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特許7478685析出強化された浸炭可能及び窒化可能な合金鋼
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】析出強化された浸炭可能及び窒化可能な合金鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240425BHJP
   C22C 38/48 20060101ALI20240425BHJP
   C21D 1/06 20060101ALI20240425BHJP
   C21D 9/30 20060101ALI20240425BHJP
   C21D 9/32 20060101ALI20240425BHJP
   C23C 8/46 20060101ALI20240425BHJP
   C23C 8/26 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C22C38/00 301N
C22C38/48
C22C38/00 302Z
C21D1/06 A
C21D9/30 A
C21D9/32 A
C23C8/46
C23C8/26
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021025405
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2021143421
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】62/978,752
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515057827
【氏名又は名称】クエステック イノベーションズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】ジャドン ゴン
(72)【発明者】
【氏名】イダ バーグルンド
(72)【発明者】
【氏名】アミット ベヘラ
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ オルソン
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/114836(WO,A1)
【文献】特開2019-143197(JP,A)
【文献】特開2008-075136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
C21D 1/02 - 1/84
C21D 9/00 - 9/44
C23C 8/00 - 8/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量パーセントで:
3.0%~8.0%のクロム;
0.02%~5.0%のモリブデン;
0.1%~1.0%のバナジウム;
0.5%~2.5%の銅;
0.5%~2%のニッケル;
0.2%~0.4%のマンガン;
0.01%~0.06%のニオブ;
0.1%~1.0%のアルミニウム;
1.0%以下の窒素;
0.00%以下のカルシウム;及び残部の鉄、並びに偶発元素
からなる合金であって、前記合金が表皮部分とコア部分とを含み、前記表皮部分が0.4質量%の炭素又は0.6~0.8質量%の炭素を含み、及び、前記コア部分が0.1~0.2質量%の炭素を含む、合金。
【請求項2】
前記合金は360HV超のコア硬度を有し、前記合金は、銅ナノ析出物とナノスケールM2C炭化物とを含むマルテンサイト系マトリックスを含むミクロ構造を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
前記表皮部分は、0.6~0.8質量%の炭素を含み;
前記表皮部分は、700HV超の表皮硬度を有し;および
前記コア部分は、360HV超のコア硬度を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項4】
前記合金は、質量パーセントで:
3.5%~5.5%のクロム;
0.05%~2.5%のモリブデン;
0.2%~0.5%のバナジウム;
1%~2.0%の銅;
0.8%~1.5%のニッケル;
0.2%~0.4%のマンガン;
0.01%~0.05%のニオブ;及び
0.3%~0.8%のアルミニウム
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の合金。
【請求項5】
前記合金は、結晶粒ピニング粒子として作用し得るMX炭化物析出物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の合金。
【請求項6】
前記合金は、コバルトを含まず;且つ
NiのCuに対する比は、0.5である、請求項1~のいずれか一項に記載の合金。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の合金を含む、製造物品。
【請求項8】
ギヤ又はシャフトである、請求項に記載の製造物品。
【請求項9】
表皮部分とコア部分とを含む合金の製造方法であって、
質量パーセントで:
3.0%~8.0%のクロム;
0.02%~5.0%のモリブデン;
0.1%~1.0%のバナジウム;
0.5%~2.5%の銅;
0.5%~2%のニッケル;
0.2%~0.4%のマンガン;
0.01%~0.06%のニオブ;
0.1%~1.0%のアルミニウム;
0.00%以下のカルシウム;
1.0%以下の窒素;及び
残部の鉄、並びに偶発元素
からなる溶融物を調製する工程と、
前記溶融物を、1000℃~1150℃の温度で1時間~8時間溶体浸炭した後急冷する工程と;
急冷後、450℃~550℃でプラズマ窒化又は450℃~550℃で焼戻しのいずれかを行う工程と、
を含み、ここで前記表皮部分が0.4質量%の炭素又は0.6~0.8質量%の炭素を含み、及び、前記コア部分が0.1~0.2質量%の炭素を含む、方法。
【請求項10】
1000℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃での焼戻しの後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み、
前記合金は360HV超のコア硬度を有し、前記合金は、銅ナノ析出物及びナノスケールM2C炭化物を含むマルテンサイト系マトリックスを含むミクロ構造を有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃での焼戻しの後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み、
前記表皮部分は、0.6~0.8質量%の炭素を含み;
前記表皮部分は、700HV超の表皮硬度を有し;
前記コア部分は、360HV超のコア硬度を有し;且つ
前記コア部分は、0.1~0.2質量%の炭素を含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記合金は、質量パーセントで:
3.5%~5.5%のクロム;
