(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20240425BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240425BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240425BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20240425BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20240425BHJP
B60W 20/11 20160101ALI20240425BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20240425BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240425BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240425BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240425BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240425BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20240425BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/46 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/13
B60W20/12
B60W20/11
B60W20/00
B60W10/26 900
B60W20/00 900
B60L15/20 J
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
G01C21/36
(21)【出願番号】P 2020191578
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 淳
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-354612(JP,A)
【文献】特開2015-155261(JP,A)
【文献】国際公開第2008/041319(WO,A1)
【文献】特開2011-006047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/06
B60K 6/46
B60W 10/08
B60W 20/13
B60W 20/12
B60W 20/11
B60W 20/00
B60W 10/26
B60L 15/20
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/13
G01C 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を用いて発電する発電機と、前記発電機により発電された電力が充電されるバッテリと、前記発電機及び前記バッテリからの電力により走行駆動力を発生させる駆動モータと、を備え、前記駆動モータの要求電力と前記バッテリのSOCに基づき前記発電機による発電電力を制御するハイブリッド車両の制御方法であって、
前記ハイブリッド車両の経路における現在地から目的地までの道路勾配情報と想定される車速情報とを含む経路情報を取得し、
前記経路情報に基づき、現在地から目的地まで前記エンジンを最良燃費運転点で運転した場合における前記バッテリのSOCの推移である推定SOCプロフィールを算出し、
前記経路上の登坂路における前記推定SOCプロフィールの最大値と最小値の差である第1差分が、前記バッテリを使用可能なSOCの範囲である使用可能SOCの上限と下限の差である第2差分以下の場合、
登坂路における、前記推定SOCプロフィールの最小値が前記使用可能SOCの下限と一致するように、前記推定SOCプロフィールの最小値と前記使用可能SOCの下限との差分だけ前記推定SOCプロフィールを上昇または下降させた第1目標プロフィールを算出し、
前記エンジンの運転点または前記エンジンの運転頻度を制御することで、自車両が登坂路開始地点に到達する前に前記バッテリのSOCが前記第1目標プロフィールに一致するように発電電力を制御し、
前記バッテリのSOCが前記第1目標プロフィールに一致した後は、前記エンジンを最良燃費運転点で運転し、
前記経路上の登坂路における前記第1差分が、前記第2差分より大きい場合、
登坂路における前記推定SOCプロフィールの最大値が前記使用可能SOCの上限より大きい場合は、所定時間後から自車両が登坂路開始地点に到達するまでにおいて前記エンジンを最良燃費運転点で運転し、
登坂路における前記推定SOCプロフィールの最大値が前記使用可能SOCの上限以下の場合は、自車両が登坂路開始地点に到達する前において、前記エンジンを最良燃費運転点で運転した場合の発電電力以上の発電電力となる運転点で前記エンジンを運転する、
ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記推定SOCプロフィールの値が最小になる点は登坂路終了地点であって、
自車両が前記登坂路終了地点に到達した後は、前記駆動モータの要求電力と前記バッテリのSOCに基づき前記発電機による発電電力を制御する、
ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記経路上の登坂路において、前記第1差分が前記第2差分より大きく、且つ前記推定SOCプロフィールの最大値が前記使用可能SOCの上限より大きい場合、
登坂路開始地点における前記推定SOCプロフィールの値が前記使用可能SOCの上限となるように、前記推定SOCプロフィールの最大値と前記使用可能SOCの上限との差分だけ前記推定SOCプロフィールを下降させた第2目標プロフィールと、
自車両が登坂路開始地点から登坂路終了地点までを走行する間における前記バッテリのSOCの目標値の推移である第3目標プロフィールと、を算出し、
前記エンジンの運転点または前記エンジンの運転頻度を制御することで、自車両が登坂路開始地点に到達する前に前記バッテリのSOCが前記第2目標プロフィールに一致するように発電電力を制御し、
前記バッテリのSOCが前記第2目標プロフィールに一致した後は、自車両が登坂路開始地点に到達するまでの間、前記エンジンを最良燃費運転点で運転し、
登坂路走行中は、前記エンジンの運転点を最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点に制御することで、前記バッテリのSOCが前記第3目標プロフィールに一致するように発電電力を制御し、
前記第3目標プロフィールは、登坂路開始地点の前記バッテリのSOCが前記使用可能SOCの上限であり、且つ自車両が登坂路開始地点から登坂路終了地点までを走行する間における前記エンジンの出力の大きさが一定であると仮定した場合に、登坂路終了地点の前記バッテリのSOCが前記使用可能SOCの下限となるような、登坂路走行中における前記エンジンの出力を算出し、当該出力の運転点である登坂路走行中運転点で前記エンジンを運転した場合における前記バッテリのSOCの推移である、
ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記経路上の登坂路において、前記第1差分が、前記第2差分より大きく、且つ前記推定SOCプロフィールの最大値が前記使用可能SOCの上限以下の場合、
自車両が、現在地から登坂路開始地点までを走行する間における前記バッテリのSOCの目標値の推移である第4目標プロフィールと、
自車両が登坂路開始地点から登坂路終了地点までを走行する間における前記バッテリのSOCの目標値の推移である第3目標プロフィールと、を算出し、
前記第4目標プロフィールは、自車両が、現在地から登坂路開始地点までを走行する間における前記エンジンの出力の大きさが一定であると仮定した場合に、登坂路開始地点到達時における前記バッテリのSOCが前記使用可能SOCの上限となるような、現在地から登坂路開始地点までを走行する際における前記エンジンの出力を算出し、当該出力の運転点である事前走行中運転点で前記エンジンを運転した場合における前記バッテリのSOCの推移であり、
前記第3目標プロフィールは、登坂路開始地点の前記バッテリのSOCが前記使用可能SOCの上限であり、且つ自車両が登坂路開始地点から登坂路終了地点までを走行する間における前記エンジンの出力の大きさが一定であると仮定した場合に、登坂路終了地点の前記バッテリのSOCが前記使用可能SOCの下限となるような、登坂路走行中における前記エンジンの出力を算出し、当該出力の運転点である登坂路走行中運転点で前記エンジンを運転した場合における前記バッテリのSOCの推移である、
ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記経路上の登坂路において、前記第1差分が、前記第2差分より大きく、且つ前記推定SOCプロフィールの最大値が前記使用可能SOCの上限以下の場合、
前記エンジンの運転点を前記事前走行中運転点に制御することで、自車両が現在地から登坂路開始地点までを走行する間は、前記バッテリのSOCが前記第4目標プロフィールに一致するように発電電力を制御し、
登坂路走行中は、前記エンジンの運転点を前記登坂路走行中運転点に制御することで、前記バッテリのSOCが前記第3目標プロフィールに一致するように発電電力を制御し、
前記事前走行中運転点及び前記登坂路走行中運転点は、前記エンジンの出力が最良燃費運転点における出力よりも大きい、
ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項6】
請求項4に記載のハイブリッド車両の制御方法であって、
前記経路上の登坂路において、前記第1差分が、前記第2差分より大きく、且つ前記推定SOCプロフィールの最大値が前記使用可能SOCの上限以下の場合、
前記登坂路走行中運転点における前記エンジンの出力が前記事前走行中運転点における前記エンジンの出力よりも大きい場合には、自車両が前記エンジンの運転を開始する地点から登坂路終了地点までを走行する間、前記登坂路走行中運転点と同一の運転点で前記エンジンを運転し、
前記エンジンの運転は、前記登坂路走行中運転点と同一の運転点で前記エンジンを継続運転した場合に登坂路開始地点における前記バッテリのSOCと前記使用可能SOCの上限とが一致するようなタイミングで開始する、
ハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
エンジンの動力を用いて発電する発電機と、
前記発電機により発電された電力が充電されるバッテリと、
前記発電機及び前記バッテリからの電力により走行駆動力を発生させる駆動モータと、
前記駆動モータの要求電力と前記バッテリのSOCに基づき前記発電機による発電電力を制御するコントローラと、
を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記コントローラは、前記ハイブリッド車両の経路における現在地から目的地までの道路勾配情報と想定される車速情報とを含む経路情報を取得し、
前記経路情報に基づき、現在地から目的地まで前記エンジンを最良燃費運転点で運転した場合における前記バッテリのSOCの推移である推定SOCプロフィールを算出し、
前記経路上の登坂路における前記推定SOCプロフィールの最大値と最小値の差である第1差分が、前記バッテリを使用可能なSOCの範囲である使用可能SOCの上限と下限の差である第2差分以下の場合、
登坂路における、前記推定SOCプロフィールの最小値が前記使用可能SOCの下限と一致するように、前記推定SOCプロフィールの最小値と前記使用可能SOCの下限との差分だけ前記推定SOCプロフィールを上昇または下降させた第1目標プロフィールを算出し、
前記エンジンの運転点または前記エンジンの運転頻度を制御することで、自車両が登坂路開始地点に到達する前に前記バッテリのSOCが前記第1目標プロフィールに一致するように発電電力を制御し、
前記バッテリのSOCが前記第1目標プロフィールに一致した後は、前記エンジンを最良燃費運転点で運転し、
前記経路上の登坂路における前記第1差分が、前記第2差分より大きい場合、
登坂路における前記推定SOCプロフィールの最大値が前記使用可能SOCの上限より大きい場合は、所定時間後から自車両が登坂路開始地点に到達するまでにおいて前記エンジンを最良燃費運転点で運転し、
登坂路における前記推定SOCプロフィールの最大値が前記使用可能SOCの上限以下の場合は、自車両が登坂路開始地点に到達する前において、前記エンジンを最良燃費運転点で運転した場合の発電電力以上の発電電力となる運転点で前記エンジンを運転する、
ハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行経路に応じてバッテリ残量(SOC)の目標値を設定するハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両では、登坂路等においても、バッテリのSOCが、バッテリの劣化につながるような高SOCまたは低SOCにならないように目標SOCを決定し、実際のバッテリSOCが、目標SOCに近づくようにエンジンやモータを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のハイブリッド車両では、バッテリの劣化は抑制できるが、燃費を最良化するSOCの決定方法になっていない。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みたものであり、バッテリの劣化を抑制しつつ、燃費を最良化したハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、エンジンの動力を用いて発電する発電機と、発電機により発電された電力が充電されるバッテリと、発電機及びバッテリからの電力により走行駆動力を発生させる駆動モータと、を備え、駆動モータの要求電力とバッテリのSOCに基づき発電機による発電量を制御するハイブリッド車両の制御方法が提供される。このハイブリッド車両の制御方法では、ハイブリッド車両の経路における現在地から目的地までの道路勾配情報と想定される車速情報とを含む経路情報を取得し、経路情報に基づき、現在地から目的地までエンジンを最良燃費運転点で運転した場合におけるバッテリのSOCの推移である推定SOCプロフィールを算出する。そして、経路上の登坂路における推定SOCプロフィールの最大値と最小値の差である第1差分が、バッテリを使用可能なSOCの範囲である使用可能SOCの上限と下限の差である第2差分以下の場合、以下の制御を行う。即ち、まず、登坂路における、推定SOCプロフィールの最小値が使用可能SOCの下限と一致するように、推定SOCプロフィールの最小値と使用可能SOCの下限との差分だけ推定SOCプロフィールを上昇または下降させた第1目標プロフィールを算出する。次に、エンジンの運転点またはエンジンの運転頻度を制御することで、自車両が登坂路開始地点に到達する前にバッテリのSOCが第1目標プロフィールに一致するように発電電力を制御する。バッテリのSOCが第1目標プロフィールに一致した後は、エンジンを最良燃費運転点で運転する。また、経路上の登坂路における第1差分が、第2差分より大きい場合は以下の制御を行う。まず、登坂路における推定SOCプロフィールの最大値が使用可能SOCの上限より大きい場合は、所定時間後から自車両が登坂路開始地点に到達するまでにおいてエンジンを最良燃費運転点で運転する。一方、登坂路における推定SOCプロフィールの最大値が使用可能SOCの上限以下の場合は、自車両が登坂路開始地点に到達する前において、エンジンを最良燃費運転点で運転した場合の発電電力以上の発電電力となる運転点でエンジンを運転する、
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、登坂路における推定SOCプロフィールの最大値と最小値の差である第1差分が、バッテリを使用可能なSOCの範囲である使用可能SOCの上限と下限の差である第2差分以下の場合、推定SOCプロフィールの最小値と使用可能SOCの下限と一致させた第1目標プロフィールを算出する。そして、バッテリのSOCが第1目標プロフィールに一致するようにエンジンの運転点またはエンジンの運転頻度を制御し、一致した後は、エンジンを最良燃費運転点で運転する。このように、使用可能SOCの範囲を超えないように推定SOCプロフィールを補正した第1目標プロフィールに基づいてエンジンの運転を制御する。従って、バッテリのSOCを使用可能SOCの範囲内に保ちつつ、エンジンを最良燃費運転点で運転できる区間を最大化することができる。即ち、バッテリの劣化を抑制しつつ、燃費を最良化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の各実施形態に共通するハイブリッド車両の制御装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、登坂路における推定SOCプロフィールを説明するタイムチャートである。
【
図3】
図3は、第1実施形態によるハイブリッド車両の登坂路走行制御を説明するタイムチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態によるハイブリッド車両の登坂路走行制御を説明するタイムチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態によるハイブリッド車両の登坂路走行制御を説明するタイムチャートである。
【
図6】
図6は、第1実施形態によるハイブリッド車両の登坂路走行制御を説明するタイムチャートである。
【
図7】
図7は、各状況におけるエンジンの運転点を説明する表である。
【
図8】
図8は、第1実施形態による登坂路走行制御を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1実施形態による登坂路走行制御を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第2実施形態による登坂路走行制御を説明するタイムチャートである。
【
図11】
図11は、第2実施形態による登坂路走行制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の各実施形態に共通するハイブリッド車両10の制御装置100の概略構成図である。なお、各実施形態において、ハイブリッド車両10の制御装置100は、シリーズハイブリッド型のハイブリッド車両の制御装置として説明するが、これに限られない。例えば、プラグインハイブリッド型の車両の制御装置であってよいし、シリーズ型とパラレル型とを併用したハイブリッド車両の制御装置であってもよい。
【0011】
図1に示すように、ハイブリッド車両の制御装置100は、エンジン(内燃機関)1、発電機2、駆動モータ3、ギアボックス4、車軸5、駆動輪6、インバータ7、バッテリ8及びコントローラ9等から構成される。ハイブリッド車両の制御装置100はシリーズ型のハイブリッド車両10に用いられ、エンジン1の動力を用いて発電機2で発電を行い、その発電電力をバッテリ8に蓄え、バッテリ8に蓄えられた電力で駆動モータ3を回転させることで駆動輪6を駆動する。従って、エンジン1の動力は、ハイブリッド車両(自車両)10を走行させるためではなく、発電機2を発電させるために使用される。
【0012】
エンジン1は、ギアボックス4内にある歯車列(図示しない)を介して発電機2の発電モータと連結し、発電機2が発電するための動力を発電機2の発電モータに伝達する。
【0013】
発電機2は、エンジン1から伝達された動力によって発電モータが回転駆動することにより発電する。発電機2はインバータ7と電気的に接続され、インバータ7は駆動モータ3及びバッテリ8と電気的に接続されている。発電機2の発電電力は、インバータ7を介してバッテリ8に充電される。バッテリ8に充電された電力は、インバータ7を介して駆動モータ3に供給され、駆動モータ3の動力に用いられる。また、インバータ7は、必要な場合、発電機2の発電電力を、バッテリ8を介さずに、駆動モータ3に直接供給する。例えば、自車両10が登坂路走行中のような高負荷時には、大きな駆動力が要求され、バッテリ8からの電力のみでは駆動力要求(駆動モータ3の要求電力)を満たせない場合がある。そのような場合には、発電機2の発電電力が、駆動モータ3に直接供給され、発電機2の発電電力により駆動モータ3を駆動する、または発電機2の発電電力とバッテリ8の電力を併用して駆動モータ3を駆動する。
【0014】
駆動モータ3は、インバータ7を介してバッテリ8と電気的に接続するとともに、ギアボックス4内の、エンジン1と発電機2を連結する歯車列とは別の歯車列(図示しない)を介して車軸5と機械的に連結している。車軸5は駆動輪6に機械的に連結されている。駆動モータ3には、バッテリ8から電力が供給され、バッテリ8の供給電力によって駆動モータ3は回転し、駆動力が発生する。この回転による駆動力が歯車列及び車軸5を介して駆動輪6に伝達され、駆動輪6が駆動する。また、前述のとおり、高負荷時等、必要な場合には、発電機2の発電電力が、直接駆動モータ3に供給される。なお、駆動輪6は前輪であっても後輪であってもよく、また、前輪及び後輪の両方(即ち、四輪駆動)であってもよい。
【0015】
ギアボックス4は、複数の歯車から成る歯車列を内包する歯車装置である。ギアボックス4には、エンジン1と発電機2とを連結する歯車列と、駆動輪6に連結する車軸5と駆動モータ3と、を連結する歯車列とが収容されている。このように2種の歯車列を一つのギアボックス4内に収容することで、各歯車列に効率よくオイルを供給することができ、オイルを節約することができる。なお、上記2種の歯車列を一つのギアボックス4内に収容することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。即ち、エンジン1と発電機2とを連結する歯車列と、駆動モータ3と車軸5とを連結する歯車列とを、それぞれ別個のギアボックスに収容するような構成であってもよい。
【0016】
インバータ7は、発電機2、駆動モータ3及びバッテリ8に電気的に接続する。インバータ7は、発電機2の発電電力を直流に変換してバッテリ8に供給し、バッテリ8からの直流電力を交流に変換して駆動モータ3に供給する駆動インバータである。また、インバータ7は、駆動モータ3で回生発電された交流電力を直流の電力に変換して、バッテリ8に供給する。また、インバータ7は、発電機2から駆動モータ3に電力を直接供給する場合、発電機2の発電電力の電圧、周波数を調整して駆動モータ3に供給する。
【0017】
バッテリ8は、インバータ7を介して発電機2及び駆動モータ3に電気的に接続される。発電機2による発電電力及び駆動モータ3の回生電力はバッテリ8に充電され、バッテリ8に充電された電力は駆動モータ3に供給される。駆動モータ3はバッテリ8から供給される電力により回転駆動し、駆動モータ3の動力によりハイブリッド車両10は走行する。また、前述の通り、バッテリ8からの電力のみでは駆動力要求(駆動モータ3の要求電力)を満たせない高負荷時の場合等には、発電機2の発電電力、または発電機2の発電電力及びバッテリ8の電力が駆動モータ3に供給される。なお、インバータ7とバッテリ8とを電気的に接続する配線上には、バッテリ8の電流値を検出する電流センサ(図示しない)が設けられている。電流センサにより検出されたバッテリ8の電流値は、後述するコントローラ9(バッテリコントローラ93)に送信され、コントローラ9(バッテリコントローラ93)は当該電流値に基づきバッテリ8の充電容量(SOC)を算出する。
【0018】
コントローラ9は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ9を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0019】
コントローラ9は、エンジンコントローラ91(EC)、モータジェネレータコントローラ92(MGC)、バッテリコントローラ93(BC)等を含む。また、コントローラ9は、車両コントロールモジュール94(VCM)、ナビゲーションコントロールユニット95(NAVICU)等を含む。EC91、MGC92、BC93、VCM94、NAVICU95等は、CAN通信線により、相互に情報交換可能に接続されている。
【0020】
VCM94は、ハイブリッド車両10全体の電力の受給、エンジン1、発電機2、駆動モータ3、バッテリ8の動作等を統合的に制御する。VCM94には、アクセル開度センサ、車速センサ等を含むセンサ941から車載センサ情報が入力され、BC93からバッテリ8の充電容量(SOC)情報が入力される。また、後述するNAVICU95からは、自車両10の経路における現在地から目的地までの道路の勾配情報、道路の制限速度情報及び渋滞情報等が入力される。VCM94は、例えば、アクセル開度や自車両10が走行中の道路の勾配等から決定される駆動モータ3の要求電力と、バッテリ8のSOC情報とに基づき、EC91、MGC92及びBC93に制御指令を出力する。EC91、MGC92及びBC93は、VCM94からの制御指令に基づき、EC91はエンジン1の動作を、MGC92は発電機2及び駆動モータ3の動作を、BC93はバッテリ8の動作をそれぞれ制御する。また、VCM94は、道路勾配情報、制限速度情報及び渋滞情報等の情報に基づき、経路の各地点において予想される車速を算出し、算出された車速の情報(車速情報)と、現在地から目的地までの道路の勾配情報とを経路情報として取得する。車速情報は、例えば、渋滞が無い道路では制限速度に、渋滞中の道路では渋滞の度合いに応じて制限速度よりも低い速度として算出される。取得した経路情報は、後述する登坂路走行制御に用いられる。
【0021】
