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特許7478765導電性ポリエステル積層構造及び導電性包装材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】導電性ポリエステル積層構造及び導電性包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240425BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240425BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240425BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240425BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240425BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20240425BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/18 J
B32B7/025
C08L67/02
C08K3/04
H01B1/24 B
B65D1/02 100
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022029590
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023041587
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】110133938
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】廖▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹俊哲
(72)【発明者】
【氏名】劉岳欣
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-255737(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041170(WO,A1)
【文献】特表2016-524005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
C08J5/00-5/02
5/18
H01B1/24
B65D1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの面を有する主構造支持層と、
前記主構造支持層の2つの前記面にそれぞれ形成された2つの導電層と、を備える、導電性ポリエステル積層構造であって、
前記導電層のそれぞれは、導電性ポリエステル組成物で形成され、
前記導電層における前記導電性ポリエステル組成物は、
ポリエステル基材と、
前記ポリエステル基材に分散するカーボンナノチューブ(carbon nanotubes)を含む導電性補強材と、
前記カーボンナノチューブを前記ポリエステル基材に分散させるための、相溶化剤と、を含有し、
前記カーボンナノチューブのそれぞれにおいて、前記カーボンナノチューブの長さをLとし、前記カーボンナノチューブの直径をDとし、前記カーボンナノチューブの直径は1~30nmであると共に、前記カーボンナノチューブのL/Dは、300~2,000であり、
前記カーボンナノチューブがお互いに接触することで接触点を形成することによって、前記導電層の表面は、107Ω/sq以下の表面抵抗値を有し、
前記導電性ポリエステル組成物の総重量に基づいて、前記相溶化剤の含有量は、1.5~10wt%であり、
前記導電性補強材における前記カーボンナノチューブは、ヒドロキシル化カーボンナノチューブ及びカルボキシル化カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記相溶化剤は、メタクリル酸グリシジル(glycidyl methacrylate,GMA)でグラフト、改質若しくは共重合されたポリオレフィン相溶化剤又はシロキサン化合物であり、
前記相溶化剤の分子構造におけるメタクリル酸グリシジルは、混練において開環反応(ring cleavage)を起こし、且つ、前記メタクリル酸グリシジルにおけるエポキシ基は、前記開環反応の後に前記カーボンナノチューブの表面にある反応性官能基及び/又は前記ポリエステル基材の分子構造におけるエステル基(ester group)と化学反応を行い、それによって、前記カーボンナノチューブを前記ポリエステル基材に分散させ、
前記カーボンナノチューブの表面にある反応性官能基は、水酸基(-OH)及びカルボキシル基(-COOH)の少なくとも1つである、ことを特徴とする導電性ポリエステル積層構造。
【請求項2】
前記主構造支持層は、高分子樹脂材料で形成されると共に、
前記主構造支持層を設置することで、前記導電性ポリエステル積層構造に4.2KJ/m2以上である耐衝撃強さを付与する、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項3】
前記高分子樹脂材料は、ポリエステル樹脂材料であり、
前記ポリエステル樹脂材料は、イソフタル酸(IPA)で変性された共重合ポリエステルであると共に低結晶化度を有し、
前記ポリエステル樹脂材料の総重量に基づいて、前記イソフタル酸の含有量は、1~10wt%である、請求項2に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項4】
前記主構造支持層及び2つの前記導電層は、共押出(co-extrusion)により、サンドイッチ構造を有する導電性ポリエステルシート材料として形成される、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項5】
