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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】信号制御機のケース
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/095 20060101AFI20240425BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G08G1/095 C
H05K5/02 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020129535
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026187
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】高城 里香
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-122025(JP,A)
【文献】実開昭57-200075(JP,U)
【文献】実公昭48-007670(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器を制御する信号制御機の筐体内側に設けられ、筐体外側に取り出し可能な手動スイッチを収納するケースにおいて、
前記ケースは、正面側が開口した箱状であり、該開口と対向して基準面をなす背面部と、該背面部より立ち上がる各面部とを備え、金型による樹脂での一体成形時にアンダーカットを含まないケース原型からなり、
前記各面部のうち、少なくとも何れか一の面部は、前記ケース原型では前記背面部と同一面上に薄肉なヒンジを境に連なり、一体成形後に前記背面部に対して立ち上げ可能であり、
前記一の面部は、前記背面部に対して立ち上げたとき、前記ケースの内側で区画された小空間を仕切るための隔壁となることを特徴とする信号制御機のケース。
【請求項2】
前記一の面部は、前記背面部に対して立ち上げたとき、他の隣接する面部に対してスナップフィットにより結合可能であることを特徴とする請求項1に記載の信号制御機のケース。
【請求項3】
前記一の面部は、前記背面部に対して立ち上げた状態での一体成形時には、前記背面部を基準とする型抜方向では離型できない特定部位がある特定の面部であることを特徴とする請求項1または2に記載の信号制御機のケース。
【請求項4】
前記特定部位は、関連部品を取り付けるための取付孔であることを特徴とする請求項に記載の信号制御機のケース。
【請求項5】
前記特定の面部は、該特定の面部と前記ケース原型でさらに同一面上に薄肉なヒンジを境に連なり、一体成形後に該特定の面部に対して折り曲げ可能な付帯面部と、該付帯面部に設けられ、前記関連部品が本来の取付姿勢とは異なる角度で通過可能な通過孔と、を備え、
前記関連部品を前記通過孔に通過させて、前記取付孔に本来の取付姿勢で取り付けた後、前記付帯面部を折り曲げ前記特定の面部に重ね合わせたとき、前記関連部品の一部が前記付帯面部と前記特定の面部とに挟持されて抜け止め状態となることを特徴とする請求項に記載の信号制御機のケース。
【請求項6】
前記ケースの背面部に沿って設けられ、前記手動スイッチを磁力で着脱可能に取り付ける取付板を備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の信号制御機のケース。
【請求項7】
前記取付板は、前記背面部の一部をなすように、該背面部に対して同一面上に連なることを特徴とする請求項に記載の信号制御機のケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号灯器を制御する信号制御機の筐体内側に設けられ、筐体外側に取り出し可能な手動スイッチを収納するケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、信号制御機は、例えば特許文献1,2に開示されているように、交差点に設置されており、信号灯器の点灯を予め定められたプログラム通りの周期で自動制御したり、交通管制センターとの通信により、実際の交通量に応じて周期を変えられるものであるが、必要に応じて手動で操作できるように構成されている。
【0003】
信号制御機の手動操作に関しては、例えば信号制御機の筐体の開口面を開閉する外扉の内側に、筐体外側に取り出し可能な手動スイッチを備えるものが一般的であった。手動スイッチは、信号灯器の自動制御に代わって現示(現在の灯色)を手動で切り替えるものであり、通常は外扉の内側に設けられたケース内に、磁石により着脱自在に取り付けられていた。