NAVICU95は、ドライバ等によって地図上に設定された目的地までの案内をドライバに対して行う機能を有する。NAVICU95は、GPS衛星から送信される信号(GPSデータ)を周期的に受信し、自車両10の地球上における位置を検出するとともに、図示しない地図データベースの地図情報を参照し、自車両10の現在地を特定する。また、NAVICU95は、自車両10の現在位置と地図データベースの地図情報とに基づいて、自車両10の目的地までの目標ルートを算出し、自車両10内に設置されたディスプレイに目標ルートを表示する。地図データベースには、道路の制限速度情報や道路の勾配情報等が含まれており、NAVICU95は、自車両10の現在地から目的地までの道路の制限速度情報及び勾配情報等を取得する。
【0022】
また、NAVICU95は、図示しない通信装置を備え、情報処理センターなどの車両10外部の施設のコンピュータと無線通信を行う。NAVICU95は、例えば情報処理センターのコンピュータから通信を介して道路の混雑を示す渋滞情報等を取得する。
【0023】
NAVICU95が取得した道路勾配情報、制限速度情報及び渋滞情報等はVCM94へと出力される。前述のとおり、VCM94は、これらの情報に基づき経路の各地点で予想される車速を算出し、車速情報と道路勾配情報とを経路情報として取得する。
【0024】
このように構成されたコントローラ9は、特定のプログラムを実行することにより、ハイブリッド車両10の制御装置100全体を制御するための処理を実行する。例えば、コントローラ9は、後述する登坂路走行制御を実行する。
【0025】
上記の構成によるハイブリッド車両の制御装置100では、バッテリ8に蓄えられた電力で駆動モータ3を回転させることで駆動輪6を駆動し、発電機2の発電電力は、駆動モータ3の要求電力と、バッテリ8のSOCに基づき制御される(通常制御)。通常制御では、発電機2の発電電力はバッテリ8に充電されるが、バッテリ8のSOCが高すぎる状態(過充電)や、低すぎる状態(過放電)にあると、バッテリ8の寿命が短縮されたり、性能が劣化する等、バッテリ8に好ましくない影響がある。従って、通常制御においては、駆動モータ3の要求電力と、バッテリ8のSOCに基づき、駆動モータ3の要求電力を満たしつつバッテリ8の劣化につながるような高SOCまたは低SOCにならないように、発電機2の発電電力が制御される。
【0026】
ところで、ハイブリッド車両10が登坂路等を走行する際のように、平坦路走行時よりも大きな駆動力を要する場合においては、エンジン1の運転頻度や出力を上げて発電機2の発電電力を大きくして、駆動力要求を満たす必要がある。このような場面において、過充電や過放電にならないようにバッテリ8のSOCを制御しつつ駆動力要求を満たそうとすると、燃費が悪化する虞がある。そこで本実施形態では、登坂路走行中において、バッテリ8を使用可能なSOC(Usable SOC)の範囲にバッテリ8のSOCを保ちつつ、燃費を最良化した登坂路走行制御を実行することとした。具体的には、エンジン1を最良燃費運転点で運転した場合におけるバッテリ8のSOCの推移である推定SOCプロフィールを算出し、Usable SOCの範囲を超えないように推定SOCプロフィールを補正した目標プロフィールに基づき発電電力を制御することとした。これにより、バッテリ8の劣化を抑制しつつ、燃費を最良化することができる。
【0027】
図2は、登坂路における推定SOCプロフィールを説明するグラフである。推定SOCプロフィールとは、以下の第1及び第2条件の下で、自車両10が、現在地から目的地までエンジン1を最良燃費運転点で運転した場合において推定されるバッテリ8のSOCの推移のことをいう。
(第1条件):自車両10の走行に必要な電力が、エンジン1を最良燃費運転点で運転した場合における発電機2の発電電力以上である場合、発電機2の発電電力はすべて駆動モータ3に供給され、自車両10の走行に不足する電力はバッテリ8から駆動モータ3に供給するものとする。
(第2条件):自車両10の走行に必要な電力が、エンジン1を最良燃費運転点で運転した場合における発電機2の発電電力より小さい場合、自車両10の走行に必要な電力は発電機2の発電電力から駆動モータ3に供給されるものとする。また、発電機2の発電電力のうち、駆動モータ3への供給分を引いた余剰分は、バッテリ8に充電されるものとする。
【0028】
図2では、登坂路開始時刻t
sよりも所定時間前のt
0から、登坂路終了時刻t
eの直後までの推定SOCプロフィールを示している。t
0は、登坂路走行制御を開始する時刻である。なお、登坂路とは、所定の値以上の上り勾配が継続または断続する道路のことをいう。ここでの所定の値は任意に決定することができ、例えばエンジン1を最良燃費運転点で運転して当該道路を走行した場合に、バッテリ8のSOCが減少(即ち、推定SOCプロフィールが下降)するような上り勾配の値とすることができる。
図2に示すように、時刻t
0における自車両10の到達地点(以下、登坂路走行制御開始地点t
0または現在地t
0とする)から登坂路開始時刻t
sにおける自車両10の到達地点(以下、登坂路開始地点t
sとする)に到達するまでにおいては、推定SOCプロフィールが上昇している。即ち、登坂路開始前は、エンジン1を最良燃費運転点で運転するとバッテリ8のSOCが上昇していく(つまり、バッテリ8が充電されていく)ことが分かる。以下、自車両10が登坂路開始地点t
sに到達する前においてバッテリ8が充電されることを事前充電と称する。一方、登坂路開始地点t
sから登坂路終了時刻t
eにおける自車両10の到達地点(以下、登坂路終了地点t
eとする)までの間は、断続する部分はあるが全体として推定SOCプロフィールは下降する。即ち、登坂路中においてエンジン1を最良燃費運転点で運転すると、バッテリ8のSOCが減少していく。登坂路終了地点t
e以降は、推定SOCプロフィールが上昇しており、登坂路終了後は、エンジン1を最良燃費運転点で運転するとバッテリ8のSOCが上昇していく(バッテリ8が充電されていく)ことが分かる。なお、エンジン1を最良燃費運転点で運転する際のエンジン1の回転数をr
fとする。
【0029】
次に、
図2におけるUsable SOC上限とは、バッテリ8を使用可能なSOCの範囲である使用可能SOCの上限であり、Usable SOC下限とは、バッテリ8を使用可能なSOCの範囲である使用可能SOCの下限である。使用可能なSOC(Usabele SOC)の範囲は以下で説明する要素、即ち、バッテリ8の劣化速度が所定の速度を超えない範囲、所定のバッテリ充放電性能を満足する範囲及びSOC推定誤差等のマージンに基づいて決定される。
【0030】
バッテリ8のSOCが高すぎる状態(過充電)や、低すぎる状態(過放電)にあると、バッテリ8の寿命が短縮されたり、性能が劣化する等、バッテリ8に好ましくない影響がある。従って、Usabele SOCの範囲は、まず、バッテリ8の劣化速度が所定の速度を超えない範囲に定められる。なお、ここでの所定の速度は任意に定めることができ、例えば、バッテリ8に設定された寿命から算出される劣化速度に設定される。即ち、バッテリ8のSOCが高すぎる(過充電)、または低すぎる(過放電)ために、バッテリ8に設定された寿命よりも寿命が短縮されてしまうようなSOCの値はUsable SOCの範囲外となる。このように、Usable SOCの範囲は、バッテリ8の劣化速度が所定の速度を超えない範囲内に設定される。
【0031】
また、バッテリ8は、SOCが高くなると、充電可能な電力が低下する。例えば、バッテリ8のSOCがSOC1の場合における充電可能な最大電力がP1である場合、SOC1よりも高いSOC2における充電可能な最大電力はP1よりも小さくなる。即ち、発電機2の発電電力がバッテリ8に充電されるべき場面において、バッテリ8のSOCが高すぎると、発電機2の発電電力によりバッテリ8を充電することができない。従って、Usable SOCの上限は、発電機2の発電電力を充電可能なSOC以下の値に設定される。一方、バッテリ8は、SOCが低くなると、出力可能な電力が低下する。例えば、バッテリ8のSOCがSOC3の場合における出力可能な最大電力がP3である場合、SOC3よりも低いSOC4における出力可能な最大電力はP3よりも小さくなる。即ち、バッテリ8のSOCが低すぎると、駆動モータ3に供給すべき大きさの電力をバッテリ8から供給することができない。従って、Usable SOCの下限は、バッテリ8から駆動モータ3に供給すべき大きさの電力を供給可能なSOC以上の値に設定される。このように、Usable SOCの範囲は、所定のバッテリ充放電性能を満足する範囲内に設定される。
【0032】
また、動作中のバッテリ8のSOCは、バッテリ8に接続する配線上の電流センサによって検出された電流値に基づき演算されるが、電流センサの値には誤差が含まれる場合がある。従って、Usable SOCの範囲は、SOCを推定する際の当該誤差の範囲をマージンとして差し引いた範囲に設定される。
【0033】
以上のとおり、Usable SOCの範囲は、バッテリ8の劣化速度が所定の速度を超えない範囲、所定のバッテリ充放電性能を満足する範囲及びSOC推定誤差等のマージンに基づいて決定される。例えば、Usable SOCの上限は、バッテリ8の劣化速度が所定の速度を超えない範囲の上限と所定のバッテリ充放電性能を満足する範囲の上限のうち、小さい方の値からSOC推定誤差のマージンを引いた値に設定される。また、例えば、Usable SOCの下限は、バッテリ8の劣化速度が所定の速度を超えない範囲の下限と所定のバッテリ充放電性能を満足する範囲の下限のうち、大きい方の値からSOC推定誤差のマージンを加えた値に設定される。
【0034】
なお、バッテリ8のSOCは、Usable SOCの範囲を超えないことが好ましいが、Usable SOCの範囲を超えても、すぐに自車両10の走行に支障をきたすようなものではない。従って、Usable SOCの範囲を多少超えることは許容され得る。
【0035】
図2に示すように、登坂路(t
s~t
e)において、推定SOCプロフィールは、登坂路開始地点t
sにおいて最大値SOC
max、登坂路終了地点t
eにおいて最小値SOC
minとなる。
図2に示す例では、推定SOCプロフィールの最小値SOC
minはUsable SOCの範囲内にあるが、推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxがUsable SOCの上限を超えている。
【0036】
図3~
図6は、ハイブリッド車両10の登坂路走行制御を説明するタイムチャートである。
【0037】
図3及び
図4は、自車両10の経路上の登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxと最小値SOC
minの差である第1差分(ΔSOC)が、Usable SOCの上限と下限の差である第2差分(ΔUsable SOC)以下の場合における登坂路走行制御を説明するタイムチャートである。
【0038】
図3では、登坂路終了地点t
eにおいて、推定SOCプロフィールがUsable SOCの下限よりも大きい。即ち、
図3は、ΔSOCがΔUsable SOC以下であり、且つ登坂路(t
s~t
e)における推定SOCプロフィールの最小値SOC
minが、Usable SOCの下限以上の場合(以下、第1状況とする)における登坂路走行制御を示している。
【0039】
図3、
図4における第1目標プロフィールは、推定SOCプロフィールの最小値SOC
minがUsable SOCの下限と一致するように、推定SOCプロフィールをシフト(補正)させたSOCプロフィールである。
図3において、第1目標プロフィールは、SOC
minとUsable SOCの下限との差分だけ推定SOCプロフィールを下降(下方にシフト)させたSOCプロフィールである。
図3では、ΔSOCがΔUsable SOC以下であるため、最小値がUsable SOCの下限と一致する第1目標プロフィールにおいて、最大値はUsable SOCの上限を超えない。即ち、第1目標プロフィールは、Usable SOCの範囲を超えない。例えば、
図3において、登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxは、登坂路開始地点t
sにおいてUsable SOCの上限を超えているが、推定SOCプロフィールを下降(下方にシフト)させた第1目標プロフィールでは、SOCの最大値はUsable SOCの上限を超えない。
【0040】
なお、登坂路における推定SOCプロフィールの最小値SOCminがUsable SOCの下限と一致している場合は、推定SOCプロフィールが第1目標プロフィールとなる。
【0041】
図3に示す第1状況では、登坂路走行制御開始地点t
0において、エンジン1は運転されない。即ち、時刻t
0において、エンジン1は停止される、または停止状態が継続される。従って、発電機2による発電が行われないため、バッテリ8の実際のSOC(実SOC)は増加せず、実SOCが第1目標プロフィールに近づいていき、時刻t
1において、バッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールに一致する。バッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールに一致する時刻t
