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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】信号制御機の手動スイッチ
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/095 20060101AFI20240425BHJP
   G08G 1/07 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
G08G1/095 C
G08G1/07 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020129536
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026188
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】高城 里香
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-122025(JP,A)
【文献】特開2012-059580(JP,A)
【文献】特開2007-233570(JP,A)
【文献】特開2006-118221(JP,A)
【文献】特開昭59-099600(JP,A)
【文献】特開平10-285671(JP,A)
【文献】特表2014-517942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 23/00-99/00
G08B 19/00-31/00
G08G 1/00-99/00
H02J 7/00- 7/12、 7/34- 7/36
H03J 9/00- 9/06
H04Q 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器を制御する信号制御機の筐体内側に収納され、筐体外側に取り出し可能な手動スイッチにおいて、
前記手動スイッチは、前記信号制御機が備える制御部と近距離無線通信により信号を互いに送受可能であり、
前記手動スイッチは、その操作結果を前記信号制御機の制御部から受信した信号に基づき表示可能な表示部を備えることを特徴とする信号制御機の手動スイッチ。
【請求項2】
前記手動スイッチは、前記信号灯器の現示の切り替えを指示する信号のみ出力可能であることを特徴とする請求項1に記載の信号制御機の手動スイッチ。
【請求項3】
前記手動スイッチは、前記近距離無線通信が無効となった状態を報知可能な報知部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の信号制御機の手動スイッチ。
【請求項4】
前記手動スイッチは、前記筐体内側に設けられたケースに収納された状態で無線給電により充電可能であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の信号制御機の手動スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号灯器を制御する信号制御機の筐体内側に収納され、筐体外側に取り出し可能な手動スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、信号制御機は、例えば特許文献1,2に開示されているように、交差点に設置されており、信号灯器の点灯を予め定められたプログラム通りの周期で自動制御したり、交通管制センターとの通信により、実際の交通量に応じて周期を変えられるものであるが、必要に応じて手動で操作できるように構成されている。
【0003】
信号制御機の手動操作に関しては、例えば信号制御機の筐体の開口面を開閉する外扉の内側に、筐体外側に取り出し可能な手動スイッチを備えるものが一般的であった。手動スイッチは、信号灯器の自動制御に代わって現示(現在の灯色)を手動で切り替えるものであり、通常は外扉の内側に設けられたケース内に、磁石により着脱自在に取り付けられていた。
【0004】
手動スイッチは、外扉が閉じられた状態でも、外扉に開設された窓部を通じて、外部から操作できるように構成されている。手動スイッチを収納するケースは、外扉の窓部の内側に固定されており、ケース内の手動スイッチは、外扉の窓部を通じて外側に取り出すことができた。一般的な手動スイッチは、伸縮自在な螺旋状のコードを介して、操作信号を出力可能に筐体内部の制御基板と連結されている。
【0005】
