(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】炭化水素堆積量推定装置、炭化水素堆積量推定方法、制御装置および排気ガス浄化システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20240425BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240425BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240425BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
F01N3/20 B
F01N3/24 L
F01N3/24 R
B01D53/96 500
B01D53/96 ZAB
B01D53/94 280
(21)【出願番号】P 2021030520
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 光良
(72)【発明者】
【氏名】小野 穣
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-019231(JP,A)
【文献】特開2020-122410(JP,A)
【文献】国際公開第2015/177898(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0087466(US,A1)
【文献】特開2018-084202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/24
B01D 53/96
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、前記内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、前記内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた前記内燃機関の排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の堆積量を推定する炭化水素堆積量推定部
と、
前記第3計測値と、前記排気ガス浄化装置内の温度に対応する第4計測値と、前記排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の増加量との対応関係を、前記内燃機関の環境条件に応じて表す第1対応関係情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記炭化水素堆積量推定部は、前記堆積量を推定する際に、前記第1計測値と前記第2計測値とに基づいて判定された前記内燃機関の環境条件と、前記第3計測値と、前記第4計測値と、前記第1対応関係情報とに基づいて前記増加量を推定し、
前記環境条件は、少なくとも前記内燃機関の燃料噴射制御が低温制御なのか、通常制御なのかを定義するものであり、
前記第1対応関係情報は、前記燃料噴射制御が低温制御のときに適用される低温制御時用の対応関係情報と、前記燃料噴射制御が通常制御のときに適用される通常制御時用の対応関係情報との二種類を少なくとも含む、
炭化水素堆積量推定装置。
【請求項2】
前記環境条件は、前記内燃機関の燃料噴射制御に係る、噴射タイミング、レール圧、パイロット噴射量、パイロット噴射期間、ポスト噴射量の少なくとも一つに係る要因を含む
請求項1に記載の炭化水素堆積量推定装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記第3計測値と、前記第4計測値と、前記排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の減少量との対応関係を表す第2対応関係情報を、さらに記憶し、
前記炭化水素堆積量推定部は、前記堆積量を推定する際に、前記第3計測値と前記第4計測値と前記第2対応関係情報とに基づいて前記減少量を推定する、
請求項1または2に記載の炭化水素堆積量推定装置。
【請求項4】
少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、前記内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、前記内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた前記内燃機関の排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の堆積量を推定するステップ
と、
記憶部に、前記第3計測値と、前記排気ガス浄化装置内の温度に対応する第4計測値と、前記排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の増加量との対応関係を、前記内燃機関の環境条件に応じて表す第1対応関係情報を記憶させるステップと、
を備え、
前記炭化水素の堆積量を推定するステップでは、前記堆積量を推定する際に、前記第1計測値と前記第2計測値とに基づいて判定された前記内燃機関の環境条件と、前記第3計測値と、前記第4計測値と、前記第1対応関係情報とに基づいて前記増加量を推定し、
前記環境条件は、少なくとも前記内燃機関の燃料噴射制御が低温制御なのか、通常制御なのかを定義するものであり、
前記第1対応関係情報は、前記燃料噴射制御が低温制御のときに適用される低温制御時用の対応関係情報と、前記燃料噴射制御が通常制御のときに適用される通常制御時用の対応関係情報との二種類を少なくとも含む、
を含む炭化水素堆積量推定方法。
【請求項5】
少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、前記内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、前記内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた前記内燃機関の排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の堆積量を推定する炭化水素堆積量推定部と、
前記第3計測値と、前記排気ガス浄化装置内の温度に対応する第4計測値と、前記排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の増加量との対応関係を、前記内燃機関の環境条件に応じて表す第1対応関係情報を記憶する記憶部と、
前記内燃機関の排気ガスの昇温制御を実行する昇温制御実行部と、
を備え、
前記炭化水素堆積量推定部は、前記堆積量を推定する際に、前記第1計測値と前記第2計測値とに基づいて判定された前記内燃機関の環境条件と、前記第3計測値と、前記第4計測値と、前記第1対応関係情報とに基づいて前記増加量を推定し、
前記環境条件は、少なくとも前記内燃機関の燃料噴射制御が低温制御なのか、通常制御なのかを定義するものであり、
前記第1対応関係情報は、前記燃料噴射制御が低温制御のときに適用される低温制御時用の対応関係情報と、前記燃料噴射制御が通常制御のときに適用される通常制御時用の対応関係情報との二種類を少なくとも含む、
制御装置。
【請求項6】
少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、前記内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、前記内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた前記内燃機関の排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の堆積量を推定する炭化水素堆積量推定部
