(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】電磁波遮蔽ボックス
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20240425BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K9/00 C
(21)【出願番号】P 2020163846
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 周平
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-236037(JP,A)
【文献】特開平04-211197(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220166(WO,A1)
【文献】特開2007-287759(JP,A)
【文献】特開2000-174452(JP,A)
【文献】特開2020-137323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H01M 50/20
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物(X)を受けるロア部材(2)と、該ロア部材(2)の上側で該ロア部材(2)に組み付けられ前記収容物(X)を覆うアッパ部材(3)とを備え、前記ロア部材(2)及び前記アッパ部材(3)のうち少なくとも一方が前記収容物(X)の収容空間を構成する凹部(2a,3a)を有する、電磁波遮蔽ボックス(1)であって、
前記ロア部材(2)及び前記アッパ部材(3)のうち、
一方の部材は金属材料で構成された金属部材であり、
他方の部材は、前記金属部材とは電位差のある金属層(35a,35b)と樹脂層(36)との積層体で構成された積層部材であり、
前記金属層(35a,35b)には、前記金属部材と導電可能に接続された接続部
(C2)が設けられ、該接続部
(C2)は外部から水密にシールされて
おり、
前記金属部材及び前記積層部材は、互いに組み付けられる組付部(A)において、互いに重ね合わせられ締結部材(B,N)により挿通されて締結固定される板状の固定部(23,33)をそれぞれ有し、
前記金属部材の前記固定部は、前記締結部材(B)を挿通するための貫通孔(24)を有し、
前記積層部材の前記固定部は、前記樹脂層(36)に埋設され且つ前記締結部材(B)を挿通するための貫通孔(38)が形成されたカラー(37)を有し、
前記カラー(37)は、前記金属部材と電位差のない金属材料で構成され、且つ、前記金属部材の前記固定部と導電可能に接続され、
前記金属層(35b)が前記固定部の前記樹脂層(36)の中で前記カラー(37)と接触することで前記接続部(C2)を構成していることを特徴とする、電磁波遮蔽ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波遮蔽ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリーを収納する、底部及び該底部の周縁を囲む壁部からなる収納空間を有する金属製のバッテリー受け部と、該バッテリー受け部の前記収納空間全面を覆うバッテリーカバーとを備える、バッテリーケースが開示されている。
【0003】
特許文献1のバッテリーケースは、樹脂層とその片面に金属層が積層された積層体であり、前記バッテリー受け部を覆う天井部と、天井部の周縁を囲むカバー壁部とを備え、前記バッテリーカバーの金属層は、前記バッテリー受け部側に積層されるとともに前記バッテリー受け部の金属部分と接触する。バッテリーカバーの金属層と金属製のバッテリー受け部とが、直接又は導電性を有する締結補助具を介して接触することで、バッテリー受け部から車体本体に電気的に接続し、アースを取ることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものでは、バッテリー受け部、締結補助具等の金属材料からなる部分が互いに接触する接触部において、それらの金属材料の間に電位差がある場合、その接触部に水分が侵入すると電食が起こるおそれがあるという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属材料同士の接触部における電食を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、金属材料同士が互いに接触する接触部を水密にシールするようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、収容物を受けるロア部材と、該ロア部材の上側で該ロア部材に組み付けられ前記収容物を覆うアッパ部材とを備え、前記ロア部材及び前記アッパ部材のうち少なくとも一方が前記収容物の収容空間を構成する凹部を有する、電磁波遮蔽ボックスであって、前記ロア部材及び前記アッパ部材のうち、一方の部材は金属材料で構成された金属部材であり、他方の部材は、前記金属部材とは電位差のある金属層と樹脂層との積層体で構成された積層部材であり、前記金