(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】測量支援プログラム、測量支援装置、測量支援方法、および測量支援システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
G01C15/00 105Z
(21)【出願番号】P 2020131153
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】一里山 海洋
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 基広
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮介
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-097297(JP,A)
【文献】特開2002-098527(JP,A)
【文献】特開2017-020834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
路線の中心点データ、構成点データを含み、中心点を含み前記路線に直交する横断面が設定された設計情報を読み込ませ、
被測量装置の現在位置を示す位置情報を所定の周期で取得させ、
前記設計情報から前記路線の平面図および横断面図を生成させ、前記コンピュータの画面部に前記平面図および前記横断面図を表示させ、
取得した前記位置情報および前記位置情報から算出される測量情報を、前記横断面における観測点データとして前記コンピュータの記憶部に記録させ、
前記観測点データを順序付きデータとして配置した観測点データリストと、観測点の前記横断面図上の位置を表示する観測横断図を前記コンピュータの前記画面部に表示させ、
前記コンピュータの操作部からの指示に従って、前記観測点データリストの前記観測点データ
の表示順序を
変更可能とさせ、
前記観測横断図上で前記観測点を前記表示順序に従って繋ぐ接続線を表示させることを特徴とする測量支援プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータの前記画面部および前記操作部が、タッチパネルディスプレイとして構成されており、
前記コンピュータに、
前記観測点データの前記表示順序は、作業者が、表示されている前記観測点データを
前記画面
部に触れて移動させることにより
変更可能とさせ、
前記表示順序を入れ替えるのに連動して、前記観測横断
図上で、前記観測点を
変更された表示順に繋ぐように前記接続線の表示を更新させることを特徴とする請求項1に記載の測量支援プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータに
前記観測点データが、
前記表示順序の
変更のために選択された時に、前記観測横断
図における選択された前記観測点データに対応する前記観測点が、識別可能となるように表示させることを特徴とする請求項1または2に記載の測量支援プログラム。
【請求項4】
端末画面部:
端末操作部:
端末制御部:および
端末記憶部:を備え、
前記端末制御部は、
路線の中心点データ、構成点データを含み、中心点を含み前記路線に直交する横断面が設定された設計情報を読み込む設計情報読込部と、
被測量装置の現在位置を示す位置情報を所定の周期で取得する位置情報取得部と、
前記設計情報から平面図および横断面図を生成して、前記端末画面部に前記平面図および前記横断面図を表示するビュー表示部と、
取得した前記位置情報および
前記位置情報から算出される測量情報を、前記横断面における観測点データとして前記端末記憶部に記録する記録実行部と、
前記観測点データを順序付きデータとして配置した観測点データリストと、観測点の前記横断面図上の位置を表示する観測横断
図を前記端末画面部に表示する横断結果表示部と、
前記端末操作部からの指示に従って、前記観測点データリストの前記観測点データの表示順序を変更可能とする表示順序変更部と、
前記表示順序に従って、前記観測横断図上での前記観測点を線で繋くように表示する
接続線表示部と、
を備えることを特徴とする測量支援装置。
【請求項5】
被測量装置の前記現在位置を取得する位置取得装置と、
請求項4に記載の測量支援装置と、を備え、
前記測量支援装置は前記位置取得装置と通信可能に構成されて、前記被測量装置の前記位置情報を取得することを特徴とする測量支援システム。
【請求項6】
コンピュータが、
路線の中心点データ、構成点データを含み、中心点を含み前記路線に直交する横断面が設定された設計情報を読み込み、
被測量装置の現在位置を示す位置情報を所定の周期で取得し、
前記設計情報から前記路線の平面図および横断面図を生成して、前記コンピュータの画面部に前記平面図および前記横断面図を表示し、
取得した前記位置情報および前記位置情報から算出される測量情報を、前記横断面における観測点データとして前記コンピュータの記憶部に記録し、
