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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】歩行型管理機
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/10 20060101AFI20240425BHJP
   G05G 1/04 20060101ALI20240425BHJP
   B60K 23/02 20060101ALI20240425BHJP
   B62D 51/06 20060101ALI20240425BHJP
   A01B 33/08 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60K28/10 A
G05G1/04 A
B60K23/02 S
B62D51/06 C
B62D51/06 107Z
A01B33/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021106721
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023005045
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】亀田 大地
(72)【発明者】
【氏名】前田 伸治
(72)【発明者】
【氏名】渡 剛
(72)【発明者】
【氏名】森田 栄作
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-142496(JP,A)
【文献】特開2003-025867(JP,A)
【文献】特開2002-303229(JP,A)
【文献】特開平11-321376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 28/10
G05G 1/04
B60K 23/02
B62D 51/06
A01B 33/08
A01D 34/00
F16D 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期位置と作動位置との間で揺動操作可能であり、前記作動位置に切り換えられた状態ではクラッチ機構を動力伝達可能な状態に切り換え、前記初期位置に切り換えられた状態では前記クラッチ機構を動力伝達不能な状態に切り換えるクラッチレバーと、
前記クラッチレバーが前記作動位置に切り換えられたことを検出した場合、エンジンの始動をけん制する始動けん制機構と、
を具備し、
前記始動けん制機構は、
前記クラッチレバーの揺動に応じて変位する複数のリンク部材を具備するリンク機構と、
前記リンク機構の変位を検出することで、前記クラッチレバーが前記作動位置に切り換えられたことを検出する検出部と、
を含み、
前記複数のリンク部材は、
前記検出部による検出対象となる被検出部材と、
前記被検出部材及び車体のそれぞれに対して回動可能に連結される連結部材と、
を含み、
前記被検出部材は、
前記クラッチレバー及び前記連結部材と連結される被連結部位と、
前記被連結部位に対して車体内側に変位した位置に形成され、前記検出部によって検出される被検出部位と、
を含む、
歩行型管理機。
【請求項2】
前記被検出部材は、
前記クラッチレバーの揺動角度と比較して小さい揺動角度で変位する、
請求項1に記載の歩行型管理機。
【請求項3】
前記被検出部材は、
側面視において、前記クラッチレバーの揺動にかかわらず、少なくとも一部が前記検出部と重複するように配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の歩行型管理機。
【請求項4】
前記クラッチレバーと前記被検出部材との連結部分から、前記被検出部材と前記連結部材との連結部分までの距離は、前記被検出部材と前記連結部材との連結部分から、前記被検出部位までの距離よりも、長くなるように形成されている、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の歩行型管理機。
【請求項5】
前記検出部を上方から覆うカバー部材をさらに具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の歩行型管理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチレバーを具備する歩行型管理機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッチレバーを具備する歩行型管理機の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、エンジンから走行輪へ動力を伝達可能なメインクラッチ機構と、メインクラッチ機構の動力伝達の係脱操作を行うデッドマンクラッチレバーと、を備える歩行型管理機が開示されている。デッドマンクラッチレバーは、クラッチ係合位置と、クラッチ係合位置よりも枢支軸回りに上方に変位したクラッチ解除位置と、に揺動可能である。また、デッドマンクラッチレバーは、非操作時にクラッチ解除位置へと復帰するように、クラッチ解除位置へ向けて付勢されている。
【0004】
上述のような歩行型管理機では、一般的に、クラッチが解除された状態でエンジンが始動される。作業者は、エンジンを始動させた後にデッドマンクラッチレバーを操作してクラッチを係合させることで、歩行型管理機を走行させることができる。
【0005】
