IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電工プリントサーキット株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧

特許7478732フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール
<>
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図1
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図2
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図3
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図4
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図5
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図6
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図7
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図8
  • 特許-フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュール
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240425BHJP
   H01M 50/519 20210101ALI20240425BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20240425BHJP
   H01M 50/569 20210101ALI20240425BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240425BHJP
   H01M 50/298 20210101ALI20240425BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H01M50/519
H01M50/507
H01M50/569
H01M50/249
H01M50/298
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021530731
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2020026936
(87)【国際公開番号】W WO2021006323
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2019128673
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】母倉 修司
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 慎一
(72)【発明者】
【氏名】内田 淑文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀夫
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0181418(US,A1)
【文献】特開2013-161506(JP,A)
【文献】特開2004-71562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/519
H01M 50/507
H01M 50/569
H01M 50/249
H01M 50/298
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有するベースフィルムと、
このベースフィルムの一方の面側に積層される導電パターンと、
上記ベースフィルムのうち直線状にのびる端縁から平面方向に突出して配設され、上記導電パターンを外部素子に接続するための余長吸収部とを備え、
上記余長吸収部が、
上記導電パターンと接続されるパターン接続部と、
上記パターン接続部から連続してこの順に連結される少なくとも第1直線状配線部、第1円弧状配線部及び第2直線状配線部を有する連結部と、
上記連結部の上記パターン接続部が連結される端部とは反対側の端部に接続される接続端子とを有し、
上記平面方向のうち上記ベースフィルムの端縁がのびる方向に対して直交する方向を突出方向と定義した場合に、上記パターン接続部及び上記接続端子が、上記余長吸収部の上記突出方向に対向し、
上記第1直線状配線部及び第2直線状配線部が、この順に上記突出方向に垂直に配設され、
上記第1円弧状配線部が、その両端部が上記突出方向に揃い、かつ中心角が180°超であり、
上記第1円弧状配線部の内径が、上記第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも大きい、フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
上記第1円弧状配線部の内径が0.5mm以上10mm以下である、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
上記連結部が、上記第2直線状配線部から連続してこの順に連結される少なくとも第2円弧状配線部及び第3直線状配線部をさらに有し、
上記第1直線状配線部、第2直線状配線部及び第3直線状配線部が、この順に上記突出方向に垂直かつ等間隔に配設され、
上記第2円弧状配線部が、その両端部が上記突出方向に揃い、かつ中心角が180°超であり、
上記第2円弧状配線部の内径が、上記第2直線状配線部及び第3直線状配線部の平均間隔よりも大きい、請求項1又は請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
上記第2直線状配線部の長さが3mm以上15mm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板を備え、
車両に搭載された電池モジュールに取り付けられる、電池配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント配線板及び電池配線モジュールに関する。本出願は、2019年7月10日に出願した日本特許出願である特願2019-128673号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化に伴い、可撓性を有しコンパクトに実装できるフレキシブルプリント配線板が注目されている。