前記主構造支持層の厚みは、前記導電層のそれぞれの厚みより厚いと共に、前記主構造支持層の厚みは、80~1,400μmであり、前記導電層のそれぞれの厚みは、10~200μmである、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブのそれぞれの長さは、10~20μmであり、前記カーボンナノチューブの前記直径は、5~20nmであると共に、前記L/Dは、1,000~2,000である、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項7】
前記導電性ポリエステル組成物の総重量に基づいて、前記ポリエステル基材の含有量は、70~95wt%であると共に、前記導電性補強材の含有量は、1.5~10wt%である、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項8】
前記導電性補強材における前記カーボンナノチューブは、多層の炭素原子構造を有する多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes,MWCNT)である、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項9】
前記導電性補強材における前記カーボンナノチューブは、ヒドロキシル化多層カーボンナノチューブ(hydroxylate multi walled carbon nanotubes)及びカルボキシル化多層カーボンナノチューブ(carboxylic multi walled carbon nanotubes)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項10】
前記相溶化剤は、エチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体(E-MA-GMA)、メタクリル酸グリシジルをグラフトしたポリオレフィンエラストマー相溶化剤(POE-g-GMA)及びメタクリル酸グリシジルをグラフトしたポリエチレン(PE-g-GMA)及びシロキサン化合物(siloxane)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項11】
前記導電性ポリエステル組成物は、抗酸化剤と黒マスターバッチとを含み、
前記導電性ポリエステル組成物の総重量に基づいて、前記抗酸化剤の含有量は、0.1~1wt%であり、前記黒マスターバッチの含有量は、1~5wt%である、請求項1に記載の導電性ポリエステル積層構造。
【請求項12】
2つの面を有する主構造支持層と、
前記主構造支持層の片面に形成された1つの導電層と、を備える、導電性ポリエステル積層構造であって、
前記導電層は、導電性ポリエステル組成物で形成され、
前記導電性ポリエステル組成物は、
ポリエステル基材と、
前記ポリエステル基材に分散するカーボンナノチューブ(carbon nanotubes)を含む導電性補強材と、
前記カーボンナノチューブを前記ポリエステル基材に分散させるための、相溶化剤とを含有し、
前記カーボンナノチューブのそれぞれにおいて、前記カーボンナノチューブの長さをLとし、前記カーボンナノチューブの直径をDとし、前記カーボンナノチューブの直径は1~30nmであると共に、前記カーボンナノチューブのL/Dは、300~2,000であり、前記カーボンナノチューブがお互いに接触することで接触点を形成することによって、前記導電層の表面は、107Ω/sq以下の表面抵抗値を有し、
前記導電性ポリエステル組成物の総重量に基づいて、前記相溶化剤の含有量は、1.5~10wt%であり、
前記導電性補強材における前記カーボンナノチューブは、ヒドロキシル化カーボンナノチューブ及びカルボキシル化カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記相溶化剤は、メタクリル酸グリシジル(glycidyl methacrylate,GMA)でグラフト、改質若しくは共重合されたポリオレフィン相溶化剤又はシロキサン化合物であり、
前記相溶化剤の分子構造におけるメタクリル酸グリシジルは、混練において開環反応(ring cleavage)を起こし、且つ、前記メタクリル酸グリシジルにおけるエポキシ基は、前記開環反応の後に前記カーボンナノチューブの表面にある反応性官能基及び/又は前記ポリエステル基材の分子構造におけるエステル基(ester group)と化学反応を行い、それによって、前記カーボンナノチューブを前記ポリエステル基材に分散させ、
前記カーボンナノチューブの表面にある反応性官能基は、水酸基(-OH)及びカルボキシル基(-COOH)の少なくとも1つである、ことを特徴とする導電性ポリエステル積層構造。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の導電性ポリエステル積層構造を用いて真空成形プロセスで形成される、ことを特徴とする導電性包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル積層構造に関し、特に、導電性ポリエステル積層構造及び導電性包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、真空成形が要求される導電シートは主に、ポリスチレン(PS)を用いる。導電性ポリスチレンは、高い比率(例えば、10wt%を超える)でカーボンブラックを添加することで、ポリスチレンの導電特性を向上させる。しかしながら、充填材が高い比率で添加されると、真空成形の延伸する際に、充填材の脱落を起こしやすく、製品に損傷を与える。また、ポリスチレンの耐衝撃強さが不足であるため、脆化を起こしやすくなる。