0.05%~2.5%のモリブデン;
0.2%~0.5%のバナジウム;
1%~2.0%の銅;
0.8%~1.5%のニッケル;
0.2%~0.4%のマンガン;
0.01%~0.05%のニオブ;及び
0.3%~0.8%のアルミニウム
を含む、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記合金を含む製造物品を形成する工程を更に含む、請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記製造物品はギヤ又はシャフトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
NiのCuに対する比は、0.5である、請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月19日に出願された米国仮特許出願第62/632,349号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
本開示は、合金鋼を製造するための材料、方法及び技術に関する。より具体的には、本開示は、析出強化された浸炭可能及び窒化可能な合金鋼に関する。本明細書で開示及び企図される例示的合金鋼は、ギヤ及びシャフトの製造に特に好適である。
【背景技術】
【0002】
ギヤ用鋼は、一般に、比較的低い合金含量(すなわち、合金含量の「不足」)で説明でき、浸炭、窒化、又は浸炭窒化して、高い表面硬度という特性要件を達成できる。表面硬化されたギヤ用鋼は、典型的には、耐摩耗性に寄与する表皮硬化(肌焼き)層(case-hardened layer)と、靭性を改善するギヤのコアとを含む。この分類の鋼で興味深い特性は、疲労性能、特に曲げ及びヘルツ接触疲労である。更に、コア材料の降伏強さ及び破壊靭性は、過荷重破壊に耐えるために有用となり得る。別の興味深い特性は、50~200℃の範囲の実用温度における強度損失への耐性である。ギヤ用鋼用途に必要な材料は生産量が多いことから、合金コスト(材料コスト及び加工コストを含む)を低く保つことも極めて重要である。
一部の高性能ギヤ用合金鋼は、転位の回復を抑制し、それによって焼戻し中の二次析出硬化の改善を促進するために、コバルトを含む。しかし、コバルトの価格上昇及び調達の不確実さから、本開示は、コバルト含有高性能ギヤ用鋼で利用できる特性に類似した特性を有するコバルトフリー合金を目的とする。概して、本開示は、鋼の超高強度浸炭/浸炭窒化においてM2(C,N)炭化物析出強化を促進し、合金コスト低下を達成するために、コバルトの代わりに銅を使用する。コンピュータ設計された合金組成は、コバルトを含まず、高価な元素であるNi、V、及びMoの添加は最小限である。
高温浸炭処理に加え、低温窒化(プラズマ窒化)は、ギヤ用鋼の表皮層における追加硬化相の析出を促進するための有効な方法である。このプロセスにより、ギヤ用鋼中に存在するAl、Ti、Cr、Mo、V等の特定の合金元素の硬質窒化物が形成される。窒化プロセスは、発生する圧縮応力により耐疲労性の改善をもたらし、窒化物の強化は通常、炭化物と比べて、より高温(約500℃)まで安定である。
【発明の概要】
【0003】
一態様において、合金が開示される。例示の合金は、質量パーセントで、3.0%~8.0%のクロム;0.02%~5.0%のモリブデン;0.1%~1.0%のバナジウム;0.5%~2.5%の銅;0.5%~2%のニッケル;0.2%~0.4%のマンガン;0.01%~0.05%のニオブ;0.1%~1.0%のアルミニウム、及び残部の鉄、並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
別の態様では、合金の製造方法が開示される。例示の方法は、質量パーセントで、3.0%~8.0%のクロム;0.02%~5.0%のモリブデン;0.1%~1.0%のバナジウム;0.5%~2.5%の銅;0.5%~2%のニッケル;0.2%~0.4%のマンガン;0.01%~0.05%のニオブ;0.1%~1.0%のアルミニウム、及び残部の鉄、並びに偶発元素及び不純物を含む溶融物を調製するステップを含み得る。方法はまた、上記溶融物を1000℃~1150℃の温度で1時間~8時間溶体浸炭(solution carburizing)し、その後急冷するステップと、急冷後、450℃~550℃でのプラズマ窒化又は450℃~550℃での合金の焼戻しのいずれかのステップと、を含み得る。
本開示によるいくつかの利益を得るために、合金鋼に関する材料、技術又は方法が本明細書で特徴付けられる詳細の全てを含むことは特に要求されない。従って、本明細書で特徴付けられる特定の実施例は、記載された技術の例示的応用であることが意図され、代替が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】コバルトフリーの設計について、硬度の測定値及び予測値(黒丸及び青丸)を、様々な粒子半径のM2C強化マルテンサイト系鋼の炭素(C)含有量の関数として示し、かつ同定された標的銅(Cu)レベル及び対応するCレベル(青×)を示す。異なるM2C半径で達成可能な強度レベルの基準を提供するために、Co含有合金(C61、C64、C67、C70)もプロットされている。
図2】合金組成Fe-1質量%Cu-1質量%Ni-0.3質量%Mn-0.6質量%C-xCr-yMo-zVの擬三元系状態図の等温部分を示し、相領域を、1100℃における固定された炭化物比(x+y+z=2*原子%C=5.56原子%、式中、x、y及びzは原子%単位である)に対する炭化物生成元素(carbide former)の原子分率の関数として識別している。計算は、Thermo-Calcソフトウェア及びQuesTekが開発した熱力学データベースを用いて実施した。
図3】代表的なモデリングのアウトプットであり、設計パラメータ(M2Cの熱力学的駆動力(DF)(kJ/モル)と表皮Ms温度(℃))との間のトレードオフを、固定M2C体積分率について、固定M:C原子比率2:1におけるFe-1Cu-1Ni-0.3Mn-0.6C-xCr-yMo-zV(質量%)の合金化学組成の関数として示す。
図4A】500℃におけるM2C駆動力の変動及びMs温度(℃)をFe-1Cu-1Ni-0.3Mn-0.4C-xCr-yMo-zVの化学組成の関数として示す三元特性図である。M:C原子比は3:1である。
図4B】1100℃における図4Aと同じ組成変化を有する疑三元系状態図である。
図5】500℃において、M:(C+N)比が2:1のFe-1Cu-1Ni-0.3Mn-0.4C-0.23N-xMo-yCr-zV合金中の超飽和BCC固溶体からのM2(C,N)の駆動力の変動を示す三元特性図である。
図6A】0.6質量%の炭素を有する設計合金2Hについて、表皮部分における平衡相を温度の関数として示した熱力学的計算を示す。
図6B】0.15質量%の炭素を有する合金2Hについて、コア部分における平衡相を温度の関数として示した熱力学的計算を示す。
図6C】0.4質量%C及び0.65質量%Nの設計合金2Hについて、浸炭に続くプラズマ窒化の後の状態を表す表皮領域における平衡相を温度の関数として示した熱力学的計算を示す。計算は、市販データベースTCFE9を用い、動力学的に好ましくない炭化物相は除外して実施した(例えば、M73、M236、M32)。