【0003】
このフレキシブルプリント配線板には、通常他の外部素子、例えば電池等が接続される。フレキシブルプリント配線板と、他の外部素子とは、電子機器に互いに独立して実装されるため、電子機器の振動等により両者の離間距離が変化する。このため、フレキシブルプリント配線板と、他の外部素子との間の接続は、両者の離間距離の変化(変位)に応じて伸縮可能な余長吸収部を用いて行われる。
【0004】
このような余長吸収部としては、配線を逆U字状に湾曲し、余長を吸収すると共に余長部分を緊張方向へ付勢するばね部材を設けた構造が提案されている(特開2005-192381号公報参照)。この従来の余長吸収部では、配線に張力が作用すると余長部分が引き出され、ばね部材が撓み変形し引張り力に基づく接続部への応力集中が緩和される。また、この従来の余長吸収部では、引張り力が解除されると、引き出された余長部分が、ばね部材の撓み変形が復元する弾性力によって引き戻されて元の位置に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-192381号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面側に積層される導電パターンと、上記ベースフィルムから平面方向に突出して配設され、上記導電パターンを外部素子に接続するための余長吸収部とを備え、上記余長吸収部が、上記導電パターンと接続されるパターン接続部と、上記パターン接続部から連続してこの順に連結される少なくとも第1直線状配線部、第1円弧状配線部及び第2直線状配線部を有する連結部と、上記連結部の上記パターン接続部が連結される端部とは反対側の端部に接続される接続端子とを有し、上記パターン接続部及び上記接続端子が、上記余長吸収部の突出方向に対向し、上記第1直線状配線部及び第2直線状配線部が、この順に上記突出方向に垂直に配設され、上記第1円弧状配線部が、その両端部が上記突出方向に揃い、かつ中心角が180°超であり、上記第1円弧状配線部の内径が、上記第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的側面図である。
図2図2は、図1からカバーレイを除いたフレキシブルプリント配線板の模式的平面図である。
図3図3は、図2の余長吸収部の模式的拡大平面図である。
図4図4は、図2とは異なる実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的平面図である。
図5図5は、図4の余長吸収部の模式的拡大平面図である。
図6図6は、図2及び図4とは異なる実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的平面図である。
図7図7は、図2図4及び図6とは異なる実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的平面図である。
図8図8は、実施例におけるNo.3のフレキシブルプリント配線板の模式的平面図である。
図9図9は、電池配線モジュール100の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
しかしながら、上記従来の余長吸収部は、フレキシブルプリント配線板の外部にばね部材を用いて構成されるため、比較的大きい。近年の電子機器の小型軽量化に伴い、余長吸収部にも小型化が求められている。ところが、上記構造をそのまま小型化すると、接続部への応力集中が十分に緩和しきれず、余長吸収部が破断する場合がある。
【0009】
本開示は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、小型で破断し難い余長吸収部を備え、外部素子との接続信頼性が高いフレキシブルプリント配線板の提供を目的とする。
[本開示の効果]
本開示のフレキシブルプリント配線板は、小型で破断し難い余長吸収部を備えるので、外部素子との接続信頼性が高い。
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面側に積層される導電パターンと、上記ベースフィルムから平面方向に突出して配設され、上記導電パターンを外部素子に接続するための余長吸収部とを備え、上記余長吸収部が、上記導電パターンと接続されるパターン接続部と、上記パターン接続部から連続してこの順に連結される少なくとも第1直線状配線部、第1円弧状配線部及び第2直線状配線部を有する連結部と、上記連結部の上記パターン接続部が連結される端部とは反対側の端部に接続される接続端子とを有し、上記パターン接続部及び上記接続端子が、上記余長吸収部の突出方向に対向し、上記第1直線状配線部及び第2直線状配線部が、この順に上記突出方向に垂直に配設され、上記第1円弧状配線部が、その両端部が上記突出方向に揃い、かつ中心角が180°超であり、上記第1円弧状配線部の内径が、上記第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも大きい。
【0010】
本開示のフレキシブルプリント配線板は、余長吸収部を備える。この余長吸収部を構成する第1直線状配線部及び第2直線状配線部が、余長吸収部の突出方向に垂直に配設され、第1直線状配線部と第2直線状配線部とを連結する第1円弧状配線部の内径が、上記第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも大きい。つまり、第1円弧状配線部は、第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも内周が膨らんで設けられている。このように第1円弧状配線部を第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも膨らませて設けることで、応力が加わった際の接続部への応力集中を効果的に緩和することができる。このため、当該フレキシブルプリント配線板の余長吸収部は、小型化しても破断し難い。従って、当該フレキシブルプリント配線板は、外部素子との接続信頼性が高い。
【0011】
上記第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔に対する上記第1円弧状配線部の内径の比としては、1.1以上4.0以下が好ましい。上記第1円弧状配線部の内径の比を上記範囲内とすることで、余長吸収部が大きくなることを抑止しつつ、さらに効果的に接続部への応力集中を緩和できる。
【0012】