前記観測点データを順序付きデータとして配置した観測点データリストと、観測点の前記横断面図上の位置を表示する観測横断
図を前記コンピュータの前記画面部に表示し、
前記コンピュータの操作部からの指示に従って、前記観測点データリストの前記観測点データの表示順序を
変更可能とし、
前記観測横断図上で前記観測点を前記表示順序に従って繋ぐ接続線を表示することを特徴とする測量支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量支援プログラム、測量支援装置、測量支援方法、および測量支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
路線等線状構造物の建設においては、施工計画図が作成され,切土、盛土の土量を考慮しつつ施工計画が立てられる。路線測量は、線状構造物建設のための調査、計画、実施設計等に用いられる測量を言う。路線測量には、路線に直交する横断面上の構成点と該横断面上の中心点からの高低差(鉛直距離)および中心点離れ(水平距離)を測量して、横断面の形状を観測する横断観測が含まれる。横断観測では、成果物として、観測点を左から右へと断面の連続方向に一筆書きで繋いだ横断面図を作成する。
【0003】
路線測量においては、近年、トータルステーション等の光波装置やGNSS測量装置を用い、それぞれターゲットやGNSS受信機を被測量装置として、作業者が、被測量装置を持って、観測点を移動して、必要な観測点のデータを取得する方法が用いられている。
【0004】
また、上記方法において、構成点データを含む設計情報を、携帯情報処理装置に読み込ませ、平面図、横断面図や数値情報を表示部に表示して、測量支援システムが提案されている。(例えば、特許文献1、非特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】株式会社トプコン データコレクターFC-500 監督さん.V取扱い説明書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載された測量支援システムにおいては、横断面図は、観測点のデータを、観測した順につなぐ直線を描画することにより生成されていた。
【0008】
このため、作業者は、想定される横断面図が生成するように、左から順番に観測する必要があった。しかしながら、現実には必ず左から順番に観測できるとは限らない。例えば、
図1(A)に示すような断面での観測の場合、点P
2とP
3との間に、抉れた崖や障害物があるなどして、点P2の次に点P3の観測を行うことが困難な場合、
図1(B)のように、測定順序がP
1→P
5→P
4→P
3→P
2のようになってしまうことがある。あるいは、左から右へと順に測定することが著しく非効率である場合もある。
【0009】
このような場合、従来の測量支援システムでは、
図1(C)に示すような横断面図が生成されてしまう。そして、1度の観測で、想定される横断面図を得られない場合は、再度左から右へと測定できるよう改めて観測作業をやり直したり(手戻り)、測量支援装置上で非常に煩雑な処理を行って横断面図を再作成したりしなければならなかった。
【0010】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、横断観測において、作業者の想定する横断面図を容易に作成することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様にかかる測量支援プログラムは、コンピュータに、路線の中心点データ、構成点データを含み、中心点を含み前記路線に直交する横断面が設定された設計情報を読み込ませ、被測量装置の現在位置を示す位置情報を所定の周期で取得させ、前記設計情報から前記路線の平面図および横断面図を生成させ、前記コンピュータの画面部に前記平面図および前記横断面図を表示させ、取得した前記位置情報および前記位置情報から算出される測量情報を、前記横断面における観測点データとして前記コンピュータの記憶部に記録させ、前記観測点データを順序付きデータとして配置した観測点データリストと、観測点の前記横断面図上の位置を表示する観測横断図を前記コンピュータの前記画面部に表示させ、前記コンピュータの操作部からの指示に従って、前記観測点データリストの前記観測点データの表示順序を変更可能とさせ、前記観測横断図上で前記観測点を前記表示順序に従って繋ぐ接続線を表示させる。
【0012】
また、上記態様において、前記コンピュータの前記画面部および前記操作部が、タッチパネルディスプレイとして構成されており、前記コンピュータに、前記観測点データの前記表示順序は、作業者が、表示されている前記観測点データを前記画面部に触れて移動させることにより変更可能とさせ、前記表示順序を入れ替えるのに連動して、前記観測横断図上で、前記観測点を変更された表示順に繋ぐように前記接続線の表示を更新させることも好ましい。
【0013】
