(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】クリーンブース
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240425BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240425BHJP
B01L 1/04 20060101ALI20240425BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/007 B
B01L1/04
C12M1/00 K
(21)【出願番号】P 2020203419
(22)【出願日】2020-12-08
(62)【分割の表示】P 2020533305の分割
【原出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520141988
【氏名又は名称】上海▲楽▼孜睿泰生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RORZE REMED BIOTECHNOLOGY Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 204, Building 3, 2388 Chenhang Road, Minhang District, Shanghai, China
(73)【特許権者】
【識別番号】302033126
【氏名又は名称】ローツェライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】西村 典俊
(72)【発明者】
【氏名】今口 信弘
(72)【発明者】
【氏名】呉 復躍
(72)【発明者】
【氏名】曲 文波
(72)【発明者】
【氏名】山崎 幸登
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-234929(JP,A)
【文献】特開2011-231989(JP,A)
【文献】中国実用新案第206410261(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/003
F24F 7/007
B01L 1/04
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み立てられた状態で、
土台、柱および梁を構成するフレームと、
前記フレーム
間に設けられて
第1内部空間、第2内部空間および第3内部空間を形成する壁部と、を備え
たクリーンブースにおいて、
前記第1内部空間を成す前記壁部に設けられ、第1フィルタを介して前記
第1内部空間内に給気する第1ファンを有する第1ユニットと、
前記第1内部空間を成す前記壁部に設けられ、前記
第1内部空間内の空気を第2フィルタを介して前記
第1内部空間外に排気する第2ファンを有する第2ユニットと、
前記第1内部空間と前記第2内部空間とを隔てる前記壁部に設けられ、前記第2内部空間を通過する経路で前記第1内部空間に対する入退室可能にする第1ドアと、
前記第1内部空間と前記第3内部空間とを隔てる前記壁部に設けられ、前記第3内部空間を通過する経路で前記第1内部空間に対する入退室可能にする第2ドアと、を備え
、
前記第1ドア、前記第2ドアおよび前記第2ユニットは、前記第1内部空間の側方の互いに同じ側に位置する壁部に設けられている、クリーンブース。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーンブースにおいて、
前記第2ユニットは、前記第2ファンに対して指示を出すユニット制御部を備え、
前記ユニット制御部は、前記第1ファンによって給気される流量よりも前記第2ファンによって排気される流量の方が多くなるように、前記第2ファンに対して指示を出す、クリーンブース。
【請求項3】
請求項
1に記載のクリーンブースにおいて、
前記第1ユニットは、前記
第1内部空間の上方に位置する壁部に設けられており、
前記第2ユニットは、前記
第1内部空間の側方に位置する壁部に設けられている、クリーンブース。
【請求項4】
請求項1に記載のクリーンブースにおいて、
前記
第1内部空間、前記第2内部空間および前記第3内部空間のうちの一以上の床は、当該クリーンブースが設置された建屋の床であり、
当該建屋の床と対向する前記土台を構成するフレームに緩衝部材を設けた、クリーンブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立ておよび解体が可能な組立式のクリーンブースに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野、工業分野、理化学分野等では、空気の清浄度を確保するために、クリーンルームが用いられている。抵抗力が低下した患者等の治療や、医薬品、半導体等の製造の際には、汚染物の侵入を防ぐために、陽圧室のクリーンルームが用いられている。また、感染症の罹患者等の診療・治療や、病原体、遺伝子組換え体、放射性物質等の取り扱いの際には、危険物の漏洩を防ぐために、陰圧室のクリーンルームが用いられている。
【0003】
従来、このような空間を簡易的に実現する設備として、組立式のクリーンブースが知られている。組立式のクリーンブースは、本体の骨格を形成し、組立てられたた状態で内部空間を内包するフレームや、フレーム同士の間を閉塞し、内部空間と外部空間とを隔てるスクリーン等で構成される。組立式のクリーンブースは、使用時に組み立てられ、不使用時には解体されるため、軽量で簡易的な構造に設けられている。
【0004】
組立式のクリーンブースには、多くの場合、送風ファンが備えられる。送風の方式としては、内部空間に対して給気のみを行うワンパス方式が広く用いられている。ワンパス方式では、ブース外の空気を、防塵フィルタを介して内部空間に給気し、空気を内部空間中に一方向的に流して排気する。組立式のクリーンブースには、搬送・組み立て・解体の容易性が求められるため、排気時に防塵フィルタやファンを介さず、底部側からそのまま排気する陽圧型のワンパス方式が普及している。
【0005】
特許文献1には、吸気ファンと排気ファンの両方を設けた組立式のクリーンブースが記載されている。吸気ファンや排気ファンとしては、市販されている換気扇等を使用することができる、とされている(段落0065参照)。また、送風機のON/OFFを管理するだけで、室内を陽圧にも陰圧にも調整することができる、とされている(段落0071参照)。HEPAフィルタは、室内を陽圧にする場合に吸気側、室内を陰圧にする場合に排気側に設置される、とされている(段落0074参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
医療分野等の各種の分野において、空気の清浄度が要求される作業・行為を、外部の汚染を避けつつ、組立式のクリーンブース内で行いたい、という要求がある。従来、空気の清浄度が要求される作業・行為は、陽圧室で行われるのが一般的となっている。しかし、作業・行為を行う内部空間に、漏洩を避けるべき汚染物が潜在的に内在していたり、内部空間における作業・行為に伴って汚染物が生じたりするケースがある。