しかしながら、上記歩行型管理機で、デッドマンクラッチレバーが操作された状態でエンジンが始動された場合には、歩行型管理機が意図せず発進してしまうおそれがある。このため、デッドマンクラッチレバーが操作された状態でエンジンが始動するのを防止するための技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-97491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、非操作時に初期位置へと復帰するクラッチレバーを有する歩行型管理機において、クラッチレバーが操作されている状態で、エンジンが始動するのを防止することができる歩行型管理機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、初期位置と作動位置との間で揺動操作可能であり、前記作動位置に切り換えられた状態ではクラッチ機構を動力伝達可能な状態に切り換え、前記初期位置に切り換えられた状態では前記クラッチ機構を動力伝達不能な状態に切り換えるクラッチレバーと、前記クラッチレバーが前記作動位置に切り換えられたことを検出した場合、エンジンの始動をけん制する始動けん制機構と、を具備し、前記始動けん制機構は、前記クラッチレバーの揺動に応じて変位する複数のリンク部材を具備するリンク機構と、前記リンク機構の変位を検出することで、前記クラッチレバーが前記作動位置に切り換えられたことを検出する検出部と、を含み、記複数のリンク部材は、前記検出部による検出対象となる被検出部材と、前記被検出部材及び車体のそれぞれに対して回動可能に連結される連結部材と、を含み、前記被検出部材は、前記クラッチレバー及び前記連結部材と連結される被連結部位と、前記被連結部位に対して車体内側に変位した位置に形成され、前記検出部によって検出される被検出部位と、を含むものである。
【0011】
請求項2においては、前記被検出部材は、前記クラッチレバーの揺動角度と比較して小さい揺動角度で変位するものである。
【0014】
請求項3においては、前記被検出部材は、側面視において、前記クラッチレバーの揺動にかかわらず、少なくとも一部が前記検出部と重複するように配置されているものである。
【0015】
請求項4においては、前記クラッチレバーと前記被検出部材との連結部分から、前記被検出部材と前記連結部材との連結部分までの距離は、前記被検出部材と前記連結部材との連結部分から、前記被検出部位までの距離よりも、長くなるように形成されているものである。
【0016】
請求項5においては、前記検出部を上方から覆うカバー部材をさらに具備するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、非操作時に初期位置へと復帰するクラッチレバーを有する歩行型管理機において、クラッチレバーが操作されている状態で、エンジンが始動するのを防止することができる。また、クラッチレバーの揺動と連動したリンク機構の変位に応じてエンジンの始動をけん制することができる。また、被検出部材の変位を抑えることができる。また、検出部が車体外側の障害物(作物、樹木等)と干渉するのを抑制することができる。
【0020】
請求項2においては、クラッチレバーの揺動角度と比較して、被検出部材の揺動角度を小さく抑えることで、被検出部材の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0023】
請求項3においては、被検出部材の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0024】
請求項4においては、クラッチレバーの操作に伴う被検出部位の変位を小さく抑えることができる。
【0025】
請求項5においては、検出部に水分や塵挨が付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る歩行型管理機を示した側面図。
図2】歩行型管理機のエンジンの始動に関する構成を示したブロック図。
図3】クラッチ機構を模式的に示した側面図。
図4】クラッチレバーを初期位置に位置させた状態の歩行型管理機を示した側面図。
図5】操縦ハンドル及び始動けん制機構を示した斜視図。
図6】操縦ハンドル及び始動けん制機構を示した拡大斜視図。
図7】操縦ハンドル及び始動けん制機構を示した底面図。
図8】操縦ハンドル及び始動けん制機構を示した底面斜視図。
図9】リンク機構を示した分解斜視図。
図10】リンク機構を示した側面図。
図11】クラッチレバーを作動位置に位置させた状態の歩行型管理機を示した側面図。
図12】本発明の変形例に係る始動けん制機構を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0028】
以下では、図1から図3までを参照して、本発明の作業機の一実施形態に係る歩行型管理機1について説明する。
【0029】
歩行型管理機1は、機体フレーム2、車輪3、エンジン4、燃料タンク5、ボンネット6、ミッションケース7、ロータリ耕耘装置8、クラッチ機構10、ハンドルフレーム11、ハンドル連結部12、操縦ハンドル20、始動けん制機構100及びセーフティユニット130等を具備する。
【0030】
図1に示す機体フレーム2は、板材を適宜折り曲げて形成される部材である。機体フレーム2は、左右一対の車輪3に支持される。エンジン4は、機体フレーム2に載置される。燃料タンク5は、エンジン4の後方に配置される。当該エンジン4及び燃料タンク5は、ボンネット6によって覆われる。エンジン4は、図2に示すイグナイタ4aを介して送られた電流により点火プラグ4bが動作することで始動する。イグナイタ4aから点火プラグ4bへの通電は、セーフティユニット130により許可される。なお、セーフティユニット130の詳細な説明は後述する。
【0031】
図1に示すミッションケース7は、エンジン4からの動力を、車輪3やロータリ耕耘装置8に伝達する動力伝達機構(不図示)を収容するケースである。ミッションケース7の後部には、ロータリ耕耘装置8が設けられる。ロータリ耕耘装置8は、回転軸に固定される耕耘爪9が固定される。耕耘爪9の上部は、耕耘カバー9aで覆われる。
【0032】
クラッチ機構10は、車輪3や耕耘爪9の回転及び回転の停止を切り替えるためのものである。本実施形態のクラッチ機構10としては、図3に示すように、エンジン4側の第一プーリ10aと、ミッションケース7側の第二プーリ10bと、に巻回されたベルト10cに、テンションプーリ10dを介して張力(テンション)を付与することで動力を伝達可能とする、いわゆるベルトテンションクラッチを想定している。テンションプーリ10dは、ベルト10cに張力を付与する位置(張力付与位置)と、ベルト10cへの張力の付与を解除する位置(解除位置)と、に変位自在に設けられる。また、テンションプーリ10dは、適宜のばね部材の付勢力により、解除位置側へ向けて付勢されている。
【0033】