また、上記態様において、前記コンピュータに、前記観測点データが、前記表示順序の変更のために選択された時に、前記観測横断図における選択された前記観測点データに対応する前記観測点が、識別可能となるように表示させることも好ましい。
【0014】
また、本発明の別の態様に係る測量支援装置は、端末画面部:端末操作部:端末制御部:および端末記憶部:を備え、前記端末制御部は、路線の中心点データ、構成点データを含み、中心点を含み前記路線に直交する横断面が設定された設計情報を読み込む設計情報読込部と、被測量装置の現在位置を示す位置情報を所定の周期で取得する位置情報取得部と、前記設計情報から平面図および横断面図を生成して、前記端末画面部に前記平面図および前記横断面図を表示するビュー表示部と、取得した前記位置情報および前記位置情報から算出される測量情報を、前記横断面における観測点データとして前記端末記憶部に記録する記録実行部と、前記観測点データを順序付きデータとして配置した観測点データリストと、観測点の前記横断面図上の位置を表示する観測横断図を前記端末画面部に表示する横断結果表示部と、前記端末操作部からの指示に従って、前記観測点データリストの前記観測点データの表示順序を変更可能とする表示順序変更部と、前記表示順序に従って、前記観測横断図上での前記観測点を線で繋くように表示する接続線表示部と、を備える。
【0015】
また、本発明のさらに別の態様に係る測量支援システムは、被測量装置の前記現在位置を取得する位置取得装置と、上記態様に係る測量支援装置と、を備え、前記測量支援装置は前記位置取得装置と通信可能に構成されて、前記被測量装置の前記位置情報を取得する。
【0016】
また、本発明のさらに別の態様に係る測量支援方法は、コンピュータが、路線の中心点データ、構成点データを含み、中心点を含み前記路線に直交する横断面が設定された設計情報を読み込み、被測量装置の現在位置を示す位置情報を所定の周期で取得し、前記設計情報から前記路線の平面図および横断面図を生成して、前記コンピュータの画面部に前記平面図および前記横断面図を表示し、取得した前記位置情報および前記位置情報から算出される測量情報を、前記横断面における観測点データとして前記コンピュータの記憶部に記録し、前記観測点データを順序付きデータとして配置した観測点データリストと、観測点の前記横断面図上の位置を表示する観測横断図を前記コンピュータの前記画面部に表示し、前記コンピュータの操作部からの指示に従って、前記観測点データリストの前記観測点データの表示順序を変更可能とし、前記観測横断図上で前記観測点を前記表示順序に従って繋ぐ接続線を表示する。
【発明の効果】
【0017】
上記態様に係る、測量支援プログラム、測量支援装置、測量支援方法、および測量支援システムによれば、作業者の想定する横断面図を容易に作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の測量支援システムにおいて生成される横断面図の問題を説明する図である。
【
図2】実施の形態に係る測量支援システムに用いられる設計情報を説明する図である。
【
図4】同測量支援システムの構成ブロック図である。
【
図5】同形態の測量支援装置の
端末画面部に表示される観測画面および横断結果画面の1例を示す図である。
【
図6】同測量支援システムを用いた測量支援方法の1例を示すフローチャートである。
【
図7】同測量支援方法における横断結果表示の処理の1例を示すフローチャートである。
【
図8】同形態の測量支援システムにおける、観測点データの並べ替え方法の1例を占めす図である。
【
図9】同形態の測量支援装置の
端末画面部に表示される横断結果表示の1例を示す図である。
【
図10】同形態の測量支援システムを好適に適用しうる測量現場の横断面の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態において、同一の機能および構成を有する部材には同一の符号を付し重複する説明は適宜省略する。
【0020】
(実施の形態)
(設計情報)
本発明の実施の形態に係る測量支援システム(以下、単に「システム」という。)100の構成の説明に先立ち、本システムで用いられる設計情報について
図2を参照して説明する。なお、
図2の例は、説明の便宜のための図であり、特定の形状に限定されない。
【0021】
設計情報は、例えば、絶対座標系で作成された、路線等の工事において必要な路線の設計図を含む情報である。設計情報には、路線の中心線CLを示す中心線データが含まれる。また、中心線CL上に所定の間隔(例えば20m間隔)で設定される中心点CP0,CP1、CP2、・・・を示す中心点データが含まれる。中心点は現場において中心杭を設置する点である。
【0022】
設計情報には、各中心点CP0,CP1,CP2・・・を含み、中心線に直交するそれぞれの横断面(以下、単に「断面」ともいう。)No.0,No.1,No.2・・・が設定されている。断面上には、例えば断面No.0上に、構成点P01~P04というように、構成点が設定されている。構成点は、例えば、道路の幅を規定する点のように現場で目印となる杭を設置する点である。路線方向に沿って、各断面における中心点からの距離が等しくなる位置に、たとえばP01,P11,P21・・・のように設定される。