【0008】
このような汚染物は、クリーンブースが陽圧室である場合には、ブース外に向けて拡散し易いといえる。組立式のクリーンブースが、汚染物を外部に向けて漏洩し易い構造であると、設置場所や設置条件が制約されることになるため、組立式としての利点が損なわれることが課題となっている。
【0009】
例えば、感染症の罹患者等の診療・治療を行う場合、病原体の外部への漏洩を防止することが望まれるため、一般的には、陰圧室が有効である。その一方で、診療・治療に従事する医療関係者が、ブース内で感染する危険性もあるため、ブース内の空気の清浄度を確保することも望まれる。
【0010】
感染症の罹患者等の診療・治療を行う際には、病床数が不足することも想定されるため、組立式のクリーンブースを、医療施設の屋内等の適宜の場所に設置できるとよい。しかし、組立式のクリーンブースを設置する空間に、感染を避けるべき患者、医療関係者等がいることも想定される。
【0011】
特許文献1に記載された技術では、HEPAフィルタが、吸気側および排気側のいずれかに設置されるため、ブース内の空気の清浄度とブース外の汚染の抑制が両立しない点に問題がある。そのため、ブース内の空気の清浄度が確保されており、ブース外の汚染も抑制される組立式のクリーンブースが望まれる。
【0012】
そこで、本発明は、空気の清浄度が確保されており外部の汚染も抑制される空間を簡便に形成することができる組立式のクリーンブースを提供することを目的とする。
【0013】
前記課題を解決するために本発明に係るクリーンブースは、組み立てられた状態で、土台、柱および梁を構成するフレームと、前記フレーム間に設けられて第1内部空間、第2内部空間および第3内部空間を形成する壁部と、を備えたクリーンブースにおいて、前記第1内部空間を成す前記壁部に設けられ、第1フィルタを介して前記内部空間内に給気する第1ファンを有する第1ユニットと、前記第1内部空間を成す前記壁部に設けられ、前記第1内部空間内の空気を第2フィルタを介して前記内部空間外に排気する第2ファンを有する第2ユニットと、前記第1内部空間と前記第2内部空間とを隔てる前記壁部に設けられ、前記第2内部空間を通過する経路で前記第1内部空間に対する入退室可能にする第1ドアと、前記第1内部空間と前記第3内部空間とを隔てる前記壁部に設けられ、前記第3内部空間を通過する経路で前記第1内部空間に対する入退室可能にする第2ドアと、を備え、前記第1ドア、前記第2ドアおよび前記第2ユニットは、前記第1内部空間の側方の互いに同じ側に位置する壁部に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、空気の清浄度が確保されており外部の汚染も抑制される空間を簡便に形成することができる組立式のクリーンブースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクリーンブースの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るクリーンブースの外観を示す斜視図である。
【
図4】クリーンブースの下端の構造例を示す斜視断面である。
【
図5】クリーンブースの電源の構成例を示すブロック図である。
【
図6】ファンフィルタユニットのファンの回転速度とファンが形成する差圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るクリーンブースについて、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るクリーンブースの外観を示す斜視図である。
図1には、組立式のクリーンブースの一例が組み立てられた状態を、上方から俯瞰する視点で示している。
図1に示すように、クリーンブース100は、組み立てられた状態で、ブース本体の骨格を形成するフレーム10と、フレーム10に設けられて内部空間を形成する壁部20と、を備えている。
【0018】
クリーンブース100のブース本体は、複数のフレーム10や複数の壁部20の組み合わせによって構成されている。クリーンブース100は、ブース本体の内側に、外部空間から隔てられる内部空間を有している。
【0019】
図1には、組み立てられたクリーンブース100のブース本体に対して、ファンフィルタユニット(Fan Filter Unit:FFU)50,60が組み付けられた状態を示している。
【0020】
クリーンブース100は、外部空間から隔てられており、且つ、空気の清浄度が確保されている内部空間を、外部空間よりも圧力が低い陰圧室として提供するものである。クリーンブース100は、
図1に示すように、組み立てられた状態で使用される。クリーンブース100は、不使用時には、解体することが可能であり、解体された状態で保管することができる。
【0021】
クリーンブース100は、組み立てられた状態において、内部空間の圧力(室圧)が、後記するファンフィルタユニットによって、外部空間の圧力よりも低い陰圧に調整される。また、組み立てられた状態において、内部空間の空気の清浄度が、後記するファンフィルタユニットによって、外部空間よりも高い状態に調整される。すなわち、所定の大きさ以上の塵埃等の個数が外部空間よりも少ない陰圧室が形成される。
【0022】
クリーンブース100の内部空間は、空気の清浄度が要求される作業・行為に用いられる。空気の清浄度が要求される作業・行為としては、例えば、感染症の罹患者等の診療・治療、患者の診察・隔離、検診等が挙げられる。但し、内部空間で行う作業・行為は、医療分野の作業・行為に限定されるものではなく、医薬品、半導体等の製造をはじめとする工業分野の作業や、病原体、遺伝子組換え体、放射性物質等の取り扱いをはじめとする理化学分野の作業等であってもよい。
【0023】
図1において、クリーンブース100は、組み立てられた状態において、略立方体状の六面体を呈するように設けられている。但し、クリーンブース100のブース本体は、底面側が開口しており、天井部および側面部を有する一方で、底面部を有していない。ブース本体の底面側では、クリーンブース100が組み立てられた場所の床面、地面等が内部空間を隔てる。
【0024】
このように、組み立てられた場所の接地面を利用する構造によると、底面部を組み立てる必要がないため、ブース本体の組み立てを速やかに行うことができる。また、底面部を形成する部材が不要になるため、ブース本体を構成する部材の全体について、軽量化を図ることができる。
【0025】
図1において、クリーンブース100は、ブース本体の内側に、室圧や空気の清浄度が調整される内部空間として、一室を有している。クリーンブース100のブース本体は、複数のフレーム10が組み合わされて形成されており、主として、土台、柱および梁によって成り立っている。
【0026】
フレーム10は、それぞれ、直線的な柱状の部材として設けられることが好ましい。柱状の部材であると、クリーンブース100を組み立てる前の状態において、搬送が容易になる。また、ブース本体を構成する部材を保管するための空間について、省スペース化を図ることができる。