図7】実験合金の生成に伴う工程の時間-温度の概略を示す。
図8】浸炭したまま(as-carburized)の2H合金の断面硬度プロファイルを2種類の浸炭サイクル(B1及びB2)を用いて示す。図8には、異なる表皮深さにおける炭素含有量の測定値も示す。
図9】2H-B1浸炭サイクルにより浸炭され、480℃で異なる時間にわたって時効(aging)された2H合金の断面硬度プロファイルを示す。
図10】2H-B1浸炭サイクルにより浸炭され、520℃で異なる時間にわたって時効された2H合金の断面硬度プロファイルを示す。
図11】2種類の時効温度で時効された2H-B1浸炭サンプルの断面光学顕微鏡写真を示す。
図12】2H-B2浸炭サイクルにより浸炭され、520℃で異なる時間にわたって時効された2H合金の断面硬度プロファイルを示す。
図13】2H-B2合金について、520℃で16時間の時効後の表面に近い表皮領域、遷移領域(表面から約1mm)、及びコア(表面から>2.5mm)のミクロ構造の光学顕微鏡図を示す。
図14】2H-CC-B2+PINサンプルの断面硬度プロファイルであり、コア領域と比べて表面硬度の増加を示す。
図15】2H-CC-B2+PINサンプルの拡散ゾーンの光学顕微鏡写真を示す。
図16】2H-CC-B2浸炭及び520℃/16時間時効処理したサンプルの表皮領域における相分布を示す3次元アトムプローブトモグラフィ再構成である。Cu粒子は4.5質量%の等濃度表面で輪郭が描かれ、炭化物相は7.5質量%の等濃度表面で輪郭が描かれている。
図17図16に示す3次元アトムプローブトモグラフィの拡大部分を示す。
図18図16に示す炭化物の組成の近接ヒストグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で開示及び企図される材料、方法及び技術は、合金鋼に関する。より具体的には、本開示はナノ炭化物析出強化された浸炭可能及び窒化可能な合金鋼に関する。二次硬化は、M2C炭化物の析出強化及び核生成の促進のための銅(Cu)添加と組合せて使用できる。典型的には、本明細書に開示される例示的合金鋼は、コバルトを含まない、又は0.001質量%未満のCoを含む。
概して、例示的合金ミクロ構造は、主にマルテンサイト系で、BCC-Cu析出物及びM2Xナノスケール炭化物、窒化物、又は浸炭窒化物が添加されており、ここでMは、Mo、Nb、V、Ta、W、Crを含む群から選択される1つ以上の元素であり、XはC及び/又はNである。これらの析出物の組成、サイズ、画分及び分布は、合金の機械的特性に影響し得る。
通常、析出物は、主にM2X、ある程度はMXの形態で存在し、他の、より大きなサイズの粒子は存在しない。析出物は、約10ナノメートル未満のサイズ(平均直径)を有し得る。場合によっては、析出物は、約3ナノメートル~5ナノメートルの範囲の平均直径を有する。通常、例示的合金は、セメンタイト、M236、M6C及びM73等の、他の、より大規模なインコヒーレント炭化物を含まない。トポロジカル最密充填(TCP)金属間相等の他の脆性相も通常は回避される。
例示的合金は、窒化加工処理の後に形成されたAlN析出物も含み得る。窒化アルミニウムは、非常に有効な強化層であり、良好な表皮硬化をもたらすことができる。これは、AlNが高い熱力学的安定性を有し、Al含有鋼のプラズマ窒化時に表皮層内に容易に形成するからである。Alの添加は固溶体強化にも寄与する場合があり、M2C炭化物の析出のための駆動力をわずかに増加し得る。
例示的合金組成物は、十分に高いマルテンサイト開始(Ms)温度を維持して、液体浸漬に続く急冷の後で、完全なマルテンサイト生成を確保すること、M2C析出のための十分に高い駆動力を達成すること、及び/又はナノスケール炭化物析出するための豊富な核生成部位(転位及びCu析出)を提供することを目的として、残部の溶質元素を含み得る。耐開裂性は、適切なNi添加と、焼ならし又は溶体化処理温度における粗大化に耐える安定なMC炭化物分散を通じた結晶細粒化促進とによって増進できる。Alを添加して表皮層内にAlN析出物を形成することで、更なる表皮硬化を促進できる。例示的合金組成物及び熱処理は、靭性及び疲労耐性を制限し得る他の分散粒子を最少化又は排除するように最適化できる。例示的合金組成は、生産スケールのインゴット凝固条件下でのミクロ偏析を制限するよう制約され得る。
【0006】
I.例示の設計考慮事項
本明細書に開示される合金鋼の例示的態様は、1つ以上の例示の設計考慮事項に関し得る。例えば、1つの設計考慮事項は、高硬度のための二次硬化の使用、並びに析出強化及びM2C炭化物の核生成促進のための銅(Cu)添加に関する。ナノスケールBCC-Cu析出物は時効中に生成し、合金強度に寄与する。Cu析出物によって提供される追加のM2C核生成部位は、時効応答を増進する。Cuは、近距離秩序にも有効であり、転位回復を遅延する。Cu添加量は、特に、高い数密度の炭化物析出物が望ましい表皮浸炭領域において、十分な核生成部位をもたらすように慎重に制御する必要がある。過剰のCu添加は、そのコストと、熱脆性問題を予防するために少なくとも0.5のNi/Cu比を維持する追加のNiのコストと、によって合金のコストを増加する。
別の例示の設計考慮事項は、効果的な析出を達成するためにM2C駆動力を最大にすることに加えて、合金化の適切なバランスを確保することである。高い硬度及び強度は、Cr、Mo、及びV等の炭化物生成元素を添加することによって制御できる。所望の硬度及び強度レベルを達成するには、M2C炭化物析出のための熱力学的駆動力を最大にする必要がある。これを、必要な溶体浸炭温度、及び合金化の増加と共に増加するミクロ偏析挙動等の加工考慮事項に照らして、加工時間及び温度を最低にすることを目的として、バランスをとる。合金の硬度は、相分率及び熱処理加工中に達成可能な、M2C炭化物のサイズに依存し得る。
別の例示の設計考慮事項は、十分に高いMs温度、並びに規定されたM:(C+N)原子比を維持しながら、M2(C,N)駆動力(DF)を最大にするためのCr、Mo、及びV含有量の最適化である。十分に高いMs温度を維持することで、ラスマルテンサイトへの完全変態を確実とする。ラスマルテンサイトは、プレートマルテンサイトと比べて卓越した靭性を示すだけでなく、M2C炭化物の不均質核生成を助ける高度に転位した構造でもある。赤熱脆性、Ms及び靭性のバランスをとる際の別の考慮事項は、脆性化相(例えば、TCP、シグマ相)の形成を避けて、熱力学的に不安定であることを確実とすることである。浸炭レベルと窒化レベルの比(C:N比)は、炭化物による強化と窒化/浸炭窒化による強化の対比及び高温浸炭と低温度窒化処理とで達成可能な硬化深さの違いに基づいて決定される。
別の例示の設計考慮事項では、表面硬度を最大にするための表皮浸炭レベル及び窒化レベルの最適化である。これは、表面浸炭窒化層とその下の浸炭層との間の硬度の差を管理することを含む。Cr、Mo、及びVに加え、別の強力な窒化物形成剤であるアルミニウムを添加して、窒化プロセス中にAlN相の形成を通じて表面硬度を更に改善できる。プラズマ窒化レベルは、利用可能な「M」元素の量に基づき、M2C析出物の形態で結合するものを考慮し、非常に安定なAIN強化析出物の形成に必要なもの考慮した後で決定できる。合金は、溶体浸炭を施した後、室温まで急冷し、次いで直接プラズマ窒化して、浅部の高硬度表皮窒化層(M2(C,N)、Cu及び.AlN析出物からなる)を、その下の深部浸炭表皮層(M2C及びCu析出物からなる)及びCu析出物と少量のナノスケール炭化物とからなるコアと共に形成する。