図1に示すように、耕耘カバー9aの上方には、ハンドルフレーム11が配置される。ハンドルフレーム11は、操縦ハンドル20を支持するためのフレームである。ハンドルフレーム11は、後上方へ延びるように形成される。ハンドルフレーム11の後上端部には、ハンドル連結部12を介して操縦ハンドル20が取り付けられる。操縦ハンドル20には、エンジン4を始動可能な状態と始動不能な状態とに切り替える始動けん制機構100が設けられる。なお、操縦ハンドル20及び始動けん制機構100の詳細な説明は後述する。
【0034】
以下では、図2から図11までを用いて、操縦ハンドル20について説明する。操縦ハンドル20は、作業者が歩行型管理機1を操縦するためのものである。操縦ハンドル20は、ハンドル本体30、クラッチレバー40、カバー部50、メインスイッチ60、操作レバー70、スロットルレバー80を具備する。
【0035】
図4及び図5に示すハンドル本体30は、操縦ハンドル20の主たる構造体である。ハンドル本体30は、平面視で略三角形状の枠(フレーム)状に形成される。ハンドル本体30は、ハンドル連結部12から後上方へ延びるように形成される。ハンドル本体30は、断面視で略円形状の部材を適宜折り曲げて形成される。ハンドル本体30は、側部31及び把持部34を具備する。
【0036】
側部31は、ハンドル本体30の左右両側部を構成する部分である。側部31は、ハンドル連結部12から、互いに左右方向に離間するように後方(後上方)へ延びる。側部31は、第一連結部32及び第二連結部33を具備する。
【0037】
図5から図9までに示す第一連結部32は、後述するクラッチレバー40が連結される部分である。第一連結部32は、左右の側部31にそれぞれ設けられる。第一連結部32は、側部31の後部における下面に設けられる。第一連結部32は、板形状の部材を適宜折り曲げて形成される。第一連結部32は、固定部32a及び延出部32bを有する。
【0038】
図6から図9までに示す固定部32aは、側部31の下面に固定される部分である。固定部32aは、板面が略上下方向に向くように形成される。
【0039】
延出部32bは、固定部32aの左右方向両端部からそれぞれ下方に延びる部分である。延出部32bは、板面が左右方向に向くように形成される。延出部32bは、連結孔32cを有する。
【0040】
図9に示す連結孔32cは、延出部32bを左右方向に貫通する孔である。連結孔32cには、軸線方向を左右方向に向けたピンAが挿通される。
【0041】
図6から図9までに示す第二連結部33は、後述する連結部材115が連結される部分である。第二連結部33は、左右の側部31のうち、ハンドル本体30のうち始動けん制機構100が配置される側つまり右側の側部31に設けられる。第二連結部33は、第一連結部32よりも前方において、側部31の下面から下方(斜め後下方)に延びるように設けられる。第二連結部33は、板面を左右方向に向けた略板形状に形成される。第二連結部33は、連結孔33aを有する。
【0042】
図9に示す連結孔33aは、第二連結部33を左右方向に貫通する孔である。
【0043】
図4及び図5に示す把持部34は、ハンドル本体30の後部を構成する部分である。把持部34は、左右の側部31の後端部同士を連結するように左右方向に延びる。把持部34は、作業者の手指により把持される。
【0044】
図4図5図8図9及び図11に示すクラッチレバー40は、クラッチ機構10を動力伝達可能な状態と、動力伝達不能な状態と、に切り替える操作(切り替え操作)が可能なレバーである。クラッチレバー40は、正面視で略U字形状の枠(フレーム)状に形成される。クラッチレバー40は、断面視で略円形状の部材を適宜折り曲げて形成される。
【0045】
図5に示すように、クラッチレバー40は、ハンドル本体30の左右の側部31の前後方向途中部(後部)の間に設けられる。また、図4及び図11に示すように、クラッチレバー40は、第一連結部32の連結孔32cに挿通されたピンAを揺動中心として、ハンドル本体30から立ち上がるように起立した初期位置(図4を参照)と、ハンドル本体30に沿うように倒伏した作動位置(図11を参照)と、の間で揺動操作可能である。なお、クラッチレバー40による切り替え操作の詳細な説明は後述する。以下では、初期位置を基準として、クラッチレバー40の構成を説明する。クラッチレバー40は、側部41、把持部43及びワイヤ44を具備する。
【0046】
図4図5図8及び図9に示す側部41は、クラッチレバー40の左右両側部を構成する部分である。側部41は、概ね上下方向に延びるように形成される。下部42は、板面を左右方向に向けた略板形状に形成される。本実施形態では、左右の側部41の下部42のうち、右側の側部41の下部42が、左側の側部41の下部42よりも下方に延出している。側部41は、第一連結孔42a及び第二連結孔42bを具備する。
【0047】
図9に示す第一連結孔42aは、下部42を左右方向に貫通する孔である。第一連結孔42aは、左右の側部41にそれぞれ形成される。第一連結孔42aには、第一連結部32の連結孔32cに挿通されたピンAが挿通される。第一連結孔42a及び連結孔32cを挿通したピンAの先端部には、抜け止めとして機能する適宜のナットNが固定される(図8を参照)。このようにして、側部41の下部42は、ハンドル本体30の左右の側部31に対して揺動操作可能に連結される。
【0048】
第二連結孔42bは、第一連結孔42aよりも下方(側部41の下端部)において下部42を左右方向に貫通する孔である。第二連結孔42bは、左右の側部41のうち、右側の側部41の下部42に形成される。
【0049】
図4及び図5に示す把持部43は、クラッチレバー40の上部を構成する部分である。把持部43は、左右の側部41の上端部同士を連結するように左右方向に延びる。把持部43は、作業者の手指により把持される。また、把持部43には、当該把持部43を覆う適宜のグリップが設けられる。
【0050】
図3及び図5に示すワイヤ44は、クラッチ機構10と接続される部分である。図5に示すように、ワイヤ44の一端部は、左右の側部41のうち、左側の側部41における第一連結孔42aの上方に接続される。また、図3に示すように、ワイヤ44の他端部は、クラッチ機構10のテンションプーリ10dに接続される。ワイヤ44の他端部には、引っ張りばねを構成するばね部44aが設けられており、当該ばね部44aが、テンションプーリ10dに固定されている。ばね部44aの付勢力により、クラッチレバー40には、作動位置から初期位置へと復帰するような復帰力が常時作用している。