1において、エンジン1は最良燃費運転点で運転が開始され、自車両10が登坂路終了地点に到達する時刻t
eまで最良燃費運転点で運転される。これにより、時刻t
1~t
eにおいて、バッテリ8の実SOCの推移は第1目標プロフィールと一致する。従って、時刻t
1~t
sにおいてバッテリ8は事前充電され、登坂路走行中の時刻t
s~t
eにおいてバッテリ8の実SOCはUsable SOCの範囲内で減少する。
【0042】
自車両10が登坂路終了地点teに到達すると、登坂路走行制御は終了され、駆動モータ3の要求電力と、バッテリ8のSOCに基づき発電機2の発電電力が制御される通常制御に移行する。
【0043】
以上のとおり、第1状況では、登坂路開始地点tsに到達する前に実SOCが、第1目標プロフィールに一致するようにエンジン1の運転頻度を制御し、実SOCが第1目標プロフィールに一致した後は、エンジン1は最良燃費運転点で運転される。このように、Usable SOCの範囲を超えないように推定SOCプロフィールを下方にシフト補正させた第1目標プロフィールに基づいてエンジン1の運転を制御しているため、バッテリ8のSOCをUsable SOCの範囲内に保ちつつ、燃費を最良化することができる。また、実SOCが第1目標プロフィールに一致するまでエンジン1を停止するため、エンジン1の運転頻度が減少され、燃費が向上するとともに、エンジン1の運転による音振が抑制される。
【0044】
なお、
図3においては、推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxがUsable SOCの上限を超えているが、推定SOCプロフィールがUsable SOCの範囲を超えていない(SOC
maxがUsable SOCの上限以下)場合も、第1状況に含まれる。この場合、推定SOCプロフィールはUsable SOCの範囲内にある。このような場合においても、現在地t
0から最良燃費運転点でエンジン1を運転するのではなく、上記と同様に、SOC
minをUsable SOCの下限に一致させた第1目標プロフィールに基づき、エンジン1が制御される。これにより、バッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールに一致するまでエンジン1が停止されるため、推定SOCプロフィールに基づいてt
0から最良燃費運転点でエンジン1を運転する場合に比べ、エンジン1の運転頻度が減少される。即ち、バッテリ8のSOCをUsable SOCの範囲内に保ちつつ、エンジン1の運転頻度を最小化することができ、燃費を最良化することができる。
【0045】
次に、
図4では、登坂路終了地点t
eにおいて、推定SOCプロフィールがUsable SOCの下限よりも小さい。即ち、
図4は、ΔSOCがΔUsable SOC以下であり、且つ推定SOCプロフィールの最小値SOC
minが、Usable SOCの下限より小さい場合(以下、第2状況とする)における登坂路走行制御を示している。
【0046】
図4において、第1目標プロフィールは、SOC
minとUsable SOCの下限との差分だけ推定SOCプロフィールを上昇(上方にシフト)させたSOCプロフィールである。
図3(第1状況)と同様に、
図4(第2状況)では、ΔSOCがΔUsable SOC以下であるため、最小値がUsable SOCの下限と一致する第1目標プロフィールは、Usable SOCの範囲を超えない。即ち、推定SOCプロフィールを上方にシフトさせた
図4においても、第1目標プロフィールにおけるSOCの最大値は、Usable SOCの上限を超えない。
【0047】
図4に示すように、推定SOCプロフィールの最小値SOC
minが、Usable SOCの下限よりも小さい第2状況においては、登坂路走行制御開始地点t
0において、エンジン1は、最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点で運転される。
図4では、最良燃費運転点における回転数r
fよりも大きい回転数r
1で運転することで、最良燃費運転点よりも出力を大きくしている。これにより、発電機2の発電電力は最良燃費運転点でエンジン1を運転した場合よりも大きくなるため、バッテリ8の実SOCは、推定SOCプロフィールよりも大きな上昇率で上昇する。時刻t
1において、実SOCが第1目標プロフィールに一致すると、エンジン1の運転点は最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点から最良燃費運転点に移行される。
図4では、エンジン1の回転数がr
1からr
fに減少される。その後、エンジン1は、実SOCが第1目標プロフィールに一致する時刻t
1から自車両10が登坂路終了地点に到達する時刻t
eまで最良燃費運転点で運転される。これにより、時刻t
1~t
eにおいて、バッテリ8の実SOCは第1目標プロフィールと一致した値になる。このように、第2状況では、時刻t
0~t
1においてはエンジン1を最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点で運転して事前充電を行い、時刻t
1~t
sにおいてはエンジン1を最良燃費運転点で運転して事前充電を行う。登坂路走行中の時刻t
s~t
eにおいては、エンジン1は最良燃費運転点で運転され、実SOCはUsable SOCの範囲内で減少する。
【0048】
自車両10が登坂路終了地点teに到達すると、登坂路走行制御は終了され、登坂路終了地点te以降は、駆動モータ3の要求電力と、バッテリ8のSOCに基づき発電機2の発電電力を制御する通常制御に移行する。
【0049】
なお、第2状況の時刻t0~t1における最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点とは、当該運転点でエンジン1を運転した場合に、少なくとも、自車両10が登坂路開始地点tsに到達する前にバッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールに達するような出力の運転点である。即ち、自車両10が登坂路開始地点に到達する時刻tsよりも前に、バッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールと一致する時刻t1が来るようにエンジン1の運転点が制御される。
【0050】
以上のとおり、第2状況では、登坂路開始地点tsに到達する前にバッテリ8の実SOCが、第1目標プロフィールに一致するようにエンジン1の運転点が制御され、実SOCが第1目標プロフィールに一致した後は、エンジン1は最良燃費運転点で運転される。このように、Usable SOCの範囲を超えないように推定SOCプロフィールを上方にシフト補正させた第1目標プロフィールに基づいてエンジン1の運転を制御しているため、バッテリ8のSOCをUsable SOCの範囲内に保ちつつ、燃費を最良化することができる。
【0051】
図5及び
図6は、自車両10の経路上の登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxと最小値SOC
minの差である第1差分(ΔSOC)が、Usable SOCの上限と下限の差である第2差分(ΔUsable SOC)より大きい場合における登坂路走行制御を説明するタイムチャートである。
図5及び
図6では、
図3(第1状況)及び
図4(第2状況)よりもΔSOCが大きく、登坂路を走行する際により多くの電力を必要とする。つまり、
図5及び
図6は、
図3(第1状況)及び
図4(第2状況)よりも勾配が急な登坂路を走行する際の制御を示す図である。
【0052】
図5では、登坂路開始地点t
sにおいて、推定SOCプロフィールがUsable SOCの上限を超えている。即ち、
図5は、ΔSOCがΔUsable SOCより大きく、且つ登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxがUsable SOCの上限より大きい場合(以下、第3状況とする)における登坂路走行制御を示している。
【0053】
第3状況では、以下で説明するように、登坂路到達前の時刻t0からtsにおいては所定時間経過後にエンジン1を最良燃費運転点で運転することで事前充電を行い、登坂路走行中の時刻tsからteにおいては第3目標プロフィールに基づき発電機2の発電電力が制御される。ここでの所定時間とは、本実施形態においては、現在地t0においてエンジン1を停止した場合に、バッテリ8のSOCが後述する第2目標プロフィールに一致する時刻t1'までの時間である。
【0054】
図5において、第2目標プロフィールは、推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxがUsable SOCの上限と一致するように、SOC
maxとUsable SOCの上限との差分だけ推定SOCプロフィールを下降(下方にシフト)させたSOCプロフィールである。
【0055】
図5に示すように、第3状況においては、推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxが、Usable SOCの上限よりも大きいため、登坂路走行制御開始地点t
0において、エンジン1は運転されない。即ち、時刻t
0において、エンジン1は停止される、または既に停止している場合、停止状態が継続される。従って、発電機2による発電が行われないため、バッテリ8の実SOCは増加せず、実SOCは第2目標プロフィールに近づいていく。時刻t
1'において、実SOCが第2目標プロフィールに一致すると、エンジン1は最良燃費運転点で運転が開始され、自車両10が登坂路開始地点t
sに到達するまで最良燃費運転点で運転される。これにより、時刻t
1'~t
sにおいて、実SOCの推移は第2目標プロフィールと一致し、時刻t
1'~t
sにおいてバッテリ8は事前充電される。
【0056】
第3目標プロフィールは、自車両10が登坂路開始地点tsから登坂路終了地点teまでを走行する間におけるバッテリ8のSOCの目標値の推移である。具体的には、前述の第1条件及び第2条件の下で、以下の第1~第3仮定を満たすようなエンジン1の出力となる運転点(登坂路走行中運転点)でエンジン1を運転した場合において推定される登坂路走行中におけるバッテリ8のSOCの推移である。
(第1仮定):登坂路開始地点tsにおけるバッテリ8のSOC(SOCの最大値)がUsable SOCの上限と一致するものとする。
(第2仮定):登坂路終了地点teにおけるバッテリ8のSOC(SOCの最小値)がUsable SOCの下限と一致するものとする。
(第3仮定):登坂路走行中、エンジン1の出力の大きさは一定であるとする。
【0057】
図5に示すように、時刻t
1'~t
sにおいて、バッテリ8の実SOCは第2目標プロフィールと一致するため、自車両10が登坂路開始地点t
sに到達した際、バッテリ8は、SOCがUsable SOCの上限に一致するまで事前充電されている。第3状況において、自車両10が登坂路開始地点t
sから登坂路終了地点t
eまでを走行する間(即ち、登坂路走行中)は、エンジン1は登坂路走行中運転点で運転され、バッテリ8のSOCは第3目標プロフィールと一致する。ここで、登坂路走行中におけるバッテリ8のSOCの減少度合いは第3目標プロフィールの方が推定SOCプロフィールよりも小さい。即ち、登坂路走行中運転点でエンジン1を運転した場合の出力は、最良燃費運転点でエンジン1を運転した場合の出力よりも大きい。
図5では、最良燃費運転点における回転数r
fよりも大きい回転数r
2でエンジン1を運転することで、最良燃費運転点よりもエンジン1の出力を大きくしている。
【0058】
前述の通り、第3状況では、ΔSOCがΔUsable SOCより大きい。このため、登坂路走行中において最良燃費運転点でエンジン1を運転した場合、登坂路開始地点tsにおいて、バッテリ8のSOCがUsable SOCの上限と一致していると、登坂路終了地点teにおけるバッテリ8のSOCはUsable SOCの下限を下回ってしまう。一方、本実施形態では、登坂路走行中において、バッテリ8のSOCが第3目標プロフィールと一致するように、最良燃費運転点よりも出力が大きい登坂路走行中運転点でエンジン1を運転するため、実SOCはUsable SOCの範囲を超えない。
【0059】
このように、第3状況では、登坂路走行中の時刻ts~teにおいて、エンジン1は登坂路走行中運転点で運転され、時刻ts~teにおける実SOCの推移は第3目標プロフィールと一致する。
【0060】
自車両10が登坂路終了地点teに到達すると、登坂路走行制御は終了され、登坂路終了地点te以降は、駆動モータ3の要求電力と、バッテリ8のSOCに基づき発電機2の発電電力を制御する通常制御に移行する。
【0061】