属層には、前記金属部材と導電可能に接続された接続部が設けられ、該接続部は外部から水密にシールされていることを特徴とする、電磁波遮蔽ボックスである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記金属部材及び前記積層部材は、互いに組み付けられる組付部において、互いに重ね合わせられ固定部材により固定される板状の固定部をそれぞれ有し、前記積層部材は、前記組付部において、前記金属部材と接触する接触部を有し、前記金属層は、前記接触部において前記金属部材と接触するように前記積層部材の表面に露出し、該露出部が前記接続部を構成し、前記両固定部の間において、前記接続部よりも外部側の位置で、前記接続部を外部から水密にシールするシール部材を備えることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記金属部材は、前記収容物の収容空間を構成する凹部を有し、前記積層部材は、前記組付部における前記固定部よりも内周側の部位に、前記金属部材側に突出し且つ前記金属部材の前記凹部の内周面と接触する突出部を有し、前記金属層は、前記突出部における前記凹部の内周面と接触する側面に露出し、該露出部が前記金属部材の前記凹部の前記内周面と接触することで前記接続部を構成していることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つにおいて、前記金属部材及び前記積層部材は、互いに組み付けられる組付部において、互いに重ね合わせられ締結部材により挿通されて締結固定される板状の固定部をそれぞれ有し、前記金属部材の前記固定部は、前記締結部材を挿通するための貫通孔を有し、前記積層部材の前記固定部は、前記樹脂層に埋設され且つ前記締結部材を挿通するための貫通孔が形成されたカラーを有し、前記カラーは、前記金属部材と電位差のない金属材料で構成され、且つ、前記金属部材の前記固定部と導電可能に接続され、前記金属層が前記固定部の前記樹脂層の中で前記カラーと接触することで前記接続部を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によると、金属層において金属部材と導電可能に接続され金属部材と電位差のある接続部は、外部から水密にシールされているので、電食を抑制できる。
【0013】
第2の発明によると、積層部材の金属層は、金属部材と接触するように積層部材の表面に露出し、この露出部が金属部材と導電可能に接続された接続部を構成し、積層部材及び金属部材の両固定部の間において、接続部よりも外部側の位置で、接続部を外部から水密にシールするシール部材を備えるので、金属部材と電位差のある接続部は外部から水密にシールされている。すなわち、第1の発明の効果を奏する具体的な構成が得られる。
【0014】
第3の発明によると、第2の発明において、金属部材は、収容物の収容空間を構成する凹部を有し、積層部材は、固定部よりも内周側の部位に、金属部材側に突出し且つ金属部材の凹部の内周面と接触する突出部を有する。また、金属層は、突出部における凹部の内周面と接触する側面に露出し該露出部が金属部材の凹部の内周面と接触することで金属部材と電位差のある接続部を構成している。よって、金属部材と積層部材との間に隙間が生じても、接続部は確実にシール部材によって外部から水密にシールされる。すなわち、第2の発明の構成のより具体的な構成が得られる。
【0015】
第4の発明によると、第1~第3の発明のいずれか1つにおいて、金属部材及び積層部材は、互いに組み付けられる組付部において、互いに重ね合わせられ締結部材により挿通されて締結固定される板状の固定部をそれぞれ有し、金属部材の固定部は、締結部材を挿通するための貫通孔を有し、積層部材の固定部は、固定部に埋設され、締結部材を挿通するための貫通孔が形成されたカラーを有する。また、カラーは、金属部材と電位差のない金属材料で構成され、且つ、金属部材の固定部と導電可能に接続され、金属層が固定部の樹脂層の中でカラーと接触することで接続部を構成している。すなわち、金属部材と電位差のある接続部は積層部材の固定部に埋設されているので、接続部が外部から水密にシールされた、第1の発明の効果を奏する、第2及び第3の発明とは異なる具体的な構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る電磁波遮蔽ボックスを示す断面概略図である。
【
図2】
図1におけるロアケース及びアッパケースの取付部の拡大図である。
【
図3】第2実施形態に係る電磁波遮蔽ボックスの
図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物又はその用途を制限することを意図しない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る、車両のバッテリーX(収容物)を収容する電磁波遮蔽ボックス1を示す。電磁波遮蔽ボックス1は、収容されたバッテリーXが発する電磁波が外部の電子機器に影響を与えないように外部へ向かう電磁波を遮蔽し、且つ外部で発生する電磁波がバッテリーXに影響を与えないように内部へ向かう電磁波を遮蔽するためのものである。なお、以下では、「内部側」とは、電磁波遮蔽ボックス1の内部側を指し、「外部側」とは、電磁波遮蔽ボックス1の外部側を指す。
