(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】主要組織適合遺伝子複合体E分子によって拘束されるT細胞を誘発するサイトメガロウイルスベクター及びHCMVベクターを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/869 20060101AFI20240425BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240425BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240425BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240425BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240425BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240425BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20240425BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240425BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240425BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20240425BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240425BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240425BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240425BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20240425BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240425BHJP
A61K 39/04 20060101ALI20240425BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240425BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240425BHJP
【FI】
C12N15/869 Z ZNA
C12N7/01
A61P37/04
A61K48/00
A61P43/00 107
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/18
A61P31/22
A61P31/20
A61P31/14
A61P33/06
A61P31/06
A61K35/763
A61P1/16
A61K39/245
A61K39/12
A61K39/04
A61K39/00 H
C12N15/113 104Z
(21)【出願番号】P 2022169043
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2019520801の分割
【原出願日】2017-10-18
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512208051
【氏名又は名称】オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マルーリ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ピッカー、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック、ミーガン
(72)【発明者】
【氏名】サチャ、ジョナー
(72)【発明者】
【氏名】フルー、クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、スコット
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/143653(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/011293(WO,A1)
【文献】特表2012-525141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0110188(US,A1)
【文献】Science,2016年02月12日,Vol. 351, No. 6274,pp. 714-720
【文献】JOURNAL OF CLINICAL INVESTIGATION,2010年,Vol. 120, No. 10,pp. 3641-3650
【文献】Biochem Biophys Res Commun.,2009年,Vol. 386, No. 4,pp. 549-553
【文献】Oncotarget,2016年05月02日,Vol. 7, No. 24,pp. 36614-36621
【文献】Molecular and Cellular Biology,2014年,Vol. 34, No. 20,pp. 3780-3787
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 7/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列と、
(b)CMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているHCMV遺伝子に操作可能に連結された第一のmicroRNA認識配列(MRE)を含む第二の核酸配列であって、該CMVの増殖に必須または該増殖を増強しているHCMV遺伝子がUL122(IE2)又はUL79であり、該MREがmiR-126-3pの存在下においてUL122(IE2)又はUL79の発現を抑制
し、UL122(IE2)又はUL79の3’UTRに挿入されるものである、第二の核酸配列と、
を含むヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ベクターであって、
該ベクターは、活性UL128タンパク質を発現しない、活性UL130タンパク質を発現しない、活性UL146を発現しない
、活性147タンパク質を発現しない、
及び、活性US28又はUS27タンパク質のいずれかを発現する、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ベクター。
【請求項2】
前記MREは、miR-126-3pと相補的である、請求項1に記載のHCMVベクター。
【請求項3】
前記MREは、UL122(IE2)及びUL79に操作可能に連結され、miR-126-3pの存在下においてUL122(IE2)及びUL79の発現を抑制する、請求項1又は2に記載のHCMVベクター。
【請求項4】
CMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているHCMV遺伝子に操作可能に連結された第二のMREを含む第三の核酸配列であって、該MREが、骨髄細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制する第三の核酸配列をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のHCMVベクター。
【請求項5】
骨髄細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAは、miR-142-3p、miR-223、miR-27a、miR-652、miR-155、miR146a、miR-132、miR-21又はmiR-125である、請求項4に記載のHCMVベクター。
【請求項6】
骨髄細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAは、miR-142-3pである、請求項4に記載のHCMVベクター。
【請求項7】
前記MREは、miR-142-3pと相補的である、請求項6に記載のHCMVベクター。
【請求項8】
前記少なくとも1つの異種抗原は、病原体特異抗原、腫瘍抗原、組織特異抗原又は宿主の自己抗原を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のHCMVベクター。
【請求項9】
(a)前記宿主の自己抗原は、T細胞受容体(TCR)の可変領域由来の抗原又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原であるか、あるいは
(b)前記病原体特異抗原は、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、マラリア原虫(Plasmodium parasites)、または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に由来するか、あるいは
(c)前記腫瘍抗原は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌(RCC)、または胚細胞腫瘍に関連する、請求項8に記載のHCMVベクター。
【請求項10】
(a)前記HCMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質を発現しないか、あるいは
(b)前記HCMVベクターは、活性US11タンパク質を発現しないか、あるいは
(c)前記HCMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質又は活性US11タンパク質を発現しない、請求項1から9のいずれか一項に記載のHCMVベクター。
【請求項11】
対象において、少なくとも1つの異種抗原に対する免疫応答を生成する方法に用いる組成物であって、請求項1から10のいずれか一項に記載のHCMVベクターを含み、前記HCMVベクターは、前記少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+ T細胞応答を誘発するのに有効な量で投与される、組成物。
【請求項12】
前記対象は、事前にHCMVに曝露している、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記対象は、ヒトである、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内又は経口で投与されるように調整される、請求項11から13のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2016年10月18日出願の米国仮出願第62/409,840号の優先権の利益を請求し、その開示はその全体を参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【0002】
本発明は、免疫化におけるサイトメガロウイルス(CMV)ベクターの使用に関するものであり、より詳細には、MHC-E拘束性を特徴とするT細胞応答の生成に関するものである。特定の実施形態は、MHC-Eによって拘束されるCD8+ T細胞の生成に関するものである。
【背景技術】
【0003】
政府支援の認定
本発明は、National Institutes of Health(アメリカ国立衛生研究所)により与えられた助成番号第P01 AI094417号及び第R01 AI117802号の条項のもと、米国政府の支援によって行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0004】
EFS-WEB経由で電子的に提出した配列表の参照
電子的に提出した配列表(名称:3919.014PC01_ST25、サイズ:1,063バイト、作成日:2017年10月18日)の内容は、その全体を参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、遺伝子改変したCMVワクチンベクターを開示する。遺伝子改変したCMVワクチンベクターの実施形態においては、本明細書に記載の遺伝子改変により、細胞表面のMHC-IIタンパク質及びMHC-Eタンパク質によって拘束される、固有のエピトープを認識するCD8+ T細胞応答を誘発する能力を含む、CMVワクチンベクターによって誘発されるCD8+ T細胞応答のエピトープターゲティングと主要組織適合遺伝子複合体(MHC(Major Histocompatibility Complex))の拘束性とが変化する。本明細書に記載のCMVワクチンベクターが誘発するMHC-II及びMHC-E拘束性CD8+ T細胞応答は非古典的であり、病原体に対する天然の免疫応答において稀に観察される。さらに、本明細書に記載のCMVワクチンベクターが誘発するMHC-II及びMHC-E拘束性CD8+ T細胞応答の幅と効力は、遺伝子改変していないCMVワクチンベクターでは観察されない。一部の実施形態においては、特定の理論により拘束されることなく、発明者は、MHC-E拘束性CD8+ T細胞は、MHC-E拘束性免疫応答に対して病原体及び腫瘍の免疫回避の適応がないことを活用できるということと、またそうした応答を主に又は排他的に誘発することができる本明細書に記載の遺伝子改変したCMVワクチンベクターが、標的である病原体及び腫瘍に対する固有に効力あるワクチンの可能性を提供するということとを考えている。この仮定は、MHC-E拘束性CD8+ T細胞を誘発するワクチンのみが、非ヒト霊長類AIDSモデルにおける攻撃に対して保護をするという発見と一貫性がある。さらに、MHC-Eは、MHC-E拘束性エピトープを標的とする防御反応が個体間で保存されるように、多型を抑えている。したがって、一部の実施形態においては、本明細書に記載の遺伝子改変されたCMVワクチンベクターは、遺伝子的に多様な個体間で共有されているあるMHC-E拘束性T細胞応答を誘発する。
【0006】
本明細書においては、少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列と、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するmicroRNA認識配列(MRE(microRNA recognition element))を含む第二の核酸配列とを含む、CMVベクターを開示する。MREは、CMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子に操作可能に連結している。ベクターは、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL146タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない。
【0007】
また本明細書においては、少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列と、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するMREを含む第二の核酸配列と、骨髄細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するMREを含む第三の核酸配列とを含む、CMVベクターも開示する。これらMREは、CMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子に操作可能に連結している。ベクターは、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL146タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない。
【0008】
また本明細書においては、少なくとも1つの異種抗原をコードする核酸配列を含むヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ベクターも開示する。ベクターは、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL146タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない。
【0009】
また本明細書においては、対象において、少なくとも1つの異種抗原に対する免疫応答を生成する方法も開示する。この方法は、対象に対して、本明細書に開示するタイプのCMVベクターを効果量で投与して、少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+ T細胞応答を誘発することを伴う。一部の実施形態においては、このベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも10%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束されている。さらなる実施形態においては、このベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの10%未満が、多型MHC-クラスIa又はそのオーソログによって拘束されている。代替的な実施形態においては、このベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも50%が、MHC-クラスIa又はそのオーソログによって拘束されている。さらに他の実施形態においては、このベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも10%が、MHC-II又はそのオーソログによって拘束されている。
【0010】
本明細書に開示するCMVベクターの異種抗原は、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、マラリア原虫(Plasmodium parasites)及び結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に由来する病原体特異抗原を含む、任意の異種抗原であり得る。他の実施形態においては、異種抗原は、例えば急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌、及び、胚細胞腫瘍に関連する腫瘍抗原を含む、腫瘍抗原であり得る。一部の実施形態においては、異種抗原は、例えばT細胞受容体の可変領域由来の抗原又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原を含む、組織特異抗原又は宿主の自己抗原であり得る。
【0011】
また本明細書においては、MHC-E-ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞を生成する方法も開示する。この方法は、第一の対象に対して、CMVベクターを効果量で投与して、MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞の集合を生成することを伴う。CMVベクターは、少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列を含むが、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL146タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない。一部の実施形態においては、CMVベクターは、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するMREを含む第二の核酸配列をさらに含む。異種抗原は、病原体特異抗原、腫瘍抗原、自己抗原又は組織特異抗原を含む任意の抗原であることが可能である。一部の実施形態においては、この方法は、CD8+ T細胞の集合からの第一のCD8+ T細胞受容体を同定することをさらに含み得るものであって、該第一のCD8+ T細胞受容体(TCR)が、MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する。一部の実施形態においては、第一のCD8+ T細胞受容体は、DNA又はRNAの配列決定によって同定される。一部の実施形態においては、この方法は、ある発現ベクターで、第一の対象若しくは第二の対象から単離された1つ又は複数のT細胞をトランスフェクションすることをさらに含み得るものであって、該発現ベクターが、第二のCD8+ T細胞受容体をコードする核酸配列を含み、該第二のCD8+ T細胞受容体が、第一のCD8+ T細胞受容体のCDR3α及びCDR3βを含み、それによって、MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する1つ又は複数のトランスフェクションされたCD8+ T細胞が生成される。一部の実施形態においては、この方法は、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を第一の対象又は第二の対象に投与して、例えば癌である疾患、病原性感染、又は、自己免疫疾患若しくは自己免疫障害を治療することをさらに含み得る。一部の実施形態においては、この方法は、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を第一の対象又は第二の対象に投与して、自己抗原又は組織特異抗原に対する自己免疫応答を誘導することをさらに含み得る。
【0012】
また本明細書においては、以下の工程を含む方法によって調製されたMHC-E-ペプチド複合体を認識するトランスフェクションされたCD8+ T細胞も開示するものであって、該方法は、(1)第一の対象に対して、CMVベクターを効果量で投与して、MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞の集合を生成する工程と、(2)CD8+ T細胞の集合からの第一のCD8+ T細胞受容体を同定する工程であって、該第一のCD8+ T細胞受容体がMHC-E/異種抗原由来複合体を認識するものである工程と、(3)第一の対象又は第二の対象から、1つ又は複数のCD8+ T細胞を単離する工程と、(4)ある発現ベクターで、第一の対象若しくは第二の対象から単離された1つ又は複数のCD8+ T細胞をトランスフェクションし、それによってMHC-E-ペプチド複合体を認識するトランスフェクションされたT細胞を作製する工程とを含む。CMVベクターは、少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列を含むが、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL146タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない。一部の実施形態においては、CMVベクターは、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するMREを含む第二の核酸配列をさらに含む。発現ベクターは、第二のCD8+ T細胞受容体をコードする核酸配列と、第二のCD8+ T細胞受容体をコードする該核酸配列に操作可能に連結するプロモーターとを含むものであって、第二のCD8+ T細胞受容体が、第一のCD8+ T細胞受容体のCDR3α及びCDR3βを含む。異種抗原は、病原体特異抗原、腫瘍抗原、自己抗原又は組織特異抗原を含む任意の抗原であることが可能である。また本明細書においては、例えば癌である疾患、病原性感染、又は、自己免疫疾患若しくは自己免疫障害を治療する方法であって、第一の対象又は第二の対象に対して、MHC-E-ペプチド複合体を認識するトランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与することを含む方法も開示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面とあわせて、以下に記載する発明を実施するための形態によって、実施形態が容易に理解されることとなる。実施形態は、限定ではなく例として添付の図面の各図に示す。
【0014】
【
図1】
図1は、それぞれ異なるようにプログラムされたRhCMV/SIVgagベクターによって誘発されたSIVgag特異CD8+ T細胞の、エピトープターゲティング及びMHC拘束性を示している。指定されたRhCMVベクターにより誘発されたSIVgag特異CD8+ T細胞応答を、125個の連続した15mer gagペプチド(11アミノ酸オーバーラップを含む)の認識を検出するフローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン染色(ICS)を用いてエピトープマッピングした。特異的なCD8+ T細胞応答を生じた個々のペプチドをボックスで示しており、抗-汎MHC-I mAbであるW6/32(非多型MHC-E及び多型MHC-Iaの両分子の認識を阻害する)と、MHC-Eを阻害するペプチドVL9と、MHC-IIを阻害するペプチドCLIPとによる阻害によって決定されたとおりに、MHC拘束性を指定するものである模様をボックスに施すようにしている。MHC-Ia、MHC-E及びMHC-IIによる拘束性は、それぞれ、W6/32単独(白)、VL9単独(45度ハッチング)、及びCLIP単独(水平ハッチング)が阻害している、>90%の応答に基づくものとしたが、これら基準を満たさなかった応答については不定(黒)とした。矢印は、MHC-IIスーパートープ(supertope)(水平ハッチング)及びMHC-EスーパートープMHC-Eスーパートープ(45度ハッチング)を示している。
【0015】
【
図2】
