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特許7478617純水製造装置及び超純水製造装置並びに純水製造方法及び超純水製造方法
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  • 特許-純水製造装置及び超純水製造装置並びに純水製造方法及び超純水製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】純水製造装置及び超純水製造装置並びに純水製造方法及び超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20230101AFI20240425BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20240425BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240425BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20240425BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240425BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20240425BHJP
   C02F 9/00 20230101ALI20240425BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240425BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20240425BHJP
   B01J 39/18 20170101ALI20240425BHJP
   B01J 41/12 20170101ALI20240425BHJP
   B01J 47/014 20170101ALI20240425BHJP
   B01J 47/016 20170101ALI20240425BHJP
   B01J 47/026 20170101ALI20240425BHJP
   B01J 47/04 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C02F1/469
C02F1/20 A
C02F1/32
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/44 J
C02F1/58 H
C02F9/00
B01D61/02 500
B01D61/44 500
B01D61/44 510
B01D61/44 520
B01J39/18
B01J41/12
B01J47/014
B01J47/016
B01J47/026
B01J47/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020129327
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026049
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-183761(JP,A)
【文献】特開2006-051423(JP,A)
【文献】特開2016-097389(JP,A)
【文献】特開2003-266097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-78、9/00-20
B01D61/00-71/82
B01J39/00-49/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を処理して純水を製造する純水製造装置であって、
前記被処理水の通水方向に沿って順に配置された逆浸透膜装置と、第1の電気式脱イオン水製造装置と、ほう素選択性樹脂が充填されたほう素選択性樹脂装置と、紫外線酸化装置と、第2の電気式脱イオン水製造装置と、を有し、
前記逆浸透膜装置と前記ほう素選択性樹脂装置との間に他の紫外線酸化装置が設けられていない、純水製造装置。
【請求項2】