【0003】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、導電性ポリエステル積層構造及び導電性包装材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、2つの面を有する主構造支持層と、前記主構造支持層の2つの前記面にそれぞれ形成された2つの導電層と、を備える、導電性ポリエステル積層構造を提供する。前記導電層のそれぞれは、導電性ポリエステル組成物で形成される。前記導電層における前記導電性ポリエステル組成物は、ポリエステル基材及び導電性補強材を含む。導電性補強材は、前記ポリエステル基材に分散するカーボンナノチューブ(carbon nanotubes)を含む。カーボンナノチューブのそれぞれにおいて、前記カーボンナノチューブの長さをLとし、前記カーボンナノチューブの直径をDとし、前記カーボンナノチューブの直径は1~30nmであると共に、前記カーボンナノチューブのL/Dは、300~2,000である。なかでも、カーボンナノチューブがお互いに接触することで接触点を形成することによって、前記導電層の表面は、107Ω/sq以下の表面抵抗値を有する。
【0006】
好ましくは、前記主構造支持層は、高分子樹脂材料で形成されると共に、前記主構造支持層を設置することで、前記導電性ポリエステル積層構造に4.2KJ/m2以上である耐衝撃強さを付与する。
【0007】
好ましくは、前記高分子樹脂材料は、ポリエステル樹脂材料であり、前記ポリエステル樹脂材料は、イソフタル酸(IPA)で変性された共重合ポリエステルであると共に、低結晶化度を有し、なかでも、前記ポリエステル樹脂材料の総重量に基づいて、前記イソフタル酸の含有量は、1~10wt%である。
【0008】
好ましくは、前記主構造支持層及び2つの前記導電層は、共押出(co-extrusion)により、サンドイッチ構造を有する導電性ポリエステルシート材料として形成される。
【0009】
好ましくは、前記主構造支持層の厚みは、前記導電層のそれぞれの厚みより厚いと共に、前記主構造支持層の厚みは、80~1,400μmであり、前記導電層のそれぞれの厚みは、10~200μmである。
【0010】
好ましくは、前記カーボンナノチューブの長さは、10~20μmであり、前記カーボンナノチューブの前記直径は、5~20nmであると共に、前記L/Dは、1,000~2,000である。
【0011】
好ましくは、前記導電性ポリエステル組成物の総重量に基づいて、前記ポリエステル基材の含有量は、70~95wt%であると共に、前記導電性補強材の含有量は、1.5~10wt%である。
【0012】
好ましくは、前記導電性補強材における前記カーボンナノチューブは、多層の炭素原子構造を有する多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes,MWCNT)である。
【0013】
好ましくは、前記導電性ポリエステル組成物は、前記カーボンナノチューブを前記ポリエステル基材に分散させるための、相溶化剤を更に含み、なかでも、前記導電性ポリエステル組成物の総重量に基づいて、前記相溶化剤の含有量は、1.5~10wt%である。
【0014】
好ましくは、前記導電性補強材における前記カーボンナノチューブは、ヒドロキシル化カーボンナノチューブ及びカルボキシル化カーボンナノチューブからなる群の少なくとも1つから選択され、なかでも、前記相溶化剤は、メタクリル酸グリシジル(glycidyl methacrylate,GMA)でグラフト、改質若しくは共重合されたポリオレフィン相溶化剤又はシロキサン化合物(siloxane)である。
【0015】
好ましくは、前記相溶化剤の分子構造におけるメタクリル酸グリシジルは、混練において開環反応(ring cleavage)を起こし、且つ、前記メタクリル酸グリシジルにおけるエポキシ基は、前記開環反応の後に前記カーボンナノチューブの表面にある反応性官能基及び/又は前記ポリエステル基材の分子構造におけるエステル基(ester group)と化学反応を行い、それによって、前記カーボンナノチューブを前記ポリエステル基材に分散させ、なかでも、前記カーボンナノチューブの表面にある反応性官能基は、水酸基(-OH)及びカルボキシル基(-COOH)の少なくとも1つである。
【0016】
好ましくは、前記導電性補強材における前記カーボンナノチューブは、ヒドロキシル化多層カーボンナノチューブ(hydroxylate multi walled carbon nanotubes)及びカルボキシル化多層カーボンナノチューブ(carboxylic multi walled carbon nanotubes)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0017】
好ましくは、前記相溶化剤は、エチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体(E-MA-GMA)、メタクリル酸グリシジルをグラフトしたポリオレフィンエラストマー相溶化剤(POE-g-GMA)及びメタクリル酸グリシジルをグラフトしたポリエチレン(PE-g-GMA)及びシロキサン化合物(siloxane)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0018】
好ましくは、前記導電性ポリエステル組成物は、抗酸化剤と黒マスターバッチとを含み、なかでも、前記導電性ポリエステル組成物の総重量に基づいて、前記抗酸化剤の含有量は、0.1~1wt%であり、前記黒マスターバッチの含有量は、1~5wt%である。
【0019】
好ましくは、前記導電層における前記導電性ポリエステル組成物は、二軸スクリュープロセスで混練変性を行う。
【0020】
好ましくは、前記導電性ポリエステル積層構造は真空成形プロセスで延伸され、なかでも、前記導電性ポリエステル積層構造が延伸される前に、前記導電層のそれぞれの表面に103~104Ω/sqの表面抵抗値を有し、なかでも、前記導電性ポリエステル積層構造が延伸方向に沿って200%~400%延伸された後に、前記導電層のそれぞれの表面に104~107Ω/sqの表面抵抗値を有する。