図2は、ワクチン未接種のままのアカゲザル(RM)(n=15、下段)、又は、68-1株RhCMV/SIVベクター(n=15、上段左)、68-1.2株RhCMVベクター(n=15、上段中央)若しくはUL128-欠失(ΔUL128)68-1.2 RhCMVベクター(n=14、上段右)でワクチン接種したアカゲザル(RM)の、繰り返しの、用量限界での直腸内へのSIVmac239の攻撃の結果を示している。全てのベクターが、同一のSIV Gag、Retanef(Rev/Nef/Tatの融合)及び5’-Polインサートを発現した。
【0016】
【
図3】
図3は、CyCMVコンストラクトの配列決定カバレッジマップを示している。CyCMV-BACの次世代シーケンス解析(Next Generation Sequencing)で、精度管理をパスした全ての配列決定の読み値が、CyCMV-BACの新規の集積したコンセンサス配列に対して並列された。コンストラクト毎にコンセンサス配列のORFマップを示している。上部のバーは、所与のBACと親BAC配列との間のヌクレオチド同一性の割合を示しており、濃い灰色は100%同一である。Cy13.1 ORFと置き替わるSIVgag配列並びにHCMV UL128、UL130、UL146及びUL147のCyCMVホモログを、上部のバー内で薄い灰色で示している。親BAC及びCyCMVΔRL13/Gag間における有一の配列の相違は、RL13のCyCMVホモログがSIVgagで置換されていることである。さらにCyCMVΔRL13/GagΔUL128-130はUL128及びUL130のホモログを欠いているのに対し、一方、CyCMVΔRL13/GagΔUL128-130ΔUL146-147内においては、HCMV UL146及びUL147の6つのホモログがさらに欠失している。大多数の配列では、望ましくない組換え又は偽の変異は存在しない。
【0017】
【
図4】
図4は、細菌人工染色体(31908)にクローニングすることで生成されて、またHCMV UL128及びUL130に相同である遺伝子が、単独で欠失(ΔUL128-UL130)又はHCMV UL146及びUL147に相同である6つの遺伝子のファミリーと組み合わせて欠失(ΔUL128-UL130+ΔUL146/7ファミリー)している、CyCMVコンストラクトの概略図を示している。
【0018】
【
図5A】
図5A~5Cは、CyCMVΔRL13/GagΔUL128-130ベクターでワクチン接種したカニクイザルからの末梢血単核球(PBMC)のフローサイトメトリーのプロットを示している。
図5Aは、4アミノ酸オーバーラップの15mer SIVgagペプチド(GAG ORF)で、又は、MHC-II若しくはMHC-Eのスーパートープに対応する図示したSIVgagペプチド(Gag53はSIVmac239のgagタンパク質中のアミノ酸(amino-acid)配列211~222に対応するペプチドと等しく、Gag73はAA290~301に対応するペプチドと等しく、Gag69はAA276~284に対応するペプチドと等しく、Gag120はAA482~490に対応するペプチドと等しい)で刺激した、CyCMVΔRL13/GagΔUL128-130ベクターでワクチン接種したカニクイザルからのPBMCのフローサイトメトリーのプロットを示している。
【
図5B】
図5Bは、汎-MHC-I阻害mAbであるW6/32(MHC-E及びMHC-Iaの両方を阻害する抗MHC-I)、MHC-IIを結合するCLIPペプチド(抗MHC-II)又はMHC-Eを結合するVL9ペプチド(抗MHC-E)の存在下で、非スーパートープであるMHC-II又はMHC-Ia拘束性ペプチド(Gag12はSIVmac239gag中のAA45~59と等しく、Gag33は132~140AAと等しい)と共にインキュベーション後のCD8+ T細胞の代表的なフローサイトメトリーのプロットを示している。
【
図5C】
図5Cは、125個の連続した15mer gagペプチド(11アミノ酸オーバーラップを含む)の認識を検出するフローサイトメトリーによるICSを用いた、SIVgag特異CD8+ T細胞のエピトープターゲティング及びMHC拘束性を示している。特異的なCD8+ T細胞応答を生じた個々のペプチドをボックスで示しており、抗-汎MHC-I mAbであるW6/32と、MHC-Eを阻害するペプチドVL9と、MHC-IIを阻害するペプチドCLIPとによる阻害によって決定されたとおりに、MHC拘束性を指定するものである模様をボックスに施すようにしている。MHC-Ia、MHC-E及びMHC-IIによる拘束性は、それぞれ、W6/32単独(左下角から右上角方向のハッチング)、VL9単独(右下角から左上角方向のハッチングと水平ハッチング)、及びCLIP単独(黒)が阻害している、>90%の応答に基づくものとしたが、これら基準を満たさなかった応答については不定(白)とした。
【0019】
【
図6A】
図6A~6Cは、CyCMVΔRL13/GagΔUL128-130ΔUL146-147ベクターでワクチン接種したカニクイザルからのPBMCのフローサイトメトリーのプロットを示している。
図6Aは、4アミノ酸オーバーラップの15mer SIVgagペプチド(GAG ORF)で、又は、MHC-II若しくはMHC-Eのスーパートープに対応する図示したSIVgagペプチドで刺激した、CyCMVΔRL13/GagΔUL128-130ΔUL146-147ベクターでワクチン接種したカニクイザルからのPBMCのフローサイトメトリーのプロットを示している。
【
図6B】
図6Bは、汎-MHC-I阻害mAbであるW6/32(抗MHC-I)、MHC-IIを結合するCLIPペプチド(抗MHC-II)、又はMHC-Eを結合するVL9ペプチド(抗MHC-E)の存在下で、スーパートープであるMHC-II又はMHC-E拘束性ペプチドと共にインキュベーション後のCD8+ T細胞の代表的なフローサイトメトリーのプロットを示している。
【
図6C】
図6Cは、125個の連続した15mer gagペプチド(11アミノ酸オーバーラップを含む)の認識を検出するフローサイトメトリーによるICSを用いた、SIVgag特異CD8+ T細胞のエピトープターゲティング及びMHC拘束性を示している。特異的なCD8+ T細胞応答を生じた個々のペプチドをボックスで示しており、抗-汎MHC-I mAbであるW6/32と、MHC-Eを阻害するペプチドVL9と、MHC-IIを阻害するペプチドCLIPとによる阻害によって決定されたとおりに、MHC拘束性を指定するものである模様をボックスに施すようにしている。MHC-Ia、MHC-E及びMHC-IIによる拘束性は、それぞれ、W6/32単独(左下角から右上角方向のハッチング)、VL9単独(右下角から左上角方向のハッチングと水平ハッチング)、及びCLIP単独(黒)が阻害している、>90%の応答に基づくものとしたが、これら基準を満たさなかった応答については不定(白)とした。
【0020】
【
図7】
図7は、RhCMV分離株68-1と、野生型の完全長ゲノムに68-1を遺伝子操作することによって生成したRhCMVコンストラクト(FL)との概略図を示している。FLの或るコンストラクトは、HCMV UL128及びUL130に相同であるRhCMV遺伝子を、単独で欠失(ΔUL128-UL130)又はHCMV UL146及びUL147に相同である6個のRhCMV遺伝子のファミリーと組み合せて欠失(ΔUL128-UL130+ΔUL146/7ファミリー)させた。
【0021】
【
図8A】
図8A~8Dは、図示したコンストラクトを接種したアカゲザルにおける、全SIVgag(オーバーラップペプチドを用いて)又は図示したMHC-E若しくはMHC-II拘束性「スーパートープ」ペプチドに対するCD8+ T細胞応答を示している。T細胞応答は、図示した接種後の日におけるPBMCのICSで測定した。
図8Aは、FL-RhCMVΔRL13gagを接種したアカゲザルのCD8+ T細胞応答を示している。
【
図8B】
図8Bは、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-UL130を接種したアカゲザルのCD8+ T細胞応答を示している。
【
図8C】
図8Cは、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-UL130ΔUL146(3)を接種したアカゲザルのCD8+ T細胞応答を示している。
【
図8D】
図8Dは、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-UL130ΔUL147(6)を接種したアカゲザルのCD8+ T細胞応答を示している。
【0022】
【
図9A】
図9A~9Cは、図示したコンストラクトを接種したアカゲザルにおける、全SIVgag(オーバーラップペプチドを用いて)又は図示したMHC-E若しくはMHC-II拘束性「スーパートープ」ペプチドに対するCD8+ T細胞応答を示している。T細胞応答は、図示した接種後の日におけるPBMCのICSで測定した。
図9Aは、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-UL130HCMVUL146-UL147を接種したアカゲザルのCD8+ T細胞応答を示している。
【
図9B】
図9Bは、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-UL130HCMVUL146を接種したアカゲザルのCD8+ T細胞応答を示している。
【
図9C】
図9Cは、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-UL130HCMVUL147を接種したアカゲザルのCD8+ T細胞応答を示している。
【0023】
【
図10】
図10は、galK組換え(galK recombination)を経るRhCMV Rh156/Rh108 miR-126-3p変異体ウイルスの生成の概略図を示している。Rh156及びRh108は、それぞれ、必須HCMV遺伝子UL122(IE2)及びUL79のRhCMVホモログである。
【0024】
【
図11】
図11は、図示した細胞型(PBMCから得たCD14+単球由来であり、m-CSFの存在下で10日間培養した、アカゲザル肺線維芽細胞、アカゲザル臍静脈内皮細胞、アカゲザルマクロファージ)中でのmiR-126-3p発現を示す棒グラフである。miR発現は、10ngのRNAからのqPCRにより測定した。複製数は、標準曲線により決定した。
【0025】
【
図12】
図12は、miR-126-3p模倣体(“+miR-126”)若しくはコントロールmiRNA(“+Neg”)でトランスフェクションされたアカゲザル線維芽細胞中における、RhCMV 68-1 RTN Rh156/Rh108 miR-126-3p(“68-1 miR-126”)ウイルス又はRhCMV 68-1 RTN Rh156/Rh108 miR-126変異体(“68-1 miR-126mut”)ウイルスを用いた多段階増殖曲線を示す2種類のプロットのセットを示している。68-1株RhCMVは、HCMV UL128及びUL130のみならずUL146及びUL147のホモログを欠いている。RTNは、EF1aプロモーターを介して発現されてRhCMV遺伝子Rh211に挿入されるSIVmac239のrevタンパク質、tatタンパク質及びnefタンパク質の融合タンパク質と等しい。このウイルスは、Rh156及びRh108それぞれの3’-非翻訳領域内のmir126-3pに関する4つのターゲティング配列を含有する。
【0026】
【
図13】
図13は、内皮細胞中における、RhCMV 68-1.2 Rh156/Rh108 miR-126-3p(“68-1.2 miR-126”)ウイルス又はRhCMV 68-1 Rh156/Rh108 miR-126変異体(“68-1.2 miR-126mut”)ウイルスを用いた多段階増殖曲線を示す2種類のプロットのセットを示している。68-1.2株は、異なるRhCMV株のUL128及びUL130ホモログを含有し、UL146及びUL147ホモログを欠失している。このウイルスは、Rh156及びRh108それぞれの3’-非翻訳領域内のmir126-3pに関する4つのターゲティング配列を含有する。
【0027】
【
図14】
図14は、68-1 RhCMVmiR126/SIVgagを接種したアカゲザル(RM)におけるSIVgag特異T細胞の頻度と、SIVgag特異CD8+ T細胞の会合したエピトープターゲティング及びMHC拘束性とを示している。68-1株RhCMVは、HCMV UL128及びUL130のみならずUL146及びUL147のホモログを欠いている。SIVmac239のSIVgagは、EF1aプロモーターを介して発現されてRhCMV遺伝子Rh211に挿入される。このウイルスは、Rh156及びRh108それぞれの3’-非翻訳領域内のmir126-3pに対する4つのターゲティング配列を含有する。
【0028】
図14の上図は、68-1 RhCMVmir126/SIVgagを接種した2匹のRMにおいて、経時的に測定したSIVgag特異T細胞の頻度を示している。上図左は、4アミノ酸がオーバーラップし、SIVgagタンパク質全体をカバーする、125個のオーバーラップ15merペプチドのプールに対する、各RMにおけるSIVgagに対するCD4+及びCD8+ T細胞応答を示している。上図中央は、MHC-Eによって提示される2つのSIVgagスーパートープペプチドGag69及びGag120に対する、各RMにおけるCD8+ T細胞応答を示している。上図右は、MHC-IIによって提示される2つのSIVgagスーパートープペプチドGag53及びGag73に対する、各RMにおけるCD8+ T細胞応答を示している。
図14の下図は、SIVgag特異CD8+ T細胞のエピトープターゲティング及びMHC拘束性を示しており、特異的なCD8+ T細胞応答を生じる個々のペプチドをボックスで図示している。抗-汎MHC-I mAbであるW6/32と、MHC-Eを阻害するペプチドVL9と、MHC-IIを阻害するペプチドCLIPとによる阻害によって決定されたとおりに、MHC拘束性を指定するものである模様をボックスに施すようにしている。MHC-Ia、MHC-E及びMHC-IIによる拘束性は、それぞれ、W6/32単独(黒)、W6/32及びVL9単独(中程度の塗りつぶし)、及びCLIP単独(明るい塗りつぶし)が阻害している、>90%の応答に基づくものとしたが、これら基準を満たさなかった応答については不定(白)とした。
【0029】
【
図15】
図15は、4つのアミノ酸がオーバーラップしている15mer SIVgagペプチド(SIVgag ORF)で又はMHC-II若しくはMHC-Eスーパートープに対応する図示したSIVgagペプチドで刺激した、RhCMV株68-1miR126/gagベクターをワクチン接種したアカゲザルからのPBMCを示すフローサイトメトリーのプロットのセットを示している。MHC-E又はMHC-II結合性SIVgagペプチドに応答するCD8+ T細胞は、CD69及びTNF-α発現を介して同定した。
【0030】
【
図16】
図16は、galK組換えを経るRhCMV Rh156/Rh108 miR-126-3p/miR-142-3p変異体ウイルスの生成の概略図を示している。Rh156及びRh108は、それぞれ、必須HCMV遺伝子UL122(IE2)及びUL79のRhCMVホモログである。
【0031】
【
図17】
図17は、68-1 RhCMVmir126mir142/SIVgagを接種したアカゲザル(RM)のSIVgag特異T細胞の頻度と、SIVgag特異CD8+ T細胞の会合したエピトープターゲティング及びMHC拘束性とを示している。68-1株RhCMVは、HCMV UL128及びUL130のみならずUL146及びUL147のホモログを欠いている。SIVmac239のSIVgagは、EF1aプロモーターを介して発現されてRhCMV遺伝子Rh211に挿入される。このウイルスは、Rh156及びRh108それぞれの3’-非翻訳領域内の、mir126-3pに対する2つのターゲティング配列と、骨髄細胞特異mir142-3pに対する2つのターゲティング配列とを含有する。
【0032】
図17の上図は、68-1 RhCMVmir126mir142/SIVgagを接種した1匹のRMにおいて、経時的に測定したSIVgag特異T細胞の頻度を示している。
図17の上図左は、4アミノ酸がオーバーラップし、SIVgagタンパク質全体をカバーする、125個のオーバーラップ15merペプチドのプールに対する、各RMにおけるSIVgagに対するCD4+及びCD8+ T細胞応答を示している。
図17の上図中央は、MHC-Eによって提示される2つの共通のSIVgagペプチドに対する、各RMにおけるCD8+ T細胞応答を示している。
図17の上図右は、MHC-IIによって提示される2つの共通のSIVgagペプチドに対する、各RMにおけるCD8+ T細胞応答を示している。
図17の下図は、SIVgag特異CD8+ T細胞のエピトープターゲティング及びMHC拘束性を示しており、特異的なCD8+ T細胞応答を生じる個々のペプチドをボックスで図示している。抗-汎MHC-I mAbであるW6/32と、MHC-Eを阻害するペプチドVL9と、MHC-IIを阻害するペプチドCLIPとによる阻害によって決定されたとおりに、MHC拘束性を指定するものである模様をボックスに施すようにしている。MHC-Ia、MHC-E及びMHC-IIによる拘束性は、それぞれ、W6/32単独(白)、W6/32及びVL9単独(45度ハッチング)並びにCLIP単独(水平ハッチング)が阻害している、>90%の応答に基づくものとしたが、これら基準を満たさなかった応答については不定(黒)とした。これら結果は、68-1 RhCMV(=UL128、UL130、UL146、UL147のホモログを欠失している)のmir126mir142/SIVgagが、MHC-Ia拘束性CD8+ T細胞のみを誘発するということを示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の発明を実施するための形態においては、その一部を形成し、実行され得る実施形態を説明するものとして示されている、添付の図面を参照するものである。他の実施形態を利用してもよく、またこの開示の範囲を逸脱することなく構造的又は論理的な変更を行うことができるということを理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味で捉えるべきでないものであり、実施形態の範囲は、添付の請求項とその均等物によって規定される。
【0034】
実施形態の理解の際に有用となり得るような方法で、複数の別個の操作として様々な操作が順次記載され得るが、記載の順序については、これら操作が順序依存的であるということを暗示するものとして解釈されるべきでない。
【0035】
説明には、上方/下方、後/前、及び、上/下等、遠近法に基づく記載を用いることがある。こうした記載は、単に議論を促すために用いるものであり、開示の実施形態の適用を限定することを意図するものではない。
【0036】
「連結(結合)した」という語と「接続した」という語とは、それらの派生語と共に用いられ得る。これらの語は、互いに同義として意図されるものではないということを理解されたい。むしろ特定の実施形態においては、「接続した」は、2以上の要素が直接、互いに物理的又は電気的に接触しているということを示すために用いられ得る。「連結(結合)した」は、2以上の要素が直接、物理的又は電気的に接触していることを意味することができるが、「連結(結合)した」はまた、2以上の要素が、直接、互いに接続していないが、それでもなお互いに協働又は相互作用しているということを意味することもできる。
【0037】
この明細書では、「A/B」という形態又は「A及び/又はB」という形態の句は、(A)、(B)又は(A及びB)を意味する。この明細書では、「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」という形態の句は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)又は(A、B及びC)を意味する。この明細書では、「(A)B」という形態の句は、(B)又は(AB)を意味し、すなわちAは任意の構成要素である。
【0038】
この明細書では、「一実施形態(ある実施形態)」又は「実施形態」という語を用い得、それぞれ、同一若しくは異なる実施形態のうちの1つ又は複数を指し得る。また、実施形態に関して用いられる「含む・備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」等の語は、同義である。
【0039】
本明細書の実施形態では、組換えCMVベクターであって、少なくとも1つの異種タンパク質抗原と、CMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子に操作可能に連結している内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAに対して特異的である少なくとも1つのmicroRNA認識配列とをコードする核酸を含むがこれに限定されない、組換えCMVベクターを提供する。このベクターは、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL146/147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない。また、本明細書では、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ベクターであって、少なくとも1つの異種タンパク質抗原をコードする核酸を含み、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL146/147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない組換えHCMVベクターを含むがこれに限定されない、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ベクターも提供する。対象において異種抗原に対する免疫応答を生成する方法等である、この新規の組換えCMVベクターを使用する方法が、さらに開示される。
I.用語
【0040】
特に記載がない限り、技術用語は従来の慣習に従って使用する。
【0041】
本明細書に引用する全ての公報、特許、特許出願、インターネットサイト、及び、受託番号/データベース配列(ポリヌクレオチド及びポリペプチドの両配列を含む)は、あたかも個々の独立の公報、特許、特許出願、インターネットサイト、又は、受託番号/データベース配列が参照によって組み入れられるようにして具体的にそれぞれが記載されているかのようであるのと同等に、本明細書においてその全体を参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【0042】
本明細書に記載のものと類似又は均等である方法及び材料を、この開示の実施又は試験に用いることができるが、好適な方法及び材料について以下に記載する。さらに、材料、方法及び実施例は、単なる説明であり、限定することを意図するものではない。この開示の様々な実施形態の検討を促進するために、以下に特定の用語を説明する。
【0043】
抗原:本明細書で用いる場合、「抗原」又は「免疫原」という語は、区別なく用いるものであり、対象において免疫応答を誘導することができるような、典型的にはタンパク質である物質を指す。この語はまた、対象に対して投与されると(直接、又は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列若しくはベクターを対象に投与することによって)、タンパク質がそのタンパク質に対する体液型及び/又は細胞型の免疫応答を誘起することができるという意味では、免疫学的に活性であるタンパク質を指すものでもある。
【0044】
投与:本明細書で用いる場合、「投与」という語は、任意の有効な経路で、外来性抗原を含む効果量のCMVベクターを含む組成物等である試薬を、対象に供給する又は与えることを意味する。例示的な投与経路には、注射(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内及び静脈内等)、経口、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣内、及び、吸入の経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
効果量:本明細書で用いる場合、「効果量」という語は、異種抗原、又は、MHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するトランスフェクションされるCD8+ T細胞を含むCMVベクター等である試薬の量であって、症状若しくは疾患の前兆若しくは徴候を軽減するか取り除く、又は、抗原に対する免疫応答を誘導する等である、所望の応答を生じさせるのに十分である量を指すものである。一部の実施形態においては、「効果量」は、1種若しくは複数種の症状及び/又は障害若しくは疾患のうちいずれかについての根底にある原因を治療(予防を含む)する量である。効果量は、治療効果量であり得、それは特定の疾患若しくは症状の1種又は複数種の前兆又は徴候、例えば感染症、癌若しくは自己免疫疾患に関連した1種又は複数種の前兆又は徴候等が発達するのを防止するような量を含む。
【0046】
microRNA:本明細書で用いる場合、「microRNA」又は「miRNA」という語は、遺伝子発現の制御に関与する、主要なクラスの生体分子を指す。例えばヒトの心臓、肝臓又は脳において、miRNAは、組織の特定又は細胞系列の決定において役割を果たしている。さらに、miRNAは、初期発生、細胞増殖及び細胞死及びアポトーシス、並びに、脂肪代謝を含めた種々のプロセスに影響を与える。大量のmiRNA遺伝子、多様な発現パターン、及び、豊富な潜在的なmiRNA標的は、miRNAが、遺伝子の多様性の重要な源であり得るということの示唆である。
