(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】個人用垂直離着陸飛行装置
(51)【国際特許分類】
B64C 27/22 20060101AFI20240425BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240425BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240425BHJP
B64D 27/18 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B64C27/22
B64C27/08
B64D27/24
B64D27/18
(21)【出願番号】P 2020558025
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 RO2019000011
(87)【国際公開番号】W WO2019203673
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RO
(73)【特許権者】
【識別番号】520399729
【氏名又は名称】サビエ, ラズヴァン
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】サビエ, ラズヴァン
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0002026(US,A1)
【文献】登録実用新案第3191468(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0002011(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/22
B64C 27/08
B64D 27/24
B64D 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それらの間で嵌め合うように連結される2つの主要な別個の部分を有する複葉機タイプからなり、第1の別個の部分が、複葉構成の2つの翼(a、b)と前記翼(a、b)を接合する直立した中央垂直支持体(7)とを備える翼アセンブリ(6)である第2の別個の部分にヒンジで取り付けられコックピット(1)から構成されており、前記コックピット(1)は前記直立した中央垂直支持体(7)に固定された2つのヒンジ(3)によって前記翼アセンブリ(6)に取り付けられ、前記コックピット(1)の回転弧を制限しながら、前記コックピット(1)が横ヒンジ軸の周りで前記翼アセンブリ(6)に対して回転することを許容するように構成されており、
前記翼(a、b)には、電動モータ(20)によってそれぞれ駆動される4つのプロペラ(9)が設けられ、そのうちの2つは上翼aに配置され、2つは下翼bに配置され、このようにして前記4つのプロペラ(9)がクワッドコプタレイアウトを形成しており、
蓄電池(14)は、速度調整器を介して電気エネルギーをエンジンに伝達し、
飛行装置の全動作は前記上翼aの中央部分に配置されたフライトコンピュータ(17)によって管理されており、
離陸は前記翼(a、b)および前記エンジンを垂直方向に向けた状態で実行され、飛行装置は翼端部に固定された着陸脚(15)によって地上に支持されるように適合されており、
前記飛行装置はクアッドコプタと同様に離陸して、巡航飛行への遷移は前記翼(a、b)の入射角を小さくすることによって行われるが、この入射角は、前記飛行装置の並進速度の増加と同時に、前記翼の抵抗が増加するために自然に減少し、その間前記コックピット(1)は、その重心により、および前記ヒンジ(3)により垂直姿勢を保ち、
着陸は、前記翼(a、b)の入射角を翼が着陸に必要な前記垂直姿勢に自然に戻るまで大きくしていくことをもたらすために速度を落として、クワッドコプタと同様に実行され、前記コックピット(1)は、前記下翼bの開放領域を通って前記中央垂直支持体(7)の内側で回転し、各プロペラ(9)は、環状排出スリット(11)を備えた吸気口リップ上に設けられた第1のダクト(10)を有し、前記蓄電池(14)は操縦席の下方に置かれることを特徴とする、垂直離着陸飛行装置。
