(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】表示マーキングを中に有するエラストマーコーティングを有する布スリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20240425BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240425BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240425BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20240425BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H02G3/04 081
C09D201/00
C09D183/04
H02G3/04
D06M15/643
F16L57/00 A
(21)【出願番号】P 2020569803
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 US2019033428
(87)【国際公開番号】W WO2019240917
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルシュール,ティボー
(72)【発明者】
【氏名】シモアンス,アメリ
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0012815(US,A1)
【文献】特表2016-536480(JP,A)
【文献】特開平09-115364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
C09D 201/00
C09D 183/04
D06M 15/643
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布保護スリーブを構築する方法であって、
糸を織込んで対向端同士の間に延在する内面および外面を有する壁を形成することと、
エラストマー材料のコーティングのほぼ均一な厚みを前記外面に接合することと、
前記コーティングの外面の中へ内向きに延在する指標をレーザで形成し、前記指標に深さを与えることと、を備え、
前記指標は、
前記コーティングの前記外面から前記深さとなる位置に設けられている底面と、前記底面と交差する方向において前記底面から外側に突出している凸面とを有し、
前記底面に対する前記凸面の高さが前記深さ未満であり、
前記外面に沿った方向において、前記凸面の幅が前記底面の幅未満となるように、形成される、方法。
【請求項2】
前記コーティングの前記厚みよりも小さくなるように前記指標の前記深さを形成することをさらに含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記コーティングの前記厚みの25~75パーセントの間になるように前記指標の前記深さを形成することをさらに含む、請求項
2に記載の
方法。
【請求項4】
前記エラストマー材料をシリコーン系材料として設けることをさらに含む、請求項
1に記載の
方法。
【請求項5】
織り、編み組み、または編みプロセスの1つによって前記糸を織込むことをさらに含む、請求項
1に記載の
方法。
【請求項6】
周方向に連続した継ぎ目のない壁として前記壁を形成することをさらに含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項7】
長手方向中心軸にほぼ平行に延在する対向する内側および外側端縁を有する前記壁を形成することをさらに含む、請求項1に記載の
方法。
【請求項8】
前記対向する内側および外側端縁を互いに重なり合う関係に付勢することをさらに含む、請求項
7に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2018年6月14日に出願された米国仮出願連続番号第62/684,867号および2019年5月21日に出願された米国実用出願連続番号第16/418,924号の利益を主張し、その全体が引用により本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して、その中に収納されている細長い部材に保護を与えるための保護布スリーブに関し、より特定的には、その中に表示マーキングを有するエラストマーコーティングを有する布スリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