また、特許文献2には、信号灯器の現示の切り替えを、手動スイッチとは別に遠隔操作で行う無線送信機も開示されている。この無線送信機は、ケース内に収納されるものではなく、持ち歩いて使用するものであった。また、無線送信機は、信号灯器の現示を切り替える本来の機能以外にも、自動/手動モードの切り替え等の他の機能も備えているが、無線通信の詳細については不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-221497号公報
【文献】特開昭59-99600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の信号制御機では、一般的な手動スイッチはコードにつながれたものであり、コードの標準的な最大引き伸ばし長さは例えば1.5m程度であった。そのため、手動スイッチの使用者(主に警察官)は、それ以上離れた場所での操作が不可能であり、使い勝手が良くないという問題があった。
【0008】
このように有線でつながれた手動スイッチにおける問題は、前述した特許文献2に記載の無線送信機によって解決し得る。しかし、無線送信機は、ケース内に収納しないため、防犯面や保管について不安があった。また、無線送信機は、本来の機能以外の他の機能も付加しており、誤操作の可能性が高まる虞があった、さらに、無線送信機は、無線が届く操作可能な範囲が不明確であり、信号を送受できない状況も判別しにくく不便であった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、遠隔操作が可能なだけでなく、防犯面や保管において優れており、誤操作の可能性を低減することもでき、操作可能な範囲も明確でいっそう使い勝手を向上させることができる信号制御機の手動スイッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
信号灯器を制御する信号制御機の筐体内側に収納され、筐体外側に取り出し可能な手動スイッチにおいて、
前記手動スイッチは、前記信号制御機が備える制御部と近距離無線通信により信号を互いに送受可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る信号制御機の手動スイッチによれば、遠隔操作が可能なだけでなく、防犯面や保管において優れており、誤操作の可能性を低減することもでき、操作可能な範囲も明確でいっそう使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る手動操作部の内側を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る手動スイッチを示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る手動スイッチを示す正面図である。
図4】本実施形態に係る手動スイッチを示す背面図である。
図5】本実施形態に係る手動スイッチを示す右側面図である。
図6】本実施形態に係る手動スイッチを示す平面図である。
図7】本実施形態に係る手動スイッチを示す底面図である。
図8】本実施形態に係る信号制御機と手動スイッチの内部構成を概略的に示すブロック図である。
図9】本実施形態に係る信号制御機を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
図1図9は、本発明の一実施形態を示している。
本実施形態に係る信号制御機10は、交差点等に設置された各信号灯器の主に点灯動作等を制御するものである。なお、信号制御機10について、既に周知な事項の詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
<信号制御機10の概要>
図9に示すように、信号制御機10は、上下方向に長い箱状に形成された筐体11を備え、筐体11の内部に、信号灯器の制御を行うための各種制御基板として、入出力基板や制御基板、それに電源ユニット等の内部機構が収納されている。筐体11は、例えば板金等の金属で形成されており、正面側が大きく開口している。
【0015】
筐体11の正面側には、開口を覆う外扉12と、その内側の内扉13とが、それぞれ開閉可能に設けられている。内扉13は、開口内枠に収まる状態で上下に2分割され、上下それぞれの一側端が筐体11の開口の一側端に蝶番を介して連結され、蝶番を回動中心として他側端を前方に向けて開くことができる。
【0016】
外扉12は、筐体11の開口外枠に重なる長方形の板状に形成され、その一側端が筐体11の開口の一側端に蝶番を介して連結され、蝶番を回動中心として他側端を前方に向けて開くことができる。外扉12には、施錠可能なロック機構14が設けられている。また、外扉12の内側には、手動操作部20が設けられている。