【請求項2】
前記プロペラ(9)が二重ダクト付きであり、第2のダクト(35)が設けられており、前記第1および第2のダクト(10、35)が排出スリット(それぞれ11および37)を備えてそれらの前側に双方とも設けられ、それによりダブルフローダクトプロペラを形成し、前記第1のダクトの外側および前記第2のダクトの内側がともに環状コアンダエジェクタを形成することを特徴とする、請求項1に記載の垂直離着陸飛行装置。
【請求項3】
前記第1および第2のダクト(10、35)がまた、それらの後部に排出スリット(それぞれ38および39)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の垂直離着陸飛行装置。
【請求項4】
前記第1のダクト(10)の前部に、前記スリット(11)を介して圧縮空気が排出される環状チャンバ(24)が設けられており、電動モータ(20)のシャフトが、圧縮空気を導管(23)を介して前記環状チャンバ(24)へ供給する空気圧縮機(22)を直接または速度倍率器を経由して駆動することを特徴とする、請求項1または2に記載の飛行装置。
【請求項5】
前記第2のダクト(35)の内側が前記第1のダクト(10)の外側とともに排出スリットを有するコアンダ型の環状エジェクタを形成することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の飛行装置。
【請求項6】
それらの間で嵌め合うように連結される2つの主要な別個の部分を有する複葉機タイプからなり、第1の別個の部分が、複葉構成の2つの翼(a、b)と前記翼(a、b)を接合する直立した中央垂直支持体(7)とを備える翼アセンブリ(6)である第2の別個の部分にヒンジで取り付けられコックピット(1)から構成されており、前記コックピット(1)は前記直立した中央垂直支持体(7)に固定された2つのヒンジ(3)によって前記翼アセンブリ(6)に取り付けられ、前記コックピット(1)の回転弧を制限しながら、前記コックピット(1)が横ヒンジ軸の周りで前記翼アセンブリ(6)に対して回転することを許容するように構成されており、
前記翼(a、b)は、古典的なダブルフローターボファンエンジンでそれぞれ構成される4つのトリプルフロージェットエンジンを備え、それらのファン入口ダクトは、環状排出スリット(11)を備えた吸気口リップに設けられた第1のダクト(10)を構成し、各エンジンについて、前記第1のダクト(10)が、環状排出スリット(37)が前記吸気口リップに設けられた第2のダクト(35)によって囲まれ、前記第2のダクト(35)の内側は、前記第1のダクト(10)の外側とともに、環状コアンダエジェクタを形成し、前記排出スリット(11、37)の動作に必要な圧縮空気は、前記
古典的なダブルフローターボファンエンジンの圧縮機(41)の段から導管(23)を介して供給され、前記
4つのトリプルフロージェットエンジンが前記上翼(a)に2つ、前記下翼(b)に2つ配置されており、このようにして前記4つの
トリプルフロージェットエンジンがクアッドコプタレイアウトを形成し、
飛行装置の全動作は、フライトコンピュータ(17)によって管理されており、離陸は前記翼(a、b)および前記エンジンを垂直方向に向けた状態で実行され、前記飛行装置は前記翼端部に固定された着陸脚(15)によって地上に支持されるように適合され、
前記飛行装置はクワッドコプタと同様に離陸して、巡航飛行への遷移は前記翼(a、b)の入射角を小さくすることによって行われるが、この入射角は、前記飛行装置の並進速度の増加と同時に、前記翼の抵抗が増加するために自然に減少し、その間、前記コックピット(1)は、それ自体の重心により、および前記ヒンジ(3)により垂直姿勢を保ち、
着陸は、前記翼(a、b)の入射角を翼が着陸に必要な前記垂直
姿勢に自然に戻るまで大きくしていくことをもたらすために速度を落として、クワッドコプタと同様に実行され、前記コックピット(1)は、前記下翼bの開放領域を通って前記中央垂直支持体(7)の内側で回転し、前記フライトコンピュータ(17)は、前記上翼(a)の中央部に配置されている、垂直離着陸飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1人の輸送が可能であり、輸送能力内で、巡航モードでの飛行が可能である垂直離着陸飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、垂直離着陸飛行装置は大きな発展を遂げており、この理由は、大都市ならびにその周辺の混雑した道路交通のために、乗用車に代わるなんらかの航空輸送ソリューションを見つけることがこれまで以上に必要とされているからである。
