(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両用灯具システム、異物判定装置および異物判定方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20240425BHJP
B60S 1/56 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
B60S1/56 120B
(21)【出願番号】P 2021552326
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2020037745
(87)【国際公開番号】W WO2021075299
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2019190783
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】角谷 大樹
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-146284(JP,A)
【文献】特開2014-043121(JP,A)
【文献】特開2016-168915(JP,A)
【文献】特開2019-064471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00-1/56
B60S 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方領域に光を出射して所定の配光パターンを形成可能な車両用灯具と、
前記前方領域を撮像する撮像装置と、
前記車両用灯具が、光出射面に異物が付着していない状態で前記前方領域に形成する配光パターンを、基準パターンとして記憶する記憶部、および前記撮像装置が撮像した配光パターンと前記基準パターンとを比較して前記光出射面への異物の付着を判定する判定部を有する異物判定装置と、
を備え
、
前記車両用灯具は、第1灯具および第2灯具を含み、
前記異物判定装置は、前記第1灯具および前記第2灯具の点消灯を独立に切り替える灯具制御部を有し、
前記判定部は、一方の灯具が点灯し他方の灯具が消灯している状態で前記撮像装置が撮像した配光パターンと、前記基準パターンとを比較して、点灯している灯具の前記光出射面への異物の付着を判定する、
車両用灯具システム。
【請求項2】
前記車両用灯具は、光源部と、前記光源部を収容する筐体と、を有し、
前記撮像装置は、前記筐体に収容される請求項
1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記第1灯具および前記第2灯具は、それぞれ光源部と、前記光源部を収容する筐体と、を有し、
前記撮像装置は、前記第1灯具の筐体に収容される第1撮像装置と、前記第2灯具の筐体に収容される第2撮像装置と、を含み、
前記判定部は、一方の灯具が点灯し他方の灯具が消灯している状態で消灯している灯具の筐体に収容される撮像装置が撮像した配光パターンと、前記基準パターンとを比較して、点灯している灯具の前記光出射面への異物の付着を判定する請求項
1に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記車両用灯具システムは、前記光出射面を洗浄する洗浄装置を備え、
前記異物判定装置は、前記判定部の判定結果に基づいて前記洗浄装置を制御する洗浄制御部を有する請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の車両用灯具システム。
【請求項5】
前記車両用灯具システムは、前記光出射面への異物の付着を車両の搭乗者に報知する報知装置を備え、
前記異物判定装置は、前記判定部の判定結果に基づいて前記報知装置を制御する報知制御部を有する請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の車両用灯具システム。
【請求項6】
第1灯具および第2灯具を含み、車両の前方領域に光を出射して所定の配光パターンを形成可能な車両用灯具が、光出射面に異物が付着していない状態で前記前方領域に形成する配光パターンを、基準パターンとして記憶する記憶部と、
前記前方領域を撮像する撮像装置が撮像した配光パターンと前記基準パターンとを比較して、前記光出射面への異物の付着を判定する判定部と、
前記第1灯具および前記第2灯具の点消灯を独立に切り替える灯具制御部と、を備え
、
前記判定部は、一方の灯具が点灯し他方の灯具が消灯している状態で前記撮像装置が撮像した配光パターンと、前記基準パターンとを比較して、点灯している灯具の前記光出射面への異物の付着を判定する異物判定装置。
【請求項7】
第1灯具および第2灯具を含み、車両の前方領域に光を出射して所定の配光パターンを形成可能な車両用灯具が、光出射面に異物が付着していない状態で前記前方領域に形成する配光パターンと、
前記第1灯具および前記第2灯具の点消灯を独立に切り替えて、一方の灯具が点灯し他方の灯具が消灯している状態で前記前方領域を撮像する撮像装置が撮像した配光パターンとを比較して、