以上のとおり、第3状況では、登坂路開始地点tsに到達する前にバッテリ8の実SOCが、第2目標プロフィールに一致するようにエンジン1の運転頻度を制御する。実SOCが第2目標プロフィールに一致した後は、登坂路開始地点tsに到達するまで、エンジン1を最良燃費運転点で運転して事前充電する。登坂路走行中(時刻ts~te)においては、バッテリ8のSOCの最大値及び最小値がそれぞれUsable SOCの上限及び下限に一致する第3目標プロフィールに基づいて、エンジン1の運転点が制御される。このように、登坂路走行中のバッテリ8のSOCの最大値及び最小値がUsable SOCの上限及び下限に一致するように発電機2の発電電力が制御されるため、登坂路走行中において使用可能なバッテリ8の電力が最大限使用される。従って、登坂路走行中におけるエンジン1の出力を最小化することができ、燃費の悪化を抑制できる。また、登坂路走行中において、エンジン1の回転数の変動がないため、エンジン音の変化が抑制され、乗員等にとってエンジン音が気になりづらくなる。
【0062】
図6では、登坂路開始地点t
sにおいて、推定SOCプロフィールがUsable SOCの上限以下である。即ち、
図6は、ΔSOCがΔUsable SOCより大きく、且つ登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxがUsable SOCの上限以下の場合(以下、第4状況とする)における登坂路走行制御を示している。なお、第4状況では、ΔSOCがΔUsable SOCより大きく、且つSOC
maxがUsable SOCの上限以下であるため、登坂路終了地点t
eにおける推定SOCプロフィールは必ずUsable SOCの下限より小さくなる。
【0063】
図6に示す第4状況では、以下で説明するように、登坂路到達前の時刻t
0からt
sにおいては第4目標プロフィールに基づき発電機2の発電電力が制御され、登坂路走行中の時刻t
sからt
eにおいては第3目標プロフィールに基づき発電機2の発電電力が制御される。
【0064】
図6において、第4目標プロフィールは、自車両10が、現在地から登坂路開始地点までを走行する間におけるバッテリ8のSOCの目標値の推移である。具体的には、前述の第1及び第2条件の下で、以下の第4及び第5仮定を満たすようなエンジン1の出力となる運転点(事前走行中運転点)でエンジン1を運転した場合において推定される、登坂路開始地点t
sに到達するまでのバッテリ8のSOCの推移である。
(第4仮定):登坂路開始地点t
sにおけるバッテリ8のSOC(登坂路におけるSOCの最大値)がUsable SOCの上限と一致するものとする。
(第5仮定):現在地t
0から登坂路開始地点t
sまでを走行する間におけるエンジン1の出力の大きさは一定であるとする。
【0065】
第4状況においては、自車両10が登坂路走行制御開始地点(現在地)t
0から登坂路開始地点t
sに到達するまでの間、エンジン1は事前走行中運転点で運転される。ここで、t
0からt
sまでの間、第4目標プロフィールは、推定SOCプロフィールよりもSOCの上昇率が大きい。即ち、事前走行中運転点でエンジン1を運転した場合の出力は、最良燃費運転点でエンジン1を運転した場合の出力よりも大きい(但し、後述するようにSOC
maxがUsable SOCの上限と一致する場合は、事前走行中運転点が最良燃費運転点となる)。
図6では、最良燃費運転点における回転数r
fよりも大きい回転数r
3でエンジン1を運転することで、最良燃費運転点よりもエンジン1の出力を大きくしている。時刻t
0~t
sにおいて、エンジン1が事前走行中運転点で運転されると、時刻t
0~t
sにおけるバッテリ8の実SOCの推移は、第4目標プロフィールと一致する。このように、第4状況では、時刻t
0~t
sにおいて、エンジン1を最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点で運転して事前充電を行う。
【0066】
なお、登坂路開始地点tsにおける推定SOCプロフィールの値SOCmaxがUsable SOCの上限と一致する場合は、第4目標プロフィールと推定SOCプロフィールとが一致する。この場合、最良燃費運転点が事前走行中運転点となり、時刻t0~tsにおいて、エンジン1を最良燃費運転点で運転して事前充電が行われる。
【0067】
図6に示すように、時刻t
0~t
sにおいて、バッテリ8の実SOCの推移は第4目標プロフィールと一致するため、登坂路開始地点t
sにおいて、バッテリ8の実SOCは、Usable SOCの上限と一致する。第3状況(
図5)と同様に、第4状況においても、自車両10が登坂路開始地点t
sから登坂路終了地点t
eまでを走行する間(即ち、登坂路走行中)は、エンジン1は、登坂路走行中運転点で運転される。これにより、登坂路走行中において、バッテリ8の実SOCの推移は第3目標プロフィールと一致する。
【0068】
自車両10が登坂路終了地点teに到達すると、登坂路走行制御は終了され、登坂路終了地点te以降は、駆動モータ3の要求電力と、バッテリ8のSOCに基づき発電機2の発電電力を制御する通常制御に移行する。
【0069】
以上のとおり、第4状況では、自車両10が現在地t0から登坂路開始地点tsに到達するまでの間は、登坂路開始地点tsにおけるバッテリ8のSOCがUsable SOCの上限と一致し且つエンジン1の出力が一定であると仮定した第4目標プロフィールに基づきエンジン1の運転点が制御される。即ち、登坂路開始地点tsにおけるバッテリ8のSOCがUsable SOCの上限となるように事前充電の目標SOCを定めて、エンジン1の出力を当該事前充電の目標SOCを満足するための最低限の出力としている。従って、燃料消費を最小化することができる。また、事前充電において、エンジン1の回転数の変動がないため、エンジン音の変化が抑制され、乗員等にとってエンジン音が気になりづらくなる。
【0070】
図7は、各状況(第1~第4状況)におけるエンジン1の運転点を説明する表である。
【0071】
図7に示すように、第1状況(ΔSOC≦ΔUsable SOC、且つSOC
min≧Usable SOCの下限)では、登坂路開始地点t
sに到達する前は、バッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールに一致するt
1までエンジン1を停止する。第1目標プロフィールに一致した後は、最良燃費運転点でエンジン1を運転して事前充電を行う。また、登坂路走行中も、継続して最良燃費運転点でエンジン1を運転する。
【0072】
第2状況(ΔSOC≦ΔUsable SOC、且つSOCmin<Usable SOCの下限)では、登坂路開始地点tsに到達する前は、バッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールに一致するt1までエンジン1を最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点で運転して事前充電を行う。第1目標プロフィールに一致した後は、最良燃費運転点でエンジン1を運転して事前充電を行う。また、登坂路走行中も、継続して最良燃費運転点でエンジン1を運転する。
【0073】
第3状況(ΔSOC>ΔUsable SOC、且つSOCmax>Usable SOCの上限)では、登坂路開始地点tsに到達する前は、バッテリ8の実SOCが第2目標プロフィールに一致するまでエンジン1を停止する。第2目標プロフィールに一致した後は、最良燃費運転点でエンジン1を運転して事前充電を行う。また、登坂路走行中は、最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点(登坂路走行中運転点)でエンジン1を運転する。
【0074】
第4状況(ΔSOC>ΔUsable SOC、且つSOCmin<Usable SOCの下限)では、SOCmaxがUsable SOCの上限と一致する場合を除き、最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点(事前走行中運転点)でエンジン1を運転して事前充電を行う。SOCmaxがUsable SOCの上限と一致する場合は、最良燃費運転点でエンジン1を運転して事前充電を行う。また、登坂路走行中は、最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点でエンジン1を運転する。
【0075】
このように、本実施形態では、各状況に合わせて、実SOCをUsable SOCの範囲に保ちつつ燃費を最良化するようにエンジン1の運転を制御している。
【0076】
図8及び
図9は、本実施形態の登坂路走行制御を示すフローチャートである。以下の登坂路走行制御は、コントローラ9により実行される。
【0077】
図8は、主に、ΔSOCがΔUsable SOC以下の場合、即ち、第1状況及び第2状況における登坂路走行制御を示している。
【0078】
コントローラ9は、取得した自車両10の経路における現在地から目的地までの道路勾配情報から、自車両10の経路上に登坂路が検出されると、当該登坂路の開始地点tsに到達するよりも所定時間前の時刻t0から、登坂路走行制御を開始する。ここでの所定時間は任意に設定できるが、例えば、平坦路において、バッテリ8のSOCがUsable SOCの下限であったと仮定した場合に、最良燃費運転点でエンジン1を運転してUsable SOCの上限までバッテリ8を充電するのに要する時間等に設定される。
【0079】
登坂路走行制御が開始されると、コントローラ9は、ステップS101において、自車両10が、現在地から目的地までエンジン1を最良燃費運転点で運転した場合におけるバッテリ8のSOCの推移である推定SOCプロフィールを算出する。推定SOCプロフィールは、現在のバッテリ8のSOCと、現在地から目的地までの道路の勾配情報及び車速情報等を含む経路情報とに基づき算出される。
【0080】
推定SOCプロフィールを算出すると、コントローラ9は、自車両10の経路上の登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOC
maxと最小値SOC
minの差である第1差分(ΔSOC)が、Usable SOCの上限と下限の差である第2差分(ΔUsable SOC)以下か否かを判断する。ΔSOCがΔUsable SOC以下の場合、コントローラ9は、S103の処理を実行する。ΔSOCがΔUsable SOC以下の場合とは、前述の第1状況または第2状況のいずれかに該当する場合である。なお、ΔSOCがΔUsable SOCより大きい場合、即ち、第3状況または第4状況に該当する場合については後述する(
図9を参照)。
【0081】
ステップS103において、コントローラ9は、推定SOCプロフィールの最小値SOCminがUsable SOCの下限となるように、推定SOCプロフィールをシフトさせた第1目標プロフィールを算出する。推定SOCプロフィールの最小値SOCminがUsable SOCの下限より大きい場合、第1目標プロフィールは、推定SOCプロフィールを下方にシフトしたSOCプロフィールとなる。また、SOCminがUsable SOCの下限より小さい場合、第1目標プロフィールは、推定SOCプロフィールを上方にシフトしたSOCプロフィールとなる。なお、推定SOCプロフィールの最小値SOCminがUsable SOCの下限である場合、推定SOCプロフィールが第1目標プロフィールとなる。前述のとおり、推定SOCプロフィールは、登坂路終了地点teにおいて最小値SOCminとなるため、第1目標プロフィールは、登坂路終了地点teにおいて、Usable SOCの下限と一致する。第1状況及び第2状況においては、ΔSOCがΔUsable SOC以下であるため、第1目標プロフィールがUsable SOCの範囲を超えることはない。
【0082】
第1目標プロフィールを算出すると、コントローラ9は、ステップS104において、推定SOCプロフィールの最小値SOCminがUsable SOCの下限以上であるか否かを判断する。SOCminがUsable SOCの下限以上である場合、コントローラ9はステップS105の処理を実行する。一方、SOCminがUsable SOCの下限より小さい場合、コントローラ9はステップS106の処理を実行する。
【0083】
ステップS105において、コントローラ9は、エンジン1を停止する、またはすでに停止状態にある場合は停止状態を継続する。エンジン1が停止されると、バッテリ8は充電されないため、バッテリ8の実SOCは増加しない。SOCminがUsable SOCの下限以上である場合、第1目標プロフィールは、推定SOCプロフィールを下方にシフトしたSOCプロフィールであるため、推定SOCプロフィールを算出した現在地t0において、実SOCは第1目標プロフィールよりも大きい。従って、エンジン1が停止され、バッテリ8の実SOCが増加しなくなると、実SOCは第1目標プロフィールに近づいていく。
【0084】
