
【
図8】水滴の流下を説明する
図7の一部拡大図である。
【
図9】実施形態1のスプレッダーが傾いた状態で小便器に組み付けられた状態を説明する前方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の小便器1を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下は小便器1が施工された状態における上下であり、左右は施工された小便器1を使用する際の使用者側から見た左右であり、前後は、施工された小便器1を使用する際の使用者側から見て近い側が前であり遠い側が後である。
【0011】
<実施形態1>
実施形態1の小便器1は、
図1、
図2に示すように、便鉢10、周壁部30、及び吐水具であるスプレッダー(吐水具)50を備えている。便鉢10は、
図2に示すように、上下方向に延びた立面部11と、立面部11の下部に連続した椀状部13と、立面部11の上部に連続した隠蔽部15と、を有している。立面部11は、上下方向の全体において、左右中央部が後方に窪むように左右方向に湾曲した便鉢面10Aを形成している。便鉢面10Aは、下部が垂直に上下方向に延び、上部が上方に向けて斜め前方に傾斜した傾斜面となるように上下方向にわずかに湾曲している。立面部11は左右中央の上部に前後方向に貫通した貫通孔11Aが形成されている。この貫通孔11Aの周囲の立面部11は便鉢面10A及びその裏面が平坦に形成されている。
【0012】
椀状部13は、立面部11の下部に連続し上方に向けて椀状に広がった便鉢面10Bを形成している。椀状部13は立面部11よりも前方に突出している。椀状部13は下端部に排水口13Aが形成されている。排水口13Aは目皿17が上方から着脱自在に取り付けられている。
【0013】
立面部11及び椀状部13によって形成された便鉢面10A,10Bは、
図1、
図2に示すように、左右対称位置に上下方向に延びた段部、つまり左右一対の洗浄段19が形成されている。左右一対の洗浄段19は、上端部がスプレッダー50よりも下方で左右に離れて位置し、椀状部13の前端下部に向けて斜め前方に傾斜しつつ延びている。左右一対の洗浄段19は、スプレッダー50から吐水された洗浄水が段差面に沿って流れ、椀状部13の前端部で合流するように形成されている。このため、小便器1はスプレッダー50から吐水された洗浄水は椀状部13にも良好に流れ、便鉢面10Aを良好に洗浄することができる。
【0014】
隠蔽部15は、
図2に示すように、便鉢10の立面部11の上端部から前方に突出した凸部で形成されている。この隠蔽部15は便鉢10の立面部11の上端部に左右方向のほぼ全体に亘って左右方向に延びている。隠蔽部15は、後述する周壁部30の上壁部31の前端縁に連続し、上面が上壁部31の上面31Aに面一に形成されている。この隠蔽部15は、上方から見た上面視において、後述するスプレッダー50を隠蔽している。
【0015】
周壁部30は、
図1、
図2に示すように、便鉢10の外周縁に連続しており、上壁部31、左右壁部33、及び下壁部35を有している。上壁部31は、
図2に示すように、板状であり、便鉢10の上端縁に連続し、便鉢10よりも上方に設けられている。上壁部31は、便鉢10よりも上方で広がり、前方に向けて斜め下方に傾斜している。このため、上壁部31の上面31Aは、前方に向けて斜め下方に傾斜している。上述したように、隠蔽部15の上面は、上壁部31の上面31Aに連続して面一に形成されているため、上壁部31の上面31Aと同じ角度で前方に向けて斜め下方に傾斜している。
【0016】
スプレッダー50は、
図1、