【0027】
フレーム10の材料としては、例えば、Al-Mg-Si合金等のアルミニウム合金、炭素鋼、ステンレス鋼、合成樹脂等が挙げられる。フレーム10の材料としては、アルミニウム合金が好ましい。アルミニウム合金によると、フレームを軽量に設けることができるため、ブース本体の組み立てや解体が容易になる。フレーム10の幅や厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、30~50mmとすることができる。
【0028】
図1において、土台のフレーム10としては、互いに平行に配置された2本の縦土台部材11aと、この縦土台部材11aに直交するように互いに平行に配置された横土台部材11bと、が備えられている。なお、
図1には、これらの部材のうち、ブース本体の前側と右側に位置する部材のみを示している。
【0029】
また、柱のフレーム10としては、土台の四隅に立設された4本の柱部材12aと、この柱部材12a同士の間に立設された8本の支柱部材12bと、が備えられている。なお、
図1には、これらの部材のうち、ブース本体の前側と右側に位置する部材のみを示している。
【0030】
また、梁のフレーム10としては、互いに平行に配置された2本の縦梁部材13aと、この縦梁部材13aに直交するように互いに平行に配置された2本の横梁部材13bと、縦梁部材13aの間に平行に架された2本の中間梁部材13cと、が備えられている。
【0031】
縦土台部材11aおよび横土台部材11bは、ブース本体の底面部の骨格を形成している。縦梁部材13aおよび横梁部材13bは、ブース本体の天井部の骨格を形成している。柱部材12aは、縦土台部材11aや、横土台部材11bや、縦梁部材13aや、横梁部材13bと共に、ブース本体の側面部の骨格を形成している。
【0032】
支柱部材12bは、ブース本体の側面部を略三等分する位置に配置されている。柱部材12aや支柱部材12bにより、縦梁部材13aや横梁部材13bが鉛直方向から支持されている。また、中間梁部材13cは、ブース本体の天井部を略三等分する位置に配置されている。縦梁部材13aや中間梁部材13cにより、横梁部材13b同士が水平方向から支持されている。このような構造によると、ブース本体の強度や剛性が高められる。
【0033】
図1に示すように、ブース本体の天井部には、ユニット支持部材15が備えられている。ユニット支持部材15としては、薄板状の受面が設けられた柱状の部材が2本組み込まれている。各ユニット支持部材15は、ブース本体の左側に位置する一方の縦梁部材13aと、この縦梁部材13aに隣接する中間梁部材13cとの間に、互いに平行に架された状態で固定されており、ブース本体の天井部の片側に偏在している。
【0034】
このユニット支持部材15は、給気用のファンフィルタユニット(第1ユニット)50を載置して固定するための部位となっている。ユニット支持部材15の受面には、密着性と気密性を確保するために、不図示のパッキンが取り付けられる。パッキンとしては、弾性を有し、気体透過性が低い合成樹脂材等が用いられる。
【0035】
クリーンブース100が組み立てられた状態において、ユニット支持部材15の上面には、給気用のファンフィルタユニット50が吐出側を下方に向けて固定される。ユニット支持部材15の間に形成される開口部は、ファンフィルタユニット50とパッキンによって気密に閉塞される。
【0036】
また、
図1に示すように、ブース本体の右側に位置する一つの側面部には、ユニット接続部材16が備えられている。ユニット接続部材16としては、薄板状の密着代が設けられた柱状の部材が備えられている。ユニット接続部材16は、ブース本体の側面部に配置された2本の支柱部材12b同士の間に、水平に架された状態で固定されており、ブース本体の側面部の下部側に偏在している。
【0037】
このユニット接続部材16は、排気用のファンフィルタユニット(第2ユニット)60を密着させて固定するための部位となっている。ユニット接続部材16の密着代には、密着性と気密性を確保するために、不図示のパッキンが取り付けられる。パッキンとしては、弾性を有し、気体透過性が低い合成樹脂材等が用いられる。
【0038】
クリーンブース100が組み立てられた状態において、ユニット接続部材16の外側には、ファンフィルタユニット60が吸込側を内側に向けて固定される。ユニット接続部材16に形成される開口部は、ファンフィルタユニット60とパッキンによって気密に閉塞される。
【0039】
なお、受面やパッキンは、ユニット支持部材15と同様に、縦梁部材13aや中間梁部材13cにも設けることができる。また、密着代やパッキンは、接続部材16と同様に、支柱部材12bや縦土台部材11aにも設けることができる。また、パッキンは、開口部の形状に合わせて、ファンフィルタユニット50,60側に固着させておくこともできる。なお、ファンフィルタユニット50,60は、クリーンブース100の正面から見たときに略対角上に配置されているので、クリーンブース100が転倒しにくい。
【0040】
これらの縦土台部材11a、横土台部材11b、柱部材12a、支柱部材12b、縦梁部材13a、横梁部材13b、中間梁部材13c、ユニット支持部材15、および、ユニット接続部材16は、クリーンブース100の設置時において、互いに組み立てられ、ボルト、ナット等で互いに固定される。また、ユニット支持部材15や、ユニット接続部材16には、ファンフィルタユニット50,60を固定するために、ボルトが羅合可能な固定部等を設けておくことができる。
【0041】
図1に示すように、ブース本体の側面部には、内部空間に対して入退出を可能にするために、開閉自在なドア14が備えられる。
図1において、ドア14は、ブース本体の前側の側面部において、2本の支柱部材12b同士の間に配置されている。ドア14は、支柱部材12b同士の間に形成される開口部を閉塞する幅に設けられている。
【0042】
ドア14は、例えば、アクリル樹脂等の合成樹脂材や、軽量な金属材等によって、パネル状等に設けることができる。ドア14は、外開きの開き戸として設けられる。陰圧で閉じ易い外開きの方式により、内部空間の密閉性を補うことができる。
【0043】
ドア14の取り付け方式は、例えば、差し込み式の蝶番を用いる方式とすることができる。軸側と孔側で構成される一対の蝶番を、ドア14と、ドア14に隣接する一方の支柱部材12bとに、それぞれ固定しておく。このような方式によると、ドア14の蝶番をフレーム10の蝶番に差し込むだけで、ドア14を組み付けることができる。また、組み付けられているドア14を持ち上げるだけで、ドア14を取り外すことができる。
【0044】
以上のとおり、クリーンブース100のブース本体は、主要な開口部として、ドア14が取り付けられる部位と、給気用のファンフィルタユニット50が取り付けられる部位と、排気用のファンフィルタユニット60が取り付けられる部位と、を有している。これらの開口部が、主要な通気経路となり、内部空間に対する給気や、内部空間からの排気が許容される。
【0045】