一方、SOCminがUsable SOCの下限より小さい場合、コントローラ9は、ステップS106において、最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点でエンジン1を運転する。具体的には、最良燃費運転点における回転数rfよりも大きい回転数r1でエンジン1を運転する。これにより、発電機2の発電電力は最良燃費運転点でエンジン1を運転した場合よりも大きくなるため、バッテリ8の実SOCは、最良燃費運転点でエンジン1を運転した場合(推定SOCプロフィール)よりも大きな上昇率で上昇する。SOCminがUsable SOCの下限より小さい場合、第1目標プロフィールは、推定SOCプロフィールを上方にシフトしたSOCプロフィールであるため、推定SOCプロフィールを算出した現在地t0において、実SOCは第1目標プロフィールよりも小さい。従って、最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点でエンジン1が運転され、推定SOCプロフィールよりも大きな上昇率でバッテリ8の実SOCが上昇していくと、実SOCは第1目標プロフィールに近づいていく。なお、ステップS106における最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点は、前述の通り、当該運転点でエンジン1を運転した場合に、少なくとも、自車両10が登坂路開始地点tsに到達する前にバッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールに達するような出力の運転点である。
【0085】
ステップS105でエンジン1を停止、またはステップS106で最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点でエンジン1を運転すると、コントローラ9は、ステップS107において、バッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールと一致したか否か判断する。実SOCが第1目標プロフィールと一致している場合、コントローラ9は、ステップS108の処理を実行する。一方、一致していない場合、コントローラ9は、実SOCが第1目標プロフィールと一致するまで、ステップS105におけるエンジン1の停止、またはステップS106における最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点でのエンジン1の運転を継続する。
【0086】
バッテリ8の実SOCが第1目標プロフィールに一致すると、ステップS108において、コントローラ9は、運転点を最良燃費運転点に移行してエンジン1を運転する。具体的には、最良燃費運転点における回転数rfによりエンジン1を運転する。これにより、バッテリ8の実SOCは、第1目標プロフィールに従って推移する。最良燃費運転点によるエンジン1の運転により、自車両10が登坂路開始地点tsに到達するまでは、バッテリ8が事前充電される。一方、登坂路開始地点ts到達後、登坂路走行中は、バッテリ8の実SOCは減少していく。
【0087】
最良燃費運転点によるエンジン1の運転を開始すると、ステップS109において、コントローラ9は、自車両10が登坂路終了地点teに到達したか否かを判断する。登坂路終了地点teに到達したか否かは、自車両10の現在位置と経路情報とに基づき判断される。
【0088】
ステップS109において、自車両10が登坂路終了地点teに到達していない場合、コントローラ9は、自車両10が登坂路終了地点teに到達するまで最良燃費運転点におけるエンジン1の運転を継続する。
【0089】
一方、ステップS109において、自車両10が登坂路終了地点teに到達すると、コントローラ9は、登坂路走行制御を終了し、通常制御に移行する。
【0090】
図9は、主に、ΔSOCがΔUsable SOCより大きい場合、即ち、第3状況及び第4状況における登坂路走行制御を示している。
【0091】
ステップS102においてΔSOCがΔUsable SOCより大きい場合(
図8参照)、即ち、第3状況または第4状況に該当する場合、コントローラ9はS113の処理を実行する。
【0092】
ステップS113において、コントローラ9は、推定SOCプロフィールの最大値SOCmaxがUsable SOCの上限よりも大きいか否かを判断する。SOCmaxがUsable SOCの上限よりも大きい場合、即ち、第3状況に該当する場合、コントローラ9は、ステップS114~ステップS117の処理を実行する。
【0093】
ステップS114~S117は、第3状況における事前充電のステップである。
【0094】
ステップS114において、コントローラ9は、推定SOCプロフィールの最大値SOCmaxがUsable SOCの上限と一致するように、SOCmaxとUsable SOCの上限との差分だけ推定SOCプロフィールを下降(下方にシフト)させた第2目標プロフィールを算出する。
【0095】
第2目標プロフィールを算出すると、コントローラ9は、ステップS115において、エンジン1を停止する、またはすでに停止状態にある場合は停止状態を継続する。エンジン1が停止されると、バッテリ8は充電されないため、バッテリ8の実SOCは増加しない。第2目標プロフィールは、推定SOCプロフィールを下降(下方にシフト)させたSOCプロフィールであるため、推定SOCプロフィールを算出した現在地t0において、実SOCは第2目標プロフィールよりも大きい。従って、エンジン1が停止され、バッテリ8の実SOCが増加しなくなると、実SOCは第2目標プロフィールに近づいていく。
【0096】
次に、ステップS116において、コントローラ9は、バッテリ8の実SOCが、第2目標プロフィールに一致したか否かを判断する。実SOCが第2目標プロフィールと一致している場合、コントローラ9は、ステップS117の処理を実行する。一方、一致していない場合、コントローラ9は、実SOCが第2目標プロフィールと一致するまで、エンジン1の停止を継続する。
【0097】
バッテリ8の実SOCが第2目標プロフィールに一致すると、ステップS117において、コントローラ9は、最良燃費運転点でエンジン1の運転を開始する。具体的には、最良燃費運転点における回転数rfによりエンジン1を運転する。これにより、バッテリ8の実SOCは、第2目標プロフィールに従って推移する。最良燃費運転点によるエンジン1の運転により、実SOCが第2目標プロフィールに一致する時刻t1'から自車両10が登坂路開始地点に到達する時刻tsまでの間、バッテリ8が事前充電される。
【0098】
これに対し、ステップS113において、SOCmaxがUsable SOCの上限以下の場合、即ち、第4状況に該当する場合、コントローラ9は、ステップS118~ステップS119の処理を実行する。
【0099】
ステップS118~S119は、第4状況における事前充電のステップである。
【0100】
ステップS118において、コントローラ9は、第4目標プロフィール及び現在地t0から登坂路開始地点tsまでのエンジン1の目標運転点である事前走行中運転点を算出する。前述のとおり、第4目標プロフィールは、登坂路開始地点tsにおけるバッテリ8のSOC(SOCの最大値)がUsable SOCの上限と一致し(第4仮定)、且つ現在地t0からtsまでを走行する間におけるエンジン1の出力の大きさを一定である(第5仮定)とした場合のSOCプロフィールである。事前走行中運転点は、上記第4仮定及び第5仮定を満たすようなエンジン1の出力となる運転点である。
【0101】
第4目標プロフィール及び事前走行中運転点を算出すると、コントローラ9は、ステップS119において、運転点を事前走行中運転点に移行してエンジン1を運転する。前述のとおり、事前走行中運転点は、エンジン1の出力が、最良燃費運転点における出力以上の出力となる運転点である。具体的には、コントローラ9は、最良燃費運転点における回転数rf以上の回転数r3でエンジン1を運転し、運転点を事前走行中運転点に移行させる。事前走行中運転点によるエンジン1の運転により、登坂路走行制御開始地点t0から自車両10が登坂路開始地点tsに到達するまでの間、バッテリ8が事前充電される。
【0102】
なお、SOCmaxがUsable SOCの上限と一致する場合は、第4目標プロフィールと推定SOCプロフィールとが一致するため、最良燃費運転点が事前走行中運転点となり、時刻t0~tsにおいて、エンジン1を最良燃費運転点で運転して事前充電が行われる。
【0103】
ステップS117における最良燃費運転点でのエンジン1の運転によるバッテリ8の事前充電、またはステップS119における事前走行中運転点でのエンジン1の運転によるバッテリ8の事前充電がなされると、コントローラ9は、ステップS120の処理を実行する。
【0104】
ステップS120において、コントローラ9は、自車両10が登坂路開始地点tsに到達したか否かを判断する。登坂路開始地点tsは、例えば経路情報に基づき道路勾配が所定の値以上となる地点に設定され、登坂路開始地点tsに到達したか否かは、自車両10の現在位置と経路情報とに基づき、自車両10が当該地点に到達したか否かで判断される。自車両10が登坂路開始地点tsに到達した場合、コントローラ9は、ステップS121の処理を実行する。一方、登坂路開始地点tsに到達していない場合、コントローラ9は、到達するまで、ステップS117またはステップS119における事前充電を継続する。これにより、自車両10が登坂路開始地点tsに到達した際には、バッテリ8の実SOCがUsable SOCの上限に一致する。
【0105】
自車両10が登坂路開始地点tsに到達すると、コントローラ9は、ステップS121において、第3目標プロフィールと、登坂路走行中におけるエンジン1の目標運転点である登坂路走行中運転点とを算出する。前述のとおり、第3目標プロフィールは、登坂路開始地点ts及び登坂路終了地点teにおけるバッテリ8のSOCがそれぞれUsable SOCの上限及び下限と一致し(第1、第2仮定)、且つ登坂路走行中、エンジン1の出力の大きさは一定である(第3仮定)とした場合のSOCプロフィールである。登坂路走行中運転点は、上記第1~第3仮定を満たすようなエンジン1の出力となる運転点である。
【0106】
第3目標プロフィール及び登坂路走行中運転点を算出すると、コントローラ9は、ステップS122において、運転点を登坂路走行中運転点に移行してエンジン1を運転する。前述のとおり、登坂路走行中運転点は、エンジン1の出力が、最良燃費運転点における出力より大きい出力となる運転点である。具体的には、コントローラ9は、最良燃費運転点における回転数rfより大きい回転数r2でエンジン1を運転し、運転点を登坂路走行中運転点に移行させる。このように、最良燃費運転点よりも出力が大きい登坂路走行中運転点でエンジン1を運転するため、登坂路走行中におけるバッテリ8のSOCの減少度合いが小さくなる。これにより、実SOCはUsable SOCの範囲を超えない。
【0107】
ステップS122において、運転点を登坂路走行中運転点に移行してエンジン1を運転した後、ステップS123において、コントローラ9は、自車両10が登坂路終了地点teに到達したか否かを判断する。ステップS109と同様に、登坂路終了地点teに到達したか否かは、自車両10の現在位置と経路情報とに基づき判断される。
【0108】
ステップS123において、自車両10が登坂路終了地点teに到達していない場合、コントローラ9は、自車両10が登坂路終了地点teに到達するまで登坂路走行中運転点によるエンジン1の運転を継続する。
【0109】
一方、ステップS123において、自車両10が登坂路終了地点teに到達すると、コントローラ9は、登坂路走行制御を終了し、通常制御に移行する。
【0110】
上記した第1実施形態に係るハイブリッド車両10の制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0111】
ハイブリッド車両10の制御方法は、 経路情報に基づき、現在地から目的地までエンジン1を最良燃費運転点で運転した場合におけるバッテリ8のSOCの推移である推定SOCプロフィールを算出する。また、登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOCmaxと最小値SOCminの差であるΔSOC(第1差分)が、バッテリ8を使用可能なSOCの範囲であるUsable SOC(使用可能SOC)の上限と下限の差であるΔUsable SOC(第2差分)以下の場合(第1、第2状況)、以下の通り、エンジン1を制御する。即ち、まず、推定SOCプロフィールの最小値SOCminとUsable SOC(使用可能SOC)の下限が一致するように推定SOCプロフィールをシフト(上昇または下降)させた第1目標プロフィールを算出する。そして、バッテリ8のSOCが第1目標プロフィールに一致するようにエンジン1の運転点またはエンジン1の運転頻度を制御し、一致した後は、エンジン1を最良燃費運転点で運転する。このように、使用可能SOCの範囲を超えないように推定SOCプロフィールを補正した第1目標プロフィールに基づいてエンジン1の運転を制御する。従って、バッテリ8のSOCをUsable SOC(使用可能SOC)の範囲内に保ちつつ、エンジン1を最良燃費運転点で運転できる区間を最大化することができる。即ち、バッテリ8の劣化を抑制しつつ、燃費を最良化することができる。
【0112】
