(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】鉛切断システム、合金材の再生方法、及び鉛切断方法
(51)【国際特許分類】
B23D 33/00 20060101AFI20240425BHJP
B23D 15/00 20060101ALI20240425BHJP
B23P 25/00 20060101ALI20240425BHJP
B23D 15/04 20060101ALN20240425BHJP
【FI】
B23D33/00 K
B23D15/00 Z
B23P25/00
B23D15/04
(21)【出願番号】P 2022010047
(22)【出願日】2022-01-26
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 智久
(72)【発明者】
【氏名】五十田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】砂川 武義
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136785(JP,A)
【文献】特開2019-136786(JP,A)
【文献】特開2009-093975(JP,A)
【文献】特開昭55-157419(JP,A)
【文献】特公昭48-039694(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 33/00
B23D 15/00
B23P 25/00
B23D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金材を供給しながら鉛を切断手段で切断する鉛の切断において用いられる鉛切断システムであって、
鉛を切断する切断手段、
前記
切断手段で前記鉛
を切断
するときに使用した合金材から酸化物を除去する除去手段、
前記酸化物が除去された合金材の酸化を抑制する酸化抑制手段、
前記
切断手段で前記鉛
を切断
するときに使用する合金材を供給する供給手段、を含み、
前記除去手段が、表面が凹凸構造を有する凹凸状物であり、
前記酸化抑制手段が、オイルポット内に充填された、前記合金材よりも比重が軽いオイルであり、
前記供給手段で供給される合金材が少なくともBi、及びSnを含む組成物からなる、
鉛切断システム。
【請求項2】
前記凹凸状物が、濾紙、和紙、及びフィルターの何れかである、
請求項1に記載の鉛切断システム。
【請求項3】
前記合金材が、少なくともBi、Sn、及びPbを含む組成物からなる低融点合金である、
請求項1又は2に記載の鉛切断システム。
【請求項4】
前記凹凸状物は、その一部分が、前記オイルと接触している、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の鉛切断システム。
【請求項5】
前記酸化抑制手段は、前記オイルポットに充填された前記オイルの温度を任意の温度に保持できる保温機構を有する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の鉛切断システム。
【請求項6】
前記鉛の切断に使用した合金材を回収する回収手段を含む、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の鉛切断システム。
【請求項7】
前記回収手段が、前記合金材よりも比重の軽いオイルが充填されたオイルポットである、
請求項6に記載の鉛切断システム。
【請求項8】
合金材を供給しながら鉛を切断手段で切断する鉛の切断において、切断手段で鉛を切断するときに使用された合金材を再生する合金材の再生方法であって、
切断手段で鉛
を切断
するときに使用する合金材は、少なくともBi、及びSnを含む組成物からなり、
切断手段で鉛
を切断
するときに使用した前記合金材を、溶融状態で、表面が凹凸構造を有する凹凸状物の表面に接触させ、前記切断に使用した前記合金材から酸化物を除去する除去工程と、
前記凹凸状物と接触させた後の前記合金材を、オイルポット内に充填された、前記合金材よりも比重が軽いオイル内に導入する導入工程、を含む、
合金材の再生方法。
【請求項9】
前記除去工程の前に、前記鉛の切断に使用した合金材を回収する回収工程を含む、
