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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】摩擦具及び熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20240425BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B43L19/00 C
B43K29/02 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020198351
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086388
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】山口 雅也
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-156832(JP,A)
【文献】特開2014-117803(JP,A)
【文献】特開2013-22815(JP,A)
【文献】特開2002-287883(JP,A)
【文献】特開2012-96388(JP,A)
【文献】特開2012-192730(JP,A)
【文献】特開2014-128933(JP,A)
【文献】特開2014-193573(JP,A)
【文献】特開2015-36192(JP,A)
【文献】特開2018-8527(JP,A)
【文献】実開昭51-145232(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
B43K 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱により該筆跡を熱変色させる弾性材料よりなる摩擦部を本体の端部に備えた摩擦具であって、
前記本体の端部に、前記摩擦部の側面の片側を支持する支持壁部を備え、
前記摩擦部の側面の前記支持壁部と反対側が露出され、
前記支持壁部が前記摩擦部の側面の片側の一定範囲を包囲するように形成されることを特徴とする摩擦具。
【請求項2】
前記摩擦部の上端が前記支持壁部の上端より上方に突出される請求項1に記載の摩擦具。
【請求項3】
前記摩擦部の側面が横断面円形状を有し、前記摩擦部と前記支持壁部とが相対的に回転可能である請求項1または2に記載の摩擦具。
【請求項4】
前記支持壁部が固定または一体に形成された支持体を備え、前記支持体が前記本体の端部に回転可能に取り付けられる請求項に記載の摩擦具。
【請求項5】
前記支持壁部が前記本体の端部に一体に形成され、前記摩擦部が前記本体の端部に回転可能に取り付けられる請求項に記載の摩擦具。
【請求項6】
熱変色性インキが内蔵され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を有する軸筒を備えた熱変色性筆記具であって、前記軸筒が前記請求項1乃至5の何れかに記載の摩擦具であることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項7】
熱変色性インキが内蔵され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を有する軸筒と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップとを備えた熱変色性筆記具であって、前記キャップが前記請求項1乃至5の何れかに記載の摩擦具であることを特徴とする熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦具及び熱変色性筆記具に関する。詳細には、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱により該筆跡を熱変色させる弾性材料よりなる摩擦部を本体の端部に備えた摩擦具及び熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性インクの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を消去可能な弾性材料よりなる消去部材を備え、消去部材を筆記具本体の端部又はキャップの端部に取り付けた筆記具が知られている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-139135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の筆記具は、消去部材(本願の摩擦部に相当)の消去部が、筆記具本体の端部又はキャップの端部より軸方向外方に突出されている。そのため、消去部材を紙面に押し当て筆跡を擦過する際、消去部材の消去部が撓み変形によりぐらつき、安定した擦過が行うことができないおそれがある。特に、筆記具本体またはキャップを紙面に対して垂直状態から大きく傾けて消去部材を使用する場合、あるいは、消去部材の弾性材料の硬度が比較的低い場合、前記不具合が生じやすい。