と、
前記第3計測値と、前記排気ガス浄化装置内の温度に対応する第4計測値と、前記排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の増加量との対応関係を、前記内燃機関の環境条件に応じて表す第1対応関係情報を記憶する記憶部と、
前記内燃機関の排気ガスの昇温制御を実行する昇温制御実行部と、
を備える制御装置と、
前記排気ガス浄化装置と、
を備える
排気ガス浄化システムであって、
前記制御装置において、
前記炭化水素堆積量推定部は、前記堆積量を推定する際に、前記第1計測値と前記第2計測値とに基づいて判定された前記内燃機関の環境条件と、前記第3計測値と、前記第4計測値と、前記第1対応関係情報とに基づいて前記増加量を推定し、
前記環境条件は、少なくとも前記内燃機関の燃料噴射制御が低温制御なのか、通常制御なのかを定義するものであり、
前記第1対応関係情報は、前記燃料噴射制御が低温制御のときに適用される低温制御時用の対応関係情報と、前記燃料噴射制御が通常制御のときに適用される通常制御時用の対応関係情報との二種類を少なくとも含む、
排気ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素堆積量推定装置、炭化水素堆積量推定方法、制御装置および排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関の排気ガス後処理システムを構成する装置に蓄積された未燃焼炭化水素(以下、HCという。HCは炭素と水素を含んだ有機化合物の総称である。)を推定し、推定結果が所定のしきい値を超えたときに排気ガス後処理システムの排気管路の加熱を加速するシステムが記載されている。特許文献1に記載されているシステムでは、排気管路内に蓄積されたHCの質量Iが、計算式「I=R+P-C」で算出される。ここで、Rは残存値、Pは内燃機関で生成されたHCの質量(HCの増加量あるいは増加分)、Cは排気ガス後処理システムで変換されたHCの質量(HCの減少量あるいは減少分)である。なお、このシステムでは、HCの増加量(P)が、内燃機関の回転数(RPM)、注入燃料の質量、吸入空気質量および好ましくは周囲温度をパラメータとして実験データに基づき作成されたマップを用いて算出される。また、HCの減少量(C)は、排気ガス後処理システムを構成する装置の温度に依存して推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているシステムでは、HCの増加量(P)が、内燃機関の回転数、注入燃料の質量、吸入空気質量および好ましくは周囲温度をパラメータとするマップを用いて算出される。この場合、温度に係るパラメータが周囲温度のみなので、例えば、周囲温度が低い場合に、内燃機関が比較的暖まっているときと、そうではないときとで、HCの増加量の推定誤差が異なってしまうということが課題になる。また、一般に、推定処理においては、パラメータが多くなると、推定精度の向上は期待できるが、算出手法の作成に手間や時間が掛かってしまうことが考えられ、パラメータを適切に選択することが求められる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、適切に精度良く炭化水素(HC)堆積量を推定することができる炭化水素堆積量推定装置、炭化水素堆積量推定方法、制御装置および排気ガス浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、前記内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、前記内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた前記内燃機関の排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の堆積量を推定する炭化水素堆積量推定部を備える炭化水素堆積量推定装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、前記内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、前記内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた前記内燃機関の排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の堆積量を推定するステップを含む炭化水素堆積量推定方法である。
【0008】
また、本発明の一態様は、少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、前記内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、前記内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた前記内燃機関の排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の堆積量を推定する炭化水素堆積量推定部と、前記内燃機関の排気ガスの昇温制御を実行する昇温制御実行部とを備える制御装置である。
【0009】
また、本発明の一態様は、少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、前記内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、前記内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた前記内燃機関の排気ガス浄化装置に堆積する炭化水素の堆積量を推定する炭化水素堆積量推定部と、前記内燃機関の排気ガスの昇温制御を実行する昇温制御実行部とを備える制御装置と、前記排気ガス浄化装置とを備える排気ガス浄化システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の各態様によれば、適切に精度良く炭化水素(HC)堆積量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るエンジン制御システムの構成例を示すシステム図である。
【
図2】
図1に示すエンジン制御装置100の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す環境条件判定マップ211の構成例を示す模式図である。
【
図4】
図2に示す通常制御時HC増加量推定マップ212の構成例を示す模式図である。
【
図5】
図2に示す低温制御時HC増加量推定マップ213の構成例を示す模式図である。
【
図6】
図2に示すHC減少量推定マップ214の構成例を示す模式図である。
【
図7】
図2に示すエンジン制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
【
図8】
図2に示すエンジン制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】
図1に示すエンジン制御システム10の動作例を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図10】
図1に示すエンジン制御装置100(エンジン制御装置100a)の構成例を示すブロック図である。
【
図11】
図10に示す燃料噴射制御用マップ301が含むマップの構成例を示すブロック図である。
【
図12】
図11に示す噴射タイミング制御用マップ311の構成例を示す模式図である。
【
図13】
図11に示すレール圧制御用マップ312の構成例を示す模式図である。