上記第1円弧状配線部の内径としては、0.5mm以上10mm以下が好ましい。上記第1円弧状配線部の内径を上記範囲内とすることで、接続部への応力集中の緩和効果を維持しつつ、余長吸収部をさらに小型化できる。
【0013】
上記連結部が、上記第2直線状配線部から連続してこの順に連結される少なくとも第2円弧状配線部及び第3直線状配線部をさらに有し、上記第1直線状配線部、第2直線状配線部及び第3直線状配線部が、この順に上記突出方向に垂直かつ等間隔に配設され、上記第2円弧状配線部の内径が、上記第2直線状配線部及び第3直線状配線部の平均間隔よりも大きいとよい。このように上記連結部が第2直線状配線部及び第3直線状配線部の平均間隔よりも膨らんで設けられる第2円弧状配線部をさらに有し、第1直線状配線部、第2直線状配線部及び第3直線状配線部を等間隔に配設することで、接続部への応力集中の緩和効果を維持しつつ、余長吸収部を特に幅方向に対して小型化できる。
【0014】
上記第2直線状配線部の長さとしては、3mm以上15mm以下が好ましい。上記第2直線状配線部の長さを上記範囲内とすることで、接続部への応力集中の緩和効果を維持しつつ、余長吸収部をさらに小型化できる。
【0015】
ここで、「円弧状配線」とは、円形状の配線からその一部を切り取って構成される配線を指し、円弧状配線の「中心角」とは、円弧状配線の内周を構成する円の中心と円弧状配線のそれぞれの端部中央を結ぶ2つの直線とがなす角のうち円弧状配線側の角度を意味する。また、「パターン接続部及び接続端子が余長吸収部の突出方向に対向する」とは、パターン接続部及び接続端子が余長吸収部の突出方向視で重なる部分が存在する状態を意味する。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るフレキシブルプリント配線板の各実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
[第一実施形態]
図1及び図2に示すように、当該フレキシブルプリント配線板1は、ベースフィルム2と、導電パターン3と、カバーレイ4と、余長吸収部5とを備える。
<ベースフィルム>
ベースフィルム2は、導電パターン3を支持する部材であって、当該フレキシブルプリント配線板1の強度を担保する構造材である。また、ベースフィルム2は、絶縁性及び可撓性を有する。
【0016】
このベースフィルム2の主成分としては、例えばポリイミド、液晶ポリエステルに代表される液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンエーテル、フッ素樹脂等の軟質材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラス基材等の硬質材、軟質材と硬質材とを複合したリジッドフレキシブル材などを用いることができる。これらの中でも耐熱性に優れるポリイミドが好ましい。なお、ベースフィルム2は、多孔化されたものでもよく、また、充填材、添加剤等を含んでもよい。ここで、「主成分」とは、最も含有量が多い成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
【0017】
上記ベースフィルム2の厚さは、特に限定されないが、ベースフィルム2の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、12μmがより好ましい。また、ベースフィルム2の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、200μmがより好ましい。ベースフィルム2の平均厚さが上記下限未満であると、ベースフィルム2の強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム2の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性が不十分となるおそれがある。
<導電パターン>
導電パターン3は、ベースフィルム2の一方の面側に積層され、電気配線構造、グラウンド、シールド等の構造を構成する。また、導電パターン3は、外部素子に接続できるように通常余長吸収部5の一方の面側にも積層される。
【0018】
導電パターン3を形成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば銅、アルミニウム、ニッケル等の金属が挙げられ、一般的には比較的安価で導電率が大きい銅が用いられる。また、導電パターン3は、表面にめっき処理が施されてもよい。
【0019】
導電パターン3の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン3の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、70μmがより好ましい。導電パターン3の平均厚さが上記下限未満であると、導電パターン3の導電性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン3の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1が不必要に厚くなるおそれがある。
【0020】
導電パターン3の平均幅は、電子部品、電気配線構造、グラウンド、シールドなどの各構造に応じて適宜決定される。導電パターン3の平均幅の下限としては、2μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、導電パターン3の平均幅の上限としては、1mmが好ましく、500μmがより好ましい。導電パターン3の平均幅が上記下限未満であると、導電パターン3の導電性が不十分となるおそれがある。逆に、導電パターン3の平均幅が上記上限を超えると、導電パターン3の実装密度が下がるため、電子部品等の高密度実装が困難となるおそれがある。
<カバーレイ>
カバーレイ4は、導電パターン3を外力や水分等から保護するものである。カバーレイ4は、カバーフィルム及び接着層を有する。カバーレイ4は、この接着層を介して導電パターン3のベースフィルム2と反対側の面にカバーフィルムが積層されたものである。
【0021】
カバーレイ4は、後述する余長吸収部5の一方の面に積層される導電パターン3の表面にも積層されることが好ましい。また、カバーレイ4は余長吸収部5の接続端子53の周辺部全域にも積層されていることが好ましい。つまり、余長吸収部5の接続端子53上のカバーレイ4は、接続端子53の全面を覆い、中央部に開口を有する形状が好ましい。
(カバーフィルム)
カバーフィルムの材質としては、特に制限されるものではないが、例えばベースフィルム2を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。