図2に示すように、便鉢10に取り付けられている。スプレッダー50は、便鉢10に取り付けられた状態において、円盤形状に前方に露出している。スプレッダー50は、後述する吐水口70が下方に向くように便鉢10に取り付けられる。スプレッダー50は、便鉢面10A,10Bを洗浄する洗浄水を吐水口70から吐水する。スプレッダー50は、便鉢10の立面部11の左右中央の上部に取り付けられている。スプレッダー50は、洗浄水を便鉢面10Aの中央領域から左右端側まで広がるように吐水する。以下では、便鉢10に取り付けられている状態でスプレッダー50を説明する。
【0017】
スプレッダー50は、
図7に示すように、非接触式の人体センサSが内蔵されている。人体センサSは、例えば、超音波センサであり、小便器1の前に使用者が立ったこと、遠ざかることを検出する。スプレッダー50は、図示しない開閉弁によって、後述する給水路65への給水の供給および停止を行う。開閉弁は、人体センサSからの検知信号に基づいて制御される。
【0018】
スプレッダー50は、
図7に示すように、本体部51と、カバー部53と、前板部55と、を有している。
図3、
図5、
図6では、カバー部53を省略してスプレッダー50を示している。本体部51は、
図5~
図7に示すように、外筒部61と、区画壁63と、給水路65と、電装経路67と、接続部69と、を具備している。外筒部61は、円筒状である。外筒部61は、外周面にねじ山が形成されている。区画壁63は、外筒部61内の空間を上下に区画している。区画壁63は、外筒部61内の上下方向の中央よりわずかに下方に設けられている。給水路65は、区画壁63と、外筒部61の下端側部分とによって構成されている。給水路65は、後述する流路69Aから供給される洗浄水を、吐水口70に供給する。電装経路67は、区画壁63と、外筒部61の上端側部分とによって構成されている。電装経路67には、人体センサSに接続される配線などが収納されている。接続部69は、外筒部61の後端から後方に突出している。接続部69は、図示しない給水管に接続される。接続部69は、円筒状である。接続部69は、内部に洗浄水が流れる流路69Aが形成されている。流路69Aは、後方側から給水路65を介して吐水口70に洗浄水を供給する。
【0019】
カバー部53は、
図7に示すように、外筒部20の先端に嵌合されている。カバー部53は、電装経路67及び給水路65を前方側から覆っている。前板部55は、本体部51とカバー部53との間に設けられている。前板部55は、給水路65を前方側から覆っている。
【0020】
スプレッダー50は、
図3に示すように、吐水口70が設けられている。吐水口70は、後ろ壁71と、一対の上壁77と、前板部55と、を備えている。吐水口70は、洗浄水を便鉢面10Aに向けて吐水するように開口している。吐水口70は、便鉢10に取り付けられたスプレッダー50において、便鉢面10Aの前方にある周面の一部がスリット状に切り欠かれて構成されている。
【0021】
後ろ壁71は、
図8に示すように、吐水口70の便鉢面10A側の壁を構成している。後ろ壁71は、外筒部61の下端側から径方向に延出するフランジ状の壁である。後ろ壁71は、給水路65の下端側の壁(外筒部61の下端側の壁)と連なっている。後ろ壁71の前面71Aは、後方に向かって下り傾斜になっている。これにより、後ろ壁71の前面71Aを伝う水滴が、上下方向の途中で滴下することを防ぐことができる。後ろ壁71と便鉢面10Aとの間には、例えばゴムによって構成されるパッキンPが設けられている。パッキンPは、後ろ壁71と便鉢面10Aとの間の止水を行う。
【0022】
後ろ壁71は、
図8に示すように、本体壁73と、突出壁75と、を有している。本体壁73は、外筒部61の周方向に沿って下方に延出している。本体壁73の前面73Aは、後方に向かって下り傾斜(例えば鉛直方向に対して17°以下で傾く傾斜)になっている。突出壁75は、「水滴を集める部分」に相当する。突出壁75は、吐水口70の開口縁70Aに設けられている。吐水口70の開口縁70Aは、後述する前板部55(縁壁部57)の後側下縁と、本体壁73の前側下縁と、後述するガイド部80の側面80Cの一部と、一対の上壁77の下側縁(