点灯している灯具の前記光出射面への異物の付着を判定することを含む異物判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具システム、異物判定装置および異物判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間やトンネル内での安全な走行に車両用灯具が重要な役割を果たす。車両用灯具の光出射面に泥や雪などの異物が付着すると、自車前方への配光パターンの形成が阻害され、運転者の視認性が低下し得る。このような課題に対し、例えば特許文献1には、噴射ノズルから洗浄液を噴射して、車両用灯具の光出射面を洗浄する洗浄装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、車両用灯具の光出射面が汚れていることは、車両用灯具を点灯しても前方が暗いままであるといった状況に運転者や他の搭乗者が気づいたり、運転者らが車外から光出射面を目視で確認したりすることで検知されていた。このため、光出射面の汚れが気づかれずに放置されてしまうことがあった。この場合、車両運転の安全性が低下した状態が継続してしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、車両運転の安全性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、車両用灯具システムである。このシステムは、車両の前方領域に光を出射して所定の配光パターンを形成可能な車両用灯具と、前方領域を撮像する撮像装置と、車両用灯具が、光出射面に異物が付着していない状態で前方領域に形成する配光パターンを、基準パターンとして記憶する記憶部、および撮像装置が撮像した配光パターンと基準パターンとを比較して光出射面への異物の付着を判定する判定部を有する異物判定装置と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、異物判定装置である。この装置は、車両の前方領域に光を出射して所定の配光パターンを形成可能な車両用灯具が、光出射面に異物が付着していない状態で前方領域に形成する配光パターンを、基準パターンとして記憶する記憶部と、前方領域を撮像する撮像装置が撮像した配光パターンと基準パターンとを比較して、光出射面への異物の付着を判定する判定部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、異物判定方法である。この方法は、車両の前方領域に光を出射して所定の配光パターンを形成可能な車両用灯具が、光出射面に異物が付着していない状態で前方領域に形成する配光パターンと、前方領域を撮像する撮像装置が撮像した配光パターンとを比較して、光出射面への異物の付着を判定することを含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両運転の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
【
図2】
図2(A)は、基準パターンを示す模式図である。
図2(B)は、光出射面に異物が付着した状態で形成される配光パターンを示す模式図である。
【
図3】一実施例に係る異物判定制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
図2(A)は、基準パターンを示す模式図である。
図2(B)は、光出射面に異物が付着した状態で形成される配光パターンを示す模式図である。
図1では、車両用灯具システム1の構成要素の一部を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0014】
車両用灯具システム1は、車両用灯具2と、撮像装置4と、異物判定装置6と、洗浄装置8と、報知装置10とを備える。
【0015】
車両用灯具2は、車両100の前方領域に光を出射して所定の配光パターンPTNを形成可能な装置である。例えば車両用灯具2は、可視光ビームL1を車両100の前方領域に照射する。配光パターンPTNは、車両用灯具2が自車前方の仮想鉛直スクリーン900上に形成する照射パターン902の2次元の照度分布と把握される。
【0016】
車両用灯具2は、光源部12と、光源部12を収容する筐体14とを有する。光源部12の構造は特に限定されない。例えば光源部12は、LED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)、有機または無機EL(エレクトロルミネセンス)等の半導体発光素子や、白熱球、ハロゲンランプ、放電球等の光源と、光源を駆動して点灯させる点灯回路とを含み得る。また、光源部12は、リフレクタ;投影レンズ;DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイス等のマトリクス型のパターン形成デバイス;光源光で自車前方を走査するスキャン光学型のパターン形成デバイスなどを含み得る。
【0017】
筐体14の構造は特に限定されない。例えば筐体14は、車両前方側に開口部を有するランプボディと、ランプボディの開口部を覆うように取り付けられた透光カバーとを有する。ランプボディと透光カバーとで区画される灯室に、光源部12が収容される。透光カバーは、車両用灯具2の光出射面16を構成する。
【0018】