【0019】
電磁波遮蔽ボックス1は、収容物Xを受けるロアケース2(ロア部材)と、ロアケース2の上側でロアケース2に組み付けられ収容物Xを覆うアッパケース3(アッパ部材)とを備える。ロアケース2及びアッパケース3は、いずれもバッテリーXを収容する収容空間を構成する凹部2a,3aを有する。電磁波遮蔽ボックス1の寸法並びにロアケース2及びアッパケース3の厚さは、バッテリーを安定して収容できる程度であればよい。
【0020】
ロアケース2は、上下方向視で矩形状の底部21と、底部21の周縁部において底部21の上側に設けられた壁部22と、壁部22の上端部におけるアッパケース3との組付部Aにおいて、壁部22の外周を全周に亘って囲む外周フランジ23(固定部)とを有する。外周フランジ23は、板状に形成され、その両板面は上下方向を向いている。底部21、壁部22及び外周フランジ23の厚さは、同じ程度である。ロアケース2の外周フランジ23には、ボルトB(締結部材/固定部材)を挿通するための貫通孔24が形成されている。外周フランジ23の下面における貫通孔24が形成された部位には、ボルトBと螺合するナット(締結部材/固定部材)が溶接されている。
【0021】
ロアケース2の底部21、壁部22及び外周フランジ23は、いずれも、鉄、アルミ、銅、ステンレス等の金属材料で構成された金属部材からなる。また、ロアケース2は車体(図示しない)と接触するように、車体に載置されている。すなわち、ロアケース2は、放電可能な物体である車体に接触することで、アースが取られている。
【0022】
アッパケース3は、上下方向視で矩形状の天井部31と、天井部31の周縁部において天井部31の下側に設けられた壁部32と、壁部32の下端部におけるロアケース2との組付部Aにおいて、壁部32の外周を全周に亘って囲む外周フランジ33(固定部)とを有する。外周フランジ33は、板状に形成され、その両板面は上下方向を向いている。天井部31、壁部32及び外周フランジ33の厚さは、同じ程度である。
【0023】
図2は、
図1における破線IIで囲む部分の拡大図であり、ロアケース2及びアッパケース3が互いに組付けられた組付部Aを示す。アッパケース3は、組付部Aにおける外周フランジ33よりも内周側(内部側)の部位に、ロアケース2側に突出し且つロアケース2の凹部2aの内周面と接触する突出部34を有している。具体的に、突出部34は、壁部32全周の下端部から壁部32の内周面に沿った部位が下方に突出して形成されている。突出部34の厚さは、壁部32の厚さよりも小さい。突出部34の外周面は、ロアケース2の凹部2aの内周面と接触している。
【0024】
アッパケース3は、ロアケース2を構成する金属材料とは電位差のある内部側の金属層35aと、外部側の樹脂層36との積層体で構成された積層部材からなる。金属層35aは、アルミ、銅、ステンレス、パーマロイ等の金属箔からなる。金属層35aの厚さは、アッパケース3が大きな電磁波遮蔽効果を発揮できるようにするという観点から50μm以上が好ましく、また、成形しやすいように適度な賦形性を有するようにするという観点から100μm以下が好ましい。
【0025】
樹脂層36は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂又はポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂等の熱可塑性樹脂で構成されている。樹脂層36を構成する樹脂には難燃剤が配合されており、樹脂層36は難燃性を有する。樹脂層36の厚さは、例えば、1.5~3.5mmである。
【0026】
金属層35aは、天井部31、壁部32及び突出部34において、樹脂層36の内部側の表面全体を覆っている(
図1及び
図2を参照)。すなわち、金属層35aは、天井部31の下面に露出し、これに続いて壁部32の内周面に露出している(
図1及び
図2を参照)。第1金属層35aは、壁部32の内周面に続いて、突出部34の表面(内周面、下端面及び外周面)に露出している(
図2を参照)。
【0027】
突出部34の外周面に露出した金属層35a(露出部)は、ロアケース2の凹部2aの内周面と接触するので、ロアケース2と導電可能に接続された接続部C1を構成している。すなわち、金属層35aは、接続部C1から、ロアケース2を介して車体に放電可能となっている。
【0028】
また、金属層35aは、突出部34の外周面に続いて、外周フランジ33の下面の内周側寄りの領域を覆っている。ここでいう「内周側寄りの領域」とは、突出部34の外周面から外周側(外部側)に向かって、外周フランジ33の板幅(
図2において、外周フランジ33の左右方向の長さ)の1/4~1/2程度いった位置までの領域である。以下、金属層35aによって覆われた外周フランジ33の下面のこの領域を「内周領域」という。
【0029】