【0021】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、2つの面を有する主構造支持層と、前記主構造支持層の一方の前記面に形成された1つの導電層と、を備える、導電性ポリエステル積層構造を提供する。前記導電層は、導電性ポリエステル組成物で形成される。前記導電性ポリエステル組成物は、ポリエステル基材及び導電性補強材を含む。前記導電性補強材は、前記ポリエステル基材に分散するカーボンナノチューブ(carbon nanotubes)を含む。なかでも、前記カーボンナノチューブのそれぞれにおいて、前記カーボンナノチューブの長さをLとし、前記カーボンナノチューブの直径をDとし、前記カーボンナノチューブの直径は1~30nmであると共に、前記カーボンナノチューブのL/Dは、300~2,000である。カーボンナノチューブがお互いに接触することで接触点を形成することによって、前記導電層の表面は、107Ω/sq以下の表面抵抗値を有する。
【0022】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、導電性包装材料を提供することである。前記導電性包装材料は、上記の導電性ポリエステル積層構造を用いて真空成形プロセスで形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有利な効果として、本発明に係る導電性ポリエステル積層構造及び導電性包装材料は、「前記導電性補強材は、前記ポリエステル基材に分散する前記カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)を含み、なかでも、前記カーボンナノチューブのそれぞれにおいて、前記カーボンナノチューブの長さをLとし、前記カーボンナノチューブの直径をDとし、前記カーボンナノチューブの直径は1~30nmであると共に、前記カーボンナノチューブのL/Dは、300~2,000である。なかでも、前記カーボンナノチューブがお互いに接触することで接触点を形成することによって、前記導電層の表面は、107Ω/sq以下の表面抵抗値を有する」といった技術特徴により、前記導電性ポリエステル組成物に少量の導電性補強材を添加する場合にも、高い導電特性を有すると共に、前記導電性ポリエステル積層構造が延伸された後でも高い導電特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一実施形態に係る導電性ポリエステル積層構造を示す模式図である。
図2図1に示す導電性ポリエステル積層構造が延伸された後を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る導電性ポリエステル組成物におけるカーボンナノチューブを示す模式図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る導電性ポリエステル積層構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0026】
以下、所定の具体的な実施態様を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0027】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0028】
[第一実施形態]
図1~3に示すように、本発明に係る第一実施形態において、導電性ポリエステル積層構造Eを提供する。前記導電性ポリエステル積層構造Eは真空成形プロセス(vacuum forming process)で延伸されてもよいと共に、前記導電性ポリエステル積層構造Eが延伸された後でも高い導電特性を有する。前記導電性ポリエステル積層構造Eは、共射出(co-extrusion)で形成されたサンドイッチ構造(A-B-A)である。サンドイッチ構造の2つの表層Aは、高導電特性を有する導電層であると共に、サンドイッチ構造の中間層Bは、低結晶化度且つ支持するためのポリエステル主構造支持層である。
【0029】
本発明の1つの目的として、前記導電性ポリエステル積層構造Eが高倍率で延伸された後でも高い導電特性を有する。このように、前記導電性ポリエステル積層構造Eは、真空成形プロセスを用いる電子包装材料又は導電性が要求された包装材料に応用してもよく、例えば、電気キャリア搬送用トレー(carrier tray)又は電気キャリアテープ(carrier tape)が挙げられる。
【0030】
より具体的に説明すると、図1に示すように、前記導電性ポリエステル積層構造Eは、主構造支持層B及び2つの導電層Aとを備える。前記主構造支持層Bは、互いに反対側の2つの表面を有する。また、2つの前記導電層Aは、主構造支持層Bの2つの表面にそれぞれ形成される。
【0031】
前記主構造支持層Bは、比較的に高い耐衝撃強さ(impact strength)を有するため、前記導電性ポリエステル積層構造Eに良好な支持性を与える。前記主構造支持層Bは、高分子繊維で形成されると共に、前記主構造支持層Bを備えることにより、導電性ポリエステル積層構造Eの耐衝撃強さは、4.2KJ/m2以上であり、4.5KJ/m2以上であることが好ましく、4.8KJ/m2以上であることが特に好ましい。
【0032】
前記高分子樹脂材料は例えば、PET、PE、PP、ABS、PA、PC、POM、PBTなどの高い耐衝撃強さ且つ射出成形又は押出成形に適用する樹脂材料であってもよい。本実施形態において、前記高分子樹脂材料は、好ましくはポリエステル樹脂材料(polyester resin material)である。なかでも、前記ポリエステル樹脂材料は、イソフタル酸(IPA)で変性された共重合ポリエステルであると共に、低結晶化度を有する。例えば、前記ポリエステル樹脂材料の結晶化度は、20%以下であり、好ましくは15%以下であり、特に好ましくは12%以下であるが、本発明はこれに制限されるものではない。含有量について、前記ポリエステル樹脂材料の総重量に基づいて、前記イソフタル酸の含有量は、1~10wt%である。
【0033】
更に図1に示すように、2つの前記導電層Aはいずれも、高い導電性を有するため、前記導電性ポリエステル積層構造Eの表層に高い導電性を与え、それによって、前記導電性ポリエステル積層構造Eは、電子部品包装材料として好適である。