【0047】
成熟miRNAは、典型的に、miRNAに対して相補的である配列を含むmRNAの発現を調節する、18~25ヌクレオチドの非コードRNAである。これら小RNA分子は、mRNAの安定性及び/又は翻訳を調節することによって遺伝子発現を制御することが知られている。例えばmiRNAは、標的mRNAの3’UTRと結合して翻訳を抑制する。miRNAはまた、標的mRNAと結合して、RNAi経路を介して遺伝子抑制を媒介することもできる。miRNAはまた、クロマチン凝縮を引き起こすことによって遺伝子発現を調節することもできる。
【0048】
miRNAは、mRNA転写物上のどこかでmiRNAと直接塩基対を作り相互作用する任意の配列として規定される、miRNA認識配列(MRE)と結合することによって、1つ又は複数の特異的なmRNA分子の翻訳を抑制する。しばしば、MREはmRNAの3’非翻訳領域(UTR)内に存在するが、それはまた、コード配列内又は5’UTR内にも存在し得る。MREは、miRNAに対して完全に相補的である必要はなく、通常、miRNAに対して相補的である2~3の塩基のみを有し、またそれらの相補性の塩基内に1つ又は複数のミスマッチをしばしば含有する。MREは、MREが操作可能に連結されている遺伝子(生体内での増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子等)の翻訳が、RISC等であるmiRNA抑制機序によって抑制されるのに十分であるmiRNAによって結合することが可能である任意の配列とすることができる。
【0049】
変異:本明細書で用いる場合、「変異」という語は、核酸又はポリペプチドの配列内における、正常なコンセンサス配列又は「野生型」配列との何らかの相違を指す。変異体は、変異を含む任意のタンパク質又は核酸配列である。さらに、変異をもつ細胞又は有機体はまた、変異体とも称され得る。
【0050】
コード配列の変異の一部のタイプには、点変異(個々のヌクレオチド又はアミノ酸における相違)、サイレント変異(アミノ酸変化をもたらさないヌクレオチドにおける相違)、欠失(遺伝子のコード配列全体の欠失も含めて、1つ又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸を欠いているという相違)、フレームシフト変異(3で割り切れない数のヌクレオチドの欠失がアミノ酸配列の変更をもたらすような相違が含まれる。アミノ酸内で相違をもたらす変異はまた、アミノ酸置換変異とも称し得る。アミノ酸置換変異は、アミノ酸配列内の特定の位置における、野生型と比べたアミノ酸の変化で説明され得る。
【0051】
ヌクレオチド配列又は核酸配列:「ヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という語は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)配列を指すものであって、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA/RNA複合体、又は、合成核酸を含むがこれらに限定されない。核酸は、一本鎖であり得、又は、一部若しくは完全に二本鎖(二重鎖(duplex))であり得る。二重鎖核酸は、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖であり得る。
【0052】
操作可能に連結:本明細書で「操作可能に連結」という語を用いる場合、第一の核酸配列が、第二の核酸配列に対してそれが影響を及ぼすような形で配置されるとき、第一の核酸配列は、第二の核酸配列に操作可能に連結されているものである。例えば、miRNAがMREに結合することでコード配列の発現が抑制されるものであれば、MREは、それが抑制する該コード配列に操作可能に連結されている。操作可能に連結されたDNA配列同士は、隣接し得るか、又は、それらはある距離を隔てて作用できる。
【0053】
プロモーター:本明細書で用いる場合、「プロモーター」という語は、核酸の転写を支配する複数の核酸制御配列のいずれかを指し得る。典型的には、真核生物プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーター、TATA要素、又は1つ若しくは複数の転写因子によって認識されるその他の特異的なDNA配列の場合等については、転写開始部位近傍に必要な核酸配列を含む。プロモーターによる発現は、エンハンサー要素又はリプレッサー要素によってさらに調節され得る。多数の例のプロモーターが利用可能であり、当業者にとって周知である。特定のポリペプチドをコードする核酸配列に操作可能に連結するプロモーターを含む核酸を、発現ベクターと称し得る。
【0054】
組換え体:本明細書で用いる場合、核酸又はポリペプチドに関連の「組換え体」という語は、天然に生じるものではない配列や、又は、例えば異種抗原を含むCMVベクターである、配列のうちの2以上の異なるように分割されたセグメントを人工的に結合することによって作製される及び/若しくは生体内での増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子に操作可能に連結されたmiRNA応答配列(response element)を付加することによる複製欠損性が作製されている配列を有する組換え体を指す。この人工的な結合はしばしば、化学合成によって、又は、より一般的には遺伝子工学技術等による核酸の単離された配列の人工的な操作によって成し遂げられる。組換えポリペプチドはまた、天然源のポリペプチドではない宿主有機体に移動される組換え核酸(例えば、異種抗原を含むCMVベクターを形成するポリペプチドをコードする核酸)を含む、組換え核酸を用いて作製されたポリペプチドを指すこともできる。
【0055】
複製欠損性:本明細書で用いる場合、「複製欠損性」CMVは、宿主細胞に入ると、ウイルス複製を受けることができないか、そのゲノムを複製するウイルスの能力が有意に制限されることによりウイルス粒子が産生されるか、播種欠損(dissemination-deficient)であるか、又は、伝播欠損(spread-deficient)であるようなウイルスである。例えば、播種欠損である複製欠損性ウイルスは、それらのゲノムを複製することはできるものの、他の細胞を感染させることはできないものであり、これは感染した細胞からウイルス粒子が放出されないこと又は非感染性であるウイルス粒子が放出されることのいずれかの理由によるものである。別の例では、伝播欠損である複製欠損性ウイルスは、それらのゲノムを複製することはでき、また別の細胞を感染させることもでき得るものの、感染した宿主から分泌されず、そのためにウイルスは宿主から宿主へと伝播することができない。一部の実施形態においては、複製欠損性CMVは、ウイルス複製に必須である1つ若しくは複数の遺伝子(「必須遺伝子」)又は最適複製に必要である1つ若しくは複数の遺伝子(「増強性遺伝子(augmenting gene)」)の発現の欠如をもたらす変異を含むCMVである。CMVの必須遺伝子及び増強性遺伝子は、この技術分野で説明されており(特に、米国特許出願公開第2013/0136768号、これは参照により本明細書に組み入れられる)、本明細書において開示される。
【0056】
薬剤的に許容できるキャリア:本明細書で用いる場合、使用における「薬剤的に許容できるキャリア」は、従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E.W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition, 1995には、本明細書で開示する組成物の医薬デリバリーに好適である組成物及び剤形が記載されている。概して、キャリアの性質は、採用される特定の投与形態に依存することとなる。例えば、非経口製剤は通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、ブドウ糖水溶液(aqueous dextrose)、グリセロール等の薬剤的及び生理的に許容できる液体を担体として含む注射用液体を含む。固形組成物(粉剤、錠剤、タブレット剤又はカプセル剤等)では、従来の無毒性固体キャリアとして、例えば医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン又はステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。投与されようとする医薬組成物は、生物学的に中性であるキャリアに加えて、湿潤剤又は乳化剤、防腐剤及びpH緩衝剤等である無毒性の補助物質を少量含有してもよく、例えば酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートである。
【0057】
ポリヌクレオチド:本明細書で用いる場合、「ポリヌクレオチド」という語は、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)のポリマーを指す。ポリヌクレオチドは、4つの塩基、アデニン、シトシン、グアニン及びチミン/ウラシル(ウラシルはRNAで用いられる)から作製されている。核酸からのコード配列は、核酸によってコードされたタンパク質の配列を示している。
【0058】
ポリペプチド:「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「アミノ酸配列」という語は、本明細書において区別なく使用し、あらゆる長さのアミノ酸残基のポリマーを指すものである。当該ポリマーは、直鎖状又は分枝鎖状であり得、改変アミノ酸又はアミノ酸アナログを含み得、またアミノ酸以外の化学部分(chemical moiety)によって中断されていてもよい。これら語はまた、天然に、又は、例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、若しくは、標識若しくは生理活性成分との複合化等であるその他の操作若しくは修飾である介入によって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。
【0059】
配列同一性/類似性:本明細書で用いる場合、2つ以上の核酸配列間若しくは2つ以上のアミノ酸配列間における同一性/類似性は、配列間における同一性又は類似性の点で表現されている。配列同一性は、パーセント同一性で測定され得、割合が高いほど、配列の同一性が高い。配列類似性は、パーセント同一性又はパーセント類似性で測定され得(保存的なアミノ酸置換を考慮に入れる)、割合が高いほど、配列の類似性が高い。有意に高い配列同一性と、互いに同一又は類似である機能も有するポリペプチド又はそのタンパク質ドメイン(例えば、異なる種において同一の機能を果たすタンパク質又はタンパク質の機能若しくはその規模が変わらないタンパク質の変異形態)を、「ホモログ」と称し得る。
【0060】
比較のための配列のアラインメント法は、この技術分野で周知である。様々なプログラムとアラインメントアルゴリズムが、Smith & Waterman, Adv Appl Math 2, 482 (1981);Needleman & Wunsch, J Mol Biol 48, 443 (1970);Pearson & Lipman, Proc Natl Acad Sci USA 85, 2444 (1988);Higgins & Sharp, Gene 73, 237-244 (1988);Higgins & Sharp, CABIOS 5, 151-153 (1989);Corpet et al, Nuc Acids Res 16, 10881-10890 (1988);Huang et al, Computer App Biosci 8, 155-165 (1992)及び、Pearson et al, Meth Mol Bio 24, 307-331 (1994)に記載されている。さらに、Altschul et al, J Mol Biol 215, 403-410 (1990)には、配列アラインメント法及び相同性の算出についての詳細な検討が提示されている。
【0061】
配列解析プログラム、blastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxに関連して用いられる、NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(上記のAltschul et al, (1990))が、国立生物工学情報センター(NCBI、米国国立医学図書館、メリーランド州20894、ベセスダ、第38Aビル、部屋番号8N805)を含めた複数の提供元及びインターネット上で利用可能である。さらなる情報は、NCBIウェブサイトに見ることができる。
【0062】
BLASTNを用いて核酸配列を比較し、一方、BLASTPを用いてアミノ酸配列を比較する。比較した2つの配列が相同性を共有していれば、その場合指定の出力ファイルでは、並列された配列として相同であるそれらの領域が提示されることとなる。比較した2つの配列が相同性を共有していなければ、その場合指定の出力ファイルでは、並列された配列は提示されない。
【0063】
並列されると、両配列における同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基が存在する位置の数を計数することにより、一致数が決定される。パーセント配列同一性は、一致数を、同定された配列内に示される配列の長さ又は関節単位での長さ(articulated length)(例えば、同定された配列内に示される配列のうちの連続する100個のヌクレオチド又はアミノ酸残基)のいずれかで除算した後、得られた値に100を乗算して求める。例えば、1154個のヌクレオチドを有する試験配列と並列したときに一致数が1166である核酸配列は、該試験配列に対して75.0パーセントが同一である(1166÷1554×100=75.0)。パーセント配列同一性の値は、小数点第1位に丸める。例えば、75.11、75.12、75.13及び75.14は四捨五入で切り捨てて75.1になり、一方、75.15、75.16、75.17、75.18及び75.19は切り上げて75.2になる。長さの値は、常に整数であることとなる。別の例では、以下の通り同定された配列のうちの連続する20個のヌクレオチドと並列する、20ヌクレオチド領域を含有する標的配列は、その同定された配列に対して75パーセント配列同一性を共有する領域を含有する(すなわち、15÷20×100=75)。
【0064】
約30個のアミノ酸より長いアミノ酸配列同士の比較では、デフォルトパラメータ(ギャップ存在コストを11、残基当たりのギャップコストを1)に設定されたデフォルトのBLOSUM62行列を用いて、Blast 2配列関数を採用する。ホモログは典型的に、nrデータベース、Swiss-Protデータベース及びPatented Sequence Database等のデータベースと共に、NCBI Basic Blast 2.0でギャップありのblastpを用いることにより、あるアミノ酸配列との完全長アラインメントについて計数された、少なくとも70%の配列同一性を所有することを特徴とする。blastnプログラムを用いて検索されるクエリは、DUSTでフィルタリングされる(Hancock & Armstrong, Comput Appl Biosci 10, 67-70 (1994))。他のプログラムではSEGが用いられる。さらに、手動アラインメントを行ってもよい。さらに高い類似性をもつタンパク質は、この方法で評価すると高いパーセント同一性を示すこととなり、例えば、あるタンパク質に対して少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を示す。
【0065】
短いペプチド(約30個未満のアミノ酸)を並列する場合には、アラインメントは、Blast 2配列関数を用いて、デフォルトパラメータ(オープンギャップペナルティを9、拡張ギャップペナルティを1)に設定されるPAM30行列を採用して行われる。参照配列に対してさらに高い類似性をもつタンパク質は、この方法で評価すると高いパーセント同一性を示すこととなり、例えば、あるタンパク質に対して少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を示す。全配列未満の配列が配列同一性に関して比較される場合、ホモログは典型的に、10~20個のアミノ酸という短い範囲について少なくとも75%の配列同一性を所有することとなり、参照配列に対するそれらの同一性に応じて、少なくとも85%、90%、95%又は98%の配列同一性を所有し得る。こうした短い範囲についての配列同一性を決定する方法は、NCBIウェブサイトに記載されている。
【0066】
2つの核酸分子が密接に関連していることを示す指標の一つに、上記したように、2つの分子がストリンジェントな条件下で相互にハイブリダイズするということがある。それにもかかわらず、高い同一性を示さない核酸配列同士は、遺伝子コードの縮重によって、同一の又は類似の(保存された)アミノ酸配列をコードすることができる。この縮重で、核酸配列内で変化が生じ得、実質的に同一のタンパク質を全てがコードする複数の核酸分子を産生し得る。こうした相同する核酸配列は、例えば、あるタンパク質をコードする核酸に対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を所有することができる。
【0067】
対象(subject):本明細書で用いる場合、「対象」という語は、多細胞性の脊椎生体、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方を含むカテゴリを指す。
【0068】
スーパートープ(supertope):本明細書で用いる場合、「スーパートープ」又は「スーパートープペプチド」という語は、MHCハプロタイプに関係なく、すなわち所与のMHC-I又はMHC-IIの対立遺伝子が存在しても存在しなくても、集団のうち90%超でT細胞により認識されるエピトープ又はペプチドを指す。
【0069】
治療:本明細書で用いる場合、「治療」という語は、疾患の前兆若しくは徴候又は病状を改善する介入を指す。本明細書で用いる場合、疾患、病状又は徴候に関連する「治療」、「治療する」及び「治療すること」という語はまた、治療の観察可能である任意の有益な効果を指す。有益な効果は、例えば、感受性が強い対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患の一部又は全ての臨床症状についての重症度の軽減、疾患の進行の遅れ、疾患の再発数の減少、対象の健康全般若しくは幸福度の改善によって、又は、特定の疾患に対して特異的であるこの技術分野で周知の他のパラメータによって証明され得る。予防的治療は、疾患の前兆を呈していない又はごく初期の前兆を呈する対象に対して、病態が進行するリスクを軽減する目的で施される治療である。治療的治療は、疾患の前兆及び徴候が現れた後の対象に施される治療である。
II.組換えCMVベクターとその使用方法
【0070】
本明細書においては、有機体を繰り返し感染させることができるヒト又は動物のサイトメガロウイルス(CMV)ベクターを開示する。CMVベクターは、異種タンパク質抗原をコードし、また活性UL128、UL130、UL146及びUL147タンパク質の発現を欠く、核酸配列を含む。ベクターは、活性UL40、US27及びUS28遺伝子を含有する。一部の実施形態においては、CMVベクターは、ヒトCMV(HCMV)ベクター、カニクイザルCMV(CyCMV)ベクター又はアカゲザルCMV(RhCMV)ベクターである。
【0071】
また、本明細書においては、上記した修飾の全てを含み、また内皮細胞によって発現されるmiRNAの存在下において発現を抑制するmiRNA認識配列(MRE)の役割を果たす核酸配列をさらに含むCMVベクターも開示する。内皮細胞によって発現されるこうしたmiRNAの例としては、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、miR-296及びmiR-328が挙げられる(Wu F, Yang Z, Li G. Role of specific microRNAs for endothelial function and angiogenesis. Biochemical and biophysical research communications. 2009;386(4):549. doi:10.1016/j.bbrc.2009.06.075.);参照により本明細書に組み入れられる)。MREは、生体内でのCMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子に操作可能に連結している。こうした遺伝子の例としては、IE2及びUL79、又はそのオーソログが挙げられる。1、2、3又はそれ以上のCMV遺伝子はそれぞれ、ベクター内の1、2、3又はそれ以上のMREに操作可能に連結され得る。
【0072】
一部の実施形態においては、このMREは、内皮細胞によって発現されるmiRNAの存在下において発現を抑制する任意のmiRNA認識配列であり得る。一部の実施形態においては、ベクターのMREは、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、miR-296及びmiR-328のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、ベクターのMREは、miR-126-3p(配列番号1)の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、ベクターのMREは、配列番号2の配列を含む。
【0073】
一部の実施形態においては、本明細書で開示するCMVベクターは、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制する第一のMREと、骨髄細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制する第二のMREとを含む。一部の実施形態においては、第一のMREは、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、及びmiR-296、及びmiR-328のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、第一のMREは、miR-126-3p(配列番号1)の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、ベクターの第一のMREは、配列番号2の配列を含む。一部の実施形態においては、第二のMREは、miR-142-3p、miR-223、miR-27a、miR-652、miR-155、miR146a、miR-132、miR-21及びmiR-125のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、第二のMREは、miR-142-3p(配列番号3)の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、ベクターの第二のMREは、配列番号4の配列を含む。miR-142-3pの存在下において発現を抑制するMREを含むCMVベクターは、例えば国際公開第2017/087921号に開示されており、その全体を参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【0074】
こうしたMREは、miRNAの正確な相補体であり得る。あるいは、他の配列を、所与のmiRNAに対するMREとして用いてもよい。例えば、MREは配列から予測され得る。一例では、miRNAは、ウェブサイトmicroRNA.org(www.microrna.org)で検索することができる。そして、miRNAのmRNA標的の一覧が列記されることとなる。例えば、以下のページ:http://www.microrna.org/microrna/getTargets.do?matureName=hsa-miR-142-3p&organism=9606は、2015年10月6日に最終アクセスを行ったものであるが、miR-142-3pの推定のmRNA標的が列記される。このページに列記された各標的については、「アラインメント詳細(alignment details)」にアクセスでき、推定のMREにアクセスできる。一部の実施形態においては、ベクターのMREは、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、miR-296及びmiR-328のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、ベクターのMREは、miR-126-3p(配列番号1)の存在下において発現を抑制する。さらなる実施形態においては、ベクターのMREは、miR-142-3p(配列番号3)の存在下において発現を抑制し得る。一部の実施形態においては、ベクターのMREは、配列番号2のヌクレオチド配列を有する。さらなる実施形態においては、ベクターのMREは、配列番号4のヌクレオチド配列を有する。
【0075】
当業者は、文献から、内皮細胞又はマクロファージ等の骨髄細胞において発現されたmiRNAの存在下において抑制することを誘導することが予測される、検証された、推定の又は変異したMRE配列を選択することができる。一例としては、上記で参照したウェブサイトがある。当業者はその後、それによってレポーター遺伝子(蛍光タンパク質、酵素又は他のレポーター遺伝子等)が、構成的活性型プロモーター又は細胞特異プロモーター等のプロモーターによってなされる発現を有するような発現コンストラクトを獲得することができる。MRE配列はその後、この発現コンストラクト内に導入され得る。発現コンストラクトは、適切な細胞内にトランスフェクトされ得、該細胞は、目的のmiRNAでトランスフェクトされる。レポーター遺伝子の発現がないということは、MREがmiRNAの存在下において遺伝子発現を抑制しているということを示唆している。