前記ほう素選択性樹脂装置に充填されたほう素選択性樹脂は非再生型である、請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記紫外線酸化装置の上流に配置された膜脱気装置を有する、請求項1または2に記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記紫外線酸化装置の下流に配置され、白金族金属触媒を担持した白金族金属担持イオン交換樹脂装置を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の純水製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の純水製造装置を一次純水製造システムとして備えるとともに、前記一次純水製造システムで製造された純水を被処理水として超純水を製造する二次純水製造システムを備える超純水製造装置。
【請求項6】
被処理水を処理して純水を製造する純水製造方法であって、
逆浸透膜装置、第1の電気式脱イオン水製造装置、ほう素選択性樹脂が充填されたほう素選択性樹脂装置、紫外線酸化装置、第2の電気式脱イオン水製造装置の順に前記被処理水が処理され
前記逆浸透膜装置と前記ほう素選択性樹脂装置との間に他の紫外線酸化装置が設けられていない、純水製造方法。
【請求項7】
前記ほう素選択性樹脂装置の処理水のほう素濃度が1ng/L未満である、請求項6に記載の純水製造方法。
【請求項8】
前記第2の電気式脱イオン水製造装置の処理水における全有機炭素が5μg/L未満である、請求項6または7に記載の純水製造方法。
【請求項9】
前記第2の電気式脱イオン水製造装置の処理水におけるナトリウム濃度が10ng/L未満、且つシリカ濃度が0.1μg/L未満である、請求項6から8のいずれか1項に記載の純水製造方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の純水製造方法によって被処理水から純水を製造することと、
前記純水を被処理水として超純水を製造することと、
を有する超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置及び超純水製造装置と純水製造方法及び超純水製造方法に関し、特に一次純水製造システムの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水製造システムは、通常、前処理システム、一次純水製造システム、二次純水製造システム(サブシステム)より構成される。前処理システムは、凝集ろ過膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜等を用いた除濁処理装置や、活性炭装置により構成される。一次純水製造システムは、逆浸透膜装置、膜脱気装置、電気式脱イオン水製造装置等により構成され、ほとんどのイオン成分や微粒子が除去された純水を製造する。二次純水製造システムは、紫外線酸化装置、非再生型イオン交換装置、膜脱気装置、限外ろ過装置等により構成され、微量イオンの除去、有機物、微粒子の除去が行われる。二次純水製造システムで作られた超純水は、ユースポイントに送水され使用される。
【0003】
近年、超純水の要求水質は年々厳しくなり、現在、最先端の電子産業分野ではほう素濃度10~1ng/L(ppt)未満の超純水が要求されるようになってきている。特許文献1には、ほう素を選択的に除去できるほう素選択性樹脂を用いた超純水製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、ほう素選択性樹脂を用いることでほう素濃度を低減させることができる。また、特許文献1に開示された超純水製造装置では、被処理水が電気再生式脱塩装置またはイオン交換装置によって処理され、処理水の全有機炭素(TOC)も低減される。しかし、特許文献1には処理水の比抵抗が高められることは開示されていない。換言すれば、ほう素濃度、TOC、比抵抗を単独で改善することは容易であるが、これらの3つの水質指標を同時に改善することは困難である。
【0006】
本発明は、ほう素濃度とTOCが低く比抵抗が高い純水を製造することが可能な純水製造装置と純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は被処理水を処理して純水を製造する純水製造装置に関する。本発明の純水製造装置は、被処理水の通水方向に沿って順に配置された逆浸透膜装置と、第1の電気式脱イオン水製造装置と、ほう素選択性樹脂が充填されたほう素選択性樹脂装置と、紫外線酸化装置と、第2の電気式脱イオン水製造装置と、を有する。逆浸透膜装置とほう素選択性樹脂装置との間に他の紫外線酸化装置が設けられていない。
【0008】