【0017】
手動操作部20は、信号灯器を自動制御に代わって手動で操作するためのものである。手動操作部20は、外扉12が閉じられた状態でも、外扉12に開設された窓部(図示せず)を通じて、外部から操作できるように構成されている。なお、前記窓部は、通常は施錠可能な蓋板によって外側から閉じられている。
【0018】
<手動操作部20>
図1に示すように、手動操作部20は、前記窓部を通じて外扉12の外側に取り出し可能な手動スイッチ30と、該手動スイッチ30を収納するケース21と、を備えている。手動スイッチ30は、使用者が操作するものであり、スイッチ本体31の正面側に、押下操作する円形の押ボタン32を備えている。手動スイッチ30は、押ボタン32を押すごとに、対応する信号灯器のステップ(階梯)を手動で進めて現示(現在の灯色)を切り替えるものである。
【0019】
<<手動スイッチ30>>
図2は、手動スイッチ30の斜視図であり、図3は、手動スイッチ30の正面図である。図4は、手動スイッチ30の背面図であり、図5は、手動スイッチ30の右側面図である。図6は、手動スイッチ30の平面図であり、図7は、手動スイッチ30の底面図である。図2図7に示すように、手動スイッチ30は、手の平に収まる大きさで正面視で卵形の丸みを持った外形となっている。
【0020】
手動スイッチ30の外形を成すスイッチ本体31は、その正面側と背面側が平らに形成され、上部には前後に貫通した穴33が設けられている。この穴33は指を入れて持ちやすくするものであり、センターライン上にあるから左右のどちらの手でも使いやすいデザインとなっている。押ボタン32も、正面側の下部でセンターライン上に設けられており、左右どちらの手の親指からでもアクセスしやすく配置されている。
【0021】
スイッチ本体31の正面側には、押ボタン32の他に、センターライン上に第1表示部34が設けられ、センターラインの両側には、第2表示部35と第3表示部36が左右に並んで設けられ、さらに左右一対のスピーカ通音用のスリット37も設けられている。また、スイッチ本体31の平らな背面側には、磁石が設けられている。この磁石によって、手動スイッチ30は、後述するケース21の内壁に磁力で着脱可能に取り付けることができる。各表示部34~36については後述する。
【0022】
このようなデザインの手動スイッチ30は、信号制御機10が備える制御部と近距離無線通信により信号を送受可能に構成されている。従って、手動スイッチ30は、従来一般的であったコードに接続されるものではない。信号制御機10の制御部とは、前述した内部機構に含まれる制御基板等が該当する。また、近距離無線通信とは、例えばBluetooth(登録商標)やラジオコントロール無線等、他の電子機器と比較的近い距離範囲で通信可能な無線通信規格であるが、本実施形態ではBluetoothを採用した例を説明する。なお、Bluetooth自体については、周知の技術であり詳細な説明は省略する。
【0023】
図8(b)に示すように、スイッチ本体31の内部には、前記手動スイッチ30のスイッチング素子32a、無線モジュール41、電池42、ワイヤレス充電コイル43、USBポート38、スピーカ46、前記各表示部34~36を構成するLED47等と、これらの構成部品を制御する制御基板45等が収納されている。また、図8(a)に示すように、信号制御機10の内部(制御部等)には、無線モジュール15、ワイヤレス充電コイル16等が収納されている。
【0024】
手動スイッチ30において、スイッチング素子32aは、押ボタン32が押下される度にONとなり、信号灯器の現示(現在の灯色)の切り替えを指示する操作信号を出力するものである。無線モジュール41は、前記操作信号を含む無線信号を出力したり、信号制御機10からの無線信号を入力するための近距離無線規格としてBluetoothに対応したモジュールである。ここでBluetoothには、電波強度の違う3つのClass(クラス)があるが、最も一般的なClass2の通信距離は10m前後となる。
【0025】
手動スイッチ30の無線モジュール41は、信号制御機10にもある無線モジュール15と同じプロファイルに対応したものである。信号制御機10の無線モジュール15は、手動スイッチ30からの操作信号をBluetoothにより受信して、この操作信号に応じた信号灯器の切替信号を生成して出力するものである。ここでの切替信号は、対応する信号灯器に出力されて現示(現在の灯色)を切り替える他、手動スイッチ30にも無線送信されるようにプログラムされている。無線モジュール15と無線モジュール41は、互いに認識するように予めペアリングされている。