【0076】
病原体特異抗原は、任意のヒト病原体又は動物病原体から誘導できる。病原体は、ウイルス病原体であり得、抗原は、該ウイルス病原体由来のタンパク質であり得る。ウイルスには、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、カポジ肉腫ヘルペスウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトパピローマウイルス、狂犬病ウイルス、風疹ウイルス、ヒトボカウイルス(Human bocavirus)、及びパルボウイルスB19が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
病原体は、細菌性病原体であり得、また抗原は、該細菌性病原体由来のタンパク質であり得る。病原菌には、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ライム病菌(Borrelia burgdorferi)、ウシ流産菌(brucella abortus)、イヌ流産菌(Brucella canis)、ヤギ流産菌(Brucella melitensis)、ブタ流産菌(Brucella suis)、カンピロバクタージェジュニ菌(Campylobacter jejuni)、クラミジア肺炎病原体(Chlamydia pneumoniae)、トラコーマ病原体(Chlamydia trachomatis)、オウム病クラミドフィラ(Chlamydophila psittaci)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、フェシウム菌(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、らい菌(Mycobacterium leprae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイクロバクテリア・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、斑点熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ソンネ菌(Shigella sonnei)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)、B群溶血性レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、コレラ菌(Vibrio cholera)及びペスト菌(Yersinia pestis)が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
病原体は、寄生体であり得、抗原は、該寄生体病原体由来のタンパク質であり得る。寄生体は、アカントアメーバ、バベシア症、バランチジウム症、ブラストシストーシス(Blastocystosis)、コクシジウム(Coccidia)、二核アメーバ症、アメーバ症、ジアルジア症、イソスポーラ症、リーシュマニア症、原発性アメーバ髄膜脳炎(PAM)、マラリア、リノスポリジウム症、トキソプラズマ症-寄生性肺炎、トリコモナス症、睡眠病及びシャガス病等である、原生動物又は疾患を引き起こす原生動物であり得るが、これらに限定されない。寄生体は、鉤虫症/鉤虫、アニサキス症、回虫-寄生性肺炎、回虫-ベイリスアスカリス症、サナダムシ-条虫症、肝吸虫症、Dioctophyme renalis感染症、裂頭条虫症-サナダムシ、ギニア虫-メジナ虫症、エキノコックス症-サナダムシ、蟯虫-蟯虫症、肝吸虫-肝蛭症、肥大吸虫症-腸管寄生吸虫、顎口虫症、膜様条虫症、ロア糸状虫症、カラバル腫脹、マンソネラ症、フィラリア症、横川吸虫症-腸管寄生吸虫、河川盲目症、中国肝吸虫、肺吸虫症、肺吸虫、住血吸虫症-ビルハルツ住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫症又は巻貝熱(全ての型)、腸性血吸虫症、尿路住血吸虫症、日本住血吸虫による住血吸虫症、アジア腸性血吸虫症、弧虫症、糞線虫症-寄生性肺炎、無鉤条虫、有鉤条虫、トキソカラ症、旋毛虫症、セルカリア皮膚炎(Swimmer's itch)、鞭虫、及び、象皮病、リンパ系フィラリア症等である、蠕虫有機体若しくは虫であり得るか又は蠕虫有機体若しくは虫によって引き起こされる疾患であり得るが、これらに限定されない。寄生体は、寄生虫、ハルザン症候群、ハエ幼虫症、スナノミ、ヒトヒフバエ(Human Botfly)及びカンディルー等であるがこれらに限定されない、有機体又は有機体によって引き起こされる疾患であり得る。寄生体は、南京虫、アタマジラミ-シラミ症、コロモジラミ-シラミ症、ケジラミ-シラミ症、ニキビダニ-毛包虫症、疥癬、らせん虫及びコクリオミイヤ属等であるがこれらに限定されない、外寄生生物又は外寄生生物によって引き起こされる疾患であり得る。
【0079】
抗原は、癌由来のタンパク質であり得る。本明細書で用いる場合、癌(Cancer)は、白血病、リンパ腫、肉腫及び固形腫瘍由来の癌を含む。癌には、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、小児小脳又は小児大脳の星細胞腫、基底細胞癌、肝外胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹部神経膠腫、脳腫瘍、小脳星細胞腫の脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫の脳腫瘍、上衣腫の脳腫瘍、髄芽腫の脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍の脳腫瘍、視路及び視床下部膠腫の脳腫瘍、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、小児のカルチノイド腫瘍、消化管のカルチノイド腫瘍、原発不明癌腫、原発性の中枢神経リンパ腫、小児の小脳星細胞腫、小児の大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、大腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、Ewing肉腫ファミリー腫瘍、小児の頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼球内黒色腫の眼癌、網膜芽細胞腫の眼癌、胆嚢癌、胃(胃部)癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、頭蓋外、性腺外又は卵巣の胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹の神経膠腫、小児大脳星細胞腫の神経膠腫、小児視経路及び視床下部の神経膠腫、胃カルチノイド、有毛細胞白血病、頭頚部癌、心臓の癌(Heart cancer)、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、小児の視床下部及び視経路神経膠腫、眼球内黒色腫、島細胞癌(膵島)、カポジ肉腫、腎癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性の白血病(急性リンパ性白血病とも称する)、急性骨髄性の白血病(急性骨髄性白血病とも称する)、慢性リンパ性の白血病(慢性リンパ性白血病とも称する)、慢性骨髄性の白血病(慢性骨髄性白血病とも称する)、毛様細胞の白血病、口唇及び口腔癌、肝癌(原発性)、非小細胞の肺癌、小細胞の肺癌、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(ホジキンを除く、古い分類の全てのリンパ腫)、原発性中枢神経系リンパ腫、致死性疾患マーカスホイットル(Marcus Whittle)、Waldenstrim型マクログロブリン血症、骨/骨肉腫の悪性線維性組織球腫、小児の髄芽腫、黒色腫、眼内(目)の黒色腫、メルケル細胞癌、成人の悪性中皮腫、小児の中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、口腔癌、小児の多発性内分泌腫症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性の骨髄性白血病、成人の急性骨髄性白血病、小児の急性骨髄性白血病、多発性の骨髄腫(骨髄の癌)、慢性の骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌(表面上皮-間質性腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、島細胞の膵癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚腫、小児の松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎癌)、腎盂及び尿管の移行細胞癌、網膜芽細胞腫、小児の横紋筋肉腫、唾液腺癌、Ewingファミリー腫瘍性肉腫、カポジ肉腫、軟部組織の肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫性)、皮膚癌(黒色腫性)、メルケル細胞の皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌-皮膚癌(非黒色腫性)参照、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、胃癌、小児のテント上原始神経外胚葉性腫瘍、皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉腫とセザリー症候群)、精巣腫瘍、咽頭癌、小児の胸腺腫、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、小児の甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、妊娠性絨毛腫瘍、成人の原発部位不明の癌、小児の原発部位不明の癌、腎盂及び尿管移行細胞癌、尿道癌、子宮内膜の子宮癌、子宮肉腫、膣癌、小児の視経路及び視床下部神経膠腫、外陰癌、Waldenstrm型マクログロブリン血症及びウィルムス腫瘍(腎癌)を含むが、これらに限定されない。
【0080】
ベクターは、UL128、UL130、UL146もしくはUL147又はそのホモログ又はそのオーソログ(他の種を感染させるCMVのホモログ遺伝子)をコードする核酸配列内に変異が存在することに起因して、活性UL128、UL130、U146、UL147タンパク質を発現しない。この変異は、活性タンパク質の発現の欠如をもたらすものであれば任意の変異であってよい。こうした変異は、点変異、フレームシフト変異、タンパク質をコードする配列のうちの全て未満の欠失(トランケーション変異)若しくはタンパク質をコードする核酸配列のうちの全ての欠失、又はその他の変異を含み得る。
【0081】
さらなる例においては、ベクターは、UL128、UL130又はUL146又はUL147タンパク質の発現を阻害するアンチセンス又はRNAiの配列(siRNA又はmiRNA)を含む、ベクター内における核酸配列が存在することに起因して、活性UL128、UL130、UL146又はUL147タンパク質を発現しない。変異並びに/又はアンチセンス及び/若しくはRNAiを任意の組み合わせで用いて、活性UL128、UL130、UL146又はUL147を欠いているCMVベクターを生成することができる。
【0082】
CMVベクターは、この技術分野で公知であるさらなる不活性化変異を含み、不活性化US11変異又は不活性化UL82(pp71)変異又はその他の不活性化変異等である、様々な免疫応答をもたらし得る。CMVベクターはまた、生体内におけるウイルス播種(viral dissemination)(すなわち、細胞から細胞への伝播)に必須又は増強している、この技術分野で公知のウイルスタンパク質をコードする1つ又は複数のウイルス遺伝子において少なくとも1つの不活性化変異を含んでもよい。こうした不活性化変異は、点変異、フレームシフト変異、トランケーション変異又はウイルスタンパク質をコードする核酸配列のうちの全ての欠如の結果として生じ得る。不活性化変異は、最終的に機能の低下又はウイルスタンパク質の機能を完全な喪失につながる、ウイルス遺伝子内の任意の変異を含む。一部の実施形態においては、CMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質又はそのオーソログを発現しない。一部の実施形態においては、CMVベクターは、活性US11タンパク質又はそのオーソログを発現しない。一部の実施形態においては、CMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質もしくは活性US11タンパク質、又はそのオーソログを発現しない。
【0083】
また本明細書においては、対象において異種抗原に対するMHC-E拘束性CD8+ T細胞応答を生成する方法も開示する。この方法は、対象に対してCMVベクターを効果量で投与することを伴う。一実施形態においては、CMVベクターは、活性UL128、UL130、UL146又はUL147タンパク質を発現しない少なくとも1つの異種抗原及び核酸配列をコードする核酸配列を有することを特徴とする。このベクターによって誘発されるCD8+ T細胞応答は、MHC-Eによって提示されるエピトープに対するCD8+ T細胞の少なくとも10%であることを特徴とする。さらなる例においては、このCD8+ T細胞のうちの少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも95%が、MHC-Eによって拘束されている。一部の実施形態においては、MHC-Eによって拘束されるCD8+ T細胞が、このベクターで免疫した他の対象のうちの少なくとも90%で共有されるペプチドを認識する。一部の実施形態においては、CD8+ T細胞は、MHC-Eによって提示されるスーパートープに対するものである。一部の実施形態においては、この方法はまた、クラスIIのMHCによって拘束されるCD8+ T細胞を生成し得る。一部の実施形態においては、ベクターによって誘発されるCD8+ T細胞の少なくとも10%が、クラスIIのMHC又はそのオーソログによって拘束されている。一部の実施形態においては、ベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも75%が、クラスIIのMHC又はそのオーソログによって拘束されている。一部の実施形態においては、クラスIIのMHCによって拘束されるCD8+ T細胞が、ベクターで免疫した他の対象のうちの少なくとも90%で共有されるペプチドを認識する。一部の実施形態においては、CD8+ T細胞は、クラスIIのMHCによって提示されるスーパートープに対するものである。
【0084】
第二の実施形態においては、CMVベクターは、必須CMV遺伝子IE2及びUL79又はそのオーソログに操作可能に連結されているmiRNA認識配列(MRE)としての役割を果たす核酸配列を有することを特徴とする。一部の実施形態においては、MREは、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、MREは、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、miR-296及びmiR-328のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、MREは、miR-126-3pの存在下において発現を抑制する。ベクターはまた、少なくとも1つの異種抗原を含有し、活性UL128、UL130、UL146又はUL147タンパク質を発現しない。このベクターはまた、活性UL40、US28及びUS27を含有する。このベクターにより誘発されるCD8+ T細胞応答は、MHC-Eによって提示されるエピトープに対するCD8+ T細胞のうちの少なくとも10%であることを特徴とする。さらなる例においては、CD8+ T細胞のうちの少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも75%が、MHC-Eによって拘束されている。一部の実施形態においては、MHC-Eによって拘束されるCD8+ T細胞の一部は、ベクターで免疫した他の対象のうちの少なくとも90%で共有されるペプチドを認識する。
【0085】
一部の実施形態においては、この方法は、CMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞からのCD8+ T細胞受容体を同定することをさらに含むものであって、該CD8+ T細胞受容体がMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するものである。一部の実施形態においては、CD8+ T受容体が、RNA又はDNA配列決定によって同定される。
【0086】
第三の実施形態においては、CMVベクターは、必須CMV遺伝子IE2及びUL79又はそのオーソログに操作可能に連結するMREの役割を果たす2つの核酸配列を有することを特徴とする。一部の実施形態においては、第一のMREが、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制し、第二のMREが、骨髄細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、第一のMREは、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、miR-296及びmiR-328のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、第一のMREは、miR-126-3pの存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、第二のMREは、miR-142-3p、miR-223、miR-27a、miR-652、miR-155、miR146a、miR-132、miR-21及びmiR-125のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制する。一部の実施形態においては、第二のMREは、miR-142-3pの存在下において発現を抑制する。このベクターはまた、少なくとも1つの異種抗原を含有し、活性UL128、UL130、UL146又はUL147タンパク質を発現しない。このベクターはまた、活性UL40、US28及びUS27を含有する。このベクターによって誘発されるCD8+ T細胞応答は、MHCクラスIaによって提示されるエピトープに対するCD8+ T細胞のうちの少なくとも50%であることを特徴とする。
【0087】
一部の実施形態においては、この方法は、CMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞からのCD8+ T細胞受容体を同定することをさらに含むものであって、該CD8+ T細胞受容体がMHCクラスI/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するものである。一部の実施形態においては、CD8+ T受容体が、RNA又はDNA配列決定によって同定される。
【0088】
また本明細書においては、MHC-E-ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞を生成する方法も開示する。この方法は、第一の対象(又は動物)に対してCMVベクターを効果量で投与して、MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞の集合を生成することを伴う。CMVベクターは、少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列を含むが、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL146タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない。一部の実施形態においては、CMVベクターは、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するMREを含む第二の核酸配列をさらに含む。異種抗原は、病原体特異抗原、腫瘍抗原、組織特異抗原又は宿主の自己抗原を含む任意の抗原であり得る。一部の実施形態においては、宿主の自己抗原は、T細胞受容体又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原である。この方法は、CD8+ T細胞の集合からの第一のCD8+ T細胞受容体を同定することをさらに含み、該第一のCD8+ T細胞受容体がMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するものである。一部の実施形態においては、第一のCD8+ T細胞受容体は、DNA又はRNA配列決定によって同定される。一部の実施形態においては、この方法は、ある発現ベクターで、1つ又は複数のCD8+ T細胞をトランスフェクションすることを含み得るものであって、該発現ベクターが第二のCD8+ T細胞受容体をコードする核酸配列と、T細胞受容体をコードする核酸配列に操作可能に連結されたプロモーターとを含み、第二のCD8+ T細胞受容体が、第一のCD8+ T細胞受容体のCDR3α及びCDR3βを含み、それによってMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する1つ又は複数のトランスフェクションされたCD8+ T細胞を生成する。発現ベクターでトランスフェクションするための1つ又は複数のCD8+ T細胞は、第一の対象又は第二の対象から単離され得る。一部の実施形態においては、この方法は、1つ又は複数のトランスフェクションされたT細胞を第一又は第二の対象に投与して、例えば癌である疾患、病原性感染、又は、自己免疫疾患若しくは自己免疫障害を治療することをさらに含み得る。一部の実施形態においては、この方法は、1つ又は複数のトランスフェクションされたT細胞を第一又は第二の対象に投与して、組織特異抗原又は宿主の自己抗原に対する自己免疫応答を誘導することをさらに含み得る。
【0089】
また、以下の工程を含む方法によって調製されるMHC-E-ペプチド複合体を認識するトランスフェクションされたCD8+ T細胞も開示するものであって、該方法は、(1)第一の対象に対して、CMVベクターを効果量で投与して、MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞の集合を生成する工程と、(2)CD8+ T細胞の集合からの第一のCD8+ T細胞受容体を同定する工程であって、該第一のCD8+ T細胞受容体がMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するものである工程と、(3)第一の対象又は第二の対象から、1つ又は複数のCD8+ T細胞を単離する工程と、(4)ある発現ベクターで、第一若しくは第二の対象から単離された1つ又は複数のCD8+ T細胞をトランスフェクションし、それによってMHC-E-ペプチド複合体を認識するトランスフェクションされたT細胞を作製する工程とを含む。CMVベクターは、少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列を含むが、活性UL128タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL130タンパク質若しくはそのオーソログ、活性UL146タンパク質若しくはそのオーソログ、又は、活性UL147タンパク質若しくはそのオーソログを発現しない。一部の実施形態においては、CMVベクターは、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するMREを含む第二の核酸配列をさらに含む。発現ベクターは、第二のCD8+ T細胞受容体をコードする核酸配列と、第二のCD8+ T細胞受容体をコードする該核酸配列に操作可能に連結するプロモーターとを含むものであって、第二のCD8+ T細胞受容体が、第一のCD8+ T細胞受容体のCDR3α及びCDR3βを含む。異種抗原は、病原体特異抗原、組織特異抗原、宿主の自己抗原又は腫瘍抗原を含む任意の抗原であり得る。一部の実施形態においては、第一のCD8+ T細胞受容体が、RNA又はDNA配列決定によって同定される。また本明細書においては、例えば癌である疾患、病原性感染、又は、自己免疫疾患若しくは自己免疫障害を治療する方法も開示するものであって、該方法は、MHC-E-ペプチド複合体を認識するトランスフェクションされたT細胞を、第一又は第二の対象に投与することを含む。また本明細書においては、宿主の自己抗原又は組織特異抗原に対する自己免疫応答を誘導する方法も開示するものであって、該方法は、MHC-E-ペプチド複合体を認識するトランスフェクションされたT細胞を、第一又は第二の対象に投与することを含む。
【0090】
さらなる例においては、方法は、第二のCMVベクターであって、第二の異種抗原をコードする核酸配列を含む該第二のCMVベクターを、対象に効果量で投与することを伴う。この第二のベクターは、活性UL128若しくはUL130タンパク質及び/又は活性UL146若しくは147タンパク質を伴うCMVベクターを含む、任意のCMVベクターであり得る。第二のCMVベクターは、第二の異種抗原を含み得る。第二の異種抗原は、第一のCMVベクターにおける異種抗原と同一である異種抗原を含む、任意の異種抗原であり得る。第二のCMVベクターは、第一のCMVベクターの投与の前、該投与と同時又は該投与の後を含む、第一のCMVベクターの投与と相対的な任意の時間に投与され得る。これは、第一のベクターの、任意の数の月前若しくは後、任意の数の日前若しくは後、任意の数の時間前若しくは後、任意の数の分前若しくは後、又は、任意の数の秒前若しくは後に、第二のベクターを投与することを含む。