本実施の形態の車両用灯具2は、第1灯具2aおよび第2灯具2bを含む。第1灯具2aは車両100の左前端部に配置され、第2灯具2bは車両100の右前端部に配置される。なお、第1灯具2aおよび第2灯具2bの配置は特に限定されない。第1灯具2aおよび第2灯具2bは、それぞれ光源部12と、筐体14とを有する。
【0019】
撮像装置4は、車両用灯具2が出射する光の波長域に感度を有し、車両100の前方領域を撮像する。撮像装置4は、公知のカメラ等で構成され、車両前方の物体による可視光ビームL1の反射光L2を撮像する。撮像装置4は、車両用灯具2の筐体14に収容される。本実施の形態の撮像装置4は、第1撮像装置4aと、第2撮像装置4bとを含む。第1撮像装置4aは第1灯具2aの筐体14に収容され、第2撮像装置4bは第2灯具2bの筐体14に収容される。
【0020】
洗浄装置8は、公知のヘッドランプクリーナであり、光出射面16に向けて洗浄液を噴出することで光出射面16を洗浄することができる。報知装置10は、光出射面16への異物の付着を車両100の搭乗者に報知する。報知装置10は、例えば車両100のインストルメントパネルに設けられる警告灯(インジケータ)等で構成することができる。
【0021】
異物判定装置6は、撮像装置4から得られる画像IMGに基づいて、光出射面16への異物の付着判定を実行する。異物判定装置6は、デジタルプロセッサで構成することができ、例えばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified
IC)などで構成してもよい。異物判定装置6は、車両100側に設けられてもよいし、車両用灯具2に内蔵されてもよい。
【0022】
異物判定装置6は、記憶部18と、判定部20と、灯具制御部22と、洗浄制御部24と、報知制御部26とを有する。各部は、自身を構成する集積回路が、メモリに保持されたプログラムを実行することで動作する。
【0023】
記憶部18は、車両用灯具2が光出射面16に異物が付着していない状態で前方領域に形成する配光パターンPTNを基準パターンPTNrとして記憶する。
図2(A)には、基準パターンPTNrの一例としてハイビーム用配光パターンが図示されている。基準パターンPTNrは、例えば車両用灯具システム1の出荷前に予め撮像装置4によって撮像される。そして、基準パターンPTNrを含む画像IMGが記憶部18に保存される。
【0024】
好ましくは、第1灯具2aが点灯し第2灯具2bが消灯した状態で、第2撮像装置4bによって自車前方が撮像され、これによって得られる画像IMGが第1灯具2aの基準パターンPTNrを含む画像IMGとして記憶部18に保存される。また、第1灯具2aが消灯し第2灯具2bが点灯した状態で、第1撮像装置4aによって自車前方が撮像され、これによって得られる画像IMGが第2灯具2bの基準パターンPTNrを含む画像IMGとして記憶部18に保存される。
【0025】
判定部20は、撮像装置4が撮像した配光パターンPTN、つまり撮像装置4の画像IMGに含まれる配光パターンPTNと、基準パターンPTNrとを比較して、光出射面16への異物の付着を判定する。光出射面16に異物が付着した状態では、
図2(B)に示すように、異物に起因する遮光部28が配光パターンPTNに含まれる。判定部20は、公知の検出アルゴリズムに基づいて基準パターンPTNrと配光パターンPTNとを比較することで、光出射面16への異物の付着を判定することができる。
【0026】
灯具制御部22は、第1灯具2aおよび第2灯具2bの点消灯を互いに独立に切り替える。そして、本実施の形態の判定部20は、一方の灯具が点灯し他方の灯具が消灯している状態で撮像装置4が撮像した配光パターンPTNと、基準パターンPTNrとを比較して、点灯している灯具の光出射面16への異物の付着を判定する。
【0027】
上述のように、本実施の形態の撮像装置4は、第1灯具2aの筐体14に収容される第1撮像装置4aと、第2灯具2bの筐体14に収容される第2撮像装置4bとを有する。判定部20は、一方の灯具が点灯し他方の灯具が消灯している状態で消灯している灯具の筐体14に収容される撮像装置4が撮像した配光パターンPTNと、基準パターンPTNrとを比較して、点灯している灯具の光出射面16への異物の付着を判定する。
【0028】
図1には、第1灯具2aが点灯し第2灯具2bが消灯している状態で、第2撮像装置4bによって前方領域が撮像される様子が図示されている。この場合、第2撮像装置4bから得られる画像IMGに含まれる配光パターンPTNと、第1灯具2aの基準パターンPTNrとが比較され、第1灯具2aの光出射面16への異物の付着が判定される。
【0029】
洗浄制御部24は、判定部20の判定結果に基づいて洗浄装置8を制御する。例えば判定部20は、光出射面16に異物が付着していると判定した場合、異物の付着を示す信号を洗浄制御部24に送信する。洗浄制御部24は、当該信号を受信すると、洗浄装置8に駆動信号を送信する。洗浄装置8は、当該駆動信号を受信すると、光出射面16に洗浄液を噴射する。
【0030】
報知制御部26は、判定部20の判定結果に基づいて報知装置10を制御する。例えば判定部20は、光出射面16に異物が付着していると判定した場合、異物の付着を示す信号を報知制御部26に送信する。報知制御部26は、当該信号を受信すると、報知装置10に駆動信号を送信する。報知装置10は、当該駆動信号を受信すると、警告灯を点灯する。