【0051】
図6から図8までに示すカバー部50は、後述するメインスイッチ60や操作レバー70、検出部120等が設けられると共に、これら各部材の少なくとも一部を上方から覆うものである。カバー部50は、ハンドル本体30の左右の側部31のうち、右側の側部31の左面に設けられる。カバー部50は、カバー部材51及びステー52を具備する。
【0052】
カバー部材51は、メインスイッチ60や操作レバー70、検出部120の少なくとも一部を上方から覆う部分である。カバー部材51は、下方に向けて開口する略箱形状に形成される。カバー部50は、平面視において、前後方向に長尺な略矩形状に形成される。カバー部材51は、樹脂により形成される。カバー部材51は、ハンドル本体30の側部31の第一連結部32よりも前方において、第二連結部33の前後に亘って配置される。カバー部材51は、スイッチ挿通孔51a及び長孔51bを具備する。
【0053】
図6及び図7に示すスイッチ挿通孔51aは、後述するメインスイッチ60の一部(スイッチ部分)が挿通される孔である。スイッチ挿通孔51aは、カバー部材51を上下方向に貫通する。スイッチ挿通孔51aは、カバー部材51の後部に形成される。
【0054】
長孔51bは、後述する操作レバー70が挿通される孔である。長孔51bは、カバー部材51を上下方向に貫通する。長孔51bは、前後方向に長尺な形状に形成される。長孔51bは、スイッチ挿通孔51aの前方に形成される。
【0055】
図7及び図8に示すステー52は、ハンドル本体30の側部31に固定されると共に、カバー部材51が固定される部分である。ステー52は、板形状の部材を適宜折り曲げて形成される。ステー52は、金属により形成される。ステー52は、カバー固定部52a、ハンドル固定部52b及び検出部固定部52cを具備する。
【0056】
図8に示すカバー固定部52aは、カバー部材51が固定される部分である。カバー固定部52aは、板面が上下方向に向くように形成される。カバー部材51は、カバー固定部52aの上面に載置された状態で、ビス等の適宜の止具によりカバー固定部52aに固定される。
【0057】
ハンドル固定部52bは、右側の側部31の左面に固定される部分である。ハンドル固定部52bは、板面が左右方向に向くように形成される。ハンドル固定部52bは、カバー固定部52aの右端部から下方に延びるように形成される。ハンドル固定部52bは、溶接等により側部31の左面に固定される。
【0058】
検出部固定部52cは、後述する始動けん制機構100の検出部120が固定される部分である。検出部固定部52cは、前後方向に視て、右方が開口する略U字形状に形成される。検出部固定部52cは、上面がハンドル固定部52bの下端部に固定され、下面に検出部120が固定される。
【0059】
図2及び図6に示すメインスイッチ60は、エンジン4を始動可能な状態と、エンジン4を停止する状態と、を切り替える操作が可能なスイッチである。メインスイッチ60は、適宜の回転操作により、エンジン4を始動可能とする運転位置と、エンジン4を停止する停止位置とに切り替えられる。また、メインスイッチ60は、上記回転操作に加えて、押圧操作が可能とされている。メインスイッチ60は、押圧操作がされることで運転位置から停止位置に切り替え可能とされている。メインスイッチ60は、操作が可能な部分(スイッチ部分)が、カバー部材51のスイッチ挿通孔51aを挿通して露出すると共に、他の部分はカバー部材51により上方から覆われる。
【0060】
エンジン4を始動する際には、作業者は、メインスイッチ60を運転位置にした状態で、適宜のリコイルスタータ(不図示)や、エンジン4を始動させるための始動スイッチ(不図示)の操作を行う。これにより、図2に示すイグナイタ4aを介して送られた電流により点火プラグ4bが動作し、エンジン4が始動する。
【0061】
図6に示す操作レバー70は、歩行型管理機1の動作を切り替え可能なレバーである。具体的には、操作レバー70は、適宜の揺動操作により、デフロックの入切やロータリ耕耘装置8の駆動又は停止を切り替えることができる。操作レバー70は、作業者の手指により把持される部分が、カバー部材51の長孔51bを挿通して露出すると共に、他の部分はカバー部材51により上方から覆われる。操作レバー70は、長孔51bに沿って前後方向に揺動操作可能とされている。
【0062】
スロットルレバー80は、エンジン4の出力(回転数)制御の操作が可能なレバーである。スロットルレバー80は、レバーの操作量を検知する適宜のセンサを有する。スロットルレバー80としては、適宜の回転操作が可能なレバーを採用可能である。スロットルレバー80は、ハンドル本体30の左右の側部31のうち、右側の側部31に設けられる。また、スロットルレバー80は、メインスイッチ60の右方に位置するように配置される。
【0063】
以下では、上述の如きクラッチレバー40を用いたクラッチ機構10の切り替え操作について説明する。
【0064】
図4及び図11に示すように、作業者が、ハンドル本体30と共にクラッチレバー40を握るように操作すれば、クラッチレバー40が連結孔32c(第一連結部32)に挿通されたピンAを揺動中心として右側面視反時計回りに揺動し、初期位置から作動位置に変位する。上記クラッチレバー40の揺動角度は、60度程度である。図3に示すように、上記クラッチレバー40の揺動に伴い、ワイヤ44に引っ張られてテンションプーリ10dが張力付与位置側へ変位する。この際には、ベルト10cに張力が付与されてクラッチ機構10が作動されることで、エンジン4からの動力が、ミッションケース7の動力伝達機構を介して車輪3やロータリ耕耘装置8へと伝達可能な状態に切り換えられる。すなわち、クラッチ機構10が動力伝達可能な状態に切り換えられる。これによって、歩行型管理機1は、走行したり、耕耘爪9を回転させて圃場を耕耘することができる。
【0065】