【0091】
ヒト又は動物のCMVベクターは、発現ベクターとして用いられる場合、ヒト等である選択された対象において本質的に非病原性である。一部の実施形態においては、CMVベクターは、選択された対象においてそれらが非病原性である(宿主間で伝播ができない)ように改変されている。
【0092】
異種抗原は、CMV由来ではない任意のタンパク質又はその断片であり得、癌抗原、病原体特異抗原、モデル抗原(リゾチームKLH又は卵白アルブミン)、組織特異抗原、宿主の自己抗原又はその他の抗原を含む。
【0093】
病原体特異抗原は、任意のヒト病原体又は動物病原体に由来し得る。病原体は、ウイルス性病原体、細菌性病原体又は寄生体であり得、また抗原は、該ウイルス性病原体、細菌性病原体又は寄生体に由来するタンパク質であり得る。寄生体は、有機体であり得るか又は有機体によって引き起こされる疾患であり得る。例えば寄生体は、原生動物、疾患を引き起こす原生動物、蠕虫有機体若しくは虫、蠕虫有機体によって引き起こされる疾患、外寄生生物、又は、外寄生生物によって引き起こされる疾患であり得る。
【0094】
抗原は、癌由来のタンパク質であり得る。或る実施形態においては、癌は、白血病又はリンパ腫である。或る実施形態においては、癌は、固形腫瘍由来である。或る実施形態においては、癌には、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌、及び、胚細胞腫瘍が含まれる。
【0095】
抗原は、宿主の自己抗原であり得る。宿主の自己抗原には、T細胞受容体の可変領域又はB細胞受容体の可変領域に由来する抗原が含まれるが、これに限定されない。抗原は、組織特異抗原であり得る。組織特異抗原には、精子抗原又は卵抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書に開示されるCMVベクターは、組換えCMVウイルス若しくはベクター及び薬剤的に許容できるキャリア若しくは希釈剤を含有する、免疫原性、免疫学的又はワクチンの組成物として用いられ得る。組換えCMVウイルス又はベクター(又はその発現産物)を含有する免疫学的な組成物は、局所的又は全身性である、免疫応答を誘発する。この応答は、その必要はないが防御的とすることができる。組換えCMVウイルス又はベクター(又はその発現産物)を含有する免疫原性の組成物は同様に、その必要はないが防御的とすることができる、局所的又は全身性の免疫応答を誘発する。ワクチン組成物は、局所的又は全身性の免疫応答を誘発する。したがって、「免疫学的な組成物(immunological composition)」及び「免疫原性の組成物(immunogenic composition)」という語には、「ワクチン組成物」が含まれる(前者の2つの語は防御組成物であり得るため)。
【0097】
本明細書に開示されるCMVベクターは、組換えCMVウイルス若しくはベクター及び薬剤的に許容できるキャリア若しくは希釈剤を含む、免疫原性、免疫学的又はワクチンの組成物を対象に投与することを含む、対象において免疫学的応答を誘導する方法で用いられ得る。本明細書では、「対象」という語には、非ヒト霊長類及びヒトを含む全ての動物が含まれ、一方、「動物」にはヒトを除く全ての脊椎動物種が含まれ、「脊椎動物」には、動物(animals)(本明細書においては「動物(animal)」を用いる)及びヒトを含む全ての脊椎動物が含まれる。もちろん、「動物」のサブセットは「哺乳動物」であり、それにはこの明細書では、ヒトを除く全ての哺乳動物が含まれるものとする。
【0098】
本明細書に開示されるCMVベクターは、組換えCMVウイルス又はベクター及び薬剤的に許容できるキャリア又は希釈剤を含有する治療組成物において用いられ得る。本明細書に開示されるCMVベクターは、CMVゲノムの必須又は必須でない領域内に、異種抗原をコードする配列を含むDNAを挿入することによって調製され得る。この方法は、CMVゲノムから1又は複数の領域を欠失することをさらに含み得る。この方法は、生体内における組換えを含み得る。そのためこの方法は、CMVゲノムの一部と相同であるDNA配列と隣接している異種DNAを含むドナーDNAの存在下で、細胞に適合する媒地中でCMV DNAで細胞をトランスフェクションし、それによって異種DNAがCMVのゲノム内に導入されて、その後任意に生体内における組換えによって改変されたCMVを回収することを含み得る。この方法はまた、CMV DNAを開裂して開裂されたCMV DNAを獲得することと、開裂されたCMV DNAに対して異種DNAをライゲーションしてCMV-異種DNA複合体を獲得することと、ある細胞をCMV-異種DNA複合体でトランスフェクションすることと、その後任意に異種DNAの存在によって改変されたCMVを回収することとを含み得る。生体内における組換えが包含されることから、この方法はまたCMVとは異質であるポリペプチドをコードする、CMV中で天然に生じないドナーDNAを含むプラスミドを提供するものであるため、該ドナーDNAはCMV DNAのセグメントの範囲内にあり、そうでなければCMVの必須又は必須でない領域からのDNAがドナーDNAに隣接しているように、CMVゲノムの必須又は必須でない領域と共直線性であるものとする。異種DNAは、所望される場合、CMV内に挿入されて、そのDNAの安定な組込み及びその発現が得られるような任意の配向で組換えCMVを生成し得る。
【0099】
組換えCMVベクター内の異種抗原をコードするDNAはまた、プロモーターを含み得る。プロモーターは、ヘルペスウイルス等の任意の源からのものであり得、ヒトCMV(HCMV)、アカゲザルCMV(RhCMV)、マウス等である内在性サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター又は他のCMVプロモーターを含む。プロモーターはまた、EF1αプロモーター等である非ウイルス性プロモーターであり得る。プロモーターは、ウイルスによってもたらされるトランス活性化タンパク質でトランス活性化された領域と、短縮された(truncated)転写的に活性のプロモーターが誘導される完全長プロモーターのうちの最小限のプロモーター領域とを含む、短縮された転写的に活性のプロモーターであり得る。プロモーターは、最小限のプロモーターに相当するDNA配列及び上流調節配列の会合により構成され得る。最小限のプロモーターは、CAP部位にTATAボックスを合わせて構成され(転写の塩基レベルに対して最小限の配列、非調節レベルの転写)、「上流調節配列」は、上流の配列及びエンハンサーの配列から構成される。また、「短縮された(truncated)」という語は、完全長のプロモーターが完全に存在していない、すなわち、プロモーターの一部が除去されていることを示す。短縮されたプロモーターは、MCMV又はHCMV、例えばHCMV-IE又はMCMV-IE等のヘルペスウイルス由来であり得る。塩基対に基づく完全長プロモーターから、最大40%及び最大90%のサイズの減少であり得る。プロモーターはまた、改変された非ウイルスプロモーターであり得る。HCMVプロモーターについては、米国特許第5,168,062号及び第5,385,839号が参考にされる。それからの発現のためにプラスミドDNAでトランスフェクションされる細胞については、Felgner et al. (1994), J. Biol. Chem. 269, 2550‐2561が参考にされる。また種々の伝染病に対する簡易かつ有効なワクチン接種法としてのプラスミドDNAの直接注射については、Science, 259:1745‐49, 1993が参考にされる。したがって、ベクターDNAの直接注射によってこのベクターを用いることができるということは、この開示の範囲内である。
【0100】
また、短縮された転写的に活性なプロモーターを含む組換えウイルス又はプラスミド内に挿入され得る発現カセットも開示する。発現カセットは、機能的な短縮されたポリアデニル化シグナルであって、例えば短縮されているが未だ機能的であるSV40ポリアデニル化シグナルをさらに含み得る。より大きいシグナルを提供するその性質を考慮すると、短縮されたポリアデニル化シグナルが機能的であるということは確かに驚くべきことである。短縮されたポリアデニル化シグナルにより、CMV等である組換えウイルスの挿入サイズの制限の問題が対処される。発現カセットはまた、それが挿入されるウイルスまたは系に対して異種であるDNAを含み、そのDNAは、本明細書に記載するような異種DNAであり得る。
【0101】
ワクチン又は免疫学的な組成物において使用する抗原については、ステッドマン医学大辞典(Stedman’s Medical Dictionary)(1982年第24版、例えばワクチンの定義(ワクチン製剤において用いられる抗原の一覧))も参照されたいものであり、こうした抗原又は該抗原からの目的のエピトープが用いられ得る。異種抗原については、当業者は、過度な実験なしに、アミノ酸及びペプチド又はポリペプチドの相当するDNA配列についての知識からのみならず、特定のアミノ酸の性質(例えば、サイズ、電荷等)及びコドンディクショナリー(codon dictionary)から、異種抗原及びそれに対するコードDNAを選択してよい。
【0102】
抗原のTエピトープを決定するひとつの方法には、エピトープマッピングが関与する。オリゴ-ペプチド合成によって、異種抗原のオーバーラップペプチドが生成する。その後個々のペプチドは、天然タンパク質により誘発される抗原と結合する又はT細胞若しくはB細胞の活性化を誘導するそれらの能力について試験される。このアプローチは、T細胞がMHC分子と複合化している短い直鎖状のペプチドを認識することから、T-細胞エピトープのマッピングに特に有用とされていた。
【0103】
異種抗原に対する免疫応答は、概して、以下のとおり生じる:タンパク質がより小さいペプチドに切断されて、別の細胞表面上に位置する「主要組織適合遺伝子複合体(MHC)」と称される複合体内に存在するときにのみ、T細胞がタンパク質を認識する。MHC複合体には2つのクラス、クラスI及びクラスIIがあり、各クラスは、多数の異なる対立遺伝子でできている。様々な種及び個々の対象は、様々なタイプのMHC複合体対立遺伝子を有し、それらは違ったMHCタイプを有するといわれている。MHCクラスI分子の1つのタイプは、MHC-Eと呼ばれる(ヒトについてはHLA-E、RMについてはMamu-E、マウスについてはQa-1b)。
【0104】
異種抗原をコードする配列を含むDNAは、それ自体が、CMVベクター内において発現を行うプロモーターを含み得るか、又は、該DNAは、異種抗原のコードDNAに制限され得るということに留意されたい。このコンストラクトは、内在性CMVプロモーターに対して、プロモーターに操作可能に連結され、それによって発現されるような配向で配置され得る。また、異種抗原をコードするDNAの複数の複製、又は、強力な若しくは早期のプロモーター若しくは早期及び晩期のプロモーター若しくはそれらの任意の組合せの使用は、発現を増強又は増加させるようにして行われ得る。そのため、異種抗原をコードするDNAは、CMV-内在性プロモーターに対して好適に配置され得、又は、それらプロモーターは、異種抗原をコードするDNAと一緒に別の位置において挿入されるように移動され得る。複数の異種抗原をコードする核酸は、CMVベクター内に包括され得る。
【0105】
また、開示されるCMVベクターを含有する医薬組成物及び他の組成物が開示される。こうした医薬組成物及び他の組成物は、この技術分野において公知である任意の投与手順において用いられるように調製され得る。こうした医薬組成物は、非経口経路(皮内、筋肉内、皮下、静脈内又は他の経路)を経由するものであり得る。投与はまた、例えば経口、経鼻、経外陰部等である、粘膜経路経由であってもよい。
【0106】
開示される医薬組成物は、製剤分野の当業者にとって周知である標準技術に従って調製され得る。こうした組成物は、品種又は種、年齢、性別、体重及び特定の患者の症状、並びに投与経路等の因子を考慮に入れて、医療分野の当業者にとって周知である投与量及び技術によって、投与され得る。組成物は、単独で投与され得るか、又は、他のCMVベクターと若しくは他の免疫学的、抗原性の若しくはワクチン若しくは治療的な組成物と一緒に投与若しくは連続投与され得る。こうした他の組成物には、精製された天然抗原若しくはエピトープ又は組換えCMV若しくは別のベクター系による発現からの抗原若しくはエピトープが含まれ得、上記で述べた因子を考慮して投与される。
【0107】
組成物の例としては、例えば経口、経鼻、経肛門、例えば経膣である経外陰部等の開口への投与用の懸濁液、シロップ剤又はエリキシル剤等の液状製剤、及び、滅菌懸濁液又は乳濁液等の非経口、皮下、皮内、筋肉内若しくは静脈内投与(例えば、注射投与)用の製剤が挙げられる。こうした組成物においては、組換え体が、好適なキャリア、希釈剤又は滅菌水、生理食塩水、グルコース等の賦形剤と混合され得る。
【0108】
抗原性、免疫学的な又はワクチンの組成物は典型的に、アジュバントと、所望の応答を誘発する量のCMVベクター又は発現産物とを含有し得る。ヒトへの用途では、ミョウバン(alum)(リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウム)が典型的なアジュバントである。試験及び動物への用途において用いられる、サポニン及びその精製された成分Quil A、完全フロイントアジュバント並びに他のアジュバントは、毒性を有し、ヒトワクチンでの使用にはその可能性が制限される。Goodman‐Snitkoff et al., J. Immunol. 147:410‐415 (1991)に記載されるような、ムラミルジペプチド、モノホスホリルリピドA、リン脂質複合体等の化学的に定義された調製、Miller et al., J. Exp. Med. 176:1739‐1744 (1992)に記載されるようなプロテオリポソーム内のタンパク質のカプセル化、及び、ノバソーム(Novasome)リピド小胞(ニューハンプシャー州ナシュアのMicro Vescular Systems社)等のリピド小胞内のタンパク質のカプセル化が用いられ得る。
【0109】
組成物は、非経口的(例えば、筋肉内、皮内又は皮下)投与又は開口への投与であって、例えば舌下(例えば経口)、胃内、口腔内や、肛門内、膣内等を含む粘膜への投与により免疫化するための単一の投薬形態に包装されていてもよい。そしてまた、効果投薬量及び投与経路は、組成物の性質、発現産物の性質、組換えCMVを直接用いる場合には発現レベル、ならびに、宿主の品種又は種、年齢、性別、体重、状態及び性質等の公知の因子のみならず、LD50、及び公知であるが過度の実験を必要としない他のスクリーニング手順によって決定される。発現産物の投薬量は、数マイクログラムから数百マイクログラムの範囲であり得、例えば、5~500μgであり得る。CMVベクターは、任意の好適な量で投与されて、これら投薬量レベルにおいて発現が達成され得る。非限定的な例としては、CMVベクターが、少なくとも102pfuの量で投与され得、したがってCMVベクターは、少なくともこの量で又は約102pfuから約107pfuの範囲で投与され得る。他の好適なキャリア又は希釈剤は、防腐剤を含む若しくは含まない、水又は緩衝食塩液であり得る。CMVベクターは、投与時に再懸濁するように凍結乾燥されていてもよく、又は、溶液状態であってもよい。「約」は、規定された値の1%、5%、10%又は20%の範囲内を意味し得る。
【0110】
本開示のタンパク質及びそれらをコードする核酸は、本明細書において図示及び記載されているものそのものである配列とは異なり得るということを理解されたい。すなわち、この開示は、配列がこの開示の方法に従って機能する限りにおいて、示している配列に対して、欠失、付加、短縮及び置換が考慮される。この点について、置換は概して本質的に保存的であることとなり、すなわちそれら置換はアミノ酸のファミリー内で起こるものである。例えば、アミノ酸は概して、4つのファミリー、(1)酸性-アスパラギン酸及びグルタミン酸、(2)塩基性-リシン、アルギニン、ヒスチジン、(3)非極性-アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、及び、(4)無電荷の極性-グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、及びチロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、芳香族アミノ酸に分類されることもある。単離される、ロイシンのイソロイシン若しくはバリンでの置換若しくはその逆の置換、アスパラギン酸のグルタミン酸との置換若しくはその逆の置換、トレオニンのセリンとの置換若しくはその逆の置換、又は、あるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸との保存的な置換は、生物活性に大きな影響を及ぼすこととならないということは、合理的に予測できることである。したがって、記載されるタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するが、タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさないマイナーなアミノ酸置換を所有するタンパク質が、この開示の範囲である。
【0111】
本開示の核酸配列は、コドン最適化され得るものであり、例えばヒト細胞での使用のためにコドンが最適化され得る。例えば、任意のウイルス配列又は細菌性配列がそのように変更され得る。Andre et al., J. Virol. 72:1497‐1503, 1998に記載されているように、HIV及び他のレンチウイルスを含む多くのウイルスが、大量のレアコドンを使用して、これらコドンを所望の対象において共通に使用されるコドンに対応するように変更することによって、異種抗原の発現の増加が達成できる。
【0112】
機能的に及び/又は抗原的に同等であるCMVベクターの変異体及び誘導体をコードする核酸配列並びにそれに含まれる糖タンパク質が、考慮される。これら機能的に同等である変異体、誘導体及び断片は、抗原活性を保持する能力を示す。例えば、コードされたアミノ酸配列を変えることがないDNA配列における変化のみならず、アミノ酸残基の保存的置換、1個又は数個のアミノ酸の欠失若しくは付加、並びにアミノ酸アナログによるアミノ酸残基の置換をもたらす変化は、コードされたポリペプチドの性質に有意に影響を及ぼすことのないものである。保存的なアミノ酸置換は、グリシン/アラニン、バリン/イソロイシン/ロイシン、アスパラギン/グルタミン、アスパラギン酸/グルタミン酸、セリン/トレオニン/メチオニン、リシン/アルギニン及びフェニルアラニン/チロシン/トリプトファンである。一実施形態においては、変異体は、目的の抗原、エピトープ、免疫原、ペプチド又はポリペプチドに対して少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の相同性又は同一性を有する。
【0113】
配列同一性又は相同性は、配列ギャップを最小化しながら、オーバーラップ及び一致を最大化するようにして並列したときに配列同士を比較することによって決定される。特に、配列同一性は、複数の数学アルゴリズムのうちのいずれかを用いることで決定してもよい。2つの配列の比較に用いる数学アルゴリズムの非限定的な例には、Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990; 87: 2264‐2268のアルゴリズムがあり、Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993;90: 5873‐5877として修正されている。
【0114】
配列の比較に用いる数学アルゴリズムの別の例には、Myers & Miller, CABIOS 1988;4: 11‐17のアルゴリズムがある。こうしたアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを用いる場合、PAM120加重残基表(PAM120 weight residue table)と、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4とを用いることができる。局所的な配列類似性の領域及びアライメントを同定するためのさらに別の有用なアルゴリズムは、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988; 85: 2444‐2448に記載されているFASTAアルゴリズムである。
【0115】
本開示による使用に有利なものには、WU-BLAST(ワシントン大学BLAST)バージョン2.0ソフトウェアがある。WU-BLASTバージョン2.0の、いくつかのUNIX(登録商標)プラットフォームで実行可能なプログラムは、ftp://blast.wustl.edu/blast/executablesよりダウンロードできる。このプログラムは、WU-BLASTバージョン1.4に基づくものであり、そしてそれは、パブリックドメインNCBI-BLASTバージョン1.4(Altschul & Gish, 1996, Local alignment statistics, Doolittle ed., Methods in Enzymology 266: 460‐480;Altschul et al., Journal of Molecular Biology 1990; 215: 403‐410;Gish & States, 1993; Nature Genetics 3: 266‐272;Karlin & Altschul, 1993; Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873‐5877;その全てが参照により本明細書に組み入れられる)に基づくものである。
【0116】
この開示の様々な組換えヌクレオチド配列並びに抗体及び/又は抗原は、標準の組換えDNA及びクローニングの技術を用いて作製される。こうした技術は、当業者にとって周知である。例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(Sambrookら、1989年)を参照されたい。
【0117】
本開示のヌクレオチド配列は、「ベクター」内に挿入され得る。「ベクター」という語は当業者によって広く使用及び理解されるものであり、本明細書で用いる場合、「ベクター」という語は、当業者にとっての意味と一致して用いられる。例えば、「ベクター」という語は、ある環境から別の環境への核酸分子の移動を可能にさせる若しくは促す、又は、核酸分子の操作を可能にさせる若しくは促すような担体を指すために、当業者によって通常用いられる。
【0118】
本開示の、ウイルスの発現を可能にさせる任意のベクターを、本開示に従って用いることができる。或る実施形態においては、開示されるウイルスは、タンパク質性ワクチンの産生において等の種々用途にその後用いることができるコードされた異種抗原(例えば、病原体特異抗原、HIV抗原、腫瘍抗原及び抗体)を産生するために、生体外で(例えば細胞を含まない発現系を用いて)及び/又は生体外で増殖させた培養細胞中で用いることができる。こうした用途では、生体外及び/又は培養細胞中においてウイルスの発現を可能にさせる任意のベクターを用いることができる。
【0119】
発現させようとする開示の異種抗原に関して、該異種抗原のタンパク質コード配列は、タンパク質の転写及び翻訳を支配する調節配列又は核酸制御配列に「操作可能に連結」されるはずである。本明細書で用いる場合、コード配列及び核酸制御配列又はプロモーターは、それらが、核酸制御配列の影響又は制御のもとにコード配列の発現又は転写及び/又は翻訳をさせるような方法で共有結合しているとき、「操作可能に連結」しているという。「核酸制御配列」は、それに対して操作可能に連結されている核酸配列又はコード配列の発現を支配する、プロモーター、エンハンサー、IRES、イントロン及び本明細書に記載の他の配列等であるがこれらに限定されない、任意の核酸配列であり得る。「プロモーター」という語は、RNAポリメラーゼIIに関する開始部位周辺で群をなし、また開示のタンパク質コード配列に操作可能に連結されたときにコードタンパク質の発現をもたらす、一群の転写性制御モジュールを指すために本明細書で用いることとする。本開示の導入遺伝子の発現は、一部の特定の外的刺激であって、限定するものではないがテトラサイクリン等の抗生剤、エクジソン等のホルモン、又は重金属等に曝露したときにのみ、転写を開始する、構成的プロモーターの又は誘導性プロモーターの制御下にあり得る。プロモーターはまた、特定の細胞型、組織又は有機体に対して特異的であり得る。多くの好適なプロモーター及びエンハンサーは、この技術分野で公知であり、また任意のこうした好適なプロモーター又はエンハンサーを、開示の導入遺伝子の発現に用いることができる。例えば、好適なプロモーター及び/又はエンハンサーは、Eukaryoticプロモーターデータベース(EPDB)から選択することができる。
【0120】
この開示は、異種タンパク質抗原を発現する組換えウイルスベクターに関する。一部の例においては、抗原はHIV抗原である。有利には、HIV抗原には、いずれも参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2008/0199493A1号及び第2013/0136768A1号で述べられているHIV抗原が含まれるが、これに限定されるものではない。HIV、核酸又はその免疫原性断片は、HIVタンパク質抗原として用いることができる。例えば、米国特許出願公開第2008/0199493A1号及び第2013/0136768A1号で述べられているHIVヌクレオチドを用いることができる。HIV抗体によって認識される任意の抗原を、HIVタンパク質抗原として用いることができる。タンパク質抗原はまた、SIV抗原であってもよい。例えば、米国特許出願公開第2008/0199493A1号及び第2013/0136768A1号で述べられているSIV抗原を用いることができる。