【0023】
(システムの全体構成)
図3および
図4に示す通り、システム100は、位置取得装置30と、測量支援装置50とを備える。
【0024】
(位置取得装置30の構成)
位置取得装置30は、測量装置10と被測量装置40とを備える。測量装置10は、1つの実施例として、トータルステーション(電子式測距測角儀)である。測量装置10は、三脚2を介して、既知点に設置される。あるいは、測量装置10を設置した後、例えば後方交会法等により座標既知としてもよい。既知とされた測量装置10の座標データは、予め測量支援装置50に入力され、端末記憶部53に格納される。
【0025】
測量装置10は、外観上、整準部3の上に設けられた基盤部5と、基盤部5の上で軸H-H周りに水平回転する托架部7と、托架部7に軸V-V周りに鉛直回転する望遠鏡9と、を有する。托架部7には、後述する制御演算部23が収容されている。
【0026】
測量装置10は、自動視準機能および自動追尾機能を備え、望遠鏡9に、図示しない測距光学系および追尾光学系が収容されている。測距光学系および追尾光学系の構成は、従来公知である。測量装置10では、托架部7の水平回転と、望遠鏡9の鉛直回転の協働により測距光および追尾光が全周にわたって照射される。
【0027】
図4に示すように、測量装置10は、測距部11、追尾部12、水平回転駆動部13、鉛直回転駆動部14、水平角検出器15、鉛直角検出器16、通信部17、チルトセンサ18、記憶部19、操作部21、表示部22、および制御演算部23を備える。
【0028】
測距部11は、上記測距光学系を用いて測距光を出射し、被測量装置40が備えるターゲット41からの反射光を受光して、自動視準およびターゲット41を測距する。
【0029】
追尾部12は、上記追尾光学系を用いて追尾光を出射し、ターゲット41からの反射光からターゲット41の位置を捕捉して、ターゲット41が移動した場合にターゲット41を自動追尾する。
【0030】
水平回転駆動部13は、基盤部5に設けられたモータである。水平回転駆動部13は、基盤部5に対して托架部7を軸H-H周りに回転する。鉛直回転駆動部14は、托架部7に設けられたモータである、鉛直回転駆動部14は、望遠鏡9を軸V-V周りに回転する。
【0031】
水平角検出器15、鉛直角検出器16は、ロータリエンコーダである。水平角検出器15は、托架部7の軸H-H周りの角度を検出し、鉛直角検出器16は、望遠鏡9の軸V-V周りの角度を検出する。この結果、水平角検出器15と鉛直角検出器16が、ターゲット41を測角する測角部を構成する。
【0032】
通信部17は、測量装置10と測量支援装置50とを有線または無線で接続する通信制御装置である。通信部17を実現する通信規格として、無線LAN規格の一つであるWi-Fi(登録商標)や4G(第4世代移動通信システム)を採用してもよい。あるいはBluetooth(登録商標)、赤外線通信等の近距離無線通信規格を採用してもよい。
【0033】
チルトセンサ18は、気泡管式、静電容量式等の傾斜センサであり、基盤部5の回転軸(図示せず)の上面に固定されている。水平回転駆動部13の回転軸が1回ずつ正反回転したときのチルトセンサ18の値が読み取られ、正反回転でのずれ量に基づき、整準部3の水平が調整される。
【0034】
記憶部19は、情報を制御演算部23が処理可能な形式で記憶、保存及び伝達する記憶媒体であり、例えば、HDD(Hard・Disc・Drive)、フラッシュメモリ等が採用される。記憶部19には、測定した測量データと、制御演算部での各種処理のためのプログラムが格納される。
【0035】
操作部21は、托架部7の外面に設けられた複数のボタンである。操作部21を介して、測量装置10の動作に関する各種情報が入力可能である。
【0036】
表示部22は、托架部7の外面に設けられた液晶ディスプレイであり、測量に関する各種情報を表示する。
【0037】
制御演算部23は、CPU(Central・Processing・Unit)、ROM(Read・Only・Memory),RAM(Randam・Access・Memory)等を集積回路に実装したマイクロコンピュータである。制御演算部23は、測量装置10の各部と接続されている。
【0038】
制御演算部23は、測量装置10の各種機能を実行するためのプログラムを、記憶部19またはRAMから読み出して、測量装置10の各部を制御して、自動追尾、測距・測角等各種機能を実行する。また、測距・測角により得られたデータに演算処理を行ってターゲット41の位置情報(位置座標)を取得する。
【0039】
また、制御演算部23は、通信部17を介して、測量支援装置50と通信し、測量支援装置50の命令に従って測定を実行し、測量支援装置50に被測量装置40の測量データを送信する。
【0040】