【
図14】
図11に示すパイロット噴射量制御用マップ313の構成例を示す模式図である。
【
図15】
図11に示すパイロット噴射期間制御用マップ314の構成例を示す模式図である。
【
図16】
図11に示すポスト噴射量制御用マップ315の構成例を示す模式図である。
【
図17】
図10に示すエンジン制御装置100aの動作例を示すフローチャートである。
【
図18】
図1に示すエンジン制御装置100(エンジン制御装置100b)の構成例を示すブロック図である。
【
図19】
図18に示すHC増加分推定マップ215の構成例を示す模式図である。
【
図20】
図18に示す補正ゲインマップ216の構成例を示す模式図である。
【
図21】
図18に示すエンジン制御装置100bの動作例を示すフローチャートである。
【
図22】
図1に示すエンジン制御システム10の動作例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号または同一の符号の末尾に英字「a」もしくは「b」を付加した符号を用いて説明を適宜省略する。
【0013】
<第1実施形態>
(エンジン制御システム10)
図1は、本発明の各実施形態に係る排気ガス浄化システムの一構成例としてのエンジン制御システム10の構成例を示すシステム図である。
図1に示すエンジン制御システム10は、エンジン1と、ターボチャージャー2と、排気通路3と、排気ガス浄化装置4と、モニタ8と、エンジン制御装置100と、エンジン水温センサ91と、吸気マニホールド温度センサ92と、エンジン回転センサ93とを備える。なお、
図1では、本実施形態のエンジン制御システム10あるいはエンジン制御装置100において、排気ガス浄化装置4におけるHC(炭化水素)の堆積量を推定する機能に係る構成を主に示し、燃料噴射制御等の他の機能に係る構成については図示を適宜省略している。
【0014】
エンジン1は、内燃機関の一構成例であり、本実施形態では多気筒のディーゼルエンジンである。ターボチャージャー2は、エンジン1の排気を利用してエンジン1の吸気を圧縮する過給機である。排気通路3は、エンジン1の排気を、排気ガス浄化装置4を通して大気に排気する。
【0015】
排気ガス浄化装置4は、エンジン1の排気中に含まれる窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM(Particulate Matter))を浄化する装置であり、エンジン1の排気通路3内に設けられたDPF装置5およびSCR装置6と、昇温装置7と、温度センサ94と、温度センサ95とを備える。DPF装置5は、DOC(Diesel Oxidation Catalyst;ディーゼル酸化触媒)51と、DPF(Diesel Particulate Filter;ディーゼルパティキュレートフィルタ)52とを備え、DPF52でPMを捕集し、DOC51で変換された二酸化窒素によって下流で捕集されたPMを酸化して二酸化炭素とし、PMを除去する。SCR装置6は、SCR(Selective Catalytic Ruduction;アンモニア選択還元型触媒)61と、SCR61の上流側の排気中に尿素水を供給するポンプ62およびタンク63を備え、窒素酸化物(NOx)を窒素分子(N2)と水(H2O)に転換する。
【0016】
なお、ディーゼルエンジンの排気中には、NOx、PMの他にHC(炭化水素)も含まれており、エンジンの運転条件が低負荷(排気ガス浄化装置4の上流で約200度以下)の運転領域では、このHCがDOC51と、DPF52と、SCR61に堆積する。この状態が長時間続くとHCの堆積量が増加し続けるため、次回エンジン1の運転を高負荷にした場合、排気ガス浄化装置4内の温度が上昇し、堆積されたHCが急激に燃焼し、排気ガス浄化装置4を破損する恐れがある。このため、エンジンの運転条件が低負荷(排気ガス浄化装置4の上流で約200度以下)の運転領域が長時間続く場合に、一定量HC(破損の危険がない程度)が堆積したと判断した場合に定期的に排気温度を上昇させて、堆積したHCを放出する制御を実施する必要がある。
【0017】
昇温装置7は、例えば、燃料噴射装置やバーナー、ヒーター、排気通路3を絞る排気弁等を備え、DOC51の上流側の排気温度を上昇させる。昇温装置7は、エンジン1の運転領域によって生じるDPF52内へのPMの堆積と排気通路3内への尿素水由来の固形物質である尿素デポジットの堆積を除去したり、DOC51、DPF52およびSCR61内へ堆積したHCを放出したりするため、エンジン制御装置100によって制御され、排気ガス浄化装置4中の排気温度を目標温度となるように昇温させる。
【0018】
また、温度センサ94は、DOC51の入口温度を計測して、計測した結果をエンジン制御装置100へ出力する。また、温度センサ95は、DOC51の出口温度を計測して、計測した結果をエンジン制御装置100へ出力する。温度センサ94の計測値と温度センサ95の計測値が、排気ガス浄化装置4内の温度に対応する第4計測値の一例である。温度センサ94と温度センサ95は、一方を省略してもよい。第4計測値は、DOC51の入口温度または出口温度に限定されず、他の箇所の温度であってもよい。
【0019】
モニタ8は、例えば表示パネルと入力パネルとを有し、表示装置および入力装置として機能し、エンジン制御装置100の指示に応じて所定の文字や画像を表示したり、ユーザ(オペレータ)の入力操作に応じた信号をエンジン制御装置100へ出力したりする。
【0020】
エンジン水温センサ91は、エンジン1の冷却液体であるエンジン冷却水の温度(以下、エンジン水温という)を計測して、計測した結果をエンジン制御装置100へ出力する。このエンジン水温センサ91の計測値がエンジン1の冷却液体の温度に対応する第2計測値の一例である。
【0021】
吸気マニホールド温度センサ92は、エンジン1が備える図示していない吸気マニホールドに流れる気体の温度(以下、吸気マニホールド温度という)を計測して、計測した結果をエンジン制御装置100へ出力する。この吸気マニホールド温度センサ92の計測値が、エンジン1の吸気温度に対応する第1計測値の一例である。
【0022】
エンジン回転センサ93は、エンジン1が備えるクランク軸の回転数(回転速度)(以下、エンジン回転数という)を計測して、計測した結果をエンジン制御装置100へ出力する。このエンジン回転センサ93の計測値が、エンジン1の排気ガス流量に対応する第3計測値の一例である。なお、第3計測値は、排気ガス流量そのものを計測した値としてもよい。
【0023】
エンジン制御装置100は、エンジン水温センサ91、吸気マニホールド温度センサ92およびエンジン回転センサ93を含む複数のセンサから出力されたアナログまたはデジタルのセンサ信号を所定の周期で繰り返し入力し、エンジン1が備える複数のインジェクタを用いて燃料噴射制御を行ったり、各種モータや弁の制御を行ったり、排気ガス浄化装置4に堆積したHC放出制御等の自動での昇温装置7による制御(以下、この制御を自動再生という。)や、手動の指示に基づくエンジン回転数をある回転数に固定させた上でのHC放出制御等の制御(以下、この制御を定置手動再生という。)を行ったりする。
【0024】
定置手動再生は、通常稼動状態(エンジン回転数をある回転数に固定させずに通常の作業が行える状態)では十分に排気温度が上がらず、PM、尿素デポジット除去やHCを放出できない場合に、ユーザの許可の下、通常稼動を停止させて、排気ガス浄化装置4の性能を回復させる制御である。定置手動再生では、エンジン制御装置100が、まず、モニタ8を用いて、定置手動再生を行うことが出来る状態であること、また、行うようにとの要求をユーザへ出す。これに対し、ユーザがモニタ8を用いて、定置手動再生を実行するよう指示を出すと、エンジン制御装置100はエンジン回転数をある回転数に固定させ、排気温度を上昇させて、PMまたは尿素デポジット除去やHC放出を行う。