また、作業者が、クラッチレバー40を握る手を離せば、図3に示すワイヤ44のばね部44aの付勢力(復帰力)により、クラッチレバー40は、連結孔32c(第一連結部32)に挿通されたピンAを揺動中心として右側面視時計回りに回動する。これにより、クラッチレバー40は、自動的に作動位置から初期位置に戻る。クラッチレバー40が初期位置に戻れば、テンションプーリ10dは、適宜のばね部材の付勢力により、解除位置側へ変位する。この際には、ベルト10cへの張力の付与が停止されることで、クラッチ機構10が動力伝達不能な状態に切り換えられる。これにより、車輪3や耕耘爪9の回転が停止される。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る歩行型管理機1は、作業者がハンドル本体30と共にクラッチレバー40(いわゆるデッドマンクラッチレバー)を握っている間はクラッチ機構10が作動し、手を離してクラッチレバー40の操作が解除されればクラッチ機構10が停止する、いわゆるデッドマン式クラッチを採用している。
【0067】
以下では、始動けん制機構100について説明する。
【0068】
図4図6から図10までに示す始動けん制機構100は、クラッチレバー40の揺動に応じて、エンジン4を始動可能な状態と始動不能な状態とに切り替えるものである。具体的には、始動けん制機構100は、クラッチレバー40が初期位置に切り換えられたことを検出した場合、エンジン4を始動可能な状態に切り替える。また、始動けん制機構100は、クラッチレバー40が作動位置に切り換えられたことを検出した場合、エンジン4を始動不能な状態に切り替える(エンジン4の始動をけん制する)。始動けん制機構100は、ハンドル本体30の左右の側部31のうち、右側の側部31に設けられる。始動けん制機構100は、リンク機構110及び検出部120を具備する。
【0069】
リンク機構110は、クラッチレバー40の揺動に応じて変位する複数のリンク部材を備えるものである。リンク機構110は、複数のリンク部材としての被検出部材111及び連結部材115を具備する。
【0070】
図6から図10までに示す被検出部材111は、後述する検出部120による検出対象となるものである。被検出部材111は、クラッチレバー40と、後述する連結部材115と、のそれぞれに対して回転可能に連結される。被検出部材111は、板形状の部材を適宜折り曲げて形成される。被検出部材111は、被連結部位112、接続部位113及び被検出部位114を具備する。
【0071】
被連結部位112は、クラッチレバー40及び連結部材115と連結される部位である。被連結部位112は、概ね前後方向(斜め前後方向)に長尺な形状に形成される。より詳細には、被連結部位112は、後端部から前端部へ斜め前下方向に延びるように形成される。被連結部位112は、板面が左右方向に向くように形成される。
【0072】
図8に示すように、被連結部位112は、クラッチレバー40(側部41)の右側、かつハンドル本体30(側部31)の第二連結部33よりも左側に配置される。被連結部位112は、第一連結孔112a及び第二連結孔112bを具備する。
【0073】
図9に示す第一連結孔112aは、被連結部位112の後端部を左右方向に貫通する孔である。第一連結孔112aには、クラッチレバー40(側部41)の第二連結孔42bに挿通されたピンCが挿通される。第一連結孔112a及び第二連結孔42bを挿通したピンCの先端部には、抜け止めとして機能する適宜のナットNが固定される(図8を参照)。このようにして、被連結部位112の後端部は、クラッチレバー40(側部41)の下端部と連結される。
【0074】
第二連結孔112bは、被連結部位112の前端部を左右方向に貫通する孔である。
【0075】
接続部位113は、被連結部位112と、後述する被検出部位114とを接続する部位である。接続部位113は、被連結部位112の前端部から左方に延びるように形成される。接続部位113は、板面が斜め前下方向に向くように形成される。
【0076】
被検出部位114は、後述する検出部120によって検出される部位である。被検出部位114は、接続部位113の左端部(先端部)から、斜め前下方に延びるように形成される。被検出部位114は、被連結部位112の延出方向に対して斜め前下方に屈曲するように延出する。被検出部位114は、板面が左右方向に向くように形成される。被検出部位114は、側面視において略矩形状に形成される。
【0077】
図7に示すように、被検出部位114は、被連結部位112に対して、車体内側(左側)に変位した位置に形成される。すなわち、被検出部位114は、接続部位113の延出寸法分、被連結部位112に対して車体内側(左側)に位置する。
【0078】
図6から図10までに示す連結部材115は、被検出部材111及びハンドル本体30(側部31)の第二連結部33のそれぞれに対して回動可能に連結されるものである。連結部材115は、板面を左右方向に向けた略板形状に形成される。連結部材115は、側面視において、後端部から前端部へ斜め前上方向に延びる長円形状に形成される。
【0079】
図9に示すように、連結部材115は、第二連結部33の左側、かつ被検出部材111の右側に配置される。連結部材115は、第一連結孔115a及び第二連結孔115bを具備する。
【0080】
図9に示す第一連結孔115aは、連結部材115の前端部(上端部)を左右方向に貫通する孔である。第一連結孔115aには、第二連結部33の連結孔33aに挿通されたピンBが挿通される。第一連結孔115a及び連結孔33aを挿通したピンBの先端部には、抜け止めとして機能する適宜のナットNが固定される(図8を参照)。このようにして、連結部材115の前端部(上端部)は、第二連結部33と連結される。
【0081】
第二連結孔115bは、連結部材115の後端部(下端部)を左右方向に貫通する孔である。第二連結孔115bには、被連結部位112の第二連結孔112bに挿通されるピンDが挿通される。第二連結孔115b及び第二連結孔112bを挿通したピンDの先端部には、抜け止めとして機能する適宜のナットNが固定される(図8を参照)。このようにして、連結部材115の後端部(下端部)は、被検出部材111の被連結部位112の前端部と連結される。
【0082】
図4図6から図8まで、並びに図11に示す検出部120は、被検出部材111の被検出部位114による押圧を検知するものである。図8に示すように、検出部120は、カバー部50(ステー52)の検出部固定部52cに固定される。検出部120は、検出部固定部52cの下面に固定される。検出部120は、被検出部材111(被検出部位114)よりも左方に位置する。