例示的特性及び加工上の制約は、表1に示すように、数種類の設計パラメータに関して定量化される。これらの設計パラメータの予測に使用したコンピュータ計算ツール/モデルも、表1に一緒に示す。
【表1】
【0007】
II.例示的合金
A.例示的合金モデリング
計画策定時に、規定された標的表面硬度レベル(700HVに相当)を最初に使用して、要求される浸炭レベル及び必要な銅添加量を決定する。ビッカース硬度は、金属材料に関する標準ASTM E92-17法に従って測定される。次いで、マトリックス組成を、標的とするマルテンサイト開始温度(Ms)、耐開裂性、赤熱靭性制御、及び強化分散の最適化のための適切なNi含有量を得るために繰り返し最適化して、Cr、Mo、及びV含有量を設定する。これらの元素添加は、M2C駆動力、溶体浸炭温度及びミクロ偏析に影響する。
例示的合金の硬度は、Ferrium C61、C64、C67、C70合金からの過去のデータを利用するQuesTek開発モデル、並びに、Tiemens et al.Tiemens,Benjamin Lee.「PPerformance Optimization and Computational Design of Ultra-High Strength Gear Steels」(2006);Tiemens,Benjamin L.,Anil K.Sachdev,and Gregory B.Olson.「Cu-precipitation strengthening in ultrahigh-strength carburizing steels」、Metallurgical and Materials Transactions A 43.10 (2012):3615-3625に報告された研究に基づくCu設計を用いて予想した。
異なる鋼について報告された表皮硬度レベルが、その表皮炭素レベル及び実験的に観察された強化炭化物析出物の半径の関数として、図1にプロットされている。低コストギヤ用合金の設計について、既存データは、1質量%のCu含有量及び0.6質量%Cの表皮浸炭で、700HVを超える標的硬度を達成するのに十分であり、その析出物サイズは25オングストロームを超える可能性が高いことを示唆している。その後の窒化処理の使用により、更なる硬度改善が得られる場合がある。
浸炭レベル及び溶体浸炭温度を、溶体浸炭ステップの間に系が単相FCCオーステナイト領域に残留するように設計することで、その後の時効処理中に炭化物析出を最大にすると考えられるFCC相への最大C取り込みを可能とした。別の考慮事項は、溶体浸炭温度を大型工業炉の能力/限度(約1100℃と想定される)内に制限することである。別の考慮事項は、溶体浸炭中の一次炭化物の形成を避けることである。なぜなら、一次炭化物は、機械的特性に有害であることに加え、M2C強化析出物の生成に必要な炭素及び炭化物生成元素を消費するからである。加工コスト削減のために、溶体浸炭温度を現在の製造炉能力内に保持すること、及び短時間であること(温度で数時間以内)が望ましくなり得る。一例として、限定するものではないが、上記定義の条件/制約及びICMEツールの使用に基づき、0.6質量%の表皮Cレベルを、1100℃の溶体浸炭温度の表皮炭素レベルとして決定した。
【0008】
図2は、単相FCCオーステナイトが溶体浸炭温度の1100℃において安定である組成境界を識別するために使用した熱力学的モデリングのアウトプットである。単相組成ウインドウは通常、温度の上昇と共に増大する。図2から、最大溶体浸炭温度の1100℃においてこの例示の化学組成に望ましい相領域は、上右(Crリッチ)角部であることがわかる。このプロットにおいて、細い線は相境界を表し、太い点線は問題の例示の合金組成物を示す。単相FCC組成ウインドウは、最適性能に望ましい合金組成の領域を狭くする。
浸炭温度における単相FCCを確実にすることに加え、強化M2C析出物の急冷及び析出時に形成されるマルテンサイトの量は、強度標的の達成に影響し得る。三元系特性図(図3に示す)は、析出強化合金元素(Cr、V、Mo)が、他の元素の固定組成に関する主要特性目標(Ms温度、M2C駆動力)、炭素含有量、及びM2C体積分率、すなわち、M:C原子比に及ぼす影響を描いている。M2C駆動力及びMs温度は、三元系Cr-Mo-V空間における表皮炭素レベルにおいて計算される。この機械的特性が最適化された化学空間における制限要因は、最大温度の1100℃における溶体化焼なまし時の完全オーステナイトミクロ構造を、十分に高いMs温度及びM2C炭化物析出のために十分な駆動力と共に確保することである。
駆動力、Ms及び単相FCCの要件に適合する組成空間は、三元系状態図のCrリッチな角部である。このFCCオーステナイト単相組成物領域において、M2C析出駆動力は、設定された表皮硬度目標を達成するために必要な駆動力に近く、Ms温度は必要な表皮Ms温度限度を上回る。この組成空間内の一連の合金組成は、設計要件の1つ以上を満足するが、その性能及びコストレベルは異なることが明らかになった。この概要(2A-2F合金)を、他の設計合金組成と共に、表2に示す(下記)。
【0009】
B.例示的合金成分及び特性
例示の合金鋼は、クロム、モリブデン、バナジウム、銅、ニッケル、マンガン、ニオブ、アルミニウム、及び鉄を含み得る。例示的合金に浸炭及び/又は窒化(例えば、プラズマ窒化)を施した後、合金は、追加的に炭素及び/又は窒素を含み得る。場合によっては、合金は、結晶粒ピニング粒子として作用し得るMX炭化物析出物を含み得る。典型的には、例示の合金鋼はコバルトを含まない。場合によっては、例示の合金鋼は、0.001質量%未満のCoを含む。
場合によっては、例示の合金は、質量パーセントで、3.0%~8.0%のクロム;0.02%~5.0%のモリブデン;0.1%~1.0%のバナジウム;0.5%~2.5%の銅;0.5%~2.0%のニッケル;0.2%~0.4%のマンガン;0.01%~0.05%のニオブ;0.1%~1.0%のアルミニウム、及び残部の鉄、並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
場合によっては、例示の合金は、質量パーセントで、3.5%~5.5%のクロム;0.05%~2.5%のモリブデン;0.2%~0.5%のバナジウム;1.0%~2.0%の銅;0.8%~1.5%のニッケル;0.2%~0.4%のマンガン;0.01%~0.05%のニオブ;0.3%~0.8%のアルミニウム;約1.0%以下の窒素、及び残部の鉄、並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
場合によっては、例示の合金は、質量パーセントで、3.2%~4.9%のクロム;0.08%~3.3%のモリブデン;0.24%~0.4%のバナジウム;1%~1.6%の銅;0.8%~1%のニッケル;0.2%~0.4%のマンガン;0.01%~0.05%のニオブ;0.6%~0.8%のアルミニウム;約1.0%以下の窒素、及び残部の鉄、並びに偶発元素及び不純物を含み得る。