【0026】
電池42は、無線モジュール41、ワイヤレス充電コイル43、制御基板45、スピーカ46、それにLED47に必要な電力を供給するものである。ここでスピーカ46とLED47は、制御基板45を介して電力が供給されると共に、制御基板45によって駆動が制御されるようにプログラムされている。また、電池42には、USBポート38も接続されている。
【0027】
ワイヤレス充電コイル43は、手動スイッチ30を外扉12の内側にあるケース21に収納したときに、無線給電により充電するためのものである。ここで無線給電のためのいわゆるワイヤレス電力伝送するための規格は、様々なものが知られているが、例えば本実施形態では電磁誘導方式を採用している。
【0028】
電磁誘導方式は、電磁誘導の原理を用いて無線給電を行うものであり、手動スイッチ30のワイヤレス充電コイル43は、受信用コイルとして構成されている。一方、信号制御機10に備わるワイヤレス充電コイル16は、送信用コイルとして構成されている。ワイヤレス充電コイル16は、例えばパット状にしてケース21の裏側に設ければ良く、ワイヤレス充電コイル16にワイヤレス充電コイル43が近接すると、誘導電流が発生して電池42が充電されるように構成されている。
【0029】
USBポート38は、他の機器に接続するUSBケーブルの先のUSB端子を差し込む接続口であり、図7に示すように、スイッチ本体31の底面側に開口している。ここでUSBは、複数種類の形状が規格化されており、代表的なものとしてType-A等が知られているが、USBポート38は、特定の種類に限定されるものではなく、最適なタイプを適宜定めれば良い。
【0030】
USBポート38は、スイッチ本体31の内部で電池42と接続されており、USBポート38に対して、他の機器(例えばパソコン等)やモバイルバッテリー等をUSBケーブルを介して接続することにより、前記無線給電とはまた別に、電池42の充電を行うことができる。また、USBポート38に接続した他の機器との間でデータを送受するように使用しても良い。
【0031】
制御基板45は、手動スイッチ30の各構成部品の動作を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成されたマイクロコンピュータからなる。CPUは、各種演算および制御を行うものである。
【0032】
また、ROMには、各種演算および制御の処理に関するプログラムやデータ等が記憶されている。また、RAMは、出力データ等の記憶領域を含むCPUの作業領域を備えている。制御基板45には、前述した無線モジュール41、電池42、ワイヤレス充電コイル43、スピーカ46、LED47等が接続されている。本実施形態の制御基板45は、本発明における「制御部」の一例に相当する。
【0033】
スピーカ46は、手動スイッチ30が信号制御機10に対して例えば10m以上離れる等、近距離無線通信が可能な範囲を越えた場合、要はペアリングが切れた状態になると、アラート音を出力するものである。かかるスピーカ46は、一般的な小型のものを用いれば良い。
【0034】
スピーカ46は、その前面側のコーン紙がスイッチ本体31の正面内側に沿うように配置され、当該箇所に、前述した通音用のスリット37が開設されている。スピーカ46によるアラート音の出力は、制御基板45によって制御される。本実施形態のスピーカ46は、本発明における「報知部」の一例に相当する。
【0035】
LED47は、前述した各表示部34~36を構成するものである。個々のLED47の発光色や、LED47ごとに前方に配置されたレンズないしカバー様の透光部品の形状や色は、適宜定め得る設計事項である。第1表示部34は、1個のLED47から構成されており、円形の透光部品で覆われている。かかる表示部34は、手動スイッチ30が信号制御機10とのペアリングが切れた状態になると、制御基板45によって点灯または点滅するように制御される。本実施形態の第1表示部34も、本発明における「報知部」の一例に相当する。
【0036】
第2表示部35は、3個のLED47から構成されており、各LED47は円形の透光部品で覆われて、横一列に配置されている。かかる第2表示部35は、信号灯器を模したものであり、左のLED47は青色、中のLED47は黄色、右のLED47は赤色に発光する。ここで3つのLED47を囲む縁取り(枠線)は、例えば実際ある信号機のデザインを模すように形成すると良い。
【0037】