【0031】
好ましくは、異物判定装置6は、配光パターンPTNが安定して形成される状況下で異物の付着判定を実行する。配光パターンPTNが安定して形成される状況は、例えば走行している車両100が停止したときや、エンジンの始動時等である。車両100が停止したときは、異物判定装置6が車両100のECU等から車速信号を受信することで検知することができる。エンジンの始動時は、異物判定装置6が車両100のECU等からエンジン回転信号を受信することで検知することができる。
【0032】
図3は、一実施例に係る異物判定制御のフローチャートである。このフローは、車両100のイグニッションスイッチがオンのときに異物判定装置6により所定のタイミングで繰り返し実行される。まず、異物判定装置6は、配光パターンPTNが安定して形成される状態か判断する(S101)。配光パターンPTNの安定形成状態にない場合(S101のN)、本ルーチンを終了する。配光パターンPTNの安定形成状態にある場合(S101のY)、異物判定装置6は、第1灯具2aを点灯し、第2灯具2bを消灯する(S102)。この状態で、異物判定装置6は、第2撮像装置4bにより車両100の前方領域を撮像する(S103)。続いて、異物判定装置6は、第1灯具2aを消灯し、第2灯具2bを点灯する(S104)。この状態で、異物判定装置6は、第1撮像装置4aで車両100の前方領域を撮像する(S105)。
【0033】
異物判定装置6は、第2撮像装置4bが撮像した配光パターンPTNと、記憶部18に保持している第1灯具2aの基準パターンPTNrとを比較して、第1灯具2aの光出射面16に異物が付着しているか判定する(S106)。また、異物判定装置6は、第1撮像装置4aが撮像した配光パターンPTNと、記憶部18に保持している第2灯具2bの基準パターンPTNrとを比較して、第2灯具2bの光出射面16に異物が付着しているか判定する(S106)。
【0034】
いずれかの灯具の光出射面16に異物が付着していた場合(S106のY)、異物判定装置6は、洗浄装置8を駆動して光出射面16を洗浄し、報知装置10を駆動して異物の付着を車両100の運転者に報知する(S107)。その後、本ルーチンを終了する。なお、一方の灯具の光出射面16に異物が付着し、他方の灯具の光出射面16に異物が付着していない場合、異物判定装置6は、異物が付着している光出射面16に対応する洗浄装置8のみを駆動してもよいし、両方の洗浄装置8を一律に駆動してもよい。異物が付着している光出射面16に対応する洗浄装置8のみを駆動する場合には、異物が付着していない光出射面16の無駄な洗浄を回避することができる。両方の洗浄装置8を一律に駆動する場合には、各洗浄装置8を独立に駆動させる場合に比べて車両用灯具システムの回路構造を簡略化することができる。いずれの灯具の光出射面16にも異物が付着していない場合(S106のN)、洗浄装置8や報知装置10を駆動させることなく、本ルーチンを終了する。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用灯具システム1は、車両100の前方領域に光を出射して所定の配光パターンPTNを形成可能な車両用灯具2と、前方領域を撮像する撮像装置4と、車両用灯具2が光出射面16に異物が付着していない状態で前方領域に形成する配光パターンPTNを基準パターンPTNrとして記憶する記憶部18、および撮像装置4が撮像した配光パターンPTNと基準パターンPTNrとを比較して光出射面16への異物の付着を判定する判定部20を有する異物判定装置6とを備える。
【0036】
本実施の形態の車両用灯具システム1では、異物判定装置6が光出射面16に異物が付着していることを自動で判定する。これにより、異物付着の監視を強いられることに対して運転者が感じる煩わしさを解消することができる。また、光出射面16に異物が付着した状態が長期間放置されることを回避することができる。よって、車両運転の安全性を高めることができる。また、異物判定装置6は、配光パターンPTNを異物付着の判定基準に用いている。このため、撮像装置4で光出射面16を直に撮像して異物の付着を検出する場合に比べて、撮像装置4の設置自由度を高めることができる。
【0037】
また、車両用灯具2は、第1灯具2aおよび第2灯具2bを含み、異物判定装置6は、第1灯具2aおよび第2灯具2bの点消灯を独立に切り替える灯具制御部22を有する。そして、判定部20は、一方の灯具が点灯し他方の灯具が消灯している状態で撮像装置4が撮像した配光パターンPTNと、基準パターンPTNrとを比較して、点灯している灯具の光出射面16への異物の付着を判定する。
【0038】
これにより、車両用灯具システム1が複数の灯具を備える場合に、いずれの灯具に異物が付着しているかを判定することができる。また、異物が付着している灯具のみを洗浄装置8で洗浄することも可能となる。なお、第1灯具2aおよび第2灯具2bの点消灯を一律に切り換えて、第1灯具2aと第2灯具2bとを区別せずに異物の付着を判定してもよい。
【0039】