【0004】
手動スイッチを収納するケースは、信号制御機全体の筐体や外扉と同様に、従来から板金によって構成されていた。ここでケースは、全体的には正面側が開口した底浅な箱状であるため、通常は複数の板金を互いにネジ止めしたり溶接して組み合わせて構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-221497号公報
【文献】特開昭59-99600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来の信号制御機では、手動スイッチを収納するケースも、板金を組み合わせて構成されていたので、重量増加を招くだけでなく、ネジ止めや溶接による組み立て作業が面倒で時間もかかり、コスト高を招いていた。そのため、前記ケースに関しては、軽量化およびコスト低減を実現するために、板金に代わり樹脂から一体成形することが求められていた。
【0007】
しかしながら、前記ケースの形状は、単に底浅な箱状であるだけでなく、その側壁や内部を仕切る隔壁には、関連部品であるスイッチ類を固定するための横穴を開ける必要がある。このように前記ケースでは、簡易な金型では型抜きできないアンダーカットがあるため、金型内部に可動式の入れ子を備える等の特殊な金型が必要となり、さらにコストが嵩むという問題が生じる。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、軽量化やコスト低減が可能であり、組み立て作業も簡易化することができる信号制御機のケースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
信号灯器を制御する信号制御機の筐体内側に設けられ、筐体外側に取り出し可能な手動スイッチを収納するケースにおいて、
前記ケースは、正面側が開口した箱状であり、該開口と対向して基準面をなす背面部と、該背面部より立ち上がる各面部とを備え、金型による樹脂での一体成形時にアンダーカットを含まないケース原型からなり、
前記各面部のうち、少なくとも何れか一の面部は、前記ケース原型では前記背面部と同一面上に薄肉なヒンジを境に連なり、一体成形後に前記背面部に対して立ち上げ可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る信号制御機のケースによれば、軽量化やコスト低減が可能であり、しかも、簡易な構成で手動スイッチを容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る信号制御機のケースの内側を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る信号制御機のケースの元となるケース原型を示す正面図である。
図3】本実施形態に係る信号制御機のケースの元となるケース原型を示す背面図である。
図4】本実施形態に係る信号制御機のケースの元となるケース原型を示す右側面図である。
図5】本実施形態に係る信号制御機のケースの元となるケース原型を示す左側面図である。
図6】本実施形態に係る信号制御機のケースの元となるケース原型を示す平面図である。
図7】本実施形態に係る信号制御機のケースの元となるケース原型を示す底面図である。
図8】本実施形態に係る信号制御機のケースの組み立て工程を示す説明図である。
図9図8に続くケースの組み立て工程を示す説明図である。
図10】本実施形態に係る信号制御機のケースの組み立て工程を示す説明図である。
図11図10に続くケースの組み立て工程を示す説明図である。
図12】本発明の実施形態に係る信号制御機を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
図1図12は、本発明の一実施形態を示している。
本実施形態に係る信号制御機10は、交差点等に設置された各信号灯器の主に点灯動作等を制御するものである。なお、信号制御機10について、既に周知な事項の詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
<信号制御機10の概要>
図12に示すように、信号制御機10は、上下方向に長い箱状に形成された筐体11を備え、筐体11の内部に、信号灯器の制御を行うための各種基板として、入出力基板や制御基板、それに電源ユニット等の内部機構が収納されている。筐体11は、例えば板金等の金属で形成されており、正面側が大きく開口している。
【0014】