アッパケース3の外周フランジ33は、その下面をロアケース2の外周フランジ23の上面と対向させ、ロアケース2の外周フランジ23と重ねられている。両外周フランジ23,33は、この状態でボルトB(締結部材/固定部材)により挿通され、ロアケース2の外周フランジ23の下面に溶接されたナットNにボルトBを締結して互いに固定されている。両外周フランジ23,33のボルトB及びナットNで締結される部位は、ロアケース2及びアッパケース3を安定して互いに組み付けられる部位に数箇所(
図1においては、収容空間の左側及び右側のそれぞれ1箇所ずつ示す)あればよい。また、ボルトBに挿通される部位は、
図2に示す断面視では、外周フランジ33において金属層35aが下面を覆う内周領域よりも外周側である。
【0030】
外周フランジ33の下面は、ボルトBが挿通された部位を除き、後述するガスケットGの圧縮に対する反発力でロアケース2の外周フランジ23の上面との間に少し隙間が空いている。また、外周フランジ33は、ボルトBの締結力で撓んでおり、これによって、外周フランジ33の下面は、外周フランジ23の上面との間に隙間が空いた部位からボルトBが挿通された部位にいくにしたがって、ロアケース2の外周フランジ23の上面に近づくように傾斜している。外周フランジ33の下面は、ボルトBが挿通された部位で、ロアケース2の外周フランジ23の上面と接触している。
【0031】
アッパケース3の外周フランジ33には、ボルトBを挿通させる部位に、金属製のカラー37が埋設されている。カラー37は、筒軸方向が上下方向に沿った略円筒状に形成され、その上端部には、上端部の周りを囲むフランジが形成されている。カラー37の内側には、上下方向に沿って、ボルトBを挿通させることができる貫通孔38が形成されている。カラー37の下端面は、対向するロアケース2の外周フランジ23の上面と接触している。カラー37の上端面は、外周フランジ33の上面と面一で外周フランジ33の上側に露出している。
【0032】
外周フランジ33において、カラー37よりも内周側(内部側)且つ金属層35aで覆われた内周領域よりも外周側の部位には、
図2に示すように、外周フランジ33に沿って全周に亘って形成された溝Dが設けられている。溝Dには、その内周側及び収容空間への水の侵入を防ぐ、ガスケットGが全周に亘って設けられている。具体的に、ガスケットGは、溝Dに沿うように環状に形成され、溝Dに嵌合している。ガスケットGは、溝Dに嵌合していない自然な状態では、その上下方向の幅が溝Dの上端部からロアケース2の外周フランジ23の上面までの長さよりも少し大きく形成され、その左右方向の幅が溝Dの左右方向の幅と略同じ大きさに形成されている。ガスケットGは、溝Dに嵌合した状態(
図2に示す状態)では、ボルトB及びナットNの締結により、その上下方向の幅が溝Dの上端部からロアケース2の外周フランジ23までの長さと同じとなるように、両外周フランジ23,33の間で圧縮されている。この構成によって、ガスケットGは、接続部C1よりも外周側の位置で、接続部C1を外部から水密にシールしている。
【0033】
―作用・効果―
ところで、電磁波遮蔽ボックス1が電磁波遮蔽効果を発揮するためには、アッパケース3の金属層35aはアースが取られている必要がある。ここで、本実施形態によると、金属層35aは、接続部C1から、ロアケース2を介して車体に放電可能となっているので、アースが取られている。したがって、電磁波遮蔽ボックス1は電磁波遮蔽効果を発揮できる。
【0034】
また、本実施形態では、金属層35aは、接続部C1において、電位差の異なるロアケース2の凹部2aの内周面と接触するので、電食を抑制するために、接続部C1への水分の侵入を抑制する必要がある。ここで、本実施形態によると、電磁波遮蔽ボックス1は、接続部C1よりも外部側の位置で、接続部C1を外部から水密にシールするガスケットGを備えるので、接続部C1は外部から水密にシールされている。したがって、接続部C1の電食を抑制できる。
【0035】
ところで、本実施形態のように、ガスケットGを高い圧力で圧縮して接続部C1を外部から確実に水密にシールするために、ボルトB及びナットNを強く締結するが、そうすると、ガスケットGの反発力によってアッパケース3の外周フランジ33が撓んで変形する場合がある。そのような場合であっても、アッパケース3の金属層35aにアースが取られている構成を維持し、電磁波遮蔽ボックス1の電磁波遮蔽効果を確実に発揮できるようにしたい。ここで、本実施形態では、突出部34の外周面に露出した金属層35a(露出部)が、ロアケース2の凹部2aの内周面と接触してロアケース2と導電可能に接続された接続部C1を構成しているので、外周フランジ33が変形しても、アッパケース3の金属層35aは、ロアケース2と導電可能に接続でき、アースが取られている構成を維持できる。したがって、電磁波遮蔽ボックス1の電磁波遮蔽効果を確実に発揮できる。
【0036】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態では、アッパケース3は突出部34を有するが、外周フランジ33の下面における前述の内周領域を覆う金属層35aが、ロアケース2の外周フランジ23の上面と接触していれば、突出部34が設けられていなくてもよい。この場合、外周フランジ33の下面に露出する金属層35aが、ロアケース2と導電可能に接続された接続部を構成する。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態では、金属層35aにおいて、ロアケース2と導電可能に接続された接続部C2の構成が第1実施形態の接続部C1の構成と異なる。以下、本実施形態の構成について説明するが、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する場合がある。