【0003】
いくつかのタイプの垂直離着陸飛行装置が長所および短所を有することを知られており、ロシア実用新案証明書第152807号(特許文献1)、米国特許第8800912号明細書(特許文献2)、または国際公開第20171584171号(特許文献3)などの特許および特許出願に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】ロシア実用新案証明書第152807号
【文献】米国特許第8800912号明細書
【文献】国際公開第20171584171号
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上記の要件に適した飛行装置を提供することである。
【0006】
本発明の垂直離着陸飛行装置は、2つの別個の部分が嵌め合うように連結されて構成される複葉機であって、第1の別個の部分はコックピットから構成され、翼の堅固な支持体で形成された第2の別個の部分にヒンジで取り付けられており、コックピットは翼の中央垂直支持ピラーに固定された2つのヒンジによって翼アセンブリに取り付けられ、コックピットは翼支持構造内側で揺動可能であり、それに加えて上翼に2つ、下翼に2つ配置されたダクトプロペラを備える4つの電動モータが設けられてクワッドコプタアセンブリを形成しており、各プロペラのダクトは吸気口リップに環状排出スリットが設けられており、飛行装置の動作に必要な電気エネルギーはパイロットシート下に配置された蓄電池によって供給されてエンジンに動力を伝達し、飛行装置の全動作は複葉機の上翼の中央部分に配置されたフライトコンピュータによって管理されており、離陸は翼およびモータを垂直方向に向けた状態で行われ、飛行装置は翼端部に固定された着陸脚を用いて着地し、クワッドコプタと同様に離陸して、巡航への遷移は翼の入射角を小さくすることで行われるが、この角度は飛行装置の並進速度の上昇と同時に翼の前進抵抗が増加するために自然に小さくなり、その間コックピットは低重心および翼アセンブリ内での回転を可能にするヒンジにより垂直姿勢を保ち、着陸手順は、速度を落とすことにより翼の入射角を翼が着陸に必要な垂直面に戻るまで大きくしていき、クワッドコプタと同様に行われることを特徴とする。
【0007】
飛行をより効率的にするために、飛行装置には、翼とプロペラのダクトとの両方にコアンダエジェクタを追加的に取り付けることができる。
【0008】
本発明による離着陸機能を備える飛行装置の利点は、垂直離着陸が可能であること、人を運ぶことができること(このコンセプトは4~5名の輸送に拡張可能)、数十キロメートルの飛行を保証すること、低騒音であること、すべての飛行形態で良好なエネルギー効率を示すこと、高い安全性を有すること、および小型であること、である。
以下に本発明による飛行装置について、
図1~
図17も参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】翼エジェクタを備えた構成変形例における飛行装置の2つの別個の部分の概略図である。
【
図3】巡航姿勢にある翼エジェクタを備えた構成変形例における飛行装置の概略図である。
【
図4】離陸/着陸姿勢での翼エジェクタを備えた構成変形例における飛行装置の概略図である。
【
図5】離陸/着陸姿勢での翼エジェクタを備えた構成変形例における飛行装置の側面斜視図である。
【
図6】離陸/着陸姿勢での翼エジェクタを備えた構成変形例における飛行装置の側面斜視図である。
【
図7】遷移モードでの翼エジェクタを備えた構成変形例における飛行装置の側面図である。
【
図8】巡航モードでの翼エジェクタを備えた構成変形例における飛行装置の側面図である。
【
図9】離陸/着陸姿勢での翼エジェクタを備えた構成変形例における飛行装置の正面図である。
【