【0025】
なお、エンジン制御装置100は、燃料噴射制御において、低温制御と通常制御の少なくとも2つの温度に応じて異なる制御状態を定義し、低温制御では低温に適した燃料噴射制御を行い、通常制御では常温等、低温より高い温度に適した燃料噴射制御を行う。
【0026】
(エンジン制御装置100の構成例)
図2~
図6を参照して、
図1に示すエンジン制御装置100の構成例について説明する。
図2は、
図1に示すエンジン制御装置100の構成例を示すブロック図である。
図3は、
図2に示す環境条件判定マップ211の構成例を示す模式図である。
図4は、
図2に示す通常制御時HC増加量推定マップ212の構成例を示す模式図である。
図5は、
図2に示す低温制御時HC増加量推定マップ213の構成例を示す模式図である。
図6は、
図2に示すHC減少量推定マップ214の構成例を示す模式図である。
【0027】
図2に示すエンジン制御装置100は、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータと、そのコンピュータの周辺回路や周辺装置とを用いて構成することができ、そのコンピュータ等のハードウェアと、そのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、
図2に示す複数のブロックを備える。なお、
図2は、エンジン制御装置100が備える複数の機能的構成のうち、排気ガス浄化装置4におけるHCの堆積量を推定するための機能的構成と、HCの堆積量の推定結果に基づくHCの放出制御に係る機能的構成を示している。
【0028】
図2に示すエンジン制御装置100は、環境条件判定部101と、HC堆積量推定部102と、HC放出制御開始判定部103と、昇温制御実行部104と、通知指示部105と、エンジン回転数固定制御実行部106と、HC放出制御停止判定部107と、記憶部108とを備える。また、記憶部108は、HC堆積量推定用マップ201を記憶する。HC堆積量推定用マップ201は、環境条件判定マップ211と、通常制御時HC増加量推定マップ212と、低温制御時HC増加量推定マップ213と、HC減少量推定マップ214とを含む。
【0029】
なお、HC堆積量推定用マップ201や、後述する他の各マップは、例えば実機による試験結果やシミュレーション結果等に基づいて作成することができる。
【0030】
環境条件判定部101は、吸気マニホールド温度とエンジン水温に基づき、環境条件判定マップ211を用いて環境条件を判定する。ここで、環境条件とは、エンジン1が排出するHCの量(あるいはエンジン1の排気温度)に対して影響を与えるエンジン1をとりまく要因である。本実施形態において環境条件は、エンジン1の燃料噴射制御が低温制御なのか、あるいは、通常制御なのかという2つの状態で定義される。
図3は、環境条件判定マップ211の構成例を示す。
図3に示す環境条件判定マップ211は、吸気マニホールド温度とエンジン水温をパラメータとして、環境条件(低温制御なのか、あるいは、通常制御なのか)を定義するマップである。
図3に示す環境条件判定マップ211は、横軸をエンジン水温、縦軸を吸気マニホールド温度として、エンジン水温と吸気マニホールド温度と対応する環境条件を定義している。なお、エンジン水温については、「0」より右が正の値、左が負の値であり、吸気マニホールド温度については、「0」より上が正の値、下が負の値である。
【0031】
HC堆積量推定部102は、下記式により、所定の計算周期で繰り返し、排気ガス浄化装置4におけるHC堆積量推定値を算出する。
【0032】
HC堆積量推定値[g]=前回の計算処理で算出されたHC堆積量推定値[g]+HC増加量[g]+HC減少量[g]
【0033】
ただし、HC堆積量推定値[g]とHC増加量[g]は0または正の値、HC減少量[g]は0または負の値を持つ。
【0034】
HC堆積量推定部102は、まず、環境条件判定部101が判定した環境条件とエンジン回転数とDOC温度とに基づき通常制御時HC増加量推定マップ212または低温制御時HC増加量推定マップ213を用いてHC増加量を推定するとともに、エンジン回転数とDOC温度とに基づきHC減少量推定マップ214を用いてHC減少量を推定する。HC堆積量推定部102は、次に、前回の計算周期の計算処理で算出されたHC堆積量推定値と今回算出したHC増加量とHC減少量とを加算することで、HC堆積量推定値を算出する。なお、DOC温度は、例えば、温度センサ94が計測したDOC51の入口温度、温度センサ95が計測したDOC51の出口温度、あるいは、DOC51の入口温度と出口温度からの計算値(平均値等)である。
【0035】
図4は、通常制御時HC増加量推定マップ212(第1対応関係情報)の構成例を示す。通常制御時HC増加量推定マップ212は、エンジン回転数とDOC温度とをパラメータとして、環境条件が通常制御である場合の単位時間当たりのHC増加量[mg/s]を定義する。HC堆積量推定部102は、環境条件が通常制御であると判定された場合、通常制御時HC増加量推定マップ212を用いて、エンジン回転数とDOC温度に対応する単位時間当たりのHC増加量[mg/s]を取得し、単位時間当たりのHC増加量に計算周期[s]を乗じることで、HC増加量[g]を求めることができる。
【0036】
図5は、低温制御時HC増加量推定マップ213(第1対応関係情報)の構成例を示す。低温制御時HC増加量推定マップ213は、エンジン回転数とDOC温度とをパラメータとして、環境条件が低温制御である場合の単位時間当たりのHC増加量[mg/s]を定義する。HC堆積量推定部102は、環境条件が低温制御であると判定された場合、低温制御時HC増加量推定マップ213を用いて、エンジン回転数とDOC温度に対応する単位時間当たりのHC増加量[mg/s]を取得し、単位時間当たりのHC増加量に計算周期[s]を乗じることで、HC増加量[g]を求めることができる。
【0037】
図6は、HC減少量推定マップ214(第2対応関係情報)の構成例を示す。HC減少量推定マップ214は、エンジン回転数とDOC温度とをパラメータとして、単位時間当たりのHC減少量[mg/s]を定義する。HC堆積量推定部102は、HC減少量推定マップ214を用いて、エンジン回転数とDOC温度に対応する単位時間当たりのHC減少量[mg/s]を取得し、単位時間当たりのHC減少量に計算周期[s]を乗じることで、HC減少量[g]を求めることができる。
【0038】
HC放出制御開始判定部103は、HC堆積量推定部102が推定したHC堆積量推定値と、所定の判定値とを比較し、HC堆積量推定値が判定値以上である場合、HC放出制御を開始すると判定する。HC放出制御では、自動再生と定置手動再生が段階的に実行される。判定値は、例えば、排気ガス浄化装置4のHCの堆積による破損を余裕を持って回避できる値に設定される。
【0039】
昇温制御実行部104は、HC放出制御開始判定部103がHC放出制御を開始する判定した場合、昇温装置7を制御して自動再生を実行する。
【0040】
通知指示部105は、モニタ8を用いて、定置手動再生を行うことが出来る状態であることの通知や定置手動再生実行の要求を出したり、ユーザからの定置手動再生の実行に対する許可を受け付けたりする。その際、通知指示部105は、例えば、段階的に第1通知指示と第2通知指示とを行う。第1通知指示は、定置手動再生の実行を要求する通知指示ではあるが、要求の度合いが第2通知指示より低い通知指示である。第1通知指示は、例えば、ユーザの都合が良い時間で定置手動再生を実行してください、といった通知指示である。第2通知指示は、定置手動再生の実行を要求する通知指示であり、要求の度合いが第1通知指示より高い通知指示である。第2通知指示は、例えば、直ちに定置手動再生を実行してください、といった通知指示である。また、昇温制御実行(S203)後、第1通知指示までの間に、モニタ8から定置手動再生が出来る状態であることを一定時間知らせることもできる。