図4参照)と、によって構成される。吐水口70の開口縁70Aは、
図4に示すように、前後方向から見て、後述するガイド部80を挟んで左右に形成されている。突出壁75は、
図8に示すように、開口縁70Aの後端側(本体壁73の前側下縁の下端側)から下方に延出している。突出壁75は、スプレッダー50の下端に位置している。突出壁75は、本体壁73における左右方向中央の下端から下方に突出している。突出壁75は、上端における左右方向の幅が下端における左右方向の幅よりも大きい。突出壁75の前面75Aは、後方に向かって下り傾斜(例えば鉛直方向に対して17°以下で傾く傾斜)になっている。これにより、突出壁75の前面75Aを伝う水滴が、上下方向の途中で滴下することを防ぐことができる。突出壁75の前面75Aは、本体壁73の前面73Aよりも急な角度で下り傾斜となっている。突出壁75の下縁は、左右方向外側に向かって上り傾斜になっている。突出壁75の外縁の左右両側部分は、外筒部61の中心に向かって凹となるように湾曲している。このような構成によって、後ろ壁71を伝う水滴を突出壁75の下端75Cに集め、水滴を大きくさせることができる。そして、大きくなった水滴は、突出壁75の下端75Cにおいて便鉢面10Aに付着し易くなる。
【0023】
図4では、スプレッダー50が中心軸C1(外筒部61の中心軸)回りに傾いていない状態(正規状態)で便鉢面10Aに取り付けられている。正規状態とは、スプレッダー50の中心軸C1と流路69Aの中心軸C2とが上下方向で重なる状態である。また、正規状態とは、ガイド部80がスプレッダー50の左右方向中心に位置する状態である。正規状態では、突出壁75は、
図9に示すように、前側から見たときに、流路69Aに上下方向で重なっている。
図9では、スプレッダー50が中心軸C1周りにθ傾いて便鉢面10Aに取り付けられている。突出壁75は、θが0°~15°の範囲で、流路69Aに上下方向で重なる。
図9に示すように、スプレッダー50が中心軸C1周りにθ傾いて便鉢面10Aに取り付けられた場合でも、後ろ壁71を下方に流下する水滴を突出壁75で確実に捕捉することができる。例えば、流路69Aの左右方向端部から下方に流下する水滴は、突出壁75に付着し、下端75Cまで誘導される。なお、中心軸C1回りの傾き角度θは、
図9では時計回りの傾きであったが、反時計回りの傾きも含む。
【0024】
後ろ壁71の下端面(突出壁75の下端面75B)は、
図8に示すように、スプレッダー50が便鉢10に取り付けられた状態で、便鉢面10Aに向かって下方に傾斜している。突出壁75の下端面75Bは、ガイド部80の下端面80Bに連なっている。突出壁75の下端面75Bの前端(ガイド部80を除く部分)は、前側下方に向かって凸となるような湾曲面である。突出壁75の下端面75Bの後端は、後側下方に向かって凸となるような湾曲面である。このような構成により、下端面75Bの後端が尖っている構成に比べて、スプレッダー50を便鉢10に取り付ける際に、便鉢面10Aなどを傷つけにくくなる。
【0025】
吐水口70には、
図3、
図4に示すように、ガイド部80が設けられている。ガイド部80は、「水滴を集める部分」に相当する。ガイド部80は、吐水口70における開口縁70Aを含む上下全体に亘って配されている。ガイド部80は、後ろ壁71から前方に突出し上下方向に延びている。ガイド部80は、後ろ壁71の左右方向中央に設けられている。ガイド部80は、給水路65の出口(前端)から下方に延びている。ガイド部80の上端面80Aは、
図5、
図6に示すように、給水路65の底壁面65Aに前後方向で連なっている。上端面80Aは、