【0005】
本願発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、摩擦時、摩擦部がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる摩擦具及び熱変色性筆記具を提供しようとするものである。
本発明で、「上」とは摩擦部側(図面で上方)を指し、「下」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明は、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱により該筆跡を熱変色させる弾性材料よりなる摩擦部を本体の端部に備えた摩擦具であって、前記本体の端部に、前記摩擦部の側面の片側を支持する支持壁部を備え、前記摩擦部の側面の前記支持壁部と反対側が露出されてなることを要件とする。
【0007】
前記第1の発明の摩擦具は、前記本体の端部に、前記摩擦部の側面の片側を支持する支持壁部を備え、前記摩擦部の側面の前記支持壁部と反対側が露出されてなること(即ち摩擦部外周面の反支持壁部側)が露出されてなることにより、摩擦時、支持壁部の径方向内側と摩擦部の径方向外側(即ち摩擦部の側面)とが接触し、摩擦部の撓み変形を抑え、摩擦部がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。特に、本体を紙面に対して垂直状態から大きく傾けて摩擦具を使用する場合であっても、あるいは、摩擦部を構成する弾性材料の硬度が比較的低い場合であっても、摩擦時、本体に対して摩擦部がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。尚、支持壁部は、本体の端部に別部材(例えば支持体)の取り付けにより設けられる構成、または本体の端部に一体に形成される構成の何れであってもよい。
【0008】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の摩擦具において、前記支持壁部が前記摩擦部の側面の片側の一定範囲を包囲するように形成されることを要件とする。
【0009】
前記第2の発明の摩擦具は、前記支持壁部が前記摩擦部の側面の片側の一定範囲を包囲するように形成されることにより、摩擦時、支持壁部の径方向内側を紙面に向けた状態で摩擦部を紙面に圧接させると、紙面と支持壁部との間で摩擦部が挟持され、支持壁部の径方向内側により摩擦部の外周面(則ち摩擦部の側面)が包囲状に支持され、摩擦部のぐらつきが確実に防止される。
【0010】
本願の第3の発明は、前記第1の発明または第2の発明の摩擦具において、前記摩擦部の上端が前記支持壁部の上端より上方に突出されることを要件とする。
【0011】
前記第3の発明の摩擦具は、前記摩擦部の上端が前記支持壁部の上端より上方に突出されることにより、摩擦部の上端(即ち摩擦部の頂部)から摩擦部の側面(即ち支持壁部と反対側に露出する摩擦部の側面)に至る広範囲を紙面に接触させることができ、紙面と摩擦部との接触が容易となる。
【0012】
本願の第4の発明は、前記第1の発明乃至第3の発明の何れかの摩擦具において、前記摩擦部の側面が横断面円形状を有し、前記摩擦部と前記支持壁部とが相対的に回転可能であることを要件とする。
【0013】
前記第4の発明の摩擦具は、前記摩擦部の側面が横断面円形状を有し、前記摩擦部と前記支持壁部とが相対的に回転可能であることにより、摩擦部の外面の広範囲を使用でき、摩擦部の局部的な摩耗を抑えることができる。
【0014】
本願の第5の発明は、前記第4の発明に摩擦具において、前記支持壁部が固定または一体に形成された支持体を備え、前記支持体が前記本体の端部に回転可能に取り付けられることを要件とする。
【0015】
前記第5の発明の摩擦具は、前記支持壁部が固定または一体に形成された支持体を備え、前記支持体が前記本体の端部に回転可能に取り付けられることにより、摩擦部の外面の広範囲を使用でき、摩擦部の局部的な摩耗を抑えることができるとともに、支持壁部を摩擦部に対して容易に回転させることができる。
【0016】
本願の第6の発明は、前記第4の発明に摩擦具において、前記支持壁部が前記本体の端部に一体に形成され、前記摩擦部が前記本体に回転可能に取り付けられることを要件とする。
【0017】
前記第6の発明の摩擦具は、前記支持壁部が前記本体の端部に一体に形成され、前記摩擦部が前記本体の端部に回転可能に取り付けられることにより、摩擦部の外面の広範囲を使用でき、摩擦部の局部的な摩耗を抑えることができるとともに、部品点数を抑え安価に提供できる。
【0018】