【0121】
本開示に従って用いられるベクターは、開示の抗原を発現できるように、プロモーター又はエンハンサー等、好適な遺伝子調節領域を含有し得る。
【0122】
例えばHIV-1抗原に対する免疫応答、及び/又は、対象における発現に好適であり、かつ、生体内での使用が安全であるような、HIV-1に対する防御免疫の発現ベクターを生成するために、対象において生体内で開示の抗原を発現することが選択されるはずである。一部の例においては、開示のHIV-1の免疫原性組成物及びワクチンの前臨床試験等のために、実験動物において抗体及び/又は抗原を発現することが望まれ得る。他の例においては、開示の免疫原性組成物及びワクチンの臨床試験において及び実際の臨床的使用等において、ベクターは、ヒト対象において抗原を発現することができる。
【0123】
本明細書に記載のCMVベクターは、宿主間の伝播を防止することができ、それによって、CMVの感染の結果としての合併症に直面することとなる免疫無防備状態の対象又は他の対象を感染させることを、ウイルスにできないようにさせるような変異を含有し得る。本明細書に記載のCMVベクターはまた、免疫優性のエピトープ及び非免疫優性のエピトープの提示のみならず非標準のMHC拘束ももたらすような変異を含有してもよい。しかしながら、本明細書に記載のCMVベクターにおける変異は、これまでにCMVに感染したことのある対象を再感染させるベクターの能力には影響を及ぼさない。こうしたCMV変異は、例えば、米国特許出願公開第2013-0136768号、第2010-0142823号、第2014-0141038号及びPCT出願国際公開第2014/138209号に記載されており、その全ては参照により本明細書に組み入れられたものとする。
【0124】
開示のCMVベクターは、生体内に投与することができるが、例えば、MHC-E(又はそのホモログ若しくはそのオーソログ)によって拘束されているCD8+ T細胞応答の割合が高いことを特徴とする免疫応答を含む、CD8+免疫応答を含む、免疫原性応答を生成することを目指す。例えば、一部の実施形態においては、RhCMVを用いた免疫原性組成物及びワクチンの前臨床試験のために、アカゲザル等の実験動物において、開示のCMVベクターを使用することが望まれ得る。他の例においては、HCMVを用いた免疫原性組成物の臨床試験において及び実際の臨床的使用等において、ヒト対象において開示のCMVベクターを使用することが望ましいであろう。
【0125】
こうした生体内での用途のため、開示のCMVベクターは、薬剤的に許容できるキャリアをさらに含む免疫原性組成物のうちの成分として投与される。開示の免疫原性組成物は、病原体特異抗原を含む異種抗原に対する免疫応答を刺激するのに有用であり、またAIDSの予防、改善若しくは治療のためにHIV―1に対する予防的若しくは治療的なワクチンのうちの1つ又は複数の成分として用いることができる。開示の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン、すなわち開示の抗原をコードする核酸を、その後抗原が対象において発現されて免疫応答が誘発されるようにして、ヒト等の対象に送達するためのワクチンを提供するのに特に有用である。
【0126】
免疫化スケジュール(又はレジメン)は、動物(ヒトを含む)に関して周知であり、特定の対象及び免疫原性組成物に関して容易に決定することができる。したがって、免疫原は、対象に対して1回又は複数回投与され得る。好ましくは、免疫原性組成物のそれぞれの投与間に所定の時間間隔をあける。この間隔は対象毎に異なるものであるが、典型的には10日間から数週間の範囲とし、しばしば2、4、6又は8週間とする。ヒトの場合、この間隔は、典型的には2から6週間である。本開示の特に有利な実施形態においては、この間隔はより長いものとし、有利には、約10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、20週間、22週間、24週間、26週間、28週間、30週間、32週間、34週間、36週間、38週間、40週間、42週間、44週間、46週間、48週間、50週間、52週間、54週間、56週間、58週間、60週間、62週間、64週間、66週間、68週間又は70週間である。免疫化レジメンは、典型的には免疫原性組成物の1回から6回の投与を含むが、1回又は2回又は4回程度でもよい。免疫応答を誘導する方法はまた、免疫原を含むアジュバントを投与することを含んでもよい。一部の例においては、年一回、年二回又は他の長期間(5~10年)の追加免疫によって、初回の免疫化プロトコルを補ってもよい。本方法はまた、種々のプライム-ブースト法を含む。これら方法では、1回又は複数回の初回免疫化(priming immunization)に次いで、1回又は複数回の追加免疫化が続く。実際の免疫原性組成物は、免疫化毎及び免疫原性組成物のタイプ(例えば、タンパク質又は発現ベクターを含む)毎に同一又は異なるものであり得、免疫原の経路及び剤形もまた変動し得る。例えば、ある発現ベクターを初回及び追加免疫のステップに用いる場合、それは、同じタイプ又は異なるタイプのもののいずれであってもよい(例えば、DNA又は細菌性若しくはウイルス性の発現ベクター)。有用なプライム-ブースト法のひとつは、4週間空けて2回の初回免疫化を行い、次いで最後の初回免疫化後4週目及び8週目に2回の追加免疫化を行う。また当業者にとっては、開示のDNA、細菌性及びウイルス性の発現ベクターを用いてプライム-ブースト法を提供することを包含するいくつかの順序変更及び組合せが存在するということが容易に明らかであろう。CMVベクターは、様々な病原体から誘導される様々な抗原を発現しながら、繰り返し用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は、単に説明をするためのものである。この開示に照らして、当業者は、過度の実験を行うことなく、これら実施例及び開示された発明の他の実施例の変形が可能であるということを認識するであろう。
【0128】
実施例1
SIVに対しての保護のために重要であるMHC-E応答
68-1株RhCMV/SIVベクターは、悪性度の高いSIVに対して観察された中で最良の保護をもたらす(Hansen, S.G. et al. Profound early control of highly pathogenic SIV by an effector memory T-cell vaccine. Nature 473, 523-7, (2011);Hansen, S.G. et al. Immune clearance of highly pathogenic SIV infection. Nature 502, 100-4, (2013);Hansen, SG. et al. Effector memory T cell responses are associated with protection of rhesus monkeys from mucosal simian immunodeficiency virus challenge. Nature medicine 15, 293-9, (2009)(以下、「Hansen 2009」と称する)。特に、68.1株は、MHC-E及びMHC-II拘束性CD8+ T細胞を誘発する(Hansen, S.G. et al. Cytomegalovirus vectors violate CD8+ T cell epitope recognition paradigms. Science 340, 1237874 (2013)(以下、「Hansen Science2013」と称する);Hansen, S.G. et al. Broadly targeted CD8(+) T cell responses restricted by major histocompatibility complex E. Science 351, 714-20 (2016)(以下、「Hansen2016」と称する))が、媒介的な保護におけるこうした「非古典的(unconventional)」T細胞応答の重要性は、これまでに判断されていない。
【0129】
RhCMV 68-1は、HCMV UL128及びUL130のホモログを欠いており、RhCMV 68-1へのUL128及びUL130の再挿入(68-1.2株RhCMV/gag(UL128/UL130修復))で、MHC-E及びMHC-IIからMHC-Iaへの完全な交換がもたらされる(
図1)(Hansen Science2013も参照のこと)。また、UL128又はUL130が、68-1.2株(68-1.2株RhCMV/gag(UL130修復)及び68-1.2株RhCMV/gag(UL128修復))から欠失することで、MHC-I及びMHC-IIであって、MHC-IIスーパートープ特異性又はMHC-E拘束性のCD8+ T細胞ではない混合表現型をもたらす(
図1)(国際公開第2014/138209号も参照のこと)。
【0130】
MHC-E拘束性CD8+ T細胞を誘発する能力を欠いているベクターが 、悪性度が高いSIVに対してアカゲザル(RM)を保護することができるか否かを決定するために、RMに対して、以下の3種のベクター:RhCMV 68-1(UL128及びUL130欠失)、68-1.2(UL128及びUL130インタクト)及びUL128を欠失した68-1.2(UL130インタクト)のうちの1つをワクチン接種した。各ベクターは、SIV抗原、SIVgag、SIVrev-tat-nef-及びSIVpolを発現した。Hansen 2009に記載の方法を用いて、RhCMV/SIVベクターを、t=0週とt=18週とに2回皮下投与し(1ベクター当たり5×10
6PFU)、第91週に、繰り返しの用量限界での直腸内へのSIVmac239の攻撃を開始した。SIV Vif特異T細胞応答が新規に発生することによってSIV感染の「取得」が確認されるまで、全てのRMに低投与量のSIVmac239で繰り返し攻撃し、結果は、決定的にSIV感染した動物でのみ判断した。ワクチンにはSIV Vifは含まれていなかったため、これら応答は、SIV感染に由来するものである。68-1 RhCMV/SIVでワクチン接種したRM15匹のうち8匹が、(典型的)ストリンジェントなSIV制御を見せ、68-1.2及びUL128欠失68-1.2 RhCMV/SIVでワクチン接種したRMの全てが、ワクチン未接種のコントロールと同様に、攻撃後に、明らかな進行性感染症を見せた(
図2)。腟内経路からSIVmac239で攻撃した雌RMにおいて、68-1及び68-1.2のRhCMV/SIVのワクチン接種を68-1対68-1.2で比較する独立の実験では、同一の結果が観察された。SIV特異CD4+及びCD8+ T細胞応答の規模及び機能表現型が、3ワクチン群全てで比較可能であったが、ベクターの免疫原性における特筆すべき相違は、SIV特異CD8+ T細胞によって標的とされたエピトープの性質のみであった。詳細には、68-1は、MHC-E又はMHC-II拘束性であり、(ΔUL128)68-1.2は、MHC-Ia又はMHC-II拘束性であり(MHC-IIスーパートープは除く)、68-1.2は、MHC-Ia拘束性のみであった。これら結果は、MHC-E拘束性CD8+ T細胞及び、可能性のあるMHC-IIスーパートープ特異CD8+ T細胞が、SIVに対する保護のために重要であるということを強く示唆している。
【0131】
実施例2
カニクイザルにおけるMHC-E応答の誘導に必要な、UL128及びUL130のホモログに加えたUL146及びUL147ホモログ遺伝子の欠失
RhCMV 68-1は、複数の遺伝子欠失、遺伝子逆転(inversion)及び単一点突然変異を含有する線維芽細胞適応ウイルス(fibroblast-adapted virus)である(Malouli, D. et al., Reevaluation of the Coding Potential and Proteomic Analysis of the BAC-Derived Rhesus Cytomegalovirus Strain 68-1. J Virol 86, 8959-73 (2012))。さらに、野生型RhCMVは、MHC-II及びMHC-E応答を誘発しない(Hansen Science2013及びHansen 2016)。RhCMVと同様に、野生型HCMVは、例外的な状況においてのみ、HLA-E拘束性CD8+ T細胞を誘発する(Pietra, G. et al. HLA-E-restricted recognition of cytomegalovirus-derived peptides by human CD8+ cytolytic T lymphocytes. Proc Natl Acad Sci U S A 100, 10896-10901 (2003))。RMにおける野生型RhCMVと、またおそらくヒトにおける野生型HCMVとは、UL128及びUL130が存在することに起因してMHC-E応答を誘発しないと考えられる。しかしながら、このことは、68-1における他の変異が、MHC-E応答に必要であるという可能性を排除するものではない。この可能性に対処するため、MHC-E応答の誘発に必要な遺伝子改変を、別の種であるカニクイザル(M. fascicularis)で決定した。
【0132】
非古典的(unconventional)CD8+ T細胞がカニクイザルにおいて誘発されるか否かを決定するために、カニクイザルCMV(CyCMV)を細菌人工染色体(BAC)としてクローン化した。Cy13.1遺伝子、RhCMV Rh13.1及びHCMV RL13のホモログが、SIVgagで置き換えられた。得られたCyCMV BACは、次世代シーケンシングで完全に配列決定され、それは全ての予想されるオープンリーディングフレームが存在していることを実証した(
図3)。UL128-130の欠失がMHC-E拘束性CD8+ T細胞を誘発するのに十分であるか否かを調べるために、HCMV UL128及びUL130に相同であるCyCMV遺伝子を、前駆体コンストラクトから欠失させて、CyCMV ΔRL13/SIVgag ΔUL128-130を生成した(
図4)。
【0133】
CyCMV ΔRL13/SIVgag ΔUL128-130の免疫原性を、カニクイザルに接種して、SIVgagペプチドに対する末梢血のCD8+メモリーT細胞応答を監視することによって生体内で評価した。CyCMV ΔRL13/SIVgag ΔUL128-130ベクターでワクチン接種したカニクイザルのPBMCを、4つのアミノ酸がオーバーラップする15mer SIVgagペプチド(GAG ORF)で、又は、MHC-IIもしくはMHC-Eスーパートープに対応する図示したSIVgagペプチドで刺激して、フローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン染色(ICS)を実行した。スーパートープペプチドは、MHCハプロタイプにかかわらず、すなわち所与のMHC-I又はMHC-II対立遺伝子が存在するか存在しないかにかかわらず、90%以上の動物で認識されるペプチドである。MHC-E又はMHC-II結合性SIVgagペプチドに応答するCD8+ T細胞は、IFN-γ及びTNF-αの発現を介して同定した(
図5A)。動物は、タンパク質全体をカバーするオーパーラップペプチド(GAG ORF)でT細胞が刺激されたときに、SIVgagに対する頑健なCD8 T細胞応答を誘発した。しかしながら、CyCMV ΔRL13/SIVgag ΔUL128-130は、RhCMV 68-1で免疫した全てのマカクにおいて事前に検出されたものであるMHC-Eスーパートープ応答(Hansen Science 2013及びHansen 2016に記載のペプチドGag69及びGag120)又はMHC-IIスーパートープ応答(Hansen Science 2013及びHansen 2016に記載のGag53及びGag73)を認識するCD8+ T細胞応答を誘発しなかった(
図5B)。代わりとして、CyCMV ΔRL13/SIVgag ΔUL128-130が、MHC-I及びMHC-II拘束性CD8+ T細胞応答の混合を誘導した(
図5C)。しかしながら、MHC-IIスーパートープ応答は観察されなかった。これら結果は、野生型カニクイザルCMVからUL128及びUL130を欠失させることが、MHC-E拘束性及びMHC-IIスーパートープ特異CD8+ T細胞の誘発に不十分であるということを示唆している。
【0134】
少なくとも2つの異なる可能性:a)カニクイザルが、MHC-E拘束性及びMHC-IIスーパートープ特異CD8+ T細胞を誘発することができないこと、又は、b)RhCMV 68-1におけるさらなる変異が、このウイルスに、アカゲザルにおけるMHC-E拘束性CD8+ T細胞を誘発できるようにさせることが、これら結果を説明しているだろう。RhCMV 68-1はまた、UL128及びUL130のホモログに加えて、HCMV UL146及びUL147に対して相同である遺伝子も欠いている(Oxford, K. L., M. K. Eberhardt, K. W. Yang, L. Strelow, S. Kelly, S. S. Zhou, and P. A. Barry. 2008. Protein coding content of the ULb' region of wild-type rhesus cytomegalovirus. Virology 373:181-8;参照により本明細書に組み入れられる)。野生型RhCMVは、これらCXC-ケモカイン様タンパク質の6つの複製をコードし、そのうちの3つがRhCMV 68-1において欠失し、残りの3つの遺伝子の発現はわかっていない。このRhCMV 68-1の特徴を要約するために、UL128及びUL130のホモログのみならず、UL146及びUL147の6つの全てのホモログもまた欠いているCyCMVを生成させた(
図4)。CyCMVΔRL13/gagΔUL128-130ΔUL146-147ベクターでワクチン接種したカニクイザルのPBMCを、4つのアミノ酸がオーバーラップする15mer SIVgagペプチド(GAG ORF)で、又は、MHC-IIもしくはMHC-Eスーパートープに対応する図示したSIVgagペプチドで刺激して、フローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン染色(ICS)を実行した。MHC-E又はMHC-II結合性SIVgagペプチドに応答するCD8+ T細胞を、IFN-γ及びTNF-αの発現を介して同定した。CyCMV ΔRL13/SIVgagΔUL128/130ΔUL146でカニクイザルをワクチン接種することで、MHC-E及びMHC-IIの両スーパートープを認識するCD8+ T細胞を誘発した(
図6A)。詳細には、Gag69は、MHC-E拘束性(MHC-Eは非多型のMHC-1分子である)と一貫して、抗-MHC-I及びVL9ペプチドによって阻害されるがCLIPペプチドでは阻害されず、一方、Gag73は、MHC-II拘束性と一貫して、CLIPペプチドによって阻害されるが抗-MHC-I又はVL9ペプチドでは阻害されなかった(
図6B)。これら結果は、CyCMV ΔRL13/SIVgagΔUL128-130ΔUL146-147が、MHC-E及びMHC-II拘束性CD8+ T細胞を誘発するが多型のMHC-Ia拘束性CD8+ T細胞は誘発しないということを示唆している(
図6C)。
【0135】
まとめると、これらデータは、UL146/147ファミリーのCXCケモカイン様タンパク質が、MHC-E拘束性CD8+ T細胞のみならずMHC-IIスーパートープ拘束性CD8+ T細胞の誘導を阻害するということを示唆している。したがって、これらデータは、MHC-E拘束性及びMHC-IIスーパートープ特異性のCD8+ T細胞は、UL128及びUL130の両方を欠くのみならず、UL146及びUL147のホモログの全て又は該ホモログの一部若しくは全部を欠いているCMVベクターによってのみ誘導され得るという概念を支持している。RhCMVによるMHC-E拘束性CD8+ T細胞応答の誘導はまた、これまでに、UL40及びUS28のホモログの存在を必要とすることも示されている。CyCMVはまた、これら遺伝子を含有していたため、これら結果は、CMVベクターが、以下の遺伝子構造を有していれば、単にMHC-E応答を誘発することとなるということを示唆している:UL128及びUL130又はホモログが欠失していること;UL146若しくはUL147若しくはホモログの一部又は全部が欠失していること;UL40又はホモログが存在していること;及び、US28又はホモログが存在していること。
【0136】
実施例3
アカゲザルにおけるMHC-E応答の誘導を阻害する、アカゲザルCMV及びヒトCMVのUL146ホモログ
RhCMVのUL146/147ホモログ遺伝子が、UL128及びUL130が欠失していたとしてもRMにおけるMHC-E応答の誘導を同様に阻害するか否かを実証するために、高度に変異したRhCMV 68-1を生じさせる、元来の配列のRhCMVの分離株を回復することによって、野生型のRhCMVを生成した。RhCMV 68-1前駆体ウイルスのULb’領域を、Gillら(Gill, R. B. et al., Coding potential of UL/b' from the initial source of rhesus cytomegalovirus Strain 68-1. Virology 447, 208-212)によって記載された元来の分離株から配列決定した。RhCMV 68-1細菌人工染色体(BAC)の遺伝子改変を用いることによって、一連の変異誘発工程において、野生型の完全長のゲノム(FL-RhCMV)を再形成した(
図7)。FL-RhCMV-BACを開始点として用いて、SIVgagをHCMV RL13のRhCMVホモログに挿入して、FL-RhCMVΔRL13gagを生成した。RMに接種すると、SIVgagに対するCD8+ T細胞応答が観察されたが、MHC-II又はMHC-Eスーパートープに対しての応答はなかった(
図8A)。次に、UL128及びUL130のRhCMVホモログを欠失させて、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-130を生成した。RMに接種すると、SIVgag特異CD8+ T細胞応答が同様に観察されたが、MHC-E又はMHC-IIスーパートープに対しての応答はなかった(
図8B)。これら観察は、ケモカインのHCMV UL146/147遺伝子ファミリーのRhCMVホモログが、MHC-E拘束性及びMHC-IIスーパートープ特異性のCD8+ T細胞の誘導を阻害しているということを強く示唆していた。
【0137】
68-1 RhCMVは、HCMV UL146及びUL147の6つのホモログのうち3つのみを欠いているため、HCMV UL146及びUL147の中央の3つのホモログが欠失して、このことにより、UL128-130欠失RhCMVが、MHC-E拘束性及びMHC-IIスーパートープ特異性のCD8+ T細胞を誘発できるようになるか否かを判断した。しかしながら驚くべきことに、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-130ΔUL146(3)は、MHC-II又はMHC-Eによって拘束されるスーパートープエピトープに対するCD8+ T細胞を誘発することができなかった(
図8C)。これら結果は、MHC-E拘束性CD8+ T細胞を誘発するために、6つのうち3つ以上のホモログを欠失又は不活性化させる必要であるということを強く示唆している。そのため、UL146及びUL147の6つの全てのホモログを欠失させて、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-130ΔUL146(6)を生成した。このベクターで接種したRMは、MHC-II及びMHC-Eスーパートープを認識するCD8+ T細胞を誘発することができた(
図8D)。これら結果は、UL146及びUL147の6つの全てのホモログを欠失させることで、UL128+130を欠いたRhCMVが、MHC-E拘束性及びMHC-IIスーパートープ特異性のCD8+ T細胞を誘発できるようになるということを実証している。
【0138】
CyCMV及びRhCMVの両方が、2つのHCMV遺伝子UL146及びUL147に対して相同である6つの遺伝子を含有している。まとめると、上記したデータは、カニクイザルCMV及びアカゲザルCMVの両方のこれらケモカイン様遺伝子が、MHC-E拘束性CD8+ T細胞応答の誘導を阻害しているということを示唆している。この阻害効果が、HCMVにおいて保存されたか否かを決定するために、BAC組換え技術によって、HCMV UL146及びUL147を単独で又は組み合わせて、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-130ΔUL146(6)内に挿入した。以下の3つの異なるキメラベクターを生成した:FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-130hcmvUL146-UL147(対応するRhCMVホモログの代わりに両HCMV遺伝子を含有する);FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-130hcmvUL146(対応するRhCMVホモログの代わりにHCMV UL146を含有する);及び、FL-RhCMVΔRL13gagΔUL128-130hcmvUL147(対応するRhCMVホモログの代わりにHCMV UL147を含有する)。RMにこれら3つのコンストラクトを接種した場合、3つの組換えベクターのうち、MHC-II又はMHC-Eスーパートープを認識するCD8+ T細胞を誘発したものはなかった(