被測量装置40は、ターゲット41と、ターゲット41を支持するポール状の支持部材42とを備える。
【0041】
ターゲット41は、複数の三角錐状のプリズムを放射状に組み合わせて構成された、いわゆる全方位プリズムであるが、これに限定されない。ターゲット41は、入射光を入射方向と反対の方向に再帰反射する。
【0042】
支持部材42は、その先端からターゲット41の中心Oまでの長さH1が既知である。支持部材42は、図示しない水準器を備え、鉛直に設置できるようになっている。支持部材42を介して観測点Pに鉛直に設置したターゲット41を、既知点に設置した測量装置10で測距・測角して得た測距・測角データから求められる中心Oの3次元座標から支持部材42の長さHを差し引いて、被測量装置40の位置情報として、観測点Pの3次元座標を求めることができる。
【0043】
位置取得装置30の他の実施例としては、GNSS測量装置を用いることができる。この場合、被測量装置40として、測量支援装置50と通信可能なGNSS受信装置を用いて、被測量装置40の現在位置の測量を行う。
【0044】
(測量支援装置の構成)
測量支援装置50は、位置取得装置30と通信可能な可搬型情報処理装置である。測量支援装置50は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、PDA、データコレクタ等の、携帯コンピュータ端末により実現される。
【0045】
測量支援装置50は、端末画面部51、端末操作部52、端末記憶部53、端末通信部54および端末制御部55を備える。
【0046】
端末画面部51は、例えば、端末操作部52と一体に構成されたタッチパネル式の液晶ディスプレイである。端末画面部51は、観測画面60、断面指定画面(図示せず)、横断結果表示画面(以下、「横断結果画面」という。)80等、処理内容に応じた画像を表示するようになっている。
【0047】
端末記憶部53は、各種のプログラムおよび各種データを読み書き自在に記憶媒体に格納する。端末記憶部53は、例えばHDDである。また、端末記憶部53は、例えば、CD(Compact・Disc)ドライブ等の光ディスクドライブであってもよい。端末記憶部53には、通信プログラム、端末画面部51に作業内容等、通信内容等を表示するための画像表示プログラム、横断観測を実行するための各種プログラム等が記憶されている。
【0048】
また、端末記憶部53には、測量装置10の座標、ターゲット41の高さH等の初期設定情報、および設計情報が格納されている。また、端末記憶部53は、測量装置10から受信したターゲットの測定データ、測量情報表示部555で算出された測量情報を、指定断面および構成点を示す観測点の名前に関連付けられて、測定した順にリストの形式で格納する。
【0049】
端末通信部54は、測量装置10の通信部17を介して、測量装置10と通信可能とする通信制御装置であり、通信部17と同じ通信規格を有する。
【0050】
端末制御部55は、少なくともCPUおよびメモリ(ROM,RAM)等を備える制御ユニットである。端末制御部55は、端末通信部54、端末操作部52等からの入力信号に基づいて、測量支援装置50および測量装置10を制御する。端末制御部55は、RAMや、端末記憶部53に記憶された、プログラムを呼び出して実行する。
【0051】
端末制御部55は、機能部として、設計情報読込部551と、断面指定部552と、ビュー表示部553と、位置情報取得部554と、測量情報表示部555と、記録実行部556と、横断観測結果表示部(以下、「横断結果表示部」という。)557と、表示順序変更部558,接続線表示部559とを備える。
【0052】
設計情報読込部551は、端末記憶部53に格納された設計情報を読み込む。あるいは、外部の記憶装置に格納された設計情報を、端末通信部54を介して受信して読み込んでもよい。
【0053】
断面指定部552は、作業者の入力に従って、設計情報に設定された断面から、観測対象の断面を指定する。観測対象の断面とは、鉛直距離および水平距離の算出対象とする中心点を含む断面であり、以下、「指定断面」という。
【0054】
ビュー表示部553は、設計情報から路線の中心線CLを水平面に投影した平面
図61を生成し、観測画面60に表示する(
図5)。また、ビュー表示部553は、設計情報に設定された断面から、指定断面における中心線CLを示す横断面
図62を生成し端末画面部51の観測画面60に表示する(
図5)。観測画面60については後述する。
【0055】
位置情報取得部554は、測量装置10が所定の周期で測定するターゲット41の測定データを、測定ごとに端末通信部54を介して受信する。位置情報取得部554は、端末記憶部53に記憶された測量装置10の座標およびターゲットの高さH1から、被測量装置40の絶対座標系での位置座標を被測量装置40の位置情報として取得する。
【0056】
測量情報表示部555は、位置情報取得部554の取得する被測量装置40の位置情報に基づいて、測量情報として端末画面部51に表示して、位置情報を取得する毎に表示を更新する。測量情報は、被測量装置40の現在位置を含む。被測量装置40の現在位置は、マーキングM1として平面