互いに組み立てられたフレーム10同士の間等には、これらの開口部と、ブース本体の底面側とを除いて、壁部20が設けられる。壁部20は、スクリーンによって形成される。ブース本体の開口部を除いた部位は、スクリーンで形成される壁部20によって、内部空間と外部空間との間における気密性が確保される。なお、これらの部位以外に、電気機器の配線や、通信回線の配線等のために、微小な開口部が形成される。但し、このような微小な開口部は、シール材によって閉塞される。シール材としては、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂で形成されたテープ等が用いられる。
【0046】
壁部20を形成するスクリーンは、可撓性を有するシート状であってもよいし、剛性を有するパネル状であってもよいが、シート状であることが好ましい。スクリーンの材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂を用いることができる。シート状のスクリーンの厚さは、例えば、0.3~2.0mmとすることができる。スクリーンは、透明、半透明、不透明等のように、適宜の光透過性に設けることができる。
【0047】
壁部20を形成するスクリーンは、フレーム10に対して着脱式とすることができる。加工繊維で形成された面ファスナを、スクリーンの一面の外縁部と、フレーム10の表面とに、それぞれ固着させておく。このような方式によると、フレーム10に対するスクリーンの貼り付けと引き剥がしが可能であり、不使用時には、フレーム10と壁部20を形成するスクリーンとを、解体された状態で搬送、保管等することができる。壁部20を形成するスクリーンが可撓性を有するシート状であれば、折り畳み状態や巻回状態で搬送、保管等することもできる。
【0048】
図1に示すように、クリーンブース100には、組み立てられた状態において、内部空間を形成する壁部20に、給気用のファンフィルタユニット(第1ユニット)50と、排気用のファンフィルタユニット(第2ユニット)60と、が備えられる。
【0049】
ファンフィルタユニット(FFU)50,60は、気体を吸気し、吸気した気体から塵埃等を除去して、清浄度が高められた気体(所定の大きさ以上の塵埃等の個数が低減された気体)を送風する装置である。ファンフィルタユニット50,60は、通過する気体から塵埃等を除去するフィルタ、給気または排気のために気体を送風するファン、ファンの回転速度を制御する制御装置等を備える。
【0050】
FFUのフィルタは、塵埃等の粒子を捕集するために、空気の流路や、流路に対して設けられて流線を変えるセパレータや、繊維等の濾材等によって構成される。フィルタとしては、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ、ULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタ等の防塵フィルタが用いられる。
【0051】
FFUのファンは、回転可能なインペラ等のファン本体や、ファン本体の回転運動を駆動するファンモータ等によって構成される。ファンとしては、例えば、プロペラファン等の軸流ファン等が用いられる。ファンモータとしては、直流モータ、誘導電動機等が用いられる。直流モータとしては、ブラシレス直流モータ、および、ブラシ付き直流モータのいずれを用いることもできる。
【0052】
給気用のファンフィルタユニット(第1ユニット)50は、内蔵しているフィルタ(第1フィルタ)を介して、ブース本体の内部空間内に給気するファン(第1ファン)を有する。ファンフィルタユニット50は、クリーンブース100の外部の空気を吸い込み、フィルタを通過した空気を、ブース本体の内部空間に吐出する。
【0053】
排気用のファンフィルタユニット(第2ユニット)60は、ブース本体の内部空間内の空気を、内蔵しているフィルタ(第2フィルタ)を介して、ブース本体の内部空間外に排気するファン(第2ファン)を有する。ファンフィルタユニット60は、ブース本体の内部空間の空気を吸い込み、フィルタを通過した空気を、クリーンブース100の外部に吐出する。
【0054】
クリーンブース100において、排気用のファンフィルタユニット60による排気風量は、給気用のファンフィルタユニット50による給気流量よりも大きくなるように制御される。このような制御によって、内部空間の圧力(室圧)が、外部空間の圧力よりも低い陰圧に調整される。内部空間の圧力値は、外部空間の圧力よりも低圧である限り、特に限定されるものではない。
【0055】
ファンの回転速度の好ましい一つの制御方式は、給気側のファンの回転速度および排気側のファンの回転速度の両方を一定速に制御する方式である。給気側および排気側のファンモータとしては、ブラシ付き直流モータ、誘導電動機等のいずれを用いることもできる。
【0056】
このような制御方式とする場合、給気用のファンフィルタユニット50および排気用のファンフィルタユニット60は、内部空間に要求される陰圧の大きさに応じて、ファンの回転速度が互いに異なる回転速度に段階的に変更できるように、送風量毎に回転速度を切り替える切替式に設けることが好ましい。給気側および排気側の各ファンの回転速度は、切り替えの段階毎に、予め設定しておくことができる。
【0057】
このような制御方式によると、給気側のファンの回転速度および排気側のファンの回転速度の両方を一定速に制御するため、内部空間に要求される陰圧の大きさに応じて、給気側および排気側の各ファンの回転速度を切り替えるだけで、特定の陰圧に調整することができる。また、内部空間の圧力が安定し易いため、内部空間が陽圧になる危険性を低減することができる。
【0058】
ファンの回転速度の好ましい別の制御方式は、給気側のファンの回転速度を一定速に制御し、排気側のファンの回転速度を可変速に制御する方式である。給気側のファンモータとしては、ブラシ付き直流モータ、誘導電動機等のいずれを用いることもできる。排気側のファンモータとしては、ブラシレス直流モータ、誘導電動機等のいずれを用いることもできる。
【0059】
このような制御方式とする場合、給気用のファンフィルタユニット50は、内部空間に要求される陰圧の大きさに応じて、ファンの回転速度が互いに異なる回転速度に段階的に変更できるように、送風量毎に回転速度を切り替える切替式に設けることが好ましい。一方、排気用のファンフィルタユニット60は、インバータによって可変速に制御する。排気側のファンの回転速度は、内部空間の室圧を目標値に制御するために、圧力センサ90による室圧の計測に基づいて、フィードバック制御することが好ましい。
【0060】
このような制御方式によると、給気側のファンの回転速度を一定速に制御し、排気側のファンの回転速度を可変速に制御するため、内部空間に形成される陰圧を目標値とするにあたり、排気側のファンの回転速度のみが可変速に制御されることになり、ハンチング現象の発生が防止される。一般に、給気側のファンと排気側のファンの両方を可変速とした場合には、ハンチング現象で周期的な変動を生じるため、室圧が安定し難くなる。しかしこのような制御方式であれば、内部空間に形成される陰圧を目標値に制御しつつ、内部空間が陽圧になる危険性も低減することができる。