請求項8に記載の合金材の再生方法。
【請求項10】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の鉛切断システムを使用した、
鉛切断方法。
【請求項11】
合金材を供給しながら鉛を切断する鉛切断方法であって、
請求項8又は9に記載の合金材の再生方法で再生した合金材を使用する、
鉛切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛切断システム、合金材の再生方法、及び鉛切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛の切断方法として種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1、2には、鉛に超音波カッターの加熱した刃先をあてがい、BiとSnからなる合金材を刃先があてがわれた部分の鉛に供給し、刃先があてがわれた部分の鉛をBiとPbとSnからなる低融点合金として軟化させ、超音波カッターを合金材の供給と共に移動させて鉛を切断する鉛切断方法が提案されている。特許文献1に提案がされた方法では、金属ヒュームを発生させることなく、容易かつ確実に鉛を切断できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-136786号公報
【文献】特開2019-136785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低コストで鉛を切断できる鉛切断システム、及び鉛切断方法を提供すること、並びに、鉛の切断に使用した合金材の再生方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態の鉛切断システムは、合金材を供給しながら鉛を切断手段で切断する鉛の切断において用いられる鉛切断システムであって、鉛を切断する切断手段、前記切断手段で前記鉛を切断するときに使用した合金材から酸化物を除去する除去手段、前記酸化物が除去された合金材の酸化を抑制する酸化抑制手段、前記切断手段で前記鉛を切断するときに使用する合金材を供給する供給手段、を含み、前記除去手段が、表面が凹凸構造を有する凹凸状物であり、前記酸化抑制手段が、オイルポット内に充填された、前記合金材よりも比重が軽いオイルであり、前記供給手段で供給される合金材が少なくともBi、及びSnを含む組成物からなる。
【0006】
上記の鉛切断システムにおける凹凸状物は、濾紙、和紙、及びフィルターの何れかでもよい。
上記の鉛切断システムにおける合金材は、Bi、Sn、及びPbを含む組成物からなる低融点合金でもよい。
上記の鉛切断システムにおける凹凸状物は、その一部分が、前記オイルと接触してもよい。
上記の鉛切断システムにおける酸化抑制手段は、前記オイルポットに充填された前記オイルを任意の温度に保持できる保温機構を有してもよい。
上記の鉛切断システムは、前記鉛の切断に使用した合金材を回収する回収手段を含んでもよい。
上記の鉛切断システムにおける回収手段は、前記合金材よりも比重の軽いオイルが充填されたオイルポットでもよい。
【0007】
本発明の一実施形態の合金材の再生方法は、合金材を供給しながら鉛を切断手段で切断する鉛の切断において、切断手段で鉛を切断するときに使用された合金材を再生する合金材の再生方法であって、切断手段で鉛を切断するときに使用する合金材は、少なくともBi、及びSnを含む組成物からなり、切断手段で鉛を切断するときに使用した前記合金材を、溶融状態で、表面が凹凸構造を有する凹凸状物の表面に接触させ、前記切断に使用した前記合金材から酸化物を除去する除去工程と、前記凹凸状物と接触させた後の前記合金材を、オイルポット内に充填された、前記合金材よりも比重が軽いオイル内に導入する導入工程を含む。
上記の合金材の再生方法は、前記除去工程の前に、前記鉛の切断に使用した合金材を回収する回収工程を含んでもよい。
【0008】
本発明の一実施形態の鉛切断方法は、上記の鉛切断システムを使用する。