【0041】
エンジン回転数固定制御実行部106は、通知指示部105がユーザからの定置手動再生の実行に対する許可を受け付けた場合、エンジン回転数の固定制御を実行する。
【0042】
HC放出制御停止判定部107は、堆積したHCが放出できたか(あるいは所定量まで減少したか)を判定し、放出できた場合(あるいは所定量まで減少した場合)、HC放出制御を停止する。
【0043】
(エンジン制御装置100の動作例)
図7~
図9を参照して、
図2に示すエンジン制御装置100の動作例について説明する。
図7および
図8は、
図2に示すエンジン制御装置100の動作例を示すフローチャートである。
図9は、
図1に示すエンジン制御システム10の動作例を模式的に示すタイミングチャートである。
【0044】
まず、
図7を参照して、
図2に示すエンジン制御装置100がHC堆積量を推定する場合の処理の流れについて説明する。
図7に示す処理は、所定の計算周期で繰り返し実行される。
図7に示す処理が開始されると、環境条件判定部101が、吸気マニホールド温度、エンジン水温度、エンジン回転数、およびDOC温度を読み込む(ステップS101)。次に、環境条件判定部101が、吸気マニホールド温度およびエンジン水温度より、環境条件(通常制御または低温制御)を環境条件判定マップ211にて選択する(ステップS102)。次に、HC堆積量推定部102は、環境条件が通常制御と判定された場合(ステップS103で「YES」の場合)、エンジン回転数とDOC温度とに基づき、通常制御時HC増加量推定マップ212にてHC増加量を推定する(ステップS104)。一方、HC堆積量推定部102は、環境条件が低温制御と判定された場合(ステップS103で「NO」の場合)、エンジン回転数とDOC温度とに基づき、低温制御時HC増加量推定マップ213にてHC増加量を推定する(ステップS105)。
【0045】
ステップS104またはステップS105の後、HC堆積量推定部102は、エンジン回転数とDOC温度とに基づき、HC減少量推定マップ214にてHC減少量を推定する(ステップS106)。次に、HC堆積量推定部102が、前回の計算処理で算出されたHC堆積量推定値とHC増加量とHC減少量とに基づき、HC堆積量を推定し(HC堆積量推定値を算出し)(ステップS107)、
図7に示す処理を終了する。
【0046】
次に、
図8を参照して、
図2に示すエンジン制御装置100がHC堆積量推定値に基づいて、HCの放出制御を行う場合の処理の流れについて説明する。
図8に示す処理は、エンジン制御装置100の起動時に開始される。
図8に示す処理が開始されると、HC放出制御開始判定部103が、HC堆積量推定部102が推定したHC堆積量推定値を取得し(ステップS201)、HC堆積量推定値が判定値以上か否かを判定する(ステップS202)。HC堆積量推定値が判定値以上でない場合(ステップS202で「NO」の場合)、HC放出制御開始判定部103が、一定の時間経過後に、再度、HC堆積量推定部102が推定したHC堆積量推定値を取得する(ステップS201)。
【0047】
一方、HC堆積量推定値が判定値以上である場合(ステップS202で「YES」の場合)、昇温制御実行部104が、自動再生により、昇温制御を開始する(ステップS203)。次に、通知指示部105が、モニタ8から第1通知指示を実行する(ステップS204)。次に、通知指示部105は、第1通知指示に対して、モニタ8より定置手動再生の要求を受け付ける旨の応答があったか否かを判定する(ステップS205)。モニタ8より定置手動再生の要求を受け付ける旨の応答があった場合(ステップS205で「YES」の場合)、エンジン回転数固定制御実行部106が、エンジン回転数固定制御を実行する(ステップS206)。
【0048】
他方、モニタ8より定置手動再生の要求を受け付ける旨の応答がなかった場合(ステップS205で「NO」の場合)、通知指示部105は、第1通知指示を行ってから一定時間経過したか否かを判定する(ステップS207)。一定時間経過しておらず、かつ定置手動再生の要求を受け付ける旨の応答がない場合(ステップS207で「NO」かつステップS205で「NO」の場合)、通知指示部105は、ステップS205の判定とステップS207の判定を繰り返し実行する。
【0049】
一定時間経過した場合(ステップS207で「YES」の場合)、通知指示部105は、モニタ8から第2通知指示を実行する(ステップS208)。次に、通知指示部105は、第2通知指示に対して、モニタ8より定置手動再生の要求を受け付ける旨の応答があったか否かを判定する(ステップS209)。モニタ8より定置手動再生の要求を受け付ける旨の応答があった場合(ステップS209で「YES」の場合)、エンジン回転数固定制御実行部106が、エンジン回転数固定制御を実行する(ステップS206)。モニタ8より定置手動再生の要求を受け付ける旨の応答がない場合(ステップS209で「NO」の場合)、通知指示部105は、繰り返しステップS209の判定処理を実行する(ステップS209の「NO」からステップS209の繰り返し)。
【0050】
ステップS206の後、HC放出制御停止判定部107が、HC堆積量推定部102が推定したHC堆積量推定値を取得し(ステップS210)、堆積したHCが放出できたか否かを判定する(ステップS211)。堆積したHCが放出できていない場合(ステップS211で「NO」の場合)、HC放出制御停止判定部107が、一定の時間経過後に、再度、HC堆積量推定部102が推定したHC堆積量推定値を取得する(ステップS210)。一方、堆積したHCが放出できていた場合(ステップS211で「YES」の場合)、HC放出制御停止判定部107が、HC放出制御を停止して(ステップS212)、
図8に示す処理を終了する。
【0051】
なお、
図8に示す処理の流れは一例であって適宜変更することができる。例えば、ステップS209の判定が繰り返し「NO」となった場合、HC放出制御停止判定部107がHC堆積量推定値の取得と、堆積したHCが放出されたか否かの判定を繰り返し行い、HCが放出されたと判定した場合には第2通知指示を取り下げて、処理をステップS201へ戻すようにしてもよい。例えば、稼働状態が変化してDOC温度が上昇するなどしてHCが放出されたような場合に対応することができる。また、第1対応関係情報の一例である、通常制御時HC増加量推定マップ212や低温制御時HC増加量推定マップ213、あるいは、第2対応関係情報の一例である、HC減少量推定マップ214は、マップに限らず、エンジン回転数とDOC温度とをパラメータとしてHC増加量やHC減少量を算出する数式として構成してもよい。この場合、この数式も第1および第2対応関係情報の一例である。
【0052】
(作用・効果)
図9は、HC堆積量の推定値と、エンジン回転数と、DOC温度と、吸気マニホールド温度と、エンジン水温の時間変化の例を模式的に示す。
図9に示すように、t1でエンジン1が稼働し、時刻t2までエンジン1の低負荷状態(エンジン排気温の低い状態)が継続したとすると、HC堆積量推定値は徐々に増加する。時刻t2から時刻t3でエンジン1が低負荷状態からより負荷が大きい状態に変化すると、時刻t2から時刻t3までHC堆積量推定値は徐々に減少する。
図9に示す例では、通常正常時に比べ低温制御時では、HC堆積量推定値の増加率が高いため、時刻t2から減少はしているが、時刻t3でも堆積量が通常制御時に比べ大きい。そして、時刻t3でエンジン1の低負荷状態に戻ると、低温制御時では、HC堆積量推定値は再び増加し、
図9に示す例では時刻t4で判定値を超えている。
【0053】
例えば、HC堆積量の推定精度が低い場合、判定値に対する余裕度を十分大きくする必要がある(例えば、誤差が最大の場合に合わせて判定値との比較を行う必要がある)。参考例ではあるが、