筐体11の正面側には、開口を覆う外扉12と、その内側の内扉13とが、それぞれ開閉可能に設けられている。内扉13は、開口内枠に収まる状態で上下に2分割され、上下それぞれの一側端が筐体11の開口の一側端に蝶番を介して連結され、蝶番を回動中心として他側端を前方に向けて開くことができる。
【0015】
外扉12は、筐体11の開口外枠に重なる長方形の板状に形成され、その一側端が筐体11の開口の一側端に蝶番を介して連結され、蝶番を回動中心として他側端を前方に向けて開くことができる。外扉12には、施錠可能なロック機構14が設けられている。また、外扉12の内側には、手動操作部20が設けられている。
【0016】
手動操作部20は、信号灯器を自動制御に代わって手動で操作するためのものである。手動操作部20は、外扉12が閉じられた状態でも、外扉12に開設された窓部(図示せず)を通じて、外部から操作できるように構成されている。なお、前記窓部は、通常は施錠可能な蓋板によって外側から閉じられている。
【0017】
<手動操作部20>
図1に示すように、手動操作部20は、前記窓部を通じて外扉12の外側に取り出し可能な手動スイッチ30と、該手動スイッチ30を収納するケース21と、を備えている。手動スイッチ30は、使用者が握って操作するものであり、略円筒形のグリップ本体31の上端に、押下操作するノック式の押ボタン32が出没可能に設けられている。手動スイッチ30は、押ボタン32を押すごとに、対応する信号灯器のステップ(階梯)を手動で進めて現示(現在の灯色)を切り替えるものである。
【0018】
グリップ本体31の外周のうち一側端に沿って、軸方向と平行に延びる平面部位を備えた磁石33が設けられている。この磁石33によって、手動スイッチ30は、次述するケース21の内壁に磁力で着脱可能に取り付けることができる。グリップ本体31の下端部は、伸縮自在な螺旋状のコード34を介して、操作信号を出力可能に内部機構と連結されている。ここでコード34の基端にあるプラグは、レセプタクル37に接続されている。
【0019】
<<ケース21>>
図1に示すように、ケース21は、その正面側が開口した底浅な箱状に形成されている。ケース21は、外扉12の内側において、正面開口が前記窓部に合致するように固定されている。よって、前記窓部の蓋板を開ければ、外扉12の外側からケース21の内部を覗くことができる。このケース21の内壁のうち、正面開口と対向して基準面をなす背面部22に、前記手動スイッチ30は着脱可能に取り付けられており、前記窓部を通じて外部に取り出して操作することができる。
【0020】
詳しく言えばケース21は、その基準面をなす背面部22の四辺より、それぞれ所定高さで立ち上がる周壁をなす各面部として上面部23、下面部24、および両側面部25,26を備えている。上面部23と下面部24には、それぞれ端縁に外扉12の内側に固定するためのフランジ28a,28bが略直角に延設されている。このようなケース21は、次述する収納部27等も含めて全て樹脂により一体成形されている。
【0021】
一方の側面部25側には、手動スイッチ30とは別の各種スイッチ35,36等を収納するために、正面側が開口して区画された小空間をなす収納部27が一体に設けられている。ここで収納部27は、背面部22の一部の面部22aが一方の側面部25より側方へ矩形状に延出し、この延出した面部22aと元の背面部22との境界から側面部25(の一部)が立ち上がり、ケース21内側で区画されている。
【0022】
図2図1に示すように、収納部27は、背面部22の一部の面部22aの上端縁と下端縁と側端縁からも、それぞれ各面部23a,24a,25aが立ち上がって囲まれている。収納部27の下端面をなす面部24aには、コネクタを取り付ける取付孔201が予め設けられている。この取付孔201は、の背面部22より立ち上がる面部24aに直交するものであり、背面部22を基準とした一般の金型による一体成形時にアンダーカットとなる。すなわち、取付孔201は、背面部22を基準とする型抜方向では離型できない「特定部位」に相当し、この特定部位を含む面部24aは「特定の面部」となる。
【0023】
また、一方の側面部25のうち、収納部27を仕切る隔壁となる一部の面部25bには、各種スイッチ等を取り付ける取付孔202、203、204が予め設けられている。これらの取付孔202、203、204は、背面部22より立ち上がる面部25bに直交するものであり、背面部22を基準とした一般の金型による一体成形時にアンダーカットとなる。すなわち、取付孔202、203、204も、背面部22を基準とする一の型抜方向では離型できない「特定部位」に相当し、この特定部位を含む面部25bも「特定の面部」となる。
【0024】