本発明の一実施形態の鉛切断方法は、合金材を供給しながら鉛を切断する鉛切断方法であって、上記の再生方法で再生した合金材を使用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鉛切断システム、合金材の再生方法、及び鉛切断方法によれば、低コストで鉛を切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】合金材を使用した鉛切断方法の一例を示す概略図である。
【
図2】一実施形態の鉛切断システムの概略図である。
【
図3】一実施形態の鉛切断システムの概略図である。
【
図4】一実施形態の鉛切断システムの概略図である。
【
図5】一実施形態の鉛切断システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の鉛切断システム、合金材の再生方法、及び鉛切断方法について説明する。本発明は以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0012】
はじめに、合金材を使用した一般的な鉛切断方法について一例を挙げて説明する。
図1は、合金材を使用した鉛切断方法の一例を示す概略図である。この例における鉛の切断には、鉛1、切断刃3、及びBi(ビスマス)、及びSn(スズ)を含む組成物からなる融点139℃の合金材5を使用している。
図1に示すように、鉛の切断は、鉛1に切断刃3をあてがい、切断刃3があてがわれた部分、換言すれば鉛1の切断部分に合金材5を供給する(
図1中の符号(S)参照)。この例において、鉛1は電熱ヒーター等により139℃以上に加熱され、合金材5はヒートガンで加熱されている。
【0013】
上記鉛の加熱、及び切断部分への溶融した合金材の供給により、鉛1の切断部分(
図1中の符号(S)参照)は、Bi、Sn、及びPb(鉛)を含む組成物からなる低融点合金となり溶融する。したがって、切断刃を所望する方向に動かすことにより、溶融された低融点合金(Pb、Bi、Snを含む)は切断刃3により掻き出され、新たなPbに低融点合金(Bi、Snを含む)が接触・溶融していき、結果、鉛を切断できる。この例における低融点合金(Pb、Bi、Snを含む)の最低融点は95℃である。
【0014】
ところで、鉛の切断に使用した合金材5は、鉛切断時の切断溝等を通じて溶融状態で外部に排出される。例えば、鉛の縁部から重力方向にこぼれ落ちる。上記の例において、排出される合金材としては、Bi、及びSnを含む組成物からなる合金材、及びこれら合金材と鉛のPbとが合金化したBi、Sn、及びPbを含む組成物からなる合金材等を例示できる。排出された合金材を再利用できれば、低コストで鉛の切断が可能となるものの、溶融した合金材は、空気との接触によって、表面が酸化され、溶融状態の合金材は酸化物を含むこととなる。このような酸化物を含む合金材は、酸化物を含まない合金材と比較して、その融点が高くなり、切断用の合金材には適さないといった問題が内在している。
【0015】
本発明の鉛切断システム、合金材の再生方法、及び鉛切断方法は、このような問題を解決できるものである。
【0016】
<<鉛切断システム>>
本発明の一実施形態の鉛切断システム(以下、一実施形態の鉛切断システムという)は、切断手段、除去手段、酸化抑制手段、及び供給手段を含む。一実施形態の鉛切断システムはこれ以外の構成を含んでもよい。以下、一実施形態の鉛切断システムの各構成について説明する。
図2~
図5は、一実施形態の鉛切断システムの一例を示す概略図である。なお、除去手段、酸化抑制手段、及び供給手段の位置関係に限定はない。以下、特に断りがある場合を除いて、鉛の切断に使用する合金材は、一実施形態の鉛切断システムで再生した合金材5Aを意味する。換言すれば、酸化物5Bの除去が行われ、酸化が抑制された状態の合金材5Aを意味する。一実施形態の鉛切断システムは、
図2(C)、
図3(C)、
図4(C)、
図5(B)に示すように、酸化物5Bが除去された合金材5Aを使用して鉛1の切断を行い、
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)、
図5(A)に示すように、鉛切断に使用した合金材5Cから酸化物5Bを除去し、且つ、酸化物5Bが除去された合金材5Aの再酸化を抑制した状態で、
図2(C)、
図3(C)、
図4(C)、