本願の第7の発明は、熱変色性インキが内蔵され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を有する軸筒を備えた熱変色性筆記具であって、前記軸筒が前記第11の発明乃至第6の発明の何れかの摩擦具であることを要件とする。
【0019】
前記第7の発明の熱変色性筆記具は、摩擦時、支持壁部の径方向内側と摩擦部の径方向外側とが接触し、摩擦部がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。
【0020】
本願の第8の発明は、熱変色性インキが内蔵され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を有する軸筒と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップとを備えた熱変色性筆記具であって、前記キャップが前記第1の発明乃至第6の発明の何れかに記載の摩擦具であることを要件とする。
【0021】
前記第8の発明の熱変色性筆記具は、摩擦時、支持壁部の径方向内側と摩擦部の径方向外側とが接触し、摩擦部がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の摩擦具は、摩擦時、摩擦部がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。
【0023】
本発明の熱変色性筆記具は、摩擦時、摩擦部がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態の要部正面図である。
図2図1の縦断面図である。
図3図1のA-A線断面図である。
図4図1の摩擦具の使用状態を示す図である。
図5図1の斜視図である。
図6】本発明の第2の実施の形態の要部縦断面図である。
図7図6の縦断面図である。
図8図6のB-B線断面図である。
図9図6の摩擦具の使用状態を示す図である。
図10図6の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施の形態>
【0026】
本発明の第1の実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11を図1乃至図5に示す。本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、本体2と、本体2の上端部に設けられる摩擦部4と、支持壁部3を有する支持体5とを備える。
【0027】
・本体
本体2は、筒状体(例えば円筒体)または柱状体(例えば円柱体)である。本体2を構成する材料としては、摩擦部4よりも硬質材料であり、例えば、合成樹脂(例:ポリカーボネイト、ポリプロピレン等)、金属、木材等が挙げられる。
【0028】
本体2の上端部の外周面に、小径筒部21と該小径筒部21より後方に一体に連設され且つ該小径筒部21より大きい外径を有する大径筒部22とを備える。小径筒部21と大径筒部22との間に上向き段部23が形成される。大径筒部22の外周面に被係合部22a(例えば環状凹部または環状凸部)が形成される。
【0029】
本体2の上端部(即ち小径筒部21の内側)に上方に開口する取付孔24が形成される。取付孔24の内面に内向突起24aが一体に形成される。内向突起24aは、環状突起または周状に分散された複数の突起からなる。
【0030】
本体2は、内部が空洞の筒状体の場合、熱変色性筆記具11に用いる軸筒、または熱変色性筆記具11に用いるキャップを構成することができる。熱変色性筆記具11に用いる軸筒は、内部に熱変色性インキが収容され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を備えた熱変色性筆記具における軸筒である。熱変色性筆記具11に用いるキャップは、内部に熱変色性インキが収容され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を備えた熱変色性筆記具における軸筒のペン先側に装着されるキャップである。
【0031】
・摩擦部
摩擦部4は、弾性材料から形成され、例えば、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。本実施の形態では、摩擦部4は、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー)の射出成形により得られる。
【0032】