【0022】
カバーフィルムの平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、カバーフィルムの平均厚さの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。カバーフィルムの平均厚さが上記下限未満であると、絶縁性が不十分となるおそれがある。逆に、カバーフィルムの平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性が損なわれるおそれがある。
(接着層)
接着層は、カバーフィルムを導電パターン3及びベースフィルム2に固定するものである。接着層の材質としては、カバーフィルムを導電パターン3及びベースフィルム2に固定できる限り特に限定されるものではないが、柔軟性や耐熱性に優れたものが好ましく、例えばポリイミド、ポリアミド、エポキシ、ブチラール、アクリル等が挙げられる。また、耐熱性の点において、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0023】
カバーレイ4の接着層の平均厚さは、特に限定されるものではないが、接着層の平均厚さの下限としては、例えば5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、接着層の平均厚さの上限としては、例えば100μmが好ましく、80μmがより好ましい。接着層の平均厚さが上記下限未満であると、接着性が不十分となるおそれがある。逆に、接着層の平均厚さが上記上限を超えると、当該フレキシブルプリント配線板1の可撓性が損なわれるおそれがある。
<余長吸収部>
余長吸収部5は、ベースフィルム2から平面方向に突出して配設される。つまり、余長吸収部5は、ベースフィルム2の端面から突出し、ベースフィルム2の一方の面と余長吸収部5の一方の面とが平行となるように配設されている。余長吸収部5は、導電パターン3を外部素子に接続するためのものである。
【0024】
図1及び図2に示す当該フレキシブルプリント配線板1では、余長吸収部5は、ベースフィルム2の縁部から外側に突出するように一体成型されている。このように余長吸収部5を一体成型することで、ベースフィルム2と余長吸収部5との間で破断が生じることを抑止できる。
【0025】
余長吸収部5は、図3に示すようにベースフィルム2に積層される導電パターン3と接続されるパターン接続部51と、パターン接続部51に連結される連結部52と、連結部52のパターン接続部51が連結される端部とは反対側の端部に接続される接続端子53とを有する。また、連結部52は、パターン接続部51から連続してこの順に連結される第1直線状配線部52a、第1円弧状配線部52b、第2直線状配線部52c、第2円弧状配線部52d、及び第3直線状配線部52eを有する。第3直線状配線部52eは、接続端子53に連結され、パターン接続部51及び接続端子53が、余長吸収部5の突出方向に対向するように構成される。
【0026】
図1及び図2に示す当該フレキシブルプリント配線板1では、上述のように余長吸収部5はベースフィルム2と一体成型されており、ベースフィルム2と同一の主成分とできる。また、余長吸収部5の平均厚さは、ベースフィルム2と異なってもよいが、余長吸収部5の強度の観点からベースフィルム2と同じ厚さとすることが好ましい。
(パターン接続部)
パターン接続部51は、平面視で方形状であり、突出方向に沿った辺を短辺とする。パターン接続部51は、図3に示すように角が面取りされていてもよい。
【0027】
パターン接続部51の短辺の長さは、第1直線状配線部52aの平均幅より大きい。パターン接続部51の短辺の長さの下限としては、2mmが好ましく、2.5mmがより好ましい。一方、パターン接続部51の短辺の長さの上限としては、5mmが好ましく、4.5mmがより好ましい。パターン接続部51の短辺の長さが上記下限未満であると、第1直線状配線部52aの平均幅を十分に確保できず、余長吸収部5が連結部52で破断し易くなるおそれがある。逆に、パターン接続部51の短辺の長さが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0028】
パターン接続部51の長辺の長さは、第2直線状配線部52cの長さより小さい。パターン接続部51の長辺の長さの下限としては、3mmが好ましく、4mmがより好ましい。一方、パターン接続部51の長辺の長さの上限としては、6.5mmが好ましく、6mmがより好ましい。パターン接続部51の長辺の長さが上記下限未満であると、ベースフィルム2と余長吸収部5との間で破断し易くなるおそれがある。逆に、パターン接続部51の長辺の長さが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
(直線状配線部)
第1直線状配線部52a、第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eは、この順に上記突出方向に垂直かつ等間隔に配設される。
【0029】
第1直線状配線部52aは、その一端がパターン接続部51の一方の短辺に連結される。また、第1直線状配線部52aは、その長さ方向の一方の縁辺が、パターン接続部51の長辺と一直線をなすように配設されることが好ましい。このように第1直線状配線部52aを配設することで、パターン接続部51が突出方向に第1直線状配線部52aを超えて飛び出さないため、余長吸収部5を小型化し易い。
【0030】
第2直線状配線部52cは、その一端が、第1直線状配線部52aのパターン接続部51と連結される端部とは反対側の端部と上記突出方向に揃うように配設される。また、第2直線状配線部52cは、パターン接続部51の上記突出方向の中心軸Mに対して対称となるように配設されることが好ましい。このように第2直線状配線部52cを配設することで、接続部への応力の方向によらず応力集中を緩和し易くできる。
【0031】
第3直線状配線部52eは、その一端が、後述する第2円弧状配線部52dと連結する第2直線状配線部52cの端部と上記突出方向に揃うように配設される。また、第3直線状配線部52eの他端は、接続端子53に連結される。
【0032】
第2直線状配線部52cの長さ(図3のL)の下限としては、3mmが好ましく、5mmがより好ましく、7mmがさらに好ましい。一方、第2直線状配線部52cの長さLの上限としては、15mmが好ましく、10mmがより好ましい。第2直線状配線部52cの長さLが上記下限未満であると、接続部への応力集中の緩和効果が不足するおそれがある。逆に、第2直線状配線部52cの長さLが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0033】