【0034】
更に説明すると、前記導電層Aのそれぞれは、導電性ポリエステル組成物100で形成される。前記導電層Aのそれぞれにおいて、前記導電性ポリエステル組成物100は、ポリエステル基材1及び導電性補強材2を含む。
【0035】
本実施形態に係る導電性ポリエステル組成物100は、導電性補強材2の材料及び含有量の制御によって、高い導電特性を有する。なお、本実施形態に係る導電性ポリエステル組成物100は、高倍率で延伸された後でも高い導電特性を有する。
【0036】
本実施形態において、前記ポリエステル基材1は、導電性ポリエステル組成物100の基材である。前記ポリエステル基材1は、二塩基酸と二価アルコール又はその誘導体との縮合重合反応により得た高分子ポリマーである。即ち、前記ポリエステル基材1は、ポリエステル材料である。前記ポリエステル材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0037】
含有量について、前記導電性ポリエステル組成物100の総重量に基づいて、前記ポリエステル材料1の含有量は、70~95wt%であることが好ましく、75~95wt%であることは特に好ましい。
【0038】
前記ポリエステル材料を形成するための二塩基酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、1,4-ナフタル酸、ジ安息香酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸及びドデカンジオン酸の中の少なくとも1つである。
【0039】
尚、前記ポリエステル材料を形成するための二価アルコールは、エチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,10-デカンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンの中の少なくとも1つである。
【0040】
更に図1に示すように、前記導電性ポリエステル組成物100に高い導電特性を与えるため、前記導電性補強材2は、複数条のカーボンナノチューブ21(carbon nanotubes)を含むと共に、前記カーボンナノチューブ21は、均一的にポリエステル基材1に分散する。
【0041】
図3に示すように、前記カーボンナノチューブ21のそれぞれにおいて、前記カーボンナノチューブ21の長さをLとすると共に、5~30マイクロメーター(micrometer,μm)であり、且つ、前記カーボンナノチューブ21の直径をDとをすると共に、1~30ナノメートル(nanometer,nm)である。なお、前記カーボンナノチューブ21のカーボンナノチューブのL/D(若しくは、ロータ長さ比とも称す)は、300~2,000である。
【0042】
特筆すべきことは、本実施形態において、図1に示すように、前記カーボンナノチューブ21がポリエステル基材1に分散する場合に、前記カーボンナノチューブ21は、ポリエステル基材1で連続的に分散且つお互いに接触して、連続的に存在する複数個の接触点Pは形成される。それによって、複数条の前記カーボンナノチューブ21はお互いに接続することで、前記導電性ポリエステル組成物100は、高い導電特性及び低い表面抵抗値を有する。具体的に、前記導電性ポリエステル組成物100の表面抵抗値(surface impedance)は、107以下である。
【0043】
本発明の1つの実施形態において、前記導電性ポリエステル組成物100に延伸された後でも高い導電特性及び低い表面抵抗値を与えるため、前記カーボンナノチューブ21のサイズは、好ましい範囲を有する。具体的に説明すると、前記カーボンナノチューブ21のそれぞれにおいて、前記カーボンナノチューブ21の長さLは、10~20μmであることが好ましく、前記カーボンナノチューブ21の直径Dは、3~20nmであることが好ましく、前記カーボンナノチューブ21のL/Dは、1,000~2,000であることが好ましい。本実施形態におけるカーボンナノチューブ21の長さLが長く且つL/Dが十分に高いため、図2に示すように、本実施形態に係る導電性ポリエステル組成物100は、高倍率(例えば、200%~400%の延伸倍率)で延伸された後でも、連続的に存在する複数個の接触点Pを有して、高い導電特性を有する。
【0044】
含有量について、前記導電性ポリエステル組成物100の総重量に基づいて、前記導電性補強材2の含有量は、1.5~10wt%であることが好ましく、2~5wt%であることが特に好ましい。即ち、前記導電性補強材2における複数条のカーボンナノチューブ21は、導電性ポリエステル組成物100に少量に添加されても(10wt%以下)、前記導電性ポリエステル組成物100に高い導電特性及び低い表面抵抗値を与える。
【0045】
前記導電性補強材2の含有量が前記含有量の下限値より低くなると(例えば、1.5wt%未満)、前記カーボンナノチューブ21が導電性ポリエステル組成物100で足量の接触点を形成することができないため、前記導電性ポリエステル組成物100に高い導電特性及び低い表面抵抗値を与えることができない。一方、前記導電性補強材2の含有量が前記含有量の上限値より高くなる(例えば、10wt%を超える)と、前記カーボンナノチューブ21の導電性ポリエステル組成物100での分散性が不良となることがあると共に、前記導電性ポリエステル組成物100が加工性が不良且つ延伸されにくいことがある。
【0046】
カーボンナノチューブ21として、単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotubes,SWCNT)、2層カーボンナノチューブ(double-walled carbon nanotubes,DWCNT)及び多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes,MWCNT)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0047】