【0061】
給気用のファンフィルタユニット50は、図示するように、ブース本体の天井部や、ブース本体の側面部の上部側に配置することが好ましい。一方、排気用のファンフィルタユニット60は、図示するように、ブース本体の側面部の下部側に配置することが好ましい。
【0062】
このような配置とすると、空気がブース本体内の上部側から下部側に向けて一方向的に流れる。そのため、塵埃、危険物、汚染物等が気流で舞い上がるのを抑制しつつ、室圧の調整や空気の清浄化を行うことができる。ブース本体は、底面側が開口している構造であるものの、空気がブース本体内の上部側から下部側に向けて一方向的に流れると、外部空間から内部空間への塵埃の侵入も抑制することができる。
【0063】
以上のクリーンブース100によると、組立式のブース本体に対して、フィルタおよびファンを備えた給気用のファンフィルタユニット50と、フィルタおよびファンを備えた排気用のファンフィルタユニット60が、容易に取り付けられる。給気側と排気側の両方でフィルタを介した送風が行われるため、ブース内の空気の清浄度が確保されるだけでなく、ブース外への汚染物の漏洩も防ぐことができる。また、給気側と排気側の両方にファンがあるため、これらのファンの制御と大きな差圧の形成によって、高精度な陰圧を安定的に維持することができる。また、組立式のブース本体は、搬送・組み立て・解体が容易である。よって、このようなクリーンブースによると、清浄度が確保されており、外部の汚染も抑制される空間を、簡便に形成することができる。
【0064】
次に、本発明に係るクリーンブースの別の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0065】
図2は、本発明の一実施形態に係るクリーンブースの外観を示す斜視図である。
図3Aは、
図2のクリーンブースの平断面図である。
図3Bは、
図2のクリーンブースの正面図である。
図3Cは、
図2のクリーンブースの側断面図である。
図2には、組立式のクリーンブースの一例が組み立てられた状態を、上方から俯瞰して示している。
図3Cは、
図3AにおけるI-I線断面図である。
【0066】
図2、
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示すように、クリーンブース200は、前記のクリーンブース100と同様に、組み立てられた状態で、ブース本体の骨格を形成するフレーム10と、フレーム10に設けられて内部空間を形成する壁部20と、を備えている。
【0067】
クリーンブース200のブース本体は、前記のクリーンブース100と同様に、複数のフレーム10や複数の壁部20の組み合わせによって構成されている。クリーンブース200は、ブース本体の内側に、外部空間から隔てられる内部空間を有している。
【0068】
図2、
図3A、
図3Bおよび
図3Cには、組み立てられたクリーンブース200のブース本体に対して、2基の給気用のファンフィルタユニット50a,50bと、2基の排気用のファンフィルタユニット60a,60bと、が組み付けられた状態を示している。
【0069】
クリーンブース200は、外部空間から隔てられており、且つ、空気の清浄度が確保されている内部空間を、外部空間よりも圧力が低い陰圧室として提供するものである。クリーンブース200は、
図2、
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示すように、組み立てられた状態で使用される。クリーンブース200は、不使用時には、解体することが可能であり、解体された状態で保管することができる。
【0070】
クリーンブース200は、前記のクリーンブース100と同様に、土台のフレーム10として複数の土台部材11や、柱のフレーム10として複数の柱部材12や、梁のフレーム10として複数の縦梁部材13を用いて形成されている。これらのフレーム10、壁部20等の基本的な構成は、前記のクリーンブース100と同様である。
【0071】
クリーンブース200は、前記のクリーンブース100と同様に、室圧や空気の清浄度が調整される内部空間として、主室210を有している。一方、クリーンブース200は、前記のクリーンブース100とは異なり、ブース本体の内側に、複数室を有している。クリーンブース200は、主室210に加えて、前室220と、副前室230と、機械室240と、を有している。
【0072】
主室210は、ブース本体の内側において、最も広い部屋となっており、ブース本体の後側に設けられている。前室220は、主室210よりも狭い部屋となっており、主室210よりも前側であって、ブース本体の右側に設けられている。副前室220は、主室210や前室220よりも狭い部屋となっており、主室210よりも前側であって、ブース本体の左側に設けられている。
【0073】
主室210、前室220および副前室230は、着脱式のスクリーンによって形成される壁部20によって、クリーンブース200の外部から隔てられている。また、主室210、前室220および副前室230は、着脱式のスクリーンによって形成される壁部20によって、互いに隔てられている。
【0074】
機械室240は、主室210よりも前側であって、前室220と副前室230との間に設けられている。機械室240は、着脱式のスクリーンによって形成される壁部20によって、主室210、前室220および副前室230から隔てられている。但し、機械室240は、ブース本体の内側に区画されているものの、側面部の一部が壁部20で隔てられてなく、クリーンブース200の外部に対して開放されている。
【0075】
主室210は、内部空間の圧力(室圧)が、ファンフィルタユニット(FFU)によって、クリーンブース200の外部や、前室220や、副前室230よりも低い陰圧に調整される。また、主室210は、空気の清浄度が、ファンフィルタユニット(FFU)によって、クリーンブース200の外部や、前室220や、副前室230よりも高い状態に調整される。
【0076】
一方、前室220や副前室230は、内部空間の圧力や空気の清浄度が積極的に調整される部屋とはなっていない。前室220や副前室230は、気密性については確保されるが、内部空間の圧力や空気の清浄度は、主室210から流入する空気に依存する。
【0077】
主室210は、空気の清浄度が要求される作業・行為に用いられる。空気の清浄度が要求される作業・行為としては、例えば、感染症の罹患者等の診療・治療、患者の診察・隔離、検診等が挙げられる。但し、内部空間で行う作業・行為は、医療分野の作業・行為に限定されるものではなく、工業分野の作業や、理化学分野の作業等であってもよい。
【0078】
前室220や副前室230は、主室210に対する外部からの影響を緩和する機能を有している。但し、前室220や副前室230は、各種の作業・行為に用いられてもよい。前室220の具体的な用途としては、例えば、作業・行為の従事者等の更衣、従事者等が着用している衣類等の空気洗浄等が挙げられる。副前室230の具体的な用途としては、例えば、廃棄物の搬出、作業・行為に用いられる道具や機器等の搬入出、試料や検体等の搬入出等が挙げられる。