図61上に表示される(
図5)。また、マーキングM2として横断面
図62上に表示される(
図5)。
【0057】
また測量情報は、位置情報に基づいて算出される各種情報を含む。例えば、被測量装置40の、指定断面からの距離、指定断面上の中心点から被測量装置40の現在位置までの水平距離および鉛直距離等である。また、測量情報は、例えば、指定された断面(中心点)の番号、設計情報における構成点の情報等、横断観測に関連する各種情報が含まれてもよい。
【0058】
記録実行部556は、作業者が観測点に到達したと考えて被測量装置40を観測点に設置して、確認ボタン69をタップした時に、被測量装置40の現在位置における測量情報を観測点の観測点データとして端末記憶部53に記憶する。観測点データは、指定された断面および観測点に対応する設計情報上の構成点に関連付けられて記憶される。あるいは、観測点を
【0059】
横断結果表示部557は、横断結果画面80を表示する。横断結果画面80については後述する。
【0060】
表示順序変更部558は、作業者の入力に従って、横断結果画面80に表示された観測点データのリストにおける観測点の表示順序を変更する。入力方法としては、作業者が表示されている観測点データのうちの順序を変更しようとするものを、画面上で指等で触れ、目的の順序の位置に移動させることにより移動させてもよい。具体的には、例えば、リストとして表示されている観測点データの表示部をフリックして入れ替える等の手法で行うことができる。あるいは、表示されている観測点データのリストにおいて、順序変更を入力可能とし、その入力に従って、順序を変更するように構成してもよい。
【0061】
接続線表示部559は、表示順序変更部558によって変更された表示の順序で、観測点を繋ぐ線を描画して、観測横断図を作成する。
【0062】
各機能部の機能は、回路によって実現されてもよく、またプログラムを実行することにより実現されてもよい。また、プログラムで実現する場合、プログラムは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶することができる。
【0063】
(観測画面及び横断結果画面)
次に、
図5を参照して、観測画面60および横断結果画面80について説明する。なお、
図5(A),(B)の各画面に表示されている数字自体は表示の1例であって、横断面図に対応する数値データを示すものではない。
図8についても同様である。
【0064】
(観測画面)
観測画面60には、ビュー表示部553が生成した平面
図61と横断面
図62とが並べて表示される。
【0065】
また、平面
図61には、被測量装置40の現在位置を示すマーキングM1が表示される。横断面
図62には、被測量装置40の現在位置を示すマーキングM2が表示される。
【0066】
また、観測画面60において、平面
図61の東西南北を示す方位表示63、縮尺を示す縮尺表示64が表示されている。また、観測画面60上に、横断結果画面80を呼び出すための機能アイコン(横断結果表示ボタン)65dを含む、測量作業を補助するための機能アイコン65a,65b,65c・・・・を表示されている。また、初期設定として指定断面を選択するための断面指定画面(図示せず)に移行するための、画面移行ボタン66が表示されている。
【0067】
また、観測画面60には、測量装置10に被測量装置40の追尾および観測の開始、停止を命令するための、観測開始/停止ボタン67と、観測点データを記録するための記録ボタン68表示されている。
【0068】
また観測画面60には、測量情報表示部555により測量情報表示64a~64fが表示されている。測量情報表示64a~64fは、例えば、それぞれ、断面番号、指定された参照点、指定された断面から被測量装置40の路線の前後方向の水平距離、選択された参照点から被測量装置40の路線の前後方向と直交する左右方向の水平距離、指定された参照点から被測量装置40の鉛直距離,目標高、すなわち支持部材42の先端からターゲット41の中心Oまでの長さH1を示す。
【0069】
その他、平面
図61および横断面
図62は任意に拡大縮小が可能となっている。横断面
図62は、端末操作部52からの指示に応じて端末画面部51に同時に表示された平面
図61と相対位置を変更可能であり、具体的には、タッチパネル操作により、枠の中で自由に位置を変えることができる。また、横断面
図62の表示/非表示を切り替えることもできる。
【0070】
(横断結果画面)
横断結果画面80には、各観測点で記録した観測点データ81a~81eを、順序つきデータとして配列した観測点データリスト81と、ビュー表示部553が生成した横断面
図62上に観測点データ81a~81eに基づく各観測点の位置を示す観測点マーキング82a~82eを表示した、観測横断
図83が表示されている。
【0071】