図9A~9C)。これら結果は、MHC-E拘束性及びMHC-IIスーパートープ特異性のCD8+ T細胞を阻害する能力は、HCMVに保存されている特徴であるということを示唆している。これら及びここまでの結果に基づけば、HCMVベクターは、MHC-E拘束性及びMHC-IIスーパートープ特異性のCD8+ T細胞を誘発するために以下の特徴を有する必要があるということもまた明らかである:a)UL128及びUL130両方を欠いていること;b)UL147及びUL147を欠いていること;c)UL40が存在していること;d)US28又はUS27のいずれかが存在していること。
【0139】
実施例4
MHC-Eによって大部分が拘束されているCD8+ T細胞応答を誘発する内皮細胞特異microRNA認識配列(MRE)を含むCMVベクター
内皮細胞系列細胞におけるRhCMVベースのベクターの複製能力を制限するために、RhCMV 68-1を改変して、必須ウイルス遺伝子の3’UTR内に内皮細胞特異miR-126-3p標的配列を含有させた。miR-142-3pの組織特異発現を呈する骨髄細胞系列細胞と同様に、内皮細胞は、細胞系列特異的であるmiR-126-3pを発現する。2つの必須RhCMV遺伝子(HCMV UL122(IE2)に対して相同である必須最初期遺伝子Rh156と、HCMV UL79に対して相同である必須最初期遺伝子Rh108)の3’UTR内にmiR-126-3p標的部位を挿入することにより、これらウイルスの必須タンパク質をコードするmRNAの翻訳の阻害に起因して、miR-126-3pを高度に発現する内皮細胞内のウイルス複製が阻害されるという仮説を立てた。
【0140】
galKが介在するBAC組換えを用いて、galK選択カセットをRh156の3’UTR内に挿入して、その後、8つのランダムなヌクレオチドで分離されたmiR-126-3p結合部位の4つの複製を含有する人工カセットで置換した。その後、第二の一連の組換えを行い、それによって、galKカセットをRh108の3’UTR内に挿入して、これを上記したような人工カセットで置換した(
図10)。さらにこれらベクターは、SIVgag由来の異種抗原を、この抗原の遺伝子Rh211内への挿入(EF1αプロモーターの制御下で)によって発現した。組換えが良好であるかを、挿入部位に隣接する領域に対して設計されたプライマーでのPCRを用いて、次いでPCR産物の配列決定をすることによって確認した。次にインタクトなBAC DNAを初代アカゲザル線維芽細胞内に電気穿孔して、ウイルスを回収し、ウイルスDNAもまた配列決定した。
【0141】
肺線維芽細胞、臍帯静脈内皮細胞及びマクロファージは、アカゲザル由来のものとした。各細胞型からRNAを単離して、全サンプルに対して、miR-126-3p及びmiR-142-3pについてのqRT-PCRを行った。miR-126-3p及びmiR-142-3pの複製数は、標準曲線を用いて、10ngのRNAより決定された。miR-126-3p miRNAは、アカゲザルの内皮細胞内では高度に発現されたが、末梢血由来のマクロファージ又は初代線維芽細胞においては、低いレベルであった。対照的に、miR-142-3pはマクロファージ内では高度に発現されたが、内皮細胞又は線維芽細胞においては発現されなかった(
図11)。これらデータは、アカゲザルの内皮細胞系列細胞が、アカゲザルの線維芽細胞又はマクロファージと比較してmiR-126-3pをずっと高いレベルで発現するということを実証しており、内皮細胞における必須のRhCMV転写物を標的とするためにこのmiRNAを用いているという理論をもたらすものである。
【0142】
miR-126-3pレベルが高い細胞においては、miR-126-3pをロードしたRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)がRh156及びRh108の3’UTRに結合して翻訳を阻害することとなるため、必須遺伝子(Rh156及びRh108等)内にmiR-126-3p結合部位を含有するウイルスは、その増殖が厳しく制限される。ウイルス複製に対するmiR-126-3p発現の影響を実証するために、miR-126-3p又はネガティブコントロール模倣体を、アカゲザル線維芽細胞内にトランスフェクションして、miR-126-3p標的部位を含有する68-1 RhCMVのウイルス増殖又は同等のサイズの組み換えた(scrambled)配列(68-1 Rh156/Rh108 miR-126mut)を監視した。詳細には、テロメル化(telomerized)アカゲザル線維芽細胞を、ネガティブコントロールmiRNA又はmiR-126 RNA模倣体でトランスフェクションし、トランスフェクションの24時間後、細胞を、MOI0.01で、RhCMV 68-1 Rh156/Rh108 miR-126又はRhCMV 68-1 Rh156/Rh10 miR-126mutに感染させた。細胞及び上清を、図示した時間に収穫して、アカゲザル線維芽細胞に滴定した。
図12に示すように、コントロールmiRNAのトランスフェクションではなくmiR-126-3p模倣体のトランスフェクションで、細胞におけるウイルス増殖及び上清へのウイルス放出が、68-1 RhCMV Rh156/Rh108 miR-126に関しては厳しく阻害されていたが、68-1 RhCMV Rh156/Rh108 miR-126mutに関しては阻害されなかった。
【0143】
miR-126-3pが、内皮細胞におけるウイルス増殖を阻害しているということをさらに実証するために、miR-126-3p標的部位を、インタクトな五量体複合体に起因してRhCMV 68-1よりも効率的に体外で内皮細胞に感染するものであるRhCMV 68-1.2内のIE2及びUL79ホモログの3’UTRに挿入した。初代アカゲザル内皮細胞を、MOI0.01で、68-1.2 RhCMV Rh156/Rh108 miR-126又は68-1.2 RhCMV Rh156/Rh108 miR-126mutに感染させた。感染した細胞又は上清を、感染後7日目、14日目、21日目、及び28日目に収穫し、次いでアカゲザル線維芽細胞にウイルス滴定を行った。
図13に示すように、アカゲザル内皮細胞中でウイルスが増殖する能力は、68-1.2 RhCMV Rh156/Rh108 miR-126-3pでは厳しく制限されたが、組み換えたmiR-126-3p標的配列を含有するコントロールRhCMV 68-1.2(68-1.2 RhCMV Rh156/Rh108 miR-126mut)ではされなかった。
【0144】
miR-126拘束性ウイルスの免疫原性は、生体内で評価した。アカゲザルを68-1 RhCMV Rh156/Rh108 miR-126/SIVgagベクター(UL128、UL130、UL146及びUL147のホモログを欠いているが、HCMV UL40及びUS28の機能性ホモログは含有しており、またEF1αプロモーターの制御下でSIVgag導入遺伝子を含有する)でワクチン接種し、末梢血のCD8+メモリーT細胞を単離してフローサイトメトリーによるICSを介して、オーバーラップSIVgagペプチドに対する応答を解析した(
図15)。この動物は、SIVgagに関するオーバーラップペプチドの存在下でCD69及びTNFαのアップレギュレーションで示されるようにタンパク質全体に対して、頑健なCD8 T細胞応答を誘発した。この結果は、ワクチンベクターの全体的な免疫原性が、miR-126-3p標的部位の導入によって汚染されていないということを示唆した。しかしながら、ベクターは、MHC-Eによって拘束されるCD8+ T細胞は誘発したが、MHC-II拘束性エピトープに対するCD8+ T細胞は誘発しなかった。このT細胞表現型をさらに特徴付けるために、2匹のRMに68-1 RhCMV miR-126/SIVgagでワクチン接種して、125個のSIVgagペプチドのそれぞれのMHC拘束性を、それぞれMHC-E又はMHC-II拘束性CD8+ T細胞応答を阻害する、VL9ペプチド又はCLIPペプチドの存在下又は不在下において、ICSによってT細胞応答を測定することで決定した。
図14に示すように、68-1 RhCMV miR-126/SIVgagで免疫化したRMから得られたCD8+ T細胞によって認識される全てのぺプチドが、MHC-Eによって提示された。これら結果は、UL128、UL130、UL146及びUL147のホモログを欠いており、UL40及びUS28のホモログを発現するということを理由に、RhCMV 68-1がMHC-E及びMHC-II拘束性CD8+ T細胞を誘発するということを示唆している。miR-126-3pをこの骨格に挿入することによって、MHC-II応答が除去された。
【0145】
これらデータは、内皮細胞の感染がMHC-II拘束性CD8+ T細胞の誘導に必要であるということを実証している。ゆえに、miR-126-3p標的部位の挿入により、「MHC-Eのみ」のベクター、すなわち排他的にMHC-E拘束性CD8+ T細胞は誘発するが、多型MHC-I又はMHC-II分子によって拘束されるT細胞は誘発しないベクターが結果として生じる。MHC-E拘束性CD8+ T細胞は、SIV及びおそらくHIVに対する保護のために必要であるため、これらデータはまた、ベクターの効能がmiR-126-3p挿入によって改善され得、CD8+ T細胞応答を保護エピトープ上に集中させることとなるということを示唆している。したがって、MHC-E最適化HCMVベクターは、以下の特徴を有するはずである:a)UL128及びUL130の両方を欠いていること;b)UL146及びUL147の両方を欠いていること;c)UL40が存在していること;d)US28又はUS27のいずれかが存在していること;及び、e)必須遺伝子、例えばIE2又はUL79(又はHCMVの増殖に必須であることが知られている遺伝子のうちのいずれか)の3’UTRにmiR-126-3p標的部位を挿入すること。
【0146】
実施例5
MHC-Iaによって大部分が拘束されているCD8+ T細胞応答を誘発する内皮細胞特異性及び骨髄細胞特異性のmicroRNA認識配列(MRE)の両方を含むCMVベクター
必須ウイルス遺伝子の3’UTRにおいて骨髄特異miR-142-3p標的配列を含有するように改変されたRhCMV 68-1が、MHC-IIのみのベクター設計をもたらすMHC-II応答を維持しながら、正反対の表現型のmiR-126-3p挿入がMHC-E応答を完全に欠如させたということがこれまでに示された(国際公開第2017/087921号を参照のこと)。miR-142-3p及びmiR-126-3pを組み合せた挿入による影響を決定するために、BAC組換えを用いて、miR-126-3p及びmiR-142-3pのそれぞれの2つの複製をRh156及びRh108の3’UTRに挿入した(
図16)。さらにこれらベクターは、SIVgag由来の異種抗原を、この抗原の遺伝子Rh211内への挿入(EF1αプロモーターの制御下で)によって発現した。組換えが良好であるかを、挿入部位に隣接する領域に対して設計されたプライマーでのPCRを用いて、次いでPCR産物の配列決定をすることによって確認した。次にインタクトなBAC DNAを初代アカゲザル線維芽細胞内に電気穿孔して、ウイルスを回収し、ウイルスDNAもまた配列決定した。
【0147】
miR-126/miR-142-拘束性ウイルスの免疫原性は、生体内で評価した。アカゲザルを68-1 RhCMV Rh156/Rh108 miR-126 miR-142/SIVgagベクター(UL128、UL130、UL146及びUL147のホモログを欠いているが、HCMV UL40及びUS28の機能性ホモログは含有しており、またEF1αプロモーターの制御下でSIVgag導入遺伝子を含有する)でワクチン接種し、末梢血のCD8+メモリーT細胞を単離してフローサイトメトリーによるICSを介して、SIVgagペプチドに対する応答を解析した(
図17)。この動物は、オーバーラップペプチドを用いたICSで測定したように、全SIVgagタンパク質に対する頑健なCD8 T細胞応答を誘発した。しかしながら、ベクターは、MHC-II又はMHC-E拘束性スーパートープペプチドのいずれかを認識するCD8+ T細胞を確かに誘発した。このT細胞の表現型をさらに特徴付けるために、125個のSIVgagペプチドそれぞれのMHC拘束性を、汎-MHC-I(MHC-Ia及びMHC-Eの両方を阻害する)、VL9ペプチド(MH-Eを阻害する)又はCLIPペプチド(MHC-IIを阻害する)の存在下又は不在下において、ICSによってT細胞応答を測定することによって決定した。
図17に示すように、68-1 RhCMV miR-126miR-142/SIVgagで免疫化したRMから得られたCD8+ T細胞によって認識される全てのぺプチドが、MHC-Iaによって提示された。これら結果は、UL128、UL130、UL146及びUL147又はそのホモログを欠いており、またUL40及びUS28のホモログを発現するベクターがリプログラミングされて、miR-126-3p及びmiR-142-3pの両方を挿入することによってMHC-Ia拘束性CD8+ T細胞を誘発するということを示唆している。
【0148】
表1に、上記した実施例で得られた結果を要約している。全ての遺伝子に対してインタクトであり、細胞型特異miRによって拘束されていない野生型CMVが、従来のMHC-I拘束性CD8+ T細胞を誘発する。UL128及びUL130の欠失(単独で又は組合せのいずれかで)が、MHC-I及び(非スーパートープの)MHC-II拘束性CD8+ T細胞応答の混合を誘発するベクターを結果として生じる。UL146又はUL147のホモログと共にUL128及びUL130を欠失していることが、MHC-II及びMHC-Eスーパートープに対する応答を含む、MHC-II及びMHC-Eによって拘束されるT細胞応答を誘発する。これら遺伝子の全てが欠失しているベクターのみが、MHC-E及びMHC-II拘束性CD8+ T細胞を誘発する。UL146及びUL147のホモログを欠いているが、UL128及びUL130のホモログは含有しているベクターは、MHC-E又はMHC-II拘束性CD8+ T細胞を誘発しないが、代わりに従来のMHC-I拘束性CD8+ T細胞を誘発する。miR-126-3pターゲティングを介して内皮細胞におけるウイルス遺伝子発現を拘束することによって、MHC-II拘束性CD8+ T細胞の誘導が阻害され得、結果として、排他的なMHC-E拘束性CD8+ T細胞を誘導するベクターが生じる。miR-126-3p及びmiR-142-3pのターゲティングを介して内皮細胞及び骨髄細胞系統の細胞の両方におけるウイルス遺伝子発現を拘束することによって、MHC-II及びMHC-E拘束性CD8+ T細胞の両方の誘導が阻害され得、結果として、排他的なMHC-Ia拘束性CD8+ T細胞を誘導するベクターが生じる。
表1:CMVベクターの特定のMHC拘束性を生じる遺伝子改変のまとめ
【表1】
*必須ウイルス遺伝子IE2(Rh156)及びUL79(Rh108)の3’UTRへのmiR標的配列の4つの複製の挿入
**MHC-E拘束性応答のプライミングもまた、Rh67及びRh214/220又はそれらのHCMVオーソログ(UL40及びUS27/28)のインタクトな機能に依存する。
【0149】
実施例6
MHC-Eの文脈における目的のペプチドに対するCD8+ T細胞の特異性の生成
古典的多型MHC-la分子の文脈における目的の抗原由来ペプチドを認識するT細胞受容体を用いて、癌又は感染症等の疾患の免疫療法のために自己(autologous)T細胞をトランスフェクションすることができる。このアプローチに対する主な障害は、患者に合致するMHC-laに対する所与のTCRの使用を制限する、ヒト集団におけるMHC-laの多様性である。非古典的で、非多型のMHC-Eの文脈における目的の抗原由来ペプチド(例えば、腫瘍抗原由来ペプチド及び病原体由来ペプチド)を認識するTCRを生成することによって、MHCの合致は時代遅れとなっており、得られるTCRは、全ての患者において使用が可能となる。
【0150】
MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞は天然では珍しく、腫瘍抗原、病原体由来抗原、組織特異抗原又は宿主の自己抗原等である目的の抗原に対するこうしたT細胞を生成するための信頼できる方法は現在のところ存在しない。本明細書に記載の方法は、HCMV UL128、UL130、UL146及びUL147に対して相同である遺伝子を欠いているアカゲザルのサイトメガロウイルス(RhCMV)及びカニクイザルのサイトメガロウイルス(CyCMV)のベクターが、高い頻度でMHC-E拘束性CD8+ T細胞を誘発するという発見に基づいている。UL128、UL130、UL146及びUL147を欠失したRhCMV又はCyCMV内に、目的の抗原を挿入することによって、MHC-Eにより提示される個々のペプチドに対するCD8+ T細胞を生成することができる。CMVベクターは、miR-126-3p等である内皮細胞系列細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において遺伝子発現を抑制するMREを含ませることによって、さらに改変され得る。MHC-E/ペプチド認識TCRは、いくつかの方法のうちのいずれかによって同定することが可能であるが、概して、単一細胞のcDNA、クローン的に広がった単一細胞のcDNA、又は、ペプチド特異的CD8+ T細胞のディープシーケンシングプールのcDNAからのPCRによっていずれかにより直接、アルファ鎖及びベータ鎖を配列決定することに頼っている。あるいは、配列は、単一細胞、クローン的に広がった単一細胞又はペプチド特異的CD8+ T細胞のプールに関する全トランスクリプトームライブラリをはじめに作製することによってRNAテンプレートを拡大することによって、間接的に誘導されてもよい。ペプチド特異的可変配列は、cDNA末端の迅速増幅(RACE)又はmRNAで行われるRNAテンプレート(SMART)プロトコルの5’末端におけるスイッチング機構によって生成され得る。隣り合う定常領域内に留まるPCR又は同様に単一ペプチド反応性CD8+細胞の全トランスクリプトームライブラリからのPCRは、直接配列決定可能であるか又はそれらのそれぞれのTCR可変領域に対して高重複度で配列決定可能である。ペプチド反応性CD8+ T細胞の個々又はプールのTCR配列に由来するアルファ鎖及びベータ鎖の検証された組み合わせは、さらに合成又はクローン化することができる。得られたTCRコンストラクトはその後、治療(例えば、癌治療又は感染症治療)として患者にその後施すことができるT細胞にトランスフェクションすることが可能である。TCR可変領域のクローニング法及びトランスフェクション法はまた、Barsov EV et al., PLoS One 6, e23703 (2011)において論じられており、それは参照によって本明細書に組み入れられたものとする。
【0151】
本発明は、下記の態様を含む。
[態様1]
(a)少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列と、
(b)CMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子に操作可能に連結された第一のmicroRNA認識配列(MRE)を含む第二の核酸配列であって、該MREが、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するものである、第二の核酸配列と、を含むサイトメガロウイルス(CMV)ベクターであって、
該ベクターは、活性UL128タンパク質又はそのオーソログを発現しない、活性UL130タンパク質又はそのオーソログを発現しない、活性UL146又はそのオーソログを発現しない、及び、活性147タンパク質又はそのオーソログを発現しない、サイトメガロウイルス(CMV)ベクター。
[態様2]
前記MREは、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、miR-296及びmiR-328のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制する、態様1記載のCMVベクター。
[態様3]
前記MREは、miR-126-3pの存在下において発現を抑制する、態様2記載のCMVベクター。
[態様4]
前記MREは、miR-126-3pの存在下においてUL122(IE2)及びUL79の発現を抑制する、態様3記載のCMVベクター。
[態様5]
前記少なくとも1つの異種抗原は、病原体特異抗原、腫瘍抗原、組織特異抗原又は宿主の自己抗原を含む、態様1から4のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様6]
前記宿主の自己抗原は、T細胞受容体(TCR)の可変領域由来の抗原又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原である、態様5記載のCMVベクター。
[態様7]
前記病原体特異抗原は、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、マラリア原虫(Plasmodium parasites)、及び、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)からなる群から選択される病原体に由来するものである、態様5記載のCMVベクター。
[態様8]
前記腫瘍抗原は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌(RCC)、及び、胚細胞腫瘍からなる群から選択される癌に関連するものである、態様5記載のCMVベクター。
[態様9]
前記CMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質又はそのオーソログを発現しない、態様1から8のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様10]
前記CMVベクターは、活性US11タンパク質又はそのオーソログを発現しない、態様1から9のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様11]
前記CMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質もしくは活性US11タンパク質、又はそのオーソログを発現しない、態様1から8のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様12]
前記CMVベクターは、ヒトCMVベクター(HCMV)、カニクイザルCMV(CyCMV)ベクター又はアカゲザルCMV(RhCMV)ベクターである、態様1から11のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様13]
対象において、少なくとも1つの異種抗原に対する免疫応答を生成する方法であって、該方法は、
前記対象に対して、態様1から12のいずれか一項に記載のCMVベクターを効果量で投与して、前記少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+ T細胞応答を誘発することを含む、方法。
[態様14]
前記CMVベクターによって誘発されたCD8+ T細胞のうちの少なくとも10%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束されている、態様13記載の方法。
[態様15]
前記CMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも75%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束されている、態様14記載の方法。
[態様16]
前記CMVベクターによって誘発されたCD8+ T細胞のうちの10%未満が、MHC-クラスIa又はそのオーソログによって拘束されている、態様13記載の方法。
[態様17]
MHC-Eによって拘束されるCD8+ T細胞の一部が、ベクターで免疫した他の対象のうちの少なくとも90%で共有されるペプチドを認識する、態様13記載の方法。
[態様18]
前記対象に対して、少なくとも1つの異種抗原をコードする核酸配列を含む第二のCMVベクターを投与することをさらに含む、態様13から17のいずれか一項に記載の方法。
[態様19]
前記第二のCMVベクターは、UL128又はそのオーソログ、UL129又はそのオーソログ、UL146又はそのオーソログ、及び、UL147又はそのオーソログからなる群から選択される1つ又は複数の活性タンパク質を発現する、態様18記載の方法。
[態様20]
前記第一のCMVベクター及び前記第二のCMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、同一の抗原である、態様18又は19に記載の方法。
[態様21]
前記第二のCMVベクターは、前記第一のCMVベクターの前、同時又は後に投与される、態様18から20のいずれか一項に記載の方法。
[態様22]
前記対象は、事前にCMVに曝露している、態様13から21のいずれか一項に記載の方法。
[態様23]
前記対象は、ヒト又は非ヒト霊長類である、態様13から22のいずれか一項に記載の方法。
[態様24]
前記CMVベクターを投与することは、前記CMVベクターの、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内又は経口の投与を含む、態様13から23のいずれか一項に記載の方法。
[態様25]
前記CMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞からのCD8+ TCRを同定することをさらに含むものであって、該CD8+ TCRがMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するものである、態様14又は15に記載の方法。
[態様26]
前記CD8+ TCRは、DNA又はRNA配列決定によって同定される、態様25記載の方法。
[態様27]
(a)少なくとも1つの異種抗原をコードする第一の核酸配列と、