第1直線状配線部52a及び第3直線状配線部52eの長さは、パターン接続部51、第1直線状配線部52a及び接続端子53の配設位置により適宜決定される。第2直線状配線部52cをパターン接続部51の上記突出方向の中心軸Mに対して対称となるように配設する場合、第1直線状配線部52aの長さと第3直線状配線部52eの長さとは等しいことが好ましい。第1直線状配線部52aの長さと第3直線状配線部52eの長さとを等しくすることで、上記中心軸Mに対する余長吸収部5の対称性が増すので、接続部への応力の方向によらず応力集中を緩和し易くできる。
【0034】
第1直線状配線部52a及び第3直線状配線部52eの長さの下限としては、1mmが好ましく、1.5mmがより好ましい。一方、第1直線状配線部52a及び第3直線状配線部52eの長さの上限としては、7mmが好ましく、5mmがより好ましい。第1直線状配線部52a及び第3直線状配線部52eの長さが上記下限未満であると、接続部への応力集中の緩和効果が不足するおそれがある。逆に、第1直線状配線部52a及び第3直線状配線部52eの長さが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0035】
第1直線状配線部52a、第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eの平均幅の下限としては、0.5mmが好ましく、1mmがより好ましい。一方、上記直線状配線部の平均幅の上限としては、2.5mmが好ましく、2mmがより好ましい。上記直線状配線部の平均幅が上記下限未満であると、余長吸収部5が直線状配線部で破断し易くなるおそれがある。逆に、上記直線状配線部の平均幅が上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0036】
第1直線状配線部52a、第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eの隣り合う直線状配線部間の平均間隔(図3のW)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.4mmがより好ましい。一方、上記隣り合う直線状配線部間の平均間隔Wの上限としては、2.0mmが好ましく、1.5mmがより好ましい。上記隣り合う直線状配線部間の平均間隔Wが上記下限未満であると、後述する円弧状配線部の内径が十分に確保できず接続部への応力集中の緩和効果が不足するおそれがある。逆に、上記隣り合う直線状配線部間の平均間隔Wが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
(円弧状配線部)
第1円弧状配線部52b及び第2円弧状配線部52dは、それぞれその両端部が上記突出方向に揃って配設される。第1円弧状配線部52bの中心は、第1直線状配線部52a及び第2直線状配線部52cの間隔を二等分する直線の延長線状に位置し、第2円弧状配線部52dの中心は、第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eの間隔を二等分する直線の延長線状に位置する。また、第1円弧状配線部52bの中心角(図3のθ)及び第2円弧状配線部52dの中心角は、180°超である。つまり、第1円弧状配線部52b及び第2円弧状配線部52dは、第1直線状配線部52a、第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eの平均間隔よりも膨らませて設けられている。
【0037】
円弧状配線部と直線状配線部との接続部分は、そのまま接続されてもよいが、図3に示すように滑らかとなるように面取りされていることが好ましい。このように上記接続部分を滑らかとすることで、余長吸収部5が上記接続部分で破断することを抑止できる。
【0038】
また、第1円弧状配線部52bと第2円弧状配線部52dとは、同一形状であることが好ましい。このように第1円弧状配線部52bと第2円弧状配線部52dとを同一形状とすることで、応力が加わった際の接続部への応力集中を効果的に緩和することができる。
【0039】
第1円弧状配線部52bの中心角θの下限としては、190°が好ましく、200°がより好ましい。一方、第1円弧状配線部52bの中心角θの上限としては、270°が好ましく、250°がより好ましい。第1円弧状配線部52bの中心角θが上記下限未満であると、接続部への応力集中の緩和効果が不足するおそれがある。逆に、第1円弧状配線部52bの中心角θが上記上限を超えると、第1円弧状配線部52bの直線状配線部の平均間隔Wに対する膨らみが大きくなるため、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0040】
第1円弧状配線部52bの内径(図3のD)の下限としては、0.5mmが好ましく、0.8mmがより好ましい。一方、第1円弧状配線部52bの内径Dの上限としては、10mmが好ましく、4mmが好ましく、3.5mmがより好ましい。第1円弧状配線部52bの内径Dが上記下限未満であると、接続部への応力集中の緩和効果が不足するおそれがある。逆に、第1円弧状配線部52bの内径Dが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0041】
第1円弧状配線部52bの内径Dは、第1直線状配線部52a及び第2直線状配線部52cの平均間隔Wよりも大きい。第1直線状配線部52a及び第2直線状配線部52cの平均間隔Wに対する第1円弧状配線部52bの内径Dの比(D/W)の下限としては、1.1が好ましく、1.2がより好ましい。一方、上記D/Wの上限としては、4.0が好ましく、3.5がより好ましい。上記D/Wが上記下限未満であると、接続部への応力集中の緩和効果が不足するおそれがある。逆に、上記D/Wが上記上限を超えると、第1円弧状配線部52bの直線状配線部の平均間隔Wに対する膨らみが大きくなるため、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0042】
第2円弧状配線部52dは、その内径が第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eの平均間隔よりも大きい。第2円弧状配線部52dの中心角、内径、及び第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eの平均間隔に対する第2円弧状配線部52dの内径の比は、それぞれ第1円弧状配線部52bの中心角、内径、及び第1直線状配線部52a及び第2直線状配線部52cの平均間隔に対する第1円弧状配線部52bの内径の比と同様とできる。