このような第2表示部35は、信号制御機10からBluetoothにより受信した切替信号に応じて、実際の信号灯器の現示(現在の灯色)と同様に点灯または点滅ないし消灯するように制御される。すなわち、第2表示部35は、手動スイッチ30の操作結果を信号制御機10から受信した切替信号に基づき表示可能に構成されている。本実施形態の第2表示部35は、本発明における「表示部」の一例に相当する。
【0038】
第3表示部36も、3個のLED47から構成されており、各LED47は正方形の透光部品で覆われて、横一列に配置されている。かかる第3表示部36は、電池42の充電残量を表示するものであり、充電残量を3段階に表示できるように構成されている。すなわち、充電残量が未だ十分あるときは、3個のLED47の全てが点灯し、充電残量が減るにしたがって右側のLED47が順に消灯するように制御される。
【0039】
また、第3表示部36では、充電残量が残り少なくなって左側のLED47のみが点灯する状態になったとき、このLED47を点滅させたり、前述したスピーカ46からアラート音を合わせて出力するように制御しても良い。なお、第3表示部36における各LED47の発光色は、特に限定されるものではない。
【0040】
<<ケース21>>
図1に示すように、ケース21は、その正面側が開口した底浅な箱状に形成されている。ケース21は、外扉12の内側において、正面開口が前記窓部に合致するように固定されている。よって、前記窓部の蓋板を開ければ、外扉12の外側からケース21の内部を覗くことができる。このケース21の内壁のうち、正面開口と対向して基準面をなす背面部22に、前記手動スイッチ30は着脱可能に取り付けられており、前記窓部を通じて外部に取り出して操作することができる。
【0041】
詳しく言えばケース21は、主たる内壁をなす背面部22の四辺より、それぞれ所定高さで立ち上がる周壁をなす各面部として上面部23、下面部24、および両側面部25,26を備えている。上面部23と下面部24には、それぞれ端縁に外扉12の内側に固定するためのフランジ28a,28bが略直角に延設されている。
【0042】
また、一側面部25側には、手動スイッチ30とは別の各種スイッチ51,52等を収納するために、正面側が開口して区画された小空間をなす収納部27が一体に設けられている。収納部27の内側には、動作切替スイッチ51、現示切替スイッチ52等が収納されている。なお、手動スイッチ30は無線通信を行うので、有線通信用のコードを接続するレセプタクルは省いても良い。このようなケース21は、収納部27も含めて全て樹脂により一体成形されている。
【0043】
ケース21を樹脂で成形したことにより、そのままでは背面部22に手動スイッチ30の磁石を付けることはできない。よって、図1に示すように、背面部22の内壁に沿って、磁石を付けるための取付板40が設けられている。ここで取付板40は、本実施形態では、手動スイッチ30や各種スイッチ51,52の操作説明を文字やピクトグラム等で記した「表示銘板」を兼ねている。
【0044】
取付板40は、矩形の平板状の薄いプレートからなり、その材質は磁石が付く磁性材料である鉄等の板金である。取付板40の大きさは、手動スイッチ30を取り付ける箇所の周囲に、表示銘板としての文字等を記せるスペースを確保できる程度に設定されている。また、ケース21の背面部22に対する取付板40の取り付けは、例えばネジ等を用いることなく、両面テープや接着剤等により簡単に固定することができる。
【0045】
取付板40の表面上には、図示省略したが例えば、手動スイッチ30を取り付ける箇所で、その形状の縁取りの内側に「手動押ボタン取付位置」等と記すと良い。取付板40は、ケース21内側で収納部27に隣接するように配置され、取付板40の表面には、前記「手動押ボタン取付位置」の正面視右側に、その側方で上下に並ぶ各種スイッチ51,52の動作説明も併せて記すと良い。なお、取付板40に対する文字等の表記は、直接印刷しても良く、あるいは別途印刷したラベルを貼り付けても良い。
【0046】
ちなみに、取付板40の表面上で、動作切替スイッチ51のトグル式可動子51aが重なる位置には、このスイッチ51による動作切り替えとして、可動子51aが下向きであれば、通常の自動モードであり、可動子51aを上向きとすれば、手動スイッチ30の操作が可能な手動モードに切り替わる説明等を記すと良い。
【0047】
また、取付板40の表面上で、現示切替スイッチ52のトグル式可動子52aが重なる位置には、このスイッチ52による現示(現在の灯色)の切り替えとして、可動子52aが下向きであれば、通常の標準モードであり、可動子52aを上向きとすれば、いわゆる特Iモードに切り替わる説明等を記すと良い。なお、「手動押ボタン取付位置」の正面視左側には、手動スイッチ30による手動操作が終了した後は、動作切替スイッチ51を元の自動モードに戻す旨の注意書き等も記すと良い。