このようなケース21を、特定部位がある特定の面部も含めて全て樹脂により一体成形するに際し、特殊な金型(例えば可動式の入れ子を備える等)の使用を避けるために、ケース21は、金型による樹脂での一体成形時にアンダーカットを含まないケース原型21Aから構成される。すなわち、ケース原型21Aでは、特定部位201~204がある特定の面部24a,25bは、背面部22(の一部22a)と同一面上に薄肉なヒンジ206,207を境に連なり、一体成形後に背面部22に対して立ち上げ可能に構成されている。そして、ケース21は、ケース原型21Aの一体成形後に、特定の面部24a,25bをヒンジ206,207により立ち上げて組み立てられている。
【0025】
図1に示すように、収納部27の内側には、動作切替スイッチ35、現示切替スイッチ36、手動スイッチ30のコード34を接続するレセプタクル37、これらの配線を接続するコネクタ38等が収納されている。コネクタ38は、略立方体状に形成されている。コネクタ38を取り付ける面部24aには、コネクタ38を途中まで通す取付孔201が設けられている。
【0026】
動作切替スイッチ35は、立方体状の本体よりトグル式の可動子35aが突出し、可動子35aの操作により、通常の自動モードと手動スイッチ30を操作する手動モードとに切り替えるものである。動作切替スイッチ35を取り付ける面部25bの上段には、可動子35aを通す取付孔202が設けられている。
【0027】
現示切替スイッチ36も、立方体状の本体よりトグル式の可動子36aが突出しているが全体的に小型である。可動子36aの操作により、現示の切り替えに関して、通常の標準モードといわゆる特Iモードに切り替える。現示切替スイッチ36を取り付ける面部25bの中段には、可動子36aを通す取付孔203が設けられている。また、レセプタクル37は、コード34側のプラグを接続する円筒状本体の外周につば状フランジを設けてなる。レセプタクル37を取り付ける面部25bの下段には、レセプタクル37の本体は通るがフランジは通らない内径の取付孔204が設けられている。
【0028】
また、面部25bにおいて取付孔204のある下段の側方には、さらにヒンジ208を境に同一面上に連なり、面部25bに対して折り曲げ可能な付帯面部25cが設けられている。付帯面部25cには、前記取付孔204と連通してレセプタクル37が本来の取付姿勢とは異なる角度で通過可能な通過孔205が設けられている。ここで通過孔205は、レセプタクル37を本来の取付姿勢と直交する側面視した形に象られている。通過孔205は、取付孔204に対し、弾性変形により拡張可能な括れ部を通じて連通している。
【0029】
付帯面部25cは、通過孔205にレセプタクル37を通過させて、該レセプタクル37を取付孔204に本来の取付姿勢で取り付けた後、付帯面部25cを折り曲げて面部25bに重ね合わせたとき、レセプタクル37の一部であるフランジが、付帯面部25cと面部25bとに挟持されて抜け止め状態となるように設計されている。
【0030】
さらに、特定の面部24a,25bは、背面部22に対して立ち上げたとき、他の隣接する面部に対してスナップフィットにより結合可能である。先ず面部24aは、立ち上げると両側端が、それぞれ側面部25の下端と面部25aの下端とに略直角に対接する。この面部24aの両側端に沿って、それぞれスリット状の被係合溝211が凹設されている。一方、側面部25と面部25aとの下端に沿って、それぞれ前記被係合溝211にスナップフィット係合する係合爪212が突設されている。
【0031】
また、面部25bは、立ち上げると上下端が、それぞれ面部23aの一側端と側面部25の開口端とに略直角に対接する。この面部25bの上下端に沿って、それぞれスリット状の被係合溝213が凹設されている。一方、面部23aの一側端と側面部25の開口端に沿って、それぞれ前記被係合溝213にスナップフィット係合する係合爪214が突設されている。
【0032】
さらに、付帯面部25cは、折り曲げて面部25bに重ね合わせると上下端が、それぞれ面部25bの途中部位に対して略直角に対接する。この面部25bの途中部位に、それぞれスリット状の被係合溝215が凹設されている。一方、付帯面部25cの上下端に沿って、それぞれ前記被係合溝215にスナップフィット係合する係合爪216が突設されている。
【0033】
ところで、ケース21(ケース原型21A)を、樹脂で一体成形したことにより、そのままでは背面部22に手動スイッチ30の磁石33を付けることはできない。よって、図1に示すように、背面部22に沿って、磁石33を付けるための取付板40が設けられている。ここで取付板40は、本実施形態では、手動スイッチ30や各種スイッチ35,36の操作説明を文字やピクトグラム等で記した「表示銘板」を兼ねている。