【0079】
機械室240は、排気用のファンフィルタユニット60a,60bや、電気部品ボックス80が配置される空間となっている。電気部品ボックス80には、クリーンブース200で使用される電源や、電気機器を制御するための制御器、電気機器を操作するための操作器等を含む制御盤ユニットが収納される。
【0080】
また、
図3Aにおいて、機械室240と主室210とを隔てる壁部20の主室210側には、室圧を計測するための圧力センサ90が設置されている。圧力センサ90は、排気用のファンフィルタユニット60a,60bのファンの回転速度を可変速に制御する場合に用いることができる。但し、圧力センサ90を設置する位置は、このような位置に制限されるものではない。可変速に制御しない場合、圧力センサ90の設置は省略されてもよい。
【0081】
図2、
図3A、
図3Bおよび
図3Cにおいて、クリーンブース200は、組み立てられた状態において、平たい直方体状の六面体を呈するように設けられている。但し、クリーンブース200のブース本体は、前記のクリーンブース100と同様に、底面側が開口しており、天井部および側面部を有する一方で、底面部を有していない。ブース本体の底面側では、クリーンブース200が組み立てられた場所の床面、地面等が内部空間を隔てる。
【0082】
フレーム10に設けられて内部空間を形成する壁部20は、主室210の天井部および側面部や、前室220の天井部および側面部や、副前室230の天井部および側面部に備えられることになる。一方、主室210、前室220および副前室230の底面側には、フレーム10に設けられて内部空間を形成する壁部20は備えられない。
【0083】
図2、
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示すように、クリーンブース200のブース本体の前側の側面部は、前室220の前壁を形成している。前室220の前壁には、前室220に対して入退出を可能にするために、開閉自在な外側主ドア31が備えられている。また、前室220の後壁には、主室210に対して入退出を可能にするために、開閉自在な内側主ドア32が、外側主ドア31に対向する位置に備えられている。
【0084】
主室210に対する入退出は、主として、前室220を通過する経路で行うことができる。主室210に対する入退出は、前室220を介する場合、原則として、外側主ドア31と内側主ドア32とが同時に開放されないように行う。これらのドアには、同時に開放されないように、インターロック機能を備えてもよい。
【0085】
また、クリーンブース200のブース本体の前側の側面部は、副前室230の前壁を形成している。副前室230の前壁には、副前室230に対して入退出を可能にするために、開閉自在な外側副ドア33が備えられている。また、副前室230の後壁には、主室210に対して入退出を可能にするために、開閉自在な内側副ドア34が、外側副ドア33に対向する位置に備えられている。
【0086】
主室210に対する入退出は、副前室230を通過する経路で行うことも可能になっている。主室210に対する入退出は、副前室230を介する場合、原則として、外側副ドア33と内側副ドア34とが同時に開放されないように行う。これらのドアには、同時に開放されないように、インターロック機能を備えてもよい。
【0087】
外側主ドア31、内側主ドア32、外側副ドア33、および、内側副ドア34は、例えば、アクリル樹脂等の合成樹脂材や、軽量な金属材等によって、パネル状等に設けることができる。これらのドアは、前記のドア14と同様に、外開きの開き戸として設けられる。また、これらのドアの取り付け方式は、前記のドア14と同様に、差し込み式の蝶番を用いる方式とすることができる。
【0088】
図2、
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示すように、クリーンブース200には、組み立てられた状態において、内部空間を形成する壁部20に、給気用のファンフィルタユニット(第1ユニット)50a,50bと、排気用のファンフィルタユニット(第2ユニット)60a,60bと、が備えられる。
【0089】
ファンフィルタユニット(FFU)50a,50b,60a,60bは、前記のファンフィルタユニット50,60と同様に、気体を吸気し、吸気した気体から塵埃等を除去して、清浄度が高められた気体(所定の大きさ以上の塵埃等の個数が低減された気体)を送風する装置である。ファンフィルタユニット50a,50b,60a,60bは、前記のファンフィルタユニット50,60と同様に、通過する気体から塵埃等を除去するフィルタ、給気または排気のために気体を送風するファン、ファンの回転速度を制御する制御装置等を備える。
【0090】
給気用のファンフィルタユニット(第1ユニット)50a,50bは、内蔵しているフィルタ(第1フィルタ)を介して、主室210(内部空間)内に給気するファン(第1ファン)を有する。これらのファンフィルタユニット50a,50bは、クリーンブース200の外部の空気を吸い込み、フィルタを通過した空気を、主室210(内部空間)に吐出する。
図2には、主室210に吐出される空気の流れを、矢印で模式的に示している。
【0091】
排気用のファンフィルタユニット(第2ユニット)60a,60bは、主室210(内部空間)内の空気を、内蔵しているフィルタ(第2フィルタ)を介して、主室210(内部空間)外に排気するファン(第2ファン)を有する。これらのファンフィルタユニット60a,60bは、主室210の空気を吸い込み、フィルタを通過した空気を、クリーンブース200の外部に吐出する。
図2には、機械室240を通じて吐出される空気の流れを、矢印で模式的に示している。
【0092】
クリーンブース200において、排気用のファンフィルタユニット60a,60bによる合計の排気風量は、給気用のファンフィルタユニット50a,50bによる合計の給気流量よりも大きくなるように制御される。このような制御によって、主室210の圧力(室圧)が、クリーンブース200の外部や、前室220や、副前室230よりも低い陰圧に調整される。主室210の圧力値は、クリーンブース200の外部の圧力よりも低圧である限り、特に限定されるものではない。
【0093】
給気用のファンフィルタユニット50a,50bや排気用のファンフィルタユニット60a,60bのファンの回転速度の制御方式は、前記のファンフィルタユニット50,60と同様の方式とすることができる。給気側のファンの回転速度および排気側のファンの回転速度の両方を一定速に制御する方式や、給気側のファンの回転速度を一定速に制御し、排気側のファンの回転速度を可変速に制御する方式が好ましい方式となる。
【0094】
給気用のファンフィルタユニット50a,50bは、
図2、
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示すように、主室210の天井部や、主室210の側面部の上部側に配置することが好ましい。一方、排気用のファンフィルタユニット60a,60bは、
図2、