【0083】
検出部120は、カバー部50のカバー部材51により、上方から覆われる。これにより、検出部120に、水分や塵挨が付着するのを抑制することができる。また、本実施形態では、操作レバー70のガイドや、メインスイッチ60及び操作レバー70のカバーとして使用するカバー部材51を、検出部120のカバーとしても兼用している。これにより、部材点数の増加を抑制することができる。
【0084】
検出部120は、被検出部位114による押圧に伴い変位するレバー部121を有し、当該レバー部121の変位に基づいて、被検出部位114による押圧を検知する。図8に示すように、レバー部121は、検出部120の右部において、被検出部位114側(右側)に配置されている。レバー部121は、後方側に向かうに従い、右方に傾斜するように配置される。
【0085】
レバー部121の先端部(後端部)の左右位置は、被検出部位114の左右位置と概ね同じである。従って、図4及び図8に示すように、側面視において、レバー部121の先端部が被検出部材111の被検出部位114と重複している場合は、レバー部121は、被検出部位114により押圧される。以下では、検出部120が被検出部位114による押圧を検知している状態をオン、被検出部位114による押圧を検知していない状態をオフとして説明する。
【0086】
検出部120としては、例えば適宜のリミットスイッチ(マイクロスイッチ)等の押圧を検知可能な種々のスイッチを採用可能である。なお、検出部120としては、押圧を検知可能なスイッチに限られず、非接触のスイッチも採用可能である。
【0087】
図2に示すセーフティユニット130は、イグナイタ4aから点火プラグ4bへの通電の許可及び通電の遮断を切り替え可能なものである。セーフティユニット130は、メインスイッチ60、検出部120及びイグナイタ4aに適宜のハーネス(不図示)を介して電気的に接続されている。
【0088】
セーフティユニット130は、メインスイッチ60及び検出部120の状態に基づいて、イグナイタ4aから点火プラグ4bへの通電の許可及び通電の遮断を切り替える。具体的には、セーフティユニット130は、メインスイッチ60が運転位置である状態、かつ検出部120がオンである状態(被検出部位114により押圧されている状態)であれば、イグナイタ4aから点火プラグ4bへの通電を許可する。また、セーフティユニット130は、上記状態以外の場合には、イグナイタ4aから点火プラグ4bへの通電を遮断する。すなわち、本実施形態では、検出部120がオフである状態(被検出部位114により押圧されていない状態)では、イグナイタ4aから点火プラグ4bへの通電は遮断される。この場合は、仮に作業者がエンジン4の始動操作(例えばリコイルの操作)を行ったとしても、点火プラグ4bは動作せず、エンジン4は始動しない。
【0089】
以下では、クラッチレバー40の揺動に伴うリンク機構110の動作について説明する。
【0090】
まず、上述の如きリンク機構110の各部材の連結部分の関係について説明する。ここで、以下では、図10に示すように、クラッチレバー40と被検出部材111との連結部分(ピンC)から、被検出部材111と連結部材115との連結部分(ピンD)までの距離を距離L1と称する。また、被検出部材111と連結部材115との連結部分(ピンD)から、被検出部位114(側面視における被検出部位114の中央部)までの距離を距離L2と称する。
【0091】
また、クラッチレバー40と側部31の第一連結部32との連結部分(ピンA)から、クラッチレバー40と被検出部材111との連結部分(ピンC)までの距離を距離L3と称する。また、側部31の第二連結部33と連結部材115との連結部分(ピンB)から、被検出部材111と連結部材115との連結部分(ピンD)までの距離を距離L4と称する。
【0092】
リンク機構110は、クラッチレバー40の揺動と連動させて、被検出部材111を変位させることができる。具体的には、図10に示すように、被検出部材111のクラッチレバー40との連結部分(ピンC)は、ピンAを揺動中心とし、距離L3を半径とした円弧の範囲で変位可能である。また、被検出部材111の連結部材115との連結部分(ピンD)は、ピンBを揺動中心とし、距離L4を半径とした円弧の範囲で変位可能である。
【0093】
次に、初期位置のクラッチレバー40を、作動位置へ揺動する場合のリンク機構110の動作について説明する。
【0094】
図4は、クラッチレバー40が初期位置に位置している状態を示している。この状態では、クラッチ機構10は動力伝達不能である。また、この状態では、図4図8及び図10に示すように、側面視において、レバー部121の先端部は被検出部位114と重複する。すなわち、この状態では、検出部120は、被検出部材111の被検出部位114による押圧を検知している。
【0095】
この場合、検出部120がオンであるため、メインスイッチ60が運転位置である場合には、セーフティユニット130によりイグナイタ4aから点火プラグ4bへの通電は許可される。この場合は、作業者がエンジン4の始動操作(例えばリコイルの操作)を行うことで、エンジン4が始動する。
【0096】
作業者が、ハンドル本体30と共にクラッチレバー40を握り、クラッチレバー40を初期位置から作動位置へ揺動させれば、図11に示すように、クラッチレバー40は、ピンAを揺動中心として右側面視反時計回りに変位する。上記変位に連動して、被検出部材111のクラッチレバー40との連結部分(ピンC)は、ピンAを揺動中心とし、距離L3を半径とした円弧の範囲で、斜め前上方に変位する。また、上記変位に連動して、被検出部材111の連結部材115との連結部分(ピンD)は、ピンBを揺動中心とし、距離L4を半径とした円弧の範囲で、斜め前下方に変位する(図10を参照)。
【0097】
このようにして、クラッチレバー40の揺動に連動して、被検出部材111は、全体として右側面視時計回りに揺動すると共に、前方に変位する。本実施形態では、連結部材115によって被検出部材111の可動範囲を制限することで、被検出部材111の変位を抑えることができる。また、上記被検出部材111の揺動角度は、25度程度である。このように、被検出部材111は、クラッチレバー40の揺動角度(60度程度)と比較して小さい揺動角度で変位する。これによれば、被検出部材111の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0098】