例示の合金は、質量パーセントで、3.0%~8.0%のクロムを含み得る。例えば、例示的合金は、質量パーセントで、3.0%~7.0%のクロム;3.0%~6.0%のクロム;3.0%~5.0%のクロム;4.0%~8.0%のクロム;4.0%~7.0%のクロム;4.0%~6.0%のクロム;3.5%~5.5%のクロム;4.5%~6.5%のクロム;3.2%~4.9%のクロム;又は5.0%~7.0%のクロムを含み得る。
例示の合金は、質量パーセントで、0.02%~5.0%のモリブデンを含み得る。例えば、例示的合金は、質量パーセントで、0.02%~4.0%のモリブデン;0.02%~3.0%のモリブデン;0.02%~2.0%のモリブデン;0.02%~1.0%のモリブデン;0.05%~2.5%のモリブデン;0.05%~3.5%のモリブデン;0.08%~3.3%のモリブデン;0.1%~3.0%のモリブデン;0.5%~3.5%のモリブデン;1.0%~4%のモリブデン;2.0%~4%のモリブデン;又は1.5%~3.5%のモリブデンを含み得る。
例示の合金は、質量パーセントで、0.1%~1.0%のバナジウムを含み得る。例えば、例示的合金は、質量パーセントで、0.1%~0.75%のバナジウム;0.2%~0.8%のバナジウム;0.2%~0.5%のバナジウム;0.24%~0.4%のバナジウム;0.4%~0.9%のバナジウム;0.5%~1.0%のバナジウム;0.3%~0.6%のバナジウム;又は0.6%~0.8%のバナジウムを含み得る。
例示の合金は、質量パーセントで、0.5%~2.5%の銅を含み得る。例えば、例示的合金は、質量パーセントで、0.5%~2.0%の銅;1.0%~2.0%の銅;1.5%~2.5%の銅;1.0%~1.6%の銅;0.75%~2.25%の銅;又は1.0%~2.5%の銅を含み得る。
例示の合金は、質量パーセントで、0.5%~2.0%のニッケルを含み得る。例えば、例示的合金は、質量パーセントで、0.5%~1.5%のニッケル;0.8%~1.5%のニッケル;0.8%~1.0%のニッケル;1.0%~2.0%のニッケル;0.75%~2.0%のニッケル;又は1.5%~2.0%のニッケルを含み得る。場合によっては、例示の合金は、ニッケル(Ni)の銅(Cu)に対する比が、少なくとも約0.5;0.5~1.0;0.5~0.75;約0.5;又は0.5であり得る。
例示の合金は、質量パーセントで、0.2%~0.4%のマンガンを含み得る。例えば、例示的合金は、質量パーセントで、0.2%~0.3%のマンガン;0.25%~0.4%のマンガン;0.3%~0.4%のマンガン;又は0.25%~0.35%のマンガンを含み得る。
例示の合金は、質量パーセントで、0.01%~0.05%のニオブを含み得る。例えば、例示的合金は、質量パーセントで、0.01%~0.03%のニオブ;0.03%~0.05%のニオブ;0.02%~0.04%のニオブ;0.015%~0.035%のニオブ;0.01%~0.04%のニオブ;0.02%~0.05%のニオブ;又は0.03%~0.05%のニオブを含み得る。
例示の合金は、質量パーセントで、0.1%~1.0%のアルミニウムを含み得る。例えば、例示的合金は、質量パーセントで、0.1%~0.75%のアルミニウム;0.2%~0.8%のアルミニウム;0.2%~0.5%のアルミニウム;0.24%~0.4%のアルミニウム;0.4%~0.9%のアルミニウム;0.5%~1.0%のアルミニウム;0.3%~0.6%のアルミニウム;0.3%~0.8%のアルミニウム;0.7%~1.0%のアルミニウム;0.6%~0.8%のアルミニウムを含み得る。場合によっては、浸炭されるがプラズマ窒化されない例示の合金は、0.1質量%未満のアルミニウム又は0.01質量%未満のアルミニウムを含み得る。
【0010】
開示される合金鋼中の偶発元素及び不純物としては、ケイ素、酸素、リン、硫黄、スズ、アンチモン、ヒ素、及び鉛が挙げられるがこれらに限定されない。場合によっては、偶発元素及び不純物は、原材料に付着し得る。偶発元素及び不純物は、本明細書に開示される合金中に、合計で0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.01質量%以下、又は0.001質量%以下の量で存在し得る。場合によっては、偶発元素及び不純物は、合金中に以下の量で存在し得る:0.05質量%以下のリン、0.03質量%以下の硫黄、0.075質量%以下のスズ、0.075質量%以下のアンチモン、0.075質量%以下のヒ素、及び0.01質量%以下の鉛。
【0011】
1000℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃で2時間~48時間の時効の後、合金は、表皮部分とコア部分とを含み得る。場合によっては、合金は、700HV超;750HV超;又は800HV超の表皮硬度を有する。場合によっては、表皮部分は0.6~0.8質量%の炭素を含む。場合によっては、合金の表皮深度は2mmを超える。場合によっては、合金は、360HV超;400HV超;450HV超;又は500HV超のコア硬度を有する。典型的には、合金は、銅ナノ粒子及びナノスケールM2C炭化物を含む、マルテンサイト系マトリックスを含むミクロ構造を有する。場合によっては、表皮部分は、700HV超の表皮硬度を有する。場合によっては、コア部分は0.1~0.2質量%の炭素を含む。
1050℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃で2時間~48時間のプラズマ窒化の後、下記のように、合金は、表皮部分とコア部分とを含み得る。場合によっては、表皮部分はAlN、Cr2N、M2(C,N)と体心立方銅相とを含む強化析出物を有する完全ラスマルテンサイトマトリックスを含む表皮ミクロ構造を含む。場合によっては、表皮部分は0.3~0.6質量%の炭素及び0.1~1.0質量%窒素を含み、900HV超;950HV超;又は1000HV超の表皮硬度を有する。場合によっては、浸炭合金の表皮深さは2mmを超える。場合によっては、窒化合金の表皮深さは0.2mmを超える。場合によっては、コア部分は、M2Cと体心立方銅相とを含む強化析出物を有する完全ラスマルテンサイトマトリックスを含むコアミクロ構造を含む。場合によっては、コア部分は、360HV超;400HV超;450HV超;又は500HV超の硬度を有する。
【0012】
III.時効中のプラズマ窒化又は浸炭窒化
浸炭に加え、時効処理中のプラズマ窒化も、表面特性の更なる改善のために利用できる。プラズマ窒化の操作温度及び時間は、炭化物析出を可能にする浸炭合金の時効を自動的に確実とすることもできる。合金組成設計は、これらのM2C-強化された浸炭ギヤ用鋼の窒化中に表面硬度を改善するため、窒化物相(窒化クロム及び窒化アルミニウム)の析出を最適化した。