摩擦部4は、大径部41と、該大径部41より後方に一体に連設され且つ該大径部41より小さい外径を有する小径部42とからなる。大径部41と小径部42との間には、段部43が形成される。小径部42の外面に外向突起42aが形成される。小径部42が本体2の上端部の取付孔24に挿入される。小径部42の外向突起42aが本体2の取付孔24の内面の内向突起24aと抜け止め係止される。本体2の上端より上方に大径部41が露出される。大径部41と小径部42との間の段部43に本体2の上端面が当接される。摩擦部4の大径部41の頂部41aは凸曲面状に形成される。摩擦部4の大径部41の側面41bは円筒状に形成される。摩擦部4(大径部41及び小径部42)は、横断面が円形状外面を有する。摩擦部4は、上端が閉鎖され且つ下端が開放された有底筒状に形成されているが、中実に形成されてもよい
【0033】
・支持体
支持体5は、軸方向に内孔が貫通された筒状に形成され、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト、ポリプロピレン、ポリアセタール等の摩擦部より硬質材料)の成形体により得られる。支持体5は、支持壁部3と、該支持壁部3より下方に一体に連設された筒状の上部51と、該上部51より下方に一体に連設された筒状の下部52とからなる。筒状の上部51の内面と筒状の下部52の内面との間には、下向き段部53が形成される。
【0034】
筒状の上部51の内面と、本体2の上端部の小径筒部21の外面とが回転方向に摺動可能に配置される。筒状の下部52の内面と、本体2の上端部の大径筒部22の外面とが回転方向に摺動可能に配置される。支持体5の内面の下向き段部53と、本体2の上端部の上向き段部23とが回転方向に摺動可能に当接される。それにより、支持体5の内周面と本体2の上端部の外周面とが回転可能に取り付けられる。
【0035】
また、筒状の下部52の内面には、係合部52a(例えば環状凸部または環状凹部)が形成される。支持体5内面の係合部52aが、本体2外面の被係合部22aと係合されることにより、支持体5と本体2とが回転可能に抜け止め係合される。
【0036】
・支持壁部
支持壁部3は、円筒体の側壁の一部を構成する板状片よりなる。支持壁部3の横断面形状は、内面が凹曲面、外面が凸曲面となる。横断面において、支持壁部3の内面の凹曲面と、摩擦部4の側面41bは、略一致する形状を有する。それにより、支持壁部3によって摩擦部4の側面41bの一定範囲が確実に包囲される。支持壁部3と反対側の摩擦部4の側面41bは露出される。
【0037】
支持壁部3により包囲される摩擦部4の周方向の領域は、摩擦部4の全周囲の20%~50%の範囲が好ましい。支持壁部3により包囲される摩擦部4の周方向の領域が、摩擦部4の全周囲の20%未満では、摩擦時の摩擦部4のぐらつきを確実に防止できないおそれがあり、一方、支持壁部3により包囲される摩擦部4の周方向の領域が、摩擦部4の全周囲の50%超過では、摩擦時に支持壁部3を紙面に接触させ、紙面を損傷させるおそれがある。
【0038】
支持壁部3は、これ以外に、摩擦部4の側面を包囲するよう設けられた複数の分散状突起であってもよい。支持壁部3の上端は、摩擦部4の上端(摩擦部4の頂部41a)より下方に位置され且つ本体2の上端より上方に位置される。また、支持体5の外面は、摩擦時の把持部となり、摩擦時の支持体5が本体2に対して回転することを防止できる。
【0039】
本発明で摩擦部4と本体2の上端部との取付手段は、これ以外にも、例えば、摩擦部4が本体2の上端部に2色成形により固着される構成、摩擦部4が本体2の上端部の取付孔24に、圧入、螺着、もしくは接着等により固着される構成、または本体2の上端部の外面(上方に突出する部分)が摩擦部4の内孔に、圧入、螺着、もしくは接着等により固着される構成等が挙げられる。また、摩擦部4と本体2とが同一の弾性材料により一体に形成される構成であってもよい。
【0040】
・摩擦時
図4に示すように、摩擦時、本体2を紙面Pに対して垂直状態から大きく傾けた状態(例えば紙面Pと本体2軸線とのなす角度が45度以下)で摩擦部4を紙面Pに圧接させると、支持壁部3の内面と摩擦部4の外面とが圧接される。それにより、摩擦部4の撓み変形(即ち、図3のX1・X2方向、及びY1・Y2方向の撓み変形)が抑止され、摩擦部4のぐらつきのない安定した摩擦作業が可能となる。
【0041】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱により該筆跡を熱変色させる弾性材料よりなる摩擦部4を本体2の端部に備えた摩擦具であって、前記本体2の端部に、前記摩擦部4の側面41bの片側を支持する支持壁部3を備え、前記摩擦部4の側面41bの前記支持壁部3と反対側が露出されてなることにより、摩擦時、支持壁部3の径方向内側と摩擦部4の径方向外側(摩擦部4の側面41b)とが接触し、摩擦部4の撓み変形を抑え、摩擦部4がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。特に、本体2を紙面Pに対して垂直状態から大きく傾けて摩擦具を使用する場合であっても、あるいは、摩擦部4を構成する弾性材料の硬度が比較的低い場合であっても、摩擦時、本体2に対して摩擦部4がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。