【0048】
<信号制御機10の手動スイッチ30の作用について>
以下、本実施形態に係る信号制御機10における手動スイッチ30の作用を説明する。
先ず、手動スイッチ30の外形に関しては、従来一般のグリップ状のものからデザインを大幅に変更している。すなわち、図2図7に示すように、スイッチ本体31は、手の平に収まる大きさであり正面視で卵形の丸みを持った外形となっている。また、スイッチ本体31は、その正面側と背面側が平らに形成され、上部には前後に貫通した大きな穴33がある。
【0049】
このような手動スイッチ30によれば、手の平で包むようにして穴33に人差し指を入れて持ちやすく、押ボタン32も正面側の下部でセンターライン上にあるため、左右どちらの手の親指からでもアクセスしやすい。これにより手動スイッチ30は、操作性が向上して使い勝手が良くなるだけでなく、デザイン的にも新たな斬新な美観を醸し出すことができる。一方、従来の特許文献2に記載された無線送信機は、そもそも操作性や美観を意識したデザインではなかった。
【0050】
また、手動スイッチ30は、樹脂の成形部品を組み合わせて構成すると良い。スイッチ本体31は、基本的には正面側と背面側の2部品だけから構成することが可能である。ここで2部品の互いの固定については、ネジ等を用いることなくスナップフィットで行うように構成すれば、部品点数や組立工数を削減することが可能となる。
【0051】
手動スイッチ30は、通常は信号制御機10の外扉12の内側にあるケース21の内部に収納される。手動スイッチ30は、外扉12が閉じられた状態でも、外扉12に開設された窓部(図示せず)を通じて、筐体11の外部に取り出すことができる。窓部は、通常は施錠可能な蓋板によって外側から閉じられている。このように手動スイッチ30は、勝手に持ち出される虞はなく防犯面で安心でき、保管の心配もいらない。一方、従来の特許文献2に記載された無線送信機は、警察官が携帯して使用するものであり、紛失による悪用や保管に関する心配があった。
【0052】
ところで、ケース21は、樹脂で成形することにより、従来の板金製に比べて重量を低減することができるだけでなく、量産も容易となりコスト低減も可能となる。ただし、ケース21が樹脂製になると、手動スイッチ30を磁石で付けることができなくなるので、ケース21の背面部22に磁石が付く取付板40を設けている。よって、手動スイッチ30を、磁力でケース21の内部に容易に着脱可能に取り付けることができる。手動スイッチ30にある穴33は、取付板40上の所定位置に取り付けるときの位置決めとなる。
【0053】
また、手動スイッチ30の操作に関しては、例えばBluetoothを用い無線化している。すなわち、手動スイッチ30は、信号制御機10の内部機構である制御基板と近距離無線通信により、互いに信号を送受可能である。これにより、手動スイッチ30を扱う警察官は、信号制御機10から少し離れた安全な場所でも、実際に現示の切り替え対象である信号灯器の灯色を見ながら操作することが可能となる。また、手動スイッチ30がコードレスとなることで、ケース21の内部に出し入れするときに、コードが引っ掛かることもなく容易となる。
【0054】
特に、手動スイッチ30の無線化には、近距離無線通信を用いたことにより、無線通信が可能な範囲は近距離に限定されて明確となり、例えばBluetoothの場合、規格上の通信距離は一般に10m前後と予め明確に認識でき、誤って通信不能な距離まで離れて操作する虞もない。一方、従来の特許文献2に記載された無線送信機では、無線が届く操作可能な範囲が不明確であり、信号を送受できない状況も判別しにくく、実際には操作できなかった可能性もあって不便であった。
【0055】
近距離無線通信にBluetoothを用いた場合、手動スイッチ30(の無線モジュール41)と、信号制御機10(の無線モジュール15)とをペアリングさせるが、Bluetoothの標準的な機能として、1台の信号制御機10について1つの手動スイッチ30のみが対応することになる。これにより、意図しない他の信号制御機まで動かしてしまうような誤作動の発生を未然に防ぐことができる。なお、正常なペアリングであるか否かは、第1表示部34によって容易に確認することができる。
【0056】
本実施形態の手動スイッチ30による操作は、信号制御機10を介して信号灯器のステップ(階梯)を手動で進めて現示(現在の灯色)を切り替えることに限定されている。すなわち、手動スイッチ30の押ボタン32を押下すると、図8に示すスイッチング素子32aがONとなり、信号灯器の現示(現在の灯色)の切り替えを指示する操作信号が出力される。信号制御機10は、この操作信号に基づいて信号灯器の現示を切り替える。