図22に示すように、DOC入力HC流入量は、外気温度によってエンジン回転数への依存度が大きく変化する。この依存度の変化に対応した精度の良い堆積量の推定ができれば、判定値に対する余裕度を小さくすることができる。すなわち、推定精度が高い場合、判定値に対する余裕度は精度が低い場合に比べて小さくすることができる。この場合、推定精度が高い場合、実際に判定値を超える時刻と、推定値に基づいて判定値を超えると判定される時刻との誤差を小さくすることができる。よって、エンジン回転数を固定させることを伴う制御を開始するまでの時間を、推定精度を高くすることで遅らせることができる。これによって、通常稼動状態を継続することができる時間を、推定精度が低い場合と比べて、精度が高い場合、長くすることができる。なお、
図22は、
図1に示すエンジン制御システム10の動作例を説明するための説明図であり、エンジン回転数とDOC入力HC流入量との関係を示す。
【0054】
本実施形態によれば、エンジン制御装置100(炭化水素堆積量推定装置)が、少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた内燃機関の排気ガス浄化装置4に堆積するHC(炭化水素)の堆積量を推定するHC(炭化水素)堆積量推定部102を備えたので、適切に精度良く炭化水素(HC)堆積量を推定することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、エンジン制御装置100(炭化水素堆積量推定装置)が、第3計測値と、排気ガス浄化装置4内の温度に対応する第4計測値と、排気ガス浄化装置4に堆積するHCの増加量との対応関係を、内燃機関の環境条件に応じて表す第1対応関係情報を記憶する記憶部108をさらに備え、HC堆積量推定部102は、堆積量を推定する際に、第1計測値と第2計測値とに基づいて判定された内燃機関の環境条件と、第3計測値と、第4計測値と、第1対応関係情報とに基づいて増加量を推定する。この構成によれば、マップや簡単な計算式等を用いて構成することができる環境条件に応じた第1対応関係情報を用いて、適切に精度良く炭化水素(HC)の増加量を推定することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、記憶部108は、第3計測値と、第4計測値と、排気ガス浄化装置4に堆積するHCの減少量との対応関係を表す第2対応関係情報を、さらに記憶し、HC堆積量推定部102は、堆積量を推定する際に、第3計測値と第4計測値と第2対応関係情報とに基づいて前記減少量を推定する。この構成によれば、マップや簡単な計算式等を用いて構成することができる環境条件に応じた第1対応関係情報を用いて、適切に精度良く炭化水素(HC)の増加量を推定することができる。この構成によれば、マップや簡単な計算式等を用いて構成することができる第2対応関係情報を用いて、適切に精度良く炭化水素(HC)の減少量を推定することができる。
【0057】
<第2実施形態>
次に、
図10~
図17を参照して、本発明に係る第2実施形態について説明する。
図10は、
図1に示すエンジン制御装置100(エンジン制御装置100aとして示す。)の構成例を示すブロック図である。
図11は、
図10に示す燃料噴射制御用マップ301が含むマップの構成例を示すブロック図である。
図12は、
図11に示す噴射タイミング制御用マップ311の構成例を示す模式図である。
図13は、
図11に示すレール圧制御用マップ312の構成例を示す模式図である。
図14は、
図11に示すパイロット噴射量制御用マップ313の構成例を示す模式図である。
図15は、
図11に示すパイロット噴射期間制御用マップ314の構成例を示す模式図である。
図16は、
図11に示すポスト噴射量制御用マップ315の構成例を示す模式図である。
図17は、
図10に示すエンジン制御装置100aの動作例を示すフローチャートである。
【0058】
第2実施形態は、
図1に示すエンジン制御システム10の基本的な構成は第1実施形態と同一である。第2実施形態では、
図2に示すエンジン制御装置100に対応する構成である
図10に示すエンジン制御装置100aの構成が、
図2に示すエンジン制御装置100の構成と一部異なる。すなわち、
図2に示すエンジン制御装置100では環境条件判定部101が環境条件判定マップ211を用いて環境条件を判定していたのに対し、
図10に示すエンジン制御装置100aでは環境条件判定部101aが燃料噴射制御用マップ301を用いて環境条件を判定する。
図10に示すエンジン制御装置100aでは、記憶部108が記憶するHC堆積量推定用マップ201aが、環境条件判定マップ211を含んでいない。また、記憶部108は、新たに燃料噴射制御用マップ301を記憶する。
【0059】
図10に示す燃料噴射制御用マップ301は、
図11に示すように、エンジン制御装置100aが燃料噴射制御に用いる、噴射タイミング制御用マップ311と、レール圧制御用マップ312と、パイロット噴射量制御用マップ313と、パイロット噴射期間制御用マップ314と、ポスト噴射量制御用マップ315とを含む。
【0060】
図12に示すように、噴射タイミング制御用マップ311は、環境条件判定マップ3111と、通常制御マップ3112と、低温制御マップ3113とを含む。環境条件判定マップ3111は、エンジン水温と吸気マニホールド温度とをパラメータとして、環境条件を定義するマップである。この場合、環境条件は、通常制御と、低温制御に加え、補間制御の3つの状態で定義される。通常制御マップ3112と低温制御マップ3113は、エンジン回転数[rpm]とメイン噴射の噴射量[mg/st]とをパラメータとして、通常制御時のメイン噴射の噴射タイミング[SOI BTDC deg]と、低温制御時のメイン噴射の噴射タイミング[SOI BTDC deg]と、を定義するマップである。ここで、「st」はストローク(行程)であり、「SOI BTDC deg」は、噴射開始(Start of Injection)上死点前(Before Top Dead Center)角度である。メイン噴射の噴射量は、例えば図示していないアクセルセンサの出力信号に応じて決定される。
【0061】
エンジン制御装置100aは、エンジン水温と吸気マニホールド温度とに基づき環境条件判定マップ3111を用いて環境条件を判定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が通常制御の場合、通常制御マップ3112を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、噴射タイミングを決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が低温制御の場合、低温制御マップ3113を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、噴射タイミングを決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が補間制御の場合、通常制御マップ3112と低温制御マップ3113を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、通常制御マップ3112の値と低温制御マップ3113の値を用いた補間処理(内挿処理)の結果として、噴射タイミングを決定する。
【0062】
また、