本発明はまた、被処理水を処理して純水を製造する純水製造方法に関する。本発明の純水製造方法によれば、逆浸透膜装置、第1の電気式脱イオン水製造装置、ほう素選択性樹脂が充填されたほう素選択性樹脂装置、紫外線酸化装置、第2の電気式脱イオン水製造装置の順に被処理水が処理される。逆浸透膜装置とほう素選択性樹脂装置との間に他の紫外線酸化装置が設けられていない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ほう素濃度とTOCが低く比抵抗が高い純水を製造することが可能な純水製造装置と純水製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る超純水製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の超純水製造装置と超純水製造方法の実施形態について説明する。図1に本発明の一実施形態に係る超純水製造装置1の概略構成を示す。超純水製造装置1は、前処理システム11と、一次純水製造システム21と、二次純水製造システム31と、を有している。
【0012】
前処理システム11は凝集ろ過装置、ろ過膜装置などを備え、原水からろ過水を製造する。一次純水製造システム21は、前処理システム11で製造されたろ過水から純水を製造する純水製造工程を行う。二次純水製造システム31はサブシステムとも呼ばれ、一次純水製造システム21で製造された純水を被処理水として、超純水を製造する超純水製造工程を行う。一次純水製造システム21の構成及び一次純水製造システム21における純水製造工程については後述し、まずサブシステム31の構成について説明する。サブシステム31は、一次純水製造システム21で製造された純水を貯蔵するサブタンク32と、紫外線酸化装置33と、過酸化水素除去装置34と、イオン交換装置35と、限外ろ過膜装置36とを有し、これらの装置32~36は被処理水の通水方向に沿って、上流から下流にこの順で配置されている。紫外線酸化装置33は被処理水に紫外線を照射し、被処理水に含まれる有機物を分解する。過酸化水素除去装置34はパラジウム(Pd)、白金(Pt)などの触媒を備え、紫外線照射によって発生した過酸化水素を分解する。これによって、後段のイオン交換装置35が過酸化水素によってダメージを受けることが防止される。イオン交換装置35はカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混床で充填されたもので、被処理水中のイオン成分を除去する。限外ろ過膜装置36は被処理水中に残存した微粒子を除去する。限外ろ過膜装置36の処理水は超純水としてユースポイント41に供給され、ユースポイント41で使用されなかった超純水はリターンラインL1を通ってサブタンク32に返送される。
【0013】
一次純水製造システム21は、逆浸透膜装置22と、第1の電気式脱イオン水製造装置(以下、第1のEDI23という)と、膜脱気装置24と、ほう素選択性樹脂装置25と、紫外線酸化装置26と、白金族金属担持イオン交換樹脂装置27と、第2の電気式脱イオン水製造装置(以下、第2のEDI28という)と、を有し、これらの装置22~28は被処理水の通水方向に沿って、上流から下流にこの順で配置されている。従って、純水製造工程では、逆浸透膜装置22、第1のEDI23、膜脱気装置24、ほう素選択性樹脂装置25、紫外線酸化装置26、白金族金属担持イオン交換樹脂装置27、第2のEDI28の順に被処理水が通水され、処理される。図示は省略するが、これらの各装置22~28の間にポンプや他の装置が配置されていてもよい。
【0014】
逆浸透膜装置22は、被処理水が第1のEDI23で受け入れ可能な水質となるよう、被処理水の大半のイオン成分を除去し、イオン濃度を数十~数百μg/L(ppb)程度まで低減する。イオン成分が除去された被処理水は第1のEDI23に供給され、さらにイオン成分が除去される。後段のほう素選択性樹脂装置25のほう素負荷を抑え、ほう素選択性樹脂の交換頻度を低減するためには、逆浸透膜装置22の処理水のほう素濃度は20μg/L未満まで低減することが好ましい。
【0015】
第1のEDI23の処理水は膜脱気装置24に供給される。膜脱気装置24は被処理水に含まれる溶存酸素や二酸化炭素を除去する。TOCが低い被処理水(100μg/L未満)では、溶存酸素を除去し、溶存酸素濃度を下げることで、紫外線酸化装置26の有機物の分解効率を向上させることができる。有機物の分解効率の向上はTOCの低減や、紫外線酸化装置26の小型化(紫外線ランプの低出力化)につながる。このため、膜脱気装置24は紫外線酸化装置26の上流に配置されている。膜脱気装置24は省略することもできる。なお、EDIの水回収率は通常90%程度であるため、第1のEDI23の下流に配置される膜脱気装置24等の容量は、第1のEDI23に供給される被処理水の90%程度を基準に決めることができる。
【0016】