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示すように、主室210の側面部や、主室210の側面部の下部側に配置することが好ましい。
【0095】
このような配置とすると、空気が主室210の上部側から下部側に向けて一方向的に流れる。そのため、塵埃、危険物、汚染物等が気流で舞い上がるのを抑制しつつ、室圧の調整や空気の清浄化を行うことができる。ブース本体は、底面側が開口している構造であるものの、空気が主室210の上部側から下部側に向けて一方向的に流れると、クリーンブース200の外部等から主室210への塵埃の侵入も抑制することができる。
【0096】
ファンフィルタユニット50a,50b,60a,60bは、前記のファンフィルタユニット50,60と同様に、フレーム10によって所定の開口部を設ける方法で設置することができる。なお、このクリーンブース200では、2基の給気用のファンフィルタユニット50a,50bと、2基の排気用のファンフィルタユニット60a,60bを、それぞれ、同程度の給気流量や排気流量に制御して、陰圧化に必要な差圧を形成するものとしているが、互いに異なる給気流量や排気流量に制御してもよい。
【0097】
以上のクリーンブース200によると、組立式のブース本体に対して、フィルタおよびファンを備えた給気用のファンフィルタユニット50a,50bと、フィルタおよびファンを備えた排気用のファンフィルタユニット60a,60bが、容易に取り付けられる。給気側と排気側の両方でフィルタを介した送風が行われるため、主室210内の空気の清浄度が確保されるだけでなく、ブース外への汚染物の漏洩も防ぐことができる。また、給気側と排気側の両方にファンがあるため、これらのファンの制御と大きな差圧の形成によって、高精度な陰圧を安定的に維持することができる。前室220や副前室230が設けられるため、主室210に対する入退出時の影響も緩和される。組立式のブース本体は、搬送・組み立て・解体が容易である。よって、このようなクリーンブースによると、清浄度が確保されており、外部の汚染も抑制される空間を、簡便に形成することができる。
【0098】
次に、本発明に係るクリーンブースの具体的な実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0099】
クリーンブース100,200は、給気用のダクトおよび排気用のダクトを設けることなく、各種の作業・行為に用いることができる。給気用のダクトや排気用のダクトとしては、ブース本体の内側に配置される配管、シャフト、ホース等や、ブース本体の外側に接続される配管、シャフト、ホース等のいずれも不要である。
【0100】
クリーンブース100,200では、フィルタを備えた排気用のファンフィルタユニット60,60a,60bを用いるため、外部の汚染も抑制されることになる。そのため、ブース本体を設置する場所だけでなく、排気の場所の自由度も高くなる。
【0101】
クリーンブース100,200を設置する場所としては、例えば、医療用途の場合であれば、医療施設の屋内、医療施設の屋外、コンベンションホール、競技場、体育館、公園、街路等の各種の施設・建造物の屋内や、各種の施設・建造物の屋外が挙げられる。但し、クリーンブース100,200を設置する場所は、室圧や空気の清浄度が確保される限り、特に限定されるものではない。
【0102】
例えば、クリーンブース100,200を感染症の罹患者等の診療・治療に使用する場合、クリーンブース100,200を医療施設の屋内の通路等に設置することが可能になる。排気用のファンフィルタユニット60,60a,60bから排気される空気を、その場に放出させることも可能である。フィルタを介して排気される空気は、清浄度が確保されているため、クリーンブース100,200の外部を清浄化する効果も期待できる。クリーンブース200は、クリーンブース100よりも大型であり、ベッド、医療機器等を収容することができる。体育館等に多数設置することで、内部の空気が清浄で、しかも体育館内にもクリーンブース200内部から清浄な空気を排出する簡易な病室を、簡単に多数提供することができる。
【0103】
図4は、クリーンブースの下端の構造例を示す斜視断面である。
図4には、前記の組立式のクリーンブースの下端に配置される土台のフレームの構造の一例を示している。
図4に示すように、前記のクリーンブース100,200は、クリーンブースの下端に配置される土台のフレーム10の下側に、緩衝部材70を備えることができる。
【0104】
土台のフレーム10は、クリーンブース100,200が組み立てられた場所の床面、地面等に接する部材である。緩衝部材70は、このような部材の床面、地面等に接する面に対して、クリーンブース100,200が組み立てられる前に、予め固着させておくことができる。緩衝部材70は、土台のフレーム10の下面の全体に設けてもよいし、下面の一部に設けてもよいが、下面の全体に設けることが好ましい。
【0105】
緩衝部材70としては、ウレタンフォーム等の独立気泡型または連続気泡型の樹脂発泡体や、ポリウレタン、ゴム等の樹脂弾性体、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。緩衝部材70の具体例としては、スポンジ状の樹脂発泡体であるモルトプレーン等が挙げられる。樹脂の状態としてはゲル状でも良い。緩衝部材70は、フレーム10に対して、接着剤、粘着剤等によって固着させることができる。
【0106】
緩衝部材70は、クリーンブース100,200を組み立てて、床面、地面等に接地させたとき、ブース本体の重さによって収縮することができる。そのため、室圧や空気の清浄度が調整される内部空間の床が、当該クリーンブース100,200が設置された建屋の床であり、当該建屋の床と対向する土台を構成するフレーム10に緩衝部材70を設けておくと、ブース本体と接地面との隙間が、収縮可能な緩衝部材70によって埋められる。よって、このような緩衝部材70を用いると、より高い気密性を確保することができる。
【0107】
また、室圧や空気の清浄度が調整される内部空間の床が、地面等の凹凸を有する接地面であり、当該接地面と対向する土台を構成するフレーム10に緩衝部材70を設けておくと、ブース本体と凹凸等との隙間が、変形し易く収縮可能な緩衝部材70によって埋められる。よって、このような緩衝部材70を用いると、接地面に凹凸等がある場合であっても、より高い気密性を確保することができる。
【0108】
なお、緩衝部材70は、クリーンブース100,200の接地面が平坦である場合等には、必ずしも設けなくてもよい。クリーンブース100,200を設置するときに、平坦な接地面が確保できる場合は、土台のフレーム10を接地面に密着させて配置することもできる。但し、クリーンブース100,200のブース本体の底面側には、クリーンマット等を敷設してもよい。
【0109】
図5は、クリーンブースの電源の構成例を示すブロック図である。
図5には、前記の組立式のクリーンブースに備えられる電源の構成の一例を示している。
図5に示すように、前記のクリーンブース100,200は、ファンフィルタユニット50,50a,50b等を駆動するための専用の電源として、直流電源部82を備えてもよい。