図5(B)に示すように、酸化物5Bが除去された合金材5A(再生した合金材5A)を利用して、鉛1の切断を行う合金材5の循環システムともいえる。なお、最初の鉛切断時には、再生前の合金材、例えば、固体の合金材を使用してもよい。固体の合金材を使用する場合、当該固体の合金材を溶融させたものを鉛切断に使用する。再生された合金材は、除去しきれずに残存する酸化物5Bを一部含んでいてもよい。
【0017】
<切断手段>
切断手段について限定はなく、鉛1の切断に使用できる従来公知のものを適宜選択して使用できる。切断手段3としては、セーバーソー、及び各種カッター等を例示できる。鉛の切断時に、鉛1をリボンヒーターや電磁誘導加熱(ボルトヒーター)により加熱してもよい。
【0018】
(鉛)
切断対象である鉛1に限定はない。一例としての鉛1は、原子力発電所等で使用する放射線の遮蔽材である。
【0019】
<供給手段>
供給手段4は、鉛1の切断に使用する合金材5Aを供給する。供給手段4に限定はなく、酸化抑制手段8に導入されている合金材5A(オイル内に導入されている合金材5A)を、所定の供給箇所に供給できればよい。一例としての合金材5Aの供給箇所は、鉛1の切断部分、又は切断手段3である。供給手段4が供給する合金材は、酸化物5Bが除去された合金材5Aである。一実施形態の供給手段4は、再生された合金材5Aを溶融状態で供給する。一実施形態の供給手段4は、酸化物5Bの除去がなされ、且つ、酸化抑制手段8で酸化が抑制された状態の合金材5Aを溶融状態で供給する。
【0020】
一例としての供給手段4は、酸化抑制手段8と連結された配管(図示しない)である。一例としての配管は、配管内を通過する合金材を溶融状態で保持できる保温機構を備える。保温機構は、配管内の温度を任意の温度で保持できる。一例としての供給手段4は、オイルポット8Bの取出し口4Aである。
【0021】
(合金材)
一実施形態の鉛切断システムで使用する合金材5Aは、少なくともBi、及びSnを含む組成物からなる。一実施形態の鉛切断システムで使用する合金材5Aの融点、及びBi、Snの配合量に限定はない。一例としての合金材5Aは、少なくともBi、及びSnを含む組成物からなる融点が150℃以下の合金材である。一例としての合金材5Aは、Biの配合量が55質量%以上60質量%以下で、Snの配合量が40質量%以上45質量%以下である。
【0022】
一実施形態の鉛切断システムで使用する合金材5Aは、Bi、Sn以外を含んでもよい。一例としての合金材5Aは、Bi、Snとともに、Pbを含む組成物からなる。一例としての合金材5Aは、鉛1を構成するPbと合金化した、少なくともBi、Sn、及び鉛1を構成するPbを含む組成物からなる低融点合金である。
一例としての合金材5Aは、少なくともBi、Sn、及びPbを含む組成物からなる融点が100℃以下の合金材である。
【0023】
<除去手段>
切断に使用された合金材5Aは、大気中において表面が酸化され、酸化物5Bを含む合金材5Cとなる。なお、切断に使用された合金材5Aの一部は、酸化されずに合金材5Aとしてそのまま存在し得る。一例としての酸化物5Bを含む合金材5Cは、合金材5Aと酸化物5Bとの混合物である。一例としての酸化物5Bを含む合金材5Cは、合金材の表面の一部分、又は表面の全体が酸化されたものである。
除去手段6は、鉛1の切断に使用した合金材5Cから酸化物5Bを除去する。本願明細書において鉛1の切断に使用した合金材5とは、供給手段により供給された合金材5A、及び供給された合金材とPbとが合金化した低融点合金を含む。酸化物としては、酸化ビスマス、酸化スズ、及び、酸化鉛等を例示できる。
【0024】
一実施形態の除去手段6は、表面が凹凸構造を有する凹凸状物である。凹凸状物の材料としては、紙材料、樹脂材料、及びガラス材料等を例示できる。紙材料は、凹凸状物の形状を所望の形状に容易に変形でき、また、安価、且つ燃焼できる点で好適である。一例としての凹凸状物は、濾紙、和紙、及びフィルターの何れかである。
【0025】
詳細なメカニズムは現在のところ必ずしも明らかではないが、酸化物の融点は、合金材の融点と比較して非常に高い。例えば、酸化スズの融点は1630℃であり、酸化ビスマスの融点は817℃である。したがって、鉛1の切断に使用した合金材を、溶融状態とした場合において、通常、酸化物5Bは固体の状態として存在する。この状態の酸化物5Bを含む合金材5Cを凹凸状物の表面に接触させた場合には、固体である酸化物5Bのみが凹凸状物の表面の凹凸にトラップされることとなる。このメカニズムにより、酸化物5Bを含む合金材5Cから酸化物5Bを除去できるものと推察できる。