【0034】
取付板40は、矩形の平板状の薄いプレートからなり、その材質は磁石33が付く磁性材料である鉄等の板金である。取付板40の大きさは、手動スイッチ30を取り付ける箇所の周囲に、表示銘板としての文字等を記せるスペースを確保できる程度に設定されている。
【0035】
取付板40の表面上には、例えば手動スイッチ30を取り付ける箇所で、その形状の縁取りの内側に「手動押ボタン取付位置」等と記されている。取付板40は、ケース21内側で収納部27に隣接するように配置され、取付板40の表面には、前記「手動押ボタン取付位置」の正面視右側に、その側方で上下に並ぶ各種スイッチ35,36の動作説明も併せて記されている。なお、取付板40に対する文字等の表記は、直接印刷しても良く、あるいは別途印刷したラベルを貼り付けても良い。
【0036】
ちなみに、取付板40の表面上で、動作切替スイッチ35のトグル式可動子35aが重なる位置には、このスイッチ35による動作切り替えとして、可動子35aが下向きであれば、通常の自動モードであり、可動子35aを上向きとすれば、手動スイッチ30の操作が可能な手動モードに切り替わる説明が記されている。
【0037】
また、取付板40の表面上で、現示切替スイッチ36のトグル式可動子36aが重なる位置には、このスイッチ36による現示(現在の灯色)の切り替えとして、可動子36aが下向きであれば、通常の標準モードであり、可動子36aを上向きとすれば、いわゆる特Iモードに切り替わる説明が記されている。なお、「手動押ボタン取付位置」の正面視左側には、手動スイッチ30による手動操作が終了した後は、動作切替スイッチ35を元の自動モードに戻す旨の注意書きも記されている。
【0038】
取付板40は、ケース21の背面部22に沿わせるように取り付けるが、本実施形態では背面部22のうち、取付板40を取り付ける箇所は、そのまま大きく切り欠かれている。すなわち、取付板40は、ケース21の背面部22と同一面上に連なって、背面部22の一部をなすように取り付けられる。ここで背面部22の切り欠き部位の上下には、取付板40の位置決め手段が設けられている。図2に示すように、位置決め手段は、切り欠き部位の上端側に沿って並ぶ複数の舌片221,222と、下端側に沿って並ぶ複数の舌片223,224とからなる。
【0039】
上端側の舌片221,222のうち、両端にある短い一対の舌片221は、背面部22の基準面に対して背面前方に平行にずれ、中央にある長い222は、背面部22の基準面に対して背面後方に平行にずれている。また、下端側の舌片223,224のうち、両端にある長い一対の舌片223は、背面部22の基準面に対して背面後方に平行にずれ、中央にある短い舌片224は、背面部22の基準面に対して背面前方に平行にずれている。
【0040】
ケース21の側面部26のうち背面部22に連なる角隅に沿って、外側から背面部22上に連通するスリット状の差込溝29(図1参照)が開口している。この差込溝29を通じて、ケース21の外側方から取付板40をケース21内部の背面部22上に沿うように挿入することができる。取付板40は、背面部22上に途中まで沿った後、前記切り欠き部位を覆う状態で上端側の舌片221,222と、下端側の舌片223,224との間に挟持されて位置決めされる。なお、位置決めされた取付板40は、ネジ止め等により固定すれば良い。
【0041】
<手動操作部20の作用について>
以下、本実施形態に係る手動操作部20のうち、主としてケース21の組み立てについて説明する。図1に示すように、ケース21は樹脂で一体成形するが、一般的な金型では型抜きできないアンダーカットとして、特定の面部24a,25bに各取付孔201~204を備え、また付帯面部25cには通過孔205を備えている。
【0042】
従って、ケース21の元となるケース原型21Aにおいて、特定の面部24a,25bおよび付帯面部25cは、図2に示すように、背面部22と同一面上に薄肉なヒンジ206,207,208を境に連なるものとする。かかるケース原型21Aによれば、一般的な金型により一体成形する時は、背面部22を基準とした型抜き方向に離型できないアンダーカットは存在せず、簡易な金型により樹脂から容易に一体成形することができる。
【0043】
ケース原型21Aを一体成形した後、特定の面部24a,25bは、それぞれヒンジ206,207によって背面部22に対して略直角に容易に立ち上げることができる。また、付帯面部25cは、これがヒンジ208を境に連なる面部25bに重なるように容易に折り曲げることができる。なお、薄肉なヒンジ206,207,208は、直線状に板厚を薄くして折り曲げやすくしたものであるが、その途中にスリット等を入れても良い。