また、車両用灯具2は、光源部12と、光源部12を収容する筐体14とを有し、撮像装置4は、筐体14に収容される。これにより、車両100に車両用灯具2を組み付ける前の段階で、撮像装置4によって基準パターンPTNrを撮像し、記憶部18に保存しておくことができる。このため、より簡単に本実施の形態に係る車両用灯具システム1を実現することができる。また、車両用灯具2の配光パターンPTNの投影角と撮像装置4の画角とを近づけることができる。このため、異物の付着の有無や、付着位置等をより正確に検出することができる。
【0040】
なお、撮像装置4は、筐体14の外部に配置されてもよい。これにより、車両用灯具2の小型化を図ることができる。また、例えば車室内のカメラを撮像装置4として利用することが可能となり、車両用灯具システム1の部品点数や搭載コストを削減することができる。
【0041】
また、第1灯具2aおよび第2灯具2bは、それぞれ光源部12と、筐体14とを有し、撮像装置4は、第1灯具2aの筐体14に収容される第1撮像装置4aと、第2灯具2bの筐体14に収容される第2撮像装置4bとを含む。そして、判定部20は、一方の灯具が点灯し他方の灯具が消灯している状態で消灯している灯具の筐体14に収容される撮像装置4が撮像した配光パターンPTNと、基準パターンPTNrとを比較して、点灯している灯具の光出射面16への異物の付着を判定する。
【0042】
筐体14に撮像装置4が収容される場合、同じ筐体14に収容された光源部12が点灯すると、光出射面16に反射した光が撮像装置4に照射されてしまう可能性がある。光出射面16に反射した光が撮像装置4に当たると、この光が画像IMGに写り込んでしまい、配光パターンPTNが正確に撮像された画像IMGを取得することが困難になる。この結果、異物付着の判定精度が低下し得る。
【0043】
これに対し、本実施の形態の車両用灯具システム1では、前方領域に投影される配光パターンPTNを、消灯している灯具に収容される撮像装置4で撮像する。このため、配光パターンPTNをより正確に撮像することが可能となり、異物付着の判定精度を高めることができる。また、画像IMGへの反射光の写り込みを気にせずに光源部12および撮像装置4を配置することができるため、車両用灯具システム1の設計自由度を高めることができる。
【0044】
なお、点灯する灯具と同じ筐体14に収容される撮像装置4で配光パターンPTNを取得してもよい。この場合、例えば第1灯具2aの筐体14のみに撮像装置4を収容し、この撮像装置4で第1灯具2aの配光パターンPTNと第2灯具2bの配光パターンPTNとをそれぞれ撮像する。これにより、撮像装置4の数を減らして、車両用灯具システム1の搭載コストを削減することができる。
【0045】
また、車両用灯具システム1は、車両用灯具2の光出射面16を洗浄する洗浄装置8を備え、異物判定装置6は、判定部20の判定結果に基づいて洗浄装置8を制御する洗浄制御部24を有する。これにより、光出射面16に付着した異物を除去することができる。また、車両用灯具システム1は、車両用灯具2の光出射面16への異物の付着を車両100の搭乗者に報知する報知装置10を備え、異物判定装置6は、判定部20の判定結果に基づいて報知装置10を制御する報知制御部26を有する。これにより、運転者に異物の付着を報知することができる。
【0046】
したがって、洗浄制御部24や報知制御部26を備えることで、光出射面16に付着した異物を早期に取り除くことが可能となる。よって、車両運転の安全性を高めることができる。なお、異物判定装置6は、洗浄制御部24および報知制御部26のいずれか一方のみを備えてもよい。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0048】
上述した実施の形態に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
【0049】
(項目1)
車両100の前方領域に光を出射して所定の配光パターンPTNを形成可能な車両用灯具2が、光出射面16に異物が付着していない状態で前方領域に形成する配光パターンPTNを、基準パターンPTNrとして記憶する記憶部18と、
前方領域を撮像する撮像装置4が撮像した配光パターンPTNと基準パターンPTNrとを比較して、光出射面16への異物の付着を判定する判定部20と、
を備える異物判定装置6。
【0050】
(項目2)
車両100の前方領域に光を出射して所定の配光パターンPTNを形成可能な車両用灯具2が、光出射面16に異物が付着していない状態で前方領域に形成する配光パターンPTNと、前方領域を撮像する撮像装置4が撮像した配光パターンPTNとを比較して、光出射面16への異物の付着を判定することを含む異物判定方法。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車両用灯具システム、異物判定装置および異物判定方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用灯具システム、 2 車両用灯具、 2a 第1灯具、 2b 第2灯具、
4 撮像装置、 4a 第1撮像装置、 4b 第2撮像装置、 6 異物判定装置、
8 洗浄装置、 10 報知装置、 12 光源部、 14 筐体、 16 光出射面、 18 記憶部、 20 判定部、 22 灯具制御部、 24 洗浄制御部、 26
報知制御部。