初期設計計算は、表皮炭素含有量を0.4質量%まで低下させて、より多くのM(例えば、Cr、Mo、V)が窒化物形成に利用できるようにすることで実施した。モデル化計算では、0.6質量%CでM:C比が2:1の場合と比べて、合金化添加物がほぼ同量であることを確実とするため、M:Cの比を3:1に増やした。この表皮Cレベルは、予測される総表皮硬度(CrリッチなM2C/M2(C,N)析出を含む)が標的表皮硬度値に近づくように選択した。0.4質量%Cは、その後の窒化に良好なバランスをもたらすことが特定された;表皮Cを0.4質量%未満まで低下させると、窒化層の下の浸炭層が低硬度を有する可能性が高くなるが、表皮Cを0.4%超まで増やすと、窒化/浸炭窒化析出から硬度への寄与が不十分になると考えられる。浸炭のみの場合、表皮層の上限は0.6質量%C~0.8質量%Cである。
低い表皮Cレベルについて、計算された特性予測図を4A及び図4Bに示す。結果は、浸炭レベルが0.6Cである同じベース合金組成物と比べて、M2C駆動力の大きな変化がないこと、及び浸炭後の表皮Ms温度が上昇することを示唆している。図4Bに示すように、有効溶体化温度ウインドウは、低C含有量の方が大きい。これは、溶体浸炭温度における単相FCCの確保を容易にする。
C含有量を低減し、利用可能なM2C生成元素(「M」=Cr、V、Mo)を増加した設計の場合、計算では、Nを添加すると(化学量論比M:(C+N)が2:1の場合)、図5に示すようにM2(C,N)の駆動力が増大する。これらの計算は、パラ平衡析出物を考慮に入れずに、超飽和BCCマトリックスからのM2(C,N)析出を想定して実施される。計算は、駆動力、更には強化M2(C,N)析出物の相分率も増大することを示唆しており、これは、より高い表皮硬度を生じるはずである。
完全浸炭状態のM2C析出の駆動力と比べて、浸炭+窒化状態のM2(C,N)析出物の駆動力は、Cr及びMoの添加に等しく依存するとみられる。従って、表皮Cを0.4質量%まで低減することは、窒化による硬度改善のための十分なCrを解放し、表皮層の全体的な標的硬度を達成すると同時に、その下の浸炭のみの表皮層に十分な最小限の硬度を維持すると予測される。
【0013】
IV.例示的製造方法
本明細書で開示及び企図される例示の合金鋼は、様々な例示的方法で形成できる。例示の方法は、溶融物の調製、キャスティング及びそれに続く鍛造、溶体浸炭、急冷、及び、その後の合金のプラズマ窒化又は時効を含み得る。場合によっては、浸炭は、表皮部分における炭素含有量が約0.6質量%~約0.78質量%まで、時効と組み合わされてもよい。場合によっては、浸炭は、表皮部分における炭素含有量が約0.45質量%~約0.55質量%まで、プラズマ窒化と組み合わされてもよい。
例えば、合金の製造方法の例は、質量で、3.0%~8.0%のクロム;0.02%~5.0%のモリブデン;0.1%~1.0%のバナジウム;0.5%~2.5%の銅;0.5%~2%のニッケル;0.2%~0.4%のマンガン;0.01%~0.05%のニオブ;0.1%~1.0%のアルミニウム、及び残部の鉄、並びに偶発元素及び不純物を含み得る溶融物を調製するステップを含むことができる。他の元素の組合せ、例えば、上記の例示的量が企図される。場合によっては、溶融物は均質化される。均質化温度及び時間は、合金の成分に基づいて選択されてもよい。例えば、均質化は、約1230℃で約16時間実施されてもよい。
次に、溶融物は、溶体浸炭を施されてもよい。場合によっては、ロール圧延及び/又は平坦化を、溶融物の調製後であるが溶体浸炭の前に実施してもよい。
溶体浸炭は、約1000℃~約1150℃の温度で実施されてもよい。様々な実施において、溶体浸炭は、1000℃~1150℃;1025℃~1150℃;1050℃~1150℃;1000℃~1100℃;1025℃~1125℃;1050℃~1100℃;又は1025℃~1075℃の温度で実施されてもよい。様々な実施形態において、溶体浸炭は、1時間~8時間;2時間~8時間;4時間~8時間;1時間~3時間;3時間~5時間;5時間~7時間;又は6時間~8時間実施されてもよい。
溶体浸炭の後に急冷が続いてもよい。急冷の後、方法は、合金のプラズマ窒化又は時効のいずれかを含み得る。プラズマ窒化は、真空容器内で実施される低温プロセスで、該容器内で高電圧の電荷がプラズマを生成し、窒素イオンの加速及び金属への衝突を引き起こす。プラズマ窒化中に使用される例示的ガス混合物は、窒素(N2)及び水素(H2)を、20%~80%の比率で含む。
様々な実施において、プラズマ窒化は、450℃~550℃;475℃~525℃;450℃~500℃;500℃~550℃;475℃~500℃;500℃~525℃;525℃~550℃;又は515℃~525℃で実施されてもよい。様々な実施において、プラズマ窒化は、2時間~36時間;8時間~36時間;12時間~36時間;16時間~36時間;20時間~36時間;又は22時間~36時間実施されてもよい。
様々な実施において、時効は、450℃~550℃;475℃~525℃;450℃~500℃;500℃~550℃;475℃~500℃;500℃~525℃;525℃~550℃;475℃~485℃;又は515℃~525℃で実施されてもよい。様々な実施において、時効は、2時間~16時間;4時間~16時間;8時間~16時間;12時間~16時間;2時間~4時間;4時間~8時間;約2時間;約4時間;約8時間;又は約16時間実施されてもよい。
【0014】
V.例示の用途
本明細書で開示及び企図される例示の合金は、様々な実施において使用できる。場合によっては、例示の合金は、高い表皮硬度及び/又は高いコア硬度が、改善されたコア靭性と共に要求される用途で利用される製造物品に使用され、例示の製造物品としては、ギヤ及びシャフトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
VI.例示的合金組成
様々な例示的合金組成を、コンピュータ計算及び実験的に評価した。選択された属性を以下に論じる。
【0016】
A.例示の合金組成の計算されたパラメータ
上で論じた1つ以上の設計パラメータに基づき、1組の合金組成を、浸炭、窒化レベル及び溶体浸炭温度と共に設計した。下の表2は、表皮硬化鋼に関して提案された各種組成を示し、表3は、表2に示す合金の設計パラメータの計算値を示す。
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
表示のとおり、例示的合金は、0.3質量%のMnを含み、空気溶融キャスティング工程において、典型的な硫黄不純物を除去し得る。表2の生成合金には、Nb(C,N)を形成するために0.01~0.05質量%のNbと約0.01質量%のNとがコア組成に添加されており、これは結晶粒微細化析出物として作用し得る。
0.6質量%の表皮C及び0.15質量%のコアCレベルについて、合金2Hの平衡計算を、温度の関数として図6A及び図6Bに示す。結果は、結晶粒ピニング粒子(Nb,V)Cが、溶体浸炭温度に近い十分に高い温度安定性であることを示す。450℃~550℃の時効温度において、M2C炭化物は、Cu相と共に安定であることがわかる。0.4質量%の表皮C及び0.65質量%の表皮Nレベルについて、合金2Hの平衡計算を、温度の関数として図6Cに示す。結果は、プラズマ窒化処理の範囲内の温度における強化AlN、Cu、M2C、及びM2N析出物の析出を予測する。
【0019】
B.例示的実験合金