図3に示すように、本発明の1つの実施形態において、カーボンナノチューブ21は、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であることが好ましい。多層カーボンナノチューブを採用する利点として、多層カーボンナノチューブの構造的対称性が低いため、表面変性を行いやすく、カーボンナノチューブと樹脂材料との相容性及び分散性を向上させることができる。また、多層カーボンナノチューブの構造は、数層乃至数十層の単層チューブが同心となるように構成されるため、延伸として好適であると共に、延伸されでも断裂又は構造が破壊されにくくなる。本実施形態に係る導電性ポリエステル組成物100を応用する時に、高倍率で延伸される必要があるため、多層カーボンナノチューブを用いると材料が比較的に広い延伸範囲を達成する。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、前記導電性補強材2のポリエステル基材1での相容性及び分散性を向上するため、前記導電性ポリエステル組成物100は、相溶化剤を更に含む(図面なし)。なかでも、前記相溶化剤は、カーボンナノチューブ21をポリエステル基材1に分散させるように配合される。
【0049】
含有量について、前記導電性ポリエステル組成物100の総重量に基づいて、前記相溶化剤の含有量は、1.5~10wt%であることが好ましく、2~10wt%であることが特に好ましい。
【0050】
前記相溶化剤の、カーボンナノチューブ21のポリエステル基材1での分散性を向上するために、前記相溶化剤及び前記カーボンナノチューブは、好ましい重量比を有する。
【0051】
具体的に説明すると、前記相溶化剤と前記カーボンナノチューブとの重量比は、2:1~1:1である。例えば、前記導電性ポリエステル組成物100では、前記相溶化剤の含有量は例えば、6wt%であってもよく、また、前記カーボンナノチューブの含有量は例えば、3wt%であってもよい。なお、前記相溶化剤の含有量は例えば、3wt%であってもよく、前記カーボンナノチューブの含有量は例えば、3wt%であってもよい。換言すると、前記相溶化剤の含有量は、カーボンナノチューブの含有量以上であることが好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0052】
本発明の一つの実施形態において、前記導電性補強材2のポリエステル基材1での相容性及び分散性を向上するため、前記導電性補強材2におけるカーボンナノチューブ21は、ヒドロキシル化カーボンナノチューブ(hydroxylated carbon nanotubes)及びカルボキシル化カーボンナノチューブ(carboxylic carbon nanotubes)からなる群から選択される少なくとも1つである。即ち、前記カーボンナノチューブ21は、ヒドロキシル変性(-OH modified)又はカルボキシル変性(-COOH modified)を行ったカーボンナノチューブ21である。なお、前記相溶化剤は、メタクリル酸グリシジル(glycidyl methacrylate,GMA)でグラフト、改質若しくは共重合されたポリオレフィン相溶化剤、又はシロキサン化合物である。
【0053】
上述した構成により、前記相溶化剤の分子構造におけるメタクリル酸グリシジル(GMA)は、混練において開環反応(ring cleavage)を起こし、且つ、前記メタクリル酸グリシジルにおけるエポキシ基(epoxy group)は、前記開環反応の後に前記カーボンナノチューブ21の表面にある反応性官能基及び/又は前記ポリエステル基材1の分子構造におけるエステル基(ester group)と化学反応(例えば、共有結合)を行い、それによって、前記カーボンナノチューブ21を前記ポリエステル基材1により相容且つ均一的に分散させる。
【0054】
なかでも、前記カーボンナノチューブ21の表面にある反応性官能基は、水酸基(-OH)及びカルボキシル基(-COOH)の少なくとも1つである。なお、前記メタクリル酸グリシジルにおけるエポキシ基(epoxy group)は例えば、カーボンナノチューブ21の表面にある反応性官能基及び/又は前記ポリエステル基材1の分子構造におけるエステル基(ester group)と共有結合(covalent bonding)してもよい。
【0055】
より具体的に説明すると、本発明の実施形態において、前記導電性補強材2におけるカーボンナノチューブ21は、ヒドロキシル化多層カーボンナノチューブ(hydroxylate multi walled carbon nanotubes)及びカルボキシル化多層カーボンナノチューブ(carboxylic multi walled carbon nanotubes)からなる群から選択される少なくとも1つであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0056】
より具体的に説明すると、本発明の一つの実施形態において、前記相溶化剤は、エチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体(E-MA-GMA)、メタクリル酸グリシジルをグラフトしたポリオレフィンエラストマー相溶化剤(POE-g-GMA)及びメタクリル酸グリシジルをグラフトしたポリエチレン(PE-g-GMA)及びシロキサン化合物(siloxane)からなる群から選択される少なくとも1つである。前記相溶化剤は、エチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル共重合体(E-MA-GMA)とシロキサン化合物との組み合わせであることが好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0057】