図8に示すように、スプレッダー50が便鉢10に取り付けられた状態で、底壁面65Aと同程度の角度で後方に向かって上り傾斜になっている。ガイド部80は、後ろ壁71の上端から下端まで延びている。ガイド部80の下端面80Bは、突出壁75の下端面75Bの左右方向中央で前後方向に連なっている。下端面80Bは、後方に向かって下り傾斜になっている。ガイド部80の左右の側面80Cは、左右方向中央に向かって下り傾斜になっている。
【0026】
ガイド部80は、
図8に示すように、延出壁81と、凸部82,83と、凹部84と、を有している。延出壁81は、ガイド部80の後側部分を構成している。延出壁81は、後ろ壁71から前方に突出する側面視で上下に長い四角形状の壁である。延出壁81は、左右方向から見て、後述する吐水口70の開口領域ARの下端側と重なっている。延出壁81の前後方向の幅(本体壁73の前面73Aに直交する方向の幅)は、吐水口70の開口領域ARの前後方向の幅(前板部55と本体壁73との間の隙間(後述する幅L3))と同程度の大きさになっている。
【0027】
凸部82は、
図8に示すように、延出壁81の前側下端から前方に突出している。凸部82は、前後方向から見た断面が四角状である。凸部83は、延出壁81の前端における凸部82よりも上方の位置から前方に突出している。凸部83は、前後方向から見た断面が四角状である。凹部84は、凸部82,83、および延出壁81の前端における凸部82および凸部83の間の部分によって構成されている。凹部84には、後述する前板部55の縁壁部57が嵌まっている。凸部82は、前板部55の下端(縁壁部57の下端)と上下方向で連なっている。
【0028】
吐水終了後(開閉弁が開状態から閉状態に変化した後)、
図8に示すように、給水路65に存在する残り水は、徐々に吐水口70から流出することになる。給水路65は、前後方向から見た断面が下方に凸の半円状であるため、左右方向中央に集まりつつ吐水口70へと流出する。給水路65から流下する水滴は、ガイド部80の左右の側面80C、及び後ろ壁71の少なくとも何れか一方に接触して下方に流下する。ガイド部80の左右の側面80Cが左右方向中央に向かう下り傾斜であるため、側面80Cを伝う水滴は、左右方向中央に集められる。突出壁75の左右方向の幅が下方に向かうにつれて小さくなっているため、突出壁75の前面75Aを伝う水滴は、左右方向中央に集められる。後ろ壁71の下端71Bに水滴が集まることで、水滴のサイズが大きくなり、便鉢面10Aに接し易くなる。これにより、水滴が便鉢面10Aに誘導され易くなる。
【0029】
一対の上壁77は、
図4に示すように、吐水口70の左右上端を構成している。上壁77は、後ろ壁71の左右の各上端から前方に立ち上がっている。一対の上壁77の下面は、それぞれ左右方向外側に向かって下り傾斜になっている。
【0030】
前板部55は、
図3に示すように、吐水口70の前端側を構成している。前板部55は、半円形状である。前板部55は、
図7に示すように、給水路65の前方に配置されている。前板部55は、給水路65から供給される洗浄水を、自身に衝突させて左右に広がるように流す。前板部55は、
図3に示すように、板部56と、縁壁部57と、を有している。板部56は、半円板状である。縁壁部57は、
図5、
図6に示すように、板部56の下端の縁から後方に立ち上がっている。前板部55は、縁壁部57が凹部84に嵌まることで、ガイド部80の延出壁81を介して、後ろ壁71に前後方向で連なっている。このような構成により、ガイド部80と前板部55の間に隙間がある構成と比べて、ガイド部80の前端に表面張力で水滴が引き寄せられることを抑制することができる。すなわち、ガイド部80の左右の側面80Cを伝う水滴を、後ろ壁71に表面張力で引き寄せ易くすることができる。前板部55の後面は、
図8に示すように、後ろ壁71の前面71Aと平行になっている。
【0031】