図13に示すように、レール圧制御用マップ312は、環境条件判定マップ3121と、通常制御マップ3122と、低温制御マップ3123とを含む。環境条件判定マップ3121は、エンジン水温と吸気マニホールド温度とをパラメータとして、環境条件を定義するマップである。この場合、環境条件は、通常制御と、低温制御に加え、補間制御の3つの状態で定義される。通常制御マップ3122と低温制御マップ3123は、エンジン回転数[rpm]とメイン噴射の噴射量[mg/st]とをパラメータとして、通常制御時のレール圧(コモンレールのレール圧)[bar]と、低温制御時のレール圧[bar]と、を定義するマップである。
【0063】
エンジン制御装置100aは、エンジン水温と吸気マニホールド温度とに基づき環境条件判定マップ3121を用いて環境条件を判定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が通常制御の場合、通常制御マップ3122を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、レール圧を決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が低温制御の場合、低温制御マップ3123を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、レール圧を決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が補間制御の場合、通常制御マップ3122と低温制御マップ3123を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、通常制御マップ3122の値と低温制御マップ3123の値を用いた補間処理(内挿処理)の結果として、レール圧を決定する。
【0064】
また、
図14に示すように、パイロット噴射量制御用マップ313は、環境条件判定マップ3131と、通常制御マップ3132と、低温制御マップ3133とを含む。環境条件判定マップ3131は、エンジン水温と吸気マニホールド温度とをパラメータとして、環境条件を定義するマップである。この場合、環境条件は、通常制御と、低温制御に加え、補間制御の3つの状態で定義される。通常制御マップ3132と低温制御マップ3133は、エンジン回転数[rpm]とメイン噴射の噴射量[mg/st]とをパラメータとして、通常制御時のパイロット噴射量[mg/st]と、低温制御時のパイロット噴射量[mg/st]と、を定義するマップである。
【0065】
エンジン制御装置100aは、エンジン水温と吸気マニホールド温度とに基づき環境条件判定マップ3131を用いて環境条件を判定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が通常制御の場合、通常制御マップ3132を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、パイロット噴射量を決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が低温制御の場合、低温制御マップ3133を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、パイロット噴射量を決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が補間制御の場合、通常制御マップ3132と低温制御マップ3133を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、通常制御マップ3132の値と低温制御マップ3133の値を用いた補間処理(内挿処理)の結果として、パイロット噴射量を決定する。
【0066】
また、
図15に示すように、パイロット噴射期間制御用マップ314は、環境条件判定マップ3141と、通常制御マップ3142と、低温制御マップ3143とを含む。環境条件判定マップ3141は、エンジン水温と吸気マニホールド温度とをパラメータとして、環境条件を定義するマップである。この場合、環境条件は、通常制御と、低温制御に加え、補間制御の3つの状態で定義される。通常制御マップ3142と低温制御マップ3143は、エンジン回転数[rpm]とメイン噴射の噴射量[mg/st]とをパラメータとして、通常制御時のパイロット噴射期間[msec]と、低温制御時のパイロット噴射期間[msec]と、を定義するマップである。
【0067】
エンジン制御装置100aは、エンジン水温と吸気マニホールド温度とに基づき環境条件判定マップ3141を用いて環境条件を判定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が通常制御の場合、通常制御マップ3142を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、パイロット噴射期間を決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が低温制御の場合、低温制御マップ3143を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、パイロット噴射期間を決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が補間制御の場合、通常制御マップ3142と低温制御マップ3143を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、通常制御マップ3142の値と低温制御マップ3143の値を用いた補間処理(内挿処理)の結果として、パイロット噴射期間を決定する。
【0068】
また、
図16に示すように、ポスト噴射量制御用マップ315は、環境条件判定マップ3151と、通常制御マップ3152と、低温制御マップ3153とを含む。環境条件判定マップ3151は、エンジン水温と吸気マニホールド温度とをパラメータとして、環境条件を定義するマップである。この場合、環境条件は、通常制御と、低温制御に加え、補間制御の3つの状態で定義される。通常制御マップ3152と低温制御マップ3153は、エンジン回転数[rpm]とメイン噴射の噴射量[mg/st]とをパラメータとして、通常制御時のポスト噴射量[mg/st]と、低温制御時のポスト噴射量[mg/st]と、を定義するマップである。
【0069】
エンジン制御装置100aは、エンジン水温と吸気マニホールド温度とに基づき環境条件判定マップ3151を用いて環境条件を判定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が通常制御の場合、通常制御マップ3152を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、ポスト噴射量を決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が低温制御の場合、低温制御マップ3153を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、ポスト噴射量を決定する。また、エンジン制御装置100aは、環境条件が補間制御の場合、通常制御マップ3152と低温制御マップ3153を用いて、エンジン回転数とメイン噴射の噴射量とに基づき、通常制御マップ3152の値と低温制御マップ3153の値を用いた補間処理(内挿処理)の結果として、ポスト噴射量を決定する。
【0070】
次に、
図17を参照して、
図10に示すエンジン制御装置100aがHC堆積量を推定する場合の処理の流れについて説明する。
図17に示す処理は、所定の計算周期で繰り返し実行される。
図17に示す処理が開始されると、環境条件判定部101aが、吸気マニホールド温度、エンジン水温度、エンジン回転数、およびDOC温度を読み込む(ステップS301)。次に、環境条件判定部101aが、吸気マニホールド温度およびエンジン水温度より、下記の各運転条件パラメータ(P1)~(P5)について、各環境条件判定マップ3111、3121、3131、3141および3151にて通常制御となるか否かを判定する(ステップS302)。ここで、パラメータ(P1)は噴射タイミング、パラメータ(P2)はレール圧、パラメータ(P3)はパイロット噴射量、パラメータ(P4)はパイロット噴射期間、パラメータ(P5)はポスト噴射量である。