図11は、クラッチレバー40が作動位置に位置している状態を示している。この状態では、クラッチ機構10は動力伝達可能である。また、この状態では、被検出部材111の被検出部位114は、検出部120のレバー部121の前方に位置している。すなわち、側面視において、レバー部121の先端部は、被検出部位114と重複していない。この場合、被検出部位114による検出部120の押圧は解除される。従って、検出部120は、被検出部材111の被検出部位114による押圧を検知しない。
【0099】
なお、図10及び図11に示すように、この場合でも、側面視において、被検出部材111の少なくとも一部(被連結部位112の前端部)は、検出部120と重複している。すなわち、本実施形態では、被検出部材111は、クラッチレバー40の揺動にかかわらず、少なくとも一部が検出部120と重複するように配置されている。これにより、被検出部材111の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0100】
検出部120が被検出部位114による押圧を検知しない場合、検出部120がオフであるため、エンジン4の停止状態において、セーフティユニット130によりイグナイタ4aから点火プラグ4bへの通電は遮断される。この場合は、仮に作業者がエンジン4の始動操作(例えばリコイルの操作)を行ったとしても、点火プラグ4bは動作せず、エンジン4は始動しない。
【0101】
次に、作動位置のクラッチレバー40を、初期位置へ揺動する場合のリンク機構110の動作について説明する。
【0102】
作業者がクラッチレバー40を離せば、クラッチレバー40は、ワイヤ44のばね部44aの復帰力により、自動的にピンAを揺動中心として右側面視時計回りに変位する。上記変位に連動して、初期位置から作動位置への動作とは逆に、被検出部材111のクラッチレバー40との連結部分(ピンC)は、斜め後下方に変位し、被検出部材111の連結部材115との連結部分(ピンD)は、斜め後上方に変位する(図10を参照)。
【0103】
このようにして、クラッチレバー40の揺動に連動して、被検出部材111は、全体として右側面視反時計回りに回動すると共に、後方に変位する。これにより、被検出部材111の被検出部位114は、検出部120を押圧する。
【0104】
上述の如き始動けん制機構100を備える歩行型管理機1によれば、クラッチレバー40が操作されている(作動位置に切り換えられている)状態で、エンジン4が始動するのを防止することができる。これにより、仮に、クラッチレバー40が操作されている状態(クラッチ機構10が動力伝達可能な状態)で、エンジン4の始動操作を実行した場合でも、歩行型管理機1が急発進するようなことを抑制することができる。
【0105】
また、図10に示すように、本実施形態に係るリンク機構110は、距離L1が距離L2よりも長く形成されている。これにより、クラッチレバー40の操作に伴う被検出部位114の変位を小さく抑えることができ、ひいては被検出部材111の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0106】
また、本実施形態に係る被検出部位114は、被連結部位112に対して車体内側(左側)に変位した位置に形成されている。これにより、検出部120が車体外側の障害物(作物、樹木等)と干渉するのを抑制することができる。また、車体外側からの塵挨が検出部120に付着するのを抑制することができる。
【0107】
また、本実施形態に係る始動けん制機構100は、クラッチレバー40の操作と連動して変位する際に、ハンドル本体30やクラッチレバー40よりも上方に移動する(ハンドル本体30等から上方に突出する)ことがない。これにより、始動けん制機構100と他の部材(例えばカバー部50等)との干渉を避けることができる。
【0108】
以上の如く、本実施形態に係る歩行型管理機1は、
初期位置と作動位置との間で揺動操作可能であり、前記作動位置に切り換えられた状態ではクラッチ機構10を動力伝達可能な状態に切り換え、前記初期位置に切り換えられた状態では前記クラッチ機構10を動力伝達不能な状態に切り換えるクラッチレバー40と、
前記クラッチレバー40が前記作動位置に切り換えられたことを検出した場合、エンジン4の始動をけん制する始動けん制機構100と、
を具備するものである。
【0109】
このように構成することにより、非操作時に初期位置へと復帰するクラッチレバー40(いわゆる、デッドマンクラッチレバー)を有する歩行型管理機1において、クラッチレバー40が操作されている(作動位置に切り換えられている)状態で、エンジン4が始動するのを防止することができる。
【0110】
また、前記始動けん制機構100は、
前記クラッチレバー40の揺動に応じて変位する複数のリンク部材を具備するリンク機構110と、
前記リンク機構110の変位を検出することで、前記クラッチレバー40が前記作動位置に切り換えられたことを検出する検出部120と、
を含むものである。
【0111】
このように構成することによりクラッチレバー40の揺動と連動したリンク機構110の変位に応じてエンジン4の始動をけん制することができる。これによって、設計の自由度を向上させることができ、例えば各部材の省スペース化や、検出部120の配置の自由度の向上等を図ることができる。
【0112】
また、前記複数のリンク部材は、
前記検出部120による検出対象となる被検出部材111を含み、
前記被検出部材111は、
前記クラッチレバー40の揺動角度と比較して小さい揺動角度で変位するものである。
【0113】
このように構成することにより、クラッチレバー40の揺動角度と比較して、被検出部材111の揺動角度を小さく抑えることで、被検出部材111の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0114】
また、前記複数のリンク部材は、
前記被検出部材111及び車体のそれぞれに対して回動可能に連結される連結部材115をさらに含むものである。
【0115】