図8に示すように、スプレッダー50が便鉢10に取り付けられた状態で、後ろ壁71の下端71Bと便鉢面10Aとの距離L1が、水滴の半径L2より小さい。後ろ壁71の下端71Bは、突出壁75の下端75Cである。下端75Cは、突出壁75の最下部である。下端75Cは、突出壁75の下端面75Bにおいて便鉢面10A側寄りにある。距離L1は、例えば、突出壁75の下端75Cに水滴がある場合の水滴の中心(突出壁75の下端75Cから鉛直下方に向かう直線上の中心)と、便鉢面10Aとの間の水平方向に沿う方向の距離である。距離L1は、例えば、2mm以下である。水滴の半径L2は、例えば、後ろ壁71に付着した際に自重によって下方に伝ってくるような大きさの水滴の半径である。水滴の半径L2は、例えば、2mmより大きく3mm以下である。突出壁75の下端75Cに水滴が集まって1つの水滴となった場合、この水滴の半径L2が2mmより大きくなる。突出壁75の下端75Cまで水滴が到達した場合、後ろ壁71の下端71Bと便鉢面10Aとの距離L1が水滴の半径L2よりも小さいため、水滴が便鉢面10Aに確実に接触することになる。そのため、水滴が便鉢面10Aに誘導され易くなる。
【0032】
図8に示すように、スプレッダー50が便鉢10に取り付けた状態で、後ろ壁71の下端71B(突出壁75の下端75C)と便鉢面10Aとの距離L1が、吐水口70の開口領域ARの前後方向の幅L3よりも小さい。吐水口70の開口領域ARは、上記開口縁70Aによって囲まれる領域である。吐水口70の開口領域ARは、例えば、前板部55(縁壁部57)の後側下縁と、後ろ壁71の本体壁73の前側下縁とによって挟まれる領域である。開口領域ARは、
図4に示すように、前後方向から見て、ガイド部80を挟んで左右に形成されている。開口領域ARは、前後方向から見て、円弧状である。開口領域ARの前後方向の幅L3は、前板部55と後ろ壁71との間における最も狭い部分の距離である。すなわち、前板部55の縁壁部57の後端と、後ろ壁71の本体壁73との間の距離である。突出壁75の下端75Cと便鉢面10Aとの距離L1は、例えば、2mm以下である。幅L3は、例えば、2mmより大きく6mm以下である。突出壁75の下端75Cまで水滴が到達した場合、後ろ壁71の下端71Bと便鉢面10Aとの距離L1が吐水口70の開口領域ARの前後方向の幅L3よりも小さいため、水滴が便鉢面10Aに接触し易くなる。そのため、水滴が便鉢面10Aに誘導され易くなる。
【0033】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0034】
本開示の小便器1は、吐水終了後におけるスプレッダー50内の残り水の水滴を、ガイド部80に接触させて下方へと誘導させることができる。これにより、後ろ壁71の下端71Bに残り水の水滴を集めることができる。そして、後ろ壁71の下端71Bと便鉢面10Aとの距離L1が水滴の半径L2より小さいため、後ろ壁71の下端71Bまで流下した水滴が便鉢面10Aに接し易くなっている。そのため、水滴が便鉢面10Aに誘導され易くなり、スプレッダー50からの直接の滴下を抑制することができる。
【0035】
本開示のスプレッダー50は、後ろ壁71の下端71Bと便鉢面10Aとの距離が吐水口70の開口領域ARの前後方向の幅L3よりも小さいため、後ろ壁71の下端71Bまで流下した水滴が便鉢面10Aに接し易くなっている。そのため、水滴が便鉢面10Aに誘導され易くなり、スプレッダー50からの直接の滴下を抑制することができる。
【0036】
本開示の小便器1は、吐水終了後におけるスプレッダー50内の残り水の水滴を、ガイド部80および突出壁75によって集めることができる。水滴が集まることで水滴のサイズが大きくなり、便鉢面10Aに接し易くなる。これにより、水滴が便鉢面10Aに誘導され易くなり、スプレッダー50からの直接の滴下を抑制することができる。
【0037】