【0057】
このように、手動スイッチ30によれば、出力するのは信号灯器の現示の切り替えを指示する本来の信号だけであり、例えば自動/手動モードの切り替えは、従来同様に動作切替スイッチ51によって行う。このように手動スイッチ30では、その機能が限定されるため、誤操作の可能性を低減することができる。一方、従来の特許文献2に記載された無線送信機は、自動/手動の切り替え等の他の機能も付加しており、他の機能を付加した分だけ誤操作の可能性も高くなってしまう。
【0058】
また、手動スイッチ30が信号制御機10から離れすぎて、ペアリングが切れた状態になると、第1表示部34による表示や、スピーカ46からのアラート音によって報知される。ペアリングが切れる直前に報知するようにしても良い。このような報知によって、使用者は近距離無線通信が無効となった状態であることを明確に認識することができ、対処を促すことが可能となる。また、手動スイッチ30の紛失防止にもなる。一方、従来の特許文献2に記載された無線送信機には、このような報知を行う機能はなく、不具合があっても気づくことが遅れる可能性が大きく不便であった。
【0059】
さらに、手動スイッチ30は、信号制御機10へ信号を出力するだけでなく、信号制御機10からの信号を受信することもできる。従って、手動スイッチ30では、信号制御機10からの信号に基づき、例えば第2表示部35により信号灯器の現示を模した表示を行う等と様々な制御が可能となる。かかる第2表示部35の表示によれば、信号灯器から離れていても実際の階梯状態を手元の手動スイッチ30で容易に確認することができる。一方、従来の特許文献2に記載された無線送信機は、そもそも信号制御機10からの信号を受信する機能は備えていない。
【0060】
図1に示すように、手動スイッチ30を操作後にケース21の内部に収納すると、手動スイッチ30の電池42は無線給電によって自動で充電される。すなわち、手動スイッチ30にあるワイヤレス充電コイル43が、信号制御機10に備わるワイヤレス充電コイル16に近接するため、誘導電流が発生して電池42が充電される。従って、電池切れによる無線通信の不具合(Bluetoothは電力が必要)の発生を極力防止することができる。一方、従来の特許文献2に記載された無線送信機では、電源に関しては不明確であり、実際の使用時に電池が切れていて使えないような虞があった。
【0061】
また、電池42の充電残量は、手動スイッチ30にある第3表示部36により、例えば3段階に表示されるため、一目で容易に確認することができる。ここで例えば、充電残量が残りわずかとなったときに、第3表示部36のLED47を点滅させたり、スピーカ46からアラート音を鳴らして、充電の必要があることを報知するようにしても良い。また、手動スイッチ30の操作中に充電が切れそうになったら、USBポート38にモバイルバッテリー等のUSBケーブルを接続して、電池42の充電を行うこともできる。
【0062】
ところで、手動スイッチ30の代わりに、他の電子機器を介して手動スイッチ30の操作を代替することも考えられる。これにより、手動スイッチ30は収納したままの状態で、使用者は個人的に使いやすい電子機器を用いて、手動スイッチ30と同じ操作を行うことが可能となる。また、使用者は容易に手を空けることもできる。一方、従来の特許文献2に記載された無線送信機は、これ自体が専用品であることが前提であり、他の電子機器により代替するものではない。
【0063】
他の電子機器とは、例えばスマートフォン、スマートウォッチ、携帯電話機、タブレット端末等であり、最近Bluetoothは標準装備されつつある。よって、他の電子機器に、手動スイッチ30と同等の操作を可能とする専用のアプリケーションソフトウェアをダウンロードすることにより、他の電子機器により、信号制御機10へ操作信号を出力することもできる。
【0064】
このような場合には、手動スイッチ30の代わりに電子機器と信号制御機10とを予めペアリングすることになる。なお、電子機器には、Bluetooth機能のほか、使用者が操作可能な例えばタッチパネル式の表示画面やスイッチ類、インターネット等の通信回線と接続する機能、それに各種制御の中枢的機能を果たすCPU等が備わっていることが前提となる。なお、手動スイッチ30と他の電子機器を併用して利用できるように構成することも可能である。
【0065】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0066】
[1]先ず、本発明は、