【0043】
また、第1円弧状配線部52b及び第2円弧状配線部52dの平均幅は、第1直線状配線部52a、第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eの平均幅と同様とできる。なお、第1円弧状配線部52b及び第2円弧状配線部52dの平均幅は、直線状配線部の平均幅と異なってもよいが、直線状配線部の平均幅と等しいことが好ましい。このように円弧状配線部の平均幅を直線状配線部の平均幅と等しくすることで、円弧状配線の内周のみならず外周においても直線状配線部よりも膨らむので、応力が加わった際の接続部への応力集中をさらに効果的に緩和することができる。
(接続端子)
接続端子53は、平面視で方形状であり、突出方向に沿った辺を短辺とする。接続端子53は、図3に示すように角が面取りされていてもよい。
【0044】
接続端子53は、上記突出方向の長辺が第3直線状配線部52eの長さ方向の一方の縁辺と連続するように配設されることが好ましい。このように接続端子53を配設することで接続端子53が突出方向に第3直線状配線部52eを超えて飛び出さないため、余長吸収部5を小型化し易い。
【0045】
接続端子53の短辺の長さは、第3直線状配線部52eの平均幅より大きい。接続端子53の短辺の長さの下限としては、2mmが好ましく、2.5mmがより好ましい。一方、接続端子53の短辺の長さの上限としては、5mmが好ましく、4.5mmがより好ましい。接続端子53の短辺の長さが上記下限未満であると、第1直線状配線部52aの平均幅を十分に確保できず、余長吸収部5が連結部52で破断し易くなるおそれがある。逆に、接続端子53の短辺の長さが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0046】
接続端子53の長辺の長さは、パターン接続部51の長辺の長さと同様とできる。接続端子53の長辺の長さは、パターン接続部51の長辺の長さと異なってもよいが、余長吸収部5の破断し難さ及び小型化の観点からパターン接続部51の長辺の長さと等しいことが好ましい。
【0047】
余長吸収部5がベースフィルム2の縁部から突出する突出距離(パターン接続部51のベースフィルム2側の端部から接続端子53のベースフィルム2とは反対側の端部までの上記突出方向の距離、図2のX)の下限としては、4mmが好ましく、5mmがより好ましい。一方、上記突出距離Xの上限としては、15mmが好ましく、10mmがより好ましい。上記突出距離Xが上記下限未満であると、直線状配線部の平均幅が不足し、余長吸収部5が直線状配線部で破断し易くなるおそれがある。逆に、上記突出距離Xが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
【0048】
余長吸収部5の幅(第1円弧状配線部52b及び第2円弧状配線部52dの外周の上記突出方向に垂直な方向の距離、図2のY)の下限としては、10mmが好ましく、12mmがより好ましい。一方、余長吸収部5の幅Yの上限としては、25mmが好ましく、20mmがより好ましい。余長吸収部5の幅Yが上記下限未満であると、直線状配線部の長さが短くなり、接続部への応力集中の緩和効果が不足するおそれがある。逆に、余長吸収部5の幅Yが上記上限を超えると、余長吸収部5の小型化の要求に反するおそれがある。
<フレキシブルプリント配線板の製造方法>
当該フレキシブルプリント配線板1は、例えば余長吸収部形成工程と、導電パターン形成工程と、カバーレイ積層工程とを備える製造方法により製造することができる。
(余長吸収部形成工程)
余長吸収部形成工程では、余長吸収部5を形成する。具体的には、例えばベースフィルム2の母材となる原板からベースフィルム2を得る際に、余長吸収部5を含む型を用いることで、ベースフィルム2と一体して成型する。
【0049】
余長吸収部5をベースフィルム2とともに得る方法としては、特に限定されないが、例えば金型を用いた打ち抜きや、プラズマによるドライエッチングによる型抜きなどの公知の手法を用いることができる。
(導電パターン形成工程)
導電パターン形成工程では、例えば以下の手順により導電パターン3を形成する。
【0050】
まず、ベースフィルム2の一方の面に導体層を形成する。
導体層は、例えば接着剤を用いて箔状の導体を接着することにより、あるいは公知の成膜手法により形成できる。導体としては、例えば、銅、銀、金、ニッケル等が挙げられる。接着剤としては、ベースフィルム2に導体を接着できるものであれば特に制限はなく、公知の種々のものを使用することができる。成膜手法としては、例えば蒸着、めっき等が挙げられる。導体層は、ポリイミド接着剤を用いて銅箔をベースフィルム2に接着して形成することが好ましい。
【0051】
次に、この導体層をパターニングして導電パターン3を形成する。
導体層のパターニングは、公知の方法、例えばフォトエッチングにより行うことができる。フォトエッチングは、導体層の一方の面に所定のパターンを有するレジスト膜を形成した後に、レジスト膜から露出する導体層をエッチング液で処理し、レジスト膜を除去することにより行われる。
【0052】
なお、必要に応じて導電パターン3は余長吸収部5の表面にも形成される。
(カバーレイ積層工程)
カバーレイ積層工程では、導電パターン3を覆うようにカバーレイ4を積層する。
【0053】
具体的には、導電パターン3を形成したベースフィルム2及び余長吸収部5の表面に接着剤層を積層し、接着剤層の上にカバーフィルムを積層する。または、予めカバーフィルムに接着剤層を積層しておき、そのカバーフィルムの接着剤層が積層されている側の面を導電パターン3に対面させて接着してもよい。
【0054】
接着剤を使用したカバーフィルムの接着は、通常、熱圧着により行うことができる。熱圧着する際の温度及び圧力は、使用する接着剤の種類や組成等に応じて適宜決定すればよい。
【0055】
なお、余長吸収部5の接続端子53や、電子部品を実装する部分等の導電パターン3の一部に開口が必要となる場合がある。この場合は、カバーレイ4の対応する箇所に予め開口等を設けておく。あるいは、カバーレイ4をベースフィルム2及び導電パターン3に積層してから開口を形成してもよい。
<利点>
当該フレキシブルプリント配線板1は、余長吸収部5を備える。この余長吸収部5を構成する第1直線状配線部52a及び第2直線状配線部52cが、余長吸収部5の突出方向に垂直に配設され、第1直線状配線部52aと第2直線状配線部52cとを連結する第1円弧状配線部52bの内径が、第1直線状配線部52a及び第2直線状配線部52cの平均間隔よりも大きい。このように第1円弧状配線部52bを第1直線状配線部52a及び第2直線状配線部52cの平均間隔よりも膨らませて設けることで、応力が加わった際の接続部への応力集中を効果的に緩和することができる。このため、当該フレキシブルプリント配線板1の余長吸収部5は、小型化しても破断し難い。従って、当該フレキシブルプリント配線板1は、外部素子との接続信頼性が高い。