様々な例示的実験合金を試作した。実験合金を、図7の時間-温度概略図に従って加工し、これは次の操作を含んだ:(1)均質化、(2)ロール圧延、(3)平坦化、(4)溶体浸炭、(5)急冷、及び(6)時効(a)又はプラズマ窒化(b)のいずれか。各種の加工ステップを、各ステップの例示的温度及び時間と共に概説する。
実験的に研究した合金を均質化して組成偏析を除去し、次いで熱間圧延して、結晶粒の再結晶化を開始することによって結晶粒構造を微細化した。これに続いて、溶体浸炭及び急冷を行い、表皮硬化のためのマルテンサイト系マトリックスミクロ構造を有する炭素リッチ表皮層を作製した。次いで、浸炭サンプルを焼戻しして表皮硬化を得る、又はプラズマイオン窒化を施して表皮硬度を更に改善する。
【0020】
下の表4は、実験合金の設計組成と測定組成とを示す。
【表4】
【0021】
試作合金に、2種類の浸炭サイクル、即ち2H-B1(完全浸炭)及び2H-B2(部分浸炭)を施した。この2種類のサイクルは、2種類の表皮炭素レベルを標的とした。
浸炭サンプルの断面全体で測定した硬度を、異なる深さにおいて測定した炭素含有量と共に、図8に示す。各深さにおける3回の別々の測定を、ビッカース硬度圧子を用いて、荷重0.5kgf及び荷重保持時間10秒で実施した。炭素含有量は、発光分光分析装置(OES)を用いて様々な表皮深さで測定した。図8は、浸炭したまま(as-carburized)の状態の2H-B1で、約800HVに近い表皮硬度を示す。いずれの浸炭サイクルも、2mmを超える表皮深さを示す。
B1浸炭サイクルで浸炭した2H試作合金を、2種類の時効温度で時効して強化M2C炭化物相を析出させた。これらの相の析出は、表皮硬度を改善し、表皮硬度プロファイルに焼戻し安定性をもたらし得る。浸炭したままの状態は、急冷されたミクロ構造及びそれに伴う応力により、最も高い硬度を有するが、高温に晒されると非常に不安定となり得ることがわかる。
図9に示すように、480℃での焼戻しは、2時間~24時間の範囲で表皮領域とコア領域で全体的な硬度増加を示す。図10に示すように、520℃での焼戻しも、強化析出物の析出により、類似の硬化応答を示す。析出の反応速度は520℃の方が速いが、この温度は時効時間が長くなると過時効を招き得るとみられる。
【0022】
図10は、表面に近い表皮領域、遷移領域(表面から約1mm)、及びコア(表面から>2.5mm)における合金のミクロ構造の顕微鏡写真を示す。表示されたミクロ構造は、CC-B1サイクルで浸炭し、その後480℃及び520℃で16時間時効したサンプルのものである。画像は、全ての領域でマルテンサイト系ミクロ構造を示し、表面に近い領域に多少の残留オーステナイトを有する。
2H合金に、より低い表皮炭素レベルを目的としたCC-B2浸炭サイクルも施した。図12は、浸炭したままの状態及び520℃で異なる時間時効した後の硬度プロファイルを示す。結果は、表皮硬度プロファイルの優れた焼戻し安定性及びミクロ構造全体を通した析出強化の証拠を示す。520℃で16時間の時効後の表面に近い表皮領域、遷移領域(表面から約1mm)、及びコア(表面から>2.5mm)のミクロ構造を図13に示す。
2H-CC-B2(低浸炭)サンプルに、20%のN2と80%のH2との気体混合物を用いて520℃で24時間のプラズマイオン窒化(PIN)を施した。PINプロセスは、はるかに深い表皮深度(>2mm)を有する浸炭層の頂部の浅部(約0.2mm)までの追加の表面硬化をもたらすために行った。強化炭化物を析出するための浸炭ミクロ構造の焼戻しは、520℃でのPIN加工中に起こると考えられる。浸炭+窒化サンプルの断面硬度測定を図14に示す。3種類の硬度領域、すなわち、浸炭+窒化、浸炭のみ、及びコア領域が図に標識されている。サンプルの断面全体のミクロ構造を図15に示す。拡散ゾーンは、PINプロセス中に合金内への窒素拡散によって影響を受けた領域である。
【0023】
C.アトムプローブトモグラフィ
局所電極型アトムプローブ(LEAP)研究を利用して2H-CC-B2サンプルの浸炭表皮領域における元素の原子分布を再構成した。再構成領域の平均炭素(C)含有量は0.37質量%であった。これは、コアの0.2質量%よりも高いが表皮レベルの約0.6質量%よりも低い。このサンプルを520℃で16時間時効して、強化炭化物の析出及び銅析出を確実とした。M2C炭化物(7.5質量%C等濃度表面)及び銅析出物(4.5質量%Cu等濃度表面)について界面をおおまかに示したイオン再構成を図16に示す。
銅析出物とマトリックスとの界面におけるM2C炭化物の析出は、図17に示すように、Cu析出物とM2C炭化物の近接性によって示される。図17は、図16に示す3次元アトムプローブトモグラフィの拡大部分を示し、より具体的には、複数の銅粒子で囲まれた炭化物の1つの画像である。銅粒子は、画像の中心にある隣接するM2C炭化物に接続していることがわかる。
近接ヒストグラムにより測定した炭化物の組成を、炭化物/マトリックス界面前後の組成の平均的変動を測定した図18に示す。炭化物は、主要M2C生成元素である炭素とクロムに富むことがわかる。Cr/Cの比は約2:1であり、M2C炭化物析出の明白な証拠である。図18のプロットはマトリックス/炭化物界面の近くに銅リッチ領域の存在も示し、これは銅粒子の存在に起因する可能性が高い。これらの結果は、設計された合金ミクロ構造が、マトリックス/Cu界面に近接して形成された微細ナノスケールM2C炭化物を含むことを実証する証拠を与える。炭化物の内側のFe及び銅粒子の存在は、LEAP研究で再構成された小さな粒子中の主要構成元素の局所拡大効果が原因であると特定できる。
【0024】
本明細書における数値範囲の記述に関して、該数値範囲の間に介在する各数値は、同一の正確度で企図されている。例えば、6~9という範囲に対して、数値7及び8が、6及び9に加えて企図されており、また6.0~7.0という範囲に対して、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0が企図されている。別の実施例では、圧力範囲が大気圧と別の圧力との間として記載されるとき、大気圧である圧力は明示的に企図される。
上記詳細な説明及び付随する実施例は、単に例示的なものであり、本開示の範囲の制限として理解されるべきではないことは理解される。開示された実施形態に対する様々な変更及び修正は、当業者にとっては明らかであろう。このような変更及び修正は、化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成、処方、又は使用方法に関連するものを含むがこれらに限定されず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく実施されてもよい。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕質量パーセントで:
3.0%~8.0%のクロム;
0.02%~5.0%のモリブデン;
0.1%~1.0%のバナジウム;
0.5%~2.5%の銅;
0.5%~2%のニッケル;
0.2%~0.4%のマンガン;
0.01%~0.05%のニオブ;
0.1%~1.0%のアルミニウム、及び
残部の鉄、並びに偶発元素及び不純物
を含む、合金。