【0042】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、前記支持壁部3が前記摩擦部4の側面41bの片側の一定範囲を包囲するように形成されることにより、摩擦時、支持壁部3の径方向内側を紙面Pに向けた状態で摩擦部4を紙面Pに圧接させると、紙面Pと支持壁部3との間で摩擦部4が挟持され、支持壁部3の径方向内側により摩擦部4の外周面が包囲状に支持され、摩擦部4のぐらつきが確実に防止される。
【0043】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、前記摩擦部4の上端が前記支持壁部3の上端より上方に突出されることにより、摩擦部4の上端(摩擦部4の頂部41a)から摩擦部4の側面41bに至る広範囲を紙面Pに接触させることができ、紙面Pと摩擦部4との接触が容易となる。
【0044】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、前記摩擦部4の側面41bが横断面円形状を有し、前記摩擦部4と前記支持壁部3とが相対的に回転可能であることにより、摩擦部4の外面の広範囲を使用でき、摩擦部4の局部的な摩耗を抑えることができる。
【0045】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、前記支持壁部3が固定または一体に形成された支持体5を備え、前記支持体5が前記本体2の端部に回転可能に取り付けられることにより、摩擦部4の外面の広範囲を使用でき、摩擦部4の局部的な摩耗を抑えることができるとともに、支持壁部3を摩擦部4に対して容易に回転させることができる。
【0046】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11を図6乃至図10に示す。
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、支持壁部3を有する本体2と、本体2の上端部に設けられる摩擦部4とを備える。
【0047】
・本体
本体2は、筒状体(例えば円筒体)または柱状体(例えば円柱体)である。本体2を構成する材料としては、摩擦部4よりも硬質材料であり、例えば、合成樹脂(例:ポリカーボネイト、ポリプロピレン等)、金属、木材等が挙げられる。
【0048】
本体2の上端部に上方に開口する取付孔24が形成される。取付孔24の内面に内向突起24aが一体に形成される。内向突起24aは、環状突起または周状に分散された複数の突起からなる。
【0049】
本体2は、内部が空洞の筒状体の場合、熱変色性筆記具11に用いる軸筒、または熱変色性筆記具11に用いるキャップを構成することができる。熱変色性筆記具11に用いる軸筒は、内部に熱変色性インキが収容され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を備えた熱変色性筆記具における軸筒である。熱変色性筆記具11に用いるキャップは、内部に熱変色性インキが収容され且つ該熱変色性インキが吐出可能なペン先を備えた熱変色性筆記具における軸筒のペン先側に装着されるキャップである。
【0050】
・摩擦部
摩擦部4は、弾性材料から形成され、例えば、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。本実施の形態では、摩擦部4は、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー)の射出成形により得られる。
【0051】
摩擦部4は、大径部41と、該大径部41より後方に一体に連設され且つ該大径部41より小さい外径を有する小径部42とからなる。大径部41と小径部42との間には、段部43が形成される。小径部42の外面に外向突起42aが形成される。小径部42が本体2の上端部の取付孔24に挿入される。小径部42の外向突起42aが本体2の取付孔24の内面の内向突起24aと抜け止め係止される。本体2の取付孔24に摩擦部4が回転可能に取り付けられる。本体2の上端より上方に大径部41が露出される。大径部41と小径部42との間の段部43に本体2の上端面が当接される。摩擦部4の大径部41の頂部41aは凸曲面状に形成される。摩擦部4の大径部41の側面41bは円筒状に形成される。摩擦部4(大径部41及び小径部42)は、横断面が円形状外面を有する。摩擦部4は、上端が閉鎖され且つ下端が開放された有底筒状に形成されているが、中実に形成されてもよい。
【0052】
・支持壁部
支持壁部3は本体2の上端の一体に形成される。支持壁部3は、円筒体の側壁の一部を構成する板状片よりなる。支持壁部3の横断面形状は、内面が凹曲面、外面が凸曲面となる。横断面において、支持壁部3の内面の凹曲面と、摩擦部4の側面41bは、略一致する形状を有する。それにより、支持壁部3によって摩擦部4の側面41bの一定範囲が確実に包囲される。支持壁部3と反対側の摩擦部4の側面41bは露出される。