膜脱気装置24の処理水はほう素選択性樹脂装置25に供給され、ほう素が除去される。ほう素選択性樹脂はイオン交換塔に充填されている。イオン交換塔には、他のイオン交換樹脂が混床または複床で充填されていてもよい。ほう素はほう酸またはほう酸塩の形で溶解しているが、他のイオンと比べて選択性が低いため、一般的なイオン交換樹脂では効率的に除去することが難しい。ほう素選択性樹脂はほう素と特異的な反応をする官能基を有し、ほう素を選択的に除去することができる。ほう素選択性イオン交換樹脂は、ほう素を選択的に吸着できるものであれば特に限定されないが、官能基として多価アルコール基を導入したイオン交換樹脂などが用いられる。特に、ほう素に対する高い選択性を有する官能基である、N-メチルグルカミン基を有するものが好ましい。例えばアンバーライトIRA743(デュポン社製)、ダイヤイオンCRB03(三菱化学株式会社製)などを挙げることができる。ほう素選択性樹脂は、ほう素を10ng/L未満、好ましくは1ng/L未満まで除去する。ほう素選択性樹脂装置25に充填されたほう素選択性イオン交換樹脂は再生型でも非再生型でもよいが、薬品による再生及び使用済みの薬品の廃水処理が不要である点で、非再生型がより好ましい。本実施形態では、非再生型のほう素選択性イオン交換樹脂が充填されたほう素選択性樹脂装置25を用いている。
【0017】
本実施形態において、第1のEDI23は以下の機能を有する。第一の機能は炭酸の除去である。ほう素選択性樹脂は、被処理水に含まれる炭酸の影響により、ほう素の吸着が阻害されることでほう素除去性能が低下する。第1のEDI23は、逆浸透膜装置22から透過する炭酸を10μg/L未満まで除去する。予め第1のEDI23で炭酸を除去することによって、ほう素選択性樹脂のほう素除去性能を数年単位の長い期間に渡って維持し、交換頻度を低減することができる。
【0018】
第二の機能はほう素の除去である。逆浸透膜装置22はほう素の除去は可能であるが、効率的に除去することができないため、逆浸透膜装置22から透過する被処理水には高濃度のほう素が含まれている可能性がある。ほう素濃度の高い被処理水をほう素選択性樹脂に供給すると、ほう素選択性樹脂の負荷が高まり、ほう素選択性樹脂の寿命が短くなる。予め第1のEDI23でほう素を除去することによって、ほう素選択性樹脂のほう素除去性能を長く維持し、交換頻度を低減することができる。換言すれば、逆浸透膜装置22で粗取りしたほう素を第1のEDI23でさらに除去することで、ほう素選択性樹脂の寿命を延ばすことが可能となるとともに、被処理水のほう素濃度を低減することができる。
【0019】
また、本願発明者は、ほう素濃度が低い領域でEDIのほう素の除去効率が低下する傾向があることを確認している。一例として、ほう素濃度15000ng/Lの被処理水とほう素濃度390ng/Lの被処理水を、EDI(オルガノ製EDI-XP-500、処理流量750L/h、印加電流値4.0A)で処理したときのほう素除去率は、それぞれ、99.4%と96.9%であった。これは、EDIではイオンが脱塩される脱塩室と濃縮水が流通する濃縮室とがイオン交換膜を介して隣接しており、イオン濃度の高い濃縮室から脱塩室へのイオンの拡散の影響があるためと考えられる。そのため、EDIだけでほう素濃度を1ng/L未満に下げることは効率的でない。一方、ほう素選択性イオン交換樹脂は、吸着によってほう素を除去するため、ほう素濃度の低い領域でほう素を効率的に除去することができる。よって、ほう素の高濃度領域で、ほう素を第1のEDI23でできる限り除去し、残存したほう素をほう素選択性イオン交換樹脂によって除去することが、ほう素濃度を1ng/L未満に下げるために有効である。
【0020】
第三の機能はシリカ、Naなどのイオン成分の除去である。後述の実施例で述べるように、第1及び第2のEDI23,28を設けることによって、これらのイオン成分を除去し水質を向上させることができる。また、以上の機能はイオン交換樹脂によっても実現できるが、EDIは樹脂の再生のための薬品が不要、使用済みの薬品の廃液処理が不要、再生のための停止がないため連続運転が可能、といった点でイオン交換樹脂によりも有利である。
【0021】
ほう素選択性樹脂装置25の処理水は紫外線酸化装置26に供給され、被処理水中の有機物が分解される。ほう素選択性樹脂は構造上、有機物の溶出が起こりやすく、ほう素選択性樹脂装置25の処理水のTOCは入口水のTOCより高くなる可能性がある。また、EDIやほう素選択性樹脂は荷電を有する物質しか除去できないため、ほう素選択性樹脂の処理水には非イオン性の有機物が残存している可能性がある。紫外線酸化装置26は被処理水に紫外線を照射し、被処理水に含まれる有機物を分解する。紫外線酸化装置26は被処理水のTOCを5μg/L未満まで低減する。本実施形態では、一次純水製造システム21でTOCを効率よく低減するため、二次純水製造システム31でTOCを低減した超純水を得ることが容易であり、また二次純水製造システム31の紫外線酸化装置33の負担を小さくすることも可能となる。