(b)CMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子に操作可能に連結された第一のmicroRNA認識配列(MRE)を含む第二の核酸配列であって、該MREが、内皮細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するものである、第二の核酸配列と、
(c)CMVの増殖に必須又は該増殖を増強しているCMV遺伝子に操作可能に連結された第二のMREを含む第三の核酸配列であって、該MREが、骨髄細胞系列の細胞によって発現されるmicroRNAの存在下において発現を抑制するものである、第三の核酸配列と、を含むサイトメガロウイルス(CMV)ベクターであって、
該ベクターは、活性UL128タンパク質又はそのオーソログを発現しない、活性UL130タンパク質又はそのオーソログを発現しない、活性UL146又はそのオーソログを発現しない、及び、活性UL147タンパク質又はそのオーソログを発現しない、サイトメガロウイルス(CMV)ベクター。
[態様28]
前記第二の核酸配列は、miR-126-3p、miR-130a、miR-210、miR-221/222、miR-378、miR-296及びmiR-328の存在下において発現を抑制するMREを含む、態様27記載のCMVベクター。
[態様29]
前記第二の核酸配列は、miR-126-3pの存在下において発現を抑制するMREを含む、態様28記載のCMVベクター。
[態様30]
前記MREは、miR-126-3pの存在下においてUL122(IE2)及びUL79の発現を抑制する、態様29記載のCMVベクター。
[態様31]
前記第三の核酸配列は、miR-142-3p、miR-223、miR-27a、miR-652、miR-155、miR146a、miR-132、miR-21及びmiR-125のうちの1つ又は複数の存在下において発現を抑制するMREを含む、態様27から30のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様32]
前記第三の核酸配列は、miR-142-3pの存在下において発現を抑制するMREを含む、態様31記載のCMVベクター。
[態様33]
前記少なくとも1つの異種抗原は、病原体特異抗原、腫瘍抗原、組織特異抗原又は宿主の自己抗原を含む、態様27から32のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様34]
前記宿主の自己抗原は、T細胞受容体(TCR)の可変領域由来の抗原又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原である、態様33記載のCMVベクター。
[態様35]
前記病原体特異抗原は、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、マラリア原虫(Plasmodium parasites)、及び、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)からなる群から選択される病原体に由来するものである、態様33記載のCMVベクター。
[態様36]
前記腫瘍抗原は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌(RCC)、及び、胚細胞腫瘍からなる群から選択される癌に関連するものである、態様33記載のCMVベクター。
[態様37]
前記CMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質又はそのオーソログを発現しない、態様27から36のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様38]
前記CMVベクターは、活性US11タンパク質又はそのオーソログを発現しない、態様27から37のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様39]
前記CMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質もしくは活性US11タンパク質、又はそのオーソログを発現しない、態様27から36のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様40]
前記CMVベクターは、ヒトCMVベクター(HCMV)、カニクイザルCMV(CyCMV)ベクター又はアカゲザルCMV(RhCMV)ベクターである、態様27から39のいずれか一項に記載のCMVベクター。
[態様41]
対象において、少なくとも1つの異種抗原に対する免疫応答を生成する方法であって、該方法は、
前記対象に対して、態様27から40のいずれか一項に記載のCMVベクターを効果量で投与して、前記少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+ T細胞応答を誘発することを含む、方法。
[態様42]
前記CMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも50%が、MHC-クラスIa又はそのオーソログによって拘束されている、態様41記載の方法。
[態様43]
前記対象に対して、少なくとも1つの異種抗原をコードする核酸配列を含む第二のCMVベクターを投与することをさらに含む、態様41又は42に記載の方法。
[態様44]
前記第二のCMVベクターは、UL128又はそのオーソログ、UL129又はそのオーソログ、UL146又はそのオーソログ、及び、UL147又はそのオーソログからなる群から選択される1つ又は複数の活性タンパク質を発現する、態様43記載の方法。
[態様45]
前記第一のCMVベクター及び前記第二のCMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、同一の抗原である、態様43又は44に記載の方法。
[態様46]
前記第二のCMVベクターは、前記第一のCMVベクターの前、同時又は後に投与される、態様43から45のいずれか一項に記載の方法。
[態様47]
前記対象は、事前にCMVに曝露している、態様41から46のいずれか一項に記載の方法。
[態様48]
前記対象は、ヒト又は非ヒト霊長類である、態様41から47のいずれか一項に記載の方法。
[態様49]
前記CMVベクターを投与することは、前記CMVベクターの、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内又は経口の投与を含む、態様41から48のいずれか一項に記載の方法。
[態様50]
少なくとも1つの異種抗原をコードする核酸配列を含むヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ベクターであって、該ベクターは、活性UL128タンパク質又はそのオーソログを発現しない、活性UL130タンパク質又はそのオーソログを発現しない、活性UL146又はそのオーソログを発現しない、及び、活性UL147タンパク質又はそのオーソログを発現しない、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)ベクター。
[態様51]
前記少なくとも1つの異種抗原は、病原体特異抗原、腫瘍抗原、組織特異抗原又は宿主の自己抗原を含む、態様50記載のHCMVベクター。
[態様52]
前記宿主の自己抗原は、T細胞受容体(TCR)の可変領域由来の抗原又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原である、態様51記載のHCMVベクター。
[態様53]
前記病原体特異抗原は、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、マラリア原虫(Plasmodium parasites)、及び、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)からなる群から選択される病原体に由来するものである、態様51記載のHCMVベクター。
[態様54]
前記腫瘍抗原は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌(RCC)、及び、胚細胞腫瘍からなる群から選択される癌に関連するものである、態様51記載のHCMVベクター。
[態様55]
前記HCMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質又はそのオーソログを発現しない、態様50から54のいずれか一項に記載のHCMVベクター。
[態様56]
前記HCMVベクターは、活性US11タンパク質又はそのオーソログを発現しない、態様50から55のいずれか一項に記載のHCMVベクター。
[態様57]
前記HCMVベクターは、活性UL82(pp71)タンパク質もしくは活性US11タンパク質、又はそのオーソログを発現しない、態様50から54のいずれか一項に記載のHCMVベクター。
[態様58]
対象において、少なくとも1つの異種抗原に対する免疫応答を生成する方法であって、該方法は、
前記対象に対して、態様50から57のいずれか一項に記載のHCMVベクターを効果量で投与して、前記少なくとも1つの異種抗原に対するCD8+ T細胞応答を誘発することを含む、方法。
[態様59]
前記HCMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも10%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束されている、態様58記載の方法。
[態様60]
前記HCMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも75%が、MHC-E又はそのオーソログによって拘束されている、態様59記載の方法。
[態様61]
前記HCMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも10%が、クラスIIのMHC又はそのオーソログによって拘束されている、態様58記載の方法。
[態様62]
前記HCMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞のうちの少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも75%が、クラスIIのMHC又はそのオーソログによって拘束されている、態様61記載の方法。
[態様63]
MHC-Eによって拘束されるCD8+ T細胞の一部が、ベクターで免疫した他の対象のうちの少なくとも90%で共有されるペプチドを認識する、態様58記載の方法。
[態様64]
MHC-IIによって拘束されるCD8+ T細胞の一部が、ベクターで免疫した他の対象のうちの少なくとも90%で共有されるペプチドを認識する、態様58記載の方法。
[態様65]
前記対象に対して、少なくとも1つの異種抗原をコードする核酸配列を含む第二のCMVベクターを投与することをさらに含む、態様58から64のいずれか一項に記載の方法。
[態様66]
前記第二のCMVベクターは、UL128又はそのオーソログ、UL129又はそのオーソログ、UL146又はそのオーソログ、及び、UL147又はそのオーソログからなる群から選択される1つ又は複数の活性タンパク質を発現する、態様65記載の方法。
[態様67]
前記第一のCMVベクター及び前記第二のCMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、同一の抗原である、態様65又は66に記載の方法。
[態様68]
前記第二のCMVベクターは、前記第一のCMVベクターの前、同時又は後に投与される、態様65から67のいずれか一項に記載の方法。
[態様69]
前記対象は、事前にCMVに曝露している、態様58から68のいずれか一項に記載の方法。
[態様70]
前記対象は、ヒト又は非ヒト霊長類である、態様58から69のいずれか一項に記載の方法。
[態様71]
前記HCMVベクターを投与することは、前記HCMVベクターの、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内又は経口の投与を含む、態様58から70のいずれか一項に記載の方法。
[態様72]
前記CMVベクターによって誘発されるCD8+ T細胞からのCD8+ TCRを同定することをさらに含むものであって、該CD8+ TCRがMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するものである、態様59又は60に記載の方法。
[態様73]
前記CD8+ TCRは、DNA又はRNA配列決定によって同定される、態様72記載の方法。
[態様74]
MHC-E-ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞を生成する方法であって、該方法が、
(1)対象に対して、態様1から12又は50から57のいずれか一項に記載のCMVベクターを効果量で投与して、MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞の集合を生成することと、
(2)前記CD8+ T細胞の集合からの第一のCD8+ TCRを同定することであって、該第一のCD8+ TCRがMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するものであることと、
(3)前記対象から1つ又は複数のCD8+ T細胞を単離することと、
(4)ある発現ベクターで1つ又は複数のCD8+ T細胞をトランスフェクションすることであって、該発現ベクターが第二のCD8+ TCRをコードする核酸配列と、前記第二のCD8+ TCRをコードする前記核酸配列に操作可能に連結されたプロモーターとを含み、前記第二のCD8+ TCRは、第一のCD8+ TCRのCDR3α及びCDR3βを含み、それによってMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する1つ又は複数のトランスフェクションされたCD8+ T細胞を生成することとを含む、方法。
[態様75]
前記第一のCD8+ TCRは、DNA又はRNA配列決定によって同定される、態様74記載の方法。
[態様76]
前記第二のCD8+ TCRは、前記第一のCD8+ TCRのうちのCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βを含む、態様74又は75に記載の方法。
[態様77]
前記第二のCD8+ TCRをコードする核酸配列は、前記第一のCD8+ TCRをコードする核酸配列と一致する、態様76記載の方法。
[態様78]
前記対象に対して前記CMVベクターを投与することは、前記CMVベクターの、前記対象に対する皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内又は経口の投与を含む、態様74から77のいずれか一項に記載の方法。
[態様79]
前記対象は、事前にCMVに曝露している、態様74から78のいずれか一項に記載の方法。
[態様80]
前記対象は、ヒト又は非ヒト霊長類である、態様74から79のいずれか一項に記載の方法。
[態様81]
前記CMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、腫瘍抗原を含む、態様74から80のいずれか一項に記載の方法。
[態様82]
前記腫瘍抗原は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌(CC)、及び、胚細胞腫瘍からなる群から選択される癌に関連するものである、態様81記載の方法。
[態様83]
前記対象に対して、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与して、癌を治療することをさらに含む、態様81又は82に記載の方法。
[態様84]
前記CMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、病原体特異抗原を含む、態様74から80のいずれか一項に記載の方法。
[態様85]
前記病原体特異抗原は、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、マラリア原虫(Plasmodium parasites)、及び、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)からなる群から選択される病原体に由来するものである、態様84記載の方法。
[態様86]
前記対象に対して、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与して、病原性感染を治療することをさらに含む、態様84又は85に記載の方法。
[態様87]
前記CMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、宿主の自己抗原又は組織特異抗原を含む、態様74から80のいずれか一項に記載の方法。
[態様88]
前記宿主の自己抗原は、TCRの可変領域由来の抗原又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原である、態様87記載の方法。
[態様89]
前記対象に対して、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与して、自己免疫疾患又は免疫障害を治療することをさらに含む、態様87又は88に記載の方法。
[態様90]
前記対象に対して、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与して、宿主の自己抗原又は組織特異抗原に対する自己免疫応答を誘導することをさらに含む、態様87又は88に記載の方法。
[態様91]
MHC-E-ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞を生成する方法であって、該方法が、
(1)第一の対象に対して、態様1から12又は50から57のいずれか一項に記載のCMVベクターを効果量で投与して、MHC-E/ペプチド複合体を認識するCD8+ T細胞の集合を生成することと、
(2)前記CD8+ T細胞の集合からの第一のCD8+ TCRを同定することであって、該第一のCD8+ TCRがMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識するものであることと、
(3)第二の対象から1つ又は複数のCD8+ T細胞を単離することと、
(4)ある発現ベクターで1つ又は複数のCD8+ T細胞をトランスフェクションすることであって、該発現ベクターが第二のCD8+ TCRをコードする核酸配列と、前記第二のCD8+ TCRをコードする前記核酸配列に操作可能に連結されたプロモーターとを含み、前記第二のCD8+ TCRは、第一のCD8+ TCRのCDR3α及びCDR3βを含み、それによってMHC-E/異種抗原由来ペプチド複合体を認識する1つ又は複数のトランスフェクションされたCD8+ T細胞を生成することとを含む、方法。
[態様92]
前記第一のCD8+ TCRは、DNA又はRNA配列決定によって同定される、態様91記載の方法。
[態様93]
前記第一の対象は、ヒト又は非ヒト霊長類である、態様91又は92に記載の方法。
[態様94]
前記第二の対象は、ヒト又は非ヒト霊長類である、態様91から93のいずれか一項に記載の方法。
[態様95]
前記第一の対象は非ヒト霊長類であり、かつ、前記第二の対象はヒトであって、前記第二のCD8+ TCRは、前記第一のCD8+ TCRの非ヒト霊長類CDR3α及びCDR3βを含む、キメラ非ヒト霊長類-ヒトCD8+ TCRである、態様91から94のいずれか一項に記載の方法。
[態様96]
前記第二のCD8+ TCRは、前記第一のCD8+ TCRのうちの非ヒト霊長類CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βを含む、態様95記載の方法。
[態様97]
前記第二のCD8+ TCRは、前記第一のCD8+ TCRのうちのCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βを含む、態様91から94のいずれか一項に記載の方法。
[態様98]
前記第二のCD8+ TCRをコードする核酸配列は、前記第一のCD8+ TCRをコードする核酸配列と一致する、態様97記載の方法。
[態様99]
前記第二のCD8+ TCRは、キメラCD8+ TCRである、態様91から94のいずれか一項に記載の方法。
[態様100]
前記第二のCD8+ TCRは、前記第一のCD8+ TCRのうちのCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βを含む、態様99記載の方法。
[態様101]
前記第一の対象に対して前記CMVベクターを投与することは、前記CMVベクターの、前記第一の対象に対する皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内又は経口の投与を含む、態様91から100のいずれか一項に記載の方法。
[態様102]
前記第一の対象は、事前にCMVに曝露している、態様91から101のいずれか一項に記載の方法。
[態様103]
前記少なくとも1つの異種抗原は、腫瘍抗原を含む、態様91から102のいずれか一項に記載の方法。
[態様104]
前記腫瘍抗原は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌(RCC)、及び、胚細胞腫瘍からなる群から選択される癌に関連するものである、態様103記載の方法。
[態様105]
前記第二の対象に対して、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与して、癌を治療することをさらに含む、態様103又は104に記載の方法。
[態様106]
前記少なくとも1つの異種抗原は、病原体特異抗原を含む、態様91から102のいずれか一項に記載の方法。
[態様107]
前記病原体特異抗原は、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、マラリア原虫(Plasmodium parasites)、及び、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)からなる群から選択される病原体に由来するものである、態様106記載の方法。
[態様108]
前記第二の対象に対して、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与して、病原性感染を治療することをさらに含む、態様106又は107に記載の方法。
[態様109]
前記少なくとも1つの異種抗原は、宿主の自己抗原又は組織特異抗原を含む、態様91から102のいずれか一項に記載の方法。
[態様110]
前記宿主の自己抗原は、TCRの可変領域由来の抗原又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原である、態様109記載の方法。
[態様111]
前記第二の対象に対して、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与して、自己免疫疾患又は免疫障害を治療することをさらに含む、態様109又は110に記載の方法。
[態様112]
前記対象に対して、トランスフェクションされたCD8+ T細胞を投与して、宿主の自己抗原又は組織特異抗原に対する自己免疫応答を誘導することをさらに含む、態様109又は110に記載の方法。
[態様113]
態様74から112のいずれか一項に記載の方法によって生成されるCD8+ T細胞。
[態様114]
前記CMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、腫瘍抗原を含む、態様113記載のCD8+ T細胞。
[態様115]
前記腫瘍抗原は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、悪性黒色腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵癌、大腸癌、腎細胞癌(RCC)、及び、胚細胞腫瘍からなる群から選択される癌に関連するものである、態様114記載のCD8+ T細胞。
[態様116]
前記CMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、病原体特異抗原を含む、態様113記載のCD8+ T細胞。
[態様117]
前記病原体特異抗原は、ヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、マラリア原虫(Plasmodium parasites)、及び、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)からなる群から選択される病原体に由来するものである、態様116記載のCD8+ T細胞。
[態様118]
前記CMVベクターの前記少なくとも1つの異種抗原は、宿主の自己抗原又は組織特異抗原を含む、態様113記載のCD8+ T細胞。
[態様119]
前記宿主の自己抗原は、TCRの可変領域由来の抗原又はB細胞受容体の可変領域由来の抗原である、態様118記載のCD8+ T細胞。
[態様120]
癌を治療する方法であって、態様114又は115に記載のCD8+ T細胞を、対象に投与することを含む、方法。
[態様121]
病原性感染を治療する方法であって、態様116又は117に記載のCD8+ T細胞を、対象に投与することを含む、方法。
[態様122]
自己免疫疾患又は免疫障害を治療する方法であって、態様118又は119に記載のCD8+ T細胞を、対象に投与することを含む、方法。
[態様123]
宿主の自己抗原又は組織特異抗原に対する自己免疫応答を誘導する方法であって、態様118又は119に記載のCD8+ T細胞を、前記対象に投与することを含む、方法。
【配列表】