【0053】
支持壁部3により包囲される摩擦部4の周方向の領域は、摩擦部4の全周囲の20%~50%の範囲が好ましい。支持壁部3により包囲される摩擦部4の周方向の領域が、摩擦部4の全周囲の20%未満では、摩擦時の摩擦部4のぐらつきを確実に防止できないおそれがあり、一方、支持壁部3により包囲される摩擦部4の周方向の領域が、摩擦部4の全周囲の50%超過では、摩擦時に支持壁部3を紙面に接触させ、紙面を損傷させるおそれがある。
【0054】
支持壁部3は、これ以外に、摩擦部4の側面41bの一定範囲を包囲するよう設けられた複数の分散状突起であってもよい。支持壁部3の上端は、摩擦部4の上端(摩擦部4の頂部41a)より下方に位置され且つ本体2の上端より上方に位置される。
【0055】
本発明で摩擦部4と本体2の上端部との取付手段は、摩擦部4と本体2とが回転可能であればよく、摩擦部4が本体2の上端部の取付孔24に、挿着もしくは螺着される構成、または本体2の上端部の外面(上方に突出する部分)が摩擦部4の内孔に、挿着もしくは螺着される構成等が挙げられる。
【0056】
・摩擦時
図9に示すように、摩擦時、本体2を紙面Pに対して垂直状態から大きく傾けた状態(例えば紙面Pと本体2軸線とのなす角度が45度以下)で摩擦部4を紙面Pに圧接させると、支持壁部3の内面と摩擦部4の外面とが圧接される。それにより、摩擦部4の撓み変形(即ち、図8のX1・X2方向、及びY1・Y2方向の撓み変形)が抑止され、摩擦部4のぐらつきのない安定した摩擦作業が可能となる。摩擦時、摩擦部4の大径部41の側面41bと支持壁部3の内面とが強く圧接されることにより、本体2に対する摩擦部4の回転も抑止される。
【0057】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱により該筆跡を熱変色させる弾性材料よりなる摩擦部4を本体2の端部に備えた摩擦具であって、前記本体2の端部に、前記摩擦部4の側面41bの片側を支持する支持壁部3を備え、前記摩擦部4の側面41bの前記支持壁部3と反対側が露出されてなることにより、摩擦時、支持壁部3の径方向内側と摩擦部4の径方向外側(摩擦部4の側面41b)とが接触し、摩擦部4の撓み変形を抑え、摩擦部4がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。特に、本体2を紙面Pに対して垂直状態から大きく傾けて摩擦具を使用する場合であっても、あるいは、摩擦部4を構成する弾性材料の硬度が比較的低い場合であっても、摩擦時、本体2に対して摩擦部4がぐらつくことを防止でき、安定した摩擦作業が可能となる。
【0058】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、前記支持壁部3が前記摩擦部4の側面41bの片側の一定範囲を包囲するように形成されることにより、摩擦時、支持壁部3の径方向内側を紙面Pに向けた状態で摩擦部4を紙面Pに圧接させると、紙面Pと支持壁部3との間で摩擦部4が挟持され、支持壁部3の径方向内側により摩擦部4の外周面が包囲状に支持され、摩擦部4のぐらつきが確実に防止される。
【0059】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、前記摩擦部4の上端が前記支持壁部3の上端より上方に突出されることにより、摩擦部4の上端(摩擦部4の頂部41a)から摩擦部4の側面41bに至る広範囲を紙面Pに接触させることができ、紙面Pと摩擦部4との接触が容易となる。
【0060】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、前記摩擦部4の側面41bが横断面円形状を有し、前記摩擦部4と前記支持壁部3とが相対的に回転可能であることにより、摩擦部4の外面の広範囲を使用でき、摩擦部4の局部的な摩耗を抑えることができる。
【0061】
本実施の形態の摩擦具1及び熱変色性筆記具11は、前記支持壁部3が前記本体2に一体に形成され、前記摩擦部4が前記本体2に回転可能に取り付けられることにより、摩擦部4の外面の広範囲を使用でき、摩擦部4の局部的な摩耗を抑えることができるとともに、部品点数を抑え安価に提供できる。
【符号の説明】
【0062】
1 摩擦具
11 熱変色性筆記具
2 本体(軸筒、キャップ)
21 小径筒部
22 大径筒部
22a 被係合部
23 上向き段部
24 取付孔
24a 内向突起
3 支持壁部
4 摩擦部
41 大径部
41a 頂部
41b 側面
42 小径部
42a 外向突起
43 段部
5 支持体
51 上部
52 下部
52a 係合部
53 下向き段部
P 紙面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10