【0110】
直流電源部82は、交流電源81から変換される。直流電源部82は、トランスやスイッチング素子による交流電源81の電圧の変圧処理や、整流化処理、平滑化処理、直流変換処理等の処理回路を備える。交流電源81としては、例えば、電圧が100~240V、周波数が50Hzまたは60Hz等の商用電源を利用することができる。なお、交流電源81は、直流電源部82の他に、前記のクリーンブース100,200に備えられる他の電気機器に分配することもできる。
【0111】
直流電源部82は、給気用のファンフィルタユニット50,50a,50bに備えられる専用の給気用FFU電源部83と、排気用のファンフィルタユニット60,60a,60bに備えられる専用の排気用FFU電源部84と、に分配される。なお、直流電源部82は、入力電圧の許容幅が大きいフリー電源の電源回路を備えることが好ましい。
【0112】
給気用FFU電源部83は、給気側の送風量を制御するために、給気側のユニット制御部85への給電を行う。給気側のユニット制御部85は、給気用のファンフィルタユニット50,50a,50bを駆動するための電源回路や、給気用のファンフィルタユニット50,50a,50bのファンに対して回転速度を制御するための指示を出す制御回路を備える。
【0113】
一方、排気用FFU電源部84は、排気側のユニット制御部86への給電を行う。排気側のユニット制御部86は、排気用のファンフィルタユニット60,60a,60bのファンモータを駆動するための電源回路や、排気用のファンフィルタユニット60,60a,60bのファンに対して回転速度を制御するための指示を出す制御回路を備える。排気用FFU電源部84は、圧力センサ90への給電を行うように構成されている。
【0114】
このような電源の構成を備えると、クリーンブース100,200を組み立てた後、交流電源81の給電を開始するのみで、室圧の調整を開始することができる。給気側のファンの回転速度および排気側のファンの回転速度の両方を一定速に制御する制御方式に有利である。また、クリーンブース100,200の設置場所の周辺にある商用電源の差込式接続器を利用することも可能になる。このような利用法であれば、特別な配線が不要になるため、使用者のみで容易に陰圧室を設営することができる。
【0115】
図6は、ファンフィルタユニットのファンの回転速度とファンが形成する差圧との関係を示す図である。
図6において、縦軸は、ファンフィルタユニットのファンの回転速度N*、横軸は、ファンが形成する差圧ΔP[Pa]を示す。実線は、給気用のファンフィルタユニットの特性線、破線は、排気用のファンフィルタユニットの特性線を示す。
【0116】
図6には、ファンの回転速度の制御方式の一例として、給気用のファンフィルタユニット50,50a,50bのファンの回転速度を一定速とし、排気用のファンフィルタユニット60,60a,60bのファンの回転速度を可変速とする例を示している。
【0117】
図6に示す制御例は、排気用のファンフィルタユニット(第2ユニット)60a,60bのユニット制御部86が、排気用のファンフィルタユニット60,60a,60bのファン(第1ファン)によって給気される流量よりも、給気用のファンフィルタユニット50,50a,50bのファン(第2ファン)によって排気される流量の方が多くなるように、給気用のファンフィルタユニット50,50a,50bのファン(第2ファン)に対して指示を出す場合に相当する。
【0118】
図6に示すように、給気側のファンの回転速度を一定速とすると、内部空間に対して略一定した給気流量を維持することができる。また、排気側のファンの回転速度を可変速とすると、給気側のファンによる略一定した給気流量の下で、内部空間からの排気流量が調整される。内部空間からの排気流量は、給気および排気による差圧が、陽圧から陰圧に転換した後、陰圧の目標値に収束するように調整される。このような制御方式により、ハンチング現象の発生を防止しつつ、内部空間に形成される陰圧が目標値に制御される。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、技術的範囲を逸脱しない限り、様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成に他の構成を加えたりすることが可能である。また、或る実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、構成の削除、構成の置換をすることも可能である。
【0120】
例えば、前記のクリーンブース100,200は、組み立てられた状態において、六面体を呈するように設けられている。しかしながら、本発明に係るクリーンブースは、適宜の形状や、適宜の長さ、幅、高さ等に設けることができる。陰圧に調整される内部空間が設けられる限り、ブース本体は、1以上の任意の数の部屋や、任意の数の入退出用の開口部やドアを備えることができる。
【0121】
また、前記のクリーンブース100,200は、ブース本体が、複数のフレーム10が組み合わされて形成されており、主として、土台、柱および梁によって成り立っている。しかしながら、本発明に係るクリーンブースにおいて、フレーム10の寸法、組み合わせ、相互の組み方等は、特に制限されるものではない。例えば、ブース本体の内側に柱が配置されてもよいし、土台の上方の互いに異なる高さに多段の梁が配置されてもよい。
【0122】
また、前記のクリーンブース100,200は、1基ないし2基の給気用のファンフィルタユニットと、1基ないし2基の排気用のファンフィルタユニットを備えている。しかしながら、給気用のファンフィルタユニットや、排気用のファンフィルタユニットの設置数は、特に制限されるものではない。内部空間が陰圧に調整される限り、給気側の基数と排気側の基数とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
【0123】
また、前記の弾性部材80や、直流電源部82、給気用FFU電源部83、排気用FFU電源部)84、給気側のユニット制御部85、排気側のユニット制御部86は、前記のクリーンブース100,200や、これらの類似する形態のいずれに備えてもよい。
【符号の説明】
【0124】
10 フレーム
11 土台部材
11a 縦土台部材
11b 横土台部材
12 柱部材
12a 柱部材
12b 支柱部材
13 梁部材
13a 縦梁部材
13b 横梁部材
13c 中間梁部材
14 ドア
15 ユニット支持部材
16 ユニット接続部材
20 壁部
31 外側主ドア
32 内側主ドア
33 外側副ドア
34 内側副ドア
50,50a,50b 給気用のファンフィルタユニット(第1ユニット)
60,60a,60b 排気用のファンフィルタユニット(第2ユニット)
70 緩衝部材
80 電気部品ボックス
81 交流電源
82 直流電源部
83 給気用FFU電源部
84 排気用FFU電源部
85 給気側のユニット制御部
86 排気側のユニット制御部
90 圧力センサ
100 クリーンブース
200 クリーンブース
210 主室(内部空間)
220 前室
230 副前室
240 機械室