このように構成することにより、連結部材115によって被検出部材111の可動範囲を制限することで、被検出部材111の変位を抑えることができ、ひいては被検出部材111の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0116】
また、前記被検出部材111は、
前記クラッチレバー40及び前記連結部材115と連結される被連結部位112と、
前記被連結部位112に対して車体内側に変位した位置に形成され、前記検出部120によって検出される被検出部位114と、
を含むものである。
【0117】
このように構成することにより、被検出部位114を検出する検出部120を車体内側に配置することができるため、検出部120が車体外側の障害物(作物、樹木等)と干渉するのを抑制することができる。また、車体外側からの塵挨が検出部120に付着するのを抑制することができる。
【0118】
また、前記被検出部材111は、
側面視において、前記クラッチレバー40の揺動にかかわらず、少なくとも一部が前記検出部120と重複するように配置されているものである。
【0119】
このように構成することにより、検出部120と被検出部材111を側面視において重複するように配置することで、被検出部材111の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0120】
また、前記クラッチレバー40と前記被検出部材111との連結部分から、前記被検出部材111と前記連結部材115との連結部分までの距離L1は、前記被検出部材111と前記連結部材115との連結部分から、前記被検出部位114までの距離L2よりも、長くなるように形成されているものである。
【0121】
このように構成することにより、クラッチレバー40の操作に伴う被検出部位114の変位を小さく抑えることができ、ひいては被検出部材111の可動範囲の省スペース化を図ることができる。
【0122】
また、前記検出部120を上方から覆うカバー部材51をさらに具備するものである。
【0123】
このように構成することにより、検出部120に水分や塵挨が付着するのを抑制することができる。
【0124】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0125】
例えば、本実施形態では、カバー部50のステー52に検出部120を設け、操作レバー70のガイド等として使用するカバー部材51を、検出部120のカバーとしても兼用する構成としたが、このような態様に限られない。例えば、検出部120を上方から覆うカバーを別途設けるようにしてもよい。また、本実施形態では、検出部120をカバーで覆う構成としたが、このような態様に限られず、カバーを設けなくてもよい。この場合は、カバーに代えて、ハンドル本体30によって検出部120を上方から覆うように構成してもよい。
【0126】
また、本実施形態に係るリンク機構110の構成は一例であり、リンク機構110としては、本実施形態で説明した構成に限られない。リンク機構110を構成するリンク部材の位置や数、形状は、リンク部材の動作に応じて適宜変更可能である。
【0127】
また、例えば、本実施形態では、クラッチレバー40と連動するリンク機構110の変位を検出することで、クラッチレバー40の位置を検出する構成としたが、このような態様に限られない。例えば、図12に示す変形例のように、リンク機構110を用いずに、クラッチレバー40の位置を検出するようにしてもよい。この場合、検出部120は、クラッチレバー40の位置を検出可能な位置に適宜配置される。
【0128】
図12には、検出部120の配置例を符号120A~120Dで示している。以下、具体的に説明する。
【0129】
図12では、ハンドル本体30の把持部34の上面に、検出部120Aを配置した例を示している。これによれば、作業位置に変位させたクラッチレバー40の把持部43により検出部120Aを押圧することで、クラッチレバー40の位置を検出することができる。
【0130】
また、図12では、ハンドル本体30の側部31の内側に、検出部120Bを配置した例を示している。これによれば、作業位置に変位させたクラッチレバー40の側部41により検出部120Bを押圧することで、クラッチレバー40の位置を検出することができる。
【0131】
また、図12では、ハンドル本体30の側部31の下面であって、クラッチレバー40の前方に、検出部120Cを配置した例を示している。これによれば、作業位置に変位させたクラッチレバー40の側部41の下部42により検出部120Cを押圧することで、クラッチレバー40の位置を検出することができる。
【0132】
また、図12では、クラッチレバー40の揺動軸(ピンA)に、クラッチレバー40の揺動量を検出可能な検出部120Dを配置した例を示している。検出部120Dとしては、適宜のセンサ類(ポテンショメータ等)を採用可能である。これによれば、クラッチレバー40の揺動量に基づいて、クラッチレバー40の位置を検出することができる。
【0133】
また、例えば、クラッチレバー40の、ワイヤ44のクラッチ機構10側の端部に、ワイヤ44の動作を検出可能な検出部(不図示)を設けるようにしてもよい。これによれば、クラッチレバー40の揺動軸に連動するワイヤ44の動作に、基づいてクラッチレバー40の位置を検出することができる。
【0134】
上記変形例によれば、リンク機構を用いることなく、簡素な構成によりクラッチレバー40の位置を検出することができる。
【0135】
また、本実施形態では、デッドマンクラッチレバーを有する歩行型管理機に本発明を適用する例を示したが、これに限定されない。つまりクラッチレバー40がデッドマンクラッチレバーの役割を備えていなくてもよい。また、作業中に把持し続けるタイプのクラッチレバーに限らず、非操作時に初期位置へと復帰しないレバータイプのクラッチにも適用することができる。つまり、エンジン4が停止しており、かつ、クラッチレバーが作動位置に切り替えられている状態で、エンジン4の始動操作を行った際にエンジン4が始動することを防止することができればよい。
【符号の説明】
【0136】
1 歩行型管理機
40 クラッチレバー
100 始動けん制機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12