特筆すべきことは、前記相溶化剤において、メタクリル酸グリシジル(以下、GMAと称す)の分子構造に反応性2官能基である炭素-炭素二重結合及びエポキシ基を有する。GMAは、非水溶性且つ有機溶剤に溶解されやすい無色透明の液体である。GMAは、皮膚及び粘膜に刺激性を有するが、ほぼ無毒である。GMAは、2官能基を有し、フリーラジカル反応やイオン反応を行うことができるため、高い反応活性を有するので、高分子材料の合成及び改良に広く使われている。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン-オクテン(POE)などのポリオレフィンが挙げられ、GMAを介してグラフト・変性した後に、ポリマーの接着力、親水性、及び高分子樹脂との相容性を顕著に向上させることができる。
【0058】
本発明の一つの実施形態において、前記導電性ポリエステル組成物100の抗酸化性を向上するため、前記導電性ポリエステル組成物100は、抗酸化剤(antioxidants)を更に含む。含有量について、前記導電性ポリエステル組成物100の総重量に基づいて、前記抗酸化剤の含有量は、0.1~1wt%であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0059】
前記抗酸化剤として、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、混合抗酸化剤、亜リン酸系抗酸化剤及び複合抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましくは、前記抗酸化剤は、亜リン酸系抗酸化剤とヒンダードフェノール系抗酸化剤との複合物であることが好ましい。
【0060】
本発明の一つの実施形態において、前記導電性ポリエステル組成物100の黒色度を向上するため、前記導電性ポリエステル組成物100は、黒マスターバッチ(black master batches)を更に含む。含有量について、前記導電性ポリエステル組成物100の総重量に基づいて、前記黒マスターバッチの含有量は、1~5wt%であるが、本発明はこれに制限されるものではない。黒マスターバッチを添加する目的は、導電性ポリエステルの色合いを制御する。
【0061】
前記導電性ポリエステル組成物100の材料及び含有量を制御することにより、本実施形態の導電性ポリエステル積層構造100は、二軸スクリュープロセスで混練変性を行うことによって、前記導電性補強材2を均一にポリエステル基材1に分散させた上で、前記導電性ポリエステル組成物100に高い導電特性及び低い表面抵抗値を有する。特筆すべきことは、前記二軸スクリュープロセスで混練変性された導電性ポリエステル組成物100の表面抵抗値は、107Ω/sq以下である。
【0062】
より具体的に説明すると、前記導電性ポリエステル組成物100は、二軸スクリュープロセスで混練変性された後に、前記導電層Aを形成し、電気キャリア搬送用トレー又は電気キャリアテープの製造に用いられる。
【0063】
上述した構成により、前記主構造支持層B及び2つの前記導電層Aは、共押出(co-extrusion)により、サンドイッチ構造を有する導電性ポリエステルシート材料(導電性ポリエステル積層構造)Eとして形成される。
【0064】
更に説明すると、前記導電性ポリエステル積層構造Eは、真空成形プロセス(vacuum forming process)で形成されてもよい。なかでも、前記導電性ポリエステル積層構造Eが延伸される前に、前記導電層Aの表面に103~104Ω/sqの表面抵抗値を有する。前記導電性ポリエステル積層構造Eが延伸方向(例えば、TD方向又MD方向)に沿って200%~400%延伸された後に、前記導電層Aのそれぞれの表面に104~107Ω/sqの表面抵抗値を有する。特筆すべきことは、図2に示すように、前記導電層Aのそれぞれが延伸された後に、カーボンナノチューブ21のお互いの分布密度が低くなるが、カーボンナノチューブ21は依然としてお互いに接触すると共に、複数個の接触点Pを形成するので、ある程度の導電性を提供する。
【0065】
前記導電性ポリエステル積層構造Eが延伸される前に、前記主構造支持層Bの厚みは、前記導電層Aのそれぞれの厚みより厚い。
【0066】
具体的に説明すると、前記主構造支持層Bの厚みは、80~1,400μmであり、好ましくは200~1,200μmであり、特に好ましくは400~1,000μmである。尚、前記導電層Aの厚みは、10~200μmであり、好ましくは30~100μmであり、特に好ましくは30~60μmである。
【0067】
前記導電性ポリエステル積層構造が延伸方向に沿って200%~400%延伸された後に、前記主構造支持層Bの厚み及び導電層Aのそれぞれの厚みはいずれも薄くなる。具体的に説明すると、前記主構造支持層Bの厚みは、本来の厚みの1/2~1/4に薄くなると共に、前記導電層Aのそれぞれの厚みは、本来の厚みの1/2~1/4に薄くなる。
【0068】
特筆すべきことは、前記主構造支持層Bの厚みは、上記の厚みの範囲に含まると好適な支持性を得られる。前記主構造支持層Bの厚みが薄すぎると、十分な支持性を提供できない。一方、前記主構造支持層Bの厚みが厚すぎると、真空成形プロセスの効果に影響する。前記導電層Aの厚みは、上記の厚みの範囲に含まると好適な導電特性を得られる。前記導電層Aの厚みが薄すぎると、導電層Aが延伸される時に、導電層Aが損傷しており、導電性がなくなる。前記導電層Aの厚みが厚すぎると、カーボンナノチューブが導電層Aの底部に沈積しやすくなり、十分な導電特性を提供できない。
【0069】
[第二実施形態]
図4に示すように、本発明の第二実施形態において、導電性ポリエステル積層構造E’を提供する。前記導電性ポリエステル積層構造E’の構造及び材料は、前記第一実施形態と大抵同一であるが、それらの相違点については、本実施形態に係る導電性ポリエステル積層構造E’は、サンドイッチ構造でなく、二層積層構造である。
【0070】
具体的に説明すると、本実施形態に係る導電性ポリエステル積層構造E’は、主構造支持層B及び1つの導電層Aを備える。前記主構造支持層Bは、互いに反対側の2つの表面を有する。また、前記導電層Aは、主構造支持層Bの片面に形成される。
【0071】