また、登坂路におけるΔSOC(第1差分)がΔUsable SOC(第2差分)より大きい場合、自車両10が登坂路開始地点tsに到達する前において、以下の通りエンジン1を制御して事前充電を行う。即ち、登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOCmaxがUsable SOC(使用可能SOC)の上限より大きい場合は、所定時間後から自車両10が登坂路開始地点tsに到達するまでにおいてエンジン1を最良燃費運転点で運転する。このように所定時間経過後からエンジン1を運転するため、エンジン1の運転頻度を少なくすることができ、燃費が向上する。一方、登坂路における推定SOCプロフィールの最大値SOCmaxがUsable SOC(使用可能SOC)の上限以下の場合は、自車両10が登坂路開始地点tsに到達する前において、エンジン1を最良燃費運転点で運転した場合の発電電力以上の発電電力となる運転点でエンジン1を運転して事前充電を行う。これにより、登坂路開始地点tsに到達した際のバッテリ8の実SOCが推定SOCプロフィールよりも大きくなる。従って、登坂路走行中に使用可能なバッテリ8の電力が大きくなるため、登坂路走行中におけるエンジン1の出力を抑制することができ、エンジン1の燃料消費を抑制することができる。
【0113】
ハイブリッド車両10の制御方法は、自車両10が登坂路終了地点teに到達した後は、登坂路走行制御を終了し、駆動モータ3の要求電力とバッテリ8のSOCに基づき発電機2の発電電力を制御する通常制御に移行する。登坂路走行制御が実行される登坂路走行中は、バッテリ8のSOCがUsable SOC(使用可能SOC)の下限を下回らないように通常制御中よりも出力の大きい運転点でエンジン1を運転する。一方、自車両10が登坂路終了地点teに到達した後は、通常制御に移行し、駆動モータ3の要求電力とバッテリ8のSOCに基づき、エンジン1の運転が不要な場合はエンジン1が停止される。即ち、登坂路終了地点te到達時に通常運転に移行することで、バッテリ8のSOCがUsable SOC(使用可能SOC)の下限を下回らない最も早いタイミングでエンジン1を停止することが可能となる。これにより、エンジン1の運転頻度を少なくすることができ、燃費が向上する。
【0114】
ハイブリッド車両10の制御方法は、登坂路におけるΔSOC(第1差分)が、ΔUsable SOC(第2差分)より大きく、且つ推定SOCプロフィールの最大値SOCmaxがUsable SOC(使用可能SOC)の上限より大きい場合(第3状況)、エンジン1を以下の通り制御する。まず、自車両10が登坂路開始地点tsに到達するまでは、登坂路開始地点tsにおける推定SOCプロフィールの値がUsable SOC(使用可能SOC)の上限となるように推定SOCプロフィールをシフト(下降)させた第2目標プロフィールに基づきエンジン1を制御する。即ち、エンジン1の運転頻度を制御することで、バッテリ8のSOCが第2目標プロフィールに一致するように発電電力を制御し、バッテリ8のSOCが第2目標プロフィールに一致した後は、エンジン1を最良燃費運転点で運転して事前充電を行う。これにより、自車両10が登坂路開始地点tsに到達した際、バッテリ8のSOCはUsable SOC(使用可能SOC)の上限となる。一方、自車両10が登坂路走行中は、登坂路開始地点ts及び登坂路終了地点teにおけるバッテリ8のSOCがそれぞれUsable SOC(使用可能SOC)の上限及び下限と一致し、且つ登坂路走行中、エンジン1の出力の大きさは一定であるとした場合のSOCプロフィールである第3目標プロフィールに基づきエンジン1を制御する。即ち、登坂路走行中は、バッテリ8の実SOCが第3目標プロフィールに従って推移するようにエンジン1の運転点を制御する。これにより、登坂路開始地点ts及び登坂路終了地点teにおけるバッテリ8の実SOCがそれぞれUsable SOC(使用可能SOC)の上限及び下限と一致する。即ち、登坂路走行中、Usable SOC(使用可能SOC)の範囲内においてバッテリ8の電力が最大限使用される。従って、登坂路走行中におけるエンジン1の出力が最小化され、燃料消費を最小化することができる。即ち、バッテリ8の劣化を抑制しつつ、燃費を最良化することができる。
【0115】
また、登坂路走行中、第3目標プロフィールに基づきエンジン1の出力を一定に制御するため、登坂路走行中において、エンジン1の回転数の変動がなく、乗員等にとってエンジン音が気になりにくくなる。
【0116】
また、自車両10が登坂路開始地点tsに到達するまでにおいて、バッテリ8の実SOCが第2目標プロフィールに一致した時点から事前充電を開始するため、事前充電におけるエンジン1の出力を最小化でき、燃料消費を最小化することができる。
【0117】
また、事前充電開始後は、登坂路開始地点tsに到達するまでエンジン1を最良燃費運転点で運転するため、エンジン1の回転数の変動がなく、乗員等にとってエンジン音が気になりにくくなる。
【0118】
ハイブリッド車両10の制御方法は、登坂路におけるΔSOC(第1差分)が、ΔUsable SOC(第2差分)より大きく、且つ推定SOCプロフィールの最大値SOCmaxがUsable SOC(使用可能SOC)の上限以下の場合(第4状況)、エンジン1を以下の通り制御する。まず、自車両10が登坂路開始地点tsに到達するまでは、登坂路開始地点tsにおけるバッテリ8のSOCがUsable SOC(使用可能SOC)の上限と一致し、且つ登坂路開始地点tsに到達するまでエンジン1の出力の大きさは一定であるとした場合のSOCプロフィールである第4目標プロフィールに基づきエンジン1を制御する。即ち、現在地t0から登坂路開始地点tsまでを走行する間は、バッテリ8の実SOCが第4目標プロフィールに従って推移するように、エンジン1の運転点を最良燃費運転点よりも出力の大きい事前走行中運転点に制御して事前充電を行う。これにより、自車両10が登坂路開始地点tsに到達した際、バッテリ8の実SOCはUsable SOC(使用可能SOC)の上限となる。一方、自車両10が登坂路走行中は、登坂路開始地点ts及び登坂路終了地点teにおけるバッテリ8のSOCがそれぞれUsable SOC(使用可能SOC)の上限及び下限となる第3目標プロフィールに基づきエンジン1を制御する。即ち、バッテリ8の実SOCが、第3目標プロフィールに従って推移するように、エンジン1の運転点を制御する。これにより、登坂路開始地点ts及び登坂路終了地点teにおけるバッテリ8の実SOCがそれぞれUsable SOC(使用可能SOC)の上限及び下限と一致する。即ち、Usable SOC(使用可能SOC)の範囲内においてバッテリ8の電力が最大限使用される。従って、第4状況においても、登坂路走行中におけるエンジン1の出力が最小化され、燃料消費を最小化することができる。即ち、バッテリ8の劣化を抑制しつつ、燃費を最良化することができる。
【0119】
また、現在地t0から登坂路開始地点tsまでを走行する間、及び登坂路走行中において、それぞれ第4及び第3目標プロフィールに従ってエンジン1の出力を一定に制御するため、登坂路到達前及び登坂路走行中のそれぞれにおいてエンジン1のエンジン1の回転数の変動がない。従って、乗員等にとってエンジン音が気になりにくくなる。
【0120】
なお、ΔSOCがΔUsable SOCより大きく、且つSOCmaxがUsable SOCの上限よりも大きい場合(第3状況)、本実施形態のようにバッテリ8の実SOCが第2目標プロフィールに一致する時刻t1'から事前充電を行うことが好ましいが、必ずしもこれに限られない。即ち、第3状況では、所定時間後からエンジン1を燃費運転点で運転して事前充電を開始するが、ここでの所定時間は登坂路走行制御開始時刻t0からバッテリ8の実SOCが第2目標プロフィールに一致する時刻t1'までに限られない。例えば、時刻t1'よりも後に事前充電を開始してもよい。この場合、登坂路開始地点tsにおいて、実SOCはUsable SOCの上限よりも小さい値となるため、登坂路走行中は、第3目標プロフィールに基づく登坂路走行中運転点よりも出力の大きい運転点でエンジン1を運転することが好ましい。
【0121】
また、ΔSOCがΔUsable SOCより大きく、且つSOCmaxがUsable SOCの上限以下の場合(第4状況)、本実施形態のようにエンジン1の運転点を第4目標プロフィールに基づく事前走行中運転点に制御して事前充電を行うことが好ましいが、必ずしもこれに限られない。即ち、第4状況における事前充電は、最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点であれば、事前走行中運転点以外の運転点でエンジン1を運転して行ってもよい。例えば、事前走行中運転点よりは出力が小さいが、最良燃費運転点よりも出力の大きい運転点でエンジン1を運転して事前充電を行ってもよい。この場合、登坂路開始地点tsにおいて、実SOCはUsable SOCの上限よりも小さい値となるため、登坂路走行中は、第3目標プロフィールに基づく登坂路走行中運転点よりも出力の大きい運転点でエンジン1を運転することが好ましい。
【0122】
また、本実施形態では、第1状況及び第3状況における自車両10が登坂路開始地点tsに到達する前において、バッテリ8の実SOCをそれぞれ第1、第2目標プロフィールに一致させるためにエンジン1を停止しているが、必ずしもこれに限られない。例えば、エンジン1の運転点を最良燃費運転点よりも出力の小さい運転点に制御して、登坂路開始地点tsに到達する前にバッテリ8の実SOCを第1または第2目標プロフィールに一致させてもよい。即ち、エンジン1の運転頻度の制御だけではなく、運転点を制御することでバッテリ8の実SOCを第1または第2目標プロフィールに一致させてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、エンジン1の回転数を制御することでエンジン1の出力を制御しているが、回転数だけではなく、エンジン1のトルクを制御することでエンジン1の出力を制御してもよい。
【0124】
また、Usable SOCの範囲は、本実施形態のようにバッテリ8の劣化速度が所定の速度を超えない範囲、所定のバッテリ充放電性能を満足する範囲及びSOC推定誤差等のマージンに基づいて決定されることが好ましいが、必ずしもこれらすべてに基づかなくてもよい。例えば、バッテリ8の劣化速度が所定の速度を超えない範囲のみに基づいてUsable SOCの範囲を決定してもよい。
【0125】
また、第1状況において、SOCmax及びSOCminのいずれもがUsable SOCの範囲内にある場合にも、本実施形態のようにSOCminをUsable SOCの下限に一致させた第1目標プロフィールに基づき、エンジン1が制御することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。即ち、推定SOCプロフィールがUsable SOCの範囲内にある場合は、推定SOCプロフィールに基づき、登坂路走行制御開始地点t0から登坂路終了地点teまで、最良燃費運転点でエンジン1を運転してもよい。
【0126】
(第2実施形態)
図10及び
図11を参照して、第2実施形態のハイブリッド車両10の制御方法を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0127】
本実施形態では、第4状況において事前充電を行う際のエンジン1の運転点が第1実施形態と異なる。
【0128】
図10は、第2実施形態によるハイブリッド車両の制御方法を説明するタイムチャートであり、ΔSOCがΔUsable SOCより大きく、且つ推定SOCプロフィールの最小値SOC
minがUsable SOCの下限より小さい場合(第4状況)における登坂路走行制御を示している。
【0129】
図10に示すように、登坂路走行中運転点でエンジン1を運転した場合のエンジン1の回転数r
2は、事前走行中運転点でエンジン1を運転した場合のエンジン1の回転数r
3より大きい。即ち、登坂路走行中運転点で運転した場合の方が事前走行中運転点で運転した場合よりも、エンジン1の出力が大きい。このような場合、本実施形態では、登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1を運転して事前充電を行う。
【0130】
登坂路走行制御開始地点t
0から登坂路開始地点t
sの間において、事前走行中運転点でエンジン1を運転した場合、登坂路開始地点t
sにおいてバッテリ8のSOCはUsable SOCの上限となる。従って、登坂路走行制御開始地点t
0から事前走行中運転点よりも出力の大きい登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1を運転すると、登坂路開始地点t
sにおいてバッテリ8のSOCはUsable SOCの上限を超えてしまう。そこで、本実施形態では、
図10に示すように、登坂路走行制御開始地点t
0においてはエンジン1を停止する。
【0131】
また、
図10に示すように、登坂路開始地点t
sまでエンジン1を登坂路走行中運転点で運転した場合に、登坂路開始地点t
sにおけるバッテリ8のSOCがUsable SOCの上限となるようなタイミングt