【0026】
一実施形態の鉛切断システムは、鉛の切断に使用した合金材5Cを、溶融状態で凹凸状物の表面に接触できるように構成されている。一実施形態の鉛切断システムは、鉛1の切断部分の近く(例えば、直下)に、除去手段6が配置されており、鉛1の切断に使用した合金材5Cを、溶融状態で凹凸状物の表面に接触可能に構成されている。
【0027】
一実施形態の鉛切断システムは、鉛の切断に使用した合金材を、除去手段6まで搬送する搬送手段(図示しない)を含む。一例としての搬送手段は、合金材を溶融状態で保持できる保温機構を備える。保温機構は、搬送手段内の温度を任意の温度で保持できる。搬送手段としては、配管、及び樋等を例示できる。
【0028】
図2(A)に示すように、好ましい形態の鉛切断システムは、鉛の切断に使用した合金材5Cを回収する回収手段10を含む。この形態では、鉛の切断に使用した合金材5Cを無駄なく再利用できる。一例としての回収手段10は、鉛1の切断部分の下に配置され、鉛の切断部分、及びその近傍から重力方向に落ちる合金材を回収できる容器である。一例としての回収手段10は、回収した合金材を滴下するための穴を有する。一例としての、回収手段は、回収手段10としての容器と連結する配管15を有しており、配管15を通じて、回収した合金材を凹凸状物に接触可能になっている。一例としての回収手段は、開閉可能な弁を有する。一例としての回収手段は、漏斗形状である。この形態では、鉛の切断に使用した合金材を無駄なく凹凸状物の表面に接触できる。一例としての回収手段10は、回収した合金材を溶融状態で保持できる保温機構を備える。また、
図3(A)に示すように、回収手段10を、
図2(B)に示す形態としてもよい。つまり、除去手段6と酸化抑制手段8との組合せを回収手段10としてもよい。また、
図4(A)に示すように、酸化抑制手段8を回収手段10としてもよい。
図3、
図4に示す形態では、回収手段10として酸化抑制手段8を使用することで、鉛切断に使用した合金材5Cを除去手段6に接触させるまでの間における、合金材の表面酸化のさらなる進行を抑制できる。また、
図3に示す形態では、複数の除去手段6で、酸化物5Bの除去を複数回にわたって行うことができ、酸化物5Bの除去をより効率的に行うことができる。各図に示す回収手段10の構成を適宜組み合わせることもできる。上記搬送手段を、回収手段10としてもよい。
【0029】
一実施形態の鉛切断システムは、鉛1と、除去手段6が、面方向に離れて位置しており、回収手段10は、鉛1の下に位置している。このような位置形態では、鉛1の下に位置する回収手段10で、鉛1の切断に使用した合金材5Cを回収した後に、この回収手段10を、除去手段6の上部に段取り替えすればよい。
図2(A)、
図3(A)、
図4(A)は、回収手段10を段取り替えした状態を示す概略図である。
【0030】
なお、回収手段10を使用することなく、鉛1の切断に使用した合金材を、除去手段6である凹凸状物の表面に接触させることができれば、回収手段10を設けなくてもよい。
図5に示す形態では、鉛1(切断手段)の下に、除去手段6が位置しており、回収手段10を使用することなく、鉛1の切断に使用した合金材を除去手段6に接触できる。
図5に示す形態では、除去手段6は、酸化抑制手段8と接触しており、酸化物が除去された合金材は、酸化抑制手段8に導入される。酸化抑制手段8は、鉛1の上部に段取り替え可能となっている。
図5(A)は、酸化抑制手段8を段取り替えした状態を示す概略図である。
【0031】
凹凸状物の表面粗さに限定はなく、合金材5Cから酸化物5Bを除去できる凹凸を有していればよい。
【0032】
除去手段6は、漏斗(図示しない)等の保持手段で保持してもよい。凹凸状物が自立可能であれば、保持手段を必要としない。例えば、除去手段6である濾紙を漏斗で保持する形態では、酸化物5Bの除去が行われた合金材5Aを、漏斗の足を通して、オイルポット8B内に導入できる。後述するようにオイルポット8Bには、合金材よりも比重の軽いオイル8Aが充填されている。この形態では、凹凸状物の面は、漏斗の形状に沿った傾斜面となっている。この形態では、傾斜面を利用して、酸化物5Bが除去された合金材5Aを、重力方向に滑らせ、容易にオイルポット8Bに導入できる。一例としての凹凸状物は、傾斜面を有する。