前記導電層Aは、前記導電性ポリエステル組成物100で形成される。前記導電性ポリエステル組成物100は、ポリエステル基材1及び導電性補強材2を含む。前記導電性補強材2は、複数条のカーボンナノチューブ21(carbon nanotubes)を含むと共に、前記カーボンナノチューブ21は、ポリエステル基材1に分散する。
【0072】
前記カーボンナノチューブ21のそれぞれにおいて、前記カーボンナノチューブ21の長さをLとし、前記カーボンナノチューブ21の直径をDとし、前記カーボンナノチューブ21の直径は、1~30nmであると共に、前記カーボンナノチューブ21のL/Dは、300~2,000である。なかでも、前記カーボンナノチューブ21がお互いに接触することで複数個の接触点Pを形成することによって、前記導電層Aの表面は、107Ω/sq以下の表面抵抗値を有する。
【0073】
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態は、導電性包装材料を提供する(図面なし)。前記導電性包装材料は、上記の第一実施形態又は第二実施形態に係る導電性ポリエステル積層構造Eを用いて真空成形プロセス(vacuum forming process)で延伸・形成されることを特徴とする。なかでも、前記導電性包装材料は例えば、電気キャリア搬送用トレー(carrier tray)又は電気キャリアテープ(carrier tape)が挙げられる。
【0074】
[実験データの測定]
以下、実施例1及び比較例1及び2により、本発明の内容を詳しく説明するが、それらの実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0075】
実施例1に係る導電性ポリエステル積層構造は、サンドイッチ構造(A-B-A)を有する。各層の配合は、下表1に示すとおりである。なかでも、A層である導電層において、ポリエステル組成物は、3wt%のカーボンナノチューブ及び2wt%の黒マスターバッチを含むと共に、前記ポリエステル組成物でシート状導電層を製造した。実施例1のカーボンナノチューブの規格は、以下の通りであり、即ち、平均直径は5~15nmであり、平均長さは10~20μmであり、L/Dは1,000~2,000であり、表面積は200~300m2/gであり、純度は90%以上であり、且つ容積密度は0.950~0.150である多層カーボンナノチューブである。B層である支持層において、ポリエステル基材は、南亜プラスチックのPET-3802(低結晶性ポリエステル樹脂)で形成されると共に、2wt%の黒マスターバッチを添加した。
【0076】
実施例1の電気測定結果によると、未延伸の導電層の表面抵抗値は、103~104Ω/sqであり、200%延伸された導電層の表面抵抗値は、104~105Ω/sqであり、400%延伸された導電層の表面抵抗値は、106~107Ω/sqである。上記の測定結果によると、少量のカーボンナノチューブを添加することにより、導電層に高い導電特性及び低い表面抵抗値を与える。なお、実施例1の導電層は、高い倍率で延伸されても、依然として高い導電特性を有する。
【0077】
比較例1は実施例1とほぼ同様である。それらの相違点について、比較例1では、ポリエステル組成物に25wt%の導電性グラファイト球形材料を添加すると共に、ポリエステル組成物で導電層を製造する。比較例1の電気測定結果によると、未延伸の導電層の表面抵抗値は約105Ω/sqであり、200%延伸された導電層の表面抵抗値は、約1011Ω/sqであり、400%延伸された導電層の表面抵抗値は、約1011Ω/sqである。上記の測定結果によると、導電性グラファイト材料を使用する場合、導電層に高い導電特性を得るために、大量に添加する必要がある。しかしながら、比較例1の導電層は、高い倍率で延伸された後に、高い導電特性を有しない。
【0078】
比較例2は実施例1とほぼ同様である。それらの相違点について、比較例2では、ポリエステル組成物に10wt%の導電性カーボンブラック球形材料を添加すると共に、ポリエステル組成物で導電層を製造する。比較例2の電気測定結果によると、未延伸の導電層の表面抵抗値は約105Ω/sqであり、200%延伸された導電層の表面抵抗値は、約1010Ω/sqであり、400%延伸された導電層の表面抵抗値は、約1011Ω/sqである。上記の測定結果によると、導電性カーボンブラック球形材料を使用する場合、導電層に高い導電特性を得るために、大量に添加する必要がある。しかしながら、比較例2の導電層は、高い倍率で延伸された後に、高い導電特性を有しない。
【0079】
上記表面抵抗値の測定方法は、表面抵抗試験機で導電性ポリエステル積層構造の導電層の表面に対して測定を行う。
【0080】
[表1 実験データの測定結果]

【0081】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る導電性ポリエステル積層構造及び導電性包装材料は、「導電性補強材は、ポリエステル基材に分散するカーボンナノチューブ(carbon nanotubes)を含み、なかでも、前記カーボンナノチューブのそれぞれにおいて、カーボンナノチューブの長さをLとし、カーボンナノチューブの直径をDとし、前記カーボンナノチューブの直径は1~30nmであると共に、前記カーボンナノチューブのL/Dは、300~2,000である。カーボンナノチューブがお互いに接触することで接触点を形成することによって、導電性ポリエステル組成物は、107Ω/sq以下の表面抵抗値を有する」といった技術特徴により、前記導電性ポリエステル組成物に少量の導電性補強材を添加する場合にも、高い導電特性を有すると共に、前記導電性ポリエステル積層構造が延伸された後でも高い導電特性を有する。
【0082】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
E、E’…導電性ポリエステル積層構造
A…導電層
100…導電性ポリエステル組成物
1…ポリエステル基材
2…導電性補強材
21…カーボンナノチューブ
B…主構造支持層
P…接触点
L…長さ
D…直径
図1
図2
図3
図4