2において、登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1の運転が開始される。即ち、時刻t
2において事前充電が開始される。時刻t
2において登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1の運転が開始された後、エンジン1は時刻t
2から自車両10が登坂路開始地点に到達する時刻t
sまで当該運転点で運転され、バッテリ8は事前充電される。これにより、自車両10が登坂路開始地点t
sに到達した際に、バッテリ8のSOCはUsable SOCの上限となる。また、登坂路走行中(t
s~t
e)においても、エンジン1は登坂路走行中運転点で運転される。即ち、自車両10が事前充電開始地点t
2から登坂路終了地点t
eに到達するまで、エンジン1は同一の運転点で運転される。ここで登坂路走行中運転点は、登坂路開始地点t
s及び登坂路終了地点t
eにおけるバッテリ8のSOCがそれぞれUsable SOCの上限及び下限と一致し、且つ登坂路走行中、エンジン1の出力の大きさは一定であるとした場合における当該出力の運転点である。従って、登坂路開始地点t
s及び登坂路終了地点t
eにおけるバッテリ8のSOCは、それぞれUsable SOCの上限及び下限となる。
【0132】
このように、本実施形態では、第4状況において、登坂路走行中運転点でエンジン1を運転した場合の出力が、事前走行中運転点で運転した場合の出力よりも大きい場合、登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1を運転して事前充電を行う。また、事前充電は、登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1を継続運転した場合に登坂路開始地点tsにおけるバッテリ8のSOCとUsable SOCの上限とが一致するようなタイミングt2で開始される。そして、エンジン1は、自車両10が、事前充電開始される時刻t2における自車両10の到達地点(以下、事前充電開始地点t2とする)から登坂路終了地点teに到達するまで同一の運転点で運転される。このように、事前充電開始地点t2から登坂路走行中にかけて、エンジン1は同一の運転点で運転されるため、エンジン1の回転数の変動がなく、乗員等にとってエンジン音が気になりにくくなる。また、登坂路走行制御開始地点t0から事前充電開始地点t2までの間、エンジン1を停止するため、エンジン1の運転頻度が減少し、燃費が向上するとともに、エンジン1の運転による音振が抑制される。
【0133】
なお、第1~第3状況においては、本実施形態でも第1実施形態と同様の制御を行う。また、登坂路走行中運転点でエンジン1を運転した場合の出力が、事前走行中運転点で運転した場合の出力以下の場合には、第4状況においても、第1実施形態と同様の制御を行う。
【0134】
図11は、第2実施形態による登坂路走行制御を示すフローチャートである。なお、ステップS101~S109(第1~第2状況)における制御は、第1実施形態における
図8と同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0135】
ステップS102(
図8を参照)において、ΔSOCがΔUsable SOCより大きい場合、即ち、第3状況または第4状況に該当する場合、コントローラ9は、S113の処理を実行する。
【0136】
ステップS113において、コントローラ9は、推定SOCプロフィールの最大値SOCmaxがUsable SOCの上限よりも大きいか否かを判断する。SOCmaxがUsable SOCの上限よりも大きい場合、即ち、第3状況に該当する場合、コントローラ9は、ステップS114~S117及びステップS120~S123の処理を実行する。
【0137】
第3状況におけるフローであるステップS114~S117及びステップS120~S123は、第1実施形態と同様の制御が実行されるため、説明を省略する。
【0138】
一方、ステップS113において、SOCmaxがUsable SOCの上限以下の場合、即ち、第4状況に該当する場合、コントローラ9は、ステップS214の処理を実行する。
【0139】
ステップS214において、コントローラ9は、第4目標プロフィール及び事前走行中運転点を算出する。前述のとおり、第4目標プロフィールは、登坂路開始地点tsにおけるバッテリ8のSOC(SOCの最大値)がUsable SOCの上限と一致し(第4仮定)、且つ現在地t0からtsまでを走行する間におけるエンジン1の出力の大きさを一定である(第5仮定)とした場合のSOCプロフィールである。事前走行中運転点は、上記第4仮定及び第5仮定を満たすようなエンジン1の出力となる運転点である。
【0140】
次に、コントローラ9は、ステップS215において、第3目標プロフィール及び登坂路走行中運転点を算出する。前述のとおり、第3目標プロフィールは、登坂路開始地点ts及び登坂路終了地点teにおけるバッテリ8のSOCがそれぞれUsable SOCの上限及び下限と一致し(第1、第2仮定)、且つ登坂路走行中、エンジン1の出力の大きさは一定である(第3仮定)とした場合のSOCプロフィールである。登坂路走行中運転点は、上記第1~第3仮定を満たすようなエンジン1の出力となる運転点である。
【0141】
ステップS214において第4目標プロフィール及び事前走行中運転点を、ステップS215において第3目標プロフィール及び登坂路走行中運転点を算出すると、コントローラ9は、ステップS216の処理を実行する。
【0142】
ステップS216において、コントローラ9は、登坂路走行中運転点でエンジン1を運転した場合の出力が事前走行中運転点でエンジン1を運転した場合の出力以上であるか否かを判断する。本実施形態では、エンジン1の回転数を変えて運転点を移行するため、登坂路走行中運転点におけるエンジン1の回転数r2が、事前走行中運転点におけるエンジン1の回転数r3以上であるか否かで出力の大小を判断する。登坂路走行中運転点におけるエンジン1の回転数r2が、事前走行中運転点におけるエンジン1の回転数r3以上である場合、コントローラ9は、ステップS217の処理を実行する。一方、エンジン1の回転数r2が、事前走行中運転点におけるエンジン1の回転数r3より小さい場合、コントローラ9はステップS220の処理を実行する。
【0143】
なお、エンジン1の運転点を移行する際に、エンジン1のトルクを変える場合は、ステップS216において、エンジン1の回転数ではなく、トルクと回転数で決まるエンジン1の出力の大小を比較する。即ち、登坂路走行中運転点におけるエンジン1の出力が事前走行中運転点におけるエンジン1の出力以上であるか否かを判断する。
【0144】
登坂路走行中運転点におけるエンジン1の出力が事前走行中運転点におけるエンジン1の出力以上である場合、コントローラ9はステップS217において、エンジン1を停止する。
【0145】
エンジン1を停止すると、ステップS218において、コントローラ9は、登坂路開始地点tsまでエンジン1を登坂路走行中運転点で運転した場合に、登坂路開始地点tsにおけるバッテリ8のSOCがUsable SOCの上限となるような事前充電の開始タイミングt2を算出する。
【0146】
事前充電の開始タイミングt2を算出すると、コントローラ9は、ステップS219において、自車両10が、事前充電開始地点t2に到達したか否かを判断する。自車両10が事前充電開始地点t2に到達した場合、コントローラ9は、ステップS122の処理を実行する。一方、自車両10が事前充電開始地点t2に到達していない場合、コントローラ9は、自車両10がt2に到達するまでエンジン1の停止状態を継続する。
【0147】
ステップS219において、自車両10が事前充電開始地点t2に到達した場合、ステップS122において、コントローラ9は、登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1の運転し、事前充電を開始する。これにより、自車両10が登坂路開始地点tsに到達する際のバッテリ8のSOCは、Usable SOCの上限となる。
【0148】
登坂路走行中運転点でエンジン1の運転を開始すると、コントローラ9は、ステップS123において、登坂路終了地点teに到達したか否かを判断する。登坂路終了地点teに到達した場合、コントローラ9は、登坂路走行制御を終了し、通常制御に移行する。
【0149】
一方、ステップS123において、登坂路終了地点teに到達していない場合、コントローラ9は、teに到達するまで、運転点を移行せずにエンジン1の運転を継続する。即ち、コントローラ9は、事前充電開始地点t2から登坂路開始地点tsまで登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1を運転して事前充電を行い、登坂路走行中は登坂路走行中運転点でエンジン1を運転する。このように、登坂路走行中運転点におけるエンジン1の出力が事前走行中運転点におけるエンジン1の出力以上である場合、事前充電開始地点t2から登坂路終了地点teまで、同一の運転点でエンジン1を運転する。
【0150】
これに対し、登坂路走行中運転点におけるエンジン1の出力が事前走行中運転点におけるエンジン1の出力より小さい場合、コントローラ9は、第1実施形態における第4状況と略同一の制御を行う。具体的には、以下のステップによる制御を実行する。
【0151】
ステップS216において、登坂路走行中運転点におけるエンジン1の回転数r2が、事前走行中運転点におけるエンジン1の回転数r3より小さい場合、コントローラ9は、ステップS220の処理を実行する。ステップS220において、コントローラ9は、事前走行中運転点でエンジン1を運転する。これにより、バッテリ8の実SOCは、第4目標プロフィールに従って推移する。
【0152】
次にステップS221において、コントローラ9は、自車両10が登坂路開始地点tsに到達したか否かを判断する。自車両10が登坂路開始地点tsに到達した場合、コントローラ9は、ステップS122の処理を実行する。一方、登坂路開始地点tsに到達していない場合、到達するまで、事前走行中運転点によるエンジン1の運転を継続する。これにより、登坂路開始地点tsに到達する際、バッテリ8の実SOCは、Usable SOCの上限となる。
【0153】
ステップS122における登坂路走行中のエンジン1の運転点の制御、及びステップS123における自車両10が登坂路終了地点teに到達したか否かの判断は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0154】
ステップS123において、自車両10が登坂路終了地点teに到達した場合、コントローラ9は、登坂路走行制御を終了し、通常制御に移行する。
【0155】
上記した第2実施形態に係るハイブリッド車両10の制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0156】
ハイブリッド車両10の制御方法は、登坂路走行中運転点におけるエンジン1の出力が事前走行中運転点におけるエンジン1の出力よりも大きい場合には、自車両10がエンジン1の運転を開始する地点から登坂路終了地点までを走行する間、登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1を運転する。即ち、事前充電におけるエンジン1の運転点と登坂路走行中におけるエンジン1の運転点が同一である。このように、事前充電開始地点t2から登坂路終了地点teに到達するまで同一の運転点でエンジン1が運転されるため、エンジン1の回転数の変動がなく、乗員等にとってエンジン音が気になりにくくなる。
【0157】
また、登坂路走行中運転点と同一の運転点でエンジン1を継続運転した場合に登坂路開始地点におけるバッテリ8のSOCとUsable SOC(使用可能SOC)の上限とが一致するようなタイミングt2で事前充電を開始する。これにより、登坂路走行制御開始地点t0から事前充電開始地点t2までの間、エンジン1が停止されるため、エンジン1の運転頻度が減少し、燃費が向上するとともに、エンジン1の運転による音振が抑制される。
【0158】
なお、いずれの実施形態においても、推定SOCプロフィールは第1条件、及び第2条件の下でエンジン1を最良燃費運転点で運転した場合のSOCプロフィールであるものとしたが、推定SOCプロフィールを算出する際の条件は必ずしもこれらに限られない。例えば、第1条件では、発電機2の発電電力はすべて駆動モータ3に供給されるものとしたが、発電機2の発電電力の一部を駆動モータ3に供給し、不足する電力分をバッテリ8から駆動モータ3に供給し、発電機2の発電電力の残りの一部をバッテリ8に充電するものとしてもよい。即ち、推定SOCプロフィールを算出する際の条件として、駆動モータ3に供給する電力を、どのような配分で発電機2及びバッテリ8から供給するかは任意に決定してよい。
【0159】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0160】
1 エンジン
2 発電機
3 駆動モータ
8 バッテリ
9 コントローラ
10 ハイブリッド車両(自車両)
100 制御装置