中を通って延在する細長い部材に保護を与えるための保護布スリーブが公知である。周方向に連続する閉じた壁、または互いに重なり合う関係に巻き付けられるように構成される、長手方向に延在する対向端縁を有する巻き付け可能な壁を有する保護布スリーブも公知である。場合により、前述の公知のスリーブは、スリーブ内に収納されている内容物に対する付加的な保護のためにエラストマーコーティングを有する。名称および/または製品番号など、識別目的のためにスリーブの外面に指標を含むことがさらに公知であり、指標は、典型的には、インクジェット技術、パッド印刷、または他のインク塗布により、インクで設けられる。前述の指標は当初は有用であることがわかり得るが、特に熱および/または流体に晒されると、指標が摩耗してしまうという劣化によって問題が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の要約
開示のある局面に従うと、中に収納されている細長い部材に保護を与えるための保護布スリーブおよびその構築方法が提供される。スリーブは、織込み糸で形成される壁と、壁の外面に接合されるエラストマー材料のコーティングとを有する。コーティングは、コーティングの外面を見る人に情報を提供するために指標をその中に有し、指標は、コーティングの外面の中へ径方向内向きに延在し、容易に摩耗されるのを回避するように指標に深さを与える。したがって、スリーブは、指標が摩耗してしまうという懸念なく、出荷され、保管され、かつ使用され得る。
【0005】
開示の別の局面に従うと、指標は、織込み糸の下方の外面を露出させるのを回避するように、コーティングの全厚みを貫通して延在しない。
【0006】
開示の別の局面に従うと、指標の深さはコーティングの厚みの約25~75パーセントの間であり、それにより、指標の摩耗を回避しつつ、同時に、下方の糸の望ましくない露出を回避して糸に摩損および損傷が生じるのを防止する。
【0007】
開示の別の局面に従うと、コーティングの厚みの50パーセントよりも大きくなるように指標の深さを形成することができる。それにより、指標がうっかり摩耗してしまうのを防止する能力を高めながら、深さがコーティングの全厚みを貫通して延在しないようにして、下方の糸の望ましくない露出を回避して糸に摩損および損傷が発生するのを防止する。
【0008】
開示の別の局面に従うと、エラストマー材料はシリコーン系材料である。
開示の別の局面に従うと、糸は、織られる、編み組みされる、または編まれることによって織込まれ得る。
【0009】
開示の別の局面に従うと、布保護スリーブを構築する方法が提供される。方法は、糸を織込んで、対向端の間に延在する内面および外面を有する壁を形成することを含む。さらに、エラストマー材料のコーティングを外面に接合すること、およびコーティングの外面の中へ内向きに延在する指標を形成し、容易に摩耗するのを回避するように指標に深さを与えることである。
【0010】
開示の別の局面に従うと、方法は、織込み糸の下方の外面を露出させるのを回避するように、コーティングの全厚みを貫通して延在しないように指標を形成することをさらに含むことができる。
【0011】
開示の別の局面に従うと、方法は、コーティングの厚みの約25~75パーセントの間になる指標の深さをさらに含み、それにより、指標の摩耗を回避しつつ、同時に、下方の糸の望ましくない露出を回避して糸に摩損および損傷が生じるのを防止することができる。
【0012】
開示の別の局面に従うと、方法は、コーティングの厚みの50パーセントより大きい指標の深さを形成することをさらに含むことができる。それにより、指標がうっかり摩耗してしまうのを防止する能力を高めながら、深さがコーティングの全厚みを貫通して延在しないようにして、下方の糸の望ましくない露出を回避して糸に摩損および損傷が発生するのを防止する。
【0013】
開示の別の局面に従うと、方法は、シリコーン系材料としてエラストマー材料を設けることをさらに含むことができる。
【0014】
開示の別の局面に従うと、方法は、織り、編み組み、または編みプロセスのうちの1つによって糸を織込むことをさらに含むことができる。
【0015】
開示の別の局面に従うと、方法は、レーザを用いて指標を形成することをさらに含むことができる。
【0016】
本開示のこれらおよび他の局面、特徴、および利点は、現在好ましい実施形態および最良モード、添付の請求項、ならびに添付の図面の以下の詳細な説明と関連して検討すると、より容易に認められるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】保護対象の細長い部材の周りに固定されて示される、開示のある局面に従う周方向に連続する継ぎ目のない壁を有する保護スリーブの斜視図である。
【
図2】保護対象の細長い部材の周りに固定されて示される、開示の別の局面に従う巻き付け可能な壁を有する保護スリーブの斜視図である。
【
図3】
図1の線3-3にほぼ沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
現在好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照すると、
図1および