信号灯器を制御する信号制御機10の筐体11内側に収納され、筐体11外側に取り出し可能な手動スイッチ30において、
前記手動スイッチ30は、前記信号制御機10が備える制御部と近距離無線通信により信号を互いに送受可能であることを特徴とする。
【0067】
このように手動スイッチ30は、信号制御機10と無関係な場所に保管されるものではなく、定位置として筐体11内側に収納され、操作するときだけ筐体11外側に取り出す。よって、手動スイッチ30の防犯面で安心でき、保管の心配もいらない。
【0068】
また、手動スイッチ30は、信号制御機10と無線通信により信号を送受可能であるため、従来のコードが伸びる範囲から離れた場所でも操作することができる。ここで無線通信が可能な範囲は近距離に限定されて明確であり、誤って通信不能な距離まで離れて操作する虞もない。さらに、手動スイッチ30は、信号制御機10からの信号を受信することもできるので、この受信した信号に基づき、スイッチ自体でも様々な制御が可能となる。
【0069】
[2]また、本発明では、
前記手動スイッチ30は、前記信号灯器の現示の切り替えを指示する信号のみ出力可能である。
【0070】
このような手動スイッチ30によれば、出力するのは信号灯器の現示の切り替えを指示する本来の信号だけであり、その他の信号を出力する機能はない。よって、手動スイッチ30では、その機能が限定されるため、誤操作の可能性を低減することができる。
【0071】
[3]また、本発明では、
手動スイッチ30は、前記近距離無線通信が無効となった状態を報知可能な報知部34,46を備える。ここで無効となった状態とは、手動スイッチ30と信号制御機10との距離が、無線通信が可能な範囲を超えただけでなく、他に例えばBluetoothの場合のペアリングの不具合等も含めた何らかの故障も該当する。
【0072】
かかる不具合をいずれにせよ報知するため、使用者は近距離無線通信が無効となった状態であることを明確に認識することができ、対処を促すことが可能となる。なお、具体的に報知としては、LED47の点灯等の視覚的な表示だけでなく、スピーカ46からのアラート音等の出力も考えられる。
【0073】
[4]また、本発明では、
前記手動スイッチ30は、前記筐体11内側に設けられたケース21に収納された状態で無線給電により充電可能であることを特徴とする。
【0074】
このような手動スイッチ30によれば、本来の保管場所である筐体11内側のケース21に収納しただけで、自動的に充電することが可能となる。よって、電池切れによる無線通信の不具合等の発生を極力防止することができる。
【0075】
[5]また、本発明では、
前記手動スイッチ30は、その操作結果を前記信号制御機10の制御部から受信した信号に基づき表示可能な表示部35を備えることを特徴とする。
【0076】
このような手動スイッチ30によれば、その操作結果である信号灯器の階梯状態等を、信号灯器から離れていても手元の表示部35によって容易に確認することもできる。また、表示部36には、前述した不具合の報知を表示したり、他に例えば電池の充電残量等を表示することもできる。
【0077】
[6]また、本発明では、
前記手動スイッチ30の操作は、他の電子機器を介して代替可能であることを特徴とする。
これにより、手動スイッチ30は収納したままの状態で、使用者は個人的に使いやすい電子機器を用いて、手動スイッチ30と同じ操作を行うことが可能となる。
【0078】
[7]さらに、本発明では、
前記手動スイッチ30は、手の平で握った際に指を入れる穴33を備えることを特徴とする。
このような手動スイッチ30によれば、穴33に指を入れて持ちやすくなり使い勝手が良くなるだけでなく、デザイン的にも新たな美観を醸し出すことが可能となる。
【0079】
以上、実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、信号制御機10の筐体11ほか、ケース21、手動スイッチ30等の具体的な形状は図示したものに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、信号灯器を制御するための信号制御機に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
10…信号制御機
11…筐体
12…外扉
13…内扉
20…手動操作部
21…ケース
30…手動スイッチ
31…スイッチ本体
32…押ボタン
33…穴
34…第1表示部
35…第2表示部
36…第3表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9