【0033】
一実施形態の鉛切断システムは、複数の除去手段6を含む(
図3参照)。この形態によれば、複数の除去手段6を段階的に使用して、より効果的に酸化物5Bを除去できる。
【0034】
一実施形態の鉛切断システムによれば、除去手段6により鉛切断に使用した合金材5Cを再生できる。つまり、合金材5Cから酸化物5Bを除去できる。一実施形態の鉛切断システムは、再生した合金材5Aを使用して鉛1を切断でき、低コストでの鉛切断が可能となる。ところで、除去手段6で再生した合金材5Aは、大気との接触によって再び表面酸化が進むこととなる。
【0035】
<<酸化抑制手段>>
そこで、一実施形態の鉛切断システムは、酸化物5Bを除去した合金材5Aの酸化を抑制する酸化抑制手段8を含む。一実施形態の鉛切断システムは、酸化抑制手段8により、再生した合金材5Aの再酸化を抑制できる。一実施形態の鉛切断システムにおいて、酸化抑制手段8は、所定の位置に固定してもよく、任意の位置に移動可能にしてもよい。
【0036】
一実施形態の酸化抑制手段8は、オイルポット8Bに充填されたオイル8Aである。換言すれば、オイル8Aが充填されたオイルポット8Bである。酸化物5Bの除去がなされた合金材5Aは、一時的にオイル8A内に保持される。1回目の鉛1の切断時において固体状態の合金材を使用する場合、固体状態の合金材をオイル8A内に保持することもできる。
【0037】
オイル8Aは、合金材よりも比重が軽く、且つ、合金材の融点よりも発火点が高ければよい。一例としてのオイルの発火点は200℃以上である。オイル8Aは、合金材5Aの比重、及び融点を考慮して決定すればよい。オイル8Aとしては、シリコーンオイル、サラダ油、及びマシン油等を例示できる。これ以外のオイルを使用してもよい。
【0038】
一実施形態の鉛切断システムにおいて、酸化物5Bの除去がなされた合金材5Aはオイル8Aよりも比重が大きいため、オイル8Aが充填されたオイルポット8B内において合金材5Aは沈降していく。具体的には、
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)、
図5(A)に示すように、オイルポット内において、合金材は、オイルと分離される。
【0039】
オイルポット8Bは、オイル8Aを充填できればよい。オイルポット8Bとしては、槽、及び釜等を例示できる。一例としてのオイルポット8Bは、充填されたオイルを任意の温度に保持できる保温機構を有する。一例としてのオイルポット8Bは、充填されたオイル8Aを、合金材の融点よりも高い温度、例えば、200℃程度に保持できる保温機構を有する。一例としてのオイルポットは、高温水槽である。一例としての高温水槽は、電熱器を備え、温度計と連動したスイッチ、又はサーモスタットによりオイル8Aの液温を一定に保つように制御できる。
【0040】
一例としてのオイルポットは、オイル8A内に導入された合金材を取り出す取出し口4Aを有する。一例としての取出し口4Aは、開閉可能な穴である。一実施形態の鉛切断システムにおける供給手段4は、オイルポットの取出し口4Aであり、取出し口4Aから取り出された合金材5Aは、重力による滴下により、鉛1の切断部分、又は切断手段に供給される。一例としてのオイルポットは、鉛1の切断時において、オイルポット8Bの取出し口4Aが、鉛1の切断部分や、切断手段の直上、又は近傍に配置されるように、移動可能に構成されている。
【0041】
一実施形態の鉛切断システムは、オイルポット8Bの取出し口4Aと連結され、鉛の切断部分や、切断手段に合金材を供給できる搬送手段(図示しない)を含む。搬送手段としては、各種配管を例示できる。一実施形態の供給手段は、酸化抑制手段8と連結された配管である。一実施形態の供給手段は、オイルポット8Bの取出し口4Aを開閉できる開閉弁である。
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)、