図10】排出スリットを備えたダクトプロペラおよびコアンダ型エジェクタを搭載した翼の断面と、離陸および遷移モードでの気流とを示す図である。
【
図11】吸気口排出スリットを備えたダクトプロペラおよびコアンダ型エジェクタを搭載した翼の断面と、巡航モードでの気流とを示す図である。
【
図12】吸気口エジェクタを備えたダブルフローダクトプロペラの断面図である。
【
図13】吸気口エジェクタと排気エジェクタとを備えたダブルフローダクトプロペラの断面図である。
【
図14】トリプルフロージェットエンジンの断面図である。
【
図16】通常のプロペラを備え、翼エジェクタを備えていない飛行装置の概略図である。
【
図17】緊急用パラシュートが開いた状態の装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、飛行装置の別個の、かつ連結される2つの部分を示す。第1の別個の部分は、コックピット1で構成される。これは剛性のフレームで構成され、好ましくはトラスを用いて強度および剛性を付与し、パイロット2を快適な姿勢で収容するのに十分な大きさが確保されたフライトデッキを含む。パイロットシートのアームレストには、端部にコントロールパネル13を組み込む。必要に応じて、歩行者の脚またはレバーでコントロールを行うこともできる。コックピットは開放型であるが、横開きのフロントドアで部分的に閉じることができ、または、完全に閉じてパイロットの快適性のために気流を逸らすこともできる。パイロットシートの下には、蓄電池14、ならびにモータの速度制御器がある。
【0011】
コックピット1は、底部に360度回転可能な四輪アセンブリ20を有しており、飛行装置は、地上で翼を巡航飛行の位置にした状態で容易に動作することができる。コックピット1の側方構造には、巡航飛行中に翼アセンブリ内側でコックピットの揺動を制限する役割を有するストッパボルト5が配置され、翼アセンブリと接触して、翼の入射角の特定の角度からは、装置の2つの別個の部分が一緒に動くようにする。装置の第2の別個の部分を構成するコックピット1は、コックピット1および翼アセンブリ6の両方の共通の穴を貫通してジョイント3を形成するバー4によって、翼アセンブリ6に取り付けられる。コックピット1の慣性による制御されない揺動を防ぐために、ジョイント3は制御された摩擦を有し、コックピットの円滑なバランシングを可能にして地面に対する垂直状態を維持するが、制御されない旋回を許容しない。ジョイント3は、パイロット2の両側にレバーmを備えており、なんらかの動力伝達具によって、パイロットが希望するとき、または特定の操縦に必要と考えるときに、パイロットが手動で翼の角度を調整することを可能にする。
【0012】
飛行装置の第2の別個の部分は、高揚力翼型を有する2つの翼aおよびbからなる翼アセンブリ6であり、上翼aが下翼bよりも前方に配置された複葉機アセンブリを形成している。このアセンブリは、コックピットを支持する役割も有する2つの中央垂直支持体7と、翼の端部を接合する2つの側方垂直支持体8とによって補強される。翼アセンブリは、スパイク(ワイヤ)で補強することもできる。翼には着陸脚15が埋め込まれている。翼型は、低速時および高入射角時に高揚力を生成させなければならず、抗力は低くなければならない。この点については、欧州特許第0772731号明細書に記載のプロファイルを使用することが好ましい。上翼の中央領域には、装置のフライトコンピュータ17および緊急用パラシュート18が配置される。2つの翼は、各翼に2つずつ、4つの電動ダクトプロペラ9を備えており、それらはクワッドコプタに特有の方法で垂直対称軸に対して対称に配置される。効率、騒音、安全性の理由から、プロペラにはダクト10が取り付けられる。離陸効率を高めるために、吸気量を増加させる目的で、プロペラのダクト10のリップには排出スリット11が設けられる。
【0013】
また、離陸中および遷移フェーズ中に取り込まれる空気量を増加させるために、翼には二次元コアンダ型エジェクタ12が併置されていてもよい。このような翼エジェクタを備えた巡航モードの飛行装置の概略図を
図2に示し、
図3に翼エジェクタを備えていない装置を示す。
図4は、離陸/着陸姿勢にある装置の概略図を示し、