観測点データは、例えば観測点の名称(例えば、RO.000_No.1+01000 L0.000),標高(例えば、Elev:5.300)、中心点からの離れ(水平距離)(例えば、CL Offset:L7.200)を含む。
【0072】
また、観測横断
図83には、各観測点マーキング82a~
82eを接続する接続線84が表示されている。
【0073】
(測量支援方法)
図6は、本実施の形態の測量支援装置50を用いた測量支援方法の1つの例を示すフローチャートである。
【0074】
横断観測では、測量装置10は、既知点に設置され、ターゲット41を自動追尾できる状態とされている。作業者は、被測量装置40を鉛直に保持しながら、測量支援装置50を持って、測量現場の指定断面上を歩き、構成点に相当する点(観測点)に来た時に、観測点データを記録する。指定断面上の構成点でこれを繰り返す。
【0075】
測量支援装置50が、横断観測ための処理を開始すると、ステップS01で、設計情報読込部551が設計情報を読み込む。
【0076】
次に、ステップS02で、初期設定として、断面指定部552が作業者の入力に従って観測対象の断面(指定断面)を選択する。
【0077】
次に、ステップS03で、ビュー表示部553が、生成した平面
図61および横断面
図62を端末画面部51の観測画面60に表示する。
【0078】
次に、ステップS04で、作業者が観測開始/停止ボタン67をタップすることにより、観測が開始すると、測量装置10は被測量装置40を所定の間隔で測定し、測定ごとに測定データを測量支援装置50に送信する。
【0079】
すると、ステップS05で、位置情報取得部554が、測定データを受信して、被測量装置40の現在位置の位置情報を取得する。
【0080】
次に、ステップS06で、測量情報表示部555が被測量装置40の現在位置の位置情報に基づいて測量情報を算出する。
【0081】
次に、ステップS07で、測量情報表示部555が、被測量装置40の現在位置を示すマーキングM1,M2を端末画面部51の観測画面60に表示すると共に、測量情報表示64a~64fを観測画面60に表示する。2度目以降は表示を更新する。
【0082】
次に、ステップS08で、記録の実行の指示がない場合(No)は、端末制御部55はステップS05~S08を繰り返して、位置情報を取得する毎に測量情報を算出し、マーキングM1,M2および測量情報の表示の更新を行う。
【0083】
そして、ステップS08で、作業者が記録ボタン68をタップすることにより、記録の実行が指示されると(Yes)、ステップS09で、記録実行部556が、その時点の位置情報および測量情報を、観測点データとして端末記憶部53に記録する。作業者は、端末画面部51を確認しながら、構成点に向かって歩いている。作業者は、観測すべき構成点に到達したと判断したときに、被測量装置40を鉛直に保持して、記録ボタン68をタップし、測量支援装置50にその位置の測量情報を観測点の測量情報として記録させる。
【0084】
次に、ステップS10で、作業者は次の観測点を観測するか否かを判断し、次の観測点を観測する場合(Yes)には、ステップS11で、作業者が次の観測点まで移動する。その間、測量支援装置50はステップS05~ステップS08の処理を繰り返す。そして、次の観測点に到達した時に、記録ボタン68をタップする。これにより、処理は、ステップS09に移行して記録を実行する。
【0085】
ステップS10で、例えば、途中結果を確認したい等の理由を含め、次の観測点を観測しない場合、ステップS12で、作業者が、横断結果表示ボタン65dをタップすることにより横断結果表示の指示を入力すると(Yes)、ステップS13で、横断結果表示部557は、横断結果画面80を端末画面部51に表示する。横断結果の表示が完了したら、ステップS14に移行する。横断結果表示の詳細は後述する。
【0086】
一方、ステップS12で、横断結果表示の指示の入力のない場合(No)は、ステップ14に移行する。そして、ステップS14で端末制御部55が、作業者の観測開始/停止ボタン67を再度タップするという観測終了の操作があるまで、ステップS05~S14を繰り返し、作業者から観測終了の指示があった場合(ステップS14においてYes)観測を終了する。
【0087】
次に、横断結果表示の詳細について説明する。説明の便宜として、
図1に示す形状の断面において、P
1→P
5→P
4→P
3→P
2の順で観測を行ったものと仮定する。また、点P
1~P
5のデータは、観測点データ81a~81eとして、端末記憶部85に格納されている。
【0088】
図7に示すように、横断結果表示が開始すると、ステップS21で、横断結果表示部557が、
図8に示すように、端末画面部51に観測点データリスト81を表示する。
【0089】
同時に、ステップS22で、横断結果表示部557が、端末画面部51に観測横断
図83を表示する。
【0090】
次に、ステップS23で、接続線表示部559が観測点データリスト81の表示順に、観測点マーキング82aを接続するように接続線84を表示する(
図8)。
【0091】