【0038】
図3は、本実施形態における取付部Aを示す。アッパケース3は、第1実施形態で説明した突出部34を有さない。したがって、金属層35aは壁部32の内周面から外周フランジ33の下面の内周領域に続いている。
【0039】
アッパケース3の外周フランジ33における金属層35a(以下、本実施形態における金属層を「第1金属層」という。)の上側には、第2金属層35bが樹脂層36に埋設されている。第2金属層35bは、第1金属層35aと同じ金属材料で構成され、その厚さは第1金属層35aの厚さと同じ程度である。第2金属層35bは、外周フランジ33の周方向に沿って形成され、
図3に示す断面視で、下方に窪んだ凹状に形成されている。第2金属層35bの下端面は、第1金属層35aの外周端部周辺の上面に接触している。第2金属層35bは、断面視で、その下端部から、外周側及び内周側へそれぞれから延び、外周側では、カラー37よりも外周側まで続いて延びている。第2金属層35bには、カラー37が埋設された部位においてカラー37に貫通された孔が形成されており、この孔の内周端部がカラー37の外周面と接触している。
【0040】
カラー37の下端面は、第1実施形態と同様に、対向するロアケース2の外周フランジ23の上面と接触している。この構成により、カラー37はロアケース2の外周フランジ23と導電可能に接続されている。
【0041】
以上説明した、第2金属層35b、カラー37及び外周フランジ23の関係により、第2金属層35bは外周フランジ33の樹脂層36の中でカラー37と接触することで、ロアケース2と導電可能に接続された接続部C2を構成している。
【0042】
また、本実施形態では、カラー37は、ロアケース2を構成する金属材料とは電位差のない金属材料で構成されており、例えば、ロアケース2と同じ金属材料で構成されている。
【0043】
本実施形態によると、接続部C2がアッパケース3の外周フランジ33における樹脂層36の中に埋設されているので、接続部C2が外部から水密にシールされた、第1実施形態とは異なる具体的な構成が得られる。なお、カラー37の下端面はシールされていない部分でロアケース2と接触するが、カラー37はロアケース2と同電位であるので、カラー37の下端面では電食は起こらない。
【0044】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、カラー37の下端面はロアケース2の外周フランジ23の上面と接触するが、カラー37及びロアケース2が互いに接触していなくても、カラー37及びロアケース2が互いに導電可能に接続されていればよい。例えば、カラー37及びボルトBが互いに接触し、且つ、ボルトBとロアケース2とが直接(又はナットNを介して)互いに接触し、これによって、カラー37がボルトBを介してロアケース2と導電可能に接続されていてもよい。
【0045】
また、第2実施形態では、第1金属層35aの上面及び第2金属層35bの下端面は互いに接触しているが、導電性接着剤により接着されていてもよい。あるいはこれに代えて、第1金属層35a及び第2金属層35bが一体の金属層であってもよい。第1金属層35a及び第2金属層35bは、互いに導電可能であればよい。
【0046】
(その他の実施形態)
前述の各実施形態では、バッテリーXを受けるロア部材及びその上側でバッテリーXを覆うアッパ部材は、いずれも凹部2a,3aを有するケース部材2,3であるが、いずれか一方が収容空間を構成する凹部を有していればよい。例えば、アッパケース3に代えて、矩形状の平板からなるアッパ部材を、ロアケース2の凹部2aを覆うようにロアケース2に組み付けてもよい。この場合、アッパ部材の固定部は、例えば、その平板の周縁部である。
【0047】
また、前述の各実施形態では、ロアケース2が金属部材であり、アッパケース3が積層部材であるが、アッパケース3が金属部材であり、ロアケース2が積層部材であってもよい。
【0048】
前述の各実施形態では、ロアケース2及びアッパケース3を互いに組み付けるための固定部材として、ボルトB及びナットNを用いるが、これに限られない。例えば、固定部材としてクリップを用いてもよく、ロアケース2及びアッパケース3の両外周フランジ23,33をクリップで挟んで組み付けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 電磁波遮蔽ボックス
2 ロアケース(金属部材/ロア部材)
2a 凹部
23 外周フランジ(固定部)
24 貫通孔
3 アッパケース(積層部材/アッパ部材)
3a 凹部
33 外周フランジ(固定部)
34 突出部
35a 第1金属層(金属層)
35b 第2金属層(金属層)
36 樹脂層
37 カラー
38 貫通孔
C1,C2 接続部
A 組付部
B ボルト(締結部材/固定部材)
N ナット(締結部材/固定部材)
G ガスケット(シール部材)