図5は、翼の延長線上に配置された着陸脚15を示す側面図である。着陸脚15の4つの車輪は、360度回転可能であり、中央垂直支持体7と一体の第2のA字型抵抗構造16の端部に配置される。離陸中に発生する力のバランスをとるために、モータの軸は、地面に対する垂直方向に対してわずかに前方に傾斜してもよく、対応する抵抗構造16のアームの調整により実現することができる。
【0014】
翼アセンブリ6が飛行姿勢に対してどのように回転するかを示す飛行フェーズは以下の通りである。
図6は離陸/着陸姿勢での装置の側面図であり、
図7は飛行遷移中の装置の側面図であり、
図8は巡航飛行中の装置の側面図である。巡航飛行モード中、コックピット1および翼アセンブリ6の2つの別個の部分は、制限ボルト5によって接触し、この時、任意の低い入射角で、2つの部分は1つのユニットとして機能し、コックピット1は翼アセンブリ6とともに傾く。翼は、
図9に示すように、端部が直線状の楕円形であってもよいが、台形または長方形であってもよい。
【0015】
エネルギー効率の良い方法で離陸するには、比較的低速で大量の空気を押し下げる必要がある。これを達成するために、ダクトプロペラ9と、環状エジェクタスリット11と、翼上に配置された二次元エジェクタ12との相乗的な動作を行う必要がある。
図10は、エジェクタスリット11を備えるダクトプロペラ9と翼エジェクタ12との相乗的な動作を例示し、空気の流れを概略的に示す。すべての推進要素が相乗的に機能するためには、電動モータ20は、その運動をプロペラだけでなく空気圧縮機22にも伝達しなければならず、したがって、電動モータ20のシャフトは一方のヘッドから他方のヘッドへとモータを横切るように渡されて、モータが一方の端部でプロペラのロータ21と係合し、他方の端部で速度倍率器を介して空気圧縮機22と係合することが好ましい。この空気圧縮機は、断面が大きくならないように軸流式とすることができるが、遠心式またはテスラ型とすることもできる。空気圧縮機22は、電動モータ20を囲む円形スリットfから空気を取り込み、圧縮された空気を導管23を介してダクト10の縁部に配置された圧力環状チャンバ24に向けて吹き付けて供給し、その後環状チャンバ24から、空気は排出スリット11を介して圧力下で排出される。この排出により、ダクトのリップの上部にくぼみが形成され、ダクト10の内部を通してより大量の空気を引き込むことができる。この圧縮空気回路と同時に、空気圧縮機22は、導管25を介して、各翼に沿って配置され、かつ排出スリット30を有する圧力チャンバ26と、各翼に沿って配置され、かつ排出スリット31を有する圧力チャンバ28を備える小翼27とからなる、二次元コアンダエジェクタ12に圧縮空気を供給する。2つの圧力チャンバ26および28は、同一寸法で円錐台形状を有し、翼の中央領域に最大断面を有しており、それらの断面は、可能な限り均一な圧力を維持するために翼端部へと縮小される。
【0016】
2つの排出スリット30および31は互いに平行であり、開口部の幅はそれらの間に一定に保たれ、したがって、翼の一方の端部から他方の端部まで比較的均一な排出を達成する。エジェクタの長さについては、翼の上面の曲率は、小翼27の内側プロファイルと同一である。小翼27の翼型は、前縁で丸みを帯びていなければならず、これにより空気のくぼみを生成して大量の空気を引き込む。離陸モードでの気流は、
図10に矢印で表して示す。排出スリット30ならびに翼の上面の湾曲したプロファイルが、コアンダ効果によって、翼の上面に沿った均一な境界層の維持に寄与することにも留意されたい。より複雑な構成変形例では、小翼27は、エジェクタ吸気領域A1が縮小し、排出領域A2が拡大するように特定の角度で回転可能であり、このようにして上面の圧力を制御することができるため、飛行装置の飛行速度または翼の入射角を変えることなく翼の揚力を変更することができる。
【0017】
巡航飛行中に効率的な空気循環を行うために、導管23を介したスリット11への圧縮空気の供給をバルブ32によって遮断することができ、スリット28への圧縮空気の供給はバルブ33によって遮断することができ、圧縮空気はスリット30にのみ分配される。したがって、この動作により、吸気領域が減少し、プロペラの動推力が増加するとともにチャンバ26内の空気圧が増加し、多量の空気が相乗的に加速されて、スリット30を介して圧力下で排出される空気は翼の上面に均一な境界層を達成することに寄与する。小翼27が可動式である構成変形例では、排出領域A2が減少するにつれて小翼27が回転し、その結果、空気はエジェクタ内で加速して推力に寄与する。巡航飛行中の空気循環を