【0056】
また、当該フレキシブルプリント配線板1は、連結部52が第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eの平均間隔よりも膨らんで設けられる第2円弧状配線部52dをさらに有し、第1直線状配線部52a、第2直線状配線部52c及び第3直線状配線部52eを等間隔に配設することで、接続部への応力集中の緩和効果を維持しつつ、余長吸収部5を特に幅方向に対して小型化できる。
[第二実施形態]
図4に示す本開示の図2とは異なる態様に係るフレキシブルプリント配線板6は、ベースフィルム2と、導電パターン3と、カバーレイ4と、余長吸収部7とを備える。
【0057】
図4のフレキシブルプリント配線板6におけるベースフィルム2、導電パターン3及びカバーレイ4の構成は、図2のフレキシブルプリント配線板1におけるベースフィルム2、導電パターン3及びカバーレイ4の構成とそれぞれ同様とすることができる。また、図4のフレキシブルプリント配線板6は、図2のフレキシブルプリント配線板1と同様の製造方法で製造できる。このため、図4のフレキシブルプリント配線板6について図1のフレキシブルプリント配線板1と重複する構成は同一符号を付して説明を省略し、以下、余長吸収部7について説明する。
<余長吸収部>
余長吸収部7は、ベースフィルム2から平面方向に突出して配設される。余長吸収部7は、導電パターン3を外部素子に接続するためのものである。また、余長吸収部7は、図2のフレキシブルプリント配線板1と同様にベースフィルム2と一体成型されている。
【0058】
余長吸収部7は、導電パターン3と接続されるパターン接続部71と、パターン接続部71に連結される連結部72と、連結部72のパターン接続部71が連結される端部とは反対側の端部に接続される接続端子73とを有する。また、連結部72は、パターン接続部71から連続してこの順に連結される第1直線状配線部72a、第1円弧状配線部72b及び第2直線状配線部72cを有する。第2直線状配線部72cは、接続端子73に連結され、パターン接続部71及び接続端子73が、余長吸収部の突出方向に対向するように構成される。
(パターン接続部)
図5のフレキシブルプリント配線板6のパターン接続部71は、図3のフレキシブルプリント配線板1のパターン接続部51と同様に構成できるので、説明を省略する。
(直線状配線部)
第1直線状配線部72a及び第2直線状配線部72cは、この順に上記突出方向に垂直に配設される。
【0059】
第1直線状配線部72aは、その一端がパターン接続部71の一方の短辺に連結される。また、第1直線状配線部72aは、その長さ方向の一方の縁辺が、パターン接続部71の長辺と一直線をなすように配設されることが好ましい。このように第1直線状配線部72aを配設することで、パターン接続部71が突出方向に第1直線状配線部72aを超えて飛び出さないため、余長吸収部を小型化し易い。
【0060】
第2直線状配線部72cは、その一端が、第1直線状配線部72aのパターン接続部71と連結される端部とは反対側の端部と上記突出方向に揃うように配設される。つまり、第1直線状配線部72aと第2直線状配線部72cとの長さは等しい。
【0061】
図5のフレキシブルプリント配線板6の第2直線状配線部72cの長さは、図3のフレキシブルプリント配線板1の第2直線状配線部52cの長さと同様とできる。また、図5のフレキシブルプリント配線板6の第1直線状配線部72a及び第2直線状配線部72cの平均間隔は、図3のフレキシブルプリント配線板1の第1直線状配線部52a及び第2直線状配線部52cの平均間隔と同様とできる。
(円弧状配線部)
第1円弧状配線部72bは、その両端部が上記突出方向に揃い、かつ中心角が180°超である。また、第1円弧状配線部72bの内径は、第1直線状配線部72a及び第2直線状配線部72cの平均間隔よりも大きい。
【0062】
図5のフレキシブルプリント配線板6の第1円弧状配線部72bの諸元は、図3のフレキシブルプリント配線板1の第1円弧状配線部52bの諸元と同様とできるので、他の説明を省略する。
(接続端子)
図5のフレキシブルプリント配線板6の接続端子73は、第3直線状配線部52eに代えて第2直線状配線部72cが連結されている点を除き、図3のフレキシブルプリント配線板1の接続端子53と同様に構成できるので、説明を省略する。
<利点>
当該フレキシブルプリント配線板6は、円弧状配線部が1つのみであるので、特に余長吸収部7の突出方向に対して小型化し易い。また、第1円弧状配線部72bの内径を比較的大きくできるので、接続部への応力集中の緩和効果を制御し易い。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0063】
上記実施形態では、余長吸収部がベースフィルムの縁部から外側に突出する場合を説明したが、例えば図8に示すフレキシブルプリント配線板8のようにベースフィルム2に凹部2aを設け、この凹部2aに余長吸収部5の一部が格納されるように余長吸収部5を配設してもよい。このように余長吸収部5を配設することで、当該フレキシブルプリント配線板8をさらに小型化することができる。
【0064】
上記実施形態では、余長吸収部の円弧状配線部が、この端部と接続する一対の直線状配線部よりも膨らむ場合について説明したが、例えば図7に示すフレキシブルプリント配線板9のように円弧状配線部の外周が半円状である余長吸収部10を備えるものも本開示の意図するところである。第1円弧状配線部の内径が、第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも大きい限り、接続部への応力集中の緩和効果を得ることができる。
【0065】
上記第1実施形態では、第2円弧状配線部の内径が第2直線状配線部及び第3直線状配線部の平均間隔よりも大きい場合を説明したが、第1円弧状配線部の内径が、第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも大きい限り、この構成は必須ではなく、例えば第2円弧状配線部の内径が第2直線状配線部及び第3直線状配線部の平均間隔と等しい場合も、本開示に含まれる。
【0066】
上記第1実施形態では連結部が1つの円弧状配線部を有する場合を説明し、上記第2実施形態では連結部が2つの円弧状配線部を有する場合を説明したが、連結部は3つ以上の円弧状配線部を有してもよい。連結部が3つ以上の円弧状配線部を有する場合においても、円弧状配線部の端部間はそれぞれ直線状配線部で連結される。