【0071】
次に、HC堆積量推定部102は、各運転条件パラメータ(P1)~(P5)について、各環境条件がすべて「通常制御」と判定された場合(ステップS303で「YES」の場合)、エンジン回転数とDOC温度とに基づき、通常制御時HC増加量推定マップ212にてHC増加量を推定する(ステップS304)。一方、HC堆積量推定部102は、環境条件が一つでも通常制御ではないと判定された場合(ステップS303で「NO」の場合)、エンジン回転数とDOC温度とに基づき、低温制御時HC増加量推定マップ213にてHC増加量を推定する(ステップS305)。
【0072】
ステップS304またはステップS305の後、HC堆積量推定部102は、エンジン回転数とDOC温度とに基づき、HC減少量推定マップ214にてHC減少量を推定する(ステップS306)。次に、HC堆積量推定部102が、前回の計算処理で算出されたHC堆積量推定値とHC増加量とHC減少量とに基づき、HC堆積量を推定し(HC堆積量推定値を算出し)(ステップS307)、
図17に示す処理を終了する。
【0073】
図8を参照して説明した処理は、第1実施形態と第2実施形態で共通である。
【0074】
本実施形態によれば、エンジン制御装置100(炭化水素堆積量推定装置)が、少なくとも、内燃機関の吸気温度に対応する第1計測値と、内燃機関の冷却液体の温度に対応する第2計測値と、内燃機関の排気ガス流量に対応する第3計測値とに基づき、酸化触媒を備えた内燃機関の排気ガス浄化装置4に堆積するHC(炭化水素)の堆積量を推定するHC(炭化水素)堆積量推定部102を備えたので、適切に精度良く炭化水素(HC)堆積量を推定することができる。
【0075】
また、本実施形態では、環境条件が、内燃機関の燃料噴射制御に係る、噴射タイミング、レール圧、パイロット噴射量、パイロット噴射期間、ポスト噴射量の少なくとも一つに係る要因を含む。したがって、環境条件を燃料噴射制御の内容により適したものとして定義することができる。
【0076】
<第3実施形態>
次に、
図18~
図21を参照して、本発明に係る第3実施形態について説明する。
図18は、
図1に示すエンジン制御装置100(エンジン制御装置100bとして示す。)の構成例を示すブロック図である。
図19は、
図18に示すHC増加分推定マップ215の構成例を示す模式図である。
図20は、
図18に示す補正ゲインマップ216の構成例を示す模式図である。
図21は、
図18に示すエンジン制御装置100bの動作例を示すフローチャートである。
【0077】
第3実施形態は、
図1に示すエンジン制御システム10の基本的な構成は第1実施形態と同一である。第3実施形態では、
図2に示すエンジン制御装置100に対応する構成である
図18に示すエンジン制御装置100bの構成が、
図2に示すエンジン制御装置100の構成と一部異なる。すなわち、
図2に示すエンジン制御装置100では環境条件判定部101が環境条件を判定するのに対し、
図18に示すエンジン制御装置100bでは環境条件判定部101が省略されている。また、
図18に示すエンジン制御装置100bでは、記憶部108が記憶するHC堆積量推定用マップ201bが、HC減少量推定マップ214と、HC増加分推定マップ215と、補正ゲインマップ216とを含む。
【0078】
HC減少量推定マップ214は、第1実施形態と同一である。HC増加分推定マップ215(第1対応関係情報)は、
図19に示すように、エンジン水温度と吸気マニホールド温度とをパラメータとして、HC増加分の推定値[mg/s]を定義する。また、補正ゲインマップ216(補正情報)は、エンジン回転数をパラメータとして、HC増加分推定マップ215で定義されているHC増加分の推定値を補正するゲインを定義する。
【0079】
HC堆積量推定部102bは、エンジン水温度と吸気マニホールド温度とをパラメータとして、HC増加分推定マップ215を用いてHC増加分の推定値を決定する。次に、HC堆積量推定部102bは、エンジン回転数をパラメータとして、補正ゲインマップ216を用いてゲインの値を決定する。そして、HC堆積量推定部102bは、決定したゲインをHC増加分の推定値に乗じることで、HC増加分を算出する。なお、HC増加分は、例えば、HC減少量推定マップ214の減少量と計算周期とで算出される計算周期当たりの減少量の値に対応した増加量の値とすることができる。HC堆積量推定部102bは、HC堆積量推定部102と同様にして、前回の計算処理で算出されたHC堆積量推定値とHC増加量とHC減少量とに基づき、HC堆積量推定値を算出する。
【0080】
例えば、エンジン水温20[℃],吸気マニホールド温度-20[℃]、エンジン回転1000[rpm]の場合、24[mg/s]×1.3=31.2[mg/s]分、HCは増加する。
【0081】
次に、
図21を参照して、
図18に示すエンジン制御装置100bがHC堆積量を推定する場合の処理の流れについて説明する。
図21に示す処理は、所定の計算周期で繰り返し実行される。
図21に示す処理が開始されると、HC堆積量推定部102bが、吸気マニホールド温度、エンジン水温度、エンジン回転数、およびDOC温度を読み込む(ステップS401)。次に、HC堆積量推定部102bが、エンジン水温度と吸気マニホールド温度とをパラメータとして、HC増加分推定マップ215を用いてHC増加分を決定するとともに、エンジン回転数をパラメータとして、補正ゲインマップ216を用いてゲインの値を決定し、補正したHC増加分を算出する(ステップS402)。次に、HC堆積量推定部102bは、HC減少量推定マップ214にてHC減少量を推定する(ステップS403)。次に、HC堆積量推定部102bが、前回の計算処理で算出されたHC堆積量推定値とHC増加量とHC減少量とに基づき、HC堆積量を推定し(HC堆積量推定値を算出し)(ステップS404)、
図21に示す処理を終了する。
【0082】
本実施形態によれば、第1計測値と、第2計測値と、排気ガス浄化装置4に堆積する炭化水素の増加量との対応関係を表す第1対応関係情報と、第3計測値に基づく第1対応関係情報に対する補正情報とを記憶する記憶部108を備え、HC堆積量推定部102bは、堆積量を推定する際に、第1計測値と第2計測値と第1対応関係情報とに基づいて推定した値を、第3計測値と補正情報とに基づいて補正することで、増加量を推定する。この構成によれば、HC増加量の推定を、第1実施形態と比較してより簡単に行うことができる。
【0083】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…エンジン(内燃機関)、2…ターボチャージャー、3…排気通路、4…排気ガス浄化装置、5…DPF装置、51…DOC、52…DPF、6…SCR装置、7…昇温装置、8…モニタ、10…エンジン制御システム(排気ガス浄化システム)、91…エンジン水温センサ、92…吸気マニホールド温度センサ、93…エンジン回転センサ、94、95…温度センサ、100、100a、100b…エンジン制御装置、101、101a…環境条件判定部、102、102b…HC堆積量推定部、104…昇温制御実行部、108…記憶部、201、201a、201b…HC堆積量推定用マップ、211…環境条件判定マップ、212…通常制御時HC増加量推定マップ(第1対応関係情報)、213…低温制御時HC増加量推定マップ(第1対応関係情報)、214…HC減少量推定マップ(第2対応関係情報)、215…HC増加分推定マップ(第1対応関係情報)、216…補正ゲインマップ(補正情報)、301…燃料噴射制御用マップ