【0044】
図8および図9は、ケース原型21Aのうち、特定の面部24a,25bを立ち上げる組み立て工程を示している。また、図10および図11は、ケース原型21Aのうち、付帯面部25cを折り曲げる組み立て工程を示している。以下、図8図11に沿って、ケース原型21Aからケース21への具体的な組み立てについて順に説明する。
【0045】
先ず、図8(a)は、ケース原型21Aの特定の面部25b(図中説明では「スイッチ取付部」)を、ヒンジ207を回転中心として背面部22に対して30度ほど立ち上げた状態を示している。図8(b)は、面部25bをさらに60度まで立ち上げた状態を示している。ここで面部25bは、背面部22の一部の面部22aと薄肉なヒンジ207で連なり、容易に折り曲げることができる。
【0046】
続く図8(c)に示すように、面部25bをさらに立ち上げて、背面部22に対して90度になった時、面部25bにある被係合溝213(図2参照)に対して、隣接する面部23aと側面部25にある係合爪214(図2参照)をスナップフィット係合させて互いに固定する。このようなスナップフィット係合により、接着剤やネジ等の固着手段を用いることなく、容易かつ確実に組み付けることができる。以下の各所のスナップフィット係合においても同様な効果を得ることができる。
【0047】
次に、図8(d)に示すように、面部25bに連なる付帯面部25c(図中説明では「レセプタクル取付部」)を、ヒンジ208を回転中心として面部25bに対して90度ほど内側へ折り曲げる。図8(e)に示すように、付帯面部25cをさらに折り曲げて、面部25bに重なる180度になった時、面部25bにある被係合溝215(図2参照)に対して、付帯面部25cにある係合爪216(図2参照)をスナップフィット係合させれば、互いに固定することができる。
【0048】
図8(f)では、ケース21にある差込溝29から取付板40(図中説明では「銘板」)を挿入する状態を示している。続く図9(g)では、取付板40を途中まで挿入した状態を示している。ここで取付板40を挿入する時は、ケース21にある上下の舌片221,222,223,224(図2参照)の間を沿わせて位置決めすることができる。
【0049】
そして、図9(h)に示すように、取付板40を挿入が完了したら、取付板40を舌片224等に対して固定すれば良い。このような状態では、固定された取付板40の端縁が、既に折り曲げられている付帯面部25cの端に当接する。そのため、取付板40が押さえとなり、付帯面部25cが面部25bに対して開かないだけでなく、付帯面部25cと共に面部25bが内側に倒れることを防止することができる。
【0050】
続く図9(i)は、ケース原型21Aにある別の特定の面部24a(図中説明では「コネクタ取付部」)を、ヒンジ206を回転中心として45度ほど立ち上げた状態を示している。図9(j)に示すように、面部24aをさらに立ち上げて90度になった時、面部24aにある被係合溝211(図2参照)に対して、側面部25と面部25aにある係合爪212(図2参照)をスナップフィット係合させて互いに固定する。
【0051】
これにより、ケース原型21Aからケース21へと、次述するレセプタクル37の取り付けを除き組み立てが完成する。後は図9(k)に示すように、収納部27の内側に、動作切替スイッチ35、現示切替スイッチ36、それにコネクタ38等を取り付ければ良い。これらの関連部品も、ネジ等を使わずに取り付け可能とすれば、より簡単に組み立てることが可能となる。なお、図9(k)に示した2つのケース21は、それぞれ別の角度から見た状態を示している。
【0052】
また、ケース21の収納部27に対するレセプタクル37の取り付けは、図10(a)に示すように、付帯面部25cを面部25bに対して90度折り曲げた状態、すなわち前述した図8(d)に示した状態で行う。かかる状態にしてから、図10(b)に示すように、付帯面部25cにある通過孔205(図2参照)に、レセプタクル37を側面視となる角度で通過させる。ここで通過孔205は、レセプタクル37の円筒状本体やつば状フランジを側面視した形を象っており、レセプタクル37を側面視となる角度でのみ通過させることができる。
【0053】
次いで図10(c)に示すように、レセプタクル37の円筒状本体を、面部25bにある取付孔204に挿入するようにして本来の取付姿勢に位置決めする。このとき、レセプタクル37のつば状フランジは、取付孔204を通らず周囲に当接するが、この取付孔204の周囲には、レセプタクル37を位置決めする孔や突起を設けておくと良い。次いで図10(d)に示すように、レセプタクル37が位置決めされた状態で、付帯面部25cを面部25bに対して重ね合わせるように折り曲げる。図10(d)では、付帯面部25cが135度まで折り曲げられた状態を示している。