【0067】
上記実施形態では、ベースフィルムの片面のみに導電パターンが積層される場合について説明したが、導電パターンは、ベースフィルムの両面に積層されてもよい。
【0068】
上記実施形態では、カバーレイを備えるフレキシブルプリント配線板について説明したが、カバーレイは必須の構成要素ではなく、省略可能である。あるいは、例えば他の構成の絶縁層でベースフィルム又は導電パターンの一方の面を被覆してもよい。
【実施例
【0069】
以下、実施例によって本開示をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[No.1]
余長吸収部として、図2に示すS字形状の余長吸収部を有するフレキシブルプリント配線板を用意した。上記余長吸収部の幅Xは16mm、突出距離Yは17mmとした。また、パターン接続部及び接続端子の長辺4.5mm、短辺2.5mmとした。円弧状配線部の内径は2.0mmとし、直線状配線部の平均幅は1.5mm、平均間隔は1.0mmとした。また、第2直線状配線部の長さは、9.0mmとした。
[No.2]
余長吸収部として、No.1のS字形状の余長吸収部に代えて、図4に示すU字形状の余長吸収部7を有するフレキシブルプリント配線板を準備した。上記余長吸収部の幅Xは14mm、突出距離Yは14mmとした。また、パターン接続部及び接続端子の長辺6.0mm、短辺4.5mmとした。円弧状配線部の内径は3.1mmとし、直線状配線部の平均幅は1.45mm、平均間隔は1.00mmとした。また、第2直線状配線部の長さは、4.0mmとした。
[No.3]
余長吸収部として、No.1のS字形状の余長吸収部に代えて、図8に示す直線状の余長吸収部12を有するフレキシブルプリント配線板11を準備した。上記余長吸収部の幅Xは10mm、突出距離Yは6mmとした。
<評価>
No.1~No.3のフレキシブルプリント配線板の余長吸収部に対して、スライド屈曲試験装置を用いて、余長吸収部の幅方向(突出方向に対して垂直方向)に連続して一定の変位が加わるようにして、相対摺動試験を行った。なお、上記変位として、静止時の余長吸収部を基準として、±0.4mm及び±0.8mmの2通りの場合について、相対摺動試験を行った。
【0070】
相対摺動試験中は、パターン接続部と接続端子との抵抗値をモニターし、試験開始時の抵抗値を基準として4倍以上の抵抗値となった時点で破断したものとみなし、その摺動回数を記録した。ただし、変位±0.4mmにおいては1000万回、変位±0.8mmにおいても1000万回を超えても抵抗値の上昇が認められない場合は、その時点で試験を終了した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1で、抵抗変化は、矢印の前が試験前、矢印の後ろが試験後の抵抗値を示す。また、変位±0.4mm及び変位±0.8mmの「>1000万回」は、1000万回時点で抵抗上昇が認められないことを意味する。
【0073】
表1の結果から、連結部が、パターン接続部から連続してこの順に連結される第1直線状配線部、第1円弧状配線部及び第2直線状配線部を有し、第1円弧状配線部の内径が、第1直線状配線部及び第2直線状配線部の平均間隔よりも大きいNo.1及びNo.2のフレキシブルプリント配線板は、第1円弧状配線部を有さないNo.3のフレキシブルプリント配線板よりも、余長吸収部が破断し難く、外部素子との接続信頼性が高いことが分かる。
【0074】
以上のように、本開示のフレキシブルプリント配線板は、小型で破断し難い余長吸収部を備えるので、外部素子との接続信頼性が高い。
【0075】
(電池配線モジュール)
以下に、本開示の一態様に係る電池配線モジュール(「電池配線モジュール100」とする)を説明する。図9は、電池配線モジュール100の平面図である。図9に示されるように、電池配線モジュール100は、フレキシブルプリント配線板1と、絶縁プロテクタ110と、バスバー120と、中継部材130と、コネクタ140とを有している。
【0076】
絶縁プロテクタ110は、板状の部材である。絶縁プロテクタ110は、絶縁性の材料により形成されている。この絶縁性の材料は、例えば、絶縁性の合成樹脂である。絶縁プロテクタ110の上面には、フレキシブルプリント配線板1が載置されている。
【0077】
バスバー120は、導電性の材料により形成された板状の部材である。この導電性の材料は、例えば、金属材料である。この金属材料は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)等である。バスバー120は、蓄電素子(図示せず)に電気的に接続されている。この蓄電素子は、例えば、二次電池である。バスバー120により、任意の個数の蓄電素子が、直列又は並列に接続される。
【0078】
中継部材130は、導電性の材料により形成された板状の部材である。この導電性の材料は、例えば、金属材料である。この金属材料は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル、ニッケル合金等である。中継部材130は、フレキシブルプリント配線板1の余長吸収部5とバスバー120とを電気的に接続している。なお、電池配線モジュール100は、中継部材130を有していなくてもよい。この場合、バスバー120は、中継部材130を介さずにフレキシブルプリント配線板1の余長吸収部5に電気的に接続される。電池配線モジュール100は、コネクタ140により、外部装置等と電気的に接続される。
【0079】
このように、フレキシブルプリント配線板1は、蓄電素子を含む蓄電モジュールに取り付けられる電池配線モジュール100に適用可能である。なお、上記の例では、電池配線モジュール100がフレキシブルプリント配線板1を有するものとしたが、フレキシブルプリント配線板1に代えて、フレキシブルプリント配線板6又はフレキシブルプリント配線板8が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1,6,8,9,11 フレキシブルプリント配線板、2 ベースフィルム、2a 凹部、3 導電パターン、4 カバーレイ、5,7,10,12 余長吸収部、51,71 パターン接続部、52,72 連結部、52a,72a 第1直線状配線部、52b,72b 第1円弧状配線部、52c,72c 第2直線状配線部、52d 第2円弧状配線部、52e 第3直線状配線部、53,73 接続端子、100 電池配線モジュール、110 絶縁プロテクタ、120 バスバー、130 中継部材、140 コネクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9