次に、ステップS24で、作業者によるデータ並べ替えの指示を検出すると(Yes)、ステップS25で、観測点データリスト81が指示に従って並べ替えられる。そして、ステップS26で、接続線表示部559が、観測点データリスト81に配列された順で、観測点マーキング82a~82eを接続するように接続線84の表示を更新してステップS27に移行する。
【0092】
本例において具体的には、
図8(A)の状態で、矢印91で示すように観測点データ81bをフリックすることで、観測点データ81bの位置は、
図8(B)に示すように、観測点データ81aの次の段に移動する。これと対応して、接続線84の表示も更新される。
図8(B)の状態から、や矢印92のようにフリックし、さらに同様に続けることで、正しい観測横断図を生成することができる。このように、本例において、ステップS24~S26は実質的に同時に連動して実行される。
【0093】
尚、作業者がフリックする際、どの観測点データをフリックするかは、観測点データに含まれる観測点の名称を確認しながら行うことができる。また、選択した観測点データが、観測横断
図83に表示されるどの観測点マーキングに対応するかを、視覚的に識別可能に表示するようになっていてもよい。具体的には、
図9に示すように、観測点データをタップした時に、対応する観測点マーキング82bに変形するなどするようになっていてもよい。あるいは、観測点マーキング82の色をそれぞれ異なるものとし、対応する観測点データに同じ色のマーキングを表示するように構成してもよい。
【0094】
一方ステップS24において、データの並べ替えの必要が無く、観測点データ並べ替えの指示が検出されない場合(No)、処理はそのままステップS27に移行する。
【0095】
次に、ステップS27で、観測横断図データの保存指示の検出を判定し、指示を検出すると(Yes)、ステップS28で、観測横断図データを端末記憶部53に保存して処理を終了する。一方、指示がない場合は(No)、そのまま横断結果表示の処理を終了する。
【0096】
なお、横断結果表示は、観測と一連の動作として実行されるだけでなく、観測終了後に確認のために横断結果表示の処理だけが実行可能となっていてもよい。
また、全ての観測点の観測が完了していない場合に、保存された観測横断図データを読み込んで、追加の観測を行えるようになっていてもよい。
【0097】
本実施の形態では、横断観測の結果から成果物である観測横断
図83を生成する際に、端末画面部51に表示される観測点データ81a・・・の順序を入れ替えることで、接続線84の接続順序を任意に入れ替えることができるようにした。上記構成により、作業者の想定する横断面を容易に作成することができる。これにより、作業者は測定順序を気にせずに、効率的な順序で横断観測を実行することが可能となる。
【0098】
特に、本実施の形態では、端末画面部51と端末操作部52をタッチパネルディスプレイとして構成し、横断結果画面80に、観測横断
図83と、観測点データリスト81とを表示し、観測点データリスト81の観測点データ81a・・・の順序を作業者のフリックで入れ替えるのと連動して、繋ぎ変えた接続線84を表示するように構成した。上記構成によれば、作業者は、フリックごとに、接続線84の接続状態を確認しながら、観測点データ81a・・・を並べ替えることができる。このため、自身の想定する観測横断図と比較しながら、観測横断
図83を直観的に行うことが可能となり作業者の負担が軽減する。
【0099】
また、
図10のように複雑な形状の横断面を有する現場では、左から右へと順に観測してくことは困難である。しかも、観測順に接続線を繋ぐ、左から右へと接続線を繋ぐ、といった単純なアルゴリズムでは、このような複雑な形状の観測横断図の接続線を正確に繋ぐことは困難である。
本実施の形態に係によれば、複雑な形状の観測横断面でも、作業者が観測横断図を想定しながら接続線を容易に繋ぐことができるので有利である。
【0100】
(他の変形例)
他の変形例として、指定断面を、初期設定において、作業者が入力により設定するのではなく、設計情報に設定された断面のうち、被測量装置40の現在位置との距離が最も短い断面を自動的に指定するよう構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10 :測量装置
30 :位置取得装置
40 :被測量装置
50 :測量支援装置(コンピュータ)
51 :端末画面部(画面部)
53 :端末記憶部(記憶部)
55 :端末制御部
551 :設計情報読込部
553 :ビュー表示部
554 :位置情報取得部
556 :記録実行部
557 :横断結果表示部
558 :表示順序変更部
559 :接続線表示部
61 :平面図
62 :横断面図
81 :観測点データリスト
81a :観測点データ
81b :観測点データ
81c :観測点データ
81d :観測点データ
81e :観測点データ
83 :観測横断図
84 :接続線
85 :端末記憶部
100 :測量支援システム