【0022】
紫外線酸化装置26の処理水は、紫外線酸化装置26の下流に配置された白金族金属担持イオン交換樹脂装置27に供給される。白金族金属担持イオン交換樹脂装置27には、パラジウム(Pd)、白金(Pt)などの白金族金属触媒を担持するイオン交換樹脂が充填されており、白金族金属触媒は紫外線照射によって発生した過酸化水素を分解する。これによって、後段の第2のEDI28に充填された樹脂が過酸化水素によってダメージを受けることが防止される。過酸化水素の濃度が低い場合、白金族金属担持イオン交換樹脂装置27を省略することもできる。
【0023】
白金族金属担持イオン交換樹脂装置27の処理水は第2のEDI28に供給され、イオン成分がさらに除去される。イオン成分は、紫外線酸化装置26で有機物を分解する際に生じた炭酸、荷電を持つ有機酸、ほう素選択性樹脂装置25で除去できない極低濃度の金属(ナトリウムなど)や、シリカなどを含む。第2のEDI28の処理水のシリカ濃度は0.1μg/L未満、ナトリウム濃度は10ng/L未満まで低減される。第2のEDI28の処理水のTOCは2μg/L未満まで低減され、膜脱気装置24を省略しても5μg/L未満、好ましくは3μg/L程度まで低減される。第2のEDI28の処理水は、ほう素濃度、TOC、金属濃度、シリカ濃度が極めて低い値まで低減された高純度の純水である。
【0024】
(実施例)
上述の一次純水製造システム21と同様の構成のシステムを用いて、被処理水の処理を行った。表1に各装置の仕様を示す。表2,3にそれぞれ実施例1,2の各装置の処理水の主な物質の濃度と水質(比抵抗)を示す。実施例1では膜脱気装置24を省略し、実施例2では膜脱気装置24を設けた。逆浸透膜装置22、第1のEDI23、ほう素選択性樹脂装置25、紫外線酸化装置26、第2のEDI28は実施例1,2とも設けた。白金族金属担持イオン交換樹脂装置27は設けていない。逆浸透膜装置22で大半のイオン成分を除去し、イオン濃度を数十~数百μg/Lまで低減し、第1のEDI23でイオン成分と炭酸(CO2)とほう素(B)を除去し、ほう素選択性樹脂で、ほう素を1ng/L未満の濃度まで除去した。さらに、紫外線酸化装置26によってTOCを低減し、第2のEDI28で、シリカ(SiO2)を0.1μg/L未満、金属(Na)を10ng/L未満の濃度まで除去した。ほう素選択性樹脂から溶出する微量の導電性有機物の影響で、ほう素選択性樹脂装置25の処理水では、第1のEDI23の処理水に比べて、TOCが微増し、比抵抗が微減した。しかし、被処理水が紫外線酸化装置26で処理され、有機物が分解された後、第2のEDI28で処理されイオン成分が除去されるため、TOCは減少し、比抵抗は増加した。実施例1と2の比較より、膜脱気装置24は第2のEDI28の処理水のTOCを減少させることが確認された。これは、前述の通り、溶存酸素濃度が低減したことで、紫外線酸化装置26における有機物の分解効率が向上したためと考えられる。
【0025】
表4には比較例の各装置の処理水の主な物質の濃度と水質(比抵抗)を示す。比較例では、第2のEDI28が第1のEDI23とほう素選択性樹脂装置25の間に設けられており、それ以外の構成は実施例1と同じである。紫外線酸化装置26の処理水のほう素濃度とTOCは、第1の実施例の第2のEDI28の処理水のほう素濃度とTOCと同程度であるが、比抵抗が第1の実施例より小さくなった。これは、ほう素選択性樹脂から溶出する微量の導電性有機物と紫外線照射で生じた炭酸のためであると考えられる。
【0026】
実施例1,2と比較例より、逆浸透膜装置22、第1のEDI23、ほう素選択性樹脂装置25(非再生型)、紫外線酸化装置26、第2のEDI28の順で配列された一次純水製造システム21によって、被処理水中のほう素が十分に除去されるとともに比抵抗が増加した高純度の純水が得られることが確認された。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【符号の説明】
【0031】
1 超純水製造装置
21 一次純水製造システム
22 逆浸透膜装置
23 第1の電気式脱イオン水製造装置(第1のEDI)
24 膜脱気装置
25 ほう素選択性樹脂装置
26 紫外線酸化装置
27 白金族金属担持イオン交換樹脂装置
28 第2の電気式脱イオン水製造装置(第2のEDI)
31 二次純水製造システム
図1