本開示のスプレッダー50において、ガイド部80および突出壁75は、下端に設けられている。これにより、吐水終了後におけるスプレッダー50内の残り水の水滴を、ガイド部80および突出壁75によってスプレッダー50の下端に集めることができる。そのため、水滴が便鉢面10Aにより一層誘導され易くなる。
【0038】
本開示のスプレッダー50において、吐水口70の便鉢面10A側の壁を構成する後ろ壁71を有する。これにより、ガイド部80および突出壁75によって集められた水滴を、後ろ壁71を介して便鉢面10Aに誘導することができる。このように、便鉢面10Aに近い後ろ壁71を介して水滴を誘導することで、便鉢面10Aに水滴を誘導させ易くなる。
【0039】
本開示のスプレッダー50において、後ろ壁71は、下方に突出し、上端における左右方向の幅が下端における左右方向の幅よりも大きい突出壁75を具備している。この構成によれば、突出壁75の上端へと流下する水滴を、突出壁75の下端に向かって左右方向の中心側に集めることができる。
【0040】
本開示のスプレッダー50は、吐水口70に対して後方側から洗浄水を供給する流路69Aを備えている。突出壁75は、スプレッダー50が正規状態から前後方向に沿う中心軸C1回りに0°~15°傾いて便鉢10に取り付けられた状態で、前側から見たときに流路69Aと上下方向で重なる。この構成によれば、スプレッダー50が便鉢面10A上で傾いて取り付けられた場合でも、後ろ壁71を流下する水滴を突出壁75で確実に捕捉することができる。
【0041】
本開示のスプレッダー50において、後ろ壁71の下端面(突出壁75の下端面75B)は、便鉢面10Aに向かって下方に傾斜している。この構成によれば、突出壁75の下端面75Bまで到達した水滴を、便鉢面10Aへと誘導させ易くなる。
【0042】
本開示のスプレッダー50において、後ろ壁71の下端面(突出壁75の下端面75B)の前端は、湾曲面である。この構成によれば、後ろ壁71を流下する水滴を、突出壁75の下端面75Bの最下点へと誘導させ易くなる。
【0043】
本開示の小便器1は、吐水終了後におけるスプレッダー50内の残り水の水滴を、ガイド部80によってスプレッダー50の下端に集めることができる。水滴が集まることで水滴のサイズが大きくなり、便鉢面10Aに接し易くなる。これにより、水滴が便鉢面10Aに誘導され易くなり、スプレッダー50からの直接の滴下を抑制することができる。
【0044】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、ガイド部80が設けられない構成であってもよい。実施形態1では、突出壁75が設けられない構成であってもよい。すなわち、後ろ壁71の本体壁73の上端から下端に亘ってガイドが設けられる構成であってもよい。
(2)実施形態1では、ガイド部80が前板部55に連なっていた。ガイドの前端が前板部55と離れていてもよい。すなわち、ガイドが吐水口70の開口領域ARにおける前後方向の途中まで後ろ壁71から延出していてもよい。
(3)実施形態1では、突出壁75の外縁の左右両側部分が湾曲していた。下方に向かって左右方向の幅が小さくなる構成であれば、直線状であってもよく、階段状であってもよい。
(4)実施形態1では、上記のようにL1、L2、L3の関係が保たれれば、パッキンPを設けない構成であってもよい。
(5)実施形態1では、突出壁75が、本体壁73と別体の部材(例えばゴム製のパッキン等)で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…小便器、10…便鉢、10A…便鉢面、50…スプレッダー(吐水具)、69A…流路、70…吐水口、70A…開口縁、71…後ろ壁、71B…下端、75…突出壁(水滴を集める部分)、75B…下端面、75C…下端、80…ガイド部(水滴を集める部分)、AR…開口領域、中心軸…C1