【0054】
続く図11(e)に示すように、付帯面部25cをさらに折り曲げて、面部25bに重なり合う180度になった時、面部25bにある被係合溝215(図2参照)に対して、付帯面部25cにある係合爪216(図2参照)をスナップフィット係合させて互いに固定する。このとき、レセプタクル37の本体は通過孔205を通過するが、レセプタクル37のフランジは通過孔205を通過せず、このフランジは、付帯面部25cの通過孔205の周囲と面部25bの取付孔204の周囲に挟持されて抜け止め状態となる。
【0055】
以上のように、ケース21を樹脂で成形することにより、従来の板金製に比べて重量を低減することができるだけでなく、金型で容易に一体成形することができ、量産も可能となり、大幅にコストを低減することができる。ただし、ケース21を樹脂で成形すると、手動スイッチ30を磁石33で簡単に付けることができなくなる。そこで、図9(g),(h)で説明したように、取付板40を背面部22に沿って設けることにより、樹脂製のケース21内でも手動スイッチ30の磁石33を取付板40に着脱させることができる。
【0056】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0057】
[1]先ず、本発明は、
信号灯器を制御する信号制御機10の筐体11内側に設けられ、筐体11外側に取り出し可能な手動スイッチ30を収納するケース21において、
前記ケース21は、正面側が開口した箱状であり、該開口と対向して基準面をなす背面部22と、該背面部22(の一部22aを含む)より立ち上がる各面部23a,24a,25a,25bとを備え、金型による樹脂での一体成形時にアンダーカットを含まないケース原型21Aからなり、
前記各面部23a,24a,25a,25bのうち、少なくとも何れか一の面部24a,25bは、前記ケース原型21Aでは前記背面部22と同一面上に薄肉なヒンジ206,207を境に連なり、一体成形後に前記背面部22に対して立ち上げ可能であることを特徴とする信号制御機10のケース21。
【0058】
本手動操作部20では、ケース21を樹脂で成形することにより、従来の板金製に比べて重量を低減することができるだけでなく、成形型で容易に一体成形することができると共に成形後の組み立ても容易であり、大幅にコストを低減することができる。ここでケース21は、正面側が開口した箱状であるが、その各面部23a,24a,25a,25bのうち少なくとも何れか一の面部24a,25bは、ケース原型21Aでは背面部22と同一面上に薄肉なヒンジ206,207を境に連なる。
【0059】
このようなケース原型21Aによれば、一般の金型により一体成形する時は、背面部22を基準とした型抜き方向に離型できないアンダーカットが、少なくとも何れか一の面部24a,25bには存在しないように構成することが可能となる。よって、ケース原型21Aは、簡易な金型により樹脂から容易に一体成形することができる。
【0060】
そして、一体成形したケース原型21Aにおいて、前記一の面部24a,25bは、それぞれヒンジ206,207により容易に立ち上げることができ、本来のケース21に簡単に組み立てることができる。このようなケース21によれば、軽量化だけでなく大幅なコスト低減も可能となる。
【0061】
[2]また、本発明では、
前記一の面部24a,25bは、前記背面部22に対して立ち上げたとき、他の隣接する面部23a,25,25aに対してスナップフィットにより結合可能であることを特徴とする。
【0062】
これにより、背面部22に対して立ち上げた一の面部24a,25bを、接着剤やネジ等の固着手段を用いることなく、他の隣接する面部に確実に固定することができ、元の面部23a,24a,25,25a,25bがそれぞれの一体成形された形状だけで、容易かつ強固に組み立てることができる。
【0063】
[3]また、本発明では、
前記一の面部24a,25bは、前記ケース21の内側で区画された小空間を仕切るための隔壁となる。
【0064】
このように、一の面部24a,25bは、ケース21の外壁をなすものに限らず、内部を仕切る隔壁にも適用することができ、より複雑な内部構造を備えたケース21の組み立てにも適用することができる。前記実施形態では、ケース21の内部で収納部27を仕切る面部25bが該当する。
【0065】
[4]また、本発明では、
前記一の面部24a,25bは、前記背面部22を基準とする型抜方向では離型できない特定部位201~204がある特定の面部24a,25bであることを特徴とする。