〔2〕1000℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃での焼戻しの後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み、
前記合金は360HV超のコア硬度を有し、前記合金は、銅ナノ析出物とナノスケールM 2 C炭化物とを含むマルテンサイト系マトリックスを含むミクロ構造を有する、前記〔1〕に記載の合金。
〔3〕1000℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃での焼戻しの後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み、
前記表皮部分は、0.6~0.8質量%の炭素を含み;
前記表皮部分は、700HV超の表皮硬度を有し;
前記コア部分は、360HV超のコア硬度を有し;且つ
前記コア部分は、0.1~0.2質量%の炭素を含む、前記〔1〕に記載の合金。
〔4〕1000℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃の温度でのプラズマ窒化の後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み;
前記表皮部分は0.3~0.5質量%の炭素及び0.4~1.0質量%の窒素を含み、且つ1000HV超の表皮硬度を有する、前記〔1〕に記載の合金。
〔5〕1000℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃の温度でのプラズマ窒化の後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み、
前記表皮部分は、AlN、Cr 2 N、M 2 (C,N)と体心立方銅相とを含む強化析出物を有する完全ラスマルテンサイトマトリックスを含む表皮ミクロ構造を含み;
前記表皮部分は、1000HV超の硬度を有し;
前記コア部分は、M 2 Cと体心立方銅相とを含む強化析出物を有する完全ラスマルテンサイトマトリックスを含むコアミクロ構造を有し;且つ
前記コア部分は、360HV超のコア硬度を有する、前記〔1〕に記載の合金。
〔6〕前記合金は、質量パーセントで:
3.5%~5.5%のクロム;
0.05%~2.5%のモリブデン;
0.2%~0.5%のバナジウム;
1%~2.0%の銅;
0.8%~1.5%のニッケル;
0.2%~0.4%のマンガン;
0.01%~0.05%のニオブ;
0.3%~0.8%のアルミニウム、及び
約1.0%以下の窒素
を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の合金。
〔7〕前記合金は、結晶粒ピニング粒子として作用し得るMX炭化物析出物を含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の合金。
〔8〕前記合金は、コバルトを含まず;且つ
NiのCuに対する比は、約0.5である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の合金。
〔9〕前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の合金を含む、製造物品。
〔10〕ギヤ又はシャフトである、前記〔9〕に記載の製造物品。
〔11〕合金の製造方法であって、
質量パーセントで:
3.0%~8.0%のクロム;
0.02%~5.0%のモリブデン;
0.1%~1.0%のバナジウム;
0.5%~2.5%の銅;
0.5%~2%のニッケル;
0.2%~0.4%のマンガン;
0.01%~0.05%のニオブ;
0.1%~1.0%のアルミニウム、及び
残部の鉄、並びに偶発元素及び不純物
を含む溶融物を調製する工程と、
前記溶融物を、1000℃~1150℃の温度で1時間~8時間溶体浸炭した後急冷する工程と;
急冷後、450℃~550℃でプラズマ窒化又は450℃~550℃で前記合金を焼戻しのいずれかを行う工程と、
を含む、方法。
〔12〕1000℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃での焼戻しの後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み、
前記合金は360HV超のコア硬度を有し、前記合金は、銅ナノ析出物及びナノスケールM 2 C炭化物を含むマルテンサイト系マトリックスを含むミクロ構造を有する、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃での焼戻しの後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み、
前記表皮部分は、0.6~0.8質量%の炭素を含み、
前記表皮部分は、700HV超の表皮硬度を有し;
前記コア部分は、360HV超のコア硬度を有し;且つ
前記コア部分は、0.1~0.2質量%の炭素を含む、前記〔11〕に記載の合金。
〔14〕1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃の温度でのプラズマ窒化の後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み;
前記表皮部分は0.3~0.5質量%の炭素及び0.4~1.0質量%窒素を含み、1000HV超の表皮硬度を有する、前記〔11〕に記載の合金。
〔15〕1000℃~1100℃で1時間~8時間の溶体浸炭及び450℃~550℃の温度でのプラズマ窒化の後、前記合金は表皮部分とコア部分とを含み、
前記表皮部分は、AlN、Cr 2 N、M 2 (C,N)と体心立方銅相とを含む強化析出物を有する完全ラスマルテンサイトマトリックスを含む表皮ミクロ構造を含み;
前記表皮部分は、1000HV超の硬度を有し;
前記コア部分は、M 2 Cと体心立方銅相とを含む強化析出物を有する完全ラスマルテンサイトマトリックスを含むコアミクロ構造を有し;且つ
前記コア部分は、360HV超のコア硬度を有する、前記〔11〕に記載の合金。
〔16〕前記合金は、質量パーセントで:
3.5%~5.5%のクロム;
0.05%~2.5%のモリブデン;
0.2%~0.5%のバナジウム;
1%~2.0%の銅;
0.8%~1.5%のニッケル;
0.2%~0.4%のマンガン;
0.01%~0.05%のニオブ;
0.3%~0.8%のアルミニウム、及び
約1.0%以下の窒素
を含む、前記〔11〕~〔15〕のいずれか一項に記載の方法。
〔17〕前記合金を含む製造物品を形成する工程を更に含む、前記〔11〕~〔16〕のいずれか一項に記載の方法。
〔18〕前記製造物品はギヤである、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕NiのCuに対する比は、約0.5である、前記〔11〕~〔18〕のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
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