図11に矢印で示す。
【0018】
より長い飛行距離のためには、電動モータ20を熱機関に置換することができる。モータは、バンケル型ロータリであることが好ましく、出力/重量比が高く、断面積が小さく、振動が少ないため、ダクト化に適している。熱機関を使用する場合、主な欠点の1つは騒音の大きさである。騒音レベルを低減し、同時に離陸モードでの効率を高めるために、
図12のダブルフローダクトプロペラを実現することができる。この場合、ダクト10は、別のダクト35によって外側が二重になり、環状チャンバ36および排出スリット37を備える。必要な圧縮空気は、導管23の延長部によって環状チャンバ36に供給される。ダクト35の内側は、ダクト10の外側部分とともに、排出スリット37によって空気が内部へ引き込まれ加速されるコアンダエジェクタに必要なプロファイルを形成する。
【0019】
エネルギー効率の良い離着陸を行うためには、プロペラエンジンは比較的低速で大量の空気を駆動する必要があり、(ヘリコプターの場合のような)直径の大きなプロペラの必要性を示唆する。吸気のための排出スリット11および37、排気のための排出スリット38および39の両方を有するダブルフローダクトプロペラを例示する
図13に、推進ユニットの下部となるが、良好な離陸/着陸効率に導く解決策を示す。排出スリット38および39の確認された作用、ならびにダクトの背面部40の丸みを帯びたプロファイルは、側面にも空気の排出をもたらし、それにより、円錐状の排気領域が拡大される。したがって、はるかに大きな直径のプロペラと同様に、大量の空気が駆動される。メインエンジンを囲むコアンダ型エジェクタの存在を示唆するこのコンセプトは、ターボジェットエンジンに拡張することができ、コアンダエジェクタがターボファンを囲む場合は、
図14のトリプルフロージェットエンジンでも実現可能である。この場合、導管23は、圧縮機41の1つの段から必要な圧縮空気を取り込み、スリット11および37に供給する。必要に応じて、トリプルフロージェットエンジンに排気排出スリットを設けることもできる。トリプルフロージェットエンジンの利点は、垂直離陸または従来の離陸のフェーズでの効率向上、騒音の低減、サーマルフットプリントの低減である。
【0020】
図15は、巡航飛行中の飛行装置の背面図を示し、パイロットシート下の蓄電池の配置を確認することができるが、これにより飛行装置は低重心化し、安定性が向上する。また、同じ場所に電動モータの速度調整器が配置されてもよい。
【0021】
熱機関を使用する飛行装置の構成変形例では、蓄電池の代わりに、燃料タンクを配置することができる。
【0022】
図16は、単純なプロペラを備え、エジェクタを搭載していない、より単純で安価な飛行装置を示す。
【0023】
障害が生じて飛行を継続できなくなった場合、飛行装置には、飛行装置の上翼に配置された緊急用パラシュート18が装備されている。パラシュートは、開いたときに、そのような方法での着陸に最適な入射角に飛行装置の翼を維持するように配置される。パラシュートは長方形の傘体形状であることが好ましく、この理由は、開いた後で、パイロットがパラシュート制御部にアクセスすることができ、それにより飛行装置を着陸に適した場所に誘導することができるからである。また、さらなる安全対策として、パイロットは個別のパラシュートを装備することもできる。不時着の場合、コックピットの先端の丸みを帯びた形状は飛行装置の回転を促進し、それにより地面との衝突の瞬間の運動エネルギーを散逸させるのに役立つ。ジョイント3の1つが破損した場合、コックピット1の側方フレームは、ケーブル19によって翼アセンブリの中央垂直支持体7に取り付けられる。
【0024】
飛行装置の動作モードは非常にシンプルで、離陸および着陸の両方のモードだけでなく、遷移時および巡航飛行中も同様にクワッドコプタモードで飛行し、操縦および安定化モードは既知であって、この飛行コンセプトに準拠するため、装置を制御および安定化する他の表面の存在および追加の手段を必要としない。