【0066】
このように本来のケース21では、一体成形時にアンダーカットとなる特定部位201~204があったとしても、この特定部位201~204を含む特定の面部24a,25bは、前述したようにケース原型21Aにおいては、簡易な金型により樹脂から容易に一体成形することが可能となる。
【0067】
[5]また、本発明では、
前記特定部位201~204は、関連部品を取り付けるための取付孔であることを特徴する。
このように、特定部位201~204は、一般的な金型による型抜においてアンダーカットとなる孔が適するが、他に例えば凸部等でも良い。また、必ずしも関連部品を取り付けるための構造に限られることもない。
【0068】
[6]また、本発明では、
前記特定の面部25bは、該特定の面部25bと前記ケース原型21Aでさらに同一面上に薄肉なヒンジ208を境に連なり、一体成形後に該特定の面部25bに対して折り曲げ可能な付帯面部25cと、該付帯面部25cに設けられ、前記関連部品が本来の取付姿勢とは異なる角度で通過可能な通過孔205と、を備え、
前記関連部品を前記通過孔205に通過させて、前記取付孔204に本来の取付姿勢で取り付けた後、前記付帯面部25cを折り曲げ前記特定の面部25bに重ね合わせたとき、前記関連部品の一部が前記付帯面部25cと前記特定の面部25bとに挟持されて抜け止め状態となることを特徴する。
【0069】
これにより、特定の面部25bの取付孔204に取り付ける関連部品を、接着剤やネジ等の固着手段を用いることなく、面部25bに連なる付帯面部25cとその通過孔205の構造だけで、確実に抜け落ちないように強固に固定することが可能となる。ここでの関連部品は、前記実施形態におけるレセプタクル37が該当するが、もちろん、レセプタクル37以外の他の関連部品に適用しても良い。
【0070】
[7]また、本発明は、
前記ケース21の背面部22に沿って設けられ、前記手動スイッチ30を磁力で着脱可能に取り付ける取付板40を備えたことを特徴する。
【0071】
前述したようにケース21を樹脂で成形すると、手動スイッチ30を磁石によって簡単に付けることができなくなる。そこで、取付板40を背面部22に沿って設けたことにより、手動スイッチ30を磁石によって、背面部22の取付板40に容易に着脱することができる。
【0072】
[8]また、本発明では、
前記取付板40は、前記背面部22の一部をなすように、該背面部22に対して同一面上に連なることを特徴する。
【0073】
このように、背面部22の一部を取付板40で代用することにより、樹脂材料を削減できるだけでなく、後から取付板40で塞ぐ空間を利用して、前述した特定の面部25bを設けることも可能となる。例えば前記実施形態における面部25bや付帯面部25cは、この空間を利用して配置したものである。
【0074】
以上、実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、信号制御機10の筐体11ほか、ケース21、手動スイッチ30等の具体的な形状は図示したものに限定されることはない。特に、ケース21と、その元となるケース原型21Aは、適宜設計変更し得る範囲で様々な形状に適用することができる。
【0075】
また、前記実施形態では、ケース21の背面部22より立ち上がる各面部のうち、収納部27を区画する各面部23a,24a,25aが特定部位を含む特定の面部となるが、全体の外壁をなす上面部23、下面部24、他方の側面部26も、背面部22を基準とする型抜方向では離型できない「特定部位」を設けて「特定の面部」としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、信号灯器を制御するための信号制御機に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10…信号制御機
11…筐体
12…外扉
13…内扉
20…手動操作部
21…ケース
21A…ケース原型
22…背面部
22a…面部
23…上面部
23a…面部
24…下面部
24a…面部(特定の面部)
25…側面部
25a…面部
25b…面部(特定の面部)
25c…付帯面部
26…側面部
27…収納部
29…差込溝
30…手動スイッチ
31…グリップ本体
32…押ボタン
33…磁石
34…コード
35…動作切替スイッチ
36…現示切替スイッチ
37…レセプタクル
38…コネクタ
40…取付板(表示銘板)
201,202,203,204…取付孔(特定部位)
図1
図2
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