図2は、一例としてかつ限定されることなく、ケーブル、ワイヤーハーネス、またはチューブなどの細長い部材14を通しかつ保護するための、周方向に連続する継ぎ目のない壁12および巻き付け可能な壁12′をそれぞれ有するスリーブ10、10′を示す。細長い巻き付け可能な壁12′は、対向する内側および外側の自由な側または側端縁を有する。これらは単に端縁16、17とも称され、対向する開放端19、20;19′、20′の間に両方の壁12、12′がそれぞれ延在する状態で、長手方向中心軸18にほぼ平行に延在する。壁12′の糸に形成されるヒートセットを介してなど、巻き付け可能な壁12′の対向端縁16、17を「煙草包み」の態様で互いに重なり合う関係に付勢して、細長い部材14をスリーブ10′の中心空洞C内に完全に封入することができる。壁12、12′は、内面21、21′とも称される最内表面または最内面と、外面23、23′とも称される最外表面または最外面とを有し、空洞Cは、最内面21、21′によって規定されかつ境界決めされる。壁12、12′は、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントを含むことができる織込み糸25(
図1および
図2の別個の部分破断区域に示され、糸25は、示されるように織り、編み、または編み組みされ得、図示は、糸を織込むための異なる機構を示しているが、任意の1つのスリーブに対して1つのみが行われると理解すべきである)と、壁12、12′の外面29、29′に接合されるエラストマー材料のコーティング27とで形成される。コーティング27は、任意の所望の記号、数字、文字等を含む指標28をその中に有し、コーティング27の外面30を見る人に情報を提供する。指標28は、長手方向中心軸18に向かってコーティング27の外面30の中へ径方向内向きに延在し、容易に摩耗するのを回避するように指標28に深さ(d)を与える。したがって、スリーブ10、10′は、指標28が摩耗してしまう懸念なく、出荷、保管、および使用され得る。
【0019】
指標28は、織込み糸25の下方の外面29、29′を露出させるのを回避するように、コーティング27の全厚み(t)を貫通して延在しない。したがって、深さdは厚みtよりも小さく、それにより、指標28の領域を含むスリーブ10、10′の全体にわたって糸25がコーティング27によって完全に保護されたままとなり、それにより、環境要素(破片)、熱的条件に糸25が晒されるのを回避する。ある局面に従うと、指標28の深さdは、コーティング27の厚みtの約25~75パーセントの間であり、さらなる局面に従うと、指標28が摩耗しないことを最も確実にするためには、指標28の深さdは、コーティング27の厚みtの50パーセントより大きく、しかし、下方の糸25の望ましくない露出を回避するためには、厚みtの75パーセントよりも小さい。
【0020】
コーティング27のエラストマー材料をシリコーン系材料として設けることができ、糸25は、織られる、編み組みされる、または編まれることによって織込まれ得る。
【0021】
開示の別の局面に従うと、布保護スリーブ10、10′を構築する方法が提供される。方法は、糸25を織込んで、対向端19、20;19′、20′の間に延在する内面21、21′および外面29、29′を有する壁12、12′を形成することを含む。さらに、エラストマー材料のコーティング27を外面29、29′の全体に接合すること、およびコーティング27の外面30の中へと径方向内向きに延在する指標28を形成して、容易に摩耗するのを回避するように指標28に深さ(d)を与えること、である。
【0022】
方法は、織込み糸25の、下方の外面29、29′を露出させるのを回避するように、深さdが厚みtよりも小さくなるように、指標28がコーティング27の全厚み(t)を貫通して延在しないように指標28を形成することをさらに含むことができる。
【0023】
方法は、コーティング27のエラストマー材料をシリコーンまたはシリコーン系材料として設けることをさらに含むことができる。
【0024】
方法は、織り、編み組み、または編みプロセスのうちの1つを介して糸25を織込むことをさらに含むことができる。
【0025】
方法は、レーザで指標28を形成することをさらに含むことができる。
用途の必要性に応じて、長さおよび直径を含む任意の好適なサイズを有するように壁12、12′を構築することができる。壁12’が自動巻き付き壁として形成されるならば、マルチフィラメントおよび/またはモノフィラメントを問わず、横糸方向に周方向に延在する糸25の少なくとも一部を、たとえばポリフェニレンスルフィド(PPS)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの任意の好適な熱硬化性ポリマー材料として設けることができる。
【0026】
以上の教示に照らして、本発明の多数の修正例および変形例が考えられる。したがって、具体的に記載される以外のやり方で発明を実践してもよく、発明の範囲は、最終的に許可される任意の請求項によって規定されることを理解すべきである。特に、互いに矛盾しない限り、全ての請求項および全ての実施形態の全ての特徴を互いに組合わせることができる。