図5(A)に示す形態では、供給手段4は、開閉可能な弁を有している。配管内にオイル8Aを充填してもよい。この形態では、配管内での合金材の酸化を抑制できる。一例としての搬送手段は、モーター等の駆動で、オイルポット内の合金材5Aを搬送できる。
【0042】
図2(B)、
図3(B)、
図4(B)、
図5(A)に示すように、一例としての凹凸状物6は、その一部分がオイル8Aと接触している。この形態では、酸化物5Bの除去がなされた合金材5Aを遅滞なく、オイルポット8Bに充填されたオイル8A内に導入でき、合金材5Aの再酸化を効果的に抑制できる。一例としての凹凸状物6は、酸化抑制手段8の近傍に位置している。一例としての凹凸状物6は、交換可能となっている。
【0043】
<<合金材の再生方法>>
本発明の一実施形態の合金材の再生方法(以下、一実施形態の再生方法という)は、鉛の切断に使用する合金材の再生方法であって、除去工程、導入工程を含む。一実施形態の再生方法は、一実施形態の鉛切断システムで説明した構成を適宜選択して使用できる。
【0044】
一実施形態の再生方法で再生する合金材は、鉛1の切断に使用した合金材である。合金材については、一実施形態の鉛切断システムで説明したものを適宜選択して使用できる。鉛、及び切断手段についても同様である。
【0045】
(回収工程)
好ましい形態の再生方法は、回収工程を含んでもよい。回収工程は、除去工程の前に鉛1の切断に使用した合金材を回収する工程である。一例としての回収工程は、各種容器を使用して、重力方向に滴下する合金材(5A、5C)を回収する。回収工程は、一実施形態の鉛切断システムで説明した回収手段10を適宜選択して使用できる。一例としての回収工程は、一実施形態の鉛切断システムで説明した酸化抑制手段8を使用して、合金材を回収する。一例としての酸化抑制手段8は、鉛1の切断部分の重力方向下方に配置されており、鉛1の切断に使用した合金材を遅滞なく回収できる。また、酸化抑制手段8を使用することで、合金材のさらなる表面酸化を抑制できる。
【0046】
(除去工程)
除去工程は、鉛1の切断に使用した合金材を、溶融状態で、表面が凹凸構造を有する凹凸状物6の表面に接触させ、合金材5Cから酸化物5Bを除去する工程である。一例としての溶融状態は、合金材5Aが溶融状態で、酸化物5Bが固体状態で存在している状態である。凹凸状物6については、一実施形態の鉛切断システムで説明したものを適宜選択して使用できる。なお、回収した合金材が、固体状態となっている場合には、除去工程の前に、固体状態の合金材を加熱して溶融状態とすればよい。
【0047】
一実施形態の再生方法では、除去工程で、合金材5Cから酸化物5Bを除去できる。
【0048】
(導入工程)
導入工程は、凹凸状物6と接触させた後の合金材を、オイルポット8Bに充填された、合金材よりも比重の軽いオイル8A内に導入する工程である。凹凸状物6と接触させた後の合金材は、酸化物5Bの除去がなされた合金材5Aであり、この合金材5Aを、オイルポット8Bに充填されたオイル8A内に導入することで、合金材5Aの表面酸化を抑制できる。
【0049】
オイルポット8B、及びオイルポット8Bに充填されたオイル8Aは、一実施形態の鉛切断システムで説明したものを適宜選択して使用できる。
【0050】
オイルポットに充填されたオイル8Aの温度は、酸化物5Bの除去がなされた合金材5Aの融点以上でもよく、融点未満でもよい。前者の場合には、オイル8A中で、合金材を溶融状態で保持できる。後者の場合には、合金材は凝固するが、再生した合金材を使用するタイミングで、オイル8Aの温度を、合金材の融点以上の温度とすればよい。
【0051】
<<鉛切断方法>>
本発明の一実施形態の鉛切断方法(以下、一実施形態の鉛切断方法)は、一実施形態の再生方法で再生した合金材を使用する。
一実施形態の鉛切断方法は、一実施形態の鉛切断システムを使用する。
【0052】
一実施形態の鉛切断方法は、低コストで鉛を切断できる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・鉛
3・・・切断手段、切断刃
4・・・供給手段
4A・・・取出し口
5・・・合金材
5A・・・酸化物が除去された合金材
5B・・・酸化物
5C・・・酸化物を含む合金材
6・・・除去手段、凹凸状物
8・・・酸化抑制手段
8A・・・オイル
8